Con Gas, Sin Hielo

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「ゴジラ-1.0」

2023年12月02日 15時06分42秒 | 映画(2023)
新しい戦後。


山崎貴監督にとって念願のDolby Cinema対応として制作された本作。

そこまで気合を入れたものであれば、それで観てみようじゃないの。TOHOシネマズすすきのにDolby Cinemaが導入されたばかりでタイミングもぴったり。映画の日に600円追加して観に行きました。

山崎監督といえば出世作は「三丁目の夕日」(観ていません)。昭和30年代の東京の街並みをCGで見事に再現して名を挙げ、その後も「STAND BY ME ドラえもん」「永遠の0」(どちらも観ていません)など話題作を次々に手掛けてきたヒットメーカーであるが、映画監督としての評価がどうなのかは正直良く分からない。

今回の題材はゴジラである。ゴジラシリーズといえば、最近では庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」が大きな反響を呼んだのが記憶に新しい。あれから7年経っているとはいえ、次の作品を作るというのは相当プレッシャーがかかると想像する。

山崎監督は舞台を太平洋戦争直後に設定した。昭和は過去のヒット作に通じる、彼の得意フィールドということなのかもしれない。「-1.0」という耳慣れない言葉は、予告を見るかぎりでは、敗戦でゼロになった日本が更なる災厄によりマイナスに陥ることを表しているらしい。

映画監督としての評価が良く分からないと書いたが、山崎監督が間違いなく長けているのは企画力だと思う。単純に彼がゴジラの映画を作るというだけでは食指が動かないところを、見たことがない何かを作るんじゃないかと期待させる要素を次々に送り込んでくるのである。

そしていざ劇場へ。

冒頭、太平洋の小島に駐在する空軍の基地をゴジラが襲う。建物を踏みつぶし、人を咥えては放り投げ、とどめはお馴染みの咆哮。この10分ほどの映像で、ゴジラとDolby Cinemaが最高の相性を持つことを理解する。

ゴジラはもちろんVFXであるが、サイズ(後半は更に大きくなる)やごつごつ感に加えて、海面をスピードを上げて追ってくる姿など、人類が驚愕と絶望に支配されることに十分な説得力を持っている。

ゴジラが強過ぎると人間の存在が相対的に小さくなってしまい、ドラマが陳腐になる恐れがあるのだが、ここからが山崎監督の腕の見せどころであり、今回、人間側のドラマとして、戦争で図らずも生き残った人たちをメインに据えるという手法をとった。

特に主人公の敷島は、特攻隊員でありながら機体が故障したと偽り戦線を離脱し、避難した小島でも襲ってきたゴジラに対し戦わず逃げたという経験を持つ。

今でこそ、命が何よりも大切ということは常識であるが、当時はお国のために命を投げ出すことが正義であり、そうして多くの若い戦士たちが散っていった。敗戦後、自分の過去の選択に苦しみ続けた敷島たちは、今度こそ人々の、そして未来の子孫の役に立つことを願ってゴジラに対し立ち向かうのである。

時折ベタな描写も見られるが、ゴジラの物理的なスケールへの対抗軸として、こうした人間の感情の奥底を揺さぶる物語を配置したことは、荒唐無稽と捉えられかねないクライマックスのゴジラ掃討作戦にすんなり感情移入できるという効果を生んでいる。

本作を見るかぎり、山崎監督の技量は相当なものと認識した。何よりも、エンドロールで流れるあの壮大なチームをまとめ上げて大作を作り上げるなんて、普通では想像がつかない。

次はどういった題材に目をつけるのだろうか。

(85点)
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