語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

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【堤未果】アベノミクスと米国経済の危うい共通点

2014年01月31日 | 社会
 (1)2013年12月28日、米国政府は、130万人分の長期失業手当を打ち切った。理由・・・・経済が回復し始めたがゆえに。
 今後さらに、リーマンショック以来延長を繰り返してきた緊急援助予算は打ち切られる見通しだ。
 2014年末までに、500万人の長期失業者が手当を失う。この流れに、国民の間から強い批判の声があがっている。

 (2)経済が回復しているという政府発表は事実ではない。米国の実体経済は、不安定雇用と高い失業率が続けていることを示している。
  (a)かつてないほどのスピードで「テント村」が拡大している。住宅ローンや家賃が払えなくなって、家を失い、テント暮らしをする人々の数は、リーマンショック以降、減るどころか増えているのだ。彼らの集まる「テント村」は、いまや米国全州に存在し、急速にその規模を拡大させている。
  (b)いま、国民の50人に1人が無収入だ。しかるに、緊急援助予算の削減は失業手当の受給者数を減らすので、統計上の失業者人口と失業率はますます減る。手当を失えば家賃も払えなくなる。住所不定になる。就職活動が困難になる。ここうして職探しをあきらめる失業者の数は、政府データに反映されない。
  (c)米国政府はさらに、いま4,700万人が受給し、新規申請者が2万人/日のペースで増えているフードスタンプ(食糧援助プログラム)を2013年11月以降、50億ドル(5,000億円)削減。今後さらに減額していく方向で審議中だ。
  (d)就職しない若者の増加も深刻な問題だ。
 いま、米国内で未就学にして未就労の若者の数は600万人超。この年齢層の失業率は、16.3%と米国全体の2倍に近い。
  (e)消費が冷え込んでいるため、小売業はクリスマス商戦で売れ残った大量の在庫を抱える。
  (f)家を買う米国人が激減したことから、住宅ローン会社は数千人規模のリストラを実施した。

 (6)(2)のような実体経済と反比例して、報道は明るい。住宅市場は回復、株価は上昇、失業率は下がり傾向、米国経済は回復に向かっている、というニュースを繰り返す。
 だが、かかる政府発表に、国民の多数は眉にツバをつけている。
 国民の7割は、景気は回復していないと考える。【CNNの世論調査】
 いまの株価高騰は、2008年のブッシュ政権以来続いている不良債権買取政策(TARF)や量的緩和など、政府が大量に投入する資金が市場に流れて株価や債券を押し上げているだけだ。住宅価格が上昇しているとしても、11月の販売件数は年初以来最低になるなど、3ヶ月連続で減少中。しかも、購入者の大半は海外投資家だ。【アレックス・ジョイ・弁護士、ロサンジェルス在住】

 (7)一部の人にとっては、米国経済の回復は紛れもない事実だろう。一部の人とは、株価の恩恵を受ける投資家、何があっても税金で救済される銀行、従業員を低賃金労働者に置き換えて利益を増大させる企業群、大統領選(2012年)で30億ドル以上の広告費を得た商業マスコミ・・・・のことだ。
 だが、大多数の人にとっては、無関係だ。大多数の人とは、労働者、失業者、中小企業、学資ローンを抱えて大学を卒業したものの職が見つからない若者、急増するフードスタンプ受給者・・・・のことだ。

 (8)米国政府は、消費を伸ばし、税収を上げるための雇用政策を打ち出す代わりに、フードスタンプを減額した。
 国土安全保障省は、フードスタンプ削減への抗議デモを受け、各地にある社会保障関係政府機関や国税庁の警備を強化した。
 薄氷の上にある米国の現状は、アベノミクス下の日本の現状と重なる。

□堤未果「実体と乖離する景気回復 アベノミクスとアメリカ経済の危うい共通点 ~ジャーナリストの目第192回~」(「週刊現代」2014年2月8日号)
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【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~

2014年01月30日 | 社会
 (1)森喜朗・元首相は、1月18日のテレビで、小泉純一郎・細川護煕の両元首相コンビが主張する「原発即時ゼロ」について批判した。
 「五輪のためにはもっと電力が必要だ。今から(原発)ゼロなら五輪を返上しかなくなる。世界に迷惑をかける」
 森は、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会会長への就任が決まっている。大会組織委員会会長が、原発を動かさない限り五輪は開催できない、と言ったのだ。この発言は、日本だけでなく世界にとっても大きな問題になりかねない。

 (2)大げさに言っているのではない。
 もし、仮に「原発が動かなければオリンピックが開催できない」というのが本当で、かつ、それをIOCの委員たちが知っていたのであれば、2020年オリンピックの開催地を東京に選んでいただろうか。
 自民党政権は、原発を動かさなければ日本の経済は立ちゆかない、と常々言っていた。本当にそうであるなら、日本政府はIOC]に対してどのように説明していたのか。電力が足りない、とか、日本経済は立ちゆかない、とか説明していたのだろうか。
 その答えは、東京2020年オリンピック・パラリンピック招致委員会が、2013年1月7日、IOC本部(ローザンヌ)へ提出した立候補ファイル(14項目)の中にある。250ページを超える豪華なカラー刷りのファイルは、ネットでも閲覧可能だ。全部で60MG超の重たい資料だ。相当のカネを使ったことが一目でわかる。
 問題の箇所は、そのファイルの「08 競技および会場」の項で、121ページ以降に「既存の電力供給能力」に掲載されている。いわく、「原発なしでも2020年の電力需要に『余裕で』対応できる」。

 (3)(2)は、日本政府=自民党政権に対する深刻な不信を惹起する。次の(a)であろうと(b)であろうと、どちらの場合も日本政府が嘘つきであることに変わりない。
  (a)もし、仮に政府が原発なしでは電力供給や日本経済に不安があると信じていたならば、日本政府=自民党政権はIOCに対して大嘘をついていたことになる。汚染水は「アンダーコントロール」と言った安倍総理の大嘘と並んで、嘘で固められたオリンピック誘致だったことになる。
  (b)かたや、もし、仮に、IOCに本当のことを言ったのであれば、今度は日本政府=自民党政権が日本国民を欺いていたことになる。

 (4)森はなぜ、こんな初歩的ミスを犯したのか。
  (a)(2)のファイルを読んだことがなかった。
  (b)読もうとしたが、漢字が読めなかった。
  (c)読んだつもりだが、理解できていなかった。
  (c)読んだが、忘れてしまった。

 (5)本当は、もっと深刻な問題がある。この発言の目的が、東京都知事選の立候補者である細川・元総理とその支持者である小泉・元総理を批判することが明らかだからだ。現に、マスコミはそう伝えた。
 だとすると、日本政府=自民党政権はオリンピックを政治目的に利用していることになる。明白な五輪憲章違反だ。
 こんな森・元総理を、大会組織委員会会長に就けるという。
 もっとまともな人選があるはずだ。

□古賀茂明「森元首相の「お馬鹿発言」 ~官々愕々第95回~」(「週刊現代」2014年2月8日号)
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【NHK】権力と癒着し続けた歴史 ~NHK会長~

2014年01月29日 | 社会
 (1)<NHK新会長の籾井(もみい)勝人(かつと)氏は25日の就任会見で、従軍慰安婦について「戦争をしているどこの国にもあった」と述べた上で、日本に補償を求める韓国を疑問視した。従軍慰安婦問題を取り上げた過去のNHK番組に関連し、この問題に関する見解を問われ答えた。尖閣諸島・竹島など領土問題については、国際放送で「明確に日本の立場を主張するのは当然。政府が右ということを左というわけにはいかない」と話した>【注1】
 これに対し、国内の与野党のみならず、韓国の与野党からも批判が噴出した。
 <自民党の閣僚経験者は「内閣法制局長官など首相は理念が近い人ばかり重要ポストにつける。いろんな価値観の人を置かないからこういう事態になる」と批判。自民党幹部の一人も「ひどい発言。アウトだ」と語っており、今後、政権内で辞任論が拡大するかが焦点になる>【注2】

 (2)経営委員に安倍総理の「お友だち」が次々に送り込まれ、その結果、会長もまた政権の意向が強く反映された人になった。トップが替わったところで放送がいっぺんに変わるものではない・・・・が、それは一面の真実であって、正確ではない。会長が替われば、番組制作現場の気分、さまざまな会議の雰囲気は大きく変わる。

