Con Gas, Sin Hielo

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「パラサイト 半地下の家族」

2020年01月13日 14時09分44秒 | 映画(2020)
助け合う社会、足を引っ張り合う社会。


昨年のカンヌ国際映画祭で韓国作品としてパルムドールを初めて受賞した話題作。世界中で格差を原因とする騒乱が巻き起こっている今、これほどうってつけの映画はない。

主人公のキム一家は仕事もなければ財産もなく、古びた建物の半地下でホームレス同然の生活を送っている。そんな中で長男のギウは、旧友の大学生から家庭教師のアルバイトを紹介される。

アルバイト先のパク家は高級住宅街に豪邸を構える。大きな庭、住み込みの家政婦、小洒落た犬が3匹。同じ一男一女の4人家族でありながら、キム一家とは何もかもが違っていた。

本来であれば触れる可能性がなかった世界に足を踏み入れたギウはあることに気付く。パク家の防備はあまりにルーズであったのだ。一家の盲点を見つけては、そのケアのためにと家族を運転手や家政婦へと送り込んでいく。

そこに悪意はない。ただ生きるために必要だったからだし、実際にパク家の役に立っていた。ウィン・ウィンだったはずの完璧な計画は、やがて思わぬ方向へ転がり出していく。

2つの家族が生きる世界が徹底して対照的に描かれ、強く印象に残る。

山の手と裏路地。常にどこかにゆとりがあって、ゆったりとした時の流れを刻むパク家に対して、小便を垂れる酔っ払い、屋内に吹き込む消毒剤の霧や雨風の脅威に晒され続けるキム一家。

格差問題では攻撃対象となる富裕層であるが、パク家の人たちは基本的に善人である。奥さんに至っては、むしろお人好しの世間知らずとして描かれる。少しでも調べれば粗が見えるギウの計画にもツッコミを入れない。

しかし時折パク家の人たちから発せられる言葉にギウたちは心中穏やかでなくなる。彼らは何か変な臭いがする。それもみんな同じ臭いだ。

自分はこの家に似合う人間なのだろうか。ギウが教え子に語った一言は、旧友からもらった石のように心にへばりつく。

子供の誕生日パーティーが華やかに開かれる庭に、地下から怨念の塊が上ってくる場面がクライマックスになる。

2階の窓からパーティーを見れば落ち着いて客観的に考えることができるのに、地下から命からがら這い上がってきた者にそんな余裕はない。周りは現在の恵まれない自分すら脅かす存在に映り、攻撃するしか選択肢がなくなってしまうのだ。

社会問題を描くときには、敢えて分かりやすく勧善懲悪を誇張することもできるが、本作の登場人物は誰もが長所と短所を持つ普通の人間と捉えられる。違うのはたった一つ。生まれついた家だけである。

それだけに事件が一段落した後のキム一家の父が辿る道が切ない。格差は乗り越えられないのか。乗り越えてはいけないものなのか。

問題の根の深さが強く刺さるのは、B.ジュノ監督らのバランス感覚に長けた脚本によるところが大きい。

(90点)
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2 コメント

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今晩は☆ (mezzotint)
2020-03-10 01:41:35
クラムさん
今晩は。後半の展開がとても印象的でした。
それとあの家政婦さんが、まさかあのようなかたち
で登場するとは?!そしてまさか地下にあのような
事になっているとは・・・。
もう一度時間があれば鑑賞したいと思っています。
返信する
半地下なのに抜け出せない深み (クラム)
2020-03-14 22:46:30
mezzotintさん、こんばんは。

家政婦さん、登場したときからインパクトがありましたが、
重要な役として絡んでくるところまでは想像できませんでした。
娯楽作品としてとてもおもしろかったのはもちろん、
2つの家族のいろいろな意味でのポジションを、
高台と地下、臭いといった対比する要素を使って
鮮やかに描き分けたセンスに感服しました。
新作の公開が続々延期になる中で再鑑賞もアリですね。
返信する

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