語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【米国】と日本における民営化の悲惨 ~株式会社化する国家~  

2013年10月31日 | 社会
(6)株式会社至上主義
 <企業経営者の道徳的義務とは、社会や環境といったことよりも株主の利益を最大限あげることだ。モラルも善意も、それが収益に結びついている場合のみ容認される>【ミルトン・フリードマン】
 株主至上主義は、IT革命とグローバリゼーションで国境を超えた企業の規模を急速に拡大させた。激しい価格競争の中で効率化が進み、株主、経営者、仕入れ先、販売先、労働力、消費者、特許、税金対策用本社機能にいたるまで、すべては最低コストで最大利益をあげる場所へと移されていく。
 多国籍化に加え、「略奪型ビジネスモデル」による株主利益拡大を後押ししたのは、規制緩和する数々の法改正だ。
 かくて米国では、金融、食品、農業、慰留、教育、軍需などのさまざまな分野でピラミッド型の支配構造が確立した。上位1%層(多国籍企業や投資家)が、今や国全体を左右する影響力を発揮している。
 さらなる市場拡大のために、あらゆるものを「商品」化する戦略の中、今まで守られてきた分野まで、じわしわ侵食し始めている。三権分立のチェック・アンド・バランスも、国民の幸福を最優先する「公益」という概念も。それは、国の存続のために決して失ってはならない、と建国の父たちが警告したものだ。建国の父たちは、少数の為政者に権力が集中することを懸念した。その懸念は、事実となった。
 ただし、米国民の主権を奪っているのは、従来のように暴力で支配する独裁者ではない。極めて洗練された形で合法的に国全体を市場に変えた、顔のない1%層だ。
 2009~12年の3年間で、上位1%層の所得上昇率は31.4%、残り99%層はわずか0.4%だ。国民総世帯所得に占める所得率は、上位1%層が19.3%、上位10%層では50.4%(つまり半分以上)だ。
 ここまで二極化した原因の一つは、加速する公的分野の民営化だ。

(7)さらなる「自由」 ~誰にとっての自由か?~
 ブレーキが壊れた市場原理主義者に呑まれ、国家レベルの貧困ビジネスを回していくために社会の底辺に落とされた人々が大量に消費されている米国。
 国民は、市場を独占した企業群が、自分たちの国を株式会社化することに気付かなかった。
 2001年10月、「テロとの戦い」を理由に通過した「愛国者法」による言論統制と監視体制の強化。議会を通過する危険法案への無関心によって、合法的に自分たちの権利を明け渡してしまった。
 自国を企業天国にすることに成功した米国の企業群が、市場を他国に広げようとする際、障害になるのは各国の国内法だ。
 それらを超越する新しいルールとして、今、環太平洋連携協定(TPP)、自由貿易協定(FTA)、経済連携協定(EPA)、偽造品取引防止協定(ACTA)、経済調和協定(EHI)といった2国間、または多国間貿易協定が次々に進められている。
 自由貿易の「自由」は、いったい何に対してかかるのか。
 解放されるべきは、さらなる資本なのか、それともピラミッド型支配構造の下で主権を奪われた人々の方か?

(8)私たちは何を失ってはならないか
 日本では、TPP参加する前に、米国の圧力ですでにさまざまな規制緩和が行われている。
 政府は、3・11後、ネットを監視する業務を民間企業に委託した。欧州が輸入禁止している米国産牛肉の安全性に係る大幅な規制緩和行った。多数の国々が拒否している遺伝子組み換え(GM)食品の輸入を拡大した。郵便局が持つ簡保を凍結し、米国の保険会社を参入させることを決定した。医療関連公式文書の中から「国民皆保険の堅持」が消された。代わりに、例外も容認する「原則として全ての国民が加入する仕組みを維持する」という文言が、1年前、さりげなく加えられた。
 米国の「愛国者法」に内容が類似した「特定秘密保護法案」が、国民からのパブリックコメントを通常の半分の期間で早々と締め切り、国会提出まで秒読み段階だ。
 安部政権が掲げる国家戦略特区構想では、東京、愛知、大阪府市の3都市における大胆な規制緩和を計画中だ。戦略特区の目的は、「企業の利益を最大化する環境整備」。公教育の中身を民間委託できるようにする学校経営への株式会社参入、混合診療の全面解禁、雇用条件の規制緩和など、この10年間の米国をなぞるような政策が、進められている。
 2013年2月28日、安部首相は施政方針演説において、ハッキリと断言した。
 「世界で一番、企業が活躍しやすい国を目指します」

□堤未果(ジャーナリスト)「株式会社化する国家 奪われる私たちの選択」(「世界」2013年11月号)
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 【参考】
【米国】における公的サービス民営化の悲惨(2) ~社会保障~
【米国】における公的サービス民営化の悲惨(1) ~教育~
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【米国】における公的サービス民営化の悲惨(2) ~社会保障~

2013年10月30日 | 社会
(3)政府の食糧支援が商品に 
 低所得層用の食糧援助プログラム「SNAP(旧・フードスタンプ)」も、公共サービスが利益重視のビジネスに化した例だ。
 教育バウチャー制度と同様、「国民に与えられる自由な選択肢」が強調されている。どこで食料を買うかは受給者に委ねられているから、「SNAP提携店」という看板を出す店側は熾烈な競争にさらされる。
 だが、月平均受給額上限が100ドル程度しかないので、受給者が選択できる店は限られる。中小の店は単価で勝負できず、大量生産大量納品ができるウォルマートのような大企業の独り勝ちだ。
 SNAPは毎年兆単位の利益をもらたすため、関連業界は巨額の献金を惜しまない。斯界から献金を受けている政治家や農務省は、SNAP受給者を増やすため受給条件を下げ、宣伝に力を入れる。年間十数億円(連邦と州政府が折半)のSNAPプログラム導入費用は、すべて1社の金融機関に支払われる。ここもまた、企業利権の温床になっている。
 SNAP受給者が増えるほど財政が圧迫される州は、公共サービスを廃止し、底なし沼に落ちていく。公務員の失業率上昇と、民間委託による利用料値上がりが、今度は州民の負担増になる。その結果、税収が下がり、SNAP受給者がさらに増える、という悪循環にはまる。

(4)公共サービスの叩き売り
 デトロイトは、自動車産業ビッグ3があり、かつて「黄金の町」と呼ばれた。ここでも、SNAP受給者の拡大が自治体の財政を大きく悪化させた。税収が激減し、警察、刑務所、消防署、学校、図書館、公園などありとあらゆる公共サービスを売却し、そのあげくデトロイトは2013年7月に破綻した。
 最後は、維持費節約のため刑務所から解放された囚人たちが町にあふれ、失業した元警官たちが「全米一危険な町」と書かれたビラを配った。住民たちは州外に逃げ出した。
 かつてはあんなに栄えた町が、今では夕方以降は外出できなくなった。公共サービスを切り捨てれば切り捨てるほど、住民の暮らしや共同体はやせ細り、最後にはスカスカになってしまう。
 デトロイトは氷山の一角だ。全米の自治体の9割が5年以内に破綻すると言われる。こうした現状の中、ウォール街の投資家たちは、公共部門の解体を各地の首長や地方議員に強く働きかけている。公共から民間に委託されれば、それだけ企業の株価が上昇し、関連投資商品の価値も上がるからだ。かくて、1%層の収入は以前よりさらに増えている。
 ロビイングを受けた政治家たちは、税収不足補填の名目で企業誘致を狙う規制緩和に走る。財政難の自治体では、首長が任命した危機管理人に独裁的な権限を与え、バランスシート改善のために片っ端から公共サービスを廃止させていった。短期間で市の財政支出を減らして帳簿上の数値を是正するために、管理人は徹底した合理化を独裁的に進める。将来を見据えた長期的展望による建て直しではなく、予算のかかる公共部門から最安値で叩き売り、短期間でできるだけ企業収益を上げるのだ。
 組合への加入と支払いの義務化を廃止する「労働権法」が成立し、2012年現在、全米の半数の州が導入している。これにより、企業は組合との交渉を持たずに一方的に労働条件を定めることができる。組合は、全米各地で解体された。労働権法を導入した州は企業誘致が容易になり、政府は新規雇用の拡大と失業率の改善を手柄として大々的に宣伝した。
 実のところ、ここ数十年で爆発的に増えたのは、労働組合や福利厚生がなく、海外移転が不可能な8大低賃金サービス業(ウェイター・ウェイトレス、レジ係、小売店店員、メイド、運転手、調理人、用務員、介護士)だ。製造業や技術職などの専門職は、低賃金・低給料の地域に海外移転され、ワーキングプア人口による大幅な人件費切り下げで、経営陣とその株主はますます富裕化している。
 自治体の公共サービスが株式会社経営に変わるとき、その最大の特徴は、地域住民にとっての公益を追及するという公共サービス本来の目的が、「株主利益の最大化」に取って代わられることだ。
 公共交通のグレイハウンドバスが民営化された後、利用者が少なく採算が取れない全米の地域が次々に路線ルートから外された。賃金が大幅に下げられた運転手の労働時間は週100時間超となった。事故件数が急増した。公共交通のときは自治体に責任を問うことができたが、その場合と異なり、民営企業は多くの場合、豪腕の企業弁護士や計画倒産などで逃げ切る。被害者たちが泣き寝入りするケースが増えている。

