語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

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【本】組織の改革について学ぶ ~『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』~

2018年06月30日 | ●片山善博
★國分功一郎『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎、2013)

 著者は、道路建設計画の見直しを求める住民運動に参加した経験から、議会制民主主義の無力を痛感し、住民は議会よりむしろ行政府に働き掛けることによって自治体の変革を促す方が有効だとの認識を示す。これは、昨今の企業統治改革とも通じる面がある。株主総会よりも取締役会の実効性確保を重視し、経営者に対して適切な情報開示や株主との積極的な対話を促すことによって企業価値の向上を実現させようとする考え方である。
 ちなみに、評者は地方自治の世界ではやはり古典的な議会中心主義の考え方に立っており、本書の著者とはいささか論を異にするものだが、地方議会の現状や企業統治改革の流れに照らせば、本書には納得させられることが多い。

□片山善博(早稲田大学大学院政治学研究科教授)「組織の改革について学ぶ ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2018年6月30日号)

 【参考】
【本】対テロ戦争の最前線 ~『レッド・プラトーン 14時間の死闘』~
【片山善博】【本】地域づくりの要諦を学ぶ ~『地域からつくる 内発的発展論と東北学』~
【本】世界中で食べられるトマト缶 ~消費者が知らない驚愕の事実~
【本】移民政策の得失を冷静に分析 ~キューバ移民の第一線学者~
【本】戦前から日本は変わらず ~1940年体制~
【本】いかに“米中戦争”を避けるか ~歴史から国際政治を類推する~
【本】つげ義春は文章も面白い ~『つげ義春とぼく』~
【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
コメント

【片山善博】【本】地域づくりの要諦を学ぶ ~『地域からつくる 内発的発展論と東北学』~

2018年05月06日 | ●片山善博
★赤坂憲雄、鶴見和子『地域からつくる 内発的発展論と東北学』(藤原書店、2015)

  「地方創生」という名の「地域をつくる」作業が全国各地で展開されているが、そのピントがずれていることが書名に含意されている。国からの指導ではなく、地域に生きる人たちが、足元に埋もれた歴史や文化、風土を掘り起こし、その地域資源をそれぞれの流儀で地域づくりに生かさなければならないと説く。
それには、内発的にものを考える力が欠かせない。これまで大方の地域では自分で考えることを怠り、よそから来た人が「美しいね」と言ってくれないとそう思えなかった。この自信喪失は、内発的にものを考えてこなかったことの代償であることを教えられる。地方創生に携わる人も、関心を持つ人も、是非この本を読んで、ピント外れを軌道修正するようお勧めする。

□片山善博(早稲田大学大学院政治学研究科教授)「地域づくりの要諦を学ぶ ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2018年5月12日号)
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 【参考】
【本】世界中で食べられるトマト缶 ~消費者が知らない驚愕の事実~
【本】移民政策の得失を冷静に分析 ~キューバ移民の第一線学者~
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【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
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【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
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【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
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【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
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【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
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【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
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【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
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【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

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【片山善博】安倍一強政権のもとで壊れゆくもの

2018年03月15日 | ●片山善博
 (1)第193回国会を通じて、財務省、文部科学省、内閣府などの官庁とそこの官僚に対する信頼が激しく揺らいだ。
 これらの府省の官僚たちの国会答弁には乱暴さが目立った。この官僚は一人前の大人だろうか、果たして正気か、質問者を舐めたり茶化したりしているのか・・・・こんな疑問を抱かせる場面がしばしば登場した。
 〈例〉森友学園に対する超安値での国有地払下げについて答弁する官僚は、「適切に処理した」と言い張るだけで、それを裏付ける証拠や資料を一切出そうとしない。資料は作成していない、あった資料も既に廃棄した旨を繰りかえしていた。
 この種の案件で、きちんと資料を整理し、保存しておかないわけがない。「この種の」というのは、不動産の売買のように後々まで尾を引くことが多い案件だ、ということだけでなく、政治がらみでもあるということだ。森友学園の経営者夫妻は、この問題が明るみに出るまでは総理夫人とことのほか親密な間柄だったのだから、関係官庁にしてみれば政治がらみそのものだ。
 財務省は、「適切に処理した」と言うなら、論より証拠、それがわかる資料をさっさと出せばよいのに、それを出さない。敢えて棄てたとまでいうのは、それ相応の事情があるのだろう。出すと自分の役所にとってまずいことになる、あるいは誰かを気遣って出すことが憚られるのか、と誰もが勘繰ることになる。

 (2)およそ政治や行政には説明責任が求められる。説明責任とは、自らが決めたことについては、国民や納税者の納得が得られるよう説明できる、ということだ。決めたことに疑義を抱く人がいたとしても、説明することによって、「なるほど」と了解してもらえばそれでよし。たとえ十全な了解は得られないにしても、「たしかに一理ある」というぐらいの理解は得られなければならない。
 このたびの国有地超安値払下げに係る財務省の国会答弁を説明責任という観点で見ると、まるでなっていない。
 なぜこんな安値で売ったのか、という質問に何も答えていない。適切に計算したことを納得してもらうには、その計算根拠となる資料を示さなければならないのに、それをまったく示していないからだ。説明責任の観点からは、答弁は失格だ。

 (3)不思議なのは、こうした失格答弁を、その場に居合わせている首相も直属の上司である財務大臣も他の閣僚たちも誰一人咎めようとしていないことだ。こんな失格答弁をする部下がいたら、その場でさっさと引き取り、自らが代わって答弁してしかるべきではないか。それは、当該部下だけにとどまらず、組織全体および組織のトップの見識と品格まで疑われかねないからだ。
 ところが、現政権は、説明責任を無視した官僚の失格答弁をそのまま受け入れている。ニヤニヤ笑いながら聞いている閣僚はいても、ムッとしたり、首を傾げたりしてその答弁に不快感や不満を示す閣僚はいない。この光景は国民だけでなく霞が関の各省の官僚もじっと見ている。

 (4)霞が関の官僚たちの持つ資質はよく語られる。権限への拘りや前例踏襲主義などの弊害が見られるとの指摘は、当たらずとも遠からず。ただ、それと裏腹の関係になるのだが、説明責任への拘りという正の資質があることはあまり指摘されてこなかった。
 久しい間、政府が決めることの多くは、国民の代表である政治家ではなく、実質的に官僚たちが決めてきた。善し悪しは別にして、これが官僚主導といわれる政治の流儀だった。ただ、官僚たちは単に実質的に決めるだけではなく、決めたことに対する説明責任も一手に引き受けさせられていた。
 そこで官僚たちは、後で自分たちが説明できないおそれのあることはできるだけ避けようとし、また新しいことに取り組むにしても何とかぎりぎり説明できる範囲に留めようとする。権限への拘りや前例踏襲主義はそんな官僚たちの心性と密接に関係している。裏を返せば、それだけ説明責任に拘りを持っているということでもある。

 (5)ところが今、国会の国有地超安値払下げ問題についての実に無責任で投げやりな答弁が罷り通っているのを見た各省の官僚たちは、「ははーん、これでいいんだな」と妙に得心したことだろう。
 これまではそうは言っても一応筋の通った答弁を心掛けていた各省の官僚たちも、今後は失格答弁で逃げることを敢えて辞さなくなるのではないか。

 (6)その後国会で取り上げられた加計学園問題でも、政治家だけでなく内閣府や文部科学省の官僚たちから不誠実な答弁が繰りかえされた。
 文部科学省に対して獣医学部設置をめぐってあれこれと働きかけをしたと指摘された内閣府の官僚は、「記憶にない」などと誠に不誠実な答弁をしていた。
 ひと昔前、政治家ならばともかく、官僚が「記憶にない」などと答弁することは決してなかった。今やさほど高位にあるわけでもない官僚がそんなふざけた答弁をするのを耳にするのは隔世の感がある。

