本日は幕開きから不幸の予感がそこはかとなく漂い、
「死」は唐突ではなく帰結。
踊りも芝居も違うのに、
私の好きなルジ主演「ジゼル」の物語を思い出した。
私は1幕までなら今日のペアが一番好みかも。
意外な展開!
足立さんは落ち着いた踊り。
命の煌めきを恋に込めているので、
恋が消えると命も消えるかんじ。
芝居がわかりやすく、技術面も概ね良いのだけど、
ソロの片足横移動がなかった。難しいのかなあ。
宮川くんは高貴さより真面目さが強く出てる。
真面目ゆえに退路を失う。
ウィルフリードとの距離が近い。
2幕のジゼルのヴァリ、
全部ジャンプではなく、
前半は片足交互上げの方。
私が好きな方。
宮川さんのジャンプはアントルシャ。
足立さんは精霊らしさが足りないかもだけど、
1幕の芝居と地続きなジゼルで感情の流れは納得。
宮川さんはルジのような死相はなく、
生き続けて欲しいというジゼルの願いを受け取った。
1幕では死の影が2人を覆っていたのに、
2幕は幽玄の世界でも消えない生命力を感じ、
なかなか面白いパターンだった。
大塚ウィルフリードはアルブレヒトの感情が激しくなると、
止めるために呼応したように激しくなる。
大塚さん、秋元さんとの時とは違う芝居。
すごい。
加藤バチルドは3人の中で一番高貴。
出は吉岡さんみたいな貴族オーラを纏っていた。
ジゼルに近いところに来るけど、ジゼルとは違う世界の人。
安村公爵、威厳あり。
岡崎ヒラリオン、今回はあんまりヤバい感はない、かな。
アルブレヒトも激しく、ヒラリオンも激しい。
政本ミルタは幽玄で、
伝田ミルタのようなはっきりとした怖さがないぶん、
底知れぬ不気味さがあった。
3日とも違う世界で、全部見て良かった!
今回はオケもすごく良かった。
緊張感のある音だった。
2幕でのリフトから着地、の着地の音が
3組とも全部ドンピシャだった。
ドンピシャだけど、タクトが振られたからジャン!ではなく、
リフト中に続く(引っ張る)音がとても自然で美しかった。
私の語彙ではこんな説明だけど、
聞いた人はわかるはず!
もともとジゼルは音が裏返る場所はないけれど、
今回はいつもにも増して、
オケの中での音のまとまりが良く、
オケの音と舞台の踊りとの一体感があった。
たまに、弦の音がバラバラなことがあるよね、
指揮者の責だけではないレベルで。
今回は舞台上と密だった。
古典全幕バレエのなにが面白いかって、
様式美の中に、いかに演者の個性を入れ込むか、
ギリギリのせめぎ合いがあるところだよね。
基本は同じなのに、演者の組み合わせで変わる。
逸脱したら違う作品になる。
【配役】
ジゼル:足立真里亜
アルブレヒト:宮川新大
ヒラリオン:岡崎隼也
バチルド姫:加藤くるみ
公爵:安村圭太
ウィルフリード:大塚 卓
ジゼルの母:奈良春夏
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):
金子仁美-井福俊太郎、安西くるみ-後藤健太朗、
涌田美紀-鳥海 創、工 桃子-樋口祐輝
ジゼルの友人(パ・ド・シス):
二瓶加奈子、三雲友里加、榊優美枝、長岡佑奈、平木菜子、富田紗永
ミルタ:政本絵美
ドゥ・ウィリ:加藤くるみ、榊優美枝
指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
~上演時間~
第1幕 14:00~15:00
休憩 20分
第2幕 15:20~16:15