語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

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【仮想通貨】ビットコインは中国経済をどう変えるか?

2013年12月31日 | 社会
 (1)2013年10月、人民元はユーロを抜いて世界の貿易決済単位として第2位の通貨になった。
 同時期、中国の個人投資家は、手持ちの人民元を仮想通貨ビットコインに交換することに夢中になっていた。中国のテレビや新聞でも、ビットコインへの投資で大金を手にした「ビットコイン長者」が大々的に紹介された。

 (2)これまで存在した仮想通貨には、技術的な問題があった。
  (a)不正な使用を防ぐために高度な暗号技術が必要だ。
  (b)通貨量をどのようにコントロールするか。

 (3)ビットコインは、中本哲史なる人物によって2008年に開発された、とされる。
 ビットコインは、「マイナー」というソフトをダウンロードすることで、誰でも「採掘(発行)」できる。
 「採掘(発行)」のプロセスは巧妙なアルゴリズムによって制御されていて、全体の採掘量がほぼ一定に抑制されるよう設計されている。中央銀行の代わりにコンピュータプログラムによって流通量がコントロールされ、価値の暴落を防ぐ仕組みになっているのだ。
 ビットコインは手数料なしに送金できる。この手軽さもあって、またたくまに世界各国の通貨との交換市場が創設されていった。

 (4)最近、ビットコインの「価格」が急上昇したきっかけは、中国の大手ネット関連企業(検索サイトの百度(バイドゥ)やアリババなど)が相次いでビットコインとの連携ビジネスを始めたことだ。今や、世界のビットコインの3割が中国を通じて取引されている、と言われる。
 2013年夏ごろには1ビットコイン=100ドル前後で推移していたが、12月初め、一気に1,000ドルを超えた。バブルというへき様相を呈するに至った。
 12月5日、中国人民銀行は、国内金融機関がビットコインを取り扱うことを規制する通達を出した。
 これに伴い、百度もビットコインによる決済を停止する、と発表した。また、ビットコイン・チャイナ(最大のビットコイン交換プラットフォーム)は、取引参加者の実名登録制を導入するようになった。
 これら、中国における一連の規制強化の動きを受け、ビットコインの価格は急落したが、すぐ持ち直し、その後も変動を続けている。

 (5)かくのごとく、現実の経済現象にも多大な永久を及ぼし始めたビットコインの本質は何か。
 その流通の大きな部分が中国を通じて行われている、という事実は、今後の中国ないし世界の経済に、どんな影響を及ぼしていくか。
 ビットコインは、中央銀行を持たない通貨だ。ハイエクのいわゆる「自由発行通貨」に比せられることも多い。
  (a)ビットコインは、「多くの人によって受領されるという事実のみが、その価値を支える」という「貨幣」の本質を満たした存在だ。ただし、国家などによって価値を担保されていないビットコインは、本質的に不安定な存在だ。いずれ中公銀行的機関が生まれて全世界の流通を管理し、それによって新たな国際金融の秩序が生み出されるかもしれない。【岩井克人】
  (b)他方、ビットコインは投機の対象となる「資産」の性格も持つ。中国の過剰な流動性(<例>不動産バブル)が、ビットコインという手軽な投機対象に向かった、というだけのことかもしれない。
 ただ、不動産のような投機対象と異なって、仮想通貨の価格動向は国境を肥えて全世界に伝播する。
 人民元はハードカレンシーではないため、これまでは中国のバブルが崩壊しても、世界経済に対する伝播は限定的なものにとどまる、とされてきた。
 しかし、人民元が国際化する前に、中国の過剰マネーがより大規模な形でビットコイン市場に流れ込み、主要通貨の為替レートや各国の株式市場に影響を及ぼすような状況が生まれるかもしれない。

□梶谷懐(神戸大学准教授)「仮想通貨ビットコインは中国経済をどう変えるか」(「週刊東洋経済」2013年12月28日-2014年1月4日号)
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 【参考】
【仮想通貨】ビットコインは円を駆逐するか?
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【仮想通貨】ビットコインは円を駆逐するか?

2013年12月30日 | 社会
 (1)仮想通貨の典型例ビットコイン(Bitcoin)が、わずかな期間でその価値が何十倍にも上昇している。投機熱をあおったり、麻薬取引などに利用されることを懸念した中国人民銀行や米国FBIなどが、注意喚起や摘発に乗り出す事態に発展している。

 (2)仮想通貨とは、モバゲーなどネット上の特定のサービス内でのみ流通・取引されている物質性のない通貨を指す。スイカなどの電子マネーや企業が発行するポイントを含める場合がある。
 ビットコインは、電子マネーやポイントなどと違って、発行主体(企業)が存在せず、国境を超えて世界的に流通している点が新しい。
 ビットコインは、サーバーを介さず、コンピュータ同士のネットワーク上に存在する。ために、記録が残りにくい。入手方法は、
  (a)取引所で既存通貨とデジタル通貨を交換する。
  (b)無料ソフトを使って自ら「採掘」する。採掘量に上限が設定されているから希少性が生まれ、ビットコイン自体の価値を担保している。ビットコインは、金本位制における金に相当する。

