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「スパイダーマン:アクロスザスパイダーバース」

2023年07月08日 09時31分20秒 | 映画(2023)
これは"Shoot(ヤバい)"。


幾度もリブートされてきたスパイダーマンという素材を、既視感を感じない斬新なアニメ映像で作り上げた「スパイダーマン:スパイダーバース」から5年。続篇でありながら、前作とは違うアプローチで再び驚かせてくれた。

本作の何がすごいと言えば、映画を言い表すための言葉がいくつも浮かんでくることにある。

もちろん前作から強調されていたアメコミ風の画調のポップさは健在な上に、パワーアップしたマルチバースの世界、より深く掘り下げられるスパイダーマンの避けられない運命、異空間を超えて展開されるスケールの大きいスパイダーマンとグウェンの関係、場面ごとにクール、カラフル、スリル、ハートフルとまったく異なる位相が矢継ぎ早に訪れる。

そして、前作で若干の引っ掛かりであった、なぜマイケル・モラレスという有色人種が主人公なのか、安易なポリティカルコレクトネスの産物ではないのかというもやもやに対して、本作はがっちりと辻褄を合わせてくる。彼がスパイダーマンとなったことから生じたあるべき世界とのズレは、前篇である本作のクライマックスにすべてのスパイダーバースを巻き込む大きなうねりへと成長する。

最近のMCU作品に物足りなさを感じるのはマルチバースの設定によるものと思う節もあったが、本作をみる限りそれは間違っていることが分かった。本作のマルチバースは複雑ではあるが整然と整理されて飲み込めるものになっている。特に、スパイダーのウェブ(蜘蛛の糸)の比喩で世界のつながりを表現する場面を見ると、マルチバースの設定が必然であるとも思えてくる。

異世界のスパイダーマンもことごとくユニークである。インド系のスパイダーマンが活躍するのは時代とも言えるが、ほかにもパンク系のホービーであったり、マルチバースを束ねるリーダー格のミゲル・オハラであったり、もちろん元祖スパイダーマンでありマイケル・モラレスの師匠でもあるピーター・パーカーも健在だ。これだけいれば取っ散らかりそうなところを、前篇だけでもそれぞれに見せ場を作れている点も驚きである。

設定、ドラマと来て、やはり戻ってくるのは映像の斬新さである。マルチバースとアニメの相性の良さをことごとく実感する(そしてその逆、実写とは相性がいまいちであることも)とともに、アニメだからこそ映えるのが今回のヴィランであるスポットである。

冒頭ほどなくしてマイケル・モラレスの世界にふっと現れて、コミカルに動き回る彼がすべてのマルチバースの脅威へと進化する。出自もアメコミのヴィランの王道であり、後篇でどう絡んでいくのか今から期待である。

そして後篇といえば、ヴィランとの闘いだけではなく、世界の秩序を維持しようとするミゲル・オハラとのスパイダーバース的シビルウォーともいえる争いや、世界のズレから起きた異世界のマイケル・モラレスとの関係と、複層化した物語をどう収拾していくのか、これまでと同様に、こちらが思いもよらない展開で驚かせてくれることに期待している。

(90点)
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