語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

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【佐藤優】「非合理な不安感」 ~対テロ(15)~

2018年04月30日 | ●佐藤優
 <ガノール氏は、テロリズムによって引き起こされる人間の心理を「合理的な恐怖感」と「非合理な不安感」に分節化する。

  〈テロリズムによって生じる恐怖感は、次のふたつのカテゴリーに分類することができる。「合理的な恐怖感」と「非合理な不安感」である。合理的な恐怖感とは要するに、テロ攻撃で身体や財産が損傷されるかもしれないという推測のことである。これは、脅威の程度とそれが起きる見込みに釣り合う恐怖である。頻繁なテロ攻撃にさらされる社会においては、合理的な恐怖感は自然な現象である。この現象は消去することはできないし、またその必要もない。なぜなら、テロ攻撃が起きそうだという国民の意識を高めるという前向きの効果を持つからだ。この意識は将来の攻撃を阻止する際に治安機関の助けになる。しかし、合理的な恐怖感の水準を超えるのが「非合理な不安感」である。これはテロリズムによる実際の脅威の程度とは関係がないものであり、テロリズムという現象の犠牲になる可能性とは釣り合わない。
 非合理な不安感はテロ攻撃の当面の目標であり、現代のテロ戦略の成否を決める必要条件である。不安感は、攻撃にさらされる社会に住む個人を麻痺させ、社会への貢献能力を奪い、日常生活の営みを崩壊させる。またこの不安感はテロの標的となった社会の中で重視されている事柄を、国家安全保障に対する関心から、その社会の個々人の身の安全と家族の安全に対する危惧へと変える。テロリズムは、テロ攻撃される社会における個人に、国益や価値観、国家目標の重要性についての評価と信念を変えさせ、基本的な関心事項を自分自身と家族の福利に置き換えさせることを目的としている。〉(本書305~306頁) 

 個人が「非合理な不安感」に襲われると、テロリストとの戦いに民主主義国家は敗北する。テロリストの心理工作をガノール氏は「攻撃の個人化」と呼ぶ。

  〈テロ攻撃による不安感を生む効果的な方法のひとつに「攻撃の個人化」がある。この現象はテロ攻撃が街の中心部の混雑した場所、たとえば商業センター、繁華街、映画館、観光スポットなどで起きるたびに見られる。その時、テロの標的となっている人間集団の一員の心をよぎるのは、「私は1、2週間前にそこにいた」とか「明日そこに行くつもりだったのに」とか「妻がすぐそばで働いている」とか「叔母がその道沿いに住んでいる」といった考えだ。テロ攻撃との個人的つながりを探すのはごく自然な反応である。そして、まさにこれがテロ組織の狙うところなのだ。
  「個人化」されることによってテロ攻撃は、直接被害を受けなかった市民に対しても、「今回のテロでお前や身近の誰かが怪我しなかったのは単なる偶然でしかない。次はお前や、お前が大切にしている誰かの番かもしれない」という明確なメッセージとなる。しかし、実際には統計上、死ぬ確率は、他の死因に比べてはるかに低く、たとえば世界のどこかの大通りを横断している時に走行中の車に轢かれる可能性は、同じ道でテロ攻撃に遭う可能性よりも数倍高い。にもかかわらず、テロ攻撃が個人化されることによって、強い恐怖感が人々の心に生じるのである。〉(本書308頁)>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(15)「非合理な不安感」」を引用

 【参考】
【佐藤優】マスメディアの自主規制 ~対テロ(14)~
【佐藤優】司法特別手続きと行政処分の拡大 ~対テロ(13)~
【佐藤優】尋問における「身体的圧力」 ~対テロ(12)~
【佐藤優】ゲリラ戦に関するハルカビの理論 ~対テロ(11)~
【佐藤優】壁と「鉄の屋根」というミサイル迎撃システム ~対テロ(10)~
【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【本】世界中で食べられるトマト缶 ~消費者が知らない驚愕の事実~

2018年04月29日 | 批評・思想
★ジャン=バティスト・マレ(田中裕子・訳)『トマト缶の黒い真実』(太田出版 1,900円)

