語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】「本当に好きな仕事」は長続きする

2018年05月05日 | ●佐藤優
塙/佐藤さんから見て、明らかに才能がない作家志望の後輩がいたとします。単純に「がんばりたいんです」という志だけで突っ走ってしまう。
 そういう人に「努力すればかならず芽は出るよ」と励ましますか。それとも「現実をよく見据えたうえで、違う道も考えてはどうか」とアドバイスしますか。

佐藤/そういう人から相談を受けたときには、私はこのようにアドバイスすると思います。「本当に好きな仕事をやりながら食えなかった人は、私の周囲には一人もいない」。これは事実なのです。

塙/これは本当に興味深いお話ですね。

土屋/昔から「好きこそものの上手なれ」と言いますけど、本当に好きな仕事であれば、自分なりに工夫してプロになっていける。
 好きな仕事をやりながら、たとえ最低限であっても生活の糧(かて)をしっかり得ていけるわけですね。

佐藤/「ただし、その仕事が本当に好きなのかどうか、あなたはよく見極めたほうがいいよ」ともアドバイスします。作家をやりながら年収が100万円に満たない状態が続けば、いくら好きなこととはいえ不平や不満が出てくるでしょう。酒に溺れてしまうかもしれません。
 そんな状態が長く続くようだと作品を書けなくなるということであるならば、それは本当に好きな仕事とは言えないのかもしれません。心から好きな仕事であり、苦労を厭わないのであれば、どこかでかならず芽が出てくるはずです。

土屋/愚痴や文句がすぐ口をついて飛び出すようでは、「好きな仕事」とは言えません。中途半端な心構えで仕事に取り組んでいれば、人は愚痴っぽくなってしまいます。

佐藤/私がこの太った体を抱えて、今からマラソン走者になるとしましょう。「東京マラソンで100位以内に入りたい」と目標をたてるとします。こういう非現実的な目標を立てたら絶対にマラソンが好きになれません。

□佐藤優×お笑い芸人ナイツ(土屋伸之・塙宣之)『人生にムダなことはひとつもない』(潮出版社、2018)の「第4章 仕事とおカネの心得」の「「本当に好きな仕事」は長続きする」から一部引用