 (3)NHKは、公共放送だが、国営放送と思っている人が2割以上いる。半官半民と思っている人も同じくらいいる。NHKの歴史がそう思わせる。
 1925年、社団法人・東京放送局がラジオ放送を開始した。これがNHKの前身だ。総裁は後藤新平。最初は民間組織でスタートするはずだったが、犬養毅・逓信大臣は、公的なものとして政府の監督下に置いた。逓信省は、放送内容の中で安寧秩序を乱すもの、外交・軍事・官公庁の機密、政治的講演などを取り締まった。露骨な検閲と統制が、ラジオを縛った。政府の都合のよいように流す。最たるものが戦時下の放送だった。戦争遂行のための国策宣伝の道具となり、大本営発表を流し続けた。
 敗戦後、大手新聞は、自身が担った戦争責任を表明した。GHQは、NHKを民主化し、ラジオを通じて日本に民主主義を定着させようとした。民間人17人からなる「放送委員会」が設置され、その場で放送の倫理規範を決め、新会長を選ぶことになった。滝川事件の滝川幸辰、加藤シヅエ、宮本百合子、荒畑寒村、岩波茂雄・・・・。マルクス経済学者の高野岩三郎・大原社会問題研究所長が会長に選ばれた。
 放送法第1条に、民主主義の発展のために放送がその役割を果たさねばならないことが明記された。
 1946年、初めて放送記者が誕生した。政治について市民が語り、笑いとばす「街頭録音」や「日曜娯楽版」が生まれた。食糧難を伝えるニュースに天皇が登場し、同情のことばを述べる。天皇のことばを加藤シヅエが辛辣に批判する。そんな大胆な構成もあった。
 しかし、高野時代は6年しか続かなかった。高野病死後、吉田茂からお目付役としてして送り込まれた古垣鐵郎・元朝日新聞外報記者が会長に就いた。放送委員会は潰された。朝鮮戦争が始まると、古垣は、ラジオ第2放送を米軍対北朝鮮謀略放送に提供した。「NHKは他にさきがけて国策に貢献する」ことを明言した。1952年、サンフランシスコ講和条約発効を機に、放送終了時に君が代を毎日流すことにした。
 その後の会長、永田清、野村秀雄、阿部眞之助は、郵政大臣から「NHKは、もっと国策の徹底をするようにすべきだ」と言われても抵抗できなかった。

 (4)NHKが権力から自立する可能性があったのは、前田義徳・会長時代だ。前田は、放送法の全面改正、独立委員会制度(放送委員会がモデル)をNHK内部につくろうとした。放送の自立をめざす前田の執念に、民放連だけでなく、新聞社も共同歩調をとった。
 前田が争ったのは、田中角栄であり、盟友の橋本登美三郎だった。橋本は、NHKの中に隠然たる人脈を形成していった。
 田中角栄は、子飼いの小野吉郎・元郵政事務次官をNHKの専務理事に送り込み、前田の案を骨抜きにしようとした。
 当時は55年体制で、NHKの組合(日本放送労働組合)もそれなりの発言力を持ち、前田の悲願は国会で実現するかに見えた。ところが、ILOに係る国内法整備にあたって組合専従者をどこで線引きするのかを決める審議会で、同審議会会長を兼務していた前田と、社会党との間でバトルが発生した。そのあおりを受けて、放送法改正案は廃案となった。
 以来、48年間、制度改善ができないまま今日に至る。

 (5)権力から距離を置くNHKを求めた前田は、ヤヌスの面のように、権力に癒着する顔も持っていた。
  (a)NHKが内幸町から代々木公園にある神南に移るにあたり、さまざまな規制緩和が必要で、東京都は反対した。そこで、岡崎英城・代議士(自民党)が動いた。今の巨大な放送センターが生まれた。土地の取引価格は80%も割引された、という。
  (b)沖縄返還のとき、日米調印式は衛星中継された。核や基地の密約はあたかもないように、国家の巨大なセレモニーが垂れ流された。参議院選挙のための宣伝効果をねらったもの、とされる。
  (c)佐藤栄作・総理の退陣記者会見では、新聞記者は全員退席した。佐藤総理は目をむいて、「テレビはどこだ。NHKはどこにいる」と叫んだ。
 (b)も(c)も、前田の佐藤総理に対する配慮だった、と後に会長になる島桂次が書いている。

 (6)前田の後任は、小野吉郎。小野の経歴は、大部分が田中角栄によって作られた。
 小野は、ロッキード事件で逮捕され、東京拘置所から保釈された田中の私邸(目白台)に、NHKの公用車で見舞った。
 小野のこの行動は、ロッキード事件を追及していた報道現場を憤慨させ、NHKと政権との暗部を露呈させた。1976年9月4日、小野は会長を辞任した。
 日放労は、視聴者に向かって広く署名を呼びかけた。次期会長に自民党の意向を反映させない、というものだ。署名は100万人を超し、初のNHK生え抜きの会長を実現させた。坂本朝一だ。
 坂本は、報道のことはほとんど知らないサロン的人物で、事なかれ主義者だという批判もあった。ロッキード事件には熱心には取り組んでいない。
 そんな中、事件が起きた。1981年、「ニュースセンター9時」で、もはや自民党員でもない田中角栄が酒に酔って話す場面や、三木総理のインタビューが放送直前にカットされた。取材したのは社会部。カットを命じたのは、政治部出身の島桂次・報道局長(当時)。組合は激しく抵抗した。その結果、こころある記者は左遷された。その数は40人にのぼった。

 (7)坂本の後任は、やはり生え抜きの川原正人。
 川原の時代、消費税反対の意見が賛成の2倍以上に達している世論調査結果を放送しなかったり、浜田幸一・代議士(自民党)が、衆院予算委員会で、宮本顕治・共産党議長を殺人者と決めつける発言をした生中継をいきなり打ち切ったりした。

 (8)川原の後任は、池田芳蔵(77歳)・元三井物産会長。磯田一郎・経営委員会委員長/住友銀行会長の同級生だ。磯田は、多メディア時代のNHKには財界人がふさわしいと考え、彼のお友だちを連れてきたのだ。
 しかし、池田は最初から孤立した。それは、島桂次・副会長(当時)の指示だった、とされる。伏魔殿NHK。
 池田は、国会で英語で答弁するなど迷走し、わずか9ヶ月で職を去った。

 (9)池田の後任が、島桂次(61歳)だ。1989年のことだ。島は、NHKの経営の黒子として辣腕をふるい、自民党宏池会・宮澤派でも重要な地位にあった。多メディア戦略を掲げて関係団体を次々に立ち上げ、NHK本体の見た目の要員を減らしていった。さらに国際展開にも積極的に乗り出し、NHKの巨大化を推し進めた。
 しかし、島はあっけなく追い落とされた。仕掛けたのは、海老沢勝二・NHKエンタープライズ社長。自民党の郵政族、わけても金丸信らが動いた、とされる。

 (10)島の後任は、伊藤正巳・元最高裁判事のはずだったが、自民党の反対で、辞退。
 川口幹夫・NHK交響楽団理事長が選ばれた。川口は、自民党や民法を刺激することを避けた。永田町とのパイプがほとんどなかった川口は、国会対策に明るい海老沢を副会長にすえた。

 (11)1987年、海老沢会長が実現した。海老沢は、NHKの独立より自民党との強いパイプを大事にした。
 2001年1月、「ETV2001」事件が起きた。放送前日、松尾・放送総局長らが、安倍晋三・官房副長官(当時)と面会し、その後、総局長や野島直樹・総合企画室担当局長は、番組の劇的な改変を指示した。

 (12)海老沢が辞任後、橋本元一・NHK技師長が後任となった。任期満了の日、インサイダー取引の責任をとり、辞任した。
 その後の会長は、財界人だ。福地茂雄はアサヒビール、松本正之はJR東海。  

 【注1】
記事「NHK籾井新会長「従軍慰安婦、どこの国にもあった」」(朝日デジタル 2014年1月26日00時07分)
記事「冒頭発言―NHK籾井新会長の会見詳報1」(朝日デジタル 2014年1月26日03時22分)
記事「領土問題、主張は当然―NHK籾井新会長の会見詳報2」(朝日デジタル 2014年1月26日03時22分)
記事「慰安婦、戦地に付きもの―NHK籾井新会長の会見詳報3」(朝日デジタル 2014年1月26日03時22分)

 【注2】
記事「「NHK会長は慎重な発言を」 与野党、国会審議影響も」(朝日デジタル 2014年1月26日20時04分)

□永田浩三(武蔵野大学社会学部教授/元NHKディレクター・プロデューサー)「NHK会長 その政治的で不可解なるもの」(「世界」2014年2月号)
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【ブラック企業】奨学金という貧困ビジネス ~学生の苦難(3)~

2014年01月28日 | 社会
 (1)奨学金も、学生を追い込んでいる。
 近年、奨学金利用者が急増している。学部生昼間部の奨学金利用者の割合は、23.9%(1998年)から50.7%(2010年)と、全体の5割を超えた。
 日本型雇用の解体に伴う世帯年収の減少が背景にある。世帯年収(中央値)は、544万円(1998年)から438万円(2009年)へと、100万円以上も低下している。
 世帯年収の減少と奨学金利用者の増加と、時期がぴったり重なっている。

 (2)学生の半数以上が奨学金を利用していることに加えて、奨学金制度の悪化が急速に進んだ。全奨学金制度の8割を占める「日本学生支援機構」(以下「JSSO」)の奨学金が旧来のものとは激変した。
 JSSOの奨学金は、第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(有利子)とがある。
 第二種奨学金は、1984年に導入され、1990年代後半に急増した。2007年度には、民間資金の導入も始まった。15年間(1998年から2013年度)に、第二種奨学金の貸与人数は9.3倍、事業費は14倍に膨れあがった。
 かたや、第一種奨学金の貸与人数は1.1倍、事業費は1.5倍だから、奨学金制度の中心は第一種奨学金から 第二種奨学金に移行したことになる。