(5)民営化で刑務所から消えた「更生」
 刑務所関連ビジネス業界の熱心な働きかけにより、1993年、刑務所内の囚人を時給17セントで働かせることを合法にする「テキサス刑務所産業法」が成立した。続いて、刑務所産業の規制当局も公から民に移された。
 国内の派遣社員や途上国労働者より遙かに安い労働力に国内産業はこぞって飛びつき、刑務所労働者は10万人規模の巨大市場となっている。全米各地で刑務所建設ラッシュが起こり、投資信託が爆発的に売れ、刑務所に閉じ込める囚人を増やすため、薬物取締法が厳罰化され、移民排斥法や服役延長法などの法案が次々に成立していった。
 刑務所が企業利益と結びついたとき、「囚人の人権」「更生」「社会復帰」といった公共のための概念は雲散霧消する。
 民間刑務所では、大規模な工場式農業の家畜のように、囚人が高密度で詰め込まれ、運動やリハビリの時間は削られ、刑務所内の食材も最安値のものに変わっていった。
 利益拡大のため、学校は不出来な生徒を追い出し、刑務所は囚人を増やしている。人間を犠牲にして、短期の売上げを優先するシステムが確立した。

□堤未果(ジャーナリスト)「株式会社化する国家 奪われる私たちの選択」(「世界」2013年11月号)
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 【参考】
【米国】における公的サービス民営化の悲惨(1) ~教育~

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【米国】における公的サービス民営化の悲惨(1) ~教育~

2013年10月29日 | 社会
(1)市場に奪われる公教育
 企業群の強い要請で、政府は公教育の民営化を推進し始めた。政府は、公教育の予算を減らし続けている。次のの2つによって、公立学校がどんどん廃止されている。
 (a)学力テストの結果によって予算に格差をつける教育改革、
 (b)バウチャー制度
 (b)は、福祉・教育・社会保障などの行政サービスに競争原理を導入する。経済界の強い働きかけによって誕生した。行政が各家庭にバウチャーを配り、「選択の自由」が与えられる仕組みだ。サービス提供側は、選ばれなければ補助金が出ないため、必死に「営業」しなければならない。
 (b)によって民間のチャータースクールを選ぶ親が増えたため、公教育予算が次々に民間のチャータースクールに移っていった。むろん、移るのこができるのは、バウチャーとの差額を自己負担できるだけの経済力がある世帯だけだ。
 経済力がない世帯は公立を選ぶ。
 しかし、学校はただでさえ予算が少ない上に生徒数が減り、その苦しい条件下で全国一斉学力テストでの高い平均点を要求される。国が設定したノルマを達成できなければ、さらに予算が減らされるから、今度は学校設備や人件費を減らさねばならない。こういう悪循環に陥ってしまう。
 1960年代に一世を風靡したチャータースクールの目的は、当初、規制緩和によって公立学校に足りない要素を明らかにし、子どもたちのために公教育全体を改善することだった。
 だが、多国籍企業(教育ビジネスを含む)の拡大とともに、チャータースクールに資金を出す側の立ち位置は、かつての「慈善事業」から、マネーゲームとしての「投資」に代わりつつある。
 教育の目的が利益の最大化となれば、学校全体のレベルをあげるために、富裕層の成績がよい子どもたちばかり入学させるようになる。低所得層やマイノリティの子どもたちが通う公立学校は、平均点が総じて低く、競争に負けて廃校になってしまう。かくして、失業した教師、教育難民となる生徒が増えていった。
 教育ビジネス業界は、大々的キャンペーンで公立学校をバッシングし、大口献金を通して教育民営化促進議員を増やし、関連法案を通過させている。同業界から多額の献金を受けたブッシュ、オバマ両政権を筆頭に、公教育民営化が政府によって精力的に推進された。
 全米のほとんどの自治体が赤字財政の中、政府は教育予算を賞金にした「学校民営化レース」を開催する。公立学校がチャータースクールに置き換えられるスピードは、年々速度を増している。
 「結果」を出せない教師が解雇または非正規社員にされるため、組合は徐々に解体されていく。
 2009年以来、米国内では30万人の教師が失職し、4,000校の公立学校が閉鎖された。
 質の良い市民を育てることで社会的共通資本という価値をもたらす公教育を、企業の求める短期間で成果を出す商品にすることで、失われるものは少なくない。

(2)手軽で安価な、しかし栄養のない給食
 財政難の公立学校は、大幅なコストカットを余儀なくされる。そこにやって来るのが、ファストフードや大手外食チェーン企業の営業マンだ。
 彼らが提供するランチメニューは、どれも手がかからない。湯をかけるだけのインスタント食品。電子レンジで1分間温めるだけの冷凍プレートや加工食品。高カロリーなので少量で満腹になり、何と言っても材料費が安い。
 地元の食材を栄養士の指導の下に給食のおばちゃんが手をかけて作るランチよりも遙かに費用が安くてすむ。
 だが、栄養素のない簡易ランチ(ハンバーガー・ピザ・清涼飲料水など)は、遺伝子組み換え食材や大量の砂糖、質の悪い油分や添加物がたくさん入っている。チキンナゲットなどで使う肉も、抗生物質を大量に投与して効率よく太らせた安い肉だ。規制緩和で業界が寡占化し、零細農家が消滅して、家畜は数社の大企業が大量に詰め込む工場式畜産が主流になった。子どもの肥満率が昔に比べて跳ね上がった。虫歯や糖尿病の発症率も増えた。その子どもたちの集中力は落ちるし、その医療費負担が家計に重くのしかかる。
 3人に1人の子どもが健康を著しく損なうレベルの肥満だ。深刻な社会問題となった。ただし、公教育の民間への切り売りが肥満児増大の原因として問題提起されることは決してない。公立学校は、外食チェーン企業にとって「ドル箱」の大市場だからだ。
 肥満対策として「もっと体を動かそう」にも、予算カットで経済的に追い詰められた公立学校は、真っ先に体育の授業を廃止する。公教育の予算獲得競争は、対象となる2科目の点数で決まるから、それと直接関係ない体育・絵画・音楽・道徳の授業は次々に切り捨てられてしまうのだ。
 給食は、コストのみならず質も落ちた。財政難で選択肢のない公立学校はファストフードや大手安売りチェーン店と契約せざるを得ない。
 学校に選択肢はない。公教育の民営化は、学校現場や自治体から教育に関する主権を奪う。資金を融資した投資家が校長でなく民間のマネージャーを置くチャータースクールも、政府の教育予算カットで学校機能を民間に切り売りする公立学校も、そこにいない企業本社に統御され、教育費はそちらに流れてしまう。
 企業が競合相手を排除するために、生産工程の異なる企業群を提携、合併、買収などによって統合する(「ピラミッド型支配」)。この手法で世界トップとなった一例がスーパーマーケットの最大手ウォルマートだ。
 同社が参入する際、その地域の小規模生産者、街の小売業者は瞬く間に飲み込まれてしまう。大手以外は淘汰され、安売りチェーンに卸してもらわないと生き残れない構図が、全体の価格を下げる。
 その結果、地域社会の形骸化が全米を侵食しつつある。その土地特有の文化、伝統、消費者の選択肢や共同体のつながりは喪失する。
 小売店の寡占化は、米国内における地方や都市の風景を似かよったフラットなものに変えていく。
 株式会社化した国家では、株主と末端労働者の物理的距離が遠く、収入格差もすさまじい。ウォルマートのCEOの年収は20億ドル(2,000億円)だ。他方、従業員のほとんどは福利厚生もなく、時給8.81ドルの低賃金で、とても生活できず、政府の食糧援助に依存せざるを得なくなる。

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【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~

2013年10月28日 | 社会
 (1)いなり寿司は、各種栄養成分をバランスよく取れる主食だ。かつては行楽弁当に必須、いまはコンビニやスーパーの総菜コーナーの定番だ。

