語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】金正恩の思考回路、なぜ水爆か ~役立つ教養①~

2018年05月18日 | ●佐藤優
 (1)2016年1月6日、北朝鮮が「水爆実験に成功した」と発表した。
 こういう時、まず考えないといけないのは「先例があるかどうか」だ。
 「地下水爆実験」なんて、聞いたことがないはずだ。水爆は普通の核爆弾より爆発の規模がはるかに大きい。実際に爆発させれば、山が吹き飛んでしまうような事態になる。だから「地下水爆実験」なんてあり得ない。
 仮に北朝鮮が水爆実験を成功させたと仮定して、「日本に対する直接的な脅威が増した」と本当に言えるか。
 水爆は小型化が難しい兵器だ。米国やロシアは小型化に成功し、ミサイルの弾頭に積めるサイズの水爆を持っているが、非常に高い技術がいる。原爆のような核分裂兵器と、水爆のような核融合兵器には、相当な技術的ギャップがあるが、北朝鮮にそれを埋める力はない。
 北朝鮮には弾道ミサイルや爆撃機など、重い水爆を運ぶ手段もない。
 だから、現時点で本当に北朝鮮が水爆を持っていたと仮定しても、怖がる必要はない。

 (2)むしろ、今国際社会が脅威と考えているのは、北朝鮮が原爆を小型化することだ。
 うがった見方をすれば、北が今回わざわざ「これは水爆実験だ」と発表したのは、「核の小型化の実験をしているわけではない」という対外的メッセージかもしれない。
 メッセージの宛先は明らかに米国だ。
 つまり、このニュースひとつから「われわれは核兵器を小型化して米国を攻撃するつもりはない」という金正恩のメッセージが読み取れる。

 (3)この水爆実験を受け、韓国の与党セヌリ党幹部は、「北に対抗してわれわれも核兵器を持つべきだ」と言った。
 一般論として、「能力のある国が意思を持つと、恐いことになる」というのが、核兵器に係る国際常識だ。
 韓国は、核武装の能力を十分に持っている。北朝鮮の「自称・水爆実験」において警戒すべきは、実は韓国かもしれない。

 (4)このように、世の中で起きていることの裏側を読むために不可欠なのが。インテリジェンス(情報)だ。
 インテリジェンスという言葉は、ラテン語で
   接頭語「インテ」(~の間に)+「レゲーレ」(組み立てる)
でできている。「レゴ」は「レゲーレ」の活用形で、プラスチックの組み立ておもちゃ「レゴ」の名前の由来だ。
 <例1>ある建物の壁を撤去するとき、建築の専門家は全体の強度を計算して、その壁を取っても壁が崩れないかどうか判断できる。同様に、インテリジェンスを備えた人には、物事の裏側にある目に見えない構造が把握できる。

 (5)<例2>2015年12月、警視庁公安部が、陸上自衛隊の元将官ら6人を書類送検した。ロシア大使館の駐在武官(元武官)に情報を漏らした(陸上自衛隊の内部教本を渡した)容疑だ。 
  (a)インテリジェンスの世界で情報をとる際の常套手段は、リタイアした人、第一線を退いた人、政治家なら政争に敗れて野党でくすぶっている首相経験者などにアプローチすることだ。彼らには、もといた組織がどういう論理で動くか、内部で何が起きているかが分かるからだ。同様に、ライバル会社のことを知りたいのであれば、ライバル会社を辞めてしばらく経った人に聞くのがいい。
    この事件も、「ロシア大使館の駐在武官」と「自衛隊の元将官」の間で起こった。彼らは互いに情報をやり取りしていたのだ。インテリジェンスの世界は、ギブ・アンド・テイクだから、自衛隊の教本をロシア人に渡した元将官も、情報を何かしら相手からとっていたはずだ。
  (b)では、なぜ警視庁公安部は彼らを摘発したのか。
    おそらく、摘発された自衛隊の元将官は、自分が得た情報に係る成果物(<例>このロシア人から聞き出した情報のメモ)を自衛隊に提出していなかった。メモを上げていたなら、正当な情報活動なので事件化されることはない。
    つまり、警視庁は、「この自衛隊の元将官らは、ロシアからリクルートを受け、取り込まれつつある」と判断し、摘発に踏み切ったのだ。
  (c)通常こういう事案は内々に処理されるが、今回は表に出た。実は、書類送検された元将官の中には、陸上自衛隊富士学校の学校長、小平学校の元校長、つまり自衛隊内部の情報教育を司る学校の元校長の名前があった。
    日本政府は今、テロ対策のために新しいインテリジェンス機関を作ろうとしている。テロに関する情報は、情報を入手して終わりになるのではなく、最終的にはテロリストを制圧しなければならない。それを担うことができる組織は、自衛隊か警察しかない。
    しかし、この情報漏洩事件によって、自衛隊の情報部門(陸上自衛隊小平学校と富士学校)は政府の情報部門の第一線に立てなくなってしまった。自衛隊が対テロ・インテリジェンス機関の中心となるシナリオはなくなった、ということだ。自衛隊と警察の抗争は、この一件からも読み取れる。

 (6)同じ「情報」という訳が与えられていても、インテリジェンスと「インフォーメーション」は全く違う。
 インフォーメーションは単なる素材としての情報のことだ。
 しかし、インテリジェンスは、「これは役に立つ」「これは信頼性に乏しい」など、何らかの評価を加えた情報のことだ。
 重要な立場の人が必要とする情報(政策やビジネスの方針を左右するような)は、インフォーメーションではなく、インテリジェンスだ。

□佐藤優「「金正恩の思考回路」を読み解く なぜ水爆だったのか ~社会人のための「役立つ教養講座」 第1回~」(「週刊現代」2016年3月12日号)
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【佐藤優】堕ちたエリート、小説という代理経験 ~『桜の森の満開の下』~

2018年05月17日 | ●佐藤優
★坂口安吾『桜の森の満開の下』(1947年)

(1)外務省の常軌を逸したふるまいをするエリート
 <霞が関(官界)には四つのタイプの官僚がいる。
 第一は、能力も倫理観も高い官僚だ。
 第二は、能力は高いが、倫理観が低い官僚だ。
 第三は、能力は低いが、倫理観は高い官僚だ。
 第四は、能力も倫理観も低い官僚だ。
 このうちとくに「能力は高いが、倫理観が低い官僚」は、国家にとっても国民にとっても不幸をもたらす可能性がある。 【注1】
 筆者は外務官僚だった。そこでは、能力はそれなりに高いが、倫理観が低い外務官僚の実例をたくさん見てきた。
 赤坂の料亭で、鈴木宗男衆議院議員(当時)の眼前で、着物に手を入れて芸者の乳房をわしづかみにしようとして拒絶されると、畳の上に寝転んで、「ぼくちゃんさびしいんでちゅ」と幼児言葉になって、おむつを替えてくれというポーズをとって両脚をばたばたさせる中堅幹部(現在は某総領事)など、いわゆるエリートには規格外のすごい人たちがいることを目の当たりにしてきた。
 その実態については、筆者はノンフィクションでは、『反省--私たちはなぜ失敗したのか?』(鈴木宗男氏との共著、アスコム、2007年)、小説では『外務省ハレンチ物語』(徳間文庫、2011年)に詳しく書いた。しかし、このような常軌を逸した状況は外務省だけでなく、財務省にもあるようだ。>