 (3)全学生の半数以上が奨学金を利用し、利用されている奨学金の8割がJSSOのそれであって、しかもJSSOの奨学金の大半が第二種奨学金であるということは、学生の相当数が多額の借金を抱えていることを意味する。
 事実、奨学金返還の実情は深刻だ。
 第二種奨学金を月に10万円借りた場合、総額は480万円に達する。利率を上限の3.0%とすると、返還総額は646万円となる。大学卒業後、毎月2万7千円の返還を20年間継続しなければならない。夫婦とも借りている場合、返還総額は軽く1,000万円を超し、毎月の返還額は5万4千円にものぼる。これで結婚生活や子育てが可能だろうか。

 (4)返還が滞れば、年利10%もの延滞金が課せられる。
 延滞金発生後の返還は、①延滞金、②利息、③元金・・・・の順に行われるから、元金を減らすことが困難になる。
 60歳近くになっても奨学金返還が終わらないケースさえ生じている。

 (5)2010年度の奨学金の利息収入は、232億円【注】、延滞金収入は37億円に達する。
 これらの金は経常利益に計上され、原資とは無関係のところへ流れる。銀行と債権回収専門会社へ。返還される奨学金は、将来学生が借りる奨学金の原資となるよりも、銀行と債権回収専門会社の利益となっているのが現実だ。
 奨学金を利用するのは、経済的に豊かでない家庭の出身者が多数を占める。奨学金は、一種の「貧困ビジネス」だ。

 (6)奨学金という名の「貧困ビジネス」が学生に与える影響は深刻だ。
 卒業後、多額の奨学金返還をし続けることを心配するあまり、在学中からアルバイトで返還金を貯めている学生が少なくない。これでは、奨学金が「学生の勉強をする時間を確保する」という目的を果たしていない。

 (7)奨学金返還の過酷さは、就活や卒業後の働き方にも影響を与える。
 卒業後、すぐに返還が始まるため、「卒業時に何が何でも正社員にならなければならない」というプレッシャーが学生に重くのしかかる。「全身就活」に拍車がかかり、「ブラック企業」であっても入社せざるをえない、という傾向を助長する。
「ブラック企業」であることが判明しても、奨学金返還があるため、その企業を辞めることができない、という事態も生じ得る。

 (8)第二種奨学金が主流になったため、卒業後の返還が簡単ではなくなったことから、経済的には苦しくても奨学金を利用しない学生も多い。
 彼らの多くは大学入学後に「バイト漬け」生活を強いられる。かかる状況が、「ブラックバイト」をいっそう蔓延させる。
 奨学金制度を利用すべき学生が利用できないのは、制度が機能不全に陥っているからだ。

 【注】「【教育】サラ金より悪質な奨学金 ~利息収入232億円~

□大内裕和「ブラックバイト・全身就活・貧困ビジネスとしての奨学金」(「現代思想」2013年12月号)
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 【参考】
【ブラック企業】全身就活 ~学生の苦難(2)~
【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~
【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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【ブラック企業】全身就活 ~学生の苦難(2)~

2014年01月27日 | 社会
 (1)大学3年の後半から一斉に始まる就職活動が、人によっては卒業まで1年半も続くほど長期化している。何百もの会社にエントリーしても面接まで残るのは数社、といった過酷な就職活動がありきたりのものになっている。
 「就職ルック」「就職メイク」はもとより、就職のための「プチ整形」まで行う学生もいる。まさに「全身就活」だ。
 しかし、「全身就活」は外見のことだけを意味するものではない。

 (2)就職の採用基準は、学生にとって明らかではない。ために、不採用となった学生は、自己の内面を否定し続けることを強いられる。「自己分析」や「コミュニケーション能力」といった錦の御旗の下に、「会社にどうしたら気に入られるか」を考え続けることになる。その過程で、自分の考え方や感情を会社にとって好ましいものへ適合させようとする学生は少なくない。
 全身就活とは、学生が自分の心や精神までをも就職先へ総動員する状態を指す。

 (3)就職活動の実質的なスタートは、大学入学時点だ。1年生から就職向けの講座を受講したり、就活交通費のためのアルバイトを開始する学生は多い。
 多くの学生が、サークル、ゼミ、アルバイト、留学などを「就職にとって有利か否か」という基準で選択する。
 学生生活のあらゆる活動が、就活を成功させるための手段として位置づけられる
 学生生活全体が、就活へ向けて組織化される「全身就活」が学生の間に広がっている。

 (4)「全身就活」は諸アクターが、一緒になって支える。
  (a)学費を負担している親・保護者・・・・正規雇用に就くことを強く望む。
  (b)大学・短大・・・・少子化時代、学生を集めるのに腐心し、新卒就職率を上げることに全力を注いでいる。
  (c)就職情報専門会社・・・・就活に必死な人が増えるほど利潤が上がるから、「就活の厳しさ」をアピールし、学生の不安を煽る。

 (5)「全身就活」とは、学生の多くが自分の心身や学生生活全体を動員しなければならない過酷な状況のことだ。
 「全身就活」しても、就職は簡単には決まらない。人件費削減によって利益を引き上げる企業の増加により、非正規雇用が増し、正規雇用が激減しているからだ。
 「全身就活」は学生を追い込む。「就活鬱」や精神疾患が増加している。最悪の選択が「就活自殺」だ。就活の失敗が、自分の人格や全人生の否定であるかのように感じられてしまうことから発生している。「全身就活」の過酷さは明かだ。

 (6)「ブラック企業」であることがわかていても、就職を決断する学生もいる。「全身就活」の過酷さから早く抜け出したい、という気持ちが「ブラック企業」であっても就職する動機の一つになっている。
 就活の過程で世の中の現実に直面し、それまでは忌避していた「ブラック企業」への入社も「やむを得ない」ものと納得してしまうケースもある。「全身就活」は、理不尽さを受忍するプロセスになっている。

 (7)「日本型雇用」が解体したにも拘わらず、新卒一括採用システムはそのままだ。
 中途採用システムの整備、職業訓練の充実は、十分には進んでいない。
 そんな旧態依然の状況の中で、学生の多くは「全身就活」を行わざるを得ないのだ。

□大内裕和「ブラックバイト・全身就活・貧困ビジネスとしての奨学金」(「現代思想」2013年12月号)
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 【参考】
【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~
【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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【ブラック企業】ブラックバイト ~学生の苦難(1)~

2014年01月26日 | 社会
 (1)2013年6~7月、大内裕和は学生500人を対象に、アルバイトに係る経験について調査した。
 その結果、学生アルバイトが以前より拘束力が強く、ハードな内容になっているだけではなく、質的変化が起こっていることがわかった。 
  (a)スーパーのレジは、ほとんどバイトかパート。正社員は課長くらい。週4日の契約だが、週5~6日は入れられる。20代のフリーターは、シフトをすごく入れられる。
  (b)アパレルでは、正社員はいなくて、全員バイト。低い給料で重労働は当たり前。人手が足りなくて、テスト前に休むことができない。多忙な年始年末はたった3人でシフトを回す。10時から22時までフルタイムで働く。学生アルバイトは辞めることができるが、フリーター枠の人は辞めるのに1年かかる。
  (c)契約書を3ヶ月に1回提出するが、それを無視してシフトを組まれる。テスト週間にバイトのシフトを減らしてもらうこともできない。

 (2)「ブラック企業」という言葉が若者に浸透したのは、2010年末以降だ。「ブラック企業」という言葉が登場した意味は、若者の雇用・労働問題の捉え直しにある。
 1990年代以降、若者の雇用・労働問題の焦点の一つが非正規雇用の拡大だった。非正規雇用の若者は「フリーター」と呼ばれた。自由で気楽な働き方を自ら選び、まじめに働くことなく、容易な労働に従事している若者、というイメージが付与された。
 その後、まじめに働こうとしない若者の呼称として「ニート」という言葉が生み出された。「ニート」は、労働せず、通学もしていない35歳未満の者を指す言葉として使用され、働く意欲に欠ける若者という「レッテル」の機能を果たした。
 「フリーター」や「ニート」という言葉は、若者の雇用・労働問題の要因を「容易」で「意欲を持たない」若者自身の意識のあり方に見出している。これらの言葉は、新自由主義のイデオロギーたる自己責任論によって生み出され、さらにそれを浸透させた。
 これに対して、「ブラック企業」は、企業・雇用者側の労務管理のあり方、働かせ方を批判し、「告発」する言葉だ。「フリーター」や「ニート」という言葉への批判として有効だし、若者の意識のあり方に焦点を当ててきた若年者雇用・労働問題の捉え直しを行った意義は大きい。

