Con Gas, Sin Hielo

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「ロケットマン」

2019年09月08日 10時42分25秒 | 映画(2019)
あふれ出る才能。一部で作品完成。


好きなアーティストは誰?と尋ねられると返答に困るが、言えるのは、いつ訊かれたとしてもElton Johnは確実に3指に入るということ。

彼が書くメロディーラインの美しさは並ぶ者がいない。決して単純な作りではないのに万人の心に響く洗練性、メジャーもマイナーも、バラードもロックンロールも何でもござれの万能性。80年代は彼の新作が出るとすぐに貸しレコード屋へ行ったものだ。

"Candle in the wind 1997"が世界一売れたシングル盤としてギネス認定されるなど、記録に残る超大物アーティストであるEltonであるが、わが国国内での人気や知名度となると疑問符が付くところ。しかし今回、おそらく昨年の「ボヘミアンラプソディ」の成功の余波であろう、本作が全国拡大公開されることになった。

映画は、彼の様々な曲をミュージカル調に流しながらその激動の半生を描くというもの。「ボヘミアンラプソディ」のときも記事に書いているが、今回も挫折のエピソード自体に新鮮味はない。あるあるの域を脱することはない。

しかしそれでも、全篇を通してEltonの曲が流れることがうれしい。観る前から聞いていた話だが、曲の時系列はばらばらであり、物語と曲の絡みは完全なフィクションである。それが分かっていても、なんとなく「この曲はこの時期の彼の状態にぴったり」と思えてくるところが興味深い。

何より彼の特筆すべき記録は、1970年から30年に渡って毎年Billboard TOP40にヒット曲を送り込んできたことである。本作では、依存症や人間関係で不安定になった様子が描かれるが、そんなときも彼はずっとクオリティの高い曲を書き続けてこられた。おそらくこの記録は今後も破られることはないであろう。

その天賦の才能によって生み出された曲が山ほどあるのだから、中にはある時の状態に合致したものがあるのも納得なのである。

ただ基本的に大きくフィーチャーされる曲は彼のキャリアの前半が中心となる。80年代発表の"I guess that's why they call it the blues"、"Sad songs (say so much)"などはワンフレーズのみの登場にとどまり、しかも所属事務所の社長に即刻全否定される。なんとも贅沢な扱いに苦笑する場面だ。

黄色いレンガ道に別れを告げて、まだ自分の足で立っているよと再生を果たしたという下りでハッピーエンド。"I'm still standing"は洋楽を聴き始めたころの大好きな曲。当時創生期だったミュージックビデオの再現まであって個人的に満足だった。実際はこの曲の後も依存症の時期は続くのだが・・・。

T.エガートンが吹替えを使わず熱唱。Elton本人とは「キングスマン:ゴールデンサークル」繋がりと言える。すっかり気に入られたようでライブでのゲスト出演の映像も先日見かけた。本人に寄せるのではなく、熱量で物語に魂を吹き込む姿が清々しかった。

(75点)
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