(2)福田淳一・財務事務次官のセクハラ
 <4月12日、『週刊新潮』が報じた女性記者に対するセクハラ疑惑が安倍政権を揺るがす深刻な問題になっている。財務省の福田淳一次官が同18日に辞任の意向を示し、その後、辞任が正式に閣議で承認されたが、問題は全く解決していない。
 同16日、財務省が公表した福田氏のコメントによると、「お恥ずかしい話だが、業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある」ということだ。
 同13日に新潮社がホームページに公開した音声データによると、福田氏とされる人物が「胸触っていい?」「予算が通ったら浮気するか?」「抱きしめてもいい?」「手縛っていい?」などと話している。
 いったいどういう言葉遊びをする店に福田氏は出入りしているのであろうか。想像するだけでおぞましい。>

(3)セクハラ被害を受けたテレビ朝日の及び腰
 <同19日、午前零時からテレビ朝日の篠塚浩取締役報道局長らが記者会見を行い、福田氏のセクハラ被害に遭ったのが同社の女性記者であると認めた。
 〈会見によると、被害を受けていた社員は1年半ほど前から数回、取材目的で福田氏と一対一で会食をし、そのたびにセクハラ発言があったことから、「自らの身を守るため」、会話の録音を始めたという。社員は今月4日に福田氏から連絡を受け、取材のための飲食の機会があり、その際にもセクハラ発言が多数あったため途中から録音を開始。後日、上司にその事実を「報じるべきではないか」と相談したものの、上司は放送することで本人が特定され、二次被害が心配されることなどを理由に「報道は難しい」と伝えたという〉(「朝日新聞デジタル」4月19日【注2】)
 二次被害が心配されるという理由で、報道を差し控えたというテレビ朝日の説明は説得力に欠ける。
 自社の社員をセクハラ被害から守るために少なくとも福田氏の担当から外すことは最低限しなくてはならない対応だったはずだが、それをした形跡がない。
 また、財務省にも会社として抗議すべきだが、この会見の時点でテレビ朝日は財務省に抗議を一切していなかった。そんなことをすれば、絶大な権力を持つ財務省がテレビ朝日にだけ情報をリークすることを止め、「特落ち」が起きることを同社幹部が恐れたのではないかと筆者は見ている。従業員に安全な就労環境を保証することは会社の責任であるにもかかわらず、テレビ朝日はその責任を果たしていない。このテレビ朝日の会見後も、福田氏は「セクハラではない」と主張している。>

(4)米山隆一・新潟県知事の援助交際
 <さらに福田氏のセクハラ疑惑の影に隠れて報道の扱いは小さくなったが、4月18日、新潟県の米山隆一知事が、「援助交際」の事実を認めて辞任を発表した。辞任会見は歴史に残る常軌を逸した内容だった。
 〈午後5時に秘書課長を通じて辞表を提出した。一身上の都合で知事の職を辞する。(週刊誌の)報道がなされ、県政に混乱を来した。けじめをとるために辞職を決意した。多くの方の信頼を裏切り、本当に申し訳ない。
 --出会い系サイトで知り合った複数の女性と交際し、金品を渡したのか。
 事実関係としてはその通り。私としては交際のつもりだったが、歓心を買うために金銭の授受もあった。知事になってからは2回会った。
 --1回会うごとに3万円を渡していた?
 その程度。金銭を渡すことで好かれたかった。そんなことで好かれようと思うこと自体がいけなかった。支払った総額は分からない。
 --援助交際と言われることをどう思うか。
 援助交際は漠然とした言葉だが、「売買春」ととられる可能性はあると思う。〉(「朝日新聞デジタル」4月18日【注3】)
 米山氏は、買春と認識して、複数の女性との関係を続けていたのである。いったい公人としてどのような倫理観を持っているのだろうか。
 福田氏は神奈川県立湘南高校-東京大学法学部、米山氏は私立灘高校-東京大学医学部とエリート中のエリートの道を歩んできた。福田氏も米山氏も司法試験に合格している秀才中の秀才だ。しかし、女性との関係で、なぜ常軌を逸した行動をとるのだろうか。>

(5)エリート男子校生徒への助言
 <筆者のところに超難関と言われる男子校の生徒たちがよく訪ねてくる。彼らはエリートの卵だ。そこで、おむつプレーやセクハラや強制わいせつまがいの常習者であった外務官僚(東京大学で内部進学点が高い教養学部国際関係専攻出身)の話をした上で、将来、異性との関係でトラブルを起こさないようにするためには、男女の関係を扱った恐い小説を読んでおくことが役に立つと伝えている。例えば、坂口安吾「桜の森の満開の下」【注4】だ。

(6)「桜の森の満開の下」
 <主人公の山賊は、たいへんな力を持っている。あるとき美しい女性を拉致する。
 〈そう考えているうちに、始めは一人だった女房がもう七人にもなり、八人目の女房を又街道から女の亭主の着物と一緒にさらってきました。女の亭主は殺してきました。
 山賊は女の亭主を殺す時から、どうも変だと思っていました。いつもと勝手が違うのです。どこということは分らぬけれども、変てこで、けれども彼の心は物にこだわることに慣れませんので、そのときも格別深く心にとめませんでした。
 山賊は始めは男を殺す気はなかったので、身ぐるみ脱がせて、いつもするようにとっとと失せろと蹴とばしてやるつもりでしたが、女が美しすぎたので、ふと、男を斬りすてていました。彼自身に思いがけない出来事であったばかりでなく、女にとっても思いがけない出来事だったしるしに、山賊がふりむくと女は腰をぬかして彼の顔をぼんやり見つめました。今日からお前は俺の女房だと言うと、女はうなずきました。手をとって女を引き起すと、女は歩けないからオブっておくれと言います。山賊は承知承知と女を軽々と背負って歩きましたが、険けわしい登り坂へきて、ここは危いから降りて歩いて貰おうと言っても、女はしがみついて厭々、厭ヨ、と言って降りません。
「お前のような山男が苦しがるほどの坂道をどうして私が歩けるものか、考えてごらんよ」
「そうか、そうか、よしよし」と男は疲れて苦しくても好機嫌でした。「でも、一度だけ降りておくれ。私は強いのだから、苦しくて、一休みしたいというわけじゃないぜ。眼の玉が頭の後側にあるというわけのものじゃないから、さっきからお前さんをオブっていてもなんとなくもどかしくて仕方がないのだよ。一度だけ下へ降りてかわいい顔を拝ましてもらいたいものだ」
「厭よ、厭よ」と、又、女はやけに首っ玉にしがみつきました。「私はこんな淋しいところに一っときもジッとしていられないヨ。お前のうちのあるところまで一っときも休まず急いでおくれ。さもないと、私はお前の女房になってやらないよ。私にこんな淋しい思いをさせるなら、私は舌を噛んで死んでしまうから」
「よしよし。分った。お前のたのみはなんでもきいてやろう」〉
 この瞬間から、山賊は、美しい女の完全な虜になってしまう。物語は悲劇的な結末を迎えるので、是非、読んでいただきたい。>【注4】

(7)秘密情報の漏洩は止められない
 <ところで、外務官僚の場合、ひとたび、女性記者に秘密情報を漏洩してしまい、その事実をバラされるのが恐くて漏洩を続ける輩がいた。
 こうならないためにもよい小説を読んで代理経験を積んでおく必要がある。>  

 【注1】
【佐藤優】正しい政官関係を再構築するために ~忖度の功罪~
 【注2】「財務次官セクハラ被害、テレ朝会見 「社員、身を守るため録音」」(朝日新聞デジタル 2018年4月19日)
財務次官セクハラ被害、テレ朝会見 「社員、身を守るため録音」
 【注3】「米山新潟知事「好かれようと金銭渡した」女性問題で辞職」(朝日新聞デジタル 2018年4月18日)
米山新潟知事「好かれようと金銭渡した」女性問題で辞職
 【注4】青空文庫
「桜の森の満開の下」