 (3)今野晴貴は、「ブラック企業」という言葉の登場を「年越し派遣村」問題などによる「貧困」の可視化に対する世間の反応への批判として位置づけている【注1】。
 非正規雇用の増加が若年層の職の安定を奪い、貧困をもたらしている・・・・という認識が広がったことは重要だ。新自由主義がもたらす矛盾を多くの人が理解するようになったからだ。

 (4)(3)の理解は、他方で、若年層の多くに非正規雇用に就くことの恐怖と、正規雇用に就くことへの過度の執着をもたらした。学生の長期かつ激烈な「就活」はそのあらわれだ。かくて、「就活鬱」や「就活自殺」が多発した。
 正規雇用と非正規雇用を区別するまなざしはより強固なものとなり、正規雇用を選び、それに向けて準備を怠らないことが是とされた。非正規雇用に就くことは、本人の「自己責任」の結果とされた。
 
 (5)正規雇用と非正規雇用の分断、正規雇用に就くことへの過度の執着や自己責任論の蔓延という事態に対して、
「ブラック企業」という言葉は新しい問題提起を行っている【注2】。「ブラック企業」の被害の対象は、正社員だからだ。正社員の長時間労働、パワーハラスメントという問題を提起することで、「正社員=安定」/「非正規社員=不安定・貧困」という図式が相対化される。
 「ブラック企業」によって、正社員になっても安泰ではない、という事実が広く世の中に知られた。

 (6)(1)の調査結果から、「ブラックバイト」という言葉が生まれた。2013年7月にフェイスブック、ブログ、ツイッターでこの言葉が広まり、同年8月には新聞各紙で報道され、世の中に広く知られるようになった。
 「ブラックバイト」は、次のように定義される。低賃金であるにも拘わらず、正規雇用労働者並みの義務、ノルマ、重労働を課されるアルバイトのこと。非正規雇用労働の基幹化が進むなかで登場した。残業代の未払いや過酷な長時間労働など、法令違反を伴うことが多い。
 かつて非正規雇用(パート/アルバイト)は、正規雇用労働の不足を補うものとして登場した。しかし、正規雇用労働の削減に伴う非正規雇用労働の増加は、正規雇用労働者が担っていた仕事が非正規雇用労働者に移行することを必然的に伴う。徐々に、非正規雇用の「補助」労働から「基幹」労働へ変化を遂げていった。
 近年、非正規雇用の「基幹」労働化はさらに進み、学生アルバイトまでその一翼を担うようになった。「バイトリーダー」/「バイト責任者」といった言葉の登場は、学生アルバイトが現場の全体責任を担わされるようになったことを示す。
 正規労働者の減少、さらには消滅という事態が広がっている。

 (7)「ブラックバイト」の広がりは、学生の生活に深刻な影を落としている。週15コマ(30時間)の講義に出て週30時間アルバイトをすれば、合計週60時間労働となり、過労死ラインに達する。
 バイトリーダーの役割を担わされている学生の一人は、講義中にも携帯電話にアルバイト先から頻繁に連絡が入って、絶えることがない。アルバイト現場でのトラブルへの対応を労働時間外にも求められるからだ。この学生は、アルバイト現場に四六時中拘束されている。しかも、労働時間外の対応については無給だ。
 学生の多くは、暇とゆとりを失ってしまった。大学は、2013年現在、「ワーキングプアランド」に変質した。

 【注1】今野晴貴『ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~』(文春新書、2012)
 【注2】前掲書

□大内裕和「ブラックバイト・全身就活・貧困ビジネスとしての奨学金」(「現代思想」2013年12月号)
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 【参考】
「【本】ブラック企業の実態」
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~

   
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【韓国】21世紀でも家父長的な社会 ~離婚急増~~

2014年01月25日 | 社会
 (1)韓国は正月を旧暦で祝う。今年は1月31日が元旦「ソルラル」となる。
 旧正月の連休は、多くの人が故郷に帰り、家族と共に過ごす。
 最近は、正月や秋夕(中秋)が、「楽しさ・家族団欒」より、「ストレス・鬱病・離婚」象徴するものに変わっている。

 (2)正月と秋夕に行う茶礼(チャレ)は、名節(祭日)の中でも韓国人のアイデンティティを代表する風俗習慣だ。先祖の霊を迎え入れるための祭礼で、各家庭で祭壇に20種類以上の食べ物(茶礼床/チャレサン)を供え、拝礼など一連の儀式を行った後、墓参りに行く。
 先祖を供養する儀式に使う食べ物などの準備は女性が担う。膨大な時間と労力を要する大変な作業だ。名節がくる前に頭痛や疲労に悩まされて、「名節症候群」なる言葉が生まれるくらいだ。
 他方、男性は、親戚や友人と酒を飲んでばかりで、妻を手助けすることはほとんどない。そもそも、韓国男性の家事労働時間は、1日平均45分で、経済協力開発機構(OECD)諸国中、最も短い。

 (3)女性が、家父長的な雰囲気の下で不平等な待遇を受ける。・・・・これが原因で、この5年間、正月と秋夕直後の離婚件数が増えている。
 名節による離婚には、宗教的理由がからむこともある。大多数のキリスト教信者は、祭事参加をタブー視する。しかし、妻が信仰に基づいて先祖祭事を拒否すると、夫の実家との間に摩擦が生じる。この結果、夫婦間の不和も激しくなり、夫が妻を暴行したり、妻が家出したりして夫婦関係が破綻する。なかには、離婚訴訟が提起された事例もある。

 (4)時代とともに家族関係は変わっていく。
 しかし、正月などの行事では、時代とともにの変化に逆行しているかのように、先祖崇拝と親孝行が強制される。家父長的な復古主義が支配的になる。
 夫の実家の優位が薄れ、夫婦平等を目指す家族が多い中、この風習は今後どう変わっていくか。 

□キム・ミカ(金美佳、ソウル在住ライター)「近年、正月直後の離婚件数が急増 妻の負担重い家父長的行事が原因」(「週刊金曜日」2014年1月17日号)
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【食】マルハニチロ農薬事件の背景 ~厳しい労働環境~

2014年01月24日 | 社会
 (1)マルハニチロホールディングスの子会社アクリフーズの群馬工場で製造された冷凍食品から、殺虫剤マラチオンが検出された。
 昨年11月半ばから12月末にかけて、3品目計20パックについて苦情が入っていた。
 しかるに、マルハニチロホールディングスがこの事件を発表したのは、12月29日。ミックスピザやコロッケなどで農薬が検出されていた。回収対象は、じつに630万パック。

 (2)アクリフーズは、雪印乳業の冷凍食品部門として始まった。雪印乳業事件(2000年)後、分社化され、社名変更後、マルハと統合する前のニチロの子会社となり、現在に至る。

 (3)この事件の問題点は、
  (a)対応の遅れ・・・・11月には苦情があったのに、発表されたのは12月29日。1ヶ月半もの間、消費者に知らせず、結果的に不安を拡大させた。被害者が拡大し、取り返しのつかない事態に展開する可能性もあった。
  (b)マラチオンの毒性を過小評価・・・・マラチオンは有機リン酸系の殺虫剤で、遺伝子を傷つける変位原性はない、とされているが、生体内で代謝されて生成される物質には変位原性の可能性が指摘されている。動物実験では造精機能に影響した、との報告くもある。発癌性はない、とされているが、マラチオンの酸化物には発癌性の疑いが指摘されている。かかる農薬が高濃度に含まれていたのだ。

 (4)2007年末から2008年初め、中国の天洋食品が製造したギョーザに農薬が入れられ、輸入したそれを食べた人が中毒した。この事件と、今回の事件とは状況が似ている。
 ギョーザ事件では、船場吉兆事件、白い恋人事件、赤福事件など食品表示のごまかしが相次いで発覚し、食の不安が高まった時期だった。今回も、有名ホテルやデパートなどで食品偽装が相次いだ時期に重なった。

 (5)なぜ、このような事件が繰り返し起こるのか。
 <例>ホテル・・・・①ホテル業界の売り上げは、2006年をピークに右肩下がりが続いている。過当競争による値崩れが起き、地方のホテルを始め、苦しい状況にある。②加えて、外資の相次ぐ参入によって競争が激化した。③さらに、福島第一原発事故が追い打ちをかけた。外国からの観光客が激減し、売り上げはどん底に落ちた。生き残りのため、レストランの食材偽装で利益を出した。これが真相だろう。

 (6)冷凍食品業界もまた、経済的に苦しい状況に置かれている。中国産毒ギョーザ事件以降、それまでは右肩上がりで増え続けていた消費量が一時大幅に減少した。
 輸入ものは、2008年、2009年と減少した後、2010年から増加に転じ、現在も家庭用冷凍食品を中心に、好調に増え続けている。2012年は、2009年の3割増だ。 
 しかし、国産はほとんど増加していない。国産ものは、落ち込んで以降、消費量の伸びはほぼ横ばいで、状況は厳しい。

