きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「アンナ・カレーニナ」

2006年02月25日 | 宝塚・劇団四季以外の舞台(落語含む)
 重たく暗いロシア文学をミュージカル化。チラシを見ると脚本・音楽は米国人なのかな?翻訳は小池先生で演出は鈴木裕美さん。その脚本が描いた部分なのか、小池先生or鈴木さんが作った部分なのかが不明なんだけど、シリアスなドラマがメインなのに、明るいコメディーが挿入されていて、あまりにも本編とそぐわなくて大変違和感がありました。そのコメディーが、どうにも寒い。米国人はこれくらいのギャグを入れないと、ロシア文学を受け入れられないのか?それとも小池先生or鈴木さんの責任なのか?どちらかはわからないけれど、これだけのメンツを集めたのなら、ミュージカルではなく、ストリート・プレイで見たかったなあ。なんで、あんなヘンなギャグを入れるのかなあ。見ていて腹が立ってきましたよ。音楽はあんまり印象に残らない。舞台美術は、回り舞台はうまく使って渋派手な色合いは良いんだけど、ちょっとロシアっぽさが薄いかなあ。

 一路さんは、大帝国の皇后陛下より、こういう普通の人妻の方が似合うかも。常識人の代名詞だったのに、若い将校に惹かれ、駆け落ちし、でも、自分の望む物が思うように手に入らなくて自殺する。その、我が儘で自分勝手振りが、ある意味良かったです。エリザベートだと「死」に向かう理由が見えないのですが、アンナだと、彼女自身の望む物、というか「欲」が卑近な物なので、よくわかります。その程度で死ぬのか、とか、一つぐらいは諦めろとか、冷静に考えれば思うのだけど、アンナは、恋に狂ってからは冷静ではなかったから。だから、自分の望む物が手に入らなければ死ぬしかなかったんだなあ、と。彼女は欲が深いですよね。息子の親権も欲しい、若い男の愛も欲しい、地位の高い夫も欲しい、恋に身を委ねたい、周りから祝福された結婚をしたい、その全てを手に入れたい。息子については、自分が彼を愛しているのが最重要であって、彼が誰を愛しているのか、夫も息子を愛しているか、そんなことは考えない。でも、恋に落ちる前は、当たり前に手にしていた物を、そのまま手に入れたいだけなんだよね。しかし、「息子からの尊敬」を得られないと知って死を選ぶ。うん。なんか、それはわかる気がする。
 井上君は若すぎるかなあ、と思ったけど、案外バランスは良かった。若いから一直線なんだよなあ。でも、一応(アンナのために)世間体を繕おうとするし、兄や母などから暮らしに必要な動産の分割の許可を得るなど、結構現実的で堅実な男でした。恋に浮かれているだけじゃないんだよなあ。だからこそ、アンナが追いつめられたのかもね。軍服がもうちょっと似合えばなあ。それ以外は良いですわい。
 山路さんのカレーニンは良かったよ。妻も息子も愛している。表現が不器用なだけ。息子の親権も、アンナを罰するためだと言っているけれど、実際は彼が息子を愛していたからだろうなあ。静かな演技で、少ない台詞ながらも、いろいろな感情が伝わってきました。
 問題はレヴィン&キティなんだよなあ。役者は悪くないと思うんですよ。ただねえ・・・。キティの新谷さん。こういうキティを作るのなら、篠原ともえちゃんを使えばいいのに。なんか、すごい不自然よ、キティの演技の方向が。なんで、こんな女性にしたんだろう。なんでこんな寒いギャグなんだろう。見ていてとても辛かった。歌はかなりダメだったなあ。
私ってば
タニオカくんや
カノチカちゃんを
愛していたんだ!

と、確信しました。彼女たちの歌は笑ったり脱力することはあっても、腹は立たなかったもんなあ。新谷さんは、彼女たち並みの歌唱力でした。オーディションをやったんでしょ?あのキャラが必要だったんだろうけどさあ、なんかねえ、、、。彼女が悪いのではなく、キャスティングした方が悪いと思うんだけどね。
 キティに求婚するレヴィンは葛山さん。純朴な青年。というと聞こえはいいけど、田舎のダサい青年というか。こちらもギャグ担当。うーーーー、なんで、こういうキャラにしたのよ。脚本家と演出家を恨んじゃうわ。少々長めの髪を末広がりに。ほんのり茶髪。いろいろ着込む衣装だったこともありちょっと太く見えたわ。あ、あれだ、思い出した。「仮面のロマネスク」のダンスニー様系統の人だわね。くそ寒いギャグは腹が立つぐらいだったけど、裏を返せば、それだけ「演出家の望む演技」を的確にしていたということよね。歌は、まあまあ良かった。合わない音域は厳しいけれど、8割方は声も伸びて聴き取りやすかった。このまま東宝系の舞台に出てくれないかなあ。背も高いし、使えると思うんだけど。

 え~、とにかく。なんの意味もないコメディー部分(黒板の暗号解き等)が、ロシアの雪より寒い作品でした。それこそ、このメンバーで、太田先生が作り直してくれないかなあ。


*役者・スタッフのお名前を一部誤って書いていましたので
 訂正しました。(2/27)
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