まさかの青春群像劇。
風間くんの誘いで、私立の進学校である「天下統一カスカベ学園」に一週間の体験入学をすることになったしんのすけたち。勉強だけではなく、スポーツや芸能など幅広い分野に渡る生徒の才能を効率的に引き伸ばすプログラムを有する最先端の教育を特色とする学園の光景に、もともとエリートに憧れを持つ風間くんは瞳を輝かせる。
一方で、誘われたから来ただけでエリートだとか将来のことだとかにはまったく関心がなく、幼稚園や近所の公園にいるときと同じようにお気楽に振る舞う他の4人。どうしてぼくの気持ちが通じないのだろう。風間くんと4人の間に少しずつ溝が生まれる。
そんなときに発生した一つの事件。誰も立ち入ることのない古い時計台で風間くんがお尻をかまれ倒れているところを発見される。命に別状はないものの、目を覚ました風間くんは別人のように変わってしまっていた。
風間くんを元に戻したい4人は、体験入学の世話係である在学生・ちしおと急造の探偵クラブを結成し、事件の真相解明に乗り出す。犯人は誰か、動機は何か。そして事件の背景にはどういった事情が隠されているのか。
分野ごとに秀でた才能を育てるという設定が、そのまま登場人物のバラエティ豊かな個性に繋がり、事件の容疑者として更なる広がりを見せる。
しかし物語は事件の回収の時点で方向転換する。犯人が語った事件の動機、それは「青春の告白」だったのだ。
帰り道に改めて映画のポスターを見ると、「青春の答えはひとつじゃない。」と書いてある(青春に「ミステリー」とルビを振っているが)。主題歌であるマカロニえんぴつの「はしりがき」の歌詞はもっと直接的だ。
分からないことをぜんぶ「青春」と呼ぶことにする。ただ無駄を愛すのだ。
クライマックスで風間くんを乗っ取ったAIが青春について問いかける。「青春とは?」。
それに対して登場人物の回答が様々に返ってくる。コンプレックスや後悔など否定的なものもある。それでも共通しているのは、その愛すべき時間がそれぞれの血肉となっていること。
学園の理事長がつぶやく。徹底的に無駄を排してきたのは間違いだったのかもしれない。圧倒的な敵役がいない最近の「クレしん」らしく好感が持てる。
映画の短い尺の中で、よくここまで個性豊かなキャラクターの掘り下げができたものだ。スーパーランナーだったけど突然走れなくなったちしお、仮面を被った33代目番長など、それぞれの謎がストーリーの展開と巧く絡んでくる。
そして事件の真相とともに明らかになった彼らの個々の物語が「青春とは?」の畳みかけへ一気に流れ込み、大きな力を持って迫ってくるのだ。
よく考えれば5歳児のしんのすけたちにまだ青春も何もあったものじゃないけれど、これまで幾度となく家族や友情の物語で感動を呼んできた「クレしん」映画だからこそできる技。今回も楽しませてもらいました。
(85点)
風間くんの誘いで、私立の進学校である「天下統一カスカベ学園」に一週間の体験入学をすることになったしんのすけたち。勉強だけではなく、スポーツや芸能など幅広い分野に渡る生徒の才能を効率的に引き伸ばすプログラムを有する最先端の教育を特色とする学園の光景に、もともとエリートに憧れを持つ風間くんは瞳を輝かせる。
一方で、誘われたから来ただけでエリートだとか将来のことだとかにはまったく関心がなく、幼稚園や近所の公園にいるときと同じようにお気楽に振る舞う他の4人。どうしてぼくの気持ちが通じないのだろう。風間くんと4人の間に少しずつ溝が生まれる。
そんなときに発生した一つの事件。誰も立ち入ることのない古い時計台で風間くんがお尻をかまれ倒れているところを発見される。命に別状はないものの、目を覚ました風間くんは別人のように変わってしまっていた。
風間くんを元に戻したい4人は、体験入学の世話係である在学生・ちしおと急造の探偵クラブを結成し、事件の真相解明に乗り出す。犯人は誰か、動機は何か。そして事件の背景にはどういった事情が隠されているのか。
分野ごとに秀でた才能を育てるという設定が、そのまま登場人物のバラエティ豊かな個性に繋がり、事件の容疑者として更なる広がりを見せる。
しかし物語は事件の回収の時点で方向転換する。犯人が語った事件の動機、それは「青春の告白」だったのだ。
帰り道に改めて映画のポスターを見ると、「青春の答えはひとつじゃない。」と書いてある(青春に「ミステリー」とルビを振っているが)。主題歌であるマカロニえんぴつの「はしりがき」の歌詞はもっと直接的だ。
分からないことをぜんぶ「青春」と呼ぶことにする。ただ無駄を愛すのだ。
クライマックスで風間くんを乗っ取ったAIが青春について問いかける。「青春とは?」。
それに対して登場人物の回答が様々に返ってくる。コンプレックスや後悔など否定的なものもある。それでも共通しているのは、その愛すべき時間がそれぞれの血肉となっていること。
学園の理事長がつぶやく。徹底的に無駄を排してきたのは間違いだったのかもしれない。圧倒的な敵役がいない最近の「クレしん」らしく好感が持てる。
映画の短い尺の中で、よくここまで個性豊かなキャラクターの掘り下げができたものだ。スーパーランナーだったけど突然走れなくなったちしお、仮面を被った33代目番長など、それぞれの謎がストーリーの展開と巧く絡んでくる。
そして事件の真相とともに明らかになった彼らの個々の物語が「青春とは?」の畳みかけへ一気に流れ込み、大きな力を持って迫ってくるのだ。
よく考えれば5歳児のしんのすけたちにまだ青春も何もあったものじゃないけれど、これまで幾度となく家族や友情の物語で感動を呼んできた「クレしん」映画だからこそできる技。今回も楽しませてもらいました。
(85点)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます