誰にも訪れる人生の黄昏時。
ウルヴァリンが主役のX-MENスピンオフ作品はこれが3作め。
前作の「ウルヴァリン:SAMURAI」は、観たときの気分もあってかなり高得点を付けたのだが、ミュータントがあまり出てなくてX-MENシリーズじゃないとの声もちらほらと。そう言われればそうだ。
ただ「スピンオフ」という言葉を好意的に捉えれば、本編に囚われることなく作ってもまったく問題はない。例えばアクションの裏舞台をコメディーにしたっていいわけで、ウルヴァリンシリーズはミュータントの戦いではなくウルヴァリンという一人の男の生き様を描いた物語という考え方ができる。
とは言いつつも今回は同時に、2000年の「X-MEN」から出演を続けてきたH.ジャックマンが演じる最後のウルヴァリンであり、その意味ではスピンオフでありながら本編シリーズの区切りともなっている。
これだけの人気シリーズの結末を作るのは相当勇気と覚悟の必要な仕事だったと思う。
しかし、人気がある故に連載を延々と続けるコミックや、シリーズが完結しないうちにリブートと称して仕切り直してしまう作品が散見される中で、本企画はファンに対して誠実な姿勢を示したものと評価したい。
背景はさておき、最も重要なのは映画の中身である。
舞台は近未来の2029年。長年の戦いを経てさすがのウルヴァリンの治癒能力にも陰りが見えていた。ミュータントの仲間たちも消え去り、メキシコの田舎でかつてのプロフェッサーX:チャールズと細々と隠遁生活を送っていた。
この時点でもはや華々しい特殊能力とはかけ離れている。本作のタイトルが「ローガン」であるのは、能力が衰えた結果として残った生身の人間を前面に出したものだ。
生傷がなかなか癒えないローガン、身の回りのことができない上に時々発作に見舞われるチャールズ。老いた2人の姿はあまりに痛々しい。
しかし肉体以上に痛々しいのは、彼らが意義深い人生を送ってきたと顧みることができないところにある。
あれだけ命を懸けて戦ってきたにも拘らず世の中は何も変わっていないように見える。神から与えられし能力を自分は無駄遣いしたのではないか。
これはミュータントだけのことではない。年を取って自分の死を意識したときに必ず向かい合うに違いない。
そうした閉塞的な状況に現れる一人の少女・ローラが、迷えるローガンを導くことになる。
繰り返しになるがこれはミュータントの話ではない。死を間近に控えた男がどう終末を受け入れていくかの物語だ。
ローガンとチャールズが最後に味わったひとときの安らぎ。おそらく否定的な意見も出ると推測するが、戦い続けた男の一つの終着点として十分ありだと思う。
最後のローラが十字架を斜めに立て掛け直す場面はさりげなくも印象的だった。マーベル作品なのにおまけ映像がないという点にも作り手の覚悟を見た。
(85点)
ウルヴァリンが主役のX-MENスピンオフ作品はこれが3作め。
前作の「ウルヴァリン:SAMURAI」は、観たときの気分もあってかなり高得点を付けたのだが、ミュータントがあまり出てなくてX-MENシリーズじゃないとの声もちらほらと。そう言われればそうだ。
ただ「スピンオフ」という言葉を好意的に捉えれば、本編に囚われることなく作ってもまったく問題はない。例えばアクションの裏舞台をコメディーにしたっていいわけで、ウルヴァリンシリーズはミュータントの戦いではなくウルヴァリンという一人の男の生き様を描いた物語という考え方ができる。
とは言いつつも今回は同時に、2000年の「X-MEN」から出演を続けてきたH.ジャックマンが演じる最後のウルヴァリンであり、その意味ではスピンオフでありながら本編シリーズの区切りともなっている。
これだけの人気シリーズの結末を作るのは相当勇気と覚悟の必要な仕事だったと思う。
しかし、人気がある故に連載を延々と続けるコミックや、シリーズが完結しないうちにリブートと称して仕切り直してしまう作品が散見される中で、本企画はファンに対して誠実な姿勢を示したものと評価したい。
背景はさておき、最も重要なのは映画の中身である。
舞台は近未来の2029年。長年の戦いを経てさすがのウルヴァリンの治癒能力にも陰りが見えていた。ミュータントの仲間たちも消え去り、メキシコの田舎でかつてのプロフェッサーX:チャールズと細々と隠遁生活を送っていた。
この時点でもはや華々しい特殊能力とはかけ離れている。本作のタイトルが「ローガン」であるのは、能力が衰えた結果として残った生身の人間を前面に出したものだ。
生傷がなかなか癒えないローガン、身の回りのことができない上に時々発作に見舞われるチャールズ。老いた2人の姿はあまりに痛々しい。
しかし肉体以上に痛々しいのは、彼らが意義深い人生を送ってきたと顧みることができないところにある。
あれだけ命を懸けて戦ってきたにも拘らず世の中は何も変わっていないように見える。神から与えられし能力を自分は無駄遣いしたのではないか。
これはミュータントだけのことではない。年を取って自分の死を意識したときに必ず向かい合うに違いない。
そうした閉塞的な状況に現れる一人の少女・ローラが、迷えるローガンを導くことになる。
繰り返しになるがこれはミュータントの話ではない。死を間近に控えた男がどう終末を受け入れていくかの物語だ。
ローガンとチャールズが最後に味わったひとときの安らぎ。おそらく否定的な意見も出ると推測するが、戦い続けた男の一つの終着点として十分ありだと思う。
最後のローラが十字架を斜めに立て掛け直す場面はさりげなくも印象的だった。マーベル作品なのにおまけ映像がないという点にも作り手の覚悟を見た。
(85点)
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