語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)

(10)普通の民主主義とは波長が合わない安倍政権
 安倍政権の面白いところは、米国の寝首をかくような感じで、対イスラエル協力をしていることだ。今のイスラエルと米国の関係は、史上最悪に近いぐらい悪い。
 2015年3月3日、ベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相がワシントンに行った。しかし、バラク・オバマ大統領とは会談できなかった。議会で演説した。
 あの議会演説は大失敗だった、と欧米主要メディアはそろって判定した。米国とイスラエルの関係をかえって悪化させた、と。その前にオバマが首脳会談を拒否した。あれはすごいことだ。
 日本の安倍政権と今、波長が合っているのは、イスラエルと北朝鮮とロシアだ。ネタニヤフ首相、金正恩(キム・ジョンウン)総書記、ウラジミール・プーチン大統領。この3人と波長が合う。あと、サウジアラビアとも波長が合う。
 日本はいったい、どこの同盟に入っているのか。プーチンは森喜朗・元首相とのつながりだ。北朝鮮に対しては、安倍政権は2014年7月に、制裁を解除した。
 安倍政権が、北朝鮮にこれほどやさしい政権だとは、誰も思っていなかたはずだ。朝鮮総連ビルだって、「使ってください、今までどおり」と結局、使いたい放題にさせた。韓国との関係がこれだけ緊張しているのに、北朝鮮とはどんどん雪解けが進んでいる。
 安倍政権は変な政権だ。普通の西側の民主主義とは、あまり波長が合わなくて、仕方なく付き合っているように見える。
 欧米主要国の指導者たちは、安倍晋三を評価していない。アジア諸国に対しては「ただで原発をつくってあげる。新幹線(高速鉄道)も差し上げます」と言って回っている。
 安部晋三が自らセールスマンを買って出て、60ヶ国を訪問した。トルコやインドにも行った。向こうは、「タダでくれるなら、どうもありがとう」だ。それ以上は、まったく尊敬されていない。

(11)日本とイスラエルが軍事面で技術提携する
 日本・イスラエル共同声明が2014年5月に出た。サイバー攻撃に関しても、イスラエルと技術提携していくだろう。無人航空機(UAV)、いわゆるドローンでは、米国のグローバルホークやプレデターだけではなくて、イスラエルの無人航空機を入れるかもしれない。
 イスラエルとの防衛協力で、ドローンを入れる場合、どこと組むかというと富士重工だ。かつての中島飛行機と組む。三菱は米国と組んだから、できない。
 米国のドローンは高すぎる。イスラエルのドローンは、非常に性能のよいものを安く出している。それでイスラエルと組むのだ。
 そもそも、あの無人機のアイデア自体は、イスラエルから出てきた。第4次中東戦争(ヨム・キプル戦争)のときの追跡用標的がもとになっている。
 その技術を米国で発展させたのが、グローバルホークやプレデターだ。イスラエルのドローンは、米国のドローンより少し小型だ。イスラエル製のほうが、命中率が高くて、もっと殺しに特化している。それから操縦がプレイステーションみたいな感じで簡単だ。
 あの技術が発展していくと、航空母艦などはタダの標的になってしまう。無人島に小さい基地を造って、そこからプラスチック製の無人航空機を飛ばせば、レーダーにも引っかからずに、航空母艦を標的にできる。こういう時代になっていくわけだ。
 日本製のプラスチックでできた弾丸がきわめて高性能だそうだ。それをイスラエルがいち早く採用した。これをドローンに搭載するわけだ。特殊プラスチック製だから、レーダーに映らない。この無人機から防御するためには、都市ゲリラ部隊になるしかない。
 ドローン開発が進むと米空軍のパイロットたちが失業してしまう、という記事が出た。だからドローン開発をやめさせろ、という議論が出ているのだ。ものすごく深刻な問題になっている。米空軍のパイロットたちが怒っている。だから、この計画を動かしているのは空軍系ではない。
 CIAだ。だから空軍のパイロットが失業する代わりにプレイステーションばかりいじっているようなオタクや引きこもりが戦力になるかもしれない。
 ヘリコプター乗りは喜んでいるみたいだ。ヘリコプター乗りはパイロットに比べて地位が低いから。だからドローンへの乗り換えを歓迎しているみたいだ。
 ドローンは米国で操作して何万km先まで飛ばせる。今はワシントン郊外のラングレー(CIA本部)で操作している。ひと昔前は電波の関係があって、ドイツで操作していた。アフガニスタンの戦争のときがそうだ。ところが、ドイツに「そういうのはダメだ」と文句をつけられてしまった。
 もともと日本のクボタとか東芝の技術だった。農薬撒き機みたいなヘリコプターから始まった。
 戦時中の日本軍も、無人飛行機を開発していた。無人飛行機や無人戦闘機が増えてくれば、今度は潜水艦の必要性が高まる。潜水艦で、海底ケーブルからデータを盗んだりとか、そういう仕事が増える。
 それで、オースラリアのアボット政権が、日本の高性能性能ディーゼル潜水艦を買いたいと言っているのだ。だから、オーストラリアの造船所の労働者が怒って、反対運動をやっている。日本の潜水艦はものすごく音が静かだそうだ。原子力潜水艦と比べても、この点では有利だ。
 音が静かで、しかもあれだけ長距離を航行できるディーゼル潜水艦は日本にしかない。それにオーストラリアは、米国の原子力潜水艦を買えない。非核化政策をとっているからだ。
 日本の潜水艦は、神戸の三菱重工と川崎重工が、1年おきに「そうりゅう」級の潜水艦を造っている。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ」
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 【参考】
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~



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