語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】放射能に悩む人への支援の仕方 ~「4つの原則」~

2012年04月30日 | 震災・原発事故
(1)医療の世界
 医療界は、この10年ぐらいの間に劇的に変わった。以前は主治医が治療方針を決めた。パターナリズム/父権主義/家父長主義だった。
 それが、いろんな意見を大事にするセカンドオピニオンの仕組みができあがってきた。患者団体が言い出し、医療機関がやむなくやり始めた。非専門家の意見が、本当に世の中を良くしていくときにとても大事だ。

 セカンドオピニオンの「4つの原則」がある。癌治療では、治療を受ける側が治療を決めるのだ(当事者主権)。
 <例>外科医が説得したのに、患者が「外科手術は嫌だ」と結論した場合、その外科医が「もう俺はあなたを診ないから、この病院から出て行け」と患者の不利益に結び付けてしまうことがよくあった。それは、今はやらない。

 (a)専門家は、どんなに辛いことであってもきちんと正しく伝える。
 (b)相手に分かるように伝える。
 (c)強制しないこと((2)だけだと言いくるめるような強制になる場合もある)。
 (d)当事者が専門家と違う決定をした場合であっても、専門家は当事者の応援をする。

(2)原発事故被災地
 「4つの原則」は、今回の福島第一原発事故にも当てはめることができる。
 (1)-(a)は、今回の事故でまったく足りなかった。当初、情報がちゃんと出なかったことが、その後の議論を難しくしている。今後は、政府や専門家は情報を隠さずに丁寧に出していかねばならない。一般市民の疑問に一つ一つ答えていかねばならない。
 (1)-(b)を行った上で、それぞれの判断を待つ。判断にはいろいろな要素が絡み合う。当事者の中での話し合いをじっと見守って、寄り添っていくみたいな支援が必要だ。当事者に寄り添っていくには、仕組みをいろいろ作らねばならない。
 <例>よい外科医の方が外科手術に慎重だ。「どんどんやれ」ではなくて、「どういう処置が適切か」に対して慎重だ。避難と除染は、個別問題に入らない限り言わないことを徹底している。「避難か除染か」の二項対立は稚拙な発想だ。外科手術にするか放射線治療にするかに悩んでいる患者に、その人の病状を何も知らないよその人が「これにせよ」と言う無責任と同じだ。

 避難して別の場所で生活するか、ここに残って生活するかは、支援者の意見を聞きつつ、当事者が決めることだ。当事者の決定には、すごく複雑な要素が絡み合う。1つの家族の中にもいろんな意見がある。外から「ああしろ、こうしろ」というのは、現実に合わない場合がある。
 除染は政府がやる、と政府は急に言い出したが、技術もノウハウも予算もない除染活動が信用できるか。
 ①福島県の除染の公的支援は、戸建住宅だと70万円だ。しかし、ハウスメーカーの一番交換しやすい屋根でも200万円かかる。瓦屋根の昔風の家だと、放射性物質が染みこんでしまったら、建材を換えるしかない。500~600万円かかる。
 ②8月から除染活動を始めたのは原子力開発機構だが、この機構は大本が昔の動燃だ。動燃の人が「除染する」と言っても、政策以前の信用の問題に戻ってしまう。
 ・・・・仕組みを変えるしかない。1軒あたり500万円を政府が負担すると仮定して、その500万円は除染に充てるのか避難に使うのかは、それぞれ住民に考えてもらう。そういう仕組みにするしかない。
 食品の全袋検査も、それしか手がないのだが、政府はなかなか動かなかった。流れ作業で検査できる機械が開発され、ようやく社会的なものとして動き出した。

 以上、大友良英/金子勝/児玉龍彦/坂本龍一『フクシマからはじめる日本の未来』(アスペクト、2012)のうち大友良英/児玉龍彦「失敗を認めた上で、新しい仕組み作りを」に拠る。
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【年金】持続する制度とするために必要な改革 ~年金所得控除の廃止~

2012年04月29日 | ●野口悠紀雄
(1)企業年金の積立金不足
 全578基金中、半数強の314基金で年間の給付額が賭け金を上回り、4割近い212基金は企業年金の積み立てがゼロだ(2011年3月期)。
 特に問題は、「代行」という仕組みだ。厚生年金の一部を代行するもので、基金が独自の運用する。しかし、積立金不足で運用が困難になった。これを国に返上することはできるが、そのためには不足分を充填しなければならない。大企業は本社が負担したが、中小企業が組織する基金の場合、本社が負担する余裕がない。年金のために企業が倒産する事態さえ生じている。
 過去における制度設計が甘すぎたからだ。保険料と給付の関係は、積立金が高い利回り(5.5%)で運用できることを前提として計算されていた。現在でも、502基金(全体の9割)の想定利回りは5.5%だ。かかる有利な条件下で計算すれば、一定の給付を得るための保険料率は低くて済む。ために十分な積立金が蓄積できなかったのだ。
 結果的に見れば、現在の受給者は過去において十分な保険料を支払ってこなかったわけだ。だから、給付をカットするのが基本だ。しかし、加入者の3分の2以上の賛同がないとカットできない。このため、問題を解決できず、「一発逆転」を狙ってAIJのように高利回りを標榜する投資顧問に頼ったのだ。

(2)公的年金の積立金不足
 1970年代ごろまでの計算では、平準保険料率は極めて低く計算されていた。<例>1960年の厚生年金の平準保険料率は5.5%(男子の場合)、実際の保険料率は3.5%。
 ところが、現在の厚生年金保険料率は16.412%、2017年には18.3%に引き上げられる(決定済み)。当時の見通しがいかに楽観的だったか、よくわかる。
 見込み違いが発生した原因は、人口高齢化が見通せなかったことではない。当時においても、将来高齢化が進展することはかなりの程度予測されていた。
 誤りの原因は、企業年金の場合とまったく同じだ。経済成長率の見通しと運用利回りの見通しがちぐはぐだったからだ。1960年の見通しでは、運用利回りが5.5%とされていた一方、経済成長率はゼロと仮定されていた(低成長経済において高い運用利回りを仮定)。この誤りは、1980年10月の計算まで続く。利子率と経済成長率は密接に関連しているが、当時の厚生省にはそうした意識がなかったのだろう。
 その後の年金制度改革は、この誤りを修正する過程だった。(a)保険料率引き上げ。(b)国庫負担率引き上げ。(c)支給開始年齢引き上げ。・・・・この結果、現時点では積立金が枯渇するような事態には陥っていない。しかし、将来の給付を賄い続けるにはまったく不十分だ。厚生年金の積立金は、2030年ごろには枯渇する。

(3)対策
 公的年金も、現在の受給者は過去において現在受けている給付に見合うだけの十分な保険料を支払ってこなかった。だから、本来は給付をカットすべきだ。しかし、既裁定年金は財産化しているので、手をつけることはできない。
 そこで、負担は先送りされる。給付削減にしても、現在の、ではなく、将来の給付が削減される。また、保険料が引き上げられる。これらの負担を負うのは、若い世代だ。
 本来は、若い世代が現在の給付を切り下げるよう要求するべきなのだ。しかし、そうした政治運動は起きていない。起きているのは、国民年金の保険料を支払わない、という消極的な反抗だけだ。
 年金カットには、支給開始年齢の引き上げが最も効果的だ。ただし、徐々に引き上げるのでは不十分だ(この場合、将来の年金受給者が負担を負う)。既裁定年金を含めて、今すぐ支給開始年齢を引き上げることが必要だ。
 受給者の生活が成り立たなくなる、というなら、年金課税を強化すればよい。現在でも年金所得に課税はされているが、年金所得控除があるるため、他の控除と合わせると、年金だけが収入である場合、課税されない場合が多い。公的年金の保険料は拠出時に全額所得控除されているから、給付時に課税されないと、公平上問題だ。よって、年金所得控除は廃止されるべきだ。それによって増加する税収を年金特別会計に繰り入れれば、年金カットと実質的に同じことになる。
 現在の年金カットは、在職老齢年金という形で行われている。働く人が年金をカットされるわけで、不公平だ。のみならず、労働意欲を阻害する不適切な方法だ。