□佐藤優「堕ちたエリートと小説という代理経験 ~ベストセラーで読む日本の近現代史 第57回~」(「文藝春秋」2018年6月号)から一部引用

 【参考】
【佐藤優】うつ状態を克服する道、知識人の団結、医学部の現状
【佐藤優】正しいことをしていると思い込む者の暴力、組織が個人に責任をいかにかぶせるか、投獄経験を描いた自伝の傑作
【佐藤優】トランプvs.インテリジェンス・コミュニティー ~『炎と怒り』(その2)~ 
【佐藤優】日本はトランプ大統領に命運を託せるのか? ~マイケル・ウォルフ『炎と怒り』~ 
【佐藤優】収入格差と教育環境、女性の負担が却って増す懸念、生命医科学と倫理
【佐藤優】英EU離脱と北アイルランド、文科省が進める教育改革に対する批判的検討、イスラエル独自のミサイル防衛システム

【佐藤優】職場ハラスメントを生む土壌、外務官僚の機密費疑惑、キリスト教の教義と思想の基本事項
【佐藤優】われわれの思考の鋳型、沖縄をめぐる知的に富む対談、高校で全科目を学ぶと社会に出てから役立つ
【佐藤優】文語訳聖書 ~キリスト教の魅力は死生観にある~
【佐藤優】北朝鮮がソウルと東京を攻撃したら、ウィスキーの美味しさの秘密、明治新政府の権力奪取法
【佐藤優】よりましなポピュリスト、「普通の人」が豹変するストーカー、規格外のトランプ米大統領
【佐藤優】人工知能は意味をまったく理解できない/数学者が説く「シンギュラリティ」の不可能
【佐藤優】トップリーダーの孤独、紛争地域や犯罪組織への武器拡散、精神科医と諜報工作員の共通点
【佐藤優】混乱する現代との類似性 ~『応仁の乱』~
【佐藤優】自死した保守派論客の思想の根源 ~『保守の真髄』~
【佐藤優】「当事者にとって」と「学理的反省者として」の二重の視座 ~『世界の共同主観的存在構造』~
【佐藤優】テロ対策に関する世界最高レベルの教科書、宇野弘蔵の経済学を取り入れたユニークな社会学演習書、シンギュラリティ神話の脱構築
【佐藤優】憲法改正は見せ球に終わるか
【佐藤優】日本と米国の社会病理
【佐藤優】消費者金融のインテリジェンス
【佐藤優】官僚を信用していない国民
【佐藤優】中国が台頭しつづけたら、仏教の末法思想と百王説、時計の歴史
【佐藤優】子どもや孫の世代への重荷
【佐藤優】日本のレアルポリティーク
【佐藤優】巨大さを追求する近代的思考
【佐藤優】アナキズムという思考実験
【佐藤優】AIとの付き合い方を知る手引、宗教と国体論の危険な関係、若手官僚の思想の底の浅さ」
【佐藤優】伊藤博文の天皇観と合理主義、歴史の戦略的奇襲から得る教訓、「知の巨人」井筒俊彦
【佐藤優】教育費の財源問題で政局化か
【佐藤優】ホワイトカラーの労働者化
【佐藤優】指導者たちの内在的論理を知る
【佐藤優】世界規模のポストモダン現象
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~
【佐藤優】カネとの付き合い方の秘訣、野外で生きる雑種ネコの魅力、前科者に冷たい日本社会
【佐藤優】着目すべき北極海の重要性、日本の政治文化に構造的に組み込まれている「甘え」、文明論と地政学を踏まえた時局評論
【佐藤優】リーダーが知るべき文明観、資本主義後の社会構想、刑務所暮らし経験者の本音
【佐藤優】地図から浮かぶ歴史のリアル、平成不況は金融政策のミス、実証的データに基づく貧困対策
【佐藤優】ケータイによる日本語の乱れ、翻訳の技術、ロシア人の内在的論理
【佐藤優】武蔵中高の教育、ルター宗教改革の根幹、獣医師にもっと競争原理を導入
【佐藤優】社会に活力をもたらす政策、具体的生活の上に立つ民族国家、開発至上主義が破壊する永久凍土の生態系
【佐藤優】日本のフリーメイソン陰謀論、ユニークな働き方改革、自衛隊元陸将によるリーダーシップ論
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【佐藤優】川喜田二郎『発想法』 ~総合的思考と英国経験論哲学~
【佐藤優】日本の思想状況の貧しさ、頑丈にできている戦闘機、東方正教会に関する概説書
【佐藤優】資本主義の根底にある「勤勉さ」という美徳の淵源 ~『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』~
【佐藤優】手ごわいフェイクニュース、国を動かす政治エリートの意志、欧州内部における紛争
【佐藤優】×奥野長衛『JAに何ができるのか』
【佐藤優】『戦争論』をビジネスに活かす、現実社会の悪と闘う、ロシア人の意識と使命感
【佐藤優】面白い数学啓発書、日本人の思考の鋳型、攻める農業への転換
【佐藤優】総合的思考と英国経験論哲学(2) ~川喜田二郎『発想法』~
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【佐藤優】保守論客が見た明治憲法、軍事産業にシフトしていく電機メーカー、安全と安心を強化する過程に入り込む犯罪者
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【佐藤優】痛みを無視しない、前大戦で「前線」と「銃後」の区別がなくなった、情報を扱う仕事の最大の武器
【佐藤優】海上権力を維持するために必要な要素 ~イギリスの興亡の歴史を通して~
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【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~


【佐藤優】ゼロからわかる「世界の読み方」一覧

2018年05月16日 | ●佐藤優
【佐藤優】黄色人種が白色人種国家を侵略 ~米国の対中国イメージ操作~
【佐藤優】米国と中国がもし戦ったら  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】アメリカ映画とキリスト教、120年の関係史  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】オランダが『アンネの日記』を必要とした理由  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】オシントというインテリジェンスの手法 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】聖書の翻訳 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

□佐藤優『ゼロからわかる「世界の読み方」 ~プーチン・トランプ・金正恩~』(新潮社、2017)の「第2部 ゼロからわかる「トランプ後」の世界」の「1 新帝国主義とトランプ --あるいはクリスチャン・シオニズムと黄禍論」から引用

【佐藤優】黄色人種が白色人種国家を侵略 ~米国の対中国イメージ操作~

2018年05月16日 | ●佐藤優
 (1)中国に対する恐怖心は、黄禍論(Yellow Peril)に非常に強く出てくるものだ。ピーター・ナヴァロも黄禍論の影響下にいると見ていい。
 黄禍論はいろんな形で表れるが、物語として著したのがウラジーミル・ソロヴィヨフだ。
 彼の父親はセルゲイ・ソロヴィヨフという有名なロシアの歴史学者だ。その息子ウラジーミルは1853年1月28日にモスクワで生まれ、1900年に没した。だからちょうど19世紀と20世紀の境目に死んだ、世紀末の思想家だ。

 (2)ソロヴィヨフは、ヨーロッパ思想の流れから言えば、ショーペンハウアーの影響を非常に強く受けている。ロシア国内の思想の流れでは、ニコライ・フョードロフの影響を受けている。ニコライ・フョードロフは「モスクワのソクラテス」と言われた思想家で、1903年に死んだ。ソロヴィヨフは何度も彼を訪ねているし、ドストエフスキーもトルストイも彼を訪ねている。
 フョードロフの著作は第二次世界大戦中の1943年、陸軍の強い推薦によって白水社から『共同事業の哲学』という題で邦訳されている。本職はロシア中央図書館【注】のカード係だった。なぜかというと、カード係をやっていたらいろんな本を読むことができるからだ。
 フョードロフは図書館の隅に毛布を何枚か持ってきて、そこに住んでいた。本を読む以外の時間が惜しいから、独身を貫き、家もつくらなかった。それでも時々人が訪ねていくと、いろいろなことを教えてあげた。彼は何でも知っているから、みんなが聞きに来るわけだ。図書館の司書は当時は給料がよかったのだが、それを全部モスクワ大学の学生たちに奨学金としてあげて、自分は黒パンぐらいの食事しかしなくても全然構わなかった。食べることにもほとんど関心がなかった。

