きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「ドナウの娘」斎藤友佳理&木村和夫/東京バレエ団

2006年11月16日 | バレエ・ダンス


*プログラムを買っていないので、
 粗筋は舞台を見た印象のみで書いています。

第一幕
「ドナウの娘」ってことは、舞台はドイツの田舎町でしょうか。
(「フルール」ってことはフランス?)
ものすごく聞き覚えのある音楽と共に幕が上がると
なんだか、「ジゼル」の一幕みたいな風景が広がっています。
川辺で寝ている女性がフルールでしょうか。
若い女性が戸外でお昼寝とは不用心ですね。
でも大丈夫。
川の上流からどんぶらこと、手をヒラヒラさせながら
女性が流れてきました。
いかにも手動の板を引いた上でポーズを取っているなあ、
と感じさせる川の流れです。
どうも、この方、ドナウの女王のようです。
(女王っても、♪青きドナウの~ じゃないYO!)
ドナウといえば、川。
なのに髪飾りは赤い珊瑚に見えます。
淡水珊瑚でしょうか。(なんじゃそりゃ)
どうやら女王様はフルールと深い絆があるようで
寝ている彼女に祝福を与えます。
フルールがお昼寝を終えると、恋人のルドルフの登場です。
ああ、みんな木村さんのヒゲをチェックしているんだろうなあ、
と思いつつ、私もオペラグラスで凝視です。
今日も濃いです。
頬は痩け気味。襟足が短くなってるような気がします。残念。
フルールとルドルフはラブラブ。
なんちゅうか、アルブレヒトが現れず、
なおかつジゼルが健康だったら
ヒラリオンとはこんな雰囲気だったんだろうなあ、と思わせる絵でした。
まあ、仲の良いところを見せていただいて。
お母さんに恋仲を反対されても深刻じゃなくって。
いつのまにか村人達も加わって踊っていて。
そんな時、お城から伝令官ご一行様が。
黒っぽい服にヒゲとなれば悪役だと相場は決まっているのに、
なぜだか爽やかな平野伝令官ですよ。
お付きの男性が幕を広げ、男爵様の命令を告げます。
曰く
「男爵は嫁を捜している。我をと思う若い娘は城に来い」
結婚相手に求めるのは家柄ではなく美貌なのでしょうか。
平民でも可、というのは、進歩的な平等思想なのか、ただの変人か。
フルールは恋人がいても、お城には行きたいようです。
「行ーきーたーいーーーーー ぜえっっったい 行きたいーーー」
ちょっと我が儘です。
ルドルフは面白くありません。
だって、自分と結婚する、と言った女性が
見合いの場に行くんですもんね。
しかも、男爵はルドルフが仕えているご主人様なのです。
ご主人様のちょっと変わったところを知っている彼は
男爵がフルールを選ぶんじゃないか、とっても心配。
だって、君は
可愛いし!

それなら、醜く、脚が悪く、おつむの弱い人の振りをするわ。
そうしたら絶対選ばれないから!
って、現代にこんな設定でいいんでしょうか、ってなことを言い出します。
まあ、舞台は現代じゃないからOKみたいです。

場所は変わり、男爵邸。
豪華です
なんか、悪魔とそのご一行が乗り込んできた某国の宮殿より豪華ですよ。
羨ましいですね。
若い男爵様は、衣装に比べると顔立ちはさっぱり。
踊れ歌え騒げ!と、貴族・村人に関わらず大騒ぎです。
男爵の見ている前では醜く装おうフルール。
男爵が伝令官と二人でどっかにいっちゃうと
仕事中のルドルフといちゃいちゃします。
脳天気だなあ。
しかし、男爵の目は鋭く、フルールが美人なのがバレちゃって
フルールを花嫁に指定します。
えええええっっっっーーーーーー!
私には恋人がーーーーっっっっっ!
断るフルール。
さらに、ルドルフが、彼女は私の恋人と告げますが
逆に反逆の罪で捕らわれそうになります。
絶望したフルールはドナウ川に身を投げます。
それを見て錯乱したルドルフは城外へ逃げます。


第二幕
城外で倒れているルドルフ。
そこへ現れたのは白い衣装に着替えたフルール。
どうやら彼女はドナウ川の精霊になっちゃったようです。
束の間、一緒にいましたが、男爵一行が現れたので
フルールは川へ消えます。
ルドルフの錯乱再び。
なんかーーー、男爵様はーーー、思い直したように見えるのよ。
そもそも、自分の花嫁になりたい娘は城に来いって命令を出して
それに応じて来るってことは、花嫁になりたいってことだろう。
(舞台の様子から、城へ行くのは強制ではなさそうだわよ)
それなのに、いやだーーー、だの、恋人がいるのーー、とか
男爵にしてみれば、なんでそんなヤツが来るかいなーーー、と思うわさ。
その時は怒ったけど(怒って当然だわな)
死人が出ちゃったんで、反省したと思うのよ。
ルドルフも許しちゃおうかなーー、て風情なのよ。
でもルドルフは錯乱中。
伝令官の腰に下げた剣を奪い取り、男爵に襲いかかっちゃうのだよ。
しかし、失敗。
ついには彼も川へ身を投げます。
横にゴロンと身体を倒すように・・・・・・・。
もっと段差のあるところで飛び込ませてあげて・・・。

