きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

第11回演劇フォーラム『宝塚歌劇と海外文学』

2017年09月27日 | 宝塚(専科、スケジュール、雑談等)


司会進行は元月組、そして初代宙組組長の大峯麻友さん。
日本演劇協会専務理事の織田紘二氏より開会のご挨拶。

第一部は「海外文学作品と日本の近代演劇」の視点から
3人の講演orトーク。

最初は演劇評論家の大笹吉雄氏から
「日本演劇における海外文学の舞台化の歴史と影響について」のお話。

開国し、明治以降に海外の文学作品が日本に入ってきた。
窓口は4つ。
シェイクスピア、イプセン、フランス文学、ロシア文学。

1つはシェイクスピア。
日本で最初にシェイクスピアが上演されたのは
明治18年、大阪戎座での「ヴェニスの商人」、
歌舞伎の一座による公演で、原作通りではなく
北海道の漁師の話にした翻案版。
当時の日本人には
人肉裁判になる趣向が面白かったとのこと。
明治36年に川上音二郎による「オセロ」が上演されたが
こちらも話の舞台を台湾に置き換えた翻案版。
この作品で川上貞奴がデビュー。
久しく日本にいなかった女優が舞台に立った。
翻訳版として初上演されたのは
明治44年文芸協会の「ハムレット」で
松井須磨子がオフィーリアを演じた。
俳優養成学校の第一期生で
素人から男女共学で学んだ卒業生が
プロとして舞台に立ったという点でもエポックメーキング。
それ以来、シェイクスピアは日本に土着した。

イプセンはノルウェーの作家。
明治42年、自由劇場が旗揚げ。
洋行帰りの森鴎外が西洋の戯曲(脚本)を持ち帰り、翻訳。
明治44年「人形の家」で松井須磨子は女優として飛躍した。
内容については賛否両論で
後の平塚らいちょうの女性解放運動にも繋がりもし、
「女子教育に悪い」と論もあった。

芸術座においては大正3年、
トルストイの「復活」を上演。
劇中でカチューシャ役の松井須磨子が歌う
「カチューシャの唄」は中山晋平作曲でレコードは大ヒット。
(歌が会場内に流れる)
女性が洋装で舞台に立ち洋楽を歌うのはこの時が初めて。

フランス文学は、ユゴーの作品が日本に入ってきた。
明治の造語「社会」「個人」等が翻訳に使われ
新しい概念が日本に広まった。
「社会を変えないと」「貧しさから抜け出すには」
その考えは大正デモクラシーの背骨になった。
ロマン・ロランの民衆文学は民衆の芸術でもある。
「モン・パリ」もフランス由来。
それが今日の「ベルサイユのばら」への流れになっている。


続いて植田紳爾先生が登場。
大峯さんとのトーク形式でお話。
宝塚における海外文学作品は
1918年「クレオパトラ」
1925年「トラビアタ」
1946年「カルメン」
など。
白井先生はパリに留学したが、
「カルメン」を作った堀 正旗先生はドイツへ留学。
1949年「ハムレット」は雪、花で続演。
客席で「ハムレット」を見た植田先生は
(「ハムレット」の主演は春日野先生で
 植田先生は「石井さん」と言ってました)
戦後間もないこの時期に豪華な舞台に感動。
その後、宝塚に入団した植田先生。
1957年「赤と黒」は
脚本は菊田一夫先生で、演出は高木史朗先生。
菊田先生の脚本が遅くまで仕上がらなかった上に、
脚本を読んだ高木先生が「こんなのできない!!」と言い、
植田先生を含む当時の若手演出家4人が劇団に呼び出され
「書き直せ!」と言われ、分担し、改訂。
初日は主演の寿美花代(植田先生は松平さん呼び)をはじめ
役者に台詞が入っていない状態で開幕。
役者は袖に入っても、次に上手から出るか
下手から出るかもわからない。
台詞をいたるところに貼り、
改訂にあたった脚本家4人がプロンプターとして
黒子衣装でセットの隙間等に入った。
植田先生はクローゼットの中で
クローゼットを開ける芝居の時は
開けさせまいと反抗した。

その後の宝塚の海外文学作品。
1961年「三銃士」
1962年「カチューシャ物語」など。
「カチューシャ物語」は脚色し、
原作にない悪役を春日野先生が主演と2役演じた。
こちらも脚本の仕上がりが遅く
舞台セットも無しで稽古した。

1977年「風と共に去りぬ」について。
当時の日本は著作権については緩かったが
こちらは大作なので権利関係はきっちり決められていた。
原作に無い役はダメ、などの制約が多かった。
契約書を頭に入れていないと脚本が書けない。
師匠である北条秀司先生は
「原作にオリジナルを入れるのは堕落」と
つねづね言っていたので
原作に恥ずかしくないように作った。

「風と共に去りぬ」については
内海先生が「やりたい」と言っていたが
その時はロイヤリティ的に無理だった。
「ベルサイユのばら」が大ヒットした次の作品には
スケール的にもこれしかない、と思い
小林公平氏に相談したところ、
4ヶ月~半年後に「あれ、できますよ」と言われた。
怖くなった。
ベルばらの後なので失敗できないと思った。

ここで大峯さんから「髭」についての質問。
お答えは、
髭を付けるか迷った。
付けなくても良かったが、
やってダメなら仕方が無い。
やらずに「できない」はダメ。
「宝塚では無理」とは言われたくない。
また、髭を付けると口の動かし方が変わってくる。
主演の榛名さんの熱心な研究もあり、実現した。
大劇場では賛否両論で
「髭が箱根を越えられるか(=東上公演でもやるのか)」
など言われたり、先輩にも怒られた。