 【注】当時はルミャンツェフ博物館付属図書館、その後レーニン図書館になって、さらに今の名称はロシア国立中央図書館。

 (3)ニコライ・フョードロフは、こういう構想も抱いていた。近未来において、理科系の学問はすべて融合して、単一の科学になる。その結果、死んだ人間を蘇らせることが完全に可能になるだろう。やがて、直近に死んだ人間から、遠くはアダムとエバまで全員を呼び戻すことが可能になるに違いない。そんな万民復活説を唱えた。
 そんなことになったら、地球上に土地が足りなくなる。空気も足りなくなる。だから今から惑星間移動について考えなくてはならない。必ず太陽系のようなシステムが宇宙のどこかにあるし、そこは地球に類似した人類の居住可能な星があるはずだ。そこへの移住を真剣に考えないといけないからと、推進器を付けた宇宙船を宇宙空間に出して、航行させようという、現在のロケットの基本概念をつくりもした。現に宇宙船の設計図を描いている。
 このロケット構想はロシアの工学者コンスタンチン・ツォルコフスキーに受け継がれ、その流れがドイツのヴェルナー・フォン・ブラウンへ行って、ナチスのV2ロケットになった。そしてフォン・ブラウンの亡命によって、この技術が米国に渡ってアポロ計画になり、ロシアに渡ってソユーズ計画になった。
 だから、根っこにおいてはニコライ・フョードロフは宇宙工学の父だ。国際宇宙ステーションの父だ。革命後のソ連時代においても、ニコライ・フョードロフの名前は宇宙の分野において紹介されていた。しかし、なぜ宇宙に行かないといけないかという彼の強力な動機は、ソ連時代には封印されていた。
 いや、正確にはソ連末期に彼の思想は解禁された。その影響がオウム真理教の麻原影晃に及んだ。

 (4)ニコライ・フョードロフにある思想が、ウラジーミル・ソロヴィヨフによってかっちりした感じになっていった。
 ソロヴィヨフには『三つの会話』という本があって、これはあるサロンで、トルストイ主義者とロシア愛国者と正統的な正教神学者の三人が会話をしている、という設定だ。そして最後に「反キリスト物語」というのが出てくる。これは、19世紀の半ばに開国した日本が、今までの微睡(まどろ)みから覚めて、急速に欧米の科学技術の成果を吸収している。しかし、この日本という国は科学技術に対してだけは関心があるけれども、哲学とか文学とはにはほとんど関心がない。自らの力は国を軍事大国化させるためだけに使っている。
 その結果、まず朝鮮を自らの保護下に置いて、大日本帝国に併合する。その次には中国の東北部、満州地区を併合する。さらにどんどん国力を付けていき、中国全土とモンゴルを併合する。やがてカラコルムに首都を遷都して、天皇は日本モンゴル皇帝となる。そしてパン・モンゴル主義、すなわち「われわれモンゴル系の日本人によって全世界は支配されるべきである」というイデオロギーによって、ヨーロッパまで席巻してしまう。そして、極東の日本からポルトガルに至るまでの巨大な大日本帝国が完成する。
 それに対して、ドイツのあたりから、この黄色人種である日本人が世界を席巻する危機を打破する、若くて有能な指導者が出てくる。そして、日本の影響はウラル山脈の東側に限定されるようになる。日本を追いやった、この新しい指導者を新しいヨーロッパ皇帝だとみんなは拝むけれども、実はこれが反キリストだった。
 それで、この反キリストと戦うために、カトリック教会のペトロ教皇とロシア正教会のヨハネ長老と、プロテスタントのパウロ教授という神学者、その三人がそれぞれ立ち上がり、キリスト教文明によって反キリストを打ち倒す、という物語だ。
 ここに予見されている日本の対外拡張はほぼ正確だ。このソロヴィヨフ流の黄禍論は、日露戦争(1904~5年)の時に、ロシアが積極的に全世界へ流した。要するに、日本とロシアの戦いじゃないんだと。これは黄色人種によって白色人種国家のロシアが侵略されている、という話なんだと。このイメージ操作は、結構いまだに尾を引いている。

□佐藤優『ゼロからわかる「世界の読み方」 ~プーチン・トランプ・金正恩~』(新潮社、2017)の「第2部 ゼロからわかる「トランプ後」の世界」の「1 新帝国主義とトランプ --あるいはクリスチャン・シオニズムと黄禍論」から引用

 【参考】
【佐藤優】米国と中国がもし戦ったら  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】アメリカ映画とキリスト教、120年の関係史  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】オランダが『アンネの日記』を必要とした理由  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】オシントというインテリジェンスの手法 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】聖書の翻訳 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

【佐藤優】米国と中国がもし戦ったら  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

2018年05月16日 | ●佐藤優
 (1)トランプの目から見ても、韓国は秩序がそれほどきちんと維持されていない国だと映っているだろう。
 ピーター・ナヴァロ『米中もし戦わば』(文藝春秋)からも、そこがよく伝わってくる。ナヴァロは、トランプに買われてホワイトハウス国家通商会議のトップに就いている人物だ。この本、なかなか面白い。
 ナヴァロは言う。米国には航空母艦があり、ステルス戦闘機や機動部隊があって、もう全能だと思っているが、勘違いしないほうがいい。中国が、小型で巡航ミサイルを二つだけ積めるような、大きなモーターボートみたいな艦船を今たくさん造っている。これが仮に1,000隻ぐらい一遍に襲いかかってきたら、いくら航空母艦があるといっても潰しきれない。シミュレートしたら負けた。人海戦術で、考えられないような旧式の兵器を積んで、大量の敵が来ることを想定しておかないと、米国の艦隊は全滅する。・・・・そんな分析をしている。

 (2)あと、ナヴァロはこんなことも紹介している。安倍総理が日露の経済協力として宇宙分野の協力をすごく強く打ち出したが、あれはなぜか? 宇宙空間は、確かにそこで薬品や合金をつくることもできるが、要はサイバー戦などで鍵になってくるからだ。ロシアとの協力は、米国を刺激しないか? 実は米国は宇宙に対しての対露制裁は一切かけていない。宇宙だけは100%ロシアと協調している。なぜか? スペースシャトル計画が失敗したからだ。スペースシャトルで安く宇宙空間に行く、宇宙ステーションに行ったり来たりできる、という計画を立てたが、安全性がほとんど保証されないままなのだ。しかも、それ以降のアポロ計画の技術は捨ててしまった。結果、いま国際宇宙ステーションに安定的に生けるのはソユーズ・ロケットしかない。だから、米国人が行くにも、ソユーズに乗せてもらわないと行きようがない。もう、米国は完全に宇宙空間へ人を送るという構想を放棄した。だから、制裁をかけようにもかけられない。
 にも関わらず国際宇宙ステーションがなぜできたか、と言えば、宇宙空間を軍事利用した場合、ものすごく効果があるからだ。ところが、国際法で宇宙空間の軍事利用は禁止されている。ただし、国際法は破っても警察が来るわけではない。となると、一緒に開発して、一緒に行っていれば軍事利用ができない。あるいは軍事利用しても共通利用をする。米露あるいはフランス、ドイツ、日本、そういった国々ならば、お互いにぶつかることはおそらくない。だから宇宙ステーションは敢えて国際宇宙ステーションにしたわけだ。