 (1)生野菜の価格が高騰する昨今、料理のために「トマト缶」のお世話になる人も多いかもしれない。
 しかし、その中身はよく見かけるように本当にイタリア産のものなのだろうか?
 実は、加工用トマトの輸出国トップは中国で、生産国としても米国に次ぐ世界2位の座にある。今や、トマトも、中国を抜きにしては語れないのである。

 (2)『トマト缶の黒い真実』は、著者が中国からイタリア、米国やアフリカの地を歩き回って、トマト加工産業の不透明な実態に迫るルポルタージュだ。
 本書で指摘されるように「ほのぼのとしたイメージ」に包まれているトマトは、実際には過去50年間で生産量が60倍に増え、それとともにグローバルな貿易の波に洗われて、巨万の富を生むようになった農産品なのだ。

 (3)考えてみれば、トマトは資本主義と親和的だ。
 南米を原産地とするトマトは、15世紀から始まった大航海時代に観賞用として欧州大陸へと伝わった。食用となったのは18世紀半ばの産業革命を経てから後のことで、世界市場の発展とともに広まることになった。
 大々的なトマト加工で財を成したのは、1869年創業の米ハインツである。同社は自動車メーカーの米フォード・モーターに先駆けて自動化や標準化、労働管理を進めた由。

 (4)現在、トマトペーストや水煮缶の中身は、米国資本を使って中国の新疆ウイグル自治区で収穫・加工されたトマトが、イタリアに輸出され、イタリアで同国産のラベルを張られてアフリカに輸出される・・・・といった“現代版三角貿易”の賜物だったりする。
 特に濃縮トマトは、簡単に水やでんぷんを加えることができるため、利ざやの大きい商品だ。著者は、国際見本市でも無添加の濃縮トマトを扱う中国企業を見かけることはなかった、という。
 こうした中国の生産者とイタリアのアグロ(農業)マフィアが結託し、アフリカ市場へ進出した。
 そして、例えばセネガルでは濃縮トマトを自国だけで賄っていたのが、外国企業の工場と販売網に追いやられ、結果として労働者は出稼ぎとなってイタリアでマフィアに搾取されるようになった。その賃金は、中国のトマト収穫労働者と同じ程度でしかない。
 こうしてトマトから生み出されるお金とトマトを収穫する労働力によって、世界を駆け巡った加工トマトが私たちの日常の食卓へと運ばれてくるのだ。

□吉田徹(北海道大学大学院法学研究科教授)「世界中で食べられるトマト缶/消費者が知らない驚愕の事実  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2018年4月28日-5月5日号)

 【参考】
【本】移民政策の得失を冷静に分析 ~キューバ移民の第一線学者~
【本】戦前から日本は変わらず ~1940年体制~
【本】いかに“米中戦争”を避けるか ~歴史から国際政治を類推する~
【本】つげ義春は文章も面白い ~『つげ義春とぼく』~
【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【佐藤優】マスメディアの自主規制 ~対テロ(14)~

2018年04月29日 | ●佐藤優
 <ガノール氏は、テロ対策において、マスメディアの自己規制が死活的に重要と考えている。

  〈「メディアは市民の義務を守れ」という呼びかけは、ワイマンのステートメントに示されている。それによると市民は、可能な限り正確かつ偽りのない最新情報を得る権利がある。つまり、市民の「知る権利」である。それと並んで、市民は「知らない権利」を持つ。それは被疑者のプライバシーの権利であり、メディアの報道によって、テロ犠牲者の個人的かつ内輪の事情がさらされてはならないという権利である。市民の安全にかかわる治安上の情報を守る権利も含まれる。〉(本書290頁) 

