語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
Ⅱ 戦争に突き進んでいく安倍政権
(1)日本に安保法制改正をやらせる米国
 安倍政権がどんどん戦争体制に入っていく。2015年5月からの安保法制の整備で、
  (a)武器輸出緩和
  (b)ペルシャ湾で機雷除去、ホルムズ海峡にマインスゥイーパー(掃海艇)派遣準備
  (c)集団的自衛権決議でえPKO(国連平和維持活動)を拡大
 デイヴィッド・アッシャー・新アメリカ国防安全保障センター・シニアフェローがいちばん動き回っている。日本の政治家にもご進講して回っている。おそらくこのデイヴィッド・アッシャーが、リチャード・アーミテージ・元米国務副長官や、マイケル;・グリーン・戦略国際問題研究所副理事長(政治学者)の後継ぎ、次の世代の人間だ。
 あとは、マイケル・オースリン・アメリカン・エンタープライズ政策研究所日本部長だ。そろそろリチャード・アーミテージやマイケル;・グリーンは交代するだろう。
 リチャード・アーミテージもマイケル;・グリーンも下っ端だ。なぜそんな三下みたいな人たちしか出てこないのか。
 日本がワシントンの政治から相手にされていないということだ。アーミテージやグリーン程度で日本の政治家たちを十分に操れる、と見ている。彼らは非公式の存在で、正式の肩書きがない。CIAの特殊部隊(スペシャル・フォーシズ)の責任者みたいで、裏側の役職があるらしい。この程度の連中に日本国が動かされていると思うと情けない。
 昔はソ連も同じだった。イワン・コワレンコ・元ソ連共産党国際部日本課長のような、ソ連共産党の中央委員でもない人物が交渉に来ていた。コワレンコは中央委員候補ですらなかった。
 そうした一介の日本課長みたいな役職の人間に日本は操られているわけだ。何かそういう三下みたいな人間に操られやすい体質があるのか。
 日本は、米国からもまともに相手にされず、ナメられているみっともない国だ。互角の交渉になってない。米国にいいように操られている。
 金融・経済面では、フレッド・バーグステン・国際経済ピーターソン研究所長やグレン・ハバード・コロンビア大学ビジネススクール校長が、今でも竹中平蔵や伊藤隆敏・東大名誉教授(インフレターゲット理論の提唱者)を操っている。
 これからは、翁長雄志・沖縄県知事のほうがきちんとした人に会えるかもしれない。現に、又吉進・外務省参与/前沖縄県知事公室長あたりでも、米国のそこそこのレベルの高官と会えていた。きちんと「ノー」が言える人のほうが会える。
 沖縄は、舌禍事件を起こしたケヴィン・メア・元米国務省東アジア・太平洋局日本部長という悪い男を叩き出した。あれは前代未聞だった。
 ケヴィン・メアが叩き出される元になった記事(2011年3月8日付け)を書いた人は、共同通信の記者だった。ただし、基本的には琉球新報と沖縄タイムスの力だ。
 そのケヴィン・メアがまた日本に戻ってきているようだ。こそこそと目立たないように動いている。今は民間コンサルティング会社の社員の肩書きだ。しかし、大使館の情報部に出入りして日本の右翼メディアを扇動する係をやっている。
 米国大使館の中では、ケヴィン・メアの派閥と、オバマ直系のダニエル・ラッセル・米東アジア・太平洋担当国務次官補(カート・キャンベルの後任)の派閥の対立がある。
 ダニエル・ラッセルは北朝鮮を軟化させる交渉をやっている。韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権ともつながって、何とか朝鮮半島の非核化を推進している。このオバマ直系の人たちとメア系が争っているらしい。

(2)「行動する保守」の排外主義的言説を放置するな
 このケヴィン・メアが、産経右翼や読売新聞系やらを、うまい具合にけしかけて、出版業界にまで影響を与えている。
 百田尚樹『永遠の0』が2014年にベストセラーになった。あの本は2006年に出版された古い本なのに、2012年ぐらいから急にベストセラーになった。安倍政権の後押しもあって、計画的に売ったとしか思われない。
 また、韓国叩きの一連の嫌韓本が出た。中国は強いから韓国叩きに特化したようだ。あれもおかしな動きだった。しかし、だんだんと下火になった。
 在特会(在日特権を許さない市民の会)が「行動する保守」とかいって暴れるのも、一種のバンダリズム(文化破壊活動)とアナーキズムが合わさった感じだ。民主主義自体が飽き飽きだ、という感じになって、雰囲気としては非常にアナーキスティックになっている。
 彼ら日本の右翼たちは、世界基準(ワールド・ヴァリューズ)での移民排斥の極右集団と言えるかどうか。彼らは一つの勢力にまとまっているわけではない。今のところは実体のない、ふわふわした存在だ。
 在特会のような排外主義的言説を放置しておくと、国際社会において、日本は文明国の人権基準を満たしてない、という誤解を招きかねない。中国、韓国、北朝鮮、ロシアに対して付け込む隙を与えかねない。
 日本人が自国を愛し、愛国的な言説を展開することと、特定の民族や人種にゴキブリ、ゴミというようなレッテルを貼り、「死ね」「日本から出て行け」という言説を唱えることとは、本質的に異なる。
 警視庁は、2014年版「治安の回顧と展望」において、在特会を「極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右翼系市民グループ」の一つとして団体名を明記して動向を取り上げている。警察が在特会を警戒する姿勢を示したことは、外交的にも意味があった。
 ところが、警察は、在特会とカウンターデモが鉢合わせになって一触即発状態になると、在特会のほうに好意的に介入した。あれは警察官の中に植え付けられている本性、右翼的体質だ。体制保守というより、ちょっと暴力的右翼体質というのが警察官たちの中にもあるのだろう。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「戦争に突き進んでいく安倍政権」
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 【参考】
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-11-27 09:05:24
そりゃそうやろ
あんなん糞みたいなデモでも許可とってやってたら、妨害しようとする方を抑えるにきまってるしな


てかカウンターデモのCRACも思想のベクトルが違うだけで組織の程度は在特並だからな
そんなんが正論を盾にするなおさら質が悪い
最近じゃ、先鋭化がすすんで人権のためにはなにやってもいい的な流れになってきて言動はリベラル側なのに、過激な行動を諫める人間にまでネトウヨだと攻撃する

人権ファシズムに片足つっこんできた

でも本人や支持者は在特といっしょで正義だと思いこんでるから周りが忠告しても聞かねえんだよなぁ


まあいいけど

パヨパヨさんといい新潟新報の報道部長、福岡教育大の人、CRAC幹部のデザイナー
そこそこ社会的地位の高く、いい年した人間が反ヘイトを盾にものすごい下劣なことばで罵倒してるだからなぁ…三つ子の魂とはよくいった


あの人は本気で社会をなんとかしたいと思ってんのかねぇ…
暴れて鬱憤はらしたいだけにしか見えんわ
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