 以上、野口悠紀雄「企業年金・公的年金 必要なのは給付削減 ~「超」整理日記No.607~」(「週刊ダイヤモンド」2012年4月21日号)に拠る。
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【出雲】日本的平和の原点 ~出雲大社と大山~

2012年04月28日 | 神話・民話・伝説
(1)出雲
 出雲大社側から大和王朝政権を見ると、どういう世界が現れてくるか。
 (a)国造り神話
   古事記や日本書紀に出て来る出雲神話で、大国主命と少彦名命が主人公だ。
   大和王朝の国造りの拠点となったのは、聖武天皇が造った東大寺の大仏だ。大国主命の「大」と大仏の「大」とが照合する。少彦名命は釈迦誕生仏だ。聖武天皇は、記紀神話に出てくる象徴的な神様2体をベースに、仏教を支えにした新しい国造りを考えたのだろう。
   大山の「大」、大国主命の「大」、大仏の「大」がつながってくる。

 (b)国譲り神話
   記紀に出てくる大和朝廷の神話では、神武天皇が大和を征服する。これに対し、出雲王朝は平和主義だ。国譲り神話がその後の日本歴史に持つ意味は大きい。
   日本史において、平安時代が350年、江戸時代が250年、平和な時代が続いた。こんなに長期の平和な時代を2度も経験している国は、世界でも珍しい。
   長い平和の根底に、土着の宗教(神道)と外来の宗教(仏教)の神仏共存があった。その原点に、国譲りの思想があったのかもしれない。

 (c)大和朝廷に対する地方の反逆
   大和政権に対する出雲文化圏の抵抗、自立の精神。
   出雲大社は、南を向いているが、本殿に祀られている大国主命は西を向いている。あまり知られていない事実だが、深い理由があると思う。奈良の春日大社も5殿のうち若宮だけは西を向いている。
   平城京が政治の中枢だった時代、天子は南を向いて政治を執った。中国の思想、「天子南面」に基づく。平城京も平安京も南を向いている。日本の寺社も、ほとんどそれに準じて南を向いている。西を向いているのは、王朝政権の中央権力に対する叛逆精神の現れではなかったか。

(2)大山
 日本の山岳信仰には、2つの特色がある。
 (a)山
   山の上に死者の霊が昇る。人が亡くなると遺体を山麓に葬り、風葬にする。その遺体から魂が抜け出て山を昇り、山頂近くで神になる。これが基本だ。
   インドから伝わった仏教の浄土の考え方を、日本人は山頂と読み替えた。山を媒介にして土着の神道と外来の仏教が合体、神仏習合し、日本独特の考え方が生まれた。
   大山の主峰は、弥山=「須弥山」だが、浄土と重なるところがある。この地域に住む人々は大山の頂上は浄土だ、という進行を古くから持っていた、という。→再発見、再認識の必要性

 (b)水
   神仏に参るとき、汚れを落とす清めの儀式を行う。修験の霊場には、必ず温泉がわき出ている。温泉と山岳信仰には深い結びつきがあった。
   大山にも、海のルートに沿うような形で温泉場が点々とあり、それを辿りながらお参りしたに違いない。玉造温泉や皆生温泉もその一つだったのだろう。

 山岳信仰の中心は、西方浄土へ往生するという浄土信仰だ。大山もそうで、夕日に対して西方を思い、その彼方に浄土がある。
 大山の山岳信仰と出雲大社の西方信仰。
 大山と出雲大社を同時に捉える視点が必要だ。

 以上、山折哲雄「歩く大山がもたらす信徒の情感(下)」(2012年4月23日付け日本海新聞)に拠る。
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【原発】東京湾の汚染

2012年04月27日 | 震災・原発事故
 山崎秀夫・近畿大学教授は、昨年8月から12月にかけて、江戸川の河口を中心に、東京湾の約40地点で水底に溜まったセシウムを調査している。

 <例1>江戸川やや上流部(千葉県市川市)・・・・834Bq
 <例2>旧江戸川下流・・・・940Bq
 <例3>荒川河口・・・・846Bq

 セシウムの多くは、まだ川の上流付近の川底に溜まっている。それが東京湾に流入していく。汚染のピークは1、2年後。陸上に降った総量に限りがあるので劇的に数値が上がることはないだろう。しかし、東京湾全域に広がる可能性がある。【山崎教授】
 現時点では、河川の水からはセシウムは検出されていない(環境省の調査でも)。
 魚、貝など海産物も、基準値を下回っている。
 泥に混じったセシウムが粘土と強く結びつき、水中に溶け出していないため、と目される。

 しかし、東京湾の泥中にあるセシウムが、いつプランクトンに移行するかは分からない。移行すれば、食物連鎖が起き、魚も汚染される。東京湾のきめ細かなモニタリングが欠かせない。【山崎教授】 

 以上、野村昌二(編集部)「ホットスポットの「名案」」(「AERA」2012年4月30日~5月7日号)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>東京湾に放射能汚泥が堆積中 ~海の汚染~
     「【震災】原発>無防備都市--東京を覆う放射能
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【原発】米子市の震災瓦礫受け入れ撤回要請書

2012年04月26日 | 震災・原発事故
(1)要請者
 山陰放射能汚染を考える会(世話人:雨宮美菜子・永栄恵二・足立正光)
(2)被要請者
 野坂康夫・米子市長
(3)要請文書名
 米子市における震災瓦礫受け入れの撤回を求める要請書
(4)内容【大意】
 (a)要旨
   市が焼却を開始したら、私たちは子どもを米子に居住させることはできない。また、鳥取県産の食品やその他の製品を購入できなくなる。よって、
   ①市長による「瓦礫の受け入れ」方針は、瓦礫の安全性が確保できないため撤回されたい。
   ②被災地支援は、瓦礫の受け入れによってではなく、避難者や企業の受け入れ、そのフォローなどによって行われたい。

 (b)理由
   下記のとおり。

                          記

(1)瓦礫の安全性に係る問題
 (a)昨年7月、宮城・岩手両県で保管されていた稲わらから高濃度セシウムが検出され、食肉牛汚染が全国的な問題となった。
 (b)2011年3~5月に降下した放射性物質の量(セシウム134、137合算)は、岩手県盛岡市2,973メガベクレル(MBq)/平米、鳥取県東伯郡20.78MBq/平米、島根県松江市9.515MBq/平米。
 (c)宮城・岩手両県の一般焼却施設の焼却灰から高濃度放射性セシウムが検出された。セシウム134、137合算で、盛岡市980Bq/kg、雫石・滝沢環境組合1,680Bq/kg、奥州市10,500Bq/kg、一関市30,000Bq/kg、仙台市2,581Bq/kg。岩手県内には宮城県より高濃度に汚染されたホットスポットが存在する。
 (d)岩手・宮城・千葉で検査されたハウスダストの全てから放射性セシウムが検出された。岩手県一関市や千葉県柏市のハウスダストは、6,000Bq/kgという値だ。
 以上のように、宮城・岩手両県の瓦礫は、「放射性廃棄物」または「放射性物質が含まれる瓦礫」だ。