 それでは「知る権利」と「知らない権利」の間の調整はどのようにして図るのだろうか。ガノール氏は、9・11米国同時多発テロの経験を基にしてこう主張する。

  〈ジャーナリストが、ふたつのバランスに配慮する必要に迫られたのが、2001年9月11日、アメリカで起きた同時多発テロだった。悲惨な光景を撮影する取材チームは、カメラに小さな星条旗をつけ、中継車には星条旗や行方不明者の写真を貼った。こういった行為は、職業上の責務と市民としての義務を認識し、それを守ろうとするアメリカ人ジャーナリストたちの姿勢を明確に示していた。
  1997年、イスラエルで「シェファイイム会議」と称する会合が開かれた。ヘルツリヤ学際センターの国際カウンター・テロリズム政策研究所が主催した専門家会議で、イスラエルのメディア関係者(報道記者と編集者)とカウンター・テロリズムの専門家が出席した。イスラエルにおけるテロ攻撃報道がテーマで、参加者たちはふたつの責務の適切なバランスのとり方について議論した(会議のサマリーは付録資料A参照)。参加者たちが出した勧告には、主な提案がふたつある。テロ犠牲者のクローズアップ写真や映像報道を避けることと、それらを繰り返し報道するのを極力制限することである。
  このふたつの提案は、ジャーナリストとしての職業上の責務と市民としての義務のデリケートなバランスを維持することを可能にする。〉(本書290頁) 

 さらにマスメディアにも自己規制が向けられる。特にテロ組織が提供する情報の扱いや会見についてだ。ガノール氏は、マスメディア関係者に以下の対応を求める。

  〈時にはテロ組織がメディアに直接アピールして、それを自己の目的に利用するケースがある。人質をとって立てこもって何かを強要している最中に、メディアのインタビューを要求することがある。あるいは放送局を占拠し、自分たちのメッセージを流すよう強制することもある。さらに攻撃前にメディアを現場に呼び寄せることもある。その場合、テロ組織はメディアが必ず現場に急行すると考えているわけではないが、事件の事前取材には、それなりに利用価値があることを彼らは知っている。
  1980年代末期、ユダヤ・サマリア(西岸地区)とガザ回廊でパレスチナ人のインティファーダが起きていた頃、このようなケースが何度かあった。テロ組織の代表から、「いつどこで」とジャーナリストに連絡がくる。しかし、呼びつける理由は明かさない。行ってみてはじめて、たとえばイスラエルの内通者の処刑であることがわかり、その場面を取材する破目になったりした。
  現場にメディアが到着すること自体が、作戦開始の合図として使われたり、殺害の引き金になったりすることもある。メディアがその場にいなければ、暴力は起きなかったかもしれない。メディアは意図せずとも、暴力とテロを誘発させたり、それに加担してしまったりすることがあるのだ。
  前述したように、プロとしての債務と倫理問題のジレンマは、メディアの活動につきものであるが、テロリストの呼びかけに応じる問題にはジレンマは生じない。あいまいさを排し、非妥協の姿勢を貫かねばならない。〉(本書297頁)

 このようなマスメディアの自己規制は、イスラエルだけでなく、アメリカ、イギリス、ロシアなどでも行われている。ガノール氏は、テロリストの動機が政治目標の達成であることに鑑みれば、マスメディアが国民が、自由で民主的な社会を守るために必要と考えている。ガノール氏の見解は、以下に端的に示されている。

  〈現代のテロリズムは、政治的な目標が動機となっている点で通常の犯罪行為とは異なっている。テロリストが実行する行為--殺人、破壊、脅迫、放火など--は一般的な犯罪行為のそれと同じかもしれないが、これらはすべて彼らにとって、より幅広いイデオロギー的、社会的、経済的、国家的、または宗教的な目標を達成する手段でしかない。
  テロリストは最終的な政治目標を達成するにあたって非常に重要な中間段階を通過する--すなわち、標的にした共同体の個々人に、自分が次の攻撃で犠牲になってもおかしくないという身のすくむような恐怖感を徐々に染み込ませるのである。テロリズムは安心感を蝕み、日々の生活を混乱させ、標的とする国家の機能を害するように作用する。この戦略の目標は、失われた安心感を取り戻したいという世論の圧力を政策決定者にかけて、テロリストの要求を受け入れさせることである。こうして標的とされた一般市民は、テロリストが自らの政治的利益を増大させる道具と化すのだ。〉(本書302頁)>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(14)マスメディアの自主規制」を引用