 (2)いなり寿司は食べたいけれど、油揚げを煮付けるのがちょっと・・・・という消費者ニーズを受けて、「煮付け油揚げ」が売られている。
 酢飯は自分で詰めるから、いなり寿司を買うより安上がりだ。自分で酢飯を詰める分、手作り感がある。
 煮付け油揚げは、一定の人気を持つ商品だ。

 (3)では、煮付け油揚げの原材料は何か。
  (A)シジシージャパン「味つけいなり揚げ」・・・・油揚げ(大豆(遺伝子組み換えでない)、植物油)、砂糖、還元水あめ、しょうゆ、果糖ぶどう糖液糖、食塩、ベース調味料、調味料(アミノ酸等)、凝固剤、酸味料、(原材料の一部に小麦を含む) 
  (B)太子食品工業「ふっくらジューシーおいなりくん」・・・・油揚げ[(丸大豆(遺伝子組み換えでない)、食用植物油)、凝固剤(塩化マグネシウム(にがり)、消泡剤(レクチン、炭酸マグネシウム)]、調味液[砂糖、水飴、しょうゆ(大豆、小麦含む)、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖、本みりん、食塩、はちみつ、香辛料(アミノ酸等)、酸味料]

 (4)大豆、植物油(食用植物油)、砂糖、しょうゆ、食塩は添加物ではない。ただし、
  (a)味付けに使われるしょうゆに保存料などが添加されていても、「煮付け油揚げの保存には効果がない」という認識から、表示は免除されている(キャリーオーバー【注】)。
  (b)油揚げの原料に使われる豆腐凝固剤・・・・表示免除だ(キャリーオーバー)。
  (c)植物油・・・・溶剤(ヘキサン)を使用して抽出した後、リン酸や水酸化ナトリウムを加えて脱ガム→脱酸し、活性白土などで脱色して製品化される。これら添加物は、加工助剤と位置づけられ、表示免除だ。しかし、ヘキサンはベンジンの主成分だ。精油希釈剤やゴム糊溶剤などに使用され、危険物第4類に指定されている成分だ。最終製品に残っていないとは言え、いや、そうとは言い切れないし、そもそも食品にかかる添加物が使用されること自体が恐ろしい。
  (d)果糖ぶどう糖液糖、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖・・・・ぶどう糖と果糖を主成分とする液状糖だ。原料のでん粉には、安価な輸入コーン・スターチが使用されることが多いため、遺伝子組み換えの懸念が払拭されない。急激な血糖値上昇も指摘されている。
  (e)調味料(アミノ酸等)、酸味料・・・・一括表示が認められている添加物。危険度の高いものから低いものまで何種類もある添加物のうち、どれが添加されているのか、消費者には皆目わからない。不透明な添加物だ。
  (f)「ベース調味料」とは、いったい何か?

 (5)要するに、何種類の添加物が使われているか、分からないのが煮付け油揚げだ。
 これで作られたいなり寿司は、安全で栄養価の高い食品には決してなり得ない。それどころか、緩慢な健康被害につながっていく。

 【注】キャリーオーバー:食品業界の用語。原料中には含まれるが、使用した食品には微量で効果が出ないため、法律によって表示を免除される添加物を指す。

□沢木みずほ(薬食フードライフ研究家)「お手軽いなり寿司キット(?)  煮付け油揚げが危ないわけ」(「週刊金曜日」2013年10月18日号)
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 【参考】
【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~
【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~
【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~
【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~
【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~
【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム
【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~
【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~
【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~
【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~
【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド
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【TPP】がもたらす医療格差、薬価の高騰 ~通商権限なき米国大統領~

2013年10月27日 | 社会
 (1)TPP交渉の何が問題か。
 どんな交渉が行われているのか、妥結された条文は何か、政府は十分に説明しない。説明がないまま、既成事実が進行し続けている。それが問題なのだ。

 (2)今年2月、日米首脳会談で安部首相はオバマ大統領から「聖域なき関税撤廃が前提ではない」という確約を取り付けた、とされる。
 しかし、米国大統領に通商交渉の権限はない。合衆国憲法第1条8の3に、通商権限は連邦議会にある、と定められている。大統領がTPPに署名するためには、議会が大統領府に通商権限を一時貸し出す「貿易権限(TPA)法」を可決しなければならない。ところが、現在、法案審議入りすら行われていない。今のところ、米国の通商権限は政府ではなく議会にある。
 そんな事実さえ、日本国民の多くは知らされていない。
 日本のメディアも分かっているのか、怪しい。
 みな、米国大統領に交渉権限がある、と思い込んでいるのではないか。
 TPPは、TとんでもないPペテンのPプロジェクトだ。日本全体がペテンにかかっている。

 (3)日本医師会はTPPに反対を表明し、次の3つを主張している。
  (a)公的医療給付範囲の維持。
  (b)混合診療の全面解禁をしないこと。
  (c)営利企業(株式会社)を医療機関経営に参入させないこと。

 (4)混合診療について、日本の最高裁は「現行の法運用は適法」の判決を下し(2011年秋)、衆参両院は全会一致で反対の請願決議をあげた(9年前)。 

 (5)仮に日本がTPPに参加した場合、医療はどうなるか。そもそも、医療を縛る諸規制は誰を縛り、誰を守っているか。
 日本は、国民皆保険の下、都市でも農村でも全国津々浦々、誰もが均一で比較的質の高い医療を受けることができる。また、薬の価格も国が定めているため大きな変動はない。
 <例>虫垂炎の手術・・・・日本では1週間入院して40万円。他方、「自由診療」の米国では1日入院するだけで200万円。
 確かに、保険診療では患者が受けられる医療技術に限りはある。患者側からすると、多少高くてもよりよい医療技術やサービスを受けたい人もいるかもしれない。だが、眉唾ものの治療法や評価の確定していない新技術なるものも多いのだ。
 いま医療者側を縛っている諸規制が規制緩和され、「混合診療」が全面解禁されることになれば、医療技術を「商品化」し、カネにしようと考える病院が増えるのではないか。すると、都心の待遇がよい一部の病院に医師や看護師が集まり、郊外や地方の一般病院はますます医師が不足することになる。

 (6)TPPによって、薬価が上がる可能性もある。日本の2~3倍高い米国の薬価に引きずられて。
 製薬会社が費用を投じて新薬を開発するのは、利益を上げる見込みがあるからだ。にもかからず国が価格を安めに設定するのは気にくわない、と米国の製薬会社が日本政府に対して訴訟をしかけてくるかもしれない。
 TPP交渉で薬価がどう議論されているのか、ちっとも分からない。
 規制緩和が実現することになれば、薬害を招来しかねない「新技術」導入と引き換えに総医療費が膨らみ、結果として皆保険崩壊の危機が深まる。

□色平哲朗(JA長野厚生連・佐久総合病院地域医療部地域ケア科医長)「保険診療の内容が空洞化してしまう?」(「週刊金曜日」2013年10月18日号)
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 【参考】
【TPP】米国の日本支配の策動 ~安部首相のTPP詐欺~
【TPP】米国主導の秘密交渉に抵抗する各国 ~情報公開~
【TPP】は企業権益拡大のための協定 ~リーク文書~
【TPP】秘密交渉の裏側/多国籍企業群がTPP妥結に圧力
【TPP】数百万人の命を左右するEU・インドのFTA ~対岸の火事?~
【食】モンサントの不自然な食べもの
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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【官僚】キャリア官僚を優遇する自民党「公務員制度改革」

2013年10月26日 | 社会
 (1)10月15日に自民党行政改革推進本部で両省された国家公務員制度改革案骨子は、改革どころか、完全な「反改革」となってしまった。
 この法案は、自民党が麻生政権時代に国会提出した(2009年)法案に似ているが、実はまったくの骨抜きだ。