 (7)ふざけた答弁には、こんな答弁もあった。文科省内から出てきたと思われる電子メールでの送信文の真偽が問題になっている時、その送信先として表記されていた名前の人物が省内に実在するのではないか、と問われた文科省の官僚は、「同姓同名の職員はいます」と、しれっと答えていた。
 人を小馬鹿にするのもいい加減にした方がいい。当人は野党議員の質問を少々おちょくったぐらいにしか考えていないのかもしれないが、勘違いも甚だしい。それは、国会とその国会の背後にいる国民を小馬鹿にし、おちょくっていることを意味するからだ。
 ここでも不思議なことに、こんなふざけた答弁を閣僚たちや与党議員たちが笑ってやり過ごした。
 おそらく彼らは、小憎らしい野党の追及を、官僚が小気味よくかわした、というぐらいの受け取り方なのだろうが、これまた甚だしい勘違いだ。たとえ野党議員に対してであれ、官僚が国民の代表である国会議員をおちょくったり、愚弄したりするようなことがあってはならないからだ。その場で笑って済まされたとは、国権の最高機関も随分軽い存在に成り下がったものだ。

 (8)このたびの国会の会期末近くに、参議院では共謀罪法案について委員会での審議と採決を飛ばして、一気に本会議で議決した。加計学園問題の幕引きを図りたかった、東京都議選を控えて会期の延長が憚られた、など、あれこれ事情の解説をする向きもあるが、これは参議院の自殺行為だ。
 衆参両院制のもとで、参議院は良識の府として身長真偽を心掛ける。衆議院とは違った観点から法案をチェックする。とりわけ行政監視機能が大切だ。参議院の機能や存在意義についてはかねてあれこれと説かれてきた。
 しかし、今回の一件からすると、もはや参議院は不要だ。これだけ国民の関心が高く、かつ、多くの国民が不安に思っている法案なのに、参議院は普段誇っているそれらの機能をすべてかなぐり捨てたからだ。もはや、参議院の存在意義などと言っても、誰も信用しないだろう。もし、憲法改正が具体化するなら、いの一番に参議院の廃止が検討されてしかるべきだ。
 安倍一強政権のもとで、霞が関のよい資質や国会の存在感が次々と毀損されている。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「安倍一強政権のもとで壊れゆくもの ~日本を診る第93回~」(「世界」2017年8月号)
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 【参考】
【片山善博】図書館の可能性を考える
【片山善博】「東京大改革」とは何か ~小池知事への疑問~
【片山善博】「男子の本懐」を遂げるには ~浜口雄幸『随感録』~
【片山善博】古今の政治を“透徹”する ~マキャヴェッリ『ディスコルシ「ローマ史」論』~
【片山善博】小池都政を「一輪車」にしてはならない ~都議会の無責任を示す一例~
【片山善博】【豊洲】市場問題 ~都議会のなすべきこと~
【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~
【片山善博】都議会改革は都庁改革 ~都の政策に責任を持つのは誰か~
【片山善博】情報公開が首長を守る ~舛添都知事辞任の教訓~
【片山善博】大切なことに時間を使う ~セネカ『人生の短さについて』~
【片山善博】二度も続いた東京都知事の失脚-その教訓を都政の改革に生かす
【片山善博】参議院選、鳥取島根ほかの「今回の合区は憲法違反」
【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~
【片山善博】らの鼎談 違法性がなくても知事の適性がない ~舛添は日本の恥(2)~
【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~
【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
【社会】防災体制の点検、真剣に ~平素の備えが大切~
【片山善博】口利き政治の弊害と政治家本来の役割
【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方
【片山善博】TPPから見える日本政治の悪弊 ~説明責任の欠如~
【片山善博】政権与党内の議論のまやかし ~消費税軽減税率論議~
【経済】今導入すると格差が拡大する ~外形課税=赤字法人課税~
【片山善博】【沖縄】辺野古審査請求から見えてくる国のモラルハザード
【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る
【片山善博】違憲と不信で立ち枯れ ~安保法案~
【片山善博】【五輪】新国立競技場をめぐるドタバタ ~舛添知事にも落とし穴~
【片山善博】「ベトナム反中国暴動」報道への違和感
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 ~竹富町教科書問題~
【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 ~候補者の「品質管理」~
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 ~民主主義の空洞化(2)~
【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
【社会】教育委員会は壊すより立て直す方が賢明
【社会】「教員駆け込み退職」と地方自治の不具合
【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 ~公共事業~


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【佐藤優】の神学とシャーロック・ホームズ ~中産階級とミステリー~

2018年01月18日 | ●片山善博
  
 <ブリッグスによれば、この時代のキーワードは「思考」「仕事」「進歩」であった。冷静に考えてことを処理し、よく働くこと、進歩を信じること、が当時の人たちの信仰であり、スマイルズの『自助論』(1859)はその典型であった。道徳主義的な上品気どりや、進歩を信じる楽天的な自己満足がビクトリア朝の二大思潮だと言われている。しかしこのほかに新しい流れを無視するわけにはいかない。それは中産階級の出現に基づく、中流の思想である。以前には、英国は二つの階級から成ると考えられていた。ジェントリー(大地主)を中心とする有産階級と、貧乏な無産階級の二つがそれであって、貧乏はむしろ働かぬことに基づく罪だと思われていた。しかし、産業革命によって両者の中間を占める中産階級が出現すると共にこの二分思考は粉砕された。ドイルも貧乏な家庭から出発し、1891年以降次第に豊かになっていった中産階級であったから、彼が書く小説に中流の思想が反映しているのは当然であろう。ホームズ物語を通して百年前の英国人の方を探るのは、楽しい読み方の一つである>【注1】

 宗教と資本主義の関係は100年も200年も前から、さまざまな人びとが議論してきた。最もよく知られているのはマックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』だ。
 プロテスタント、なかでもカルヴァン派の禁欲的な態度が資本主義を生み出した。いったん資本主義が生まれると、たちまち世界に広がっていった。この見方はウェーバーの重要な業績として、多くの人びとが知っている。
 だが、プロテスタンティズムにもカルヴァニズムにも資本主義を生み出す力はなかったのではないか。資本主義につながる何かを偶然掴んだだけではないか。
 換言すれば、①論理で説明すべきか、②歴史的経緯で説明すべきか。②なら偶然の要素が絡んでくる。<例>気象条件、民族、戦争の勝敗。
 神学的には、ウェーバーは誰を通してキリスト教を知ったのかが問題だ。注目すべきは、ウェーバーと一時期、同じ建物に住んでいたドイツの宗教哲学者エルンスト・トレルチだ。
 トレルチは、イエスの人生を実証、研究するなかで、イエスの実在は証明できないと結論づけた。その後、キリスト教の教義は歴史実相的に検証した結果、正しいとはいえないという答えに達した。このプロセスをトレルチはウェーバーと議論している。
 トレルチは、①論理だけでキリスト神学が語られるなか、②歴史学、つまりは偶然の要素を取り入れようとしたユニークな人物だ。ウェーバーはトレルチに大きな影響を受けた。【注2】

 【注1】小林司・東山あかね「コナン・ドイルとホームズの時代」(コナン・ドイル(鮎川信夫・訳)『シャーロック・ホームズ大全』(講談社、1986)、所収)
 【注2】
【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~
【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~
【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~
【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~
【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~
【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~
【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~
【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~
【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~
【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~

□DVD版『シャーロック・ホームズ全集』、英日対訳ブック付き。 ※17話(11巻)+24話(12巻)=41話(23巻)
□“Sherlock Holmes: The Complete Novels and Stories Volume I”
□“Sherlock Holmes: The Complete Novels and Stories Volume II”
□コナン・ドイル(鮎川信夫・訳)『シャーロック・ホームズ大全』(講談社、1986)
□コナン・ドイル/ベアリング・グールドほか注(小池滋・訳)『詳注版シャーロック・ホームズ全集』(ちくま文庫、1997~98) ※全10巻+別巻(『シャーロック・ホームズ事典』)
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【片山善博】読書を巡る経済人の考察 ~『だから人は本を読む』~

