語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~

2015年07月10日 | ●佐藤優
 敷衍を効果的に行うためには、テキストの文字面だけでなく行間を読む力も必要だ。つまり、読解力が要求される。
 敷衍する力をつけるためには、さまざまな分野の本を読むことも大切だが、丸暗記をすることも効果がある。
 試しに『イギリスの歴史』の第九章(中略) 暗記しておくことで必要な場面ですぐに運用できる。ぜひ身につけてほしい。
 アラブ人やユダヤ人など、中東世界の人々の知的強靱さは記憶力によるところが大きい。イスラム世界ではコーランを覚えている人はざらにいて、子どもたちによる暗唱大会も開かれている。ユダヤ教の世界でもトーラーすなわち、モーセ五書(旧約聖書の創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)を暗記している人は珍しくない。
 中東世界の人は、宗教と日常生活が密接な関係にあり、記憶は常にメインテナンスされている。しかし、普通は丸暗記しても三カ月も経てば忘れるし、忘れて構わない。
 ここから先が重要だ。丸暗記の作業に並行して、キーワードをメモしておこう。そのキーワードをもとに同じ内容を話すことができるか否かを確かめてみるのだ。原文とそっくり同じ言葉を使う必要はない。ただし、少なくとも主観的には、暗記した原文や原発言の骨格を歪めないように注意することが肝心だ。
 キーワードに基づいた記憶の再現は二つに分けることができる。一つが要約(summation)だ。これは学校教育でも行われているから説明の必要はないだろう。
 もうひとつが、ぜひ身につけたい敷衍だ。記憶した事柄をより詳しく説明する。あるいは、別の言葉で言い換えてみる。記憶していた内容を他人に説明するつもりで行うといいだろう。自分が理解できていないことは説明することができないから、どの点がわかっていて、どの点が飲み込めていないのかを確認することができる。
 記憶力と展開力の訓練のために自分の専門分野に関連する論文を三、四本丸暗記しておき、折あるごとに要約と敷衍を繰り返すといいだろう。
 要約と敷衍を身につけることができれば、人文系の教養としては完成する。
 脳の記憶容量が大きくなり、さまざまな情報が記憶の引き出しにストックできるようになると、ある課題を解決しようとするときに、類似した事柄を適宜引き出して比較検討できる。つまりアナロジーで物事をうまく考えられるようになるわけだ。

□佐藤優「アナロジーや敷衍に磨きをかけ、脳の記憶容量を大きく変える丸暗記のすすめ(第2章 コラム①)」から引用、『超したたか勉強術』(朝日新書、2015)所収
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 【参考】
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~

    


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