(2)一般焼却所の処理能力、焼却灰の処理方法に係る問題
 (a)福島市では、高機能のバグフィルターを使っても、フィルターを通過した後の排気が通る煙突内部で放射性セシウムが検出された。
 (b)既に瓦礫焼却を行っている山形県では、時に非常に高いレベルの放射性物質の降下が認められている。昨年12月21日9時から22日9時までに採取された山形市の定時降下物から、セシウム134、137合算で41MBq/平米が検出された。47都道府県で同日の降下物から放射性セシウムが検出されているのは山形市と福島市だけで、同日の山形市は福島市の2.9MBq/平米より14倍も多かった。
 (c)群馬県伊勢崎市の処分場では、国の基準1,800Bq/kgより大幅に低い焼却灰を埋め立てていたにも拘わらず、大雨により放射性セシウムが水に溶け出して排水基準を超え、問題となった。
 (d)東京都太田清掃工場の試験結果をもとに物質収支を試算したところ、焼却炉に投入された放射性セシウムのうち36%が行方不明になっていた。①排ガスへ移行、②焼却炉などの設備に残留のいずれかで、排ガスの10%は煙突から排出されている可能性がある。
 (e)国内バグフィルター・メーカー7社(日立プラントテクノロジー・日鉄鉱業・明和工業・富士工期・瑞東産業・流機エンジニアリング・飯田製鉄所)のいずれも、その製品について次のように述べている。①「布または紙製の掃除機のフィルターと同じ原理」であり、「放射性廃棄物に対応して作られたものではない」。②「当社においては放射性廃棄物を使用したフィルターの有効性に係る実験結果は存在しない」。③「ガス化した物は当然通過する」。④「フィルター内部と外部の汚染度がどの程度になるか、メインテナンスをどうするか、課題が多い」。また、多くのメーカーではフィルターの目は0.1ミクロンだが、他方、気化セシウムの原子直径は0.0006ミクロンだ。
 (f)①瓦礫に付着した放射性物質が微量であっても、焼却によって濃縮され、汚染灰が出る。その上、②ガス化した放射性物質が大きな問題になる。ちなみに、セシウムの気化温度は671度、他方、米子市クリーンセンター焼却所は、ダイオキシン対策のため800度以上で焼却している。
 (g)環境省は、「バグフィルターでは99.9%のセシウム除去が可能」と主張しているが、それを実証するデータは存在しない。
 (h)仮にバグフィルターで99.9%のセシウム除去が可能で、引き受ける瓦礫の放射能汚染が基準値以下であっても、焼却される瓦礫の総量によっては、莫大な放射性物質が近隣環境に放出される【注1】。
 (i)①瓦礫に付着した放射性物質は、焼却温度が高い場合には気化して大気中に拡散される。他方、②焼却温度が低い場合、灰への濃縮が進む。ために、瓦礫の焼却を始めると、炉の管理が困難になる。炉のフィルター交換、炉の解体時には、放射性廃棄物に汚染された施設として厳重な飛散防止策を講じねばならない。管理に莫大な費用がかかるだけでなく、作業員や近隣住民の被曝リスクが高まる。
 (j)焼却灰の処分には、本来、厳重管理するための核廃棄物処分場を要する。しかるに、環境省は、8,000Bq以下の場合には一般の最終処分場における埋め立てを容認する方針を決めた。これは、原子力規制法に抵触するし、実施自治体では既に深刻な環境汚染が確認されている。

(3)放射能汚染検査に係る問題
 (a)今の放射能検査は、γ線核種のみが対象で、毒性の強い放射性プルトニウム、ストロンチウムなどα線とβ線はほとんど測定されていない。α線とβ線は、ガイガーカウンターではまったく検出できない。
 (b)γ線核種も、検査下限値の切り上げや測定時間短縮によって不検出になり得る。
 (c)瓦礫の検査は、サンプル検査だ。
 (d)仮に検査された瓦礫が基準値(100Bq/kg)以下であっても、瓦礫総量で考えれば、重量あたりの基準値を守ることが安全を保証するわけではない。
 (e)瓦礫の汚染度は、空間線量計(ガイガーカウンター)では測定できない。空間線量計が0.01μSv上昇した場合、その瓦礫は数百~数万Bq/kg汚染されている可能性がある。100Bq/kg程度の汚染分析を行うには、ゲルマニウム半導体計測器による分析が必要だ。

 以下【注2】、略。

 【注1】(3)-(d)と同趣旨。<例>放射性セシウム100Bq/kgの瓦礫を4年間で6万トン焼却した場合、灰に含まれる放射性セシウムの総量は60億Bqとなる。このうち、低く見て0.01%が焼却場の煙突から漏れた場合、大気中に60万Bqが放出される。
 【注2】(4)原子力規制法に抵触するダブルスタンダードの問題がある。
     (5)瓦礫の広域処理は国費から賄われ、被災者支援予算を圧迫する。
     (6)広域処理が進まないことは、瓦礫処分の主な原因ではない。
     (7)広域処理は、国際合意に反する。
     (8)広域処理は、道義に反する。
     (9)米子市、鳥取県、山陰地方だからこそ可能な被災地支援の可能性がある。

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【原発】災害がれき広域処理の危険性 ~環境総合研究所の講演~

2012年04月25日 | 震災・原発事故
(1)日時
  2012年4月13日(金)18~20時
(2)場所
  米子市福祉保健総合センター「ふれあいの里」
(3)主催者
  災害がれき問題講演会実行委員会
(4)演題
  がれき焼却は安全か? ~災害がれきの広域処理を考える~
(5)講師
  池田こみち・環境総合研究所副所長
(6)内容
 (a)被災地における優先課題
   被災地では、優先される課題が他にもある(雇用、原発事故の被害補償、放射性物質の除染など)。被災地のニーズをもっと認識する必要がある。がれきを受け入れるか否かによって、国やマスコミが地域分断を生むような構造は誤っている。

 (b)がれき焼却の危険性 ~放射性物質~
   ①がれき焼却は放射性物質を高濃度にしてしまう。
   ②「バグフィルター」が放射性セシウムをほぼ100%除去できる、という国の主張は、金属類を対象にした1回の実験データを根拠にしていて、科学的な論拠ではない【注1】。
   ③放射性物質を含む焼却灰8,000Bq/kg以下は安全とする基準は、作業員の曝露を前提としたもので、焼却灰に適用できるとは言えない。焼却灰を埋め立てた処分場からの浸出水には、基準値を超すセシウムが含まれる危険がある。

 (c)がれき焼却の危険性 ~有害物質~
   がれきの問題は、放射性物質だけではない。沿岸部の街を流した津波がれきは、薬品・油類など有害物質を吸収している【注2】。日本では、排ガス規制がダイオキシン類など5項目しかなく、発癌性の高い他の物質は未規制だ。規制の甘い日本の焼却炉で震災がれきを燃やすのは、周辺住民にとって危険だ。

 (d)自治体の対応の仕方
   震災がれき受け入れについて、米子市(市長が受け入れの意思を表明)よりもっと慎重に考えている自治体がある。がれきを受け入れる以外にも、避難者の受け入れや、安全な食べ物を作ることなど、それぞれが冷静に地域でできる支援を考えてほしい。

 【注1】「【震災】原発>放射能汚染がれき焼却処理の誤り
 【注2】「【震災】東北沿岸の化学汚染 ~カドミウム・ヒ素・シアン化合物・六値クロム・ダイオキシン~

 以上、記事「がれき広域処理 妥当性に疑問呈す がれき広域処理考える講演会 鳥取の市民ら100人参加」(20112年4月16日付け朝日新聞地方版)に拠る。
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【映画】パレルモ・シューティング ~デジタル処理~

2012年04月24日 | □映画
 アートからモードまで手がける世界的写真家、フィンは、デジタル処理を駆使して「現実」を改変し、これまでにない世界を創造する。しかし、活動拠点の
デュッセルドルフでは常時どこでも注目を浴び、携帯電話を手放せず、唯一心を落ち着かせるのはイヤホンから流れくる音楽だけだった。
 多忙なためか、眠りは浅い。そして、いつも死がからむ夢の始まりで目覚める。
 とある日、車を走らせながらあたりを撮影していると、ある男の姿がカメラに跳び込んできた。すると、たちまち車はコントロールを失い、あわや大事故の寸前で停まった。
 損壊した車を捨て、フラリと立ち寄ったパブで、フィンはさらに奇妙な体験をした。
 フィンは旅立つ決意を固めた。たまたま目撃した船に記されていたパレルモに。
 パレルモでミラをモデルに撮影後、スタッフと別れ、「休暇」に入った。
 そこで、不思議な男から弓矢で執拗につけ狙われた。
 街の写真家とも出会う。年配の彼女は、死者の記憶を映像にとどめる、という。彼の場合は、と問われて、今は「混乱」だ、とフィンは答える。
 街の一角で眠りこんでいたフィンが目覚めると、彼をスケッチする女性が目に入った。お茶に誘うが、自分の名「フラヴィア」を残して、彼女はスクーターで去る。
 街をさまよい歩いているうちに、そのスクーターが目に入った。美術館に足を踏みいれると、フラヴィアは巨大な壁画「死の勝利」を修復中だった。絵の中では、王の背に死神から放たれた矢が突き刺さり、民衆は、どうか矢を抜かずにそのままにしておいてくれ、と祈るのだ。
 死神の顔も修復の対象であり、どう描くかはとても大事だ、とフラヴィアは語る。
 彼女もまた、恋人の死に悩んだ過去があった。二人には因縁があったのだ。
 矢に襲われたフィンの体験を聞き、フラヴィアは彼をガンジに誘い出す。今は亡き祖母の家に。フラヴィアにとって、安心と幸福を感じさせる唯一の場所なのだ。
 そこでついにフィンは、彼をつけ狙う男と対面する。男は死神だった。