 (3)銀行の立場からすれば、自分でデータとして持っていればよいから銀行への預金が不要で、銀行業が成り立たなくなる。
 利用者の立場からすれば、(a)銀行取引を介さないので、送金手数料を安く抑え、匿名性を保てる。ただし、(b)価値が大きく変動するリスクがある。
 国家の立場からすれば、お金として認められていないビットコインからは税金を徴収しにくい。加えて、その匿名性を悪用して武器や麻薬の取引に使われるリスクがある。

 (4)遠い将来、仮想通貨が円やドルなどの現実の通貨にとって代わる日が来るのだろうか?
 ビットコインの発行量は、2,100万枚が上限になっている。仕組み上、誰か発行者がいて信用の裏付けとなることはあり得ず、世界の主要通貨としては流通の絶対量が足りない。
 流通規模は、まだ小さい。
 一般の人々の認知度は低い。
 何よりの限界は、リアルマネー(ドルや円)と交換できることが価値の源泉である点だ。
 ビットコインは、政府(中央銀行)の通貨権を脅かす存在にはなり得ない。

□記事「仮想通貨は円を駆逐するか」(「週刊東洋経済」2013年12月28日-2014年1月4日号)
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書評:『三十九階段』

2013年12月29日 | ミステリー・SF
 南アフリカのブールワーヨでひと財産を稼ぎ、ロンドンへ戻って3か月目の5月、リチャード・ハネー、元鉱山技師、37歳はすっかり退屈していた。気候は不快、出会う人々の会話はいただけないし、娯楽は気の抜けたビール同然ときている。名所見物には飽き、劇場や競馬場は見つくした。
 クラブで読んだ新聞に、ギリシア首相カロリデスの記事があった。彼こそ第一次世界大戦の危機を救う最後の切り札だ、うんぬん。
 その夜、アパートの自室に入りかけたハネーの前に、やせて油断のない目つきの男が立ちはだかって言った。
 貴君を冷静な人と見こんでお願いがある。戦さを起こし、どさくさに革命を企てる無政府主義の一味がいるが、そのもくろみをぶち壊したのがカロリデス。その彼を無政府主義者が始末しようとしている。6月15日、彼が訪英するときに暗殺される。その方法を自分は知ってしまった、うんぬん。
 ハネーはいくぶん眉唾の思いでスカッダーと名のる謎の男を自室にかくまうが、半時間のうちにインド駐留英軍の、現在休暇中の将校に変装した彼の演技は堂に入ったものだった。
 そして4日目の夜、外出先から帰宅したハネーは、心臓を長いナイフに串刺しにされたスカッダーを発見した・・・・。

 本書は、推理小説、スパイ小説の古典であり、このジャンルのその後の原型となった。角川文庫にも訳書がある(『ザ・スパイ』、1967)。
 まきこまれ型スパイ小説である。
 だが、巻き込まれるのは三好徹的な一介の市民、日々汗をして働く市民ではない。イギリス中産階級の、ただし長期休暇中の有閑人である。
 時代はベル・エポックの名残をひく第一次世界大戦前夜。
 されば、全編におおらかさがただよう。たとえば「3 文学好きの宿屋の亭主の冒険」あるいは「4 自由党候補の冒険」。「5 眼鏡をかけた道路工夫の冒険」では、飲んだくれの道路工夫に変身したりもする。変装というものはその役割に没入することだ、と語ったローデシアの老スパイの言葉を引用しつつ。

 そして、敵の一味に追われつ横断するつスコットランドの田園地帯が冒険に彩りをそえる。
 そう、スパイを捕捉するスパイ小説だが、じじつスカッダーの手帳に記された暗号を解いたり、変装を見破ってスパイを摘発したりもするのだが、主人公の気分は退屈な日常に活をいれる冒険だ。

 危機を活力(運転する車が渓谷に落ちてもへこたれない)と才知(初対面の議員候補からヨイショの演説を頼まれて器用にこなす)で切りぬける。観察眼(まったくの別人に変装したスパイの親玉をほんのちょっとしたそぶりから見抜く)と推理力(断片的な覚書から正しい結論を導きだす)にもめぐまれた主人公は、その後量産される冒険小説の主人公の典型の一つとなった。
 しかし、背景をなすおおらかさな時代とスコットランドの自然は、後世の有象無象がよく模倣できるところではないだろう。

 本書を最初に映画化したヒッチコック作品は、いま見るとさすがに古めかしいが、傑作の噂が高い。その後、なんどもリメイクされたが、見るにたえる作品は、ドン・シャープ監督による1978年版(英)くらいだ。

 ジョン・バカンは、1875年生、1940年没。英国の弁護士、軍人、政治家、評論家、歴史学者、実業家として多方面で活躍した人物。「実業家を自分の職業とし、書くことを娯楽とし、政治は自分の義務とこころえる」とはジョン・バカン自身の弁。カナダ総督在任中に事故死した。

□ジョン・バカン(小西宏訳)『三十九階段』(創元推理文庫、1959)
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【佐藤優】ロシアとEUに引き裂かれる国 ~ウクライナ~