1978年「誰がために鐘は鳴る」
1985年「二都物語」(大峯さん、研3で参加)
1988年「戦争と平和」
「戦争と平和」はトルストイ研究家が
「宝塚はお姫様が出てくる芝居だけだと思っていたが
 トルストイの精神をきっちり伝えていた」
と寄稿してくれて嬉しかった。
原作物は作者(脚本・演出)の度量がわかってしまう。

植田先生は入団60年だそうです。


3人目は小池修一郎先生。
1977年入団、1986年「ヴァレンチノ」でデビュー。
エリザ再演について。
初演は一路さんの退団に合わせて。
それ以降も出演者に合わせて。
料理に例えると(自分は料理はしないけど)
レシピが同じでも、鯛か平目か、
具材が違えば、仕上がりの味が違う。
同じパターンでも出演者によって変わる。
宝塚はトートありき。死とエリザベートの関係。
東宝はエリザベートに死が絡む。
視点が違う。
ガラ公演は、出演者が退団後に培ってきたもので深みが出る。

現在上演中の「三銃士」は
たまきちへの宛て書き。
明朗快活。
宛て書きをするときは前の作品と重ならないように。
タイミングもある。
台詞は役にも役者にも合わせる。
声が聞こえてくるような役者だと書きやすい。

脚本は文学の世界。
演出は文字を立体化する作業。
脚本だけなら膨らませることができる。(いくらでも深く書ける)
演出家は工事現場の作業管理。
工期、納期を常に考えなければならず
間引く、整理する必要もある。

壁ドンは「珠城がやったら面白いかな」

今回の「三銃士」はリアリティを求めすぎるとまとまらない。

ラップは「(作品が?)ある意味ファンタジーなので」

三銃士の衣装はオーソドックスな厚手のポンチョみたいのを考えていたが、
「かっこよくないから」と有村先生に却下された。

セットの動かし方は
脚本を書いているときに頭に浮かんでくる。

今回の月組は例の少ないパターン。
最近の演出なら星組はトップがほぼ最年長。
月組はトップより先輩が三銃士に入っているが
パワーバランスが良い。
稽古の時も、珠城が気を遣い
美弥も珠城を立てている。
それが自然にできている。
チームなので、役にも反映されている。

「ポーの一族」は原作連載当時に
生まれていない人も客席にいる。
(のを気をつけて書く?)


第二部は珠城、美弥、愛希が登場。
司会進行は引き続き大峯さん。

他でも書いている人が多いと思うので
こちらでは簡単に。

衣装の話。
主にデニム。
ちゃぴの黄金の服もデニム。
(それをちゃぴはプログラムで知った。
 知ってからよく人に言った。)
プロローグなどの三銃士の衣装は軽い。
ポスターの衣装は革が入っているので重い。

帽子は深く被ると顔が見えなくなるので
顔を上げるのを意識。

マントは動きに慣れるため
稽古から着用。

衣装はデザイン画を見る。

手袋は暑い。
衣装も通気性がなく、カツラもあるので
特に大劇場は暑かった。
「衣装と季節感が違う」
暑さ対策は、休憩時に首を冷やす。


ちゃぴ。
男役は2年とちょっと。
娘役の方が長い。
男役時代も子役が多く
男役として声を出したことはあまりない。
今回の男役の低い声は出すときに緊張した。


ちゃぴに対し、美弥ちゃん。
ちゃぴの芝居に感動し、
星組時代に声を掛けたことがある。
「ダンシングヒーロー」のポスター撮りに通りかかり
(こんな可愛い子が)頑張って男役をやっているな、
と思った記憶がある。


大峯さん。
ルイ十六世を演じたことがある。
ちゃぴはお祖父様?お祖母様?


「世紀の色男」役に、美弥ちゃん。
精一杯かっこつけてます。
小池作品で色男役は多かったけど、
ついにここまで。
マント捌き(マントの先)や
髪の翻り方を意識しています。
三銃士の映画やドラマを見て
「アラミスは西洋の余裕のある色男」


立ち回りについて、珠城&美弥。
数が多いから覚えるのが大変。
すごく練習した。
特に酒場の場面。
最初はカウントだけで練習。
音を入れたらしっくりきた。
すごく計算されている。

レイピアの持ち手が各々違うのは
先生が宛てた。


ラップについて美弥ちゃん。
びっくりした。衝撃を隠せなかった。


壁ドンについて、ちゃぴ。
人生でしていただけるとは思わなかった。
一生分してもらっている。
音が何パターンかあるので
合わせている。


自分ではなく、人の好きな場面。
愛希 → 美弥
酒場でアラミスがルイーズをかばう場面。
サラッとかばうのがアラミスの余裕。

美弥 → 珠城
マスクバルで、ダルタニアンとルイ(ルイーズ)が
二人にしかわかならい会話をしているところ。
(キュンキュンする)

珠城 → 愛希
「これ以上、嘘はつけない」
自分の信念、ルイーズの意思をまわりに伝えるところ。

珠城 → 美弥
立ち回りでアラミスと背中合わせで戦っているとき
「恋人を取り戻せ」と言われるところ。

たまきちは限りなく黒に近い灰色のパンツスーツ、
美弥ちゃんは黒地に白い点々の上着、白インナー、黒パンツだっけか。
ちゃぴはピンクで胸元にスパン?が入っているノースリーブのワンピース。


盛りだくさんでとても楽しかったです。
コメント
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