    *

 「パレルモ・シューティング」(2008年、独伊仏)は、ヴィム・ヴェンダース監督が12年ぶりに欧州を舞台に撮り上げた作品だ。
 フィン役のカンピーノは、斯界では知られたボーカルらしい。抑えた演技は悪くない。
 フラヴィア役のジョヴァンナ・メッツォジョルノは、「コレラの時代の愛」ほか多数の出演作があるが、作品の多くは日本では公開されていない。貴族的な優雅さがある。
 死神役のデニス・ホッパーが怪演している。平気で人に矢を放ち、死に引き入れるくせに、自分は解放への出口だ、などと言いくるめる。このあたりの厚かましさは、ホッパーの独擅場だ。死神は人間の内に棲んでいる、などと謎めいた言葉で攪乱させるのも、そうだ。愛されて然るべきなのに忌み嫌われる、と愚痴るのだが、フィンから「何か手助けできることはないか」と歩み寄られると、不意に表情が変わり、穏やかに別れをフィンに告げる。荘重に、「次に会うときが最後だ」と。
 ホッパーは嫌いなタイプだが、いい役者だ。

 死と真っ向から対決してこそ、生がその意義を顕す・・・・といった哲学は、ここでは措こう。
 むしろ、ホッパー演じる死神が、(ネガのある)写真は生死を象徴する、と持ち上げたとき、フィンが「今はデジタルの時代だ」とそっけなく退けたシーンが興味深い。死神は、うまく言葉を返せない。
 そもそも、この映画で死神が放つ矢はデジタル処理されている。
 21世紀は、死が医療機関でメカニカルに処理される時代だ。畳の上で成仏する人は少ない。そして、葬祭は商業化されている。どこか、画像/映像のデジタル処理と通じるところがあるのではないか。

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【原発】放射能を全国にばらまく広域処理 ~バグフィルターの限界~

2012年04月23日 | 震災・原発事故
 ガレキの広域処理によって放射能汚染が全国に広がるのではないか、と危惧する声が高まっている。
 放射性物質に汚染された高濃度廃棄物を「中間貯蔵」する場所すら政治決断できずに問題を先送りする。その一方、「30年後には必ず福島県外で最終処分するよう法制化する」と粋がる。「口先番長」な発言が政権全体に蔓延している。本末転倒な「政治主導」の迷走を象徴する。
 メルトダウンを超えた福島第一原発の周囲は「放射能に汚染された領土」と冷徹にとらえ、原発から少なくとも30km圏内は居住禁止区域に設定し、住民には国家が新たな住居と職業を保障すべきだ。
 <例>人口6,000人弱の飯舘村の除染費用(ゼネコンが元請け)は3,200億円強だ。その税金を新天地での村民の生活再建に用いるべきだ。

 放射能は消え去らない物質だ。除染は「移染」に他ならない。携わる人に内部被曝をもたらす。「未必の故意」だ。
 除染も被害をさらに拡大する。福島県の阿武隈川から太平洋に流れ込む放射性セシウム量は、1日に500億Bqに達する。【京都大学・筑波大学・気象研究所の共同調査】
 原発再稼働のため精力に動き回る仙石由人・民主党政調会長代行は、「巻き込み自殺」の主謀者だ。

 1年経っても処理したガレキは全体の1割にも満たない。政府の指針が現場の実情に即していないからだ。
 こうした震災・原発対応の無為無策を覆い隠す意図で始まったとしか思えない「広域処理キャンペーン」でも、奇妙な精神論が横行している。全体の2割を全国で分け合ってこそ「日本の絆」だと細野豪志・大臣は川崎や京都の駅前で絶叫しているが、残りの7割のガレキを被災地でどう処理・活用するのか、政府は具体的に示していない。
 5,000万円といわれる公費を投じて3月6日付け朝日新聞に見開き全2面カラー掲載された政府公報は、目くらまし以外の何物でもない。放射能に占領された「フクイチ」周辺30km圏内と、宮城・岩手両県の問題は分けて考えるべきだ。
 阪神・淡路大震災のガレキは、2,000トンだった。半分は焼却、半分はリサイクル(埋め立て・土地醸成)に用いて、実質1年で処理した。他方、今回の震災では、3県で2,300トンだ。被災面積あたりのガレキ分量は遙かに少ない。しかも、昨年11月段階で被災地のガレキは住宅地、商業地、道路からすべて撤去され、「仮置き場」=中間貯蔵所に置かれている。
 “緑の防潮堤”(宮脇昭が提唱、坂本龍一らが賛同)にガレキを用いたら、鎮魂として後世に語り継げる「地産地消」だ。法律改正を含む超党派のムーブメントを立ち上げるべく準備している。

 「持ちこまない、持ちこませない」と域内処理を自治体に行政指導してきた環境省が、なぜ広域処理にこだわるのか。
 自治体が運営する焼却施設は、全国に1,242。その半数は「全連続式」【注】だ。ダイオキシン対策を御旗に掲げ、建設費用の7割を国庫負担する制度の下、全国各地に出現した巨大焼却場は、原発同様に一旦動かすと稼働を止められないジレンマを抱える。しかも、維持修繕費用は自治体負担だ。だから、ガレキ処理受け入れ自治体に財政支援、自治体焼却場の減価償却費も国が支援・・・・と首相が会見で述べたのだ(深意)。
 東京都が受け入れているガレキは、岩手県宮古市と宮城県女川町からJR貨物で運ばれてくる。その処理を江東区青梅地区で担当する「東京臨海リサイクルパワー」は、その株式の95.5%東京電力が保有し、社長も東電出身だ。 
 仙石由人・政調会長代行も枝野幸男・経産相も東電から献金を受けている。

 【注】24時間燃やし続けなければ機能に支障が生じる。

 以上、 以上、インタビュイー:田中康夫(新党日本代表)/インタビュアー:伊田浩之(編集部)「放射性がれきを全国にばらまいてはならない!」(「週刊金曜日」2012年月日号)に拠る。

    *

 放射性物質はバグフィルターで除去可能・・・・という環境省の説明は、はたして本当か?
 「週刊金曜日」は、廃棄物処理施設を施工している主な会社13社【注】にアンケートを実施したところ、「除去可能」という明確な回答はどの社からも無かった。
 「株)タクマ」のみ、「一定の除去が可能と考えられる」と回答しているが、やはり「一定の」という限定がつく。大飯原発再稼働に係る政権の見解、「おおむね」安全の「おおむね」と同じだ。

 【注】(株)IHI環境エンジニアリング、エスエヌ環境テクノロジー(株)、荏原環境プラント(株)、(株)川崎技研、川崎重工業(株)、(株)協和エクシオ、三機工業(株)、JFEエンジニアリング(株)、(株)神鋼環境ソリューション、新日鉄エンジニアリング(株)、(株)タクマ、日立造船(株)、(株)プランテック。