2013年12月28日 | ●佐藤優
 (1)ウクライナ情勢が不安定になっている。
 きっかけは、11月21日、ビクトル・ヤヌコビッチ・ウクライナ大統領の方針表明だ。これまで進めていたEUとの経済連携強化の協定交渉を突然中止し、ロシアとの関係を強化する方針だ。

 (2)この方針転換に反発する十数万人規模の反政府集会が、連日続いている。
 反政府集会を最初に呼びかけたのは、ムスタファ・ナイェム・「ウクライナ・プラウダ(ウクライナの真実)」(地元のインターネット・メディア)記者(32歳)だ。
 <元々、親ロシアとされるヤヌコビッチ氏。それでも2010年に大統領に就任以来、大多数の国民の悲願であるEU加盟を目指し、約2年間、法整備を進めてきた。ナイェムさんら地元メディアはそうした状況を熱心に報道。それだけに、突然の路線転向は裏切られた気分だった>【注1】
 <「これは深刻だ。独立広場に集まろう」。政府が路線転向を発表した21日夜、自宅でフェイスブックに書き込んだ。たちまち約600人が集まった。9年前のこの日、大統領選で親ロシアを掲げたヤヌコビッチ氏が親欧米派の候補を破って当選したが、一部市民らが抗議して選挙を無効にするという「オレンジ革命」が始まっていた>【注2】
 <翌日、別の場所では主要3野党による集会も始まった。彼らに合流するよう呼びかけ、数日後に集会は統合。瞬く間に十数万人規模になった>【注3】
 <合流を見届けた後、集会の主催側から抜け、今は記者活動に専念している。記者として政治活動をしたことに後ろめたさもある。だが、ナイェムさんは言う。「日本を含め、どんな国でも記者が政治的な活動に関与せざるを得ない一時期はあるはず。この国ではいまだに市民は治安部隊に殴られ、汚職もひどい。批判覚悟で呼びかけ、数日後に集会は統合。瞬く間に十数万人規模になった>【注4】

 (3)ウクライナ東部、南部には、自分は広義のロシア人だ、という自己意識を持っているウクライナ人が少なからずいる。そもそも、帝政ロシア時代、ウクライナは小ロシアと呼ばれていた。東部、南部、中央部のウクライナ人は、日常的にロシア語を話す。宗教はウクライナ人の大多数は正教徒だ。軍事的にも経済的にもロシアと緊密な関係を維持している。東部の軍産複合体、宇宙関連企業と結びついたウクライナ人は、ロシアとの連携強化を望んでいる。
 他方、西部のガリツィア地方は、歴史的にハプスブルグ帝国の版図で、同帝国解体後はポーランドに属していた。ガリツィア地方がソ連領ウクライナと統合されたのは、第二次世界大戦後のことだ。ガリツィア地方のウクライナ人は、日常的にウクライナ語を話す。宗教はカトリック教徒が多数派だ。ガリツィア地方の人々は、ロシアを嫌い、EUとの統合を強く望んでいる。

 (4)大多数のウクライナ人は、とにかく生活がよくなれば、EUとロシアのどちらと組んでも構わない、と思っている。
 ヤヌコビッチ大統領は、ロシアとの連携強化論者だ。これまで嫌々進めてきたEUへの接近を止めたら、欧米のNPO、NGOとつjながるウクライナの政治団体が本格的な異議申し立て運動を始めた、ということだ。
 12月17日、ヤヌコビッチ大統領は、モスクワでプーチン・ロシア大統領と会見し、ロシア寄りの姿勢を鮮明にした。
 ウクライナ国内における対立は、いっそう激化する。

 【注1】記事「反政府集会、きっかけは地元記者の書き込み ウクライナ」(朝日新聞デジタル 2013年12月14日19時52分)
 【注2】前掲記事。
 【注3】前掲記事。
 【注4】前掲記事。

□佐藤優「ウクライナ ロシアとEUに引き裂かれる国 ~佐藤優の人間観察 第51回~」(「週刊現代」2014年1月4・11日号)
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【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~

2013年12月27日 | 社会
 (1)正社員として若者を大量に採用し、酷使して、半年から数年で離職させるような企業・・・・それが「ブラック企業」だ。
 ブラック企業では、過労のあまり鬱病となる20代社員が頻発し、自殺・過労死する者も珍しくない。
 ブラック企業は、今後も増え続けるだろう。

 (2)そもそも、「正社員」の労働条件は、法律の定めるところではない。労働契約や労使の合意(団体交渉・労働協約)によって決まる。
 しばしば日本型雇用=正社員と言われるが、「正社員とは、終身雇用、年功賃金、社内訓練の充実した社員だ」と法律が定めているわけではない。日本型雇用は、労使関係・労務管理の一つのあり方にすぎない。

 (3)ブラック企業は、新しい労使関係・労務管理の形だ。
 ブラック企業は、急成長したIT、外食、小売業界などの新興企業に多い。急激に成長した企業には、労働組合がなく、労務管理の伝統や長期的な計画が乏しいため、若者の「使い潰し」が発生しやすいからだ。
 <例>急成長した大手居酒屋チェーン店が、長時間・低賃金労働の末に過労死・過労自殺事件を引き起こしてる。
 ブラック企業の業務は単純化されていて、いつでも替えが利く。だから、長期的な育成を行わず、次々と使い潰すことで利益を上げることができるのだ。