 【参考】
【佐藤優】司法特別手続きと行政処分の拡大 ~対テロ(13)~
【佐藤優】尋問における「身体的圧力」 ~対テロ(12)~
【佐藤優】ゲリラ戦に関するハルカビの理論 ~対テロ(11)~
【佐藤優】壁と「鉄の屋根」というミサイル迎撃システム ~対テロ(10)~
【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【佐藤優】司法特別手続きと行政処分の拡大 ~対テロ(13)~

2018年04月28日 | ●佐藤優
 <さらにテロ関連の裁判については、「特別手続き」が取られる必要があるとガノール氏は考える。

  〈対テロ立法は、対テロ手段の法的かつ司法上の基礎を築くものであり、テロリストを処罰することは、法を執行し、テロ活動で有罪判決を受けた者を処罰することであるが、両者の間にはテロリズムへの関与が疑われる者を起訴するという厄介な問題がある。多くの国々(イギリス、スペイン、イタリアその他)では、その時々に法律が制定されてきており、特別手続きを設定したり、治安機関と検事がテロリストまたはテロ教唆被疑者を裁判に付しやすくしたりしてきた。こういった特別手続きは、容疑者が逮捕される瞬間から法廷で有罪を宣告されるまでの、起訴のあらゆる段階に関連するものであり、次の諸要素とも関係する。
  ●勾留期間・・・・特別手続きによれば、裁判所の延長許可を得る必要なしにテロの被疑者を勾留できる期間は、通常の刑事事件で認められている期間より長いのが一般的である。
  ●証拠の許容性・・・・特別手続きは、適正な手続きに従って行われなかった盗聴、監視、捜索など、法律によって許可されていない方法で入手したテロ関連の罪証を提出できるようにする傾向にある。
  ●特権・・・・公開裁判の原則とは対照的に、テロ容疑者の裁判中では一定の場合に特権が発動される。特権は裁判官に提出された証拠に関して発動されることが多く、したがって被告人と弁護人はこれを見ることが許されない。その他の事例では、被疑者が勾留されている事実と裁判が行われている事実を公開することに報道禁止令が課される。
  ●テロリズムに関与した疑いで勾留されている者の権利・・・・テロ容疑者はほかの疑いで勾留されている者に認められる基本的権利、たとえば弁護士と接見する権利、電話で会話する権利などが否定されることがある。
  ●法的手続き・・・・特定の国においてはテロリストに対して特別な法的手続きが実施されている。たとえば、重大犯罪の場合に陪審員団の前で審問が行われることが一般的である国々が、こうした慣行から逸脱する決定を行い、裁判官の前でテロリストを裁く決定がなされることもある。〉(本書248~249頁) 

 司法手続きの簡略化に加え、行政処分も拡大される。

  〈行政処分では以下が可能となる。すなわち、起訴手続きの短縮、刑事法の規範内に分類されない懲罰手段の行使、多数の活動家に対する広範な同時処罰、容疑者の逮捕時および起訴時における情報源の秘匿--などである。したがって、行政処分にともなう問題は、通常の刑事裁判手続きに適合しない処罰(訳注:日本における行政処分では「処分」という語が当てられるので、以下「処分」)手続きが存在する点にある。被処分者は裁判官の前に出されることなく、軍の上級指揮官またはその指名による行政命令によって処分される。さらに、通常の刑事裁判における被告人と同程度の自己弁護の機会が与えられることもない。場合によっては、被処分者が処分の内容にまったく通じておらず、自分が何によって処分を受けるのか正確に知らないこともある。それを知っていたとしても、自己に対する証拠を確かめることがほとんどの場合できず、そのために、自己弁護も嫌疑に対する反証もしにくくなる。〉(本書265頁) 

 テロ対策との口実で、行政権が肥大し、国民の権利と自由が制限されるリスクが今後、欧米や日本でも高まって行くであろう。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「 (13)司法特別手続きと行政処分の拡大
」を引用

 【参考】
【佐藤優】尋問における「身体的圧力」 ~対テロ(12)~
【佐藤優】ゲリラ戦に関するハルカビの理論 ~対テロ(11)~
【佐藤優】壁と「鉄の屋根」というミサイル迎撃システム ~対テロ(10)~
【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【保健】高血糖で認知機能が低下 ~健康的な生活が脳を守る~