 (7)(6)の状況が作業現場に影響しないはずはない。
 この事件の謎は、(3)-(a)にある。なぜ1ヶ月半も報告しなかったのか。
 いま、冷凍食品工場で働いている人は、ほとんどが非正規雇用で、合理化が進んでいる。労働者や消費者の安全を考える余裕がなくなっている。事件や事故が起きても不思議ではない労働環境だった(推定)。

□天笠啓祐(ジャーナリスト)「冷凍食品への農薬混入、ふたたびアクリフーズ事件の背景を考える」(「週刊金曜日」2014年1月17日号)

   *

 (1)いつかは、こういう事件が起こるんじゃないか、と思っていた。ここ3年くらいは作業員の扱いが荒く、現場では不満がかなりたまっていた。いまは別の営業所に移った社員が工場を取り仕切っていたころ、そいつは最悪で、すぐ怒鳴りつけるわ、シフトは勝手に入れるわで、ノイローゼになる作業員もいた。現在の責任者も、現場にはほとんど出てこないので、評判はよくない。不満をもった 人間が暴走してもおかしくはない雰囲気だった。【元・アクリフーズ群馬工場作業員】

 (2)捜査当局は「内部犯行であることは確実」としているが、いま、アクリフーズ社内で噂されているのは、「複数犯説」だ。
 作業員は決められたラインだけで作業し、複数のラインに跨がることはない。不自然な動きをすれば、すぐばれる。あれだけの量を1人で混入させることはできない。不満を持った2~3人の共謀か?
 犯人は、これほどの騒ぎを起こす気はなかったのではないか。「工場のラインを止めれば、仕事もサボれるし、会社に嫌がらせもできるし、一石二鳥」と考えたのかも。通常、包装を終えた商品はランダムに抜き出され、品質検査をされる。そこで異常が見つかればラインは止まる。
 だが、実際には品質検査をかいくぐった商品が出荷され、いま、全国で1,000人以上が体調不良を訴える。犯人も、ここまで大事に至るとは、と青ざめているかもしれない。0
 警察の見立てどおり作業員が逮捕される事態になれば、アクリフーズの社会的責任は重い。

□記事「マルハニチロ農薬事件 社内で囁かれる動機」(「週刊現代」2014年1月15日・2月1日号)
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【ブラック企業】どう見破るか ~公開データの活用~

2014年01月23日 | 社会
 (1)森美菜、26歳。
 森は、京都の大学を卒業後、2008年4月、「ワタミフードサービス」に入社した。「食と農業」に関心があり、3年頑張ればワタミが経営する農場で働ける、と夢を語っていた。
 入社後、10日間の研修で神奈川県の店舗に配属された。そこから過酷な勤務が始まった。連日15時前に出社し、平日は3時半、週末は6時まで働いた。1日12~15時間働き、休憩はわずか30分。仕事後は、始発が出る5時まで店舗に待機した。
 「休日」も休む暇はなかった。施設でのボランティア活動、研修会への参加が要求され、研修終了後のレポート提出、さらに渡邊美樹・ワタミ創業者/社長(当時)/現・参議院議員の「理念集」(全240ページ以上)の暗記も義務づけられた。
 過酷な業務の結果、森は1ヶ月もしないうちに「疲れた」「眠い」などと周囲に漏らすようになった。
 5月15日、黒いシステム手帳にメモを残す。<体が病です。/体が辛いです。/気持ちが沈みます。/早く動けません。/どうか助けからてください。/誰か助けてください>・・・・このころには適応障害を発症していたと推定される。
 6月11日、大手酒屋チェーン「和民」で働いていた森は、連続6日勤務後の休日だったが、本社(東京都大田区)で7時から開かれた研修会に参加していた。
 翌12日、2時頃、マンションの7階と8階の間にある踊り場から飛び降りて、自死。遺書はなかった。享年26。

 (2)2012年2月、森が残した手帳などから、時間外労働が国の定める「過労死ライン」(月80時間)を大幅に超える月141時間あったと認められ、労災が適用された。
 2013年12月、両親は、会社が安全注意義務を怠ったため死亡した、と渡邊美樹・参議院議員らに損害賠償1億5千万円を求めて東京地裁に提訴した。
 長時間労働をはじめ、ワタミには「ブラック企業」の要素が当てはまる。娘がなぜ死んだのか、ワタミから具体的な説明が何もない。実態を究明して、その責任を明らかにしたい。【父親・森豪】

 (3)朝日新聞の紙面に初めて「ブラック企業」の言葉が登場するのは、2009年4月の朝刊。もともと2000年代に入り、IT企業で働く若者を中心にネット上で使われるようになり、2013年には「新語・流行語大賞」トップ・テンに選ばれるなど、すっかりなじみの言葉となった。
 連合のシンクタンク「連合総研」が2013年に行った調査では、20代会社員の24%が「自分の勤め先は『ブラック企業』にあたる」と考えている、と答えている。業種別では、「卸売・小売・飲食店・宿泊業」(19.1%)、「金融・保険業・不動産業」(19%)が他業種に比べ若干高く、従業員の規模別では大きな差は見られなかった。

 (4)ブラック企業とは、新興産業において、若者を大量に採用し、加重労働・違法労働によって使い潰し、次々と離職に追い込む成長大企業のことだ。【今野晴貴・NPO法人「POSSE」代表】
 ブラック企業が蔓延する社会は、若者がいつなんどき生活保護受給者へ「転落」するかもしれない点で「落とし穴社会」だ。【今野代表】
 鬱などの疾病の治療費によって国の医療費が圧迫される。働けない若者が増えると税収が減る。人材育成しないから、経済が成長しない。その結果、若者を使い潰すブラック企業だけが生き残ることになりかねない。ブラック企業は、社会全体の問題として捉える必要がある。【今野代表】
 
 (5)入社前にブラック企業を見抜くにはどうすればいいか。
 大切なのは、客観的にデータを見ていくことだ。
 就職情報サイトは、企業がスポンサーのため、会社が「見せたい」情報しか載っていない。会社説明会では、会社は巧妙に自社のいい面だけを印象づけようとするので、ブラック企業かどうかを見破るのは困難。人材ビジネスの専門家は、自分自身の感性を頼りに会社の良し悪しを決めるようアドバイスしがちだ。
 よって、企業データを集めた情報誌や新聞・雑誌のデータベース、有価証券報告書など、客観的な情報を活用するのだ。中でも参考にすべきは、『就職四季報』(東洋経済新報社)。(a)3年後離職率、(b)採用プロセス、(c)初任給、(d)情報開示度・・・・を見るのだ。
 (a)ブラック企業かどうかの目安は、30%。業種によって異なるが、30%以上だと要注意。無回答(NA)企業も少なくないが、無回答であることも一つのメッセージになる。3年後離職率が無回答であっても、従業員数と毎年の採用実績数の比率、また平均勤続年数に着目すれば、新入社員の「使い潰し」がある企業かどうか推定可能だ。
  ①従業員数の割に採用実績数が多すぎる場合は、次々と辞める若手社員を補充するため採用実績数が多めになっている、と推定できる。
  ②平均勤続年数が短い会社は、入社後数年で辞める人が多いことを意味する。
 (b)採用選考のプロセスがあまりに簡素な場合は、要注意。
 (c)初任給の高さにも釣られないほうがよい。

 (6)不幸にもブラック企業に就職してしまった場合、一人で抱え込まないこと。なるべく早く専門家に相談すること。
 その時のために勤務記録を付けておくこと。
 親や教員にこそ、ブラック企業の実態を知ってもらいたい。「せっかく入ったんだから頑張れ」などと鼓舞すれば、結果的にブラック企業に加担し、子どもを追い詰めることになる。

□野村昌二(編集部)「ブラック企業を見破る」(「AERA」2014年1月20日号)
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 【参考】
【ブラック企業】激変する若年労働者市場 ~労使間の話し合いが不可欠 ~
【ブラック企業】調査対象の8割で違法行為 ~厚労省初「ブラック企調査」~
【ブラック企業】対策講座 ~騙されないための心得~
【ブラック企業】対策講座 ~就活~
【社会】ブラック企業大賞2013 ~ワタミフードサービス~
【社会】「ブラック企業」への反撃 ~被害対策弁護団が発足~
【社会】「ワタミ」の偽装請負 ~渡辺美樹・前会長/参議院議員~
【社会】学校もこんなにブラック ~公教育の劣化~
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負
【社会】私学に広がる教員派遣と偽装請負・その後 ~裁判~
【本】ブラック企業 ~日本を食いつぶす妖怪~
【本】ブラック企業の実態
【社会】若者を食い潰すブラック企業 ~傾向と対策~
【本】ブラック企業の「辞めさせる技術」 ~違法すれすれ~
【心理】組織の論理とアイヒマン実験 ~ブラック企業の心理学~
【社会】第二回ブラック企業大賞候補 ~7社1法人~
【社会】ブラック企業における過労死、ずさんな労務管理 ~ワタミ~
【社会】ブラック企業の見抜き方 ~その特徴と実例~
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【警察】警視庁公安部の迷走、暴走、大失態 ~オウム事件~