2017年09月01日 | ●片山善博
★福原義春『だから人は本を読む』(東洋経済新報社、2009)
 
 資生堂の元会長で、現在は文字・活字文化推進機構の会長を務める福原義春さんの読書論である。読書を通じて、教養を積むことの大切さを伝える。企業人こそ、本の「食わず嫌い」をなくし、多忙でもあえて本を読めと説く。耳の痛い人もいるだろうが、ゴルフの時間を読書に充てる方が有意義だと、体験的に諭す。
 中でも、「私が影響を受けてきた本」と題する書評は秀逸で、読書に縁遠い人はまずその中の一冊から始めてはどうか。決して、外れはないと筆者は思う。
 昨今「本離れ」が著しい。日本語力の低下が、日本の文化力と日本人の表現能力を弱くすると警鐘を鳴らす。本離れは政治の劣化につながることにも論が及ぶが、それは昨今の政治のありさまを見事に言い当てている。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「読書を巡る経済人の考察  ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年8月26日号)を引用
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 【参考】
【片山善博】安倍一強政権のもとで壊れゆくもの
【片山善博】図書館の可能性を考える
【片山善博】「東京大改革」とは何か ~小池知事への疑問~
【片山善博】「男子の本懐」を遂げるには ~浜口雄幸『随感録』~
【片山善博】古今の政治を“透徹”する ~マキャヴェッリ『ディスコルシ「ローマ史」論』~
【片山善博】小池都政を「一輪車」にしてはならない ~都議会の無責任を示す一例~
【片山善博】【豊洲】市場問題 ~都議会のなすべきこと~
【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~
【片山善博】都議会改革は都庁改革 ~都の政策に責任を持つのは誰か~
【片山善博】情報公開が首長を守る ~舛添都知事辞任の教訓~
【片山善博】大切なことに時間を使う ~セネカ『人生の短さについて』~
【片山善博】二度も続いた東京都知事の失脚-その教訓を都政の改革に生かす
【片山善博】参議院選、鳥取島根ほかの「今回の合区は憲法違反」
【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~
【片山善博】らの鼎談 違法性がなくても知事の適性がない ~舛添は日本の恥(2)~
【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~
【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
【社会】防災体制の点検、真剣に ~平素の備えが大切~
【片山善博】口利き政治の弊害と政治家本来の役割
【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方
【片山善博】TPPから見える日本政治の悪弊 ~説明責任の欠如~
【片山善博】政権与党内の議論のまやかし ~消費税軽減税率論議~
【経済】今導入すると格差が拡大する ~外形課税=赤字法人課税~
【片山善博】【沖縄】辺野古審査請求から見えてくる国のモラルハザード
【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る
【片山善博】違憲と不信で立ち枯れ ~安保法案~
【片山善博】【五輪】新国立競技場をめぐるドタバタ ~舛添知事にも落とし穴~
【片山善博】「ベトナム反中国暴動」報道への違和感
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 ~竹富町教科書問題~
【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 ~候補者の「品質管理」~
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 ~民主主義の空洞化(2)~
【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
【社会】教育委員会は壊すより立て直す方が賢明
【社会】「教員駆け込み退職」と地方自治の不具合
【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 ~公共事業~


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【片山善博】図書館の可能性を考える

2017年06月28日 | ●片山善博
★菅谷明子『未来をつくる図書館 ニューヨークからの報告』(岩波新書、2003)

 図書館を“暇人用の無料貸本屋”と揶揄する人がいる。図書館を「賑わい空間」に変える試みもあるが、「見てくれ」重視からか、天井まで届く書架にダミー本を詰め込んだ光景は、もはや図書館とは似て非なる存在でしかない。
 本来、図書館は知の拠点であり、万人の知的自立を支援する場だ。企業人やビジネスマンなど忙しく働いている人たちも図書館サービスを享受してほしい。それによって個人が力を付け、やがては社会全体を潤すことになる。これこそが図書館がもたらす恵沢といえる。市民の才能を芽吹かせるために図書館はどんな役割を果たせるか、市民にはどんな利用が可能か。
 本書が紹介する米ニューヨーク公共図書館での取り組みは、わが国にも大いに参考になる。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「図書館の可能性を考える  ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年7月1日号)を引用
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 【参考】
【片山善博】「東京大改革」とは何か ~小池知事への疑問~
【片山善博】「男子の本懐」を遂げるには ~浜口雄幸『随感録』~
【片山善博】古今の政治を“透徹”する ~マキャヴェッリ『ディスコルシ「ローマ史」論』~
【片山善博】小池都政を「一輪車」にしてはならない ~都議会の無責任を示す一例~
【片山善博】【豊洲】市場問題 ~都議会のなすべきこと~
【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~
【片山善博】都議会改革は都庁改革 ~都の政策に責任を持つのは誰か~
【片山善博】情報公開が首長を守る ~舛添都知事辞任の教訓~
【片山善博】大切なことに時間を使う ~セネカ『人生の短さについて』~
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【片山善博】参議院選、鳥取島根ほかの「今回の合区は憲法違反」
【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~
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【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~
【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
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【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
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【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 ~公共事業~



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【片山善博】教育改革の要諦を考える ~『大津中2/いじめ自殺』~

2017年05月24日 | ●片山善博
★共同通信大坂社会部『大津中2/いじめ自殺』(PHP研究所、2013)

 2011年に滋賀県大津市で起きた“いじめ自殺事件”を契機に、国による教育委員会改革が動き出した。ただ、教育現場の環境が大きく改善されたとは思えない。真相解明のための第三者調査委員会による報告書では、改革のポイントが的確に示されている。例えば、ボードとしての教育委員会の在り様だ。教育委員が埒外に置かれている現状を正すべきことを指摘する。ところが、実際の改革では、教育委員たちをもっと埒外に置いてしまった。
 今日、重症の東芝は企業統治改革にいち早く取り組んだとされているが、果たして改革の要諦に沿っていたかどうか。教育委員会改革の成否を検証することは、同じくボードである取締役会の在り方を考える上で有益だと考え、あえて取り上げてみた。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「教育改革の要諦を考える  ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年月日号)を引用
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 【参考】
【片山善博】「東京大改革」とは何か ~小池知事への疑問~
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【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
【社会】防災体制の点検、真剣に ~平素の備えが大切~
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【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方
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【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
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【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
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【片山善博】「東京大改革」とは何か ~小池知事への疑問~

2017年03月22日 | ●片山善博
 (1)小池百合子・都知事の快進撃が止まらない。先の東京都千代田区選挙では、知事が推す候補者が圧勝した。
 ただ、知事経験者としては、小池知事の力の入れように強い違和感を覚えた。片山教授が知事を務めていた頃の鳥取県でも、市町村長の選挙で是非当選してほしいと願う候補者もいたし、もう他の人に替わった方がいいと思われる現職候補者もいないではなかった。ただ、そうした選挙の際に特定の候補に強く肩入れをすることは避けていた(距離を置いていた)。
 〈理由1〉・・・・市町村長を誰にするかは、その市町村の住民が決めることであって、そこに知事が介入するべきではないと考えるから。県は市町村に対して大きな影響力を持つ。その県の代表である知事が、特定の候補を強く推すということは、その候補が当選すれば県から財政支援などの便宜を取りはからってもらえると、住民が期待しても不思議ではない。
 逆に、他の候補が当選すれば、県から邪険にされて自治体運営に支障が生じるのではないかと心配する住民もいるだろう。
 そうした期待や心配に影響されて、住民の投票行動に歪みが生じることになるとすれば、それは地方自治の理念に反することになる。
 〈理由2〉・・・・現実問題として、時間的にも精神的にもそんなことに関わっている余裕がなかったから。県政には課題が山ほどもあり、それらに真摯に向き合っていると、市町村の選挙に関与する気など起こらなかったのだ。