 (3)ところが、そこに加わっていない大国がある。中国だ。中国は独自の宇宙ステーションを造ろうとしている。同時に、中国はミサイル衛星を持っている。それを2007年に実験して、中国の古い気象衛星をミサイルで吹き飛ばし、おそらく人類史上最大量の宇宙ゴミを出した。これはどういうことかというと、国際宇宙ステーションをいつでも撃ち落とせる、という示威行為だ。宇宙はいま、そんな状況にある。

 (4)つまり、これから宇宙戦争が起きる可能性が出てきたわけだ。中国が宇宙ステーションをつくり、しかもその宇宙ステーションが武装する可能性がある場合、米露が連合して中国の宇宙ステーションを潰すのではないか。
 あるいは、われわれは今やすっかりGPSに頼っているのだが、もし米中戦争が始まることになったら、中国はミサイルで米国のGPS衛星を撃ち落とせばよいわけだ。すると、GPSに依存しているものは全部ダメになる。中国の軍事システムはオンボロ衛星だが、自分たちで打ち上げているから独自の通信だ。
 そういったことを考えていくと、宇宙空間をどう管理していくかについては、今後いろいろややこしい問題が起きている。
 ナヴァロが結論づけているのは、いま戦争をすれば、相当死ぬかもしれないが、米国はどうにか勝つ。しかし、限りなく「博士の異常な愛情」に近い世界になっていく。あのブラック・ユーモアが国際社会で現実化しようとしている。

□佐藤優『ゼロからわかる「世界の読み方」 ~プーチン・トランプ・金正恩~』(新潮社、2017)の「第2部 ゼロからわかる「トランプ後」の世界」の「1 新帝国主義とトランプ --あるいはクリスチャン・シオニズムと黄禍論」

 【参考】
【佐藤優】アメリカ映画とキリスト教、120年の関係史  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】オランダが『アンネの日記』を必要とした理由  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】オシントというインテリジェンスの手法 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】聖書の翻訳 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~


【佐藤優】アメリカ映画とキリスト教、120年の関係史  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

2018年05月16日 | ●佐藤優
 <同志社大学の神学部に木谷佳楠(きたにかなん)さんという助教がいます。佳楠という名前はむろん「カナンの地」から来ているから、少なくとも親の代からのキリスト教徒ですね。余計なことだけど、熱心なクリスチャンの娘や息子がかわいそうなのは、ついこういうキラキラネームをつけられちゃうことなんだ。某々イサクとか、何々ダビデとかね。それはともかく、率直に言って、彼女は同志社の神学部で20年に1人ぐらいの逸材です。
 アメリカのキリスト教の研究をしているのですが、「一言で言うと、ろくでもないものだ」と。そんな結論の研究です(会場笑)。彼女の博士論文は優れていたので、『アメリカ映画とキリスト教 120年の関係史』(キリスト新聞社)という単行本になっています。要するに、日本人はアメリカ映画をいろいろいと受容してきたけれども、原材料をちゃんと見ているのかと。原材料はキリスト教、それも非常に特殊なキリスト教なんだと。2050年までにこの世の終わりがあると信じているアメリカ人がどれぐらいいるか、彼女は統計を持ってきて、40%もいるんだと。そういう連中が受け入れているキリスト教がベースになってアメリカ映画は出来ているんだということを、いろんな映画の実例を挙げて論証していきます。
 例えば9・11が起きた後、アメリカ映画では世界破滅ものが増えたわけ。隕石によって破滅するとか、エイリアンによっって破滅するとか、あるいは地球が自転をやめることによって破滅するとか。木谷先生はそれ以前からあった破滅ものなども含めて、その手の映画のリストを挙げていって、アメリカにおける極めて特殊なキリスト教的な概念や、ユダヤ教とキリスト教との関係を詳しく分析しています。
 もともと映画って、どうして始まったと思う? 僕は木谷先生の本で初めて知ったんだけど、牧師が始めたんだね。要するに教会でキリスト教の信仰を広め、信者を増やし、信者をより熱心な信者にしていくために、牧師が活動写真を作り始めた。だから映画はキリスト教から始まっているわけです。ところが、そのうちにいくつもの映画スタジオが力を持ち始めて、ハリウッドを映画の都にしていくんだけど、ハリウッドはユダヤ人の拠点でした。
 そのため、なんでキリストを殺したユダヤ人がキリストの生涯の映画を作って金儲けしているんだよ、とそんな文句が出始めるようになった。確かに、キリストの物語、聖書の物語は、映画初期からずっと作られ続けてきました。そういう批判もあり、映画会社は生き残るため、自発的に検閲を受け入れるようになります。映画の上では立派な人だけども、実際の俳優たちや作り手たちが麻薬とか殺人とかいったスキャンダラスな事件に巻き込まれる中で、教会からの攻撃をかわすために、いろんな自主検閲をするようになった。
 木谷先生の本の中で、1932年と35年のターザン映画のスチール写真を並べていましたが、ジェーン役の女優の肌の露出度は32年の方が高いわけ。ビキニだったのが、35年になると服を着ている(会場笑)。規制がどんどん厳しくなっていったんですね。
 さらに、戦後になると東西冷戦とか、いろんな世界情勢やアメリカの国内情勢に、映画界は積極的に関わっていく。そのあたりを説いた本で、神学的にもよくできているし、映画に興味のある人は必ず読んだ方がいい。要するに、映画には<キリスト教のアメリカ型土着>が見られるという主張なんです。そして、クリスチャン・シオニズムも、キリスト教のアメリカ型土着の一つです。>

□佐藤優『ゼロからわかる「世界の読み方」 ~プーチン・トランプ・金正恩~』(新潮社、2017)の「第2部 ゼロからわかる「トランプ後」の世界」の「1 新帝国主義とトランプ --あるいはクリスチャン・シオニズムと黄禍論」から引用

 【参考】
【佐藤優】オランダが『アンネの日記』を必要とした理由  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】オシントというインテリジェンスの手法 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】聖書の翻訳 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~


【佐藤優】オランダが『アンネの日記』を必要とした理由  ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

2018年05月16日 | ●佐藤優
 <キリスト教とユダヤ教というと、普通、仲が悪いと思いませんか? 特にヨーロッパにおいては、ユダヤ人がキリストを十字架にかけたじゃないかと。あるいはナチスドイツによるユダヤ人排斥もあったじゃないかと。
 例えばアンネ・フランクの『アンネの日記』を読むと、「オランダ人はいい人だ」みたいなイメージになるけど、ナチス時代のオランダにおけるユダヤ人の殺害率って何%だと思う? 75%だよ。これはポーランドと同じくらいの率です。ドイツ本国や、フランスあるいはベルギーなどと較べて、オランダにおけるユダヤ人の殺害率は突出して高いんですよ。
 裏返して言うと、だからこそ『アンネの日記』は必要なんだよね。オランダ人はいい人たちだったという印象を、オランダが世界に向けてプロパガンダするためにも、『アンネの日記』をオランダの国策として広めていかないといけない。そのことによって、いかにオランダ人がナチスに協力してユダヤ人排斥を進めたかを隠蔽する効果があるわけです。>

□佐藤優『ゼロからわかる「世界の読み方」 ~プーチン・トランプ・金正恩~』(新潮社、2017)の「第2部 ゼロからわかる「トランプ後」の世界」の「1 新帝国主義とトランプ --あるいはクリスチャン・シオニズムと黄禍論」から引用

 【参考】
【佐藤優】オシントというインテリジェンスの手法 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~
【佐藤優】聖書の翻訳 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