 (2)そもそも、公務員改革は、何のために行うのか。
 現在、公務員の人事・組織に関して、
  ・人事院・・・・給料や各給ランクごとの定数を決める権限
  ・総務省・・・・組織の機構(局・課)の配置(新設・廃止など)を決める権限
  ・財務省・・・・それらに関する予算を決める権限
をそれぞれ持っている。
 このため、時代の要請に合わせた柔軟な組織・人員の配置替えができない。<典型例>農水省がなお強大な組織を保持。
 <問題点1>人事院(事務局は霞が関官僚)が第三者機関と称してお手盛りで処遇を決めるため、民間よりかなり高い給与が放置されたり、組合の要求がそのまま通ってしまう。
 <問題点2>官僚の人事が各省縦割りで行われるため、官僚の評価が各省庁の権限・予算・天下りポストの拡大にどれだけ貢献したか、という観点で行われ、国民への貢献という観点での評価にならない。・・・・優秀な若手や外部の民間人を幹部に登用しようとしても、官僚が抵抗する。一度幹部になったら、不祥事でも起こさない限り降格にならないので、抜擢しようとしてもポストが空かない。ブログやツイッターで暴言を吐いた官僚でも、停職処分後は、管理職として処遇せざるを得ないのも同じ問題だ。
 <問題点」3>総理や大臣が官僚の利権を奪う改革を実施する場合、官僚のサボタージュに遭う。官邸や大臣の機能が弱く、思うように改革が進められない。・・・・<問題点2>のとおり、真剣に改革に取り組まない幹部をすぐに降格できないこともこの傾向を助長している。

 (3)かかる問題の解決を図ろうとしたのが、2009年の自民党の改正案だった。
  ・人事院、総務省などの人事・組織関係の権限を新たに内閣人事局を作って全面的に移管する。
  ・総理と官房長官が各省の大臣と協力し、官僚に頼らずに人事と組織配置を仕切る。
  ・総理や各省大臣が守旧派官僚に負けないよう国家戦略スタッフ(総理の補佐)を自由に配置できる。
  ・政務スタッフ(大臣の補佐)を内閣が自由に配置できる。
  ・民間人登用のため、幹部の公募を総理が指示できる。

 (4)これらに対して、人事院はむろんのこと、霞が関をあげた反対があった。しかし、連日のバトルの末、ナントカこれを抑え込んだ。
 唯一、できの悪い幹部を降格する規定が不十分だったが、それも2010年の自民・みんな共同案では幹部を任期付きにする、という解消策がシメされていた。

 (5)しかるに、今回の自民党案は、
  ・人事院の権限をさまざまな形で温存して「公務員の守護神」役を維持し、
  ・国家戦略スタッフは事実上見送り、
  ・政務スタッフも大臣補佐官としてたった1人だけ
というような骨抜きとなってしまった。むろん、降格規定は野党時代の案を葬り去った。
 しかも、驚くべし、民間との人事交流と称して、事実上の天下り先の拡大など、官僚の焼け太り策まで盛り込んでいる。

 なぜか、新聞はこの問題を一切報じない。

□古賀茂明「公務員「改革」の欺瞞 ~官々愕々第83回~」(「週刊現代」2013年11月2日号)
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 【参考】
【官僚】その行動原理 ~天下りの構造~
【震災】1人の官僚を切れば5人の失業者を救える ~『日本中枢の崩壊』~
【読書余滴】天下りは年功序列のなれの果て ~『官僚のレトリック』~
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【TPP】米国の日本支配の策動 ~安部首相のTPP詐欺~

2013年10月25日 | 社会
 (1)米国の1980年代以降の対日経済戦略は、長期的に継続している。その柱は、
  (a)金融市場の開放・・・・<典型例>橋本内閣が提示した金融ビッグバン(1996年)
  (b)米国企業に利益をあげさせるための日本国内の制度改革

 (2)一時は100兆円の資金を誇ったかんぽ生命を狙って、米国はさまざまな手を使ってきた。
 米国は、かんぽ生命(将来はゆうちょ銀行も)に対し、まず後ろ盾である政府の支配から切り離した上で、株式を売却させ、実質的なM&Aを実行できるような流れを作ろうとしている。まさに、そのための新しい戦略としてTPPがある。
 そもそも米国にとってTPPとは、日本を引き入れて米国企業の意向が貫徹できるように日本国内の制度、規制、仕組みを好き勝手に作り変えるためのツールだ。(1)-(b)の最強の武器だ。
 それを担保するのが、TPPに盛り込まれるISDS条項(ISD条項)だ。
 TPPで細かな条約を取り決めなくても、後でいくらでもISDS条項を使って、米国企業の要求を実現させることができる。

 (3)米国では、保険業界の政治力が大きい。TPPを使って、かんぽ生命を始めとした郵政グループの資金を狙い、日本への米国系保険会社の進出を拡大しようとしている。
 国民皆保険の存在しない米国では、民間の医療保険で医療がまかなわれている。営利事業が医療を支えている。このため、富裕層が高度の医療を受けられる半面、民間の保険に入れなくて、医療サービスを受けられない多数の低所得者層が存在する。
 米国は、米国系保険会社の日本での拡大のため、TPPを使って、日本の現行の国民皆保険制度を限りなく米国の仕組みに変えるよう仕掛けてくる可能性が高い。場合によってはISDS条項を発動させて。

 (4)安倍首相は、「医療を新しい成長産業にする」という方針を掲げている。
 同時に、高齢化社会で医療費が増大し、このままでは現在の公的医療制度は成り立たなくなる。医療費抑制が叫ばれている。
 医療分野のGDPが大きくなるのに、医療費を抑制するのは矛盾だが、この矛盾を解くカギは実はTPPに関わる。
 すなわち、米国がかねてから解禁を求めている混合診療的な制度を導入すれば、民間の高額の保険でまかなうような室の高い医療サービスの分野が拡大する。そうしたサービスのために医療機器価格の自由化も促進される。その分、「新しい成長産業」となる余地も生まれる。
 政府にとっては、医療費を削ることができる。米国企業にとっては、保険商品の売り込みを拡大できる。
 そして・・・・国民の間には、医療分野における貧富の格差が拡大する。

 (5)安倍首相と自民党は、2012年の総選挙で、TPPに関して6つの公約を掲げた。
  (a)聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉には参加しない。
  (b)自由貿易の理念に反する工業製品の数値目標を受け入れない。
  (c)国民皆保険制度を守る。
  (d)食の安全・安心の基準を守る。
  (e)国の主権を損なうISDS条項に合意しない。
  (g)政府調達・金融サービスなどでわが国の特性を踏まえる。

 (6)(5)は、「安部首相のTPP詐欺」である。
 3月以降、安部首相はもっぱら(5)-(a)と(c)のことしか言わなくなったからだ。しかも、安倍首相はオバマ大統領のとの会談(2月)の際、「(交渉参加にあたって)聖域なき関税撤廃を前提としない点を確認した」と述べたが、日本として「(農産物等)聖域をなくするのは受け入れない」と確認したわけではない。
 (5)-(g)についても、安部内閣は米国の意向を汲んで、かんぽ生命に国内で新規の癌保険商品の販売を認めなかった。しかも、6月、昨年就任したばかりの坂篤郎・日本郵政社長を民営化に積極的な西室泰三に社長交替させた。その西室新社長は、7月、癌保険の販売で提携するはずだった日本生命と突然手を切り、米国内で癌保険を独占し、一貫してかんぽ保険の完全民営化を要求してきた米アフラック社と提携する旨、発表した。
 米国は、①かんぽ生命の完全民営化によって売却された株式を取得すると同時に、②いま全国にある郵政グループの膨大な販売拠点を獲得する、という複眼的戦略を展開しているらしい。安部首相の行動は、この戦略に忠実に応えるものだ。このままでは、(5)-(c)も反故にされかねない。形だけ国民皆保険制度が守られても、現在の内容とは別の制度にされてしまう可能性が大だ。

□植草一秀(経済評論家)「かんぽ生命に見る米国の日本支配の策動 安部首相の公約違反を許してはならない」(「週刊金曜日」2013年10月18日号)
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 【参考】
【TPP】米国主導の秘密交渉に抵抗する各国 ~情報公開~
【TPP】は企業権益拡大のための協定 ~リーク文書~
【TPP】秘密交渉の裏側/多国籍企業群がTPP妥結に圧力
【TPP】数百万人の命を左右するEU・インドのFTA ~対岸の火事?~
【食】モンサントの不自然な食べもの
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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【原発】除染道路の4割が効果なし ~福島県田村市~

2013年10月24日 | 震災・原発事故
 (1)10月11日、支援対象などの見直しが行われないまま、「子ども・被災者支援法」の基本方針が閣議決定された。
 パブリックコメント4,900件は無視された。支援対象は福島県東部の33市町村のみ。

 (2)一方、避難指示区域に指定されていた一部地域の指示が解除される「危険」が出てきた。
 なぜ危険なのか。
 「避難指示解除準備区域」に一部が指定されている福島県田村市では、主要道路の「除染作業が完了した」とされる。
 ところが、4割の地点で1mSv/年を上回る空間線量が計測された。NGOグリーンピースが、10月1~5日、同市の道路、住宅、その周辺を調査し、明らかになった。
 グリーンピースは、フクイチから20km圏内に位置する同市の主要道路90km、18,000ヵ所で計測した。その結果は、39%の地点で放射線量が0.23μSv/時を上回っていた。年間放射線量を1mSvに保つために政府が目標としている値を超えるものだ。
 住宅敷地の線量は目標値以下となっていて、除染効果があった、とは言えるが、ある住宅では僅か300m離れた細道に入ると、線量が旧に1.4μSv/時にはねあがった。

