Con Gas, Sin Hielo

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「マイレージ、マイライフ」

2010年03月21日 01時23分53秒 | 映画(2010)
苦い矛盾の空間を漂う。


主人公・ライアンの仕事は、面倒を怖れる管理職に代わって解雇する従業員に最後通告を行うリストラ宣告人。

彼は、人間関係を重い荷物に例え、バックパックはもっと身軽にしていいとうそぶく。

そんな理念があるからこそ業績は優秀、常に効率を重視した行動に穴はない。・・・ように見えた。

しかし実は彼の周りは矛盾に満ちていた。

そもそも他人の失職で成り立つ職業そのものが矛盾の産物であるし、AAdvantageの特別優遇措置を受けながらステイタスを上げる趣味はチープだと自覚している。

そして何より、手荷物を最小限に抑え手続きの時間をできるだけ短縮して快適で効率的な出張をしていたつもりが、新入社員のナタリーにわざわざ出張すること自体が非効率だと言われてしまうのだ。

解雇通告はネットで。仕事の手段でもあり人生の趣味でも合った飛行機旅行を奪われれば、それはライアンにとってまさにリストラ同然。この映画は、こんな皮肉めいた演出がところどころで小気味良く効いている。

時をほぼ同じくしてライアンは、ほとんど音信不通状態の実の姉から妹の結婚式に手を貸すよう頼まれる。手荷物からはみ出る妹と婚約者のパネル写真は、彼が言うところの重い荷物状態だ。

独りで生きるには限界がある。妹の婚約者を慰める自分の言葉、ナタリーからの叱責、恋人アレックスのもう一つの顔。立て続けに降りかかる出来事に彼は自分の行き方を見直さざるを得なくなる。

そんな彼がたどり着く着地点なのだが、これがまた何とも苦いのだ。

「なんだ、もっと喜ぶと思ったのに」。

上司に言われ再び「マイホーム」の空港に着く彼の前に現れるのは巨大な行き先表示ボード。見上げるライアンの表情がこの映画のすべてを語る。

愛があるけど甘いだけでは終わらない。矛盾や皮肉に満ちた世界をさらっと語ってしまうあたり、やっぱりJ.ライトマンって巧いなと感じる。

配役も良かった。スマートなビジネスマンと来たらG.クルーニーほど適役はいない。解雇される側をほだす説得力に満ちた眼力も完璧だ。

大人の関係を愉しむアレックスと賢いながら青臭さ全開のナタリーもうまくハマっている。

ミスキャストといえば、ライアンが忠誠を誓っていたのがAmerican Airlinesだったことくらいだろうか。一時期プラチナ会員までいったけど、アテンダントに太ったおばちゃんが多いなどあまりいい印象はないからね。

(85点)
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