 以上、弓削田理絵(編集部)「放射性物質除去可能との明確な回答なし」(「週刊金曜日」2012年月日号)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>亡国の日本列島放射能汚染 ~震災がれき広域処理~」ほか
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【消費税】新聞が増税一色となる理由2つ ~財務省のマスコミ懐柔策~

2012年04月22日 | 社会
(1)社説
 (a)朝日新聞
 <やはり消費増税は必要だ>【3月31日付け社説の見出し】
 <消費増税と政治--言い訳やめて、本質論を>【4月6日付け社説の見出し】

 (b)読売新聞
 <首相は審議入りへ環境整えよ>【3月31日付け社説の見出し】

 (c)日経新聞
 <首相はぶれずに突き進め>【3月31日付け社説の見出し】

(2)国税調査 ~鞭~
 <朝日新聞4800万円所得隠し、2億円超申告漏れ>【(3月31日付け読売新聞】・・・・2011年3月期までの5年間に、法人所得計2億5,100万円の申告漏れが東京国税局に指摘され、重加算税を払った。
 朝日新聞、読売新聞は2009年の調査でも修正申告を余儀なくされた。
 消費増税に反対の立場をとっていた産経新聞にも、昨年、税務調査が入った。
 日経新聞も、4月10日、2010年までの3年間に3億3,000万円の申告漏れがあったことを自ら報じた、
 消費増税に批判的な東京新聞には、最近までに二度税務調査が入った。しかし、国税庁とその母体である財務省の圧力をはね除け、拙速な増税論に社説で疑問を呈している。

 財務省と国税庁は一体だ。税務調査では、記者個人が狙われることもある。<例>記者が使った交際費を調べるために、領収書をチェックして、使った店に税務調査をかけたりする。【高橋洋一嘉悦大学教授/元財務官僚】【注】
 国税による財務調査は、数週間から時には数ヶ月をかけて行われる。どこまでが申告漏れや追徴課税の対象にされるかは、結局、国税庁=財務省の匙加減ひとつ。調査中は、当局の相手をしている社の幹部がナーバスになり、財務省批判や増税反対の記事を送稿すると「今はまずいからちょっと書き直して」と言われることもある。【大手新聞社編集部幹部】

(3)記者の囲い込み ~飴~
 (a)記者クラブ
 ①財務省キャリアと同じ東大出身の記者も多いから、肌合いも近いのだろう。②増税支持の社説を書いている論説委員は、かつての財務省記者クラブ担当が多い。彼らは勝栄二郎・事務次官や香川俊介・官房長と面識があり、今も交際が続いている。③政策の“ご説明”を受けるほか、資料も提供してもらう。【全国紙経済部記者】
 <例>G7などの声明文は、本来G7事務局と直接やりとりして入手すべきだが、そんな能力のある記者はほとんどいない。同行している財務官僚からペーパーをもらい、レクチャーを受けるのだ。

(b)財務官僚による「増税ロビー活動」
 財務省は今、省を挙げて大マスコミの懐柔に走っている。勝次官、香川官房長を始め、主計局を中心に、課長クラスまでが「お会いしたい」と接触してきて、消費増税が必要な理由を懇々と話す。【財務省担当記者】
 財務省は特に、各社の論説委員クラスを重点的に後略している。記者のすべてをカバーするのは難しいが、論説委員を落とせば社説をコントロールできるからだ。
 結果として、各紙の社説には、同じようなフレーズが飛びかう。<例>「決められない政治からの脱却」【前記4月6日付け朝日新聞社説】・・・・同じ言葉が3月31日付け日経新聞社説、同日付け毎日新聞社説、4月10日付け産経新聞社説にも登場する。そして、各社とも、「与野党がスクラムを組んで政策を摺り合わせた上で消費増税せよ」と、ほぼ同一の主張をしている。

 【注】<財務省がメディアを封じ込めるのは、実は簡単で、国税庁を動かせばいいだけのことなんですよ。実際、朝日新聞や東京新聞にも国税の調査が入ったようですが、国税が何を調べるかというと、記者の交際費です。いつ、どこで誰と会ったか、領収書などをもとにして店や取材相手などの反面調査をやっていく。すると、伝票と食い違った事実の一つや二つ見つかるんです。プライベートで使った証拠だってたまに出てくる。そして、それでアウトです。/テレビ局のキャスターを落とすのも同様で、これをやられたら、テレビで財務省に対して威勢のいいことが言えなくなってしまう。>【江田憲司/高橋洋一「財務省の「洗脳とメディア操作」を暴く」(「週刊現代」2012年4月28日号)の高橋の発言】

 以上、記事「朝日「消費造営」礼讃と、国税調査」(「週刊現代」2012年4月28日号)に拠る。
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【原発】経済同友会の「縮原発」 ~原発をめぐって変化する財界~

2012年04月21日 | 震災・原発事故
 経団連、経済同友会、日本商工会議所の財界3団体は、当面のコスト削減と安定供給のため、「安全確保と地元の同意」を条件に原発の再稼働を求めている。
 が、地方組織を含め、財界は必ずしも一枚岩ではない。

 経団連の内部から不協和音が聞こえ、経済同友会は「縮原発」と発送電分離を主張する。
 三木谷浩史・楽天社長は、昨年5月、ツイッターに「電力業界を保護しようとする態度が許せない」などと書き込み、6月に退会届を出して受理された。三木谷社長は記者団にいわく、「(日本は)電気料金が高く、競争力に大きく影響する。大所高所に立った政策が必要だ」。
 孫正義・ソフトバンク社長は、昨年11月15日、経団連理事会で、「国民が安全・安心に不安を持つ中、経済界が利益優先でよいのか。一日も早く原発を再稼働させることが日本国民と経済界にとって最優先であるかのごとき論調には異議がある」と発言した。経団連の「エネルギー政策に関する第二次提言」に「断固反対」を叫ぶ孫社長に、出席者は驚き、会場は静まりかえった。

 長谷川閑史・経済同友会代表幹事と岡村正・日商会頭は、東電の実質国有化を容認する考えを示している。政府の関与を嫌う米倉弘昌・経団連会長との違いは明らかだ。
 経済同友会は、脱原発ならぬ「縮原発」を2011年7月にいち早く表明した(「東北アピール」)。
 ちなみに、東電の企業向け電気料金の値上げを容認するのは、3団体トップで米倉会長だけだ。

 電力会社が地域の財界を支配する地方でも、新たな動きが見られる。 
 「運転開始から30年以上経過した原子炉は再稼働せず、廃炉にすべきだ」【白石省三・愛媛県商工会議所会頭、3月16日】

 「私たちは経済人の一人として経済界の一角にいる。原発がないと豊かな生活ができないのか。本当の豊かさとは何か。原発がない方が健全な国、地域づくりができるという対案を示し、実践していきたい」【鈴木悌介・「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)」世話役代表、3月20日、設立総会】
 エネ経会議は、「原発がないと電力不足となり、日本の産業が空洞化してGDPが低下する」という主張に疑問を感じる経営者らが全国から結集。各地の自治体などと連携し、「原発に頼らず、地域の特性を生かした再生可能エネルギーの自給に挑戦する」という。全国の中小企業経営者387人のほか、国家議員、自治体首長、学識経験者が参画し、発足した。

 以上、川口雅浩(毎日新聞経済記者)「揺れる経団連 ~原発をめぐり変化する財界~」(「世界」2012年5月号)に拠る。
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【原発】継続的な被害調査の必要性 ~岐路に立つ原発「賠償」(2)~