 (3)除染されていない地域における空間線量が高すぎる。主要道路や家屋だけを除染しても、きれいな部分だけを縫って歩くように生活しろ、ということになる。【ヤン・ヴァンダ・プッタ・グリーンピース放射線防護アドバイザー】

□渡部睦美(編集部)「帰還迫られる福島・田村市で放射線調査 除染道路の4割が効果なし」(「週刊金曜日」2013年10月18日号)
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 【参考】
【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~
【原発】【食】原子力問題と伝子組み換え(GM)問題の共通点 ~ムラ~
【原発】震度6でフクイチが崩壊する日 ~液状化~
【原発】東電による汚染と、東電の「汚染」 ~隠蔽体質~
【原発】太平洋に拡散する放射性物質 ~シミュレーション~
【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~
【原発】【食】魚への影響 ~過去・現在・未来~
【原発】銀行はボロ儲け ~汚染水に国費投入~
【原発】【食】関東の食材からセシウム ~安部首相的「安全」の実態~
【原発】最悪の事態を防いだ2つの幸運 ~失われた沃野と海~
【原発】汚染水を浄化できるか ~福島第一原発はどうなっているのか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(3) ~次の震度6~
【原発】今、そこにある汚染水危機(2) ~汚染水は海で薄められるか~
【原発】今、そこにある汚染水危機(1) ~封じ込めは可能か~
【原発】安倍政権、「収束宣言」を撤回 ~汚染水~
【原発】廃炉費用を電気料金に上乗せ ~制度を変えた経産官僚は出世~
【原発】ウソだらけの汚染水「緊急」対策 ~安部首相の抽象論~
【原発】国の汚染水対策3つ ~「汚染水は海に流せ」?~
【原発】「東京五輪」を脅かすフクシマ ~ダダ漏れ汚染水地獄~
【原発】なぜ汚染水は漏れたか ~誤算・ケチケチ体質~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【原発】責任不明確な国の汚染水処理体制 ~再稼働よりも汚染水対策を~
【原発】「汚染水」の本当の深刻さ ~東電のコストカットが一因~
【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~
【原発】安部政権の演出と狙い ~高濃度汚染水の海洋流出~
【原発】福島第一原発で汚染水が海洋流出 ~漁民の被害は止まない~
【原発】福島第一原発周辺の海水汚染続く ~魚介累から放射性セシウム~
【原発】【食】東日本太平洋沖で獲れた魚介類8体からセシウム検出
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【TPP】米国主導の秘密交渉に抵抗する各国 ~情報公開~

2013年10月23日 | 社会
 (1)米国が描いていたシナリオ【注1】は崩れた。オバマ大統領が欠席した【注2】ために。

  【注1】10月上旬のAPEC首脳会議(インドネシア・バリ島)の合間にTPP参加国首脳による会合を持ち、その後直ちに「年内妥結」を高らかに表明する。
  【注2】米国内の財政問題による政府機能停止のため。

 (2)の10月8日、TPP参加国首脳会合後、各国は「年内妥結」と表明した。しかし、中身は「年内妥結」にほど遠い。知的財産問題、環境、国有企業問題、市場アクセスなど、各国の対立点の溝は大きい。
 特にマレーシアは、ペルー交渉(5月)の頃から、対米姿勢をはっきり打ち出してきた。
  (a)知的財産・・・・米国は大手製薬会社の特許保護による利潤追求を主張する。他方、マレーシア/ベトナムは、国内にエイズ患者を多数抱え、特許保護による薬価高騰、ジェネリック薬へのアクセス困難を懸念する。対立は鮮明であり、ここには「利潤か、命か」という本質的な問いが含まれている。
  (b)環境・・・・米国・日本などは先進国で確立している高い環境基準を求めている。他方、マレーシア/ベトナム/シンガポールなどは抵抗を示す。
  (c)農産品の関税・・・・2国間交渉レベルでしか進んでいない。
  (d))ISD条項・・・・最近、ニュージーランドも反対に回った。

 (3)交渉は複雑化している。背景に、米国主導で進められてきた「徹底した市場主義」を自国に当てはめると、国内の貧困悪化、不安定化を招く、というアジア・中南米諸国の事情、交渉を我が物顔で牛耳ってきた米国への不満がある。
 米国は、こうした対立をすべて覆い隠して「年内妥結」の形式を必死で取り繕う。しかし、「年内妥結など絶対無理」と言う交渉官が多い。

 (4)TPPは「徹底した秘密交渉」だ。マレーシアはしかし、自国の判断でさまざまな形での説明、情報公開を国民に対して行っている。
 <例1>「29章あるとされる交渉テキストのうち、すでに14章が確定している」と政府発表。
 <例2>交渉会合直後、国民の誰もが自由に参加できる説明会を実施。 
 「マレーシアは、TPP交渉で決してイエスマンにはならない。閣議や国会審議を経て参加を決め、国民に説明責任を果たす。そのために年内妥結ができなくても問題ではない」【ナジブ・マレーシア首相】
 政府にはマレー財界からの強い圧力がかかっているが、他方、マレーシアのエイズ患者支援団体、医療団体、NGOなどが政府に粘り強いロビー活動を行っていて、その成果が政府の姿勢に影響を与えている。

 (5)マレーシア以外の国々も、米国主導の交渉と極度に秘密裡進められる交渉そのものに対する抵抗を少しずつ示し始めた。
 ペルーやチリの国会議員は、自国政府に対し、情報公開を求める動きを起こしている。
 ニュージーランドでは、APEC前に、「テキストを公開せよ(Expose Text)」「これは民主主義ではない」というスローガンの大キャンペーンが始まった。「企業の利益か、民主主義か」という重大な問題提起だ。
 米国内でも、パブリックシチズンらNGOは、粘り強くTPPに警鐘を鳴らし続ける。

 (6)いま米国は「苦境」に直面している。来年の中間選挙までにTPP妥結を成果としてあげたいオバマ政権だが、事態はそれどころではない。
 国内財政問題のため、大統領が外遊できないほど深刻化した。
 米国通商部(USTR)の公式ウェッブサイトも、更新できなくなった(APEC終了直後の10月9日現在)。
 USTRは資金難で、10以上の分野別「中間会合」も、そのほとんどが米国にとってコストのかからない北米(米国、カナダ、メキシコ)で開催されている。

 (7)米国政府は、各国と軋みを生んでいるだけではない。米国内の財界と、足並みが乱れつつある。
 米国財界は、高い自由度の貿易協定、知的財産分野における特許保護を望んでいる。自分たちの獲得目標が、「形だけの合意」、つまり妥結を急ぐ政府によって二の次にされてしまうことを懸念している。
 米政府と財界の間に齟齬が生じている。

□内田聖子(アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長)「「結論ありき」で中身はボロボロ TPP「年内妥結」声明も綻びはじめた米政府と財界」(「週刊金曜日」2013年10月18日号)
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 【参考】
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【原発】新潟県知事「豹変」の陰に銀行圧力 ~柏崎刈羽原発~

2013年10月22日 | 震災・原発事故
 (1)フクイチの汚染水問題は、抜本的解決の道が見えず、東京電力の経営問題はカネの論理ばかりが際立っている。
 顕著だったのが、柏崎刈羽原発の安全審査申請だ。
 泉田裕彦・新潟県知事は、月末の廣瀬直己・社長との会談から一転、容認に踏み切った。その背景に、東電による安全面の対応強化以外に、金融機関による770億円の融資借り換えが10月に迫っていたことがあった。
 借り換えの前提に、今期の経営黒字があった。経営黒字のためには、柏崎刈羽原発の再稼働か、電気料金値上げが必須。金融機関は、柏崎刈羽原発について、「(実際の再稼働ではなく)安全審査の申請さえできれば借り換えに応じられる」と説明していた。ために、東電や経済産業省は、「再稼働前提ではなく、取りあえず安全かどうか確かめたい」という姿勢で新潟県と水面下の交渉を進めていた。
 安倍政権も、「消費増税のほかに電気料金値上げだけは避けたかった」ことで、新潟県議会を通じて外堀を埋めていった。政権のこうした後押しも泉田知事の翻意を促した。