【佐藤優】オシントというインテリジェンスの手法 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

2018年05月16日 | ●佐藤優
 <公開情報を丹念に読み解き、きちんと組み立てていくことで、氷山の下の部分を正確に推定することができる。
 これを業界用語ではオシント(OSINT)と言います。open-source intelligence の略です。オシントの難しい点は、公開情報の世界しか触ったことのない人だと、何が秘密の話で、何が公開情報の下に隠れているのかが分からないんだな。それに、公開情報というのは時にはタメにするために、例えば真の情報を隠蔽するために何らかの情報を流すこともあるから、その手のものをどう取捨選択していくかという問題もあります。ある程度、秘密情報と公開情報、それぞれの文法の違いと類似性を知っている人にしかわからないところはあるんですよ。>

□佐藤優『ゼロからわかる「世界の読み方」 ~プーチン・トランプ・金正恩~』(新潮社、2017)

 【参考】
【佐藤優】聖書の翻訳 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

【佐藤優】聖書の翻訳 ~『ゼロからわかる「世界の読み方」』~

2018年05月16日 | ●佐藤優
 (1)英語の聖書は、いろんなヴァージョンがあるけれども、通常使われているのは1611年に刊行された英国のキング・ジェームズ版、いわゆる欽定訳聖書をさらに現代英語に変えた新キング・ジェームズ版(NKJV、New King James Version)。この訳文は、ヘブライ語あるいはギリシャ語の聖書そのままではない。しかし、英語としてはものすごくこなれているから、今でもベースではキング・ジェームズ版が使われている。だから、現代英語の聖書の引用が出てきたら、日常語で直訳すればよい。ただ、英米のキリスト教は、こういう聖書を使っているために、他のオリジナルの文献を重視する国のキリスト教とはやや差異が生じている。

 (2)ドイツでもルター派の聖書は、「ヘブライ人の手紙」を「黙示録」の直前に置く。ルターは、「ヘブライ人の手紙」を後世挿入されたとみて、神聖な聖書の文章だと認めていなかった。そこで、伝統的な聖書の順番に倣うことをせず、後ろの方に置いた。

 (3)ロシア正教会が使っている聖書も、似たような事情だ。通常の聖書は、「による福音書」「による福音書」「による福音書」「による福音書」「使徒言行録」の後に「ローマ書(パウロ書簡)」がくる。
 ところが、ロシア正教会の聖書は、「使徒言行録」の次に「ヤコブの手紙」がくる。
 「使徒言行録」に続けて「ローマ書」がくると、ローマがものすごく重要な地位にあるような編纂の並びになる。それは正教会にとって都合が悪いから、編纂を変えたわけだ。テキストは同じでも、並べ方を変えることで結構、違ってくるものだ。

 (4)日本聖書刊行協会、いのちのことば社から出しているリビングバイブルは、米国の宗教原理主義者が出している聖書の日本語訳だ。だから、読んでいると、ものすごく信仰的な情熱を揺さぶられるつくりになっているが、学術的なテキストとしてはいかがなものかな。

 (5)徹底的に学術的な翻訳にこだわっているのが、岩波書店から出ている荒井献(ささぐ)たちのグループが訳している聖書。あるいは、作品社の田川健三の個人訳の聖書。
 バランスに欠けている。聖書は、後世になってからやたらと挿入などがあるのだが、何をテキストとして採択するかの基準が、どうしても恣意的になってしまう。

 (6)お薦めは、カトリックとプロテスタントの共同での翻訳、「新共同訳」。
 ただし、同じ日本聖書協会の新共同訳でも、プロテスタント用のは旧約聖書続編が入っていない。カトリック聖書は、プロテスタント聖書より文章が14本ほど多い。

□佐藤優『ゼロからわかる「世界の読み方」 ~プーチン・トランプ・金正恩~』(新潮社、2017)

 【参考】
【佐藤優】「若い女性」のマリアは誤訳によって「処女」になった ~ギリシャ語聖書~

【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~
【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~
【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~
【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~
【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~
【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~
【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~
【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~
【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~
【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~

【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

【佐藤優】米国人とユダヤ人が共有する選民思想 ~米国とイスラエル~
【佐藤優】来世より現世を生きる教えが強い絆を生む ~欧州南北問題~
【佐藤優】世界イスラム帝国へ、ネット時代の世界革命 ~イスラム国の行方~
【佐藤優】宗教弾圧と民族移住 ~民衆宗教を恐れる中国~



【南雲つぐみ】けがの応急措置 ~RICEという方法~

2018年05月15日 | 医療・保健・福祉・介護
 スポーツや野外活動でけがをしたとき、病院に行くまでの応急措置として、日本整形外科スポーツ医学会等が勧めるRICEという方法がある。「R=安静」「I=冷却」「C=圧迫」「E=挙上」の頭文字をとったものだ。
 捻挫や打撲は、その部分に内出血が起こり、腫れや熱が出てじんじんと痛みだしてくる。そこで、まず患部に体重がかからない姿勢を取り、添え木などをして「安静」にする。そして、ビニール袋やアイスバッグに氷を入れて、患部を「冷却」する。
 次に、内出血や腫れを防ぐために、テーピングや弾性包帯などで適度に「圧迫」する。強く圧迫し過ぎて血流が悪くならないように痛いときにはいったん緩めてから巻き直すと良いそうだ。「挙上」は患部を心臓より上にすることで、足であれば横になって台座の上に足を乗せると良い。
 すり傷、切り傷があるときは、雑菌の侵入を防ぐために流水で洗い、傷口の泥や汚れをできるだけ取り除く。このとき、消毒薬を使う必要はないとされている。

□南雲つぐみ(医学ライター)「けがの応急措置 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年8月17日)を引用

【保健】帯状疱疹は予防できる時代 ~50歳以上はワクチン接種を~

2018年05月15日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)疲れがたまると暴れだす「帯状疱疹」。加齢もリスク因子で50代以降に発症率が上昇し、60代でピークを迎える。

 (2)帯状疱疹は、いわゆる水ぼうそうの原因ウイルス(VZV)が初感染後に神経細胞に潜伏し、疲労やストレスをきっかけに再活性化して発症する。子供のころに水ぼうそうに感染した人のうち、10~30%が80歳までに帯状疱疹を経験すると推測される。
 症状としては、ピリピリするような痛みが先立って現れ、その数日後に左右どちらかの顔や腕、背中、腰回りなどに赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状に出現。水疱が破け、かさぶた状になるまでの期間は10日~2週間程度で、皮膚の表面が正常に戻るまでには1カ月ほどかかる。痛みが消えるにはさらに数週間が必要だ。
 重症化すると血管炎や脳梗塞につながるほか、高齢者では腎不全や感染症リスクも高くなる。また、数カ月~数年続く「帯状疱疹後神経痛」が残ることがあり、個別のケースによっては「灼けるような痛み」「眠れないほどの痛み」で日常生活に影響がでる。

 (3)日本では抗ウイルス薬と鎮痛剤、ステロイドによる治療が一般的だ。
 また、2016年3月以降、50歳以上を対象に、帯状疱疹ワクチンによる予防接種が可能になった。これまでも自由診療として乳幼児用の水ぼうそうワクチンが流用されてきたが、「国のお墨付き」で万が一、副作用が生じても救済対象になったわけだ。自費負担は変わらないが安心して接種できる。

 (4)現在、帯状疱疹ワクチンとして日本で利用できるのは、次の二つ。
   ①「ビケン・乾燥弱毒生水痘ワクチン(一般財団法人阪大微生物病研究会)」
   ②乾燥組替え帯状疱疹ワクチン「シングリックス筋注用(ジャパンワクチン)」
 ②は2018年3月に承認された。①、②の両者とも効果持続期間は10年ほどだ。今後、高齢化で患者増が予想されるため、定期接種の是非も議論されている。
 実際、50歳を過ぎれば加齢の上に、感染症や大手術の後、抗がん剤治療など、免疫が低下してVZVが暴れだす状況はいくらでも想定できる。元気なうちの接種を検討したい。