 (4)かかる新興企業への若年労働人口の移動は、今後も進んでいく。市場経済は、産業構造の転換を必然的にもたらすからだ。
 <例>今後急速に普及していく人型ロボットによって、製造業に必要な労働者はさらに削減される。仕事を記憶し、自律してライン作業に従事できる汎用型ロボットは、200万円程度で購入可能だ。
 かくして、製造業の雇用はより高度なものに絞られていく。従来型の労使関係不在の新興企業へ、労働人口は移動していくことになる。
 また、製造業の単純労働の担い手が新産業へ移ると、新興企業の正社員との競争はさらに激化する。これもブラック企業の増加を促す要因となる。

 (5)すでに問題化しているように、ブラック企業は社会を壊す。
 若年労働者に鬱病が蔓延する。
 傷病手当金受給者のうち、若年労働者層の鬱病によるものが断トツになり、その額が急激に増加している。

 (6)労働の単純化が避けられないにしても、長時間労働による「使い潰し」は避けなければならない。
 従来型の賃金上昇が望めなくても、健康を害さずに最低限の生活が可能になるような「持続可能な労働形態」を生みださないと、日本の少子化や医療費膨張を抑制できない。

 (7)労使交渉の主体である労働組合は、従来型産業で働く段階世代がリタイアすることで、今後5年のうちに急速に組織率が低下する。
 労組は、新興産業の労働者を組織しなければ生き残れない。
 ブラック企業の観点からも、組織率の観点からも、従来型の日本型雇用にとらわれないで、新しい要求を掲げる労働運動が求められる。
 日本型雇用ではない「そこそこの働き方」を求める労使交渉が、今後広がっていくはずだ。

□今野晴貴(NPO法人「POSSE」代表理事)「ブラック企業 激変する若年労働者市場 労使間の話し合いは不可欠」(「週刊ダイヤモンド」2014年1月4日号)
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 【参考】
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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【INET】LINE成功の理由、動画・写真系の流行 ~SNSの現在・未来~

2013年12月26日 | 社会
 (1)今もっとも注目されているSNSは、韓国資本のLINE。フェイスブックやツイッターと並んで、グローバルプラットホームの一角を完全に占めるに至った。
 利用者数は、日本国内だけで5,000万人。世界中で3億人。
 もともとフィーチャーフォンのショートメッセージ機能を代替するメッセージングサービスとして設計されたLINEは、親しいグループ内での閉鎖的コミュニケーションに適した構造を有する。
 フェイスブックやツイッターなど、比較的開放的な米国製サービスとは対照的だ。それが、新たな市場を開拓できた要因になっているらしい。

 (2)フェイスブックのアクティブ利用者数は、日本国内で2,100万人(2013年8月現在)。ミクシィ(1,400万人前後)を完全に凌駕して普及した。
 ツイッターは、1,300万人前後と推定される。

 (3)これまで日本では、インターネットのサービスは2,000万人前後で頭打ちになることが多い、と目されてきた。
 高リテラシー層(PCを使ってインターネットに接続する)の数がその程度だった、ということだ。
 2ちゃんねるも、ミクシィも、いまのフェイスブックやツイッターも、この限界を完全には超えることができていない。
 他方、LINEやグリー(ソーシャルゲーム、利用者数はピーク時で3,000万人)はこの壁を越え、地方、若者、主婦層などを取り込んで大幅に市場を拡大させてきた。

 (4)2014年のSNS。
  (a)フェイスブックやツイッターは、都市部のビジネス層を中心に定着している。今後も安定的に利用されていくだろう。
  (b)グリーは、携帯電話市場がフィーチャーフォンからスマートフォンに移行した変化にうまく対応できず、失速している。今後のソーシャルゲームは、アップルやグーグル(スマートフォンのアプリ市場を支配している)のプラットフォーム上で、国内の各ゲーム開発企業が乗る形で進むだろう。
  (c)LINEは、最初からスマートフォン向けに展開している。当面の不安材料はない。
  (d)要するに、今後のSNS市場は、①開放系のフェイスブックとツイッター、②閉鎖系のLINE・・・・という2つの基盤を軸にして進化していくだろう。

 (5)(4)-(d)の基盤の上に立って、さまざまな副次的サービスも利用されるようになっている。
  <例1>写真共有サービスのインスタグラム(フェイスブックに買収された)。
  <例2>6秒間の動画を共有するヴァイン(ツイッターに買収された)。
 最近では、スナップチャットというサービスも人気を呼んでいる。友人と共有した数秒後にはメッセージや写真が消えてしまう(プライバシーが漏洩しないように)のだ。
 かかる動画・写真系のSNSが、2014年には怒濤の勢いで進化していくだろう。

□佐々木俊尚(ジャーナリスト)「ソーシャルネットワーク 閉鎖系で成功したLINE 動画・写真系は今後も流行」(「週刊ダイヤモンド」2014年1月4日号)
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【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~