2014年01月22日 | 社会
 (1)長期逃亡を続けたオウム真理教の元信者、平田信被告の裁判1月16日から東京地裁で始まった。
 オウム事件では、初の裁判員裁判。
 オウム関連の死刑確定囚が証人出廷。
 こういったことでも注目を集めている。

 (2)オウム事件全体を振り返れば、平田被告はそれほど大物ではない。
 公証役場事務長拉致事件の逮捕監禁罪などで起訴されているものの、地下鉄サリンや松本サリンといった超重要事件には関わっていない。
 それなのに、平田被告は、逃走を続けたオウム特別手配被疑者で最も「有名」な存在になった。
 なぜか。
 ここに公安部の失態の残滓がある。

 (3)1995年3月30日、國松孝次・警察庁長官(当時)が自宅マンション(東京都荒川区)前で銃撃された。オウム捜査に全力を傾けていた警視庁は、主力の刑事部に人的余裕がなかったこともあって、重大事件捜査の主導権を公安部にゆだねた。
 だが、公安部の捜査は迷走した。公安部と刑事部の対立なども背後に横たわっていたが、そもそも公安部にはこうした事件捜査の能力がなかったのだ。左翼団体監視などを主任務とする従来の公安手法は、完全な見込み捜査であり、銃撃事件でも「オウムなのは間違いない。そのうち解決する」と高を括っていた。
 ところが、オウム捜査が進んで幹部が次々逮捕されても、事件の輪郭すら浮かび上がらない。
 焦りを深めた公安部が有力被疑者として名指しするようになったのが平田被告だった。逃走を続ける信者は少なくなっていたし、高校時代はインターハイ出場経験もある・・・・そんな理由で、最重要の被疑者に「格上げ」された。平田被告が注目を集める存在になったのは、それだけの話にすぎない。

 (4)公安部の迷走は、(3)だけにとどまらない。
 1996年には、オウム信者の警視庁巡査部長が長官銃撃を「自供」したにもかかわらず、これを完全に隠蔽。
 内部告発などで事実が暴露されると、公安部長が更迭され、井上幸彦・警視総監(当時)まで引責辞任に追い込まれる前代未聞の大混乱を引き起こした。
 しかも、巡査部長の供述はヨレヨレだった。隠蔽中の不適切かつ無理な取り調べで記憶が混乱したからだ。
 いきりたった公安部は、2004年に巡査部長やオウム信者の逮捕を強行したが、いずれも起訴さえできず、2010年に時効を迎えた。
 往生際の悪い警視庁は、時効の直後、銃撃事件について「オウムが組織的に敢行したテロだ」という根拠不明のコメントを図々しく公表し、教団側から名誉毀損訴訟を起こされ、100万円もの損害賠償を命ぜられた。賠償金の出所は税金だ。警視庁はうつけ者ぞろい、ということになる。

 (5)その後も、公安部は別の大失態を引き起こした。
 2010年秋、公安部外事3課の内部資料がネットに大量流出し、公安が「テロ関係者」と勝手に見て追いかけ回した人々の個人情報を世界中にばらまいたのだ。
 どう考えても内部犯行なのに、警視庁は当初、知らぬ存ぜぬを決め込み、これも時効で迷宮入りさせてしまった。

 (6)近年の公安部は、大失態ばかりを繰り返す一方、事件捜査に成果をあげた例は知られていない。
 にもかかわらず、組織は営々と維持され、特定秘密保護法は公安警察の「出島」たる内閣情報調査室が主導して作成された。無能で害悪ばかり垂れ流す税金泥棒に追い銭をくれてやったようなものだ。

□青木理「オウム・平田信の裁判に思う 警視庁公安部の迷走、暴走、大失態 ~ジャーナリストの目 第191回~」(「週刊現代」2014年1月15日・2月1日号)
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【佐藤優】沖縄をネズミと見なす中央政府への激しい異議 ~自民党の強権発動~

2014年01月21日 | ●佐藤優
 (1)沖縄戦が終結してから1946年6月まで、沖縄は米海軍政府の統治下に置かれた。
 ジェームス・T・ワトキンズ少佐/軍政府政治部長は、米軍と沖縄との関係をネコとネズミにたとえた。彼は、日本専門家、後にスタンフォード大学教授。
 ワトキンズいわく、<たとえば軍政府はネコで沖縄はネズミである。ネズミはネコの許す範囲でしか遊べない>
 いわく、<ネコとネズミは今好い友達だがネコの考えが違った場合はこまる。>
 いわく、<平和会議がすむまでは米国はネコで沖縄はネズミであるから其事を心得て置く。ネコがネズミに躍び付かない様にする機構は今の機構が安全である>
 植民地主義の発想だ。

 (2)2013年12月27日、仲井眞弘多・沖縄県知事は、中央政府による辺野古の埋め立てを承認した。この過程で露見した中央政府の沖縄に対する姿勢は、日本をネコ、沖縄をネズミと見なすものだった。
 自民党本部の圧力により、沖縄関係自民党国会議員5人のうち、國場幸之助・衆議院議員を除く4人が、県外移設の公約を撤回した。自民党県連も、県外移設から「辺野古を含むあらゆる可能性を排除しない」という方針に転換した。
 中央政府のかかる強権的対応に対して、沖縄では激しい異議申し立てが行われている。12月28、29日に「琉球新報」と「沖縄テレビ放送」が行った緊急世論調査の結果が、沖縄の民意を反映している。
  (a)米海兵隊普天間飛行場の問題の解決・・・・県外・国外移設、無条件閉鎖・撤去を73.5%が支持している。辺野古移設支持は、15.9%にすぎない(その他の県内移設を含めても22.6%)。
    沖縄県民の7割以上が反対している状況での辺野古移設は、事実上不可能だ。中央政府が現在の移設計画を強行すると、流血の発生が予想される。
  (b)知事の埋め立て承認を指示しない理由・・・・「新たな米軍基地を造るべきでないから」が最高(33.2%)。
    伊佐浜、伊江島を始めとする沖縄の米軍基地は、民意に反し、「銃剣とブルドーザー」によって造られた。しかし、今回、中央政府はアメ(沖縄振興策という名のカネ、基地負担軽減という空手形)とムチ(普天間固定化という恫喝)により、県の有権者によって選出された知事、名護市長の了承を得る、という形を取り付け、「県民の民意を踏まえた」という擬制を整えて辺野古に巨大な軍事基地を建設しようとした。中央政府の目論見が成功すれば、県民の民意の承認を得ていない国際基準の民主主義原則に反する存在である、という主張が辺野古基地に関しては通らなくなる。この危機感が、新たな米軍基地建設に対する県民の強い反発を呼び起こした【注】。
  (c)知事の説明・・・・「公約違反・公約違反と言われても仕方がない」72.4%。
    知事の支持率が、過半数を大きく割り込んで38.7%となった(初めてのこと)。不支持率は、「支持しない・どちらかと言えば支持しない」53.9%。中井眞知事は、現在も県外移設を主張している、と釈明したが、もはや知事は「話者の誠実性」を喪失している。中井眞知事は、中央政府の許す範囲でしか自らの主張をしない、という日本への過剰同化を起こしている。ちなみに、知事に県外移設の公約を方針転換させた中央政府・自民党の姿勢に納得できないという回答は72.6%にも達した。知事に対する不支持率を18.7ポイントも上回る数字で、中央政府に対する県民の忌避反応の強さを示す。

 【注】1月19日、辺野古移設に反対する現職市長が再選された。
記事「押しつけ、名護拒む 稲嶺氏「移設圧力に反発」 市長選現職再選」(朝日デジタル 2014年1月20日05時00分)

□佐藤優「沖縄をネズミと見なす中央政府への激しい異議 ~佐藤優の飛耳長目 91~」(「週刊金曜日」2014年1月17日号)
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【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

2014年01月20日 | 社会
 (1)若者の「安部崇拝」とでもいえる現象をどう理解するか。
 2013年12月29日付け朝日新聞が報じた、年代ごとの自民党に対する「イメージ」調査の結果に手がかりがある。
  (a)「安定」と「変革」の程度について、1を最も変革、6を最も安定として数字で表して(中間点が3.5)自民党に対するイメージを調べると、
   ①年代が若いほど、「変革」のイメージが強くなる。
   ②70歳以上では、変革と安定の中間点3.5よりわずかに「安定」寄りの3.51だが、
   ③年代が若くなるに従って「変革」の度が強まり、20代では、3.03まで上がる。
   ④昨年夏の参院選比例区で自民党に投票した20代は、2.92と特に高い。
 (b)一方、もう一つのイメージ軸として、「左寄り」(最も左が1)か、「右寄り」(最も右が6)か、質問すると(中間点3.5)、
   ①どの年代でも「右寄り」と見ているが、
   ②70歳以上では、4.09とかなりの右翼だと見ているのに対して、
   ③20代では、3.61と、中間点に近いイメージを持っている。