2018年04月28日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)高血糖が血管の内側を傷つけ「血管の障害」を引き起こすことはよく知られている。
 血管の内側は血液が流れやすいように「内皮細胞」でいわばコーティングされているのだが、高血糖に曝されるとコーティングが剥がれ、機能が損なわれてしまう。
 その結果、末梢血管が詰まり手足が痺れるほか、大きな動脈が詰まれば心血管疾患を引き起こす。血管の障害は当然、全身に及ぶため、脳血管も影響を免れない。

 (2)2018年1月に欧州糖尿病学会誌に報告された調査によると、過去数カ月の血糖の状態を反映する「HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)」の値が増加するほど、認知機能が低下することが示されている。
 同調査は2002年以降、2年ごとに50歳以上の英国人を対象に、生活習慣と健康との関連を調査しているもの。今回は対象者から5,189人(平均年齢65.6歳、女性55.1%)を抽出し、04~11年の計5回分のデータを解析。
 教育の程度や婚姻状況、喫煙・飲酒の状況、血糖以外の血圧や脂質の検査値などの影響を調整した後、HbA1cと認知機能との関連を調べた。
 その結果、HbA1cが増すごとに、認知機能テストの総合スコアが低下。記憶や見当識、実行機能──目的を持った行動を自律的に行う機能を測る個別スコアも、HbA1cが増加するごとに直線的に低下することが示されたのだ。
 実際、登録時点で糖尿病や糖尿病予備群と診断されていた対象者は、健康だった対象者と比較し、認知機能テストと実行機能テストのスコアが有意に低下していた。

 (3)日本で半世紀以上続く疫学研究「久山町研究」でも、糖尿病の人は健康な人と比較し、アルツハイマー型認知症や血管性の認知症の発症リスクがおよそ2倍になることが報告されている。
 つまるところ糖尿病は「血管病」であり、栄養と酸素を運ぶ交通網が寸断されれば、格段に「大食らい」の脳が機能障害を起こすのは当然なのだ。
 健康診断前に1食抜いてもHbA1cの数値はごまかせない。数値が芳しくなかった方は、おとなしく食改善と運動に取り組むことだ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「高血糖で認知機能が低下/健康的な生活が脳を守る ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.393~」(「週刊ダイヤモンド」2018年4月7日号)
 

 【参考】
【保健】心筋梗塞の自覚症状は? ~吐き気や腹痛、男女差も~
【保健】世界各国のパンを比較 ~意外に塩分が高いと判明~
【保健】片頭痛持ちは脳・心血管に注意 ~特に診断後の数年間は節制を要す~
【保健】高い平熱は1年死亡リスクと関連? ~男性も基礎体温を測ってみよう~
【保健】急性虫垂炎の治療は手術か、薬か? ~外科医が選ぶのは~
【保健】シリコンバレーの贖罪? ~元役員らがネット依存警鐘団体~
【保健】花粉症シーズン始まる ~今年の飛散量は多いか、少ないか~
【保健】トマト2個で肺機能を守る ~「前」喫煙者にも効果~
【保健】ナッツを食べて心疾患を予防 ~1日30グラムのお手軽健康法~
【保健】ついに薬もIoT ~胃液センサーで服薬管理~
【保健】犬を飼うと長生きする ~特に、一人暮らしにお勧め~
【保健】何年禁煙したら帳消しになるか ~女性は11年、男性は~
【保健】食後の血糖値スパイク ~カーボ・ラストでまったり改善~
【保健】米砂糖業界の苦々しいお話 ~不利なデータを半世紀も隠蔽?~
【保健】対人過敏は早く老ける? ~遺伝子レベルに影響~
【保健】慢性便秘に「考える人」 ~全国1,000万人のお悩みに~
【保健】ストレスでがんリスク上昇 ~ただし、男性に限る~
【保健】死亡率が最大5倍超に ~がん代替療法の選択で~
【保健】認知症と性格の関係 ~責任感は予防的に働く~
【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
【保健】ビタミンB群の過剰摂取にご注意 ~男性の肺癌発症リスクが上昇~
【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~
【保健】鬱に効くボルダリング ~悲観的な自動思考を解消~
【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~
【保健】塩分過剰で空腹に ~高血圧どころかメタボに~
【保健】満腹より栄養素に目を向けて ~収入が低い世帯は主食頼み~
【保健】だるいときほど階段昇降を ~カフェインより効果的~
【保健】成人ADHDの予備診断 ~六つの質問でクリーニング~
【保健】“ベンゾ系薬剤”に注意 ~常用量でも薬物依存を形成~
【保健】ギャンブル依存症ってなに? ~最新の定義は「プロセス依存」~
【保健】グルテンフリー食の功罪 ~結局、2型糖尿病に?~
【保健】アジア系2型糖尿病でも全がん死リスクが上昇
【保健】「男の更年期」改善効果に疑問符 ~テストステロン補充療法~
【保健】狩猟・採集民族のチマネの人々に学ぶ ~現代的な生活は健康リスク~
【保健】玄米でカロリー消費! ~30分程度の運動に匹敵~
【保健】1日あたり0.5合程度が上限 ~認知症を予防する飲酒量~
【保健】電子たばこで禁煙補助? ~英米で見解の相違~
【保健】二つの睡眠時無呼吸症候群 ~閉塞性か中枢性かで違い~
【保健】不安やうつはがんの初期症状? ~結腸・直腸、膵臓などで関連~
【保健】赤身肉は魚や鶏肉に置き換えて ~大腸憩室炎の発症リスクを軽減~
【保健】学会監修の防災セットが限定発売 ~心臓を守るリストも~
【保健】前立腺癌の手術で優れているのは ~ダ・ヴィンチvs人の手~
【保健】サウナで認知症リスクが低下 ~本場フィンランドの報告~
【保健】ポケモンGOで運動量up! ~仲間でワイワイの効果~
【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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【佐藤優】尋問における「身体的圧力」 ~対テロ(12)~