 (2)全国で人口が最小の鳥取県において(1)のごとくであった。まして、東京都は人口が47都道府県の中で最大であり、しかも23の特別区がある旧東京市の区域では大都市の市長の仕事もこなさなければならない。知事が自分の仕事に打ち込んでいれば、とてもではないが、市区町村長の選挙に入れ込む暇などないように思える。

 (3)ところが、日々の報道を見る限り、このところの小池知事の最大の関心事は、どうやら今夏予定されている都議会議員選挙にあるらしい。政治塾を開いて人材を募ったり、現職の都会議員を抱き込んだりしてその準備に余念がない。
 新党を立ち上げるとの噂も聞かれるが、その有無にかかわらず選挙準備に要する労力と時間は尋常ではないはずだ。他の都道府県知事でさえ二足の草鞋を履いて務まるものではないのに、いわんや都知事においてをや。都政をなめているとまで言うつもりはないが、必ずしも身が入っていないのではないかと懸念せざるを得ない。

 (4)小池知事に近いと言われる人物に懸念を伝えると、知事は「東京大改革」を成し遂げようとしていて、そのためには都議会をがらりと変えなければならないと解説してくれる。
 そういえば、都議会公明党がこれまで蜜月関係にあった都議会自民党と袂を分かって小池知事にすり寄った時、知事は「東京大改革に向かって一緒に歩けるのは大変心強い」と述べ、都議選で選挙協力する意向を明らかにしたと報じられた。
 この「東京大改革」は巷で頗る評判がいい。年が明けて何度か都内で講演に出向く機会があったが、その折に「皆さんは、小池知事の東京大改革に賛成か、反対か」と問うと、賛成の人が圧倒的に多い。
 ただ、その後で「では、東京大改革とはどんなことか、ご存知の方は?」と尋ねると、不思議なことに手を挙げる人は誰もいない。
 実は、「東京大改革」は政治的スローガンとしては浸透しているが、内容についてはほとんど理解されていない。その点では、かつて熱狂的に支持された小泉純一郎・元総理の「構造改革」によく似ている。

 (5)では、「東京大改革」とは何か。知事の発言や側近の著書によれば、それは都政の透明化であるに違いない。徹底した情報公開であり、それによって都の行財政改革を推し進めることであるはずだ。
 それなら片山教授も大賛成だ。従来の都政に最も欠けていたのが透明性であるからだ。そこから都庁と都議会との癒着が生まれていたのだし、五輪関係経費の杜撰な予算見積もりにもつながっていた。

 (6)ただ、いくら「東京大改革」を錦の御旗にしても、それを知事が都議選にのめり込む理由にはできない。都の情報公開は都議会の構成とは直接関係がなく、知事が都庁の体質を変えられるかどうかが問われる問題だからだ。これまで都庁の情報公開の水準は、全国でも最低レベルだった。それを正すのは知事の仕事で、知事がその気になりさえすれば、自身の力で大きく改善できる。
 既に、かつて「ノリ弁」と言われて黒々と塗りつぶされた書類しか公開しなかった都の悪弊は小池知事のもとでかなり改善された。
 ただ、まだまだ物足りない。この際取り組んでほしいのが予算編成過程の透明化である。予算の各項目の過程で誰が決めたのかを明らかにするのである。鳥取県では片山教授が知事を務めていた頃から既にそれを県のホームページで公開している。

 (7)予算編成過程の情報公開では、小池知事自身の振る舞いで気になることがある。知事は前知事の時代まであった200億円の「政党復活枠」を廃止した。都議会自民党などが持っていた事実上の予算配分権を取り戻したのである。それは正しい選択だった。
 その上で、知事は業界団体を都庁に呼び寄せ、予算要望の公開ヒアリングを行った。知事はこれを「見える化」だと胸を張っていたが、それは単なる「見せる化」であって、「見える化」ではない。この場合の「見える化」とは、それらの要望の処理過程を明らかにすることだからだ。
 報道によれば、知事は去る1月23日、ヒアリング対策の業界団体に対し要望に係る予算の査定結果を伝えたという。マスコミを通じて予算案が都民に公表される2日前に、既に業界団体にはこっそり知らせていたのである。それは、従来都議会自民党などが行っていたのと同じことを、今度は小池知事がそれにとって代わってやっているようにも見える。

 (8)この見解を(4)の知事に近い人物に指摘したところ、「そうは言っても、要望されたことの結果を予算発表で突然知らせると、戸惑ったり、齟齬があっても困るので」という説明だった。
 ならば、こんなことも考えてもらいたい。世の中には声の大きい人もいれば、声の小さい人もいる。声を上げられない人だっている。そんな中で、知事に要望を聞いてもらう機会を与えられたのはごく一握りの、おそらくは力が強かったり、声が大きかったりする人たちである。その人たちは、意見を聴いてもらえただけでなく、懇切に事前にインサイダー情報を教えてもらっている。
 一方、知事に会うことすらできない人たちは、せいぜい都庁に要望書を提出するぐらいしか術がない。そんな人たちには事前どころか何の連絡もない。新聞で予算発表を見て、要望した予算がつかないことに落胆し、諦めるほかない。声の大きい人たちには丁寧に対応するが、声の小さい人たちはぞんざいに扱う。これでは「都民ファースト」ではなく、「業界ファースト」ではないか。
 片山教授は、情報公開のあり方もさることながら、知事の政治姿勢にも疑問を感じている。

 (9)ことほど左様に、都政には知事自身のことも含めて改革する課題はたくさんある。
 小池知事には自身が取り組むべき課題に全力であたるべきであって、とても人の選挙にちょっかいをかけている場合ではないように思われる。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「『東京大改革』とは何か--小池知事への疑問 ~日本を診る第89回~」(「世界」2017年4月号)
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 【参考】
【片山善博】「男子の本懐」を遂げるには ~浜口雄幸『随感録』~
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【片山善博】「男子の本懐」を遂げるには ~浜口雄幸『随感録』~

2017年03月12日 | ●片山善博
 ★浜口雄幸『随感録』(講談社、2011/オリジナル版は1931年刊)

 浜口雄幸は、海軍軍縮や緊縮財政など当面の不人気策を断行し、それがもとで銃撃される。一命を取り留めた“ライオン宰相”が、「感想の湧くに従って書き付けた」のが本書である。「いずれ一度は死ぬる命だ。国家の為に斃るれば寧ろ本懐とするところ」。城山三郎の『男子の本懐』は、本書の一節に由来する。
 自らの生い立ち、弱点をいかに克服したかを綴る一方で、政党政治や議会の在り方など当時の政治課題を具体的に説く。さらには、判断力を養う教養の大切さ。成功の秘訣、「課長職に習熟したら余力を持って局長になった時の準備に精進せよ」など、人としてまた組織人としての心得にも筆は及ぶ。政治家や官僚はもとより、企業人にもぜひ読んでいただくようお勧めする。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「「男子の本懐」を遂げるには  ~名著味読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年3月11日号)を引用
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【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~
【片山善博】らの鼎談 違法性がなくても知事の適性がない ~舛添は日本の恥(2)~
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【片山善博】政権与党内の議論のまやかし ~消費税軽減税率論議~
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【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 ~候補者の「品質管理」~
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 ~民主主義の空洞化(2)~
【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
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【佐藤優】米国 ~米露中「大国の掟」(2)~

2016年12月18日 | ●片山善博
 (1)トランプがやろうとしていることは、日本の真珠湾攻撃の日(1941年12月8日、米国時間7日)より前の米国に戻すということだ。
 1941年までの米国は、自国に関係ないことには基本的に介入しないという「モンロー主義」を掲げていた。彼らはヨーロッパの宗教戦争から逃れ、命の危険を冒して大西洋を渡ってきた人びとの子孫だ。だから「自分たちはヨーロッパの国家間対立にはかかわらない。ヨーロッパの国もアメリカ大陸のことに口を出すな」と言った。つまりトランプに通じる「アメリカ・ファースト」の考え方だった。
 第一次世界大戦や大戦後にできた国際連盟に積極的に関与しなかったのも、ヨーロッパ大陸でナチスが台頭しても当初無関心でいられたのも、「アメリカ第一」だったからだ。
 米国が変質したのは、日本の真珠湾攻撃以後だった。第二次世界大戦に勝利した後、世界に自由と民主主義を拡げるために、理念を掲げ積極的に他国へ介入する国家へと変貌を遂げた。