 (2)だが、1件の融資案件のめどがついただけで、東電の経営をめぐる根本状況はちっとも変わっていない。
 審査を申請しただけで、実際の再稼働には再び知事の同意を得なければならないのだ。

 (3)12月に三井住友銀行や日本政策投資銀行から受ける予定の3,000億円の新規融資も難航しそうだ。
 10月の借り換えにめどがついたことで新規融資も実施される、という報道もあるが、東電側と金融機関は今も交渉を続けている。
 交渉で東電が示しているのが、
  (a)柏崎刈羽原発の再稼働(2014年度)
  (b)修繕費の先送りによる今期の黒字化・・・・一番カネのかかる送電設備の修繕を全部遅らせれば、2,000億円に近い費用を削れるから、12月にも策定する収支計画にこうした数値を盛り込む方針。

 (4)金融機関側は、稟議を通すには1ヵ月はかかる。東電の計画が持続可能か、じっくり査定する方針。
 ただし、本音は、東電救済にここまでカネを使った以上、株主代表訴訟に耐えられるだけの論理があるか否かが重要になる。

 (5)実は、金融機関と交渉しているのは、もはや東電ではなく、国の原子力損害賠償支援機構や経産省になっている。
 東電が蚊帳の外に置かれ、再生計画の大きなビジョンも見えぬまま、数字の帳尻合わせによる綱渡りの金策が続いている。
 東電は、12月の新規融資の後、来年1月には別の金融機関から資金を調達する計画を立てているらしい。
 しかし、小手先の延命策では限界がきている。
 国民生活に直結する東電の事業、エネルギー政策の将来像を提示しない限り、ゴマカシが続いていく。

□森川潤(本誌)「柏崎刈羽原発で安全審査容認 知事“豹変”の陰に銀行圧力」(「週刊ダイヤモンド」2013年10月26日号)
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 【参考】
【原発】【食】原子力問題と伝子組み換え(GM)問題の共通点 ~ムラ~
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【経済】賃金引き上げの唯一の方法 ~法人減税の誤謬~

2013年10月21日 | ●野口悠紀雄
 (1)安部首相は、(a)政府と企業との直接交渉で賃上げを促す、(b)法人減税で賃金を上昇させる、といったプランを持っている。
 見当違いだ。わけても(a)は論外だ。政治的パフォーマンスとして行いたいのだろうが、こんな対応しか思いつかないのか、と国民を幻滅させる点で逆効果だ。発想の貧困を暴露している。
 そもそも安部首相は、賃金下落のメカニスムを分かっていない。

 (2)個々の企業が賃金を抑えているのではなく、産業構造の変化に伴って、日本経済全体の平均賃金が下落しているのだ。
  (a)産業計の賃金指数は、1990年代末がピークだ。それ以降は、おおまかな傾向として、最近に至るまで低下し続けている。事業所規模5人以上の現金給与総額は、1997年度(104.4)から2012年度(99.9)まで、4.5%の下落だ。
  (b)製造業では、リーマンショック以前の時点においては、賃金が上昇していた。特に1990年代後半から2000年代中ごろにかけて、産業計の賃金が下落していたときに、製造業の賃金は上昇していた。1997年と2007年を比べると、
    ①産業計は1.8%下落
    ②製造業は3.8%上昇
  (c)製造業の賃金は、リーマン・ショックで大きく低下したが、その後は回復している。その結果、製造業の2012年度の賃金指数は、リーマンショック前のピークには及ばないものの、2000年代初めより高くなっている。
  (d)製造業と対照的に、医療、福祉業は、賃金指数が趨勢的に低下している。その結果、最近の賃金指数は、2000年代初めより12%も低下している。
  (e)賃金水準に、大きな格差がある。賃金は、基本的には労働の限界生産力に等しい。生産性は産業別に大きな差があるため、賃金水準は産業別に大きくことなる。2012年度における従業員1人当たりの給与は、
    ①製造業・・・・440万円
    ②非製造業・・・・338万円
      ※うち、医療、福祉業・・・・217万円(①の5割)
  (f)製造業の従業員は、縮小する一方だ。2012年度はピーク(1991年度)より269万人減った。
     ※1,300万人近く(1991年度) → 1,200万人超(1995年度まで) → 1,000万人弱(2011年度)
  (g)非製造業の従業員は、一貫して増えている。特に2000年代初めに増加が顕著だ。この結果、非製造業は2,236万人(1990年度)から3,141万人(2012年度まで、904万人増えた。
  (h)非製造業の従業員数増加は、介護保険の導入によって、医療、福祉業の従業員が増えたことの影響が大きい。39万人(2004年度)から86万人(2012年度)まで47万人増えた。同期間中の製造業の従業員数減少は62万人なので、その4分の3をカバーしている。
  (i)賃金が高い製造業が縮小し、賃金が低い非製造業(特に医療、福祉業)が拡大したため、日本経済全体の賃金が下がったわけだ。

 (3)(1)に戻ると、(a)は日本が計画経済国家や統制経済国家ではない以上論外であるとして、(b)の、法人減税は賃上げを促すか?
 否。
 「利益は配当、内部留保、役員報酬、賃金で山分けされる」・・・・わけではない。売上げから賃金などを引いて残ったものが利益だ。仮に内部留保を吐き出させたいなら、法人税を増税する必要がある。
 さらに重要なことは、(2)で示すように、個々の企業が賃金を抑えているわけでなない、ということだ。ある産業の賃金は、その生産性で決まる。
 では、製造業の縮小をくい止めれば問題は解決するか? 否。製造業の縮小は、新興国の工業化がもたらした必然的結果だからだ。
 結論。新しい産業を興す。それが、日本の賃金を引き上げるための、困難だが、唯一の方法だ。

□野口悠紀雄「賃金引き上げの方法は新産業を興すことだけ ~「超」整理日記No.681~」(「週刊ダイヤモンド」2013年10月26日号)
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【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~

2013年10月20日 | 社会
 (1)遺伝子組み換え(GM)作物で、除草剤耐性作物の種類が増え続けている。
 かつては、ラウンドアップ耐性作物(モンサント社)とバスタ耐性作物(バイエルクロップサイエンス社)だけだった。
 その後、(a)用いられる除草剤の種類が増え、(b)複数の除草剤に耐性を持たせた作物が登場している。

 (2)米国では、危険な農薬が増える上に、使用量増加が見込まれることから、市民の間で新しいGM作物承認への反対が強まって、簡単には承認されなくなっている。
 米政府が求めたパブリックコメントにおいて反対意見が多かった作物に、除草剤ジカンバや24-Dへの耐性作物があった。最近では、イソキサフルトール耐性作物の承認が問題になっている。
 ジカンバや24-Dは、いずれも不純物にダイオキシンを含む可能性がある。24-Dは、ホルモンを攪乱する化学物質「環境ホルモン」にリストアップされた。
 イソキサフルトールは、ラットを用いた実験で、肝臓や甲状腺に腫瘍を引き起こした。ために、米国環境保護局が発癌物質に指定している。また、水生生物、野生植物、主要作物に有害であるということで、ウィスコンシン州、ミシガン州、ミネソタ州では使用できない。

 (3)ところが、米国では承認ストップ状態のこれら除草剤耐性作物が、日本では相次いで承認されている。簡単に承認する仕組みに欠陥があるからだ。
 なぜ、日本では簡単に承認されてしまうのか。
 カタルヘナ議定書に基づく国内法が施行され、
  (a)新しいGM作物の承認を得るためには、その法律に基づいて生物多様性影響評価が義務づけられている。
  (b)しかし、影響評価の対象としている範囲が野生植物だけだ。農作物や昆虫・鳥など動物への影響が基本的に除外されている。

 (4)除草剤耐性作物に用いる除草剤は、かつてベトナム戦争などえ枯葉剤に用いられたものが多い。ラウンドアップ、ジカンバ、24-Dがそれだ。
 モンサント社は、米国の科学企業として、枯葉剤を最も多く製造した企業だ。
 枯葉剤が除草剤耐性作物に用いられる理由は、除草剤耐性作物の効果に適しているからだ。

 (5)他種類の除草剤を組み合わせるケースが増えた理由は何か。
 グリホサートやグルホシネートの特許が切れて、他の企業が使用できるようになったこともあるが、最大の理由は、除草剤耐性雑草(「スーパー雑草」)の拡大だ。
 除草剤耐性作物は、除草剤を撒いた際に作物だけ生き残るため、省力化・コストダウンになる点が謳い文句だった。
 しかし、「スーパー雑草」がはびこり、手に負えなくなった。GM作物の省力化・コストダウン効果はマイナスに転じた。費用も手間もかかり、農薬が増加する悪循環に陥り始めている。
 本来は不要だった(はずの)農薬の使用量が増えた。その結果、昆虫、鳥、小動物など野生動物の減少、生物多様性や生態系の変化が起こった。
 米国を代表する貴重なオオカバマダラ蝶の激減は、深刻な悪影響の象徴となっている。