2018年04月28日 | ●佐藤優
【佐藤優】尋問における「身体的圧力」 ~対テロ(12)~

 <テロ対策については、日本の基準からすればほぼ「何でもあり」というのが、イスラエルや英米(それにロシアを加えてもいい)での現実だ。例えば、テロ容疑者の尋問にあたって「身体的圧力」を許容していることだ。

  〈1987年10月30日、ランダウ委員会は報告書を提出。そこには「・・・・委員会は、このような状況下ではなんらかの身体的圧力を加えない限り、有効な尋問は不可能とするISAの立場に同意する」とある(第2節37)。ペリーによると、委員会は「状況によっては、テロ容疑者の尋問時に、なんらかの身体的圧力を加える必要がある」と述べた。ペリーは次のようにつけ加えた。
  「上級機関(国家調査委員会)が証拠を得るための警察の尋問と、テロ活動の防止を目的とする情報機関の尋問には違いがあることを初めて認めたのである。委員会報告には、機密の付則があり、そこに記載されたさまざまな指示に、この見解が反映されている。尋問時の対応に関する全般的ガイドラインがあり、そこには、一連の禁止事項が含まれ、それぞれの尋問方法で許されるレベルが記載されている。睡眠妨害、隔離、手錠、身体のゆさぶり、頭部遮蔽その他の『おだやかな身体的圧力』が許容され、その適用時の制限がつけられている。さらに委員会は、横暴な容疑者の顔面を平手打ちする場合、事前に上級部署の許可を得なければならないと規定している。〉(本書207~208頁) 

