ありそうでなかった舞台映えバイオレンス。
本シリーズは4作めにして初めての鑑賞。冒頭に簡単な過去3作のおさらい映像が流れ、配給会社が自分のような人をターゲットにしていることを実感する。
当初はそれほど期待していなかったけど、本国での評判が良く想定を超える規模のシリーズになってしまった場合、どう途中からのお客を取り込むかというのは悩ましいところである。「ワイルドスピード」なんてタイトルからして手抜き感満載だったけど、うまく立て直したものだと思う。
それでジョンウィック。K.リーブスといえば「スピード」「マトリックス」シリーズで一世を風靡したものの、その後はどちらかというとプライベートの緊張感が緩んだ画像が出回るなど若干過去の人というイメージがちらつく存在となりつつある中で、ひさしぶりに面目躍如の大ヒットとなったのが本シリーズであった。
ジョンウィックは殺し屋である。最愛の女性と出会いまっとうな生き方をしようとした中で妻が不慮の死を遂げ、彼は復讐に立ち上がる。復讐には成功したものの、殺し屋組織の掟を破った彼は世界中からその命を狙われることになる。
設定はシンプルで、それも大ヒットの要因だと思うのだが、観て分かったのが、とにかく殺しのシーンの見せ方にこだわり抜いているということ。
アクション映画にありがちな不満が、暗かったり人の動きが複雑だったりでせっかくの対決が見づらくなることなのだが、本作にはそれが一切ない。
その代わりにあるのが、あり得ない展開である。前半の大阪、後半のパリと、2つの大きなシークエンスがあるのだが、両都市ともマフィアやチンピラの巣窟と化している。
FMラジオで意味ありげな呼びかけをすれば、街の至るところから殺し屋が湧いてきてジョンの命を奪おうとする。映画としてはすごく胸が高鳴っていく展開だが、冷静にみればツッコミどころ満載なのである。
その他にも、必ず敵は順番に現れて2人以上いれば交互にジョンに襲い掛かるとか、ガラスがあれば必ず敵味方どちらかが突っ込んで粉々にするとか、決闘の場に向かう階段の場面で攻撃を受けて複数の踊り場を超えて一番下まで転がり落ちてしまうとか。
挙げればキリがないのだが、これらは決して批判ではなく、受け手がおもしろく観るために様々な配慮がされていると感心するのである(当然のように大阪の描写は外国映画でよく見る「ニッポン」である)。
極めつけは盲目の殺し屋・ケインである。自分の位置があやふやなのに拳銃や刀剣を扱えば離れた敵もばったばったと倒すという、まさに存在自体があり得ないが絵的には完璧という人物だ。
ジョンやケイン以外の登場人物もキャラクターが立っていて非常に見やすい。過去作を見ていなくても雰囲気で全体の構成や人間関係が分かるから、上述の簡単なおさらい映像だけでも十分に作品に没入することができる。
ある建物の中で繰り広げられるアクションを上から撮り続けたシーンも印象的であった。リアルよりも分かりやすくを徹底することで場面ごとに爽快感を味わえる仕組みになっている。
見れば見るほど、これは多分に演劇でありゲームの画面であると気付く。エンタメ度を高めるために、どの部分を際立たせるのか、削ってしまっていいのはどこなのかを明確にした結果と見ることができる。
本シリーズはそれぞれがコンセクエンス=報いを受けて一段落という形になりそうだが、本作が作った映画の流れが別の作品にも上手く受け継がれていくことを期待する。
(85点)
本シリーズは4作めにして初めての鑑賞。冒頭に簡単な過去3作のおさらい映像が流れ、配給会社が自分のような人をターゲットにしていることを実感する。
当初はそれほど期待していなかったけど、本国での評判が良く想定を超える規模のシリーズになってしまった場合、どう途中からのお客を取り込むかというのは悩ましいところである。「ワイルドスピード」なんてタイトルからして手抜き感満載だったけど、うまく立て直したものだと思う。
それでジョンウィック。K.リーブスといえば「スピード」「マトリックス」シリーズで一世を風靡したものの、その後はどちらかというとプライベートの緊張感が緩んだ画像が出回るなど若干過去の人というイメージがちらつく存在となりつつある中で、ひさしぶりに面目躍如の大ヒットとなったのが本シリーズであった。
ジョンウィックは殺し屋である。最愛の女性と出会いまっとうな生き方をしようとした中で妻が不慮の死を遂げ、彼は復讐に立ち上がる。復讐には成功したものの、殺し屋組織の掟を破った彼は世界中からその命を狙われることになる。
設定はシンプルで、それも大ヒットの要因だと思うのだが、観て分かったのが、とにかく殺しのシーンの見せ方にこだわり抜いているということ。
アクション映画にありがちな不満が、暗かったり人の動きが複雑だったりでせっかくの対決が見づらくなることなのだが、本作にはそれが一切ない。
その代わりにあるのが、あり得ない展開である。前半の大阪、後半のパリと、2つの大きなシークエンスがあるのだが、両都市ともマフィアやチンピラの巣窟と化している。
FMラジオで意味ありげな呼びかけをすれば、街の至るところから殺し屋が湧いてきてジョンの命を奪おうとする。映画としてはすごく胸が高鳴っていく展開だが、冷静にみればツッコミどころ満載なのである。
その他にも、必ず敵は順番に現れて2人以上いれば交互にジョンに襲い掛かるとか、ガラスがあれば必ず敵味方どちらかが突っ込んで粉々にするとか、決闘の場に向かう階段の場面で攻撃を受けて複数の踊り場を超えて一番下まで転がり落ちてしまうとか。
挙げればキリがないのだが、これらは決して批判ではなく、受け手がおもしろく観るために様々な配慮がされていると感心するのである(当然のように大阪の描写は外国映画でよく見る「ニッポン」である)。
極めつけは盲目の殺し屋・ケインである。自分の位置があやふやなのに拳銃や刀剣を扱えば離れた敵もばったばったと倒すという、まさに存在自体があり得ないが絵的には完璧という人物だ。
ジョンやケイン以外の登場人物もキャラクターが立っていて非常に見やすい。過去作を見ていなくても雰囲気で全体の構成や人間関係が分かるから、上述の簡単なおさらい映像だけでも十分に作品に没入することができる。
ある建物の中で繰り広げられるアクションを上から撮り続けたシーンも印象的であった。リアルよりも分かりやすくを徹底することで場面ごとに爽快感を味わえる仕組みになっている。
見れば見るほど、これは多分に演劇でありゲームの画面であると気付く。エンタメ度を高めるために、どの部分を際立たせるのか、削ってしまっていいのはどこなのかを明確にした結果と見ることができる。
本シリーズはそれぞれがコンセクエンス=報いを受けて一段落という形になりそうだが、本作が作った映画の流れが別の作品にも上手く受け継がれていくことを期待する。
(85点)
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