 (6)1996年から2011年の間に、除草剤の生産量が5億2,700ポンド(239,000トン)増加している。
 今後、除草剤の使用量のみならず、種類が増え、危険性も増幅することになる。 

□天笠啓祐(ジャーナリスト)「除草剤耐性GM作物のせいで日本でも増え続ける危険な除草剤」(「週刊金曜日」2013年10月11日号)
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 【参考】
【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~
【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~
【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~
【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~
【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム
【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~
【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~
【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~
【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~
【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド
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【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~

2013年10月19日 | 社会
 小沢一郎を国会に証人喚問すべきという声が高まっていた時期があったが、むしろ竹中平蔵を証人喚問すべきであった。小沢については個人のスキャンダルだが、竹中については政策のスキャンダル。だからこそ、国会に証人喚問すべきは小沢より竹中だった。あのとき竹中を証人喚問しておけば、その後に橋下徹が出てくることはなかった。【佐高】
 フリードリヒ・ハイエクのいわゆる「新自由主義」と、竹中ら「改革に憑かれた人々」の言う新自由主義はまったく違う。ハイエクは自由主義を徹底するためにあえて新自由主義と名づけた。竹中のはそうじゃない。本来、市場と権力は無縁のはずだ。権力が働かないようにするのが市場なのに、竹中は市場を権力のための道具にしてしまった。ハイエクは、経済学者が政治とかかわると政治家になるから、自分は政治とかかわらない、と宣言している。だから、宇沢弘文はけっして政府の審議会などには入らなかった。【高橋】
 米国では、ケネディ政権(1961~63年)のとき、経済学者がこぞって権力と結託した。サミュエルソンしかり、ソローしかり、トービンしかり。ノーベル賞級の学者が時の権力のために経済学を濫用した。その経済学者の弟子たちが連邦政府の権力をとっていった。竹中が真似たのは、まさにこうした経済学者だ。【高橋】
 竹中は経済学者にして言論人だが、不思議なことに彼の言論を支えるテキスト(理論)がない。ハイエクもミルトン・フリードマンもきちんと自分自身が書いたテキストを持っている。しかるに、竹中にはテキストがない。だから、竹中は日本のフリードマンではない。言論で勝負する人ではない。竹中が書いた文章を一生懸命読み込んでも、あまり意味がない。【佐々木】
 くるくる変わるからだ。【佐高】
 肩すかしだ。では、どうやって竹中の本質に迫るか。彼の行動を追っていくしかない。行動の軌跡をたどると、背後にあるものがはっきり見えてくる。【佐々木】
 竹中は政商ならぬ学商だ。竹中は、以前、田原総一朗に「郵政民営化には反対」だと述べていた。自分の信念とか理想とか、そういうものを持っていない人だ。【佐高】
 学者は理想を持っていて、それを実現するために政策を考えるのだが、竹中にそういう発想はない。【高橋】
 政治とかかわらない、ということは、私欲から離れる、ということだ。ところが、竹中からは私欲の話しか出てこない。パソナの会長に就任する話、フジタ未来経営研究所の理事長になる話、未公開株をもらう話、脱税、逃税の話・・・・。新潮ドキュメント賞受賞の佐々木実『市場と権力 ~「改革」に憑かれた経済学者の肖像~』が行っている批判の有効性は、その私欲の部分と竹中個人を結びつけた点だ。【佐高】

 ジャーナリズムは竹中の言葉を吟味する作業を放棄している。特に経済を語る際の語り口が、まるで空中浮遊しているように現実からかけ離れてしまっている。【佐々木】
 竹中とその周辺の人たちの人間関係の密度は、たぶん濃くないだろう。【佐高】
 信頼関係という点では、そうだ。【佐々木】

 アベノミクスも竹中の新自由主義と同じく、実態がはっきりしないものの集まりに見える。【佐高】
 アベノミクスにもテキストがない。マスコミ受け、世論受けのいい政策が並べられ、実行されている。第一の矢「大胆な金融政策」、第二の矢「機動的な財政政策」、第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」は、それぞれテキストから見るとバラバラ。対立しているような議論を強引に束ねているだけだ。【高橋】
 いま竹中が熱心に取り組んでいるのは国家戦略特区らしい。歯車がまわりだせば、新自由主義化の流れが決定的になる可能性がある。特区は、自治体の長との協調関係が重要なポイントになる。東京都には猪瀬直樹・知事がいるし、大阪市には勢いが衰えたとはいえ、まだ橋下徹・市長が牛耳っている。いずれも新自由主義的政策を支持するリーダーだから、竹中にとっては願ってもないカウンターパート。東京や大阪での大胆な規制緩和が突破口になってしまうかもしれない。【佐々木】
 特区と言えば良く聞こえるが、一般の国内法で禁じられていることを特例法を作って特別に企業にやらせる、ということだ。特区構想のなかには、営業活動を24時間フル稼働にする、という話が持ち上がっている。これは、エネルギー政策の観点からすれば、原発の稼働を前提としている。原発があるから、電気は24時間使ったほうが効率的になる。猪瀬知事は原発依存から脱却する、と述べているが、そのことと24時間の営業活動は矛盾する。【高橋】
 結局、新自由主義とは、偏自由主義のことだ。道州制構想があるが、この括りは電力の括りと同じだ。道州制は、効率を優先する。【佐高】
 ある意味で大型特区。【高橋】
 だから、道州制と、地方を大事にする、という議論とは一致しない。小泉、竹中の構造改革は地方では不評だった。地方では肌身に迫る話だった。【佐高】

 黒田東彦が日本銀行総裁に就いてから、日銀の景気判断が前のめりだ。日銀は実際に効果が出てくるまで景気判断を変えないものだ。ところが、今は実体経済に効果が波及していない段階で、日銀が「よくなった」と言う。兆しが出ているからといって、その先どうなるのか分からない段階で「よい」と判断するやり方は、これまでの日銀にはなかった。【高橋】
 一喜一憂をもたらす株価は、指標の一つにすぎない。【佐高】
 ケインズも言っているが、経済の実体とは無関係だ。単なる博打場で、だましあいの世界。【高橋】
 でも、それが経済の指標みたいになっている。【佐高】
 株価がいちばん操作しやすいし、動きやすい。【高橋】
 なるほど。実体経済を計るのは株価でなくて・・・・。【佐高】
 やはり雇用だ。働いている人にとって雇用が安定していて、自分の生活に心配がないような公共サービスが提供されている、というのが、経済にとってベストな状態だ。それをどうすれば作れるか、を考えるのが経済学で、実行するのが政治だった。【高橋】

 竹中には一般の人々の理解を超えるところがある。でも、そこは霧に包まれている。自分が派遣業の規制緩和をしておきながら、派遣業大手のパソナの会長におさまり、年収は1億円だとか。一般にはあり得ない話だ。【佐高】
 自分でルールを変えて、そこから発生する利益を吸い取ってしまうグループが米国にある。日本における「レント・シーキング」グループが竹中らの勢力だと見ることができる。ジャーナリズムは、高尚な経済論議だけはなく、そうした暗部にもメスを入れないといけない。【佐々木】
 何でも規制緩和して企業に任せればいい、というような風潮があるが、医療とか教育とか雇用とか金融は、市場に任せたらおかしくなる、というのが本来の経済学だ。公共投資も同じ。コスト・ペネフィット分析といって、マーケットの指標dわけで公共投資の効果を計ることはできない。文化的、社会的価値も考慮すべきだ。【高橋】
 郵政民営化もパブリックを消していった。南米は、規制緩和の実験場にされ、反米大陸になっていった。【佐高】
 日本は逆に、実験場にされているのに、親米列島になっていく。【高橋】
 日本の規制改革の歴史を紐解くと、1990年代に運輸省が需給調整規制撤廃に踏み切ったのが最初の大きな出来事だった。タクシー、バスの規制を緩くしていった。その結果、あまりにも規制を緩くしすぎて、タクシーの台数が増えた。運転手の賃金は一気に下がり、自己が増えた。問題が大きくなったため、与党が規制強化の法案を出すことになっている。そういう現実があるのに、まだ「規制=悪」という構図でしか語られないのは不自然きわまりない。実行に移された規制緩和の検証作業がまったく行われないまま、またぞろ「規制緩和」の大合唱が始まっている。【佐々木】
 自由競争の行き着く先は、独占だ。規制反対者は、自由化の先にある独占という大きな権益を目的にしている。そこにあるのは巨大な利権だ。【高橋】
 スティグリッツが重要なことを書いている。「規制とはシステムをよりよく機能させるために設計されたルールであり、具体的には競争を担保したり影響力の濫用を防いだり、自分で身を守れない人々を保護したりする」と。また、「企業に完全な自由裁量を与えるという動きは、富裕層の近視眼的な利益追求を反映している」とも。【佐々木】
 規制緩和を言う人は、独占禁止法も緩和しろ、とか言う。彼らは独占を狙っている。【佐高】 