2013年12月25日 | 社会
 (1)厚生労働省が、「ブラック企業」の労働実態を2013年9月に1ヵ月にわたって初めて調査し、その結果を12月17日に発表した。
 全国労働局による過去の監督実績、離職率の高さなどを基に調査した。違法が疑われた5,111事業場のうち、実に82%(4,189事業場)で違法行為が横行していた。
 サービス残業、名ばかり管理職、賃金不払い、職場のパワーハラスメント・・・・違法行為のオンパレードだった。
 主として時間外労働、賃金不払い残業、過重労働による健康障害防止措置の不備などの労働基準関係法違反が指摘され、これらの企業には労働局から是正指導が入った。是正されない場合、送検され、企業名が公表される。

 (2)調査にあたって最初に疑わしい企業が抽出されているとはいえ、8割強の企業で違法行為が放置されているのは異常事態だ。
  (a)違法企業の典型事例として目立つのは、依然、「名ばかり管理職」が横行している点だ。「名ばかり管理職」とは、十分な権限・報酬がないのに管理職扱いをされ、残業代を支給されない従業員のことだ。マクドナルド訴訟で社会問題化した。ある企業では、半数程度が20代であるにもかかわらず、正社員の7割を係長以上の管理職(管理監督者)として取り扱い、残業代を払っていなかった。
  (b)営業成績の出来不出来によって、基本給を減額していた事例も散見される。ある企業では、始業・終業時刻を従業員の静脈認証で把握していたが、その記録と残業申請記録との間にギャップがあり、時間外労働賃金が適正に支払われていなかった。かかる小手先の小細工で残業代を抑制する事例は、他の企業でも多数存在した。
  (c)さらに悪質なのは、定期賃金の不払いだ。驚くべし、約1年にわたって支払われていないにもかかわらず新規採用が行われていた事例もあった。

 (3)今回の調査では、日本全国にある427万事業場の0.1%をサンプル調査したにすぎない。今回浮上した悪質な事例は、氷山の一角だ。
 ために厚労省は、監督姿勢の強化を継続する構えだが、企業を指導・監督する労働基準監督官が3,000人しかいないことが問題だ。マンパワーが足りないのだ。
 国家公務員数が削減傾向にある中、監督官を増やすことはできない。【厚労省幹部】
 この結果、一罰百戒に期待せざるを得ない状況が続く。
 
 (4)対象企業の業種別構成比に見られるとおり、製造業、商業、運輸交通業、接客娯楽業・・・・工場労働者、外食・小売り・ホテルといったサービス業の従事者、トラック運転手といった職種の労働実態が特に問題視されている。
 厚労省は、「集団指導」で効率的な是正強化を進める方針だ。<例>業界団体を通して注意喚起を促す。

 (5)副次効果もあった。
 ブラック企業調査がセンセーショナルにメディアで取り上げられたこともあって、調査期間中に労働者からのタレコミ(通報)が2,500件も殺到した。
 常に労働局が目を光らせている・・・・という姿勢が、ブラック企業の減少につながる可能性がある。

□浅島亮子(本誌)「厚労省初「ブラック企業調査」 違法行為8割の呆れた実態」(「週刊ダイヤモンド」2014年1月4日号)
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 【参考】
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
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【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
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【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
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【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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【メンタル・スケッチ】聖夜

2013年12月24日 | 詩歌
  クリスマス・イブには
  いつも セルマ・ラーゲルレーヴの薄い書物
  「キリスト伝説集」を読み返えす

  小学生の息子は毎晩三時間はテレビを離れない
  たしか おととしごろから
  サンタ・クラウスも信じなくなった

  私は四十才をすぎてもなお
  スエーデン人の語る聖なる幼な子を愛している
  しかし息子にセルマのような優しい祖母はいない

  神さまというかたがおいでだとすれば
  家族そろって食卓を囲んだときに
  かならず欠けている あの寂しい誰かのことだ

  クリスマスの夜も妻は寝しなに
  粉ぐすりの袋をかさかさ振る
  どんな病気だか生涯知らせることもできまい。

□安西均「聖夜」(『安西均詩集』、思潮社 (現代詩文庫)、1969)
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【大岡昇平】社会を見る眼 ~「末期の眼」・批判~

2013年12月23日 | ●大岡昇平
 丸谷才一は、何度か大岡昇平を論じている。その代表は、『文章読本』の第9章「文体とレトリック」だ。第9章の例文は、すべて『野火』から採られている。つまり、文章読本』の第9章は、文体とレトリックの見地からする『野火』論とも言える。
 丸谷の最後の評論集、最後のと思うが、『別れの挨拶』でも小さな大岡昇平論を収録している。題して「末期の眼と歩哨の眼」。日本文学史における大岡昇平の独特な立ち位置を明快に剔抉する。