舞台は変わり、ドナウ川の底。
ルドルフが舞台天井からゴロゴロ落ちてきます。
どういう仕掛けなんだろう。
そこでルドルフはフルールと再会。
フルールはもともと水の精なので
ドナウの女王の庇護を受けていたのです。
再会を喜ぶ二人。
さらにベールを被った水の精の中からフルールを見つけられたら
二人を地上に帰してあげよう、と女王様は言いました。
ルドルフがフルールを見分ける方法。。。それは。。。。
座席が端の方なので見えませんでした。
残念。
(この辺でだいぶ飽きてきたので、強いて見ようとは思わなかったし)
まあ、めでたく見分けて、水面に二人が登っていくところで幕。
地上に戻って・・・が、あると思い込んでいたので
突然の幕切れに、ちょっとビックリ。


思っていたより駄作ではなかった。
音楽がアダンということもあり、
かなりかなり「ジゼル」を思い出した。
それでも、「ジゼル」が残り、
こちらが消えたのは、わかる気がする。
全般的に印象が薄いのよ。
大駄作の方が印象に残るのよねえ。
凡作に比べれば駄作の方がマシ、とは、
別な方面でも言ってるわなあ。
踊り自体は複雑な部分もあるけれど
これ見よがしな技がないので、見所は少ない。
一幕で話を動かし、二幕は白い世界を楽しむ。
娯楽の少ない時代なら、この白い世界だけで充分なんだろうけど
現代だと物足りないなあ。

話が平坦なので、キャラクターに頼るしかない。
ユカリューシャは、さすがに「現代のタリオーニ」なのだ。
ラコット版「ラ・シル」を踊り慣れていることもあるのでしょうが
初演とは思えないくらい、踊りが自然でした。
もう、10年ぐらい、この作品を踊っているような自然さ。
脚の捌きも軽やかで、演技も可愛い。
快活な村娘も、水の精も、よく似合っている。
ロマンチック・チュチュが似合うんだよなあ。
木村さんは、それほどリキみがなく
まあ、良いかな。
踊る部分は「白鳥」の王子より多いし。
足の先まで綺麗だし。
うちひしがれてヨロヨロしているところは良かったよ。美味しかった!
もっとねえ、髪がねえ、長いといいんだけどねえ、
それだと伝令官に被っちゃうんだろうなあ。
ちぇっ!
男爵様は中島君。
踊りはいいけど、「役」を演じるのは、まだまだかなあ。
パ・ド・サンクのお姉様達に混じりすぎ。
キャラ的にはもっと濃い方が芝居に流れ的にはいいんじゃないかなあ。
初演ファーストキャストってことは、
ラコットさんの男爵のイメージは中島君のような
さっぱりさんなんだろうけどさ。
でも、話の一角を担うには、まだ弱いな。
タカハナに割り込むタニみたいなもんで。
ルドルフ・男爵のラインって、オサアサかタニトムぐらいじゃないと
インパクトが無さ過ぎるわ。
井脇さんの女王様は、「ジゼル」と違って陽性。
なんとなく肝っ玉母さんだわ。
ソリストでは、小出さんの可愛らしさと
長谷川さんの軽やかさが印象に残りました。
男性群舞で目立っていたのは高橋さんかなあ。


まあ、なんちゅうか。
巨大プロジェクトだったんだろうけど。
これに金をかけるなら、「白鳥」や「くるみ」の美術を
なんとかして欲しかったなあ。
とりあえず、男爵邸のセットは
「白鳥」の3幕に使いましょう。


教訓
歴史から消えるには理由がある
予想はしていたんだけどね。
このテの復刻って、本当は作られた国の国立劇場あたりで
やるべきもんじゃないのかな?
興行的にペイするかどうかの部分に関係なく、
研究として作られるべきじゃないかなあ。
国立劇場の歌舞伎にも、そんなのがあったような。


カーテンコールで。
前列は、上手から、
サルモンさん(たぶん)、ラコット氏、ユカリューシャ、木村さん、ソトニコフさん
だったのですが、NBSからの花束は3つ。
それが、ユカリューシャ、ラコット氏、ソトニコフさんへ。
ラコット氏は自分が貰った花束を木村さんに渡し、木村さんはサルモンさんへ。
リレーのバトンのようでした。
花束を渡す人に、もっとしっかり伝達しておけ、と思いました。
ソトニコフさんは、いつもの通り
何本か花を抜き出しオーケストラへ。
金管が時々ふらついたけど、バレフェスほどでは無かったよ。



振付・改訂:ピエール・ラコット(フィリッポ・タリオーニの作品に基づく)
リハーサル指揮:アンヌ・サルモン
音楽:アドルフ・アダン

<主な配役>
フルール・デ・シャン(ドナウの娘):斎藤友佳理
ルドルフ:木村和夫

ドナウの女王:井脇幸江
男爵:中島周
母親:橘静子
伝令官:平野玲
パ・ド・サンク(女性):小出領子、高村順子、長谷川智佳子、西村真由美
パ・ド・サンク(男性):中島周
フルール・デ・シャンの友人:乾友子、高木綾、奈良春夏、吉川留衣

指揮:アレクサンドル・ソトニコフ
演奏:東京シティ・フィル・ハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ学校
コメント (2)
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