 (2)新しい米国の思想的支柱になったのが、神学者で政治学者でもあったラインホールド・ニーバーだ。F・D・ローズヴェルトからトルーマン、ブッシュ父子に至るまで、歴代大統領のほとんどがニーバーについて言及している。最近では、オバマ大統領が「好きな哲学者」とまで言い切るほど二-バーの影響を受けていた。
 ニーバーは、世界を理念や理想を持った「光の子」と善悪の価値観がなく暴力を信奉する「闇の子」の二項対立で説明する。第二次世界大戦中は、民主主義陣営や共産主義陣営が協力して「闇の子」であるナチスやファシズム勢力を倒すべきだと主張した。第二次世界大戦後に「闇の子」とされたのはかつて手を結んだ共産主義。その後、イランのイスラム主義やイラクのフセイン、現在では「イスラム国」が「闇の子」にあたる。

 (3)トランプは、ニーバーの世界観を否定している。よその国のことなど米国には関係がない。自分たちの利益だけを守るんだ、と主張しているのだから。
 一部で誤解があるようだが、モンロー主義は孤立主義ではない。19世紀から20世紀にかけてフィリピンや中米に関して積極的に介入したように、米国に死活的な利益があると考えれば介入するのが米国第一の考え方だ。トランプもシリアやイラクから手を引くと言っているが、一方で「米国大使館をテルアビブから(イスラエルが首都と定める)エルサレムに移す」などとイスラム勢力を刺激するようなことも言っている。つまり中東から完全に手を引くということではない。
 トランプの登場で、新しい国際的な枠組みとなるはずだったTPPは完全に終わった。米国は、農業や知的財産の分野で非常に有利な条件を勝ち取っていたが、トランプは自らの支持基盤である製造業の労働者にしわ寄せが来ることを重く見たのだ。安倍首相は翻意をうながすと言い続けているが、本心ではもう諦めているはずだ。しかしその方が正しい現状認識だ。 

 (4)トランプは国家リーダーとしてどういうタイプか。
 まず、政治に関しては素人であることから、当面は官僚支配になることが予想される。トランプ時代の官僚とは、試験や能力で選抜された官僚ではなく、「友達」と「身内」から選ばれた人が意思決定することになりそうだから、官僚としての質は当然低くなる。米保守系ニュースサイトの経営者で「人種差別主義者」とも批判されているバノンを首席戦略官・上級顧問に任命し、娘のイヴァンカの夫であるクシュナーの登用もささやかれている。縁故で固められた組織がどこまで機能するかが最初のハードルとなるだろう。

 (5)最も注目される官僚組織は、FBIだ。今回のトランプ政権誕生において、FBIが果たした役割は決定的だった。大統領選挙の最終盤の10月になって、コーミーFBI長官がクリントンのメールアドレス問題を再捜査すると発表したため(投票の2日前に不正行為はなかったと発表)、鎮静化していたスキャンダルが再燃し、クリントンの支持率は急落した。
 おそらくFBIは、捜査に対して猛烈に反発していたクリントンの政権奪取を怖れたのだろうが、結果的にトランプに恩を売った。これをきっかけにトランプ政権とFBIの蜜月が始まるはずだ。トランプは政治経験がなく人脈もないので、身体検査、つまり、誰がどういった経歴を持っていて、どういうアキレス腱があるかを調べる力がない。情報を持っているFBIが重宝されるのは間違いない。
 1924年から1972年までFBI長官を務めたフーバーは、自身に情報を集中させ、大統領の弱みを握り、亡くなるまでその地位を手放さなかった。これからの米国は、フーバー時代の再来を思わせるような、FBIが睨みを利かせる警察国家になる可能性がある。

 (6)トランプの人物評価として、もう一つ重要なのは不動産業者としての経歴だ。不動産業者という経歴から何が言えるか。
 不動産業者が理念や理想を語ることはあまりない。彼らにとって最も重要なのは何か。それは取引(ディール)だ。現にトランプは「自分が好きなのはディールだ」と公言している。
 不動産業者は、取引成立のためなら相手にいくらでも合わせるし、ケンカしてみせることもある。ロバート・キヨサキとの共著『あなたも金持ちになってほしい』が日本でも評判になったが、トランプの本質は商売人であることは今後も変わるまい。

 (7)トランプは日本に関して「相応の負担をしなければ在日米軍の撤退もあり得る」と発言した。そこで注目が集まるのは沖縄だ。翁長知事は、トランプ当選が確実になった後の会見で、祝電を打つことと就任後の2月に訪米する意向を表明した。
 トランプが沖縄の民意をそのまま聞くということはありえない。しかし、このまま日本政府が辺野古への基地移設を強行した場合、流血事件などが起きて反米の世論が盛り上がったりすると、トランプは「日本政府の言うとおりに本当に移設はできるのか?」と考え出す可能性が出てくる。そこで日本が安保体制の理念を語っても、トランプにはおそらく通じない。トランプが沖縄の基地問題に関して現実主義的な解決策を選ぶ可能性はある。

 (8)対中戦略も、理念がないだけに米国の不利にならない限りは、中国の政策に口を出すことはなさそうだ。そうなると日本は難しい立場に追い込まれる。特に尖閣問題は、トランプ政権が中国寄りの姿勢を示す可能性すらある。そもそも、「尖閣諸島には日米安保条約が適用される」と確認したのは、オバマ政権のクリントン国務長官だった。それ以前の米国は曖昧にしていたのだから、尖閣問題については米国の姿勢が大きく変わる可能性さえある。

□佐藤優「米露中「大国の掟」を見極めよ」(「文藝春秋」2017年1月号)
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 【参考】
【佐藤優】歴史と地理 ~米露中「大国の掟」(1)~

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【片山善博】古今の政治を“透徹”する ~マキャヴェッリ『ディスコルシ「ローマ史」論』~

2016年11月29日 | ●片山善博
 <『君主論』のマキャヴェッリが、ローマ以降の現代(16世紀当時)までの政治史から得られる教訓を記している。『君主論』より読みやすく面白いし、今日の政治を考察する上でも有益だ。例えば、自由な選挙により選ばれた政体が時に有害になるのは、人々が冷静な判断力を失い、権力者の行動範囲と就任期間への制限を怠るからだという。頭に浮かぶのは、解釈改憲による安保法制や党総裁任期延長のことである。
 政治学者の丸山真男が本書にまつわるエピソードを紹介している。最高裁判所長官の推薦をめぐって司法内に政治的策動があり、どうしたものかと相談に訪れた裁判官にこの本を貸したところ、大いに役立ったと後で感謝された由。やはり権謀術数のマキャヴェッリではある。>

