きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「カルメン」湯川麻美子&ガリムーリン/新国立劇場バレエ団

2005年03月26日 | バレエ・ダンス
 台本が児玉っち、って知っているせいか、イマイチかな~、と感じるところが全て「児玉っちだし~」と思っちゃったりして。半端にドリームな場面を入れたり、オチが弱かったし。この最後って「ショーが付く」のを前提にしているんじゃない?と思うくらいあっさりめな気がする。なんで児玉っちなんだろう。こういうネタは齋藤君の方がウマイんだけどなあ。「起・承・転・結」じゃなくて、「起・承・箸休め・結」な筋立て。でも齋藤君なら「起・転・転・結」になるか。純粋に踊りの場面は面白くて、心理描写(話を掘り下げる)の場面はイマイチなカンジでした。
 1幕は、絞首刑(←カルメン殺害の罪?)直前のホセの回想から始まります。カルメンは白いドレスで登場。おお、愛しのカルメン~的な回想から二人の出会いへ。逮捕したカルメンを逃がして投獄されてミカエラが会いに来て脱走して、カルメンと再会してスニーガを殺す。2幕はエスカミリオ登場。そいでカルメンの幻想。私だって好きでこんなになったんじゃないよ。って、これじゃ風共のベルだ。なんやかんやがあって、カルメンがエスカミリオの元に行きそうになったんでホセが彼女を刺す。彼女の遺骸を、誰にも触れさせず舞台奥へ引きずって幕。1幕はそれなりに緊迫感があって良かったです。誘惑する女、堕ちていく男、実に私好みでございます。でも2幕が少々退屈。カルメンが「生まれたときからワルじゃなかったのよ」的な言い訳はいらん。悪女の何処が悪い!その説明と、若手による「牛」がちょっと長くて中だるみ。オチも一瞬ホセの激情に飲まれたけど、その後が尻つぼみでした。それが石井さんの演出によるものなのか、児玉っちの脚本のせいなのかはわからんですが。カルメンとホセ、のように、1体1の踊りはなかなか迫力があって良かったのですが、群舞の使い方が、ちょっと単調なときがありました。総踊りなんかは、難しくはあるんだろうけど、ちょっと単純な動き。酒場の群衆、のように、具体的な役割がある時は良いのですが、「心情」みたいな抽象的な場面になるとイマイチ伝わってこない。踊る方もまだ理解しきっていないかも、と思うときがあったり。「牛」の場面は必要だったのかな?たんに「若手の見せ場」を作っただけなような気もする。
 湯川さんのカルメンは、もう色っぽくって。脚とかスカート捌きとかが、もう、たまりませんです。彼女は「振付」を「振付」としか見せられないダンサーと違って、ちゃんと「自分の『中』で消化」して「言葉」にできる人なんですよね。無駄な動きなんて無い。動きがちゃんと意味のある「言葉」になっている。いいよねえ。今まで見たいろんなカルメンの中で、彼女が一番私のカルメンのイメージに近かったです。誘蛾灯なんだよね。ガリムーリンは、ホセと言うにはちょいとトシかも知れないけれど、地味で真面目だけが取り柄の平凡な男が、カルメンと知り合ったことにより、今まで自分でも感じたこともなかった「激情」が迸り、全てを失う。その姿が非常に合っていました。もしかしたら私が見られる彼の「新作」はこれが最後かも知れない。それが、このホセで良かった。カルメンの魅力に抗うことができず惹かれていく。その、自分の理性ではどうにも止められない~~、って姿がね、いいのよ。パッと見には地味で真面目な男。その彼の、自分自身を焦がすような、炎のような感情が劇場中に充満していました。
 エスカミリオのトレウバエフは、う~ん、「ナイナイの岡村」みたいだった。カルメンにホセを捨てさせるほどの「華」が無いなあ。花形スターのハズなのに。小柄なせいもあるけど、あんまり「カッコイイ」系じゃないような。闘牛士の衣装があまり似合っていない。ワタル君の方が雄々しかったなあ。スニーガの市川透さんは
イイッ!
すごく良かった。権力を笠に着たエロエロ上司。高圧的でイヤラシくってさ。カルメンを触る手つきがよろしおます。ミカエラの川村さんは清楚で良かったんだけど。ホセに組み伏せられたときなんかがとても良かったんだけど。脚本的にもうちょっと描き込んであげて欲しかったなあ。群舞は、良いときと悪いときがある。ハッキリした役割がある時はいいんだけどね。
 私はZ席1500円だったんで、ナマのオケだけでもモトが取れたし、主役ペアは好きだったので堪能できて大満足なんですが、これが好きなダンサー無しで7350円だったら、どう思ったかな。柴田先生の「激情」の方が面白いかもよ。もう一度違うキャストで見たいかと言われたらビミョーですね。
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