2012年04月20日 | 震災・原発事故
(5)和解を遅らせる東電の消極姿勢
 若干の修正・改善はあるものの、やはり紛争審の指針を補償上限とするのが、東電の基本姿勢だ。だから、被害が指針の範囲に収まらない場合、きちんと補償されない可能性が残る(依然として大きな問題)。
 (4)の「自主避難」のように指針を広げさせるのも一つの手だが、あくまで「一般的な指針」であるため、個別事情に応じた判断は指針の守備範囲を超える。この場合、被害者が各自の状況にもとづいて東電に補償請求しなければならない。これはいささか困難だし、訴訟には費用と時間がかかる。
 そこで昨年9月、紛争審のもとに、「原子力損害賠償センター」が開設された。事務局は東京と郡山に置かれ、弁護士が和解の仲介業務を行う。解決までに要する期間の目安は3ヵ月程度とされた。
 が、開設以降半年間で1,000件の申し立てに対し、和解成立は10件に満たない。紛争審の指針を超えて和解案が踏みこむと、東電が回答を先送りするからだ。
 東電は、国からの資金援助を受けるにあたり、迅速な解決のため和解案を「尊重する」ことを約束している。東電の消極姿勢の転換が求められる。

(6)新法による東電救済の開始
 補償の財源をどこから持ってくるか。原子力損害の賠償に関する法律によれば、原子力事業者は損害賠償措置をとり、事故被害がその担保する額を超えた場合、国が事業者に対して必要な「援助」を行う。損害賠償措置で担保される額は、福島第二原発を含めても2,400億円までだ。今回の事故による賠償額は6兆円程度と言われ、損害賠償措置ではまったくカバーできない。そもそも、原培法がこのような事態をあくまで例外的にしか想定していなかったことに重大な欠陥がある。
 しかしともかく、国の「援助」措置が発動されることになった。このために新法が作られた。「原子力損害賠償支援機構法」だ。これにより、原子力損害賠償支援機構が設立された。これで、大手金融機関など東電の株主、債権者は、まったくの無傷ではないにせよ、守られることになった。

(7)東電「国有化」から電力改革へ
 現在、機構が東電に対して行っている援助は、返済義務のない資金交付だ(今年2月までに計1兆6,000億円)。しかし、支援機構法は、この資金の使途を被害補償に限定している。東電は、これ以外にも、事故処理、廃炉、除染等のため巨額の費用をまかなわなければならない。機構の交付する資金はそれには使えない。そこで、東電への資金注入(株式の引受)が浮上してきた。
 もう一つ、東電の経営を危うくする要因がある。東電がもつ原発は現在すべて停止しているが、これら動かせない原発は「不良資産」であり、建設時に借りた資金の返済や維持コストが容赦なくのしかかる。このままでは東電の債務超過は避けられない。電力会社などが、原発再稼働と電気料金値上げへと走るのは、このためだ。東電は、機構が被害補償の原資を交付してくれれば、原発再稼働と電気料金値上げで資金繰りを確保できると考えているようだ。
 柏崎刈羽原発が再稼働できないとすれば、東電は「債務超過」、「実質国有化」へといっそう傾くことになる。
 東電の「自力更生」も「実質国有化」も、電気料金か税金かという違いはあれ、結局国民負担を増大させるだけだ・・・・と思われるかもしれないが、両者の意味はまったく違う。前者は東電を温存させるだけだが、後者は「政治」の意思如何で、電力改革の可能性を広げることができるからだ。
 そのためには、国は腹を括らなければならない。国がこれまで原発を推進し、安全対策を怠ってきたのは明らかだ。国も今回の事故被害に対する責任は免れない。かかる責任が、東電に対する公的資金投入の根拠となるべきだし、過去の反省こそ政策転換の出発点に置かれなくてはならない。

(8)補償問題の「岐路」-継続的な被害調査を
 東電や政府は、最初から事故や被害を小さく見せようとしてきた。その最たるものが、政府の「事故収束」宣言だ。水俣病事件初期のように、原因究明が進むと、専門家も動員して加害者側から大規模な反論が展開され、事実が覆い隠されてしまう(宇井純のいわゆる「中和」)。事故「風化」のおそれも杞憂ではない。
 他方、被害者らの運動や世論の批判が、東電や紛争審を動かしてきたことも事実だ。東電は、当初、紛争審の指針の水準ですら補償を渋っていたが、姿勢の変更を迫られ、さらには上乗せ補償まで部分的にせざるを得なくなっている。
 被害の「忘却」か補償の「前身」か。事故後1年の状況は、まさにこの岐路だ。
 今後、避難対象区域の再編が予定されているが、あいかわらず年間20mSvが居住の基準とされている。住民の居住を認めたとしても、経済的条件やライフライン復旧の面から、帰還がスムースに進むか、不明だ。
 区域を縮小し、元の土地に戻るかは自己責任で判断せよ、というのでは、避難住民の放り出しにすぎない。「自主避難」の形を変えた再生産だ。
 被害がなくなるわけではない。ありようが変化するだけだ。被害者の生活再建を確実なものとするためにも、常に被害の実態に立ち戻らねばならない。継続的な調査が必要だ。

 以上、除本理史(大阪市立大学准教授)「岐路に立つ原発「賠償」」(「世界」2012年5月号)に拠る。
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【原発】修正・改善を強いられる東電 ~岐路に立つ原発「賠償」~

2012年04月19日 | 震災・原発事故
 3・11から1年以上経て、「復興」は進みつつある。しかし、福島原発事故の被害回復は、放射能汚染にもはばまれて、思うようにはかどらない。
 原発事故の被害者たちが集まり、納得のいく補償を求めて東京電力と交渉したり、政府や議会に働きかける動きが強まっている。

(1)原発事故が「引き裂く」地域
 福島原発事故は、未曾有の環境被害をもたらした。足尾銅山鉱毒事件などの例と比べ、影響が同時的で広範囲に及ぶ。いくつもの町村が全住民と役場機能の移転を強いられ、自治体としての存亡の危機に立たされている。福島県の避難者数は16万人に及ぶ。
 避難対象区域の地域社会が受けた被害は、非常に深刻だ。地域が「引き裂かれる」背後に、本質的な被害構造・・・・原発事故によって地域を構成する諸要素が分断・解体され、住民がそれらの諸要素の間で理不尽な選択を迫られている点に地域社会が受けた被害の核心がある。
 地域経済学的「地域」は、一定の範域に「自然環境、経済、文化(社会・政治)」という複数の要素が一体のものとして存在することで、人々の生産・生活の場として機能する(「諸要素の束」)。原発事故によって、地域を構成する要素がバラバラに解体され、避難住民は、そのうちどれを重視して移住先を定めるか、選択を迫られた。役場移転先の近傍か、より安全な「環境」か、雇用機会か。原発事故は、住民たちに、本来ありえなかった「究極の選択」を強いている。その結果、「家族離散」が珍しくない。先行きの不透明さが、地域の崩壊をさらに深刻化させている。
 避難対象区域等の外側では、地域経済が一気に失われたわけではないし、自治体行政などの機能もそのままだが、だからこそ増幅される被害もある。「母子避難」となるケースが極めて多い。「経済」と「環境」の間で、家族が引き裂かれてしまうだの。

(2)加害者が補償範囲を決める異常
 「原子力損害の賠償に関する法律」は、補償対象となる被害の範囲を特には定めていない。これに関して「一般的な指針」を作るのが原子力損害賠償紛争審査会(紛争審)だ。
 紛争審の指針は、裁判等をせずとも補償されることが明らかな被害を列挙したもので、補償範囲としては最低限の目安にすぎない。にも拘わらず、加害者たる東電は、これを補償の「天井」であるかのように扱う。しかも、指針に書かれていない基準を勝手に決めて補償範囲を限定しようとしたり、指針に明示された被害の補償を先送りしようとした(→一部撤回)。
 東電は、昨年8月30日、独自の「補償基準」を示し、「本補償」の手続きを始めた。ここで問題なのは、東電が補償の基準を示し、請求内容の査定まで行っていることだ。<戦後日本の公害問題の経験に照らせば、「異常事態ともいえる。>
 加害者が補償の範囲や額を提示するのは、水俣病事件の「見舞金契約」を思わせる。大企業と被害者との圧倒的な力の差を背景に、患者たちの無知と貧困につけこんで、極端に定額の見舞金の代わりに損害賠償請求権を放棄させた「見舞金契約」は、熊本地裁判決(1973年)で公序良俗違反であり無効とされた。