□片山善博(慶應義塾大学教授)「古今の政治を“透徹”する/ニッコロ・マキャヴェッリ『ディスコルシ「ローマ史」論』(筑摩書房、2011) ~名著未読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2016年11月26日号)を引用
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 【参考】
【片山善博】小池都政を「一輪車」にしてはならない ~都議会の無責任を示す一例~
【片山善博】【豊洲】市場問題 ~都議会のなすべきこと~
【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~
【片山善博】都議会改革は都庁改革 ~都の政策に責任を持つのは誰か~
【片山善博】情報公開が首長を守る ~舛添都知事辞任の教訓~
【片山善博】大切なことに時間を使う ~セネカ『人生の短さについて』~
【片山善博】二度も続いた東京都知事の失脚-その教訓を都政の改革に生かす
【片山善博】参議院選、鳥取島根ほかの「今回の合区は憲法違反」
【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~
【片山善博】らの鼎談 違法性がなくても知事の適性がない ~舛添は日本の恥(2)~
【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~
【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
【社会】防災体制の点検、真剣に ~平素の備えが大切~
【片山善博】口利き政治の弊害と政治家本来の役割
【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方
【片山善博】TPPから見える日本政治の悪弊 ~説明責任の欠如~
【片山善博】政権与党内の議論のまやかし ~消費税軽減税率論議~
【経済】今導入すると格差が拡大する ~外形課税=赤字法人課税~
【片山善博】【沖縄】辺野古審査請求から見えてくる国のモラルハザード
【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る
【片山善博】違憲と不信で立ち枯れ ~安保法案~
【片山善博】【五輪】新国立競技場をめぐるドタバタ ~舛添知事にも落とし穴~
【片山善博】「ベトナム反中国暴動」報道への違和感
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 ~竹富町教科書問題~
【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 ~候補者の「品質管理」~
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 ~民主主義の空洞化(2)~
【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
【社会】教育委員会は壊すより立て直す方が賢明
【社会】「教員駆け込み退職」と地方自治の不具合
【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 ~公共事業~
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【片山善博】小池都政を「一輪車」にしてはならない ~都議会の無責任を示す一例~

2016年11月26日 | ●片山善博
 (1)片山善博・慶應義塾大学教授は、かねてから「知事と議会は車の両輪であって、一輪車にならないように」と全国の地方議会に向けて警鐘を鳴らし、そのありようを批判してきた。
 わが国の自治体の統治の仕組みは、二元代表制である。知事などの首長と議会議員とが、いずれも住民によって直接選ばれる。この「二元」は互いに索制しつつ、緊張感をもって自治体運営の舵取りをする。これを比喩的に、知事と議会は「車の両輪」の関係にあるという。
 「両輪」は車軸で繋がっているが、通常二つの車輪には適度な距離がある。距離があるからこそ、そこに異論や反論の入り込む余地がある。そんな異論や反論を交えて議論したり、そこから合意を形成することで、「両輪」は安定して前に進むことができる。
 ところが、現実の多くの(ほとんどの)自治体では、「両輪」の間にほとんど距離がない。ぴったりくっついている。そこには異論や反論の入り込む隙間がない。したがって、議論もない。これを一体化と言ってもいいが、癒着と言う方がわかりやすい。両輪が癒着した「一輪車」である。
 「一輪車」と化した議会では、まともな議論を欠いたまま、執行部が提案した議案はすべて無傷で可決される。何ごとも人目につかない所で決められていて、表の議場では質問者と知事が原稿を整然と読み合う儀式が繰り広げられる。「八百長」と「学芸会」だ。
 かつて北海道議会がその典型だと揶揄していたが、ある時点からそれを止めた。北海道議会に改善がみられたからではない。いつの頃か東京都議会のありさまを知るに及んで、道議会より都議会のほうが「八百長」と「学芸会」の完成度が高いことがわかったからだ。爾来、都議会こそ「八百長」と「学芸会」の典型だと公言してきた。ところが・・・・

 (2)都知事に就任した小池百合子氏が挨拶のため川井しげお・都議会議長を訪ねた時の様子がテレビニュースなどで大きく報じられた。その際話題になったのが、議長が知事と並んで写真を撮られるのを拒んだことだ。
 議長にしてみれば都知事選挙の経緯からして腹の虫がおさまらず、一緒に写真に納まることなど到底できなかったのだろう。
 それはそれとして、川井議長が小池知事に意外な言葉を放った。
 「知事と議会は車の両輪です。一輪車にならないように」
 まさに片山教授の警鐘そのままの言葉だ。
 しかし、どうやら「両輪」の間の距離など念頭になさそうだ。その上で、知事だけが目立ち、議会をおいてけぼりにして知事だけで突っ走らないように、と釘を刺したのだろう。「一輪車」とは、知事が独走する姿をイメージしているに違いない。
 これをどう受け止めるべきか。
 素直に受け止めるべきだ。知事ばかりが目立つのはともかく、知事が独走するのはよくないし、まして暴走させてはならないからだ。議会と癒着し、一体化した「一輪車」もいけないが、議会と関係なく奔放に走り回る「一輪車」も困りものだ。どんなに支持率が高い知事であろうとも、権力の座にある以上は厳しいチェックを受けなければならない。
 そのチェックの役割を担うのが議会なのだから、議長は知事に対して「一輪車にならないように」頼むのではなく、「一輪車にさせないように、われわれが厳しくチェックする」と宣言すべきだった。それによってこそ知事と議会が本来の「車の両輪」になれるはずだった。
 9月定例都議会を見る限り、「車の両輪」の間柄になれているとは到底言えない。議会は、本心はともあれ表面上は小池知事の威力に圧倒され、竦んでいる。竦む理由はあるだろうが、それはそれとしてここは「是は是、非は非」の姿勢で知事に向き合うことが必要だ。知事に対して議会本来のチェック機能を果たすべきだ。それを怠れば、結果的には議長が危惧する「一輪車」に、知事はなりかねない。
 では、どんなチェックが必要であり、かつ、有効か。一般には知事の政治姿勢を質したり、気にくわない言動を追求したりということになりがちだが、そうではなくて、議会は知事が提出した議案を正面から堂々と点検すべきだ。

 (3)一例は、「東京都知事の給料等の特例に関する条例」だ。
 小池知事は、自分が知事になったら給与を半分にすると公約しており、それを実現するための条例案を都議会に提出し、それを議会は原案通り可決した。
 都議会のこの決定は、疑問だ。内容があまりにもいい加減で、それをそのまま通した都議会は無責任だ。
 第一点。知事の給与を半減しただけだと、どうなるか。知事の給与は月額145万6千円→72万8千円に半減する。これに地域手当及び期末手当を加えた年収では、2,896万円強から1,448万円強にやはり半減する。ところが、当然のことながら副知事以下の職員の給与はそのままなので、組織内の給与のバランスは大きく崩れることになる。
 都副知事の給与は月額118万円9千円だし、局長などでも知事の給与を上回る職員がいることになる。組織のトップに不祥事があったり、管理責任を問われることがあったりした時にはこんな逆転現象もあり得るが、そんなこともないのに逆転することは通常はあり得ない。
 逆転現象がみられる組織では、おそらく職員はトップに遠慮と気兼ねをするに違いないし、トップは「自分より高い給料をもらっているのに、これぐらいしか仕事ができあにのか」と、ことあるごとに不満を抱いてもおかしくない。そんな組織は決して尋常とは言えないし、少なくとも心を一つにして気持よく仕事をしようという環境にはほど遠い。
 第二点。条例によれば、2016年11月から2017年1月までの3ヶ月分の知事給与は半減どころかゼロにするとある。知事は3ヵ月間ただ働きをすることになる。どうしてこんな可笑しげなことをするかというと、知事に就任後の3ヵ月間は、この条例が成立していないので給与は全額支給されている。このままだとトータルの支給額がきっちり半減ということにならない。そこで11月からの3ヶ月分をゼロにすることで、辻褄合わせをしているのだ。
 そのこと自体が小役人的で不見識だが、それ以上に問題にすべきことがある。それは、条例が成立するまでの3ヵ月間の給与も、結果として半減されることだ。一般に認められていない「不利益遡及」を、この条例では敢えて冒した。こんな乱暴な立法が認められるなら、一般職員の給与でも、何らかの事情で給与条例が改正され、既に支給されている期間の給与を返納させることも可能になりかねない。
 こんないい加減な内容の条例を提出した知事の見識が問われなければならない。とはいえ、選挙時のいきさつから、いい加減なものでも出さなければならなかった事情は容易に想像できる。
 しかし、それがどうであれ、この条例を原案のまま可決した議会は、見識と責任を大いに問われるべきだ。こんなことでは先が思いやられる。既にして、川井議長が懸念する「一輪車」が独走しつつあるではないか。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「小池都政を「一輪車」にしてはならない ~日本を診る第85回~」(「世界」2016年12月号)
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 【参考】
【片山善博】【豊洲】市場問題 ~都議会のなすべきこと~
【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~
【片山善博】都議会改革は都庁改革 ~都の政策に責任を持つのは誰か~
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【片山善博】【豊洲】市場問題 ~都議会のなすべきこと~