□鼎談:佐々木実(ジャーナリスト)×高橋伸彰(立命館大学教授)×佐高信(評論家)「ブラック国家ニッポン 竹中平蔵とアベノミクス」(「週刊金曜日」2013年10月11日号)
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【食】「イオン」の産地偽装 ~中国猛毒米~

2013年10月18日 | 社会
 (1)9月29日、「イオン」で販売されていたおにぎりと弁当1,500万食に、産地偽装された中国産米が混入していたことが発覚した。
 産地偽装したのは、米卸業者の「三瀧商事」(三重県四日市)。
  中国産米 → 三瀧商事 → 日本デリカフレッシュと日本フーズデリカ(商品化) → 2府21県のイオングループ店舗

 (2)イオン発祥の地で大規模な産地偽装が発覚したことで、衝撃が広がった。
 2012年12月から今年9月までに、三瀧商事がフジパンの子会社(日本デリカフレッシュと日本フーズデリカ)経由でイオンに納入した米の4割が偽装中国産米。偽装が始まったと目される2005年から現在に至るまでに流通した偽装米は、少なくとも4,400トンに及ぶ。さらに、同社は、本来は酒・味噌・菓子などに使用される加工米を主食用に大量に販売していたことが判明した。紛れもなく、過去最大の食品偽装事件だ。

 (3)中国産米は、重金属汚染、遺伝子組み換え米、農薬汚染、ズサンな検査体制・・・・といった危険を抱えている。中国の米どころとして名高い長江下流域では深刻な土壌汚染が進み、当地で収穫された米からカドミウムが日本基準の4.2倍、ヒ素が1,500倍、クロムが2,000倍も検出されている。BHCなど猛毒の有機塩素も数十倍が検出された。いずれも強力な発癌性や催奇性を持つ猛毒だ。

 (4)三瀧商事は、売上げは年間70億円程度で安定推移している。この2年間は80億円まで伸びている。服部洋子・社長は、四日市商工会議所女性部会長を務め、ブランド物に目がない。服部社長は、産地偽装が発覚して以来、姿をくらましている。
 三瀧商事が摘発されたのは、今回が初めてではない。
  (a)2007年、中国から輸入したもち米54トンからメタミドホス(有機リン系殺虫剤、2008年の毒ギョーザ事件における混入剤)が輸入時検査で検出された。処分。
  (b)2009年、中国から輸入した米粉に、遺伝子組み換え米が混入していた。処分。
 三瀧商事による検査は、加工メーカーから要請されて初めて行う。6回に1回程度だ。6分の5が無検査で出回っているわけだ。

 (5)現在まで発覚しなかったのは、販売業者であるイオンによる検査体制にも原因がある。イオンは、仕入れ段階でじつに怠慢であった。
 イオンは、2010年にはなんと全商品の8割を中国から仕入れていた。岡田元也・社長は、2010年の決算説明会で、中国政府の対日輸出規制に触れ、「現在8割を占める中国からの商品調達率を早期に半分以下に落としたい」と明かした。
 イオンのプライベートブランドのりんごジュースは、多くが中国産だ。しかも、その表示ラベルの原産地表示はバラバラだ。同じ1リットルパックのラベルでも、2種類が混在する。次の(b)に中国産が使用されていれば、消費者は知らないうちに中国産ジュースを飲まされていることになる。
  (a)「りんご(中国、アメリカ)」 138円
  (b)「りんご(記載なし)」 98円
 安さと利益を追求する一方で、イオンの検査体制はまったく機能していない。

 (6)イオン創業家は、もともと中国と縁が深い。岡田元也・社長は、父の岡田卓也・名誉会長の後を継いで「アジアシフト」を謳い、積極的に中国進出を推進してきた。イオンは、広東省広州に出店した(1996年)のを皮切りに、現在中国内の店舗数は約50ヵ所にのぼる。
 岡田克也・衆議院議員(元也社長の弟)も「親中派」として知られる。
 だが、中国戦略の成功によって強大な力を持ったイオンに対する地元の反発は根強い。
 イオンの「買い叩き」のせいで中間業者が苦しくなり、中国産を使わざるをえなくなった、という事情も今回の事件の背景にある。
 イオンへの仕入れは、かなり厳しい。ある和菓子店は、売上げの7~8割をイオンに取られてしまうため、餡や桜の葉は安価な中国産を入れている。米も、農家に対して信じがたいほどの買い叩きをする。通常、コシヒカリの新米は300円/kgほどの卸値で取引される。しかし、イオンは「200円/kgのコシヒカリを持ってこい」というような要求を平気で出す。精米や物流に要するコストを計算すると、そんな値段で入れられるはずはない。だから、イオンの求める値段では不可能だとすぐわかる。イオンの仕事を引き受けるなら、中国産米などを混ぜ合わせないと採算が合わない。
 中国産米ならずとも、加工米を主食用に偽装して販売するケースが少なくない。

 (7)買い叩きに抵抗すると、倒産が待っている。
 かつて納豆業界のシェア第3位だった「くめ納豆」は、イオンのプライベートブランドの納豆の下請けを行っていた。しかし、イオンの買い叩きがひどく、経営が立ちいかないということで「くめ納豆」は手を引いた。その後、同社の業績は回復しないまま、2009年に倒産した。 

 (8)今回の事件に関して、イオンは偽装中国産米が混入した商品を自主回収していない。「購入時のレシートなどの購買記録があれば、返金も見当する」と大きく構えているだけだ。
 イオンのホームページに掲載された「お詫びとお知らせ」には、「法的措置も視野に入れて対応を勧めてまいります」と、まるで被害者であるような文言が並ぶ。販売者として責任をとる姿勢は、まったく無い。

□記事「「中国猛毒米」偽装 イオンの大罪を暴く」(「週刊文春」2013年10月17日号)
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書評:『牙--江夏豊とその時代』

2013年10月17日 | ノンフィクション
 206勝158敗193セーブ。最優秀防御率1回、最多勝2回、最優秀救援投手5回、セパ両リーグにまたがるMVP。
 これが江夏豊が18年間の現役生活で残した記録だ。
 本書は、江夏が阪神タイガースに在籍して159勝をあげた1966年から9年間、昭和でいえば40年代にしぼって、戦歴と人物を描く。

 記録に見られるように傑出した投手だった。
 高卒1年目に225個の三振を奪った。2年目には401個と倍増する(沢村賞を受賞した)。
 しかも、当初の球種は直球だけだった。
 カーブを覚えたのは入団2年目のシーズンなかばである。剛速球に加え、抜群のコントロールの持ち主だった。綿密なデータに基づく頭脳的な投球をして、打者との駆け引きは一級だった。

 並はずれた投手は、個性的なパーソナリティの持ち主もであった。
 損得を度外視して好き嫌いをはっきり示し、ことに上にへつらう者を極端に嫌った。当然、上の者からは煙たがられるだろう。事実、これが阪神を追われる遠因となる。当時の監督、吉田義男はトレード話を知りながらとぼけ通し、しこりを残した。

 他方、いったん信じればとことん信じぬくのが江夏の流儀であった。
 報知新聞の蔦行雄もこうした一人である。報知新聞は巨人よりの新聞だが、江夏は所属よりも人物を重視した。
 阪神在籍時、チーム内では特定の者を除いて付き合いはなく、浮いた存在だったらしい。
 しかし、「人間・江夏豊への本質的な不信は皆無だった。江夏がグランドの外で牙を剥いた相手は監督であり、球団幹部であり、マスコミだった」
 付き合いにくいが、信頼できる男だったのだ。

 本書は、江夏の周辺、彼と密接にあるいは表面的に関わった人についてもていねいに記す。
 著者がいうほど江夏が時代を表現しているかどうかは疑問だが、ともかく一つの時代を共有した人々が綴られている。
 時代を共有した一人に著者自身がいた。その意味で、本書は江夏を語ると同時に著者の青春をも語っている。

□後藤正治『牙--江夏豊とその時代』(講談社、2002)
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