(3)被害者の「手足」を縛る東電の請求書類
 東電は、「補償基準」の公表後、6万世帯に「本補償」の請求書類を送付した。だが、書類が膨大かつ煩雑、また、記入欄が東電の基準に従っているため、それ異議の被害について書き込むことが難しい。書類自体が、請求の範囲や額を限定するようになっているのだ。
 しかも、請求後に送付される「合意書」に、補償を受け取って以降は「一切の異議・追加の請求を申し立てることはありません」の一文があった。これも「見舞金契約」とよく似ている。
 これらの点に各紙社説等で批判が集中し、東電は問題の一文を撤回するなど改善策を示さざるを得なくなった。
 また、団体交渉を通じて、独自の請求書類により補償を認めさせる例も出てきている(農民運動全国連合会など)。
 そもそも、東電の「補償基準」の中身には、重大な問題があった。中間指針で補償対象と認められている項目や対象者が除かれたり、制限されたりしていた。<例>土地・家屋等への財産被害への対応が先送り。
 さらに、事業者向けの基準(9月21日発表)は、観光業の「風評被害」に関し、被害に対する地震・津波の寄与割合を2割として、それだけ補償額を減額する、とした。これは、強い反発によって、東電は6月以降分については減額を撤回せざるを得なくなった。
 このように、被害者らの運動や世論の批判を受け、しだいに東電の思うようには物事が進まなくなっている。

(4)紛争審を動かした被害者らの運動
 被害者らの批判の矛先は、紛争審にも向けられた。紛争審の中間指針は、避難対象区域等の外側については、農林水産物の出荷制限や風評被害を除いて、住民への補償にはほとんど触れていない。ために、「自主避難」をどう扱うかが最大の問題になった。
 事故直後、放射能汚染の危機が急迫していた時期に住民が「自主避難」したのは相当な理由があった。では、一定期間経過後、汚染の状況が明らかになった段階ではどうか。
 日本弁護士連合会は、年間被曝量が少なくとも5.2mSv超の地域に住む子どもや妊産婦の避難には合理的理由がある、とし、電離放射線障害防止規則による管理区域の定めを援用する。そもそも通常時の一般市民の年間被曝量が1mSvで規制されているのだから、これを超える場合には個別の状況に応じて避難の合理性が認められる、と。
 避難対象区域等の外の住民が自らの被害について声をあげ始め、10月20日、紛争審は12月6日、この問題に関する中間指針の追補を決定した。これにより、避難対象区域等の周辺23市町村の住民が、新たに補償の対象になった(18歳以下の子どもと妊婦が一人あたり40万円、その他が8万円)。
 この追補は、いくつかの問題を残した。(a)避難の有無に拘わらず、区域内の住民を一律に補償対象とした。「自主避難」に特段の合理性を認めない、ということだ。(b)金額や区域設定についても検討の余地がある。「自主避難者の多くの場合、対本の金額では実際の避難費用に届かない。(c)福島に留まった人からしても妥当な額か、疑問だ。
 以上のような問題はあるものの、被害者らの運動が紛争審の議論に「風穴」をあけた意義は大きい。
 東電は、指針の水準に加えて「自主的」に上乗せする例も部分的にみられるようになった。

 以上、除本理史(大阪市立大学准教授)「岐路に立つ原発「賠償」」(「世界」2012年5月号)に拠る。
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【震災】復興で焼け太りする天下り団体(その2) ~復興支援宝くじ~

2012年04月18日 | 震災・原発事故
 「東日本大震災復興支援グリーンジャンボ宝くじ」(2月14日~3月14日発売)は、空前の売上げを記録した。決め手になったのは「収益が復興支援にあてられる」という文句で、当初の予想660億円を7割も上回る1,104億円の売上げとなった。
 国民の復興を支えようという気持ちがこういう売上げに繋がった。大変ありがたい。【川端達夫・総務相】

 収益のほぼ全額が被災地に回って復興に役立つ、と思って購入した人は多いだろう。
 しかし、実際に復興支援に当てられるのは、売上げの14%にも満たない【注】。宝くじ1枚300円のうち復興費用に回されるのは、たった39円でしかない。
 売上げ1,104億円のうち収益金は490億円。このうち復興支援に回るのは、わずか150億円でしかない。
 当初は、売上げを660億円、収益は288億円と踏んでいたので、被災地に88億円、地方自治体に200億円のはずだった。それが復興支援を銘打ったことで大幅に売上げが伸びたのだから、実際の収益490億円のうち自治体分200億円を除く290億円を復興に使えばよかったはずだ。しかし、地方シロアリたちは自分たちの取り分も大幅に増やし、340億円を得た。少なくとも140億円の増額分は被災地に回すのが筋だったのではないか。

 収益金は、霞が関の天下り団体にも流れた。
 グリーンジャンボの収益金を原資として、2011年度で「財団法人地域創造」に6億3,000万円、「財団法人自治体衛星通信機構」に4億2,000万円が渡っている。
 地域創造の理事長は前内閣法制局長官、常務理事は元総務庁消防庁消防大学校長だ。
 衛星通信機構の今年4月に就任した専務理事は、総務省消防大学校長を務めた総務省OBだ。

 宝くじの売上げに占める経費の割合は年間14%程度で、そのうち2~3%が天下り団体に転がりこむ。
 2011年度、「日本宝くじ協会」に32億円、「自治総合センター」に87億円が支払われた。
 宝くじ協会には、元自治省給与課長が天下っている。
 自治総合センターには、元内閣官房副長官、元総務省自治行政局選挙部管理課長が天下っている。
 2団体とも、2010年5月の民主党・行政刷新会議による事業仕分けで、「豪華なオフィスや無駄な宣伝広報事業」と結論された団体だ。
 特に、自治総合センターは、仕分けの場で、首相官邸近くの高層ビルに年間賃料1億8,000万円のオフィスを借りている点も槍玉に挙げられた。・・・・同センターは、昨年12月、事務所をこっそり移転した。

 【注】グリーンジャンボ宝くじは収益の14%しか被災地に回していないが、昨年7~9月に被災9県2市と東京都が計6回発売した「東日本大震災復興宝くじ」は、その収益の9割(45億円)を被災4自治体に回している。うち、宮城県は12億円の分配を受け、地域コミュニティの維持に使用される。

 以上、記事「週刊ポスト「シロアリ駆除隊」が行く」(「週刊ポスト」2012年月日号)のうち「震災復興宝くじ1104億円中 被災地にわたったのはたった150億円」に拠る。

 【参考】「【震災】復興で焼け太りする天下り団体 ~復興支援宝くじ~
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【原発】ふくしま集団疎開裁判 ~ネットの「世界市民法廷」~

2012年04月17日 | 震災・原発事故
 福島県郡山市は、測定地点の多くが空間線量0.2μSv/時を超える。外部被曝量だけで年間1mSvを大幅に超える(推計)。

 昨年6月、同市の小中学生14人らが、安全な場所で教育が受けられるよう、郡山市に対して疎開/避難を求める仮処分を申し立てた。この通称「ふくしま集団疎開裁判」は、「避難するかどうかを個人の自己責任にすべきではない」として、郡山市に疎開の措置を求めたものだ。経済的負担、自分だけ転校することへの子どもたちの抵抗などから、避難したくてもできずに悩んでいる家庭は多い。

 昨年12月16日、福山地方裁判所郡山支部は、申し立てを却下した。その理由にいわく、  
 (a)100mSv未満の被曝では、晩発性障害の発生確率について実証的な裏づけがない。
 (b)年間1mSv超の被曝量が見込まれるとしても、「これによりただちに生命身体に対する切迫した危険性が発生するとまでは認めることができない」。
 (c)区域外通学などの手段(自主避難のこと)もある。

 矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授が裁判所に提出した意見書によれば、郡山市はチェルノブイリなら移住義務地域に相当し、子どもたちには今後、汚染度が郡山市と同程度の地域(ベラルーシのゴメリ地区)で発生したような深刻な健康被害が予想される。
 ゴメリ地区では子どもたちに癌や心臓病などの健康被害が増えた、というデータがある。郡山市の子どもたちも、避難しないでいると、同様に癌や心臓病などの疾病を発症する可能性がある。・・・・そう訴えた申立人に対し、裁判所は事実認定することなく、「ただちに健康に影響はない」という政府の立場に従うにとどまったのだ。また、自主避難の方法もあるとして、避難を各家庭の問題とする立場をとった点でも行政に追随した。
 戦争中ですら学童の集団疎開が行われた。14人の子どもたちの救済を求めることで、残りの福島の子どもたちを救う糸口になれば、という意図があったが、危険性を黙殺した人権侵害裁判だ。【柳原敏夫・弁護士/申立人代理人の一人】
 申立人らは即時抗告し、2月末に抗告理由書と証拠を仙台高等裁判所に提出。それに対し、郡山市は4月16日までに反論を提出する予定だ。

 昨年10~11月の2ヶ月間、希望者に個人積算線量計で測定したところ、年間8mSvに匹敵するくらい被曝していた未就学児がいた。にも拘わらず、郡山のアドバイザーは「健康に害のある数値ではない」と答え、市も教育委員会も「子どもたちの健康被害については誰もわからない」という認識だ。国から郡山市に出る除染費用は、今年度だけで330億円。これを使えば子どもたちを避難させられるが、市は避難よりも、除染で郡山をどう盛り上げるか、ということしか考えていない。【駒崎ゆき子・郡山市議】

 ベラルーシではチェルノブイリ以前は甲状腺癌は10万人に0.1人しかいなかった。南相馬市、川俣町、浪江町、飯舘村の4市町村の30%の子どもの甲状腺にしこりと嚢胞が見つかった。これは深刻な「警告」だ。あらゆる健康異常に対して万全の備えをすることが子どもたちの命を救うことにつながる。放射能汚染は100年規模で続くもので、健康保護の対応は今からでも決して遅くはない。【矢ヶ崎名誉教授の仙台高裁へ提出した意見書】

 申立人らは、この問題を申立人の児童・生徒だけの問題としないため、また裁判所に市民の声をアピールするため、ネットで賛同の呼びかけを行っている。
 また、社会の問題として主権者である市民に疎開裁判の是非を問いかけるべく、2月に東京・日比谷で、3月に郡山市で、「世界市民法廷」を開催し、実際の裁判での一連のやりとりを再現した。陪審員となった市民/参加者の評決は、「避難させるべき」という意見がほとんどだった。 
 ブログ「ふくしま集団疎開裁判」は、現在もネット上で陪審員の評決を募集している。 

 以上、市川はるみ(フリージャーナリスト)+取材班「「ふくしま集団疎開裁判」に要注目」(「週刊金曜日」2012年4月13日号)に拠る。

 【参考】「【原発】なし崩しの原発再稼働に抗えないメディア ~監視するアーカイブ~
     「【震災】原発>メディアで異変、脱原発世界会議、ふくしま集団疎開裁判
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【労働】官製ワーキングプアin大阪市 ~非正規公務員~

2012年04月16日 | 社会
 大阪市職員は、(1)正規職員33,927人、(2)非正規職員3,350人。このほか、(3)委託先職員も公共サービスを担う。
 (2)は、任用の根拠法や雇用期間などにより、(a)任期付職員338人、(b)非常勤嘱託2,816人、(c)臨時的任用職員196人に分かたれる。
 (a)は、原則、フルタイムで、主にケースワーカー(CW)や保育士として配属される。(b)、(c)の勤務時間はまちまちで、配属先も区役所窓口、年金事務、各種相談業務など多岐にわたる。
 この5年間で(1)は4,565人減り、(2)は415人増えた。

 地方公務員法などの法令によれば、非正規職員に委ねるのは一時的、補助的な仕事に限る、とされる。CWや保育士の仕事は、はたして一時的業務といえるか。
 市人事課いわく、「CWの業務はリーマン・ショック後、急増しましたが、現在、市は国に制度の見なおしを求めており、将来的には縮小されるとみています。保育園も民営化する方針ですから、一時的に任期付や非常勤でまかなっています」。
 市人事課の思惑どおりに仕事がヘルかどうかはさて措き、財政難に苦しむ自治体では、今後も「安価」で「雇用調整」のきく非正規職員は増えこそはすれ、減る気遣いはない。

<例:任期付職員>
 生活保護受給率は全国平均1.6%だが、大阪市は5.7%、全国の政令指定都市中トップだ(2011年12月現在)。わけても西成区は23.5%、隣接する浪速区は10.4%で、保護費にかかる予算は市負担分だけで718億円にのぼる。
 大阪市保護課によれば、市のCW約980人のうち約210人は3年契約の(a)だ。フルタイムで、仕事内容は(1)とまったく同じだが、手取りは月額13万円ほど。
 いや、任期付職員のエミ(仮名、42歳)によれば、(1)の担当は70~80ケースだが、自分は100ケース近く受けもつ、という。上司に男性職員の同行を求めたことがあるが、「なんかあったら逃げ」と言われただけだった。以前調査会社で働いていたエミは、不正受給を見破るノウハウを心得ていて、土地や会社の登記などを取り寄せ、不動産取引で得た資産を隠していた受給者を見つけたこともある。が、彼女がいくら実績を上げても、昇給や昇進はない。待遇と仕事のハードさが見合っていない、という。
 給与明細を見て雇用保険に加入していないことが分かり、市の担当者に訊いた。堂々巡りの屁理屈が返ってくるばかりで、「ほんまに使い捨てです」と憤る。
 担当者「公務員は退職まで勤めることが前提なので雇用保険はない」
 エミ「じゃあ、私らも定年まで働けるのですか」
 担当者「任期付きなので無理」 

<例:委託先職員>
 受託業者の社員が市職員に代わって公務を担う現場は、直接雇用された非正規職員を上回る差別の温床となっている。
 大阪市のある水道局営業所。フロアの4分の1のスペースで、灰色の制服を着た100人近くの職員が、ぎゅうぎゅう詰め状態でパソコンや書類に向き合う。隣同士、肘が触れ合い、歩くときは横歩きしなければならない。
 残る4分の3では、広々としたデスクにスーツ姿の職員が陣取る。制服組とスーツ組の人員比率は2対1。
 制服組は、検針やデータ入力を請け負う委託業者の職員。スーツ組は、使用許可業務などを担う正規職員だ。
 委託先職員(人員の3分の2)が4分の1の片隅に押し込まれ、正規職員(人員の3分の1)が4分の3のスペースを占める。人口密度のギャップは異様に映る。
 委託先職員のケンジ(42歳、仮名)は「士農工商の身分差別のようなもの」と諦めたようにいう。差別は職場の広さだけではない。彼の基本給は、数年前、大阪市が入札でより委託費の安い業者を選んだため、およそ11万円に半減した。こうした場合、多くの労働者は失業を避けて減収覚悟で新規業者に移籍する。彼は、1年ごとに更新する契約社員だ。
 人件費削減を焦る自治体がひたすら廉価な業者に流れ、その足下で低所得者が生産される典型的なパターンだ。
 「正規職員は僕らに仕事を丸投げするくせに、トラブルの責任をとらない」
 市による課金方法の変更、停栓や使用開始にに伴う調査業務で仕事が増えたため早出して片づけようとしても、定時出勤する正規職員から、営業所の鍵は委託先には預けられない、と言われた。残業はままならず、仕事はきつくなるばかり。
 冬期、1日1涸支給される携帯用懐炉の保管場所には、「1戸以上取ったら支給停止する」と威嚇するような張り紙がある。休憩室兼更衣室には監視カメラが設置されている。正規職員の職場で同じことが起きれば、大騒ぎになるだろう。委託先の現場ばかりがぽっかり見捨てられている。

 以上、藤田和恵「ルポ 非正規公務員(上) ~消えた笑顔、埋められない溝~」(「世界」2012年5月号)に拠る。

 【参考】「【社会】異常な日本の賃金減少 ~公共サービスの雇用の非正規化~
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