 まず、丸谷の論旨をたどろう。
 日本文学史には「末期の眼」という概念があって、これがなかなか人気がある。川端康成が小説作法を求められて書いた随筆「末期の眼」に由来する。川端「末期の眼」は、論旨がはなはだとらえにくいが、全体として死と亡びへの関心が渦巻いている。なかでも大事なのは、引用した芥川龍之介の遺書の、
 <君は自然の美しいのを愛ししかも自殺しようとする僕の矛盾を笑ふであらう。けれども自然の美しいのは、僕の末期の眼に映るからである>
というくだりだ。川端はしきりに賞賛しているが、これだけなら大したことはない。しかし、この随筆全体の文脈のなかに置かれると、芥川の遺書の達意平明な言葉遣いが急に曖昧になり、その分だけ有り難みが増し、その結果、戦前の日本文学を支配した。現在もその気配が少し残っているかもしれない。
 川端「末期の眼」の評判がよかったのは、明治末年以後に形成されて主流となった文学理念に合致していたからだ。換言すれば、川端が芥川の言葉を借りて、その文学理念をうまく要約した。それは、普通の人間には文学はわからないし、書けない、という考え方だった。何かむやみにすごい話で、非情とか冷酷とかを褒めるあまり、健康に生活している者の眼ではなく、もうじき死ぬ者の眼でこの世を見ることを理想としたのだ。そういう眼でとらえたのが本当の現実だ、というわけで、当然、読者はこの見方に感動することを要求された。これが日本純文学という制度の定めた美学だった。
 一つには、わが近代文学が正岡子規以来、わけても歌人や俳人に多いのだが、病者の制作だったため、社会的人間という相よりむしろ生理的人間を重んじがちなことが作用していた。そこへ、西欧の新しい文学流派(浪漫主義・世紀末文学)が押し寄せ、その気風に輪をかけた。その結果、病人こそ文学的人間像の典型であるみたいな風土が確立したらしい。
 かくて、体が健全で食欲が旺盛なのは俗悪で、非文学的で、命旦夕に迫っているのが高級なことになり、せめてそのふりをしようと皆が懸命に心がけたのだ。
 社会的人間であることを嫌う点で、この病者への執着は、例の「余計者」(これも重要な文学用語)とよく似ている。これはロシア文学史の概念で、明治末年以来、日本では非常に受けた。しかし、最初に余計者が登場する根拠であった文明批評の精神はどこかに置き忘れられ、社会がきれいに消え失せた。あれはもともと社会を描くための逆手だったはずなのに、その窮余の一策が常套的な型になり、緊張を失ったわけだ。
 正統的な西欧小説の考え方でいけば、妙に厭がらないで社会とつきあっているからこそ、社会を批評できる。最初からふてれくされて背を向けたのでは、向こう三軒両隣にはじまる世間だの国だのが見えなくなる。
 「末期の眼」と「余計者」は、西欧と違って正統的な小説を書くのがむずかしい風土において、無理やり小説を書こうとするときの切ない工夫であった。後進国の場合、西欧と社会構造が違うので、西欧小説(ジェーン・オースティンが典型)をモデルにした小説が書きにくかったり、無内容になったり、現実味が薄れたりする。そこで必死になって工夫しているうちに西欧小説から離れてゆくわけだが、その離れ方のうち、或る種の成功をもたらしたものは、当然、書き方の型ないしコツとして定着する。ロシア渡来の「余計者」も国産の「末期の眼」も、この種の成功例だった。

 丸谷は、以上のように日本文学史の特徴を指摘した上で、大岡昇平は日本文学史の主流から遠くに位置する、と判定する。
 スタンダールに学んで小説を書く大岡には、いつも西欧の型が意識されていた。もっと具体的には、彼は常に社会小説の作家だった。社会的動物としての人間に寄せる関心は、彼の視線の最も重要なものだった。
 そういう作家が、いまここに居るのが不思議だ、という感覚【注】を大事にしているとき、それは「末期の眼」で世界を見ることにならなかったし、なるはずもなかった。『野火』の西欧的なレトリック、聖書的な比喩がきれいに安定しているのは、一つにはこの条件があるからだ。
 フィリピンの自然が豪奢なくらい美しく描かれるのは、「末期の眼」というレンズを通して捉えられるからだ。しかし、一人称で書かれているその『野火』でさえ、単純に作中人物のレンズだけで処理されているのではなく、作者の叙述というフィルターをかけて、二重じかけになっている。それ故、こkじょには「末期の眼」でではなく、もっと健全な、平静な眼で見られた、人間的悲惨の物語があることになった。同じことは、三人称で書かれたほかの作品の場合、もっと明白になっているだろう。
 ところで、大岡には「歩哨の眼について」という短編小説(ただし、丸谷の分類では随筆)がある。この1950年の作品には、例の「末期の眼」に対する批判が底にあるような気がする。
 <視覚はそれほど幸福な感覚ではないと思われる。(中略)。眼が物象を正確に映すのに、距離の理由で、我々がそれを行為の対象とすることが出来ない。それが不幸なのである>
 要するに、厄災を見ても助けにゆけない、ということらしい。というのは、この随筆が『ファウスト』第二部、望楼守の歌、<見るために生まれ/見よと命じられ/塔の番を引き受けていると/世の中がおもしろい。>の引用からはじまり、同じ望楼守の台詞、<小屋の中が燃えあがる。/早く助けてやらねばならぬが、救いの手は見あたらない。/・・・・・・・・/お前たち、目よ、これを見きわめねばならぬのか!/おれはこんなに遠目がきかなくてはならぬのか>で終わっているからだ。
 救うことはできないがよく見える望楼守とは、小説家だろう。あるいは、大岡が属している流派の小説家では、そういう優しい心が大事だったし、大岡はシニックな口調でそれを隠さなければ自分でも困るくらい登場人物に対して思いやりのある小説家だった。人間的現実へのこの嘆き方は、作中人物と作者との関係として丸谷には十分に納得がいく。「末期の眼」を礼讃して深刻ぶるよ9り、人間的にも文学的にもずっと大人びているような気がする。