 (2)(1)の2つの軸による調査は、次の2つの政策軸による古賀茂明の分析を踏襲したもののようだ。
 今後の日本政治の進路を議論する際に、最も重要な政策の軸が2つある。
  (a)横軸・・・・<右方向>経済・社会政策の「改革」(民主導・既得権と闘う・バラマキ反対)vs.<左方向>「守旧」(官主導・既得権擁護・バラマキ志向)。
  (b)縦軸・・・・<上方向>外交・安保政策のタカ派vs.<下方向>ハト派。
 この2軸で測れば、政治家の立ち位置が明確化できる。
 安部総理は、明らかに極度のタカ派であることに異存はあるまい(図の最上部)。一方、改革は叫んでいるが、実際の政策は守旧派寄りだから、左右で言えばほぼ中央だ。予算のバラマキには熱心だが、規制改革などの成長戦略はまったく実行できないのがその証左だ。つまり、タカ派の似非改革派だ。

 (3)(1)の調査結果を(2)の政策軸に置き換えて見ると、20代の若者は、自民党をかなりの改革派で、ハト派ではないが、若干のタカ派(右上=第1象限)と見ている可能性が高い。
 これまで、若者の「右傾化」と「安定志向ないし保守化」現象は、あちこちで指摘されてきた。安部自民党の勝因は、若者世論の右傾化と保守化の表れ、と見る向きもあったが、必ずしもそれは正しくはないのではないか。
 (1)の調査では、愛国心教育について20代が最も消極的だった。命の危険があっても国のために戦う、と答えたのも、30代12%についで20代は12%という低い数字は、右傾化どころか、逆に平和志向が強いとも言える。

 (4)その若者に安部首相支持が多いのは何故か。
 若者たちは、安部自民党がタカ派で、実は守旧派であることに気づいていないからだ。
 若者が、実は「改革志向で平和志向」なら、(2)の分類では右下の領域=第4象限の潜在的支持層だ。しかし、そこを代表する政党はない。
 「安部の詐術」の虜になった若者を解放するには、真の「第4象限の党」の出現に期待するしかない。

 【注】
記事「(20代はいま)保守化懸念、広く存在」(朝日デジタル 2013年12月28日22時34分)
記事「(20代はいま)保守化懸念、広く存在」(朝日デジタル 2013年12月28日21時59分)
記事「右傾化は際立たず 朝日新聞世論調査「20代はいま」」(朝日デジタル 2013年12月29日05時00分)

□古賀茂明「若者を虜にする「安部の詐術」 ~官々愕々第94回~」(「週刊現代」2014年1月15日・2月1日号)
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【佐藤優】米国から「外交指南」を受けた日本 ~チャック・ヘーゲル~

2014年01月19日 | ●佐藤優
 (1)安倍晋三首相の靖国神社参拝(2013年12月26日)について、米国政府も批判した。
 「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」【同日の駐日米国大使館の声明とサキ国務省報道官のコメント】
 外交の世界で、disapponted(失望した)という言葉が同盟国間で使われることはまずない。
 <同盟国に対して「失望した」と言うことの恐ろしさを知ってほしい。外交の世界で同盟国にこんなにはっきり言うのは異例です>【東郷和彦・元外務省条約局長/元同欧亜局長、12月29日付け朝日新聞】

 (2)問題は、かかる状況に安倍政権が危機感を抱いていないことだ。
 自衛隊出身の佐藤正久・参議院議員が、<disappontedがどれほど強い表現なのか。佐藤にはregretよりは軽い表現にも思えるし、文脈そして日本語感覚的には「失望(望みを失う)」ではなく、大切な同盟国(valud ally)の日本のリーダーが取った行動は「残念」に思う、といった感覚のように思える>【12月29日付けハフィントンポスト】と述べているが、英語力、外交常識の双方に問題があるから、かかるピント外れのコメントになる。
 disappontedとregretとどちらが重いか、という議論には意味がない。
 同盟関係にある国家に対して用いないdisappontedという言葉を米国政府が用い、日本政府に対して強いシグナルを出したことを正確に受け止めることが必要だ。
 日本が国際的に孤立し始めていることを等身大で見れず、希望的観測に縋る政府・与党の心理状態が、日本国家と日本国民にとって大きなリスクになっている。

 (3)米国政府は、日本に対する警告のシグナルを段階的に強めている。
 特に注目されるのが、小野寺五典・防衛相とチャック・ヘーゲル国防長官との電話会議(1月4日)だ。
 <安倍晋三首相の靖国神社参拝が日米外交にも波紋を広げている。小野寺五典防衛相は4日夜、米国のヘーゲル国防長官と電話協議。年末に急きょ中止になっていた協議が年明けに実現したかたちだが、米国防総省はヘーゲル長官が近隣諸国との関係改善を求めたことを明らかにした>【注1】
 <防衛省によると、電話協議で小野寺氏は「今後とも不戦を誓う意味で参拝した」などと首相参拝の「本意」を説明した。一方、米国防総省は「ヘーゲル長官は、日本が近隣国との関係改善のための一歩を踏み出し、地域の平和と安定のため協力を促進する重要性を強調した」と発表した>【注2】
 <電話協議の主な議題は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題だったが、安倍首相の靖国神社参拝によって日米韓の安全保障面での協力が停滞することや、日中の緊張がさらに高まることを懸念する立場から、国防長官としてあえて言及したとみられる>【注3】

 (4)ヘーゲル長官が、日本の東アジア外交について「指南」したこと自体が、「もっと中国と協力しろ」という米国の露骨なシグナルだ。
 通常、この種の話は表に出さないにもかかわらず、米国側が積極的に発表し、国際世論を通じて日本に影響を与えよとしている。客観的に見て、対日包囲網が構築されつつある。 

 【注1】記事「米「近隣国と関係改善を」 日米防衛相電話協議で指摘」(朝日デジタル 2014年1月6日05時00分)
 【注2】前掲記事。
 【注3】前掲記事。

□佐藤優「米国から「外交指南」を受けた日本 ~佐藤優の人間観察 第53回~」(「週刊現代」2014年1月15日・2月1日号)
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 【参考】
【佐藤優】安部首相の靖国参拝問題 ~「知の武装」レベル~
【政治】安倍晋三首相の「躁状態」 ~暴走を許す民意~
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【佐藤優】安部首相の靖国参拝問題 ~「知の武装」レベル~

2014年01月18日 | 社会
 (1)昨年末以降、手嶋龍一&佐藤優が以前から日本外交について予測してきた通りのころが、バタバタと立て続けに起きている。ただ、予想より事態の展開が早かった。
 ギリシャ語には時間を表す言葉が2種類ある。①「クロノス」と②「カイロス」だ。①は、普通に流れていく時間のこと。②は、ある決定的な事件が起こり、それ以前とそれ以後では同じものでも異なる意味を持つようになるような「切断」のことだ。
 日本外交にとって、安倍総理が靖国神社に参拝した日(2013年12月26日)は、まさに②になってしまった。靖国参拝の前と後では、日本を取り巻く風景が全く異なってしまった。
 安倍総理の行動が米国の批判を招き、中国が外交的攻勢に出る隙を与えている。しかも、米国の反発は彼らの基本的価値観に根ざしている。「自由や基本的人権といった共通の考え方が分かち合えない日本を同盟国として守るのか」という米国内の厳しい世論にオバマ政権はさらされている。
 日本が置かれた状況は、サウジアラビアに近くなっている。どちらも米国の重要な同盟国なのだが、基本的価値観が共有できない国だと。
 米国には、ナチスドイツとドイツ連邦共和国が別の国家であるのと同じく、日本帝国といまの日本国は別だという前提がある。しかし、いまはこう疑い始めている。安倍総理の掲げる「戦後レジームからの脱却」とは、単なる日本の自立ではなく、われわれと戦ったあの日本の復活を指しているのではないか。どうしてそんな国のために、米国の若者が血を流さなくてはならないのか・・・・。
 毅然とした対中姿勢を貫くには、揺るぎない日米同盟こそがその基盤になる。安倍総理の靖国参拝は、日米同盟を揺るがすものだった。
 靖国問題の核心は、米国の出方だ。彼らは強い違和感を表明している。
 それなのに、自民党防衛族の政治家は、希望的観測に縋って、「米国声明のdisapponted(失望した)という単語は、それほど強い意味ではないから、きっと米国は怒っていない」などと言っている。外交上のシグナルを正確に受け止められなくなっている。
 靖国参拝の当日、在日米大使館が声明を出した直後に、多くのメディアの取材を受けてワシントンの厳しい空気を伝えた。しかし彼らは皆、「米国側には参拝直前に伝えていた。米国の声明は大使館レベルのものだから、米政府の意向ということにはならない」と反論するのだ。どの社も同じ情報源、つまり官邸の統制を受けている。情けない。
 官邸の情報操作だ。ワシントンはその後すぐに、「米国政府は失望している」と国務官レベルで声明を出した。
 各国はふつう、「こんないい加減な分析しかできない奴らが、日本の政治家や知識層にこれほど多いはずがない」と考える。つまり、「日本はわざと的外れなことを言って、ディスインフォーメイション(偽情報)を流そうとしている。悪辣だ」という解釈をされてしまう。単に能力の問題であるにもかかわらず。
 米国は、小泉総理が靖国参拝したときにも、表立った批判はしなかった。どんなに怒っていても、公には批判しないのが「同盟の作法」だ。今回の米国の発言がいかに異例かがわかる。
 フーテンの寅さんではないが、「それを言っちゃおしめえよ」だ。