2016年10月19日 | ●片山善博
 (1)豊洲問題【注】に関し、このところ都議会議員たちの活動がしばしばマスコミに取りあげられる。
 〈例1〉青果棟床下で都議が採取した水から、砒素が1リットル当たり0.004mg検出された。ただ、環境基準の0.01mgには達していない。
 〈例2〉青果棟と水産卸売場棟を視察した別の都議たちからは、「青果棟の水は透明、水産卸売場棟は青果棟より濁っていたが、どちらも臭いはしなかった」との所見が伝えられた。
 〈例3〉地下水からシアン化合物が検出されたとする都議たち、鉛が検出されたとする都議もいた。
 〈例4〉加工パッケージ棟と管理施設棟の2棟について都庁の職員から視察を断られたと不満を訴えている議員がいた。
 〈例5〉テレビ局の女性記者が地下空間からレポートしているものと思って見ていたら、実は現役の都議会議員だったということもあった。

 (2)マスコミは連日(1)のような話題を提供し、それを見た人の中には「都議会議員はよくやっている」と評価する人も少なくなかろう。
 たしかに一定の評価を与えてよいが、強い違和感を覚えさせるのも事実だ。
 違和感の理由1番目・・・・今頃になって熱心に豊洲市場問題に取り組み、大勢の都議が現場に足を運ぶぐらいなら、どうしてこんな大事に至る前に(まだ計画中の段階で)、もう少し本腰を入れなかったのか、という不満と不信だ。
  (a)豊洲の市場建設予定地(当時)では土壌汚染が取り沙汰され、その不安を解消するための安心材料として盛り土をすることにした。それを前提に、都議会は築地から豊洲への移転方針を了承し、関連予算も通してきたはずだ。ならば、その前提がその後の土木工事や建築工事において実際に守られているかどうかを確認しなければならないし、そうした活動こそ都民の代表(都議会)の責務だったのではないか。
  (b)都議会の、中央卸売市場問題を所管する委員会では、建物の建設予算案などを審議する過程で、施設の設計図と盛り土抗争とが平仄が合っているかどうかの点検ぐらいはしておくべきだった。議員たちはこの種のことには素人だというなら、建築の専門家などを委員会に呼んで意見を聴いたらいい。
  (c)建物の建築工事が始まる前に、決められたとおりに土壌汚染対策が実施されているかどうか、議員たちが現場に出向いて確かめてみるぐらいの熱意と執着心があっていい。ちゃんと盛り土がなされているかどうかぐらいのことは、いくら素人でも現場に行ってみればわかっただろうに。

 (3)小池百合子・知事の判断で、豊洲市場について「一度立ち止まって考える」ことにしたら、いつの間にか地下空間の存在が漏れ聞こえてきた。これをマスコミが大々的に報じ、日々都民の関心と不安が増してきた機を見計らうように、都議会議員たちは押っ取り刀で現場に押しかけてきた。
 このありさまを見ると、都議たちの最近の行動を前向きに評価するよりも、むしろこれまでの怠慢を批判せざるをえない。
 「巨額の投資をして、後戻りができなくなる前に、どうしてちゃんとチェックしなかったのか。あなた方がぼんやりしていた結果がこのざまではないか」
 ただ、今さらであっても、現に積極的に活動している議員たちは、まだましだ。議員の中には、無反応で発言も行動もしない人がたくさんいるからだ。都庁の役人に騙されていたのであれば、仮に移転推進派であったとしても、怒りを隠せないだろう。実はこっそり地下空間の存在を知らされていたのであれば、言うべき言葉が見当たらないかもしれない。
 無反応の議員たちの心境を尋ねてみる価値はある。

 (4)違和感の理由2番目・・・・この期に及んでも、議員は群れでしか行動しない(できない)ことだ。(1)の議員たちの行為は、いずれも彼らが属する群れ(会派)単位で行われている。
 本来であれば、所管の委員会に属する議員が党派を超えてまとまり、委員会活動として調査なり点検なりに乗り出すのが筋だ。それをしないで、それぞれの会派ごとにバラバラで活動しているのが現状だ。
 何故か。おそらく、少数会派の議員に尋ねれば、委員会単位で行動しようにも多数会派が決して同意しないので回は単位にならざるを得ない、と言うだろう。現実にはそうした事情や背景が都議会にあるのは事実だ。
 だが、このたびのような状況のもとで、もし少数会派が委員会としての調査を提案したとして、それを多数会派がにべもなく撥ねつけるとは思われない。そんなことをしたら、多数会派の議員たちも、都庁のそれこそ無責任なお役人たちと同じ穴の狢だとみなされ、来年の都議会議員選挙において大きなダメージを被ることが容易に想像できるからだ。

 (5)会派で活動している議員を見ると、彼らが一番気にしているのは会派として目立つこと、功名争いをしているのではないか。わが党ないしわが会派は都民本位の姿勢でいち早く対応している。マスコミに、それが目立つよう報じてもらいたい。・・・・そんな下心が、来年の都会議員選挙を控えた彼らの行動から透けて見える。
 より目立つように報じてもらうには絵にならなければならないから、報道陣を伴って地下空間に赴く。できればそこはおぞましい様相を呈していて、そこで採取した水に汚染物質が含まれていてほしい。マスコミの関心を引きつけるには、それが好都合だ。・・・・いささか不謹慎な想像だが、必ずしも荒唐無稽とはいえない。何故なら、例えば砒素の検出が環境基準を下回っていたとの分析結果を公表した会派の議員たちからは、いかにも無念そうな表情が窺われたからだ。マスコミはもっとセンセーショナルに報じてくれたのに。そんな複雑な思いが伝わってきた。
 別の会派の議員たちは、現地調査の際、全員お揃いの服を着ていた。防災服らしい。防災服を着用することで、危険な場所に入り込む気構えを示したかったのか。ここでも、真相解明の意思よりも、自分たちの姿を都民に見てもらいたいとのあざとあの方が印象的だった。

 (6)議員たちは、こうした会派ごとの調査結果をこれからどうするのか。今のところ、誰がどういう手法で分析したかが、必ずしも詳らかにされていない。バラバラの、それだけでは信用度の薄い結果を出したままでは無責任ではないか。それとも、あれは見せ場を作るパフォーマンスなのだから、それで用済みというわけか。

 (7)お役所の縦割りが批判されて久しいが、都庁もその悪弊に染まっていることは、豊洲問題からもわかってきた。その縦割りを正すのが議会の役割だが、都議会は都議会で縦割りならぬ「群れ割り」の弊に陥っている。
 災いを転じて福となす。この際、都議会は群れ(会派)でしか行動できない体質を改めてはどうか。二元代表制のもとで、会派の功名心など脇に置いて、議会としての正姿勢で知事や都庁職員に向き合うのだ。
 縦割りの都庁に群れ割りの都議会。こんな機能不全の都政を大きく変えるよう、都議会議員には奮起してほしい。木に縁って魚を求むるようなものだとは知りつつも、敢えて声を大にして言っておきたい。

 【注】
【豊洲】都庁は伏魔殿 ~小池百合子・都知事の力量~
【豊洲】新市場、解析データで浮かび上がった謎 ~盛り土による地盤沈下にズレ~
【豊洲】は「空洞問題」で終わった ~当事者との合意形成が欠如~
【豊洲】市場では「安全宣言」を出せない ~土壌汚染対策法~
【豊洲】市場移転:宇都宮健児が小池百合子・都知事の決断を分析
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~
【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~
【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~

□片山善博(慶應義塾大学教授)「豊洲市場問題--都議会のなすべきこと ~日本を診る第84回~」(「世界」2016年11月号)
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 【参考】
【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~
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【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~