 【注】「いまここに居るのが不思議だ、という感覚」とは、(1)あの大がかりな戦争でよくぞ死ななかった、という感慨。(2)諸国の核兵器の膨大な保有量にも拘わらず自分が生きて来た、という感慨。(3)その他、原子力発電その他環境破壊の問題もある。これだけ急激な文化的変化に堪えて生きていることも、ふと気がついて見れば驚くに値しよう。そんなこんなの事情をあわせ考えるならば、自分がいまここに居るのはほとんど奇蹟的なことだとわかる。そういう戦後日本人の典型として、大岡昇平は自分を見ていた。その資格に不足はない。

□丸谷才一「末期の眼と歩哨の眼 -大岡昇平-」(『別れの挨拶』、集英社、2031.10.)
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【政治】国家戦略特区法の危険性

2013年12月22日 | 社会
 (1)12月6日、「特定秘密保護法」が成立した。
 その定めるところもさりながら、国内外から強い批判を受けたのは、強引すぎる立法プロセスだ。
  (a)パブリックコメントの募集期間を通常の半分に短縮。
  (b)審議時間は衆参議院合計で、わずか68時間。

 (2)特定秘密保護法の陰で、「国家戦略特区法」が、わずか8時間の審議でスピード採決された。
 衆議院通過後の内閣委員会ではたった1日しか審議されていない。委員長(民主党)が審議の継続を求めると、与党は委員長をあっさりクビにし、強行採決する暴挙に出た。

 (3)国家戦略特区法は、特定秘密保護法と同様、社会の枠組みを大きく変える内容なのだ。その定めるところと運用において、多くの危険性をはらむ。
 東京、大阪、愛知など大都市圏を中心に、企業が事業をしやすい規制緩和を実施していく。これは、労働、税制、医療、教育など、国民の暮らしに大きく影響する。
 しかるに、政府はなぜか、労働時間、医療、教育を管理する関係省庁の大臣を特区諮問会議メンバーから外した。「意見は聞くが、意思決定に加えない」と、トップダウンで進めて行く方針だ。代わりに、総理を議長とする「国家戦略特区諮問会議」を内閣府に設置。各特区に置く「国家戦略特区統合推進本部」で特区担当大臣、自治体の長、民間事業者の3者が事業計画を作成する。

 (4)国家戦略特区に対する懸念は多い。
 <例>「公教育における株式会社の参入」は、すでに予備校や塾の参入という形で「構造改革特区」の中で実施されているが、効率よく利益を出すために過度に通信制を導入するなど、コスト削減の弊害が問題視され、多くはすでに廃止されている。
 かかる現実を検証する前に、公的予算を民間に流す仕組みを整備することは、多大なリスクを伴う。

 (5)公教育への株式会社参入は、この10年間、米国政府が積極的に進めてきた政策だ。
 全国一斉学力テストが導入され、点数ノルマを達成できなかった学校は統廃合された。貧困地域など生徒の環境自体にハンディのある公立学校の教師は、平均点の低さを口実に、次々と降格され、解雇された。
 公立学校が淘汰された後を引き受けるのは、株式会社経営の学校だ。国からの公的教育予算は配当金として分配される仕組みなので、株主の意向が最優先される。学校の人気を維持するため、学力の低い子どもの入学許可はなかなか下りない。「公教育」の一部として公的予算を受け取りながら、実際には教育難民を増やしている。本来の趣旨に逆行する事態が起きている。
 この政策が米国社会にもたらしたものは、公教育の解体と、教育ビジネスの株価上昇だった。

 (6)こうしたグローバル企業にとって、教育に限らず、日本は魅力的な市場だ。
 米国は、「特区内で事業展開できるよう非差別的なアクセスを確保する」ことを日本に求め(2002年の年次改革要望書)、安倍総理は「企業が活躍しやすい国を目指します」と、所信表明演説で言及した。
 10年以上前から、日本の米国追随方針は変わっていない。
 しかし、総理は国民の代表であって、企業ロビイストの長ではない。企業にとっての最大目的の「株主利益拡大」と、国民の税金で国の未来を担う「公益」とは切り離して進められるべきだ。

 (7)特定秘密保護法【注】によって、企業活動に係る情報も秘密指定できるようになった。
 政治と企業との不適切な癒着(コーポラティズム)が拡大するリスクは免れない。
 拙速に可決した国家戦略特区法は、国民にその定めるところを正確に周知し、現場の声を反映した丁寧な議論を抜きに進めてはならない。

 【注】
【原発】推進 ~成長戦略なき「成長戦略国会」の陰で~
【秘密保護法】日本版NSCは「戦争指導最高会議」 ~元官僚の観点~
【新聞】経営者の関心は秘密保護法より軽減税率