□井出ゆきえ(医学ライター)「帯状疱疹は予防できる時代に/50歳以上はワクチン接種を ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.398~」(「週刊ダイヤモンド」2018年5月19日号)

 【参考】
【保健】資産損失ショックは健康リスク ~無資産なみに死亡率が上昇~
【保健】薬で顎が腐る? ~骨粗しょう症の人は要注意~
【保健】電子たばこで禁煙成功率が向上 ~約16万人の全米調査~
【保健】完璧主義者の抑鬱 ~親友に接するように自分にやさしく~
【保健】子どものエナジードリンク摂取 ~米国スポーツ医学会が警告~
【保健】高血糖で認知機能が低下 ~健康的な生活が脳を守る~
【保健】心筋梗塞の自覚症状は? ~吐き気や腹痛、男女差も~
【保健】世界各国のパンを比較 ~意外に塩分が高いと判明~
【保健】片頭痛持ちは脳・心血管に注意 ~特に診断後の数年間は節制を要す~
【保健】高い平熱は1年死亡リスクと関連? ~男性も基礎体温を測ってみよう~
【保健】急性虫垂炎の治療は手術か、薬か? ~外科医が選ぶのは~
【保健】シリコンバレーの贖罪? ~元役員らがネット依存警鐘団体~
【保健】花粉症シーズン始まる ~今年の飛散量は多いか、少ないか~
【保健】トマト2個で肺機能を守る ~「前」喫煙者にも効果~
【保健】ナッツを食べて心疾患を予防 ~1日30グラムのお手軽健康法~
【保健】ついに薬もIoT ~胃液センサーで服薬管理~
【保健】犬を飼うと長生きする ~特に、一人暮らしにお勧め~
【保健】何年禁煙したら帳消しになるか ~女性は11年、男性は~
【保健】食後の血糖値スパイク ~カーボ・ラストでまったり改善~
【保健】米砂糖業界の苦々しいお話 ~不利なデータを半世紀も隠蔽?~
【保健】対人過敏は早く老ける? ~遺伝子レベルに影響~
【保健】慢性便秘に「考える人」 ~全国1,000万人のお悩みに~
【保健】ストレスでがんリスク上昇 ~ただし、男性に限る~
【保健】死亡率が最大5倍超に ~がん代替療法の選択で~
【保健】認知症と性格の関係 ~責任感は予防的に働く~
【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
【保健】ビタミンB群の過剰摂取にご注意 ~男性の肺癌発症リスクが上昇~
【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~
【保健】鬱に効くボルダリング ~悲観的な自動思考を解消~
【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~
【保健】塩分過剰で空腹に ~高血圧どころかメタボに~
【保健】満腹より栄養素に目を向けて ~収入が低い世帯は主食頼み~
【保健】だるいときほど階段昇降を ~カフェインより効果的~
【保健】成人ADHDの予備診断 ~六つの質問でクリーニング~
【保健】“ベンゾ系薬剤”に注意 ~常用量でも薬物依存を形成~
【保健】ギャンブル依存症ってなに? ~最新の定義は「プロセス依存」~
【保健】グルテンフリー食の功罪 ~結局、2型糖尿病に?~
【保健】アジア系2型糖尿病でも全がん死リスクが上昇
【保健】「男の更年期」改善効果に疑問符 ~テストステロン補充療法~
【保健】狩猟・採集民族のチマネの人々に学ぶ ~現代的な生活は健康リスク~
【保健】玄米でカロリー消費! ~30分程度の運動に匹敵~
【保健】1日あたり0.5合程度が上限 ~認知症を予防する飲酒量~
【保健】電子たばこで禁煙補助? ~英米で見解の相違~
【保健】二つの睡眠時無呼吸症候群 ~閉塞性か中枢性かで違い~
【保健】不安やうつはがんの初期症状? ~結腸・直腸、膵臓などで関連~
【保健】赤身肉は魚や鶏肉に置き換えて ~大腸憩室炎の発症リスクを軽減~
【保健】学会監修の防災セットが限定発売 ~心臓を守るリストも~
【保健】前立腺癌の手術で優れているのは ~ダ・ヴィンチvs人の手~
【保健】サウナで認知症リスクが低下 ~本場フィンランドの報告~
【保健】ポケモンGOで運動量up! ~仲間でワイワイの効果~
【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【南雲つぐみ】残留農薬の基準量 ~オオムギを含むシリアルの自主回収~

2018年05月15日 | 医療・保健・福祉・介護
 出回っている食品に、規準値を超える量の残留農薬が検出されることがある。最近では、シリアルに含まれるオオムギで分かり、製品は自主回収となった。このニュースには「ただし、その製品を食べても人体に影響はない」とあった。
 残留農薬の基準量とは、いったいどのようなものなのか。農林水産省などの情報によれば、日本では、農薬の使用量はADI(一日摂取許容量)という基準をもとに設定されている。ADIは、「人がその農薬を毎日一生涯にわたって摂取し続けても、現在の科学的知見から見て健康への悪影響がないと推定される1日当たりの量」という意味だ。
 ADIは、まず動物を用いて各種毒性試験を行い、その結果から1日当たりの無毒性量を割り出す。さらに人体への影響を考慮し、これに安全係数として100分の1をかけて算出される。
 規準値以上の残留農薬が検出されたのに「食べても害がない」というのは、この「100分の1」という安全係数によって、安全性の高いものに設定されているからということなのだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「農薬の基準量 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年4月24日)を引用

【佐藤優】少年旅行記 ~『十五歳の夏』の書評~

2018年05月14日 | ●佐藤優
★『十五の夏(上下)』(幻冬舎、2018 各1,800円+税)

 <人生は数多くの些事とほんの少しの重大事から成り立っている。それゆえ自伝を書く時には読者を退屈させぬよう厳しく中身をふるいにかけなければいけない。「短編の狙撃手」ロアルド・ダールはそう諭し、次のように述べている。
 「どうでもよいような出来事はすべて切りすて、鮮明に記憶に残っていることだけに集中しなくてはならない」(『単独飛行』永井淳訳より)
 だが『十五の夏』の佐藤優は、ダールの教えに真っ向から逆らっているように見える。高校一年生となった少年は、いまだ冷戦下にあった東欧・ソ連をひとりで旅した。そしていま、あの夏休みの42日を細大漏らさず上下二巻の大著に再現してみせた。旅先で出会った人々との会話、日々の食事、果ては列車のトイレまで克明に描いている。一切をふるいにかけず、眼前に見たものを後知恵で修正していない。検察官との会話をほぼ完璧に記憶してみせたこの人ならと納得してしまう。この書を手にした時の衝撃はこの一点にある。
 我が十五の夏休みを思い出そうとしたが、ほぼすべてが喪われている。ああ、空知川のほとりで放埒な読書に費やした僕の夏休み--。読んだのが井上靖か、中島敦か、坂口安吾だったかさえ憶えていない。
 ひとり旅を続ける優少年は、ルーマニアのブカレスト駅からソ連国境を越えウクライナのキエフ駅に向かう。夜行の食堂車の光景が鮮烈だ。「スープと一緒に黒パンが山盛りになって出てきた。今までポーランド、ハンガリー、ルーマニアで食べたライ麦パンとは全く別の種類のパンだ。ライ麦の割合が高く、生地が密に詰まっていて、酸っぱい」
 強権体制下といっても東欧・ソ連のそれぞれの国で監視、検閲のありようは微妙に異なっている。十五歳の感受性は、その一つひとつから権力の意思を感じとり、後に稀代のクレムリン・オブザーバーとなる滋養としたのだろう。
 『十五歳の夏』の行間には、憤怒がふつふつと滾(たぎ)っている。銀行の電気技師だった父親が暮らしを切り詰めて出してくれた48万円で東欧・ソ連を横断する貴重な旅をしながら、夏休み明けにある数学の試験に備えて百の例題を解く少年がそこにいる。浦和高校に伝えられる「数学は暗記科目だ」という教えに従おうとするのだが、旅先で見たサーカスの熊のように受験という火の輪をくぐりたくないと思う。これほどの天分に恵まれた少年にこの国の受験制度はなんという拷問を加えたのだろう。可能性に富んだ時間を干からびた社会の常識によって浪費してはいけない--。若者はそんなメッセージをこの少年旅行記から読み取り、「明日は君たちのものだ」と考えてほしい。>