2016年10月02日 | ●片山善博
 
 <福沢諭吉の幼少期から老後までの経歴を概略した自伝には、当時の様々な政治的事件や社会的事象が取り上げられ、それに対する彼の所見が示されている。それを見ると、150年前も今も日本の政治や役所の体質は変わることなく、そこに潜む病弊もまた同じであることを知り、苦笑させられる。
 蘭学修行に出たいとの願書に、藩の重臣は「前例がない」からダメという。でも「砲術修行と書いたら、済む」と教わり、バカバカしいがそう書いた。
 建前と体裁に拘るお役所の習性は、今に始まったことではなさそうだ。幕府財政が困窮している中で公金の浪費に対する怒りもヒシヒシと伝わってくる。一つ一つが、まるで最近の事象への批評のようで、実に今日的で興味深い。>

□片山善博(慶應義塾大学教授)「今も変わらぬ社会の病理 ~名著:福翁自伝~」(「週刊ダイヤモンド」2016年10月8日号)
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【片山善博】都議会改革は都庁改革 ~都の政策に責任を持つのは誰か~

2016年09月17日 | ●片山善博
 (1)先の東京都知事選挙は、小池百合子氏の圧勝に終わった。その小池氏が選挙期間中に主張していたことの一つが都議会改革だ。
 都政はどなたがどこでどのように決めているのかさっぱりわからないとも訴えていた。これは都議会自民党会派内にある「政策推進総本部」を念頭においた発言だろう。都の主要政策については、都庁各局があらかじめ「政策推進総本部」に持ち込み、そこで了解が得られてから具体的に予算案に盛り込んだり条例案の作成に着手したりするのだという。
 予算案・条例案は知事が議会に提案するのだが、この独特の政策形成プロセスにおいては往々にして提案者(知事)より先に都議会自民党議員が内容を把握し、各局との協議を通じて行われる修正や調整を経て内容が固まるのだという。

 (2)二元代表制を採る日本の地方自治制度のもとでは、首長(知事・市町村長)が責任を持って議案を作成し、それを議会に提案するのが本来のやり方だ。議案の説明責任は当然首長が果たさなければならない。ところが、都の仕組みでは、知事の知らないうちに各局と都議会自民党との間で既に議案の内容がセットされているのだから、知事はまっとうな説明責任を果たしようがない。
 一方、実質的に議案の内容を決めた都議会自民党は説明責任を果たすことはない。形式的には議案は知事が提案したものであり、都議会自民党に属する議員たちは他の会派の議員と同じく、形式上は議案を知事から受け取る立場でしかないからだ。実際には議案の内容に大きく関わっていても、答弁や説明を求められることはない。
 都の政策についていったい誰が責任を持つのか。都政はどなたがどこでどのように決めているのかわからないとの小池氏の批判は、おそらくこんな事情を背景にして出てきたはずだ。たしかに都議会改革は急務だといってよい。

 (3)日本の地方自治制度では、例えば予算案の編成権は知事のみに属していて、都議会にはない。ところが、その編成権の一部(しかも重要な一部)が事実上都議会自民党会派に移ってしまっている。条例案も都民にとって必要なものを知事が責任を持って提案すればいいのに、事前に都議会自民党の了承を得られたものしか提案しない。
 こんな歪な仕組みにしてしまったのは誰の責任か。都議会自民党だけの責任かといえば、必ずしもそうではない。むしろ執行部側にこそ原因の多くがある。
 その最大の原因は、政策形成における都庁の①無謬主義と②事なかれ主義だ。
 ①を多少誇張していえば、都庁で作成した予算案や条例案は完璧であって、修正を加えられる箇所などあってはならない。ましていわんや、否決されることなど決してないという自負だ。
 ②とは、公の場での面倒な論争を避けるために、それが出ないような環境を整えておこうとする心理だ。
 議会との関係でこの二つの要素を満たすには、議案提出の前にそれらが無傷で可決される段取りを整えておかなければならない。それには、あらかじめ都議会多数派との間で話をつけておくのが最も合理的かつ手っ取り早い。こうした文脈の中で、半ば必然的にできあがったのが都議会自民党会派内の「政策推進総本部」なのだろう。
 このやり方だと、都議会のすべての会派に話をつけるわけではないので、議案に公然と反対する会派も出てくる。しかし、いくら少数派が反対しても、多数派がそれを蹴散らかしてくれるので、議案処理には何も心配はない。議場で厳しい質問をぶつけられることがあっても、それが議案の処理結果に影響を及ぼすことはないので、慇懃な答弁をしておけばやり過ごせる。

 (4)(3)のやり方は東京都に限らず、全国の多くの自治体に共通して見られる光景だ。そこでは議案を議会がよく吟味した上で修正したり、否決したりすることはない。議案をめぐってさしたる議論が展開されることもない。万事を予定調和的に処理にするのがもっぱらだ。
 つつがなく議案が通ることはむしろ望ましいという考えを持つ自治体関係者は多い。
 ただ、この根回しによる弊害は大きい。議会の多数会派と密室でこそこそと相談してものごとを決める。そこでは一部の声の大きい議員の利害が反映する可能性を排除できないが、それを外から見ると、それこそ「どなたがどこでどのように決めているのかわからない」ことにほかならない。

 (5)この際東京都だけでなく全国の自治体でも、根回しによる事前調整はほどほどにして、執行部が責任を持ち、主体的に議案を作成し、正々堂々と議会に提出する方式に切り替えてはどうか。
 それだと議案が一本も通らないと心配する向きもあるが、決してそんなことはない。議案の内容に欠陥があるのならともかく、もし議会が理由なく議案に反対するようなことがあれば、議会自身の見識が疑われるし、その責任が問われよう。
 案ずるより産むが易し。片山善博・慶大教授は、そのことをかつて鳥取県政で実践した。

 (6)東京都の情報公開度は決して高くない。桝添要一・前知事の外国出張旅費支出に関し、情報公開請求に応じて都側が提出した資料ではやたら黒塗りの部分が目立っていた。しかも、その該当箇所を黒塗り=不開示とする理由はどう見てもなさそうだった。都にもある情報公開条例の適正な運用に欠けているのはではないか。こういうことだから法外な外国出張旅費などのムダ遣いが発生しているのではないか。
 情報公開を徹底し、透明性を高めることは、組織が病を治す上でとても大きな力を発揮する。都知事ないし都庁と都議会との関係を正常化する上で最も効果的なのは、都の予算編成過程の透明化だ。
 これまでの予算編成では、その概要が世間に伝わるのは、予算案ができあがって公表される時期でしかない。それまでは密室の編成作業だ。その密室の作業の一環として「政策推進総本部」などとの調整が秘密裏に行われている。

 (7)(6)のやり方を改め、最初の各局の予算要求の段階から内容を都のホームページで公開するのだ。その後の財政当局での査定内容も、最終的な知事査定結果も、すべて同じように公開する。こうすれば、それぞれの段階の責任者(各局の局長、財務局の部長や局長、知事)が、それぞれの時点での内容に説明責任を果たすことになる。
 このプロセスのどこかの段階で、例えば議員からの口利きや横やりが入れば、それを受け入れた幹部が苦しい説明をせざるを得なくなる。これは口利きや横やりに対する抑止力になり得る。
 では、議員は予算案に何も注文を付けられないのかというと、そんなことはない。議会における予算審議の過程で、それぞれ意見を言ったり、修正の必要性を論じたりすればいい。それには議員が公の場で説明責任を果たさなければならないが、それはごく当たり前のことだ。
 これは片山教授がかつて鳥取県政で実践したことだ。これが県執行部と県議会との関係の正常化に大きな役割を果たしたし、予算のムダを摘出する上でも実に有効だった。今後の都政改革に参考になるのではないか。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「都議会改革は都庁改革 ~日本を診る第83回~」(「世界」2016年10月号)
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