 (2)外交の世界は政治の世界であって、美学を追究してはいけない。「言いたいことを言った、やりたいことをやった、ああスカッとした!」という外交をやってはいけない。
 国際連盟脱退のときの松岡洋右はその典型だ。
 ヘイトスピーチ問題でわかるとおり、ナショナリズムは常に「より過激なほうがより正しい」ということになっていく。一度開いた蛇口を少しずつ締め、高ぶった感情を鎮めるのが責任ある政治家の仕事であり、有識者の仕事だ。
 日本は十全な防衛力をもって南西諸島を固めなくてはならない。抑止力を維持しなくてはならない。日米同盟を深化させなければならない。これらは当然のことだが、戦争を煽るのとは同じではない。

 (3)マスコミでも、「中韓との百年戦争」といった見出しがあふれているが、日本は本来、中韓のあいだに楔を打ち込むことを戦略の要としなければならない。
 東アジアの国家をどう分けるか、2つのやり方がある。
 (a)政治指導者が国民の選挙によって選ばれているかどうか。普遍的な民主主義の原則。これならば、中韓の間に楔を打てるし、ロシアを含めて、中国以外は日本と同じ陣営になる。
 (b)第二次世界大戦の戦勝国と敗戦国で分ける。すると、中国が狙う反ファシズム同盟になってしまう。
 朴槿恵・韓国大統領の最近の反日発言は、当面はぐっとこらえて、韓国を中国から引き離さねばならない。
 難しいのは、韓国にとって円安が本当に大きな打撃になっていることだ。韓国での反日の激化には、アベノミクスによる円安で経済が落ち込んだことに対する怨みも背景にある。
 われわれは自分の力を過小評価している。実は日本はたいへんに大きな帝国主義国家で、国際的にも重要なプレーヤーなのだが、自分は敗戦国で、うんと弱い国だと思っている。ものすごく危なっかしいことをやっている。
 安倍総理も、視野を広げて等身大の日本を直視すればいい。もっと自信を持つべきだ。
 この点を踏まえて、韓国とは早急に関係を改善すべきだ。
 しかし、いまの状況は真逆だ。中韓はがっちりと一枚岩になり、対日包囲網を敷きつつある。

 (4)中韓の結束が慰安婦問題でさらに強固になると、どうなるか。オバマ大統領が4月に来日する予定だが、キャンセルするかもしれない。あるいは来たとしても、安倍総理が取り組もうとしている集団自衛権について、「ノーサンキュー」と言わないまでも無視するのではないか。
 すると、中国は、「ほら見ろ。米国の抑止力、日米同盟はやはり虚構だった」と考えるかもしれない。
 すべては日米同盟に行き着く。
 深刻なことに、安部政権は、普天間基地移設問題を含めて、うまくいっている、と思っている。実際は力でゴリ押しして、「ああ気持ちよかった」というだけなのだが。 
 「気持ちいい外交」ほど危険なものはない。だからナショナリズムを煽って、国内のヘイトスピーチを野放しにしてはならない。こうしたことを続けていると、諸外国との関係だけでなく、日本という国のありよう、威信や正当性を失ってしまう。

□手嶋龍一×佐藤優「インテリジェンス対談 この問題の考え方で「知の武装」レベルがわかる」(「週刊現代」2014年1月15日・2月1日号)
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 【参考】
【政治】安倍晋三首相の「躁状態」 ~暴走を許す民意~
コメント (1)

【政治】安倍晋三首相の「躁状態」 ~暴走を許す民意~

2014年01月17日 | 社会
 (1)昨年末以来、安倍晋三首相は「躁状態」が続いているらしい。
 年明け早々に掲載された夕刊フジのインタビューでは、昨年を振り返って、「この1年があって、これからの日本の10年がある。そういう1年だった」と自信をみなぎらせた。
 年頭記者会見(1月6日)では、景気回復や憲法改正などへの意欲を語った。
 新年互礼会(1月7日)では、参加した政治家や経済人を前に、「(都知事選候補として)我こそはという人は手を挙げていただきたい」と冗談めかして呼びかけた。

 (2)「転機」は、靖国神社への参拝だったかもしれない。政権発足からちょうど1年の昨年12月26日、安倍首相が、現職総理としては7年4ヶ月ぶりの参拝を果たしたのは、首相が自らの主張に固執したという以上に、実は、政治的に大きな意味がある。
 このとき、政権発足以来ともかく現実路線を重視してきたはずの安部首相が、初めて側近の菅義偉・官房長官の制止を振り切ったのだ。
 安部首相は、政権発足直後(2012年12月27日)にも参拝を計画していたが、この時は飯島勲・内閣官房参与(積極派)と菅官房長官や今井尚哉・首相政務秘書官(慎重派)との間の猛烈なバトルの末、踏みとどまった。ところが、今回、外交問題化を懸念する菅官房長官らがギリギリまで自制を求めたにもかかわらず、安倍首相が押し切った。菅官房長官の言うことをは聞く、と思われていたが、もはや違うことが明らかになってしまった。
 安部政権は、①実務系、②経済系、③イデオロギー系の3本柱。これまで①の菅官房長官が③を押さえ込み、②をうまく回して成功してきた。それが、今回初めて崩れた。この変化は今後の動きに影響してくるだろう。

 (3)参院選(2013年7月28日)で自民党が圧勝し、「ねじれ国会」が解消されたときから、今後「安部色」が強まるであろうことは予想されていた。それから5ヶ月たって、ついに安部首相が自我に目覚めた、というところか。 
 しかし、こういう形で表出したとなると、今後の政権運営は危うさを増す。
 日本版NSC創設、集団自衛権行使容認、武器輸出三原則の緩和に賛成で、憲法改正論者からも批判がある。
 靖国参拝はするべきでなかった。外交的に得るものは何もない。正直、参拝したと聞いて暗澹たる気持ちになった。安倍政権が発足した当初、欧米の進歩的メディアは「右翼政権だから中韓が反発している」という見方をした。それが、だんだんと、実は中韓がおかしいのではないか、という展開になりつつあったのに、靖国参拝が台無しにしてしまった。中韓はあらゆる機会に、日本が右傾化していて、安倍首相は第二次世界大戦を正当化しようとしている、と批判するだろう。欧米でもそれに同調する向きが出てくる。安部首相自身が押し戻してしまったのだ。これで、日本外交は、今後かなり苦しくなる。【白石隆・政策研究大学院大学長】

 (4)といった意見にもかかわらず、安部首相の高揚感は消えない。今回の靖国参拝を「よくやった」と評価する声も少なくないことが後押ししている。
  (a)産経新聞とFNNの合同調査によると、
    ①靖国参拝については、全体では、「評価しない」(53.0%)>「評価する」(38.1%)。しかし、世代別では、「評価する」が30代(50.6%)、20代(43.2%)で多数。20~40代の男性は、集団自衛権や憲法改正についても、5~6割が賛成している。
    ②参拝を批判する中韓の姿勢については、「納得できない」が全体の7割。中韓が繰り返す「反日」攻撃が、日本人のナショナリズムを刺激している格好だ。
  (b)安部首相の Facebook では、参拝の報告に対する「いいね!」が8万件以上も押され、コメント欄には称賛の言葉があふれている。
  (c)他方、春香クリスティーンのワイドショーにおける発言【注】が、ネット上で大炎上した。
  (d)好感度調査からしても、中韓に対する嫌悪、不満を抱く日本人が増えつつある。こうした人々がマジョリティとなり、「日本人であれ」という同調圧力が高まっている。このメンタリティが安部政権を支えている。

    【注】「海外でよくこの問題と比べられるのが、『もしもドイツの首相がヒトラーのお墓に墓参りした場合、他の国はどう思うか』という論点で議論されるわけですけれど、まあ難しい問題ですよね」 

 (5)いま日本を取り巻く状況は楽観できるものではない。中国は、経済力、軍事力、政治力で現状の秩序を変えようとしている。容易に挑発に乗れば、日本を窮地に陥らせかねない。
 靖国参拝に対して世界中から批判が起きたのは、中国の外交の勝利だ。個人の信念は結構だが、安部首相が中国に対して強硬に出るほど、中国を利することになる。一方で、中国の挑発レベルは、どんどん上がっている。自制できずに一発やってしまったら、日本は世界的に孤立しかねない。やはり日本は軍国主義だ、ということになってしまう。【保阪正康・ノンフィクション作家】 
 外交は、一つ間違えると国家を存亡の危機に陥れる。かつての大日本帝国がそうだったように。だから、感情的にならず、クールでいることが大事だ。【白石学長】

□鈴木剛(編集部)「安倍首相、暴走を許す民意」(「AERA」2014年1月20日号
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