□手嶋龍一(外交ジャーナリスト)「少年旅行記 ~今月買った本 連載190~」(「文藝春秋」2018年6月号)から一部引用

 

 

 

 

 

【南雲つぐみ】足の痛み・しびれ・むくみの傾向と対策 ~股関節をほぐす運動~

2018年05月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 日ごろ座っていることの多い人は、腰を支えるために股関節の周りの筋肉が緊張し続け、固くなりがちだ。
 この筋肉の凝りを放っておくと、下半身の血流が悪くなり、足の痛みやしびれ、むくみが起きやすくなる。股関節をほぐす運動の一つに、フラフープを回す動きがある。
 足は腰の幅くらいに開き、腰や背中に無理がかからないようゆっくりと左右に動かす。リズムに乗ったら少しずつ軽快に回していく。
 右回りか左回りか、人によってスムーズにできる方向は決まっているので、苦手な方向に回すときはゆっくりと無理をしないようにしよう。
 次に、膝を伸ばしたまま片足を挙げて、足先でお風呂のお湯をかきまぜるようにくるくると動かす。バランスを崩して転倒しないようにテーブルなど動かないものにしっかりつかまっておくことが大切だ。10回お湯をかきまぜるように動かしたら、反対の足を上げて同じように動かす。
 足腰の柔軟性を保つことは、ちょっとした段差での転倒を予防するのにも役立ってくれるはずだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「股関節を柔らかく ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年5月10日)を引用

【佐藤優】正しい政官関係を再構築するために ~忖度の功罪~

2018年05月13日 | ●佐藤優
 森友学園問題をめぐる財務省による文書改竄問題、自衛隊のイラク日報問題などが連日、新聞をにぎわしている。ここで問題になっているのは政治家と官僚の関係だ。筆者は平成14年に起きた鈴木宗男事件に外務官僚として連座し、東京地検特捜部に逮捕され、東京拘置所の独房に512日泊した経験がある。その経験を踏まえて正しい政官関係について考えてみたい。
 まず奇妙なのは、あたかも忖度が悪事のように扱われていることだ。より正確にいえば、普段は気配りや思いやりと言われている事柄が、事件性を帯びてくると忖度と言い換えられるようになるのだ。
 霞が関(官界)の住民として政治家と付き合う上で、忖度は絶対に必要だ。永田町(政界)には独特の言語体系があるからだ。具体例を挙げよう。
 官僚が政治家と衝突することはよくある。しばらくして政治家が「あの件についてだけど、俺は気にしていないからな」と声をかけてきたとする。これを翻訳すると「俺には反省することは何もない。お前の方で胸に手を当ててよく考えてみるんだな」ということになる。
 「おたくの局長は忙しそうだな。こんど俺の方からあいさつにいくと伝えてくれ」と言われれば、「局長は俺以外の政治家のところをよく回っているようだな。俺を軽く見るとどうなるかよく覚えていろ。局長にすぐ俺のところに来くるようにと言え」ということだ。
 有力政治家が「俺は聞いていない」ということがある。その発言を聞くと官僚は震え上がる。「俺に相談や報告がない案件だから絶対に認めない」という意味だからだ。
 どこかの企業に不満を持っている場合にも、熟練した政治家ならば、足が付くような表現は絶対にしない。せいぜい「○○物産は行儀がよくないようだな」としか言わない。逆に特定の会社に好意を持っている場合でも「△△建設は熱心だな」というような表現をする。これらの永田町言語を正確に読み解き、対応することが官僚として生き残っていくための必要条件だ。
 無理筋の話に関しては、「私は頭が悪いので先生がおっしゃっていることが何なのかよくわかりません」というような対応をしておけばいい。熟練政治家ならば、過度に官僚を追い込むことはない。専門知識を持った官僚がサボタージュをすれば、自身にとって大きなマイナスになることを、経験を積んだ政治家ならば理解しているからだ。
 官僚は身分を保障されている。政治家と対立しても、クビになることも、降格されることもない。出世しなくなることはあるが、それは仕方ない。
 子供の頃から褒められてばかりいて怒られることが極度に苦手という官僚がいる。この手合いが過剰な忖度をして、政治家におもねる。こういう官僚に政治家は「尻尾を振ってくる犬はかわいい」というような態度で接するが、重要な事柄は相談しない。
 霞が関(官界)には4つのタイプの官僚がいる。
 第一は、能力も倫理観も高い官僚だ。
 第二は、能力は高いが倫理観が低い官僚だ。
 第三は、能力は低いが倫理観は高い官僚だ。
 第四は、能力も倫理観も低い官僚だ。
 これに対して、永田町(政界)には4つのタイプの政治家がいる。
 第一は、能力がありやる気もある政治家だ。
 第二は、能力はないがやる気だけはある政治家だ。
 第三は、能力はあるがやる気のない政治家だ。
 第四は、能力もやる気もない政治家だ。
 この中で、「能力はないがやる気だけはある政治家(あるいはその配偶者)」と「能力は高いが倫理観が低い官僚」が結びつくと、国家にとっても国民にとっても不幸なことになる。
 正しい政官関係を再構築するために現在必要なのは政治家(特に与野党を問わず若手)の能力と官僚の倫理観の向上だ。
 霞が関には能力も倫理観も高い官僚がたくさんいる。その力が政治と結びついていない状況を変えるために、官僚一人一人が少しだけリスクを取る覚悟を持って本気で政治家を支えてほしい。

□佐藤優(作家)「忖度・・・・正しい政官関係 ~世界裏舞台~」(「産経新聞」 2018年4月15日)を引用

 【参考】
【佐藤優】中東の歴史、動かす引き金 ~エルサレム問題の波紋~
【佐藤優】資本主義の先にある社会の展望とその可能性 ~労働時間の短縮と人間関係の強化~
【佐藤優】米ロ首脳会談でみえたトランプ氏の外交手腕
【佐藤優】【加計学園疑惑】官邸最高レベル指示を「闇文書」にした理由
【佐藤優】「入口論」から完全に訣別した首相と外務省 ~北方領土~
【佐藤優】「イスラム国」の延命 ~米軍のシリア攻撃が可能にした~
【佐藤優】又吉進外務省参与は沖縄史の汚点になる
【佐藤優】トランプ大統領とロシアなら取引は可能だ ~ロシア~
【佐藤優】金正恩はなぜ金正男を殺したのか? ~その「内在論理」~
【佐藤優】盤石な北朝鮮の権力基盤を弱める ~金正男暗殺~
【佐藤優】沖縄報道の植民地主義的な認識 ~朝日新聞~
【佐藤優】マティス国防長官来日/尖閣は安保適用の範囲/北方領土との整合性は
【佐藤優】露外交官の追放問題に見るトランプ氏の能力
【佐藤優】北方領土交渉に必要な反日ロビー活動の封印
【佐藤優】沖縄に対する構造的差別 ~「土人」発言~
【佐藤優】尖閣諸島から米国が手を引く可能性 ~北方領土交渉と日米安保~
【佐藤優】ウズベキスタンにIS流入の危険 ~カリモフ大統領死去~
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【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~
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【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
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【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
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【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
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【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~
【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~
【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~
【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
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【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
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【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~