語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~

2017年01月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)日本では、40歳以上の女性に対し、2年に1回マンモグラフィー検診が奨励されている。日本人女性は、30代後半~40代に乳癌発症のピークがあるからだ。
 一方、米国では発症のピークが60代なので、50~74歳の女性に2年ごとの検診が推奨されている。

 (2)その米国ョッキングな報告があった。マンモグラフィー検診の普及前と後で「過剰診断」例が明らかに増加したというのだ。
 調査は、癌登録データからマンモグラフィー検診が
  (a)普及する前の1975~79年の検診例 
  (b)普及後の2000~02年の検診例
を比較。その結果、
  (a)①2cm未満の小さな病変(超早期癌)の検出率が36%
    ②2cm以上の大きな病変(早期進行癌)の検出率が64%
  (b)①2cm未満の小さな病変(超早期癌)の検出率は68%((a)の2倍近くに増加)
    ②2cm以上の大きな病変(早期進行癌)の検出率32%((a)の半分に減少)

 (3)対人口比で推計すると、早期進行癌の発生が10万対30人。一方、超早期癌は10万対162人にも及んだ。
 一見、早期発見癌・治療が叶ったように見える。しかし、研究者は「放っておいても、何の症状も出ない小さい病変が検出され、10万対132人の女性が『過剰診断』のリスクを被る」と指摘した。
 さらに、「死亡率低下へのマンモグラフィー検診の貢献度は3分の1程度で、残る3分の2は治療の進化による」と冷ややかに断定している。

 (4)一方、日本では「過剰診断」より「見落としリスク」が問題になっている。乳腺が濃いタイプのマンモグラフィー画像の場合、乳腺の白い影に病変が隠されてしまうのだ。
 実は、日本人女性の過半数は乳腺が濃いタイプだ。特に若いうちは、マンモグラフィー検診より超音波検診の方が見落としが少ない。
 日本では、乳癌検診の内容を見直し中で、マンモグラフィー検診と超音波検診の併用が検討されている。もし併用がスタンダードになれば、見落としが減る一方、過剰診断リスクが増加する可能性がある。
 健診結果は「確定」ではない。結果に慌てず、冷静に2次検査を受けることだ。確定診断を基に主治医と治療の計画を立てることが、適正治療と延命につながる。

□井出ゆきえ(医学ライター)「「過剰診断」か「見落とし」か/マンモグラフィー検診のリスク ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.325~」(「週刊ダイヤモンド」2016年11月19日号)
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