□堤未果(ジャーナリスト)「秘密保護法だけじゃない! 疑問だらけの悪法で日本は食いつくされる ~ジャーナリストの目 第188回~」(「週刊現代」2013年12月28日号)
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 【参考】
【米国】と日本における民営化の悲惨 ~株式会社化する国家~  
【米国】における公的サービス民営化の悲惨(2) ~社会保障~
【米国】における公的サービス民営化の悲惨(1) ~教育~
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【原発】推進 ~成長戦略なき「成長戦略国会」の陰で~

2013年12月21日 | 震災・原発事故
 (1)安倍総理は、先の国会を「成長戦略国会」と名づけた。
 が、中身は完全に空っぽ。「改革」という名のバラマキだけが目立つ。

 (2)政権発足と童子に、大々的に打ち出されたのはアベノミクス。その第三の矢となる「成長戦略」を策定するために、規制改革会議や産業競争力会議が設置された。
 が、完全に失速。6月の成長戦略の目玉は、無惨な結果で終わった。医薬品のネット販売全面解禁の「口約束」だけだった。

 (3)市場は、さすがに失望した。総理の発表会見中に株価大暴落という大失態となった。
 狼狽した官邸が慌てて打ち出した戦略は、先延ばし作戦だった。「秋に思い切った成長戦略をだす」・・・・
 しかし、今秋の「成長戦略国会」では、
  (a)6月に全面解禁が約束されていた医薬品のネット販売の議論が蒸し返され、
  (b)しかも、全面解禁どころか、現状より規制を強化する、というオチがついて終わった。

 (4)マスコミを騙して「戦後農政の大転換」と見出しを付けさせた「減反廃止」も、実質的な減反維持・米価維持政策で、バラマキはいっそうひどくなる、という驚きの内容になった【注】。
 いずれも、官僚の仕業だ。
 今回の成長戦略の目玉とされる産業競争力強化法でも、
  (a)企業に税金をまける、というバラマキと、
  (b)経産省などの官僚が企業再編を誘導する、という官僚主導の産業政策の完全復活になっている。

 (5)規制改革も、国家戦略特区法を作っただけ。
 名前は立派だが、地域限定で痛みを伴わないことだけをやろう、という内容だ。
 企業の申請があったら、官僚利権(各省縦割りで官僚が個別にサジ加減をして部分的に規制緩和する)を拡大するだけの制度が産業競争力強化法に潜り込む、というオマケもついた。

 (6)こんな内容では、さすがにマズイ・・・・と安倍総理も気づいたのか、国会閉幕の記者会見で、「安部政権の改革に終わりはない」と予防線を張った。
 これは、6月の失敗を念頭においた官僚の作文だ。
 「これが安部政権の成長戦略だ」と言えば市場はまた失望売りになるかもしれないから、年明けにもっと具体的なものが出てくると、またもや先延ばし戦術に出たのだ。
 「改革に終わりはない」・・・・とは、実は改革をサボッているから一向に進まないことの裏返しなのだ。改革の入口で立ち止まっているから、終わるはずがない。
 官僚の作文に、そのまま乗っかっていることがよく分かる。

 (7)臨時国会後半、特定秘密保護法案にマスコミの関心は集中し、「成長戦略不在の成長戦略国会」となってしまったことに批判はほとんど出なかった。
 他方、成長戦略のジョーカーとして登場したのが、「原発推進」だ。エネルギー基本計画の策定作業が、なぜか、原発事故最大の責任者で、かつ、電力会社の手先となってきた経産省によって進められている。
 その原案が、ついに表舞台に登場した。なんと、脱原発の方針を完全に捨て、原発の更新、さらには新設まで認めようとしている。
 経団連企業にとっては、またとない「成長戦略」だ。

 【注】「【アベノミクス】似而非改革 ~「減反廃止」~

□古賀茂明「成長戦略なき「成長戦略国会」 ~官々愕々第91回~」(「週刊現代」2013年12月28日号)
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【メンタル・スケッチ】群衆

2013年12月20日 | 詩歌
   

  その坂を急ぎゆく群衆があり
  その坂を急いで降りゆく群衆があり
  はれやかなほほえみをうかべ追いたてられるように
  いずこへともなく消えていく・・・・

  もしぼくがぼく自身の番人でないならば
  まして兄弟たちの番人でもありえない
  ふりかえりざま 冬の陽ざしを盗み見
  ぼくを見張る幾千の眼をぼくは知る

  朝ならば駅の階段の人ごみのなかに逃げまどい
  ふと陥没する大きな穴をぼくは覗く
  --だから木枯のふき荒れる日

  夜でもいい昼でもいい
  手から手 眼から眼へと親しみをかわし
  肩をくみ歌いながらに群衆にまぎれてゆく

□中村稔「冬」(『中村稔詩集1944-1986』、青土社、1988)
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 【参考】
【本】この1年に出会った本
【中村稔ノート】凧 ~戦禍の記憶~
【中村稔ノート】ある潟の日没 ~震災と戦災~
【読書余滴】追悼、森澄雄の生涯と仕事
書評:『本読みの達人が選んだ「この3冊」』
書評:『加藤周一自選集8 1987-1993』

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【旅】名古屋城本丸御殿襖絵

2013年12月19日 | □旅

















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【旅】ルミナリエ

2013年12月18日 | □旅

















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【旅】薄氷

2013年12月17日 | □旅
 詩仙堂にて。

  

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