 上司の許可があれば、ビンタはできるということだ。それでは、「身体的圧迫」には具体的にはどのようなものがあるだろうか。

  〈イスラエルでは、市民団体とテロ容疑者が拷問に関して政府を何度か告訴している。原告を「イスラエル拷問反対市民委員会」、被告をイスラエル政府とする裁判では、最高裁判決(HCJ5100/94)がでている。それには「おだやかな身体への圧力」という項に、次のような身体的圧迫方法が記されている。
  ●身体のゆさぶり・・・・容疑者の胴体上部を激しく前後に繰り返しゆさぶる方法。首と頭部がふらふら激しくゆれる。答弁書で国は、ゆさぶる方式は非常に特殊の場合のみに最後の手段として使われると論じている。
  ●シャバック姿勢・・・・容疑者の手首をうしろで縛り、小さくて低い椅子に座らせる。そして、その椅子を前方へ傾ける。容疑者の片手は、身体の後部と背もたれの間におかれ、別の手はイスの背面で縛られている。容疑者の頭には、不透明の袋が肩までかぶせられる。また部屋の中では音楽が大音量でかけられる。国の主張によると、尋問中に両手を縛るのは、重大な警備上の理由と尋問者の身を守るためだという。また頭部を袋で覆うのは、拘束者とほかの容疑者との接触を防止するためで、大音量の音楽も同じ目的である。
  ●蛙の姿勢・・・・つま先立ちさせた状態で、しゃがませる方法。5分間隔で繰り返す。国によると、この尋問方法はもう行われていない。
  ●手錠緊縛・・・・手錠や脚錠をきつく締める方法。尋問が長びけば、手・腕・足が傷つく。
  ●睡眠遮断・・・・国は、容疑者が通常の睡眠時間を与えられない場合があることを認めたが、それは容疑者を疲労困憊させることを目的としているのではなく、尋問が長時間に及んだ結果、としている。
  国によると、これらの方法の使用は「拷問」にあたらない。〉(本書209頁) 

 「身体のゆさぶり」では、死者が発生した例が本書では説明されているが、ここに記されている「身体的圧迫」の事例で、手錠緊縛や睡眠遮断は、日本でもときどき行われている。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(12)「身体的圧力」」を引用

 【参考】
【佐藤優】ゲリラ戦に関するハルカビの理論 ~対テロ(11)~
【佐藤優】壁と「鉄の屋根」というミサイル迎撃システム ~対テロ(10)~
【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【南雲つぐみ】枕の選び方 ~肩凝りや頭痛対策~

2018年04月28日 | 医療・保健・福祉・介護
 肩から背中にかけて重苦しくなったり、うまく伸ばせなかったり、痛みが走ったりすることがある。
 こうした筋肉の凝りがあると、首から頭部の血行が悪くなるため、頭痛や頭の重い感じが起こりやすい。さらに、目がショボショボして疲れやすくなったり、めまいや立ちくらみが起きたりすることもある。
 どれも、一つ一つはささいな不調だが、積み重なっていくと、仕事のペースダウンにもなり、人間関係にも影響が及ぼされることにもなる。
 もし、こうした肩凝りや頭痛に加え、寝苦しさやいびきもあるのなら、枕を変えるのも良いかもしれない。
 山田朱織(山田朱織枕研究所代表・整形外科)は、良い睡眠が取れる枕の条件について「適度な硬さがあり頭が沈みこまないもの」「高過ぎて喉の気道が圧迫されないもの」「寝返りを打ちやすいもの」としている。
 実際に寝てみて、気道がふさがれず、楽に呼吸ができることや、左右に寝返りがスムーズに打てることをチェックしよう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「枕の選び方 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年3月20日)を引用
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【南雲つぐみ】尿酸値の上昇 ~ビール好きな人の痛風~

2018年04月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 尿酸は、細胞の中の「核酸」が分解して体内に発生する、いわば細胞の老廃物。核酸はプリン体になり、さらに分解されて尿酸になり、最終的には排泄される。
 よく食べ、よくアルコール類を飲み、パワフルに動き回る人は、細胞の新陳代謝も活発で、尿酸を多く産生する。
 このため、血圧や脂質などほかの生活習慣病の数値に比べて、尿酸値は、若くて元気な世代で上昇しやすい。男性では、30代で尿酸値が上がり、40代で痛風の治療を開始する人が増えているそうだ。これには、肥満も関係しているという。
 排せつし切れない尿酸は結晶化し、足の指などの関節に沈着する。この結晶が、関節の中で激しい痛みと炎症を起こすのが痛風だ。
 初夏になると、ゴルフの後のビールが原因で痛風発作を引き起こす人が増えるという。運動後に脱水気味になり、尿が少なくなるので尿酸の排泄ができないのだ。
 ビールのほか、プリン体の少ないアルコール飲料でも、脱水を促して尿酸をため込んでしまう可能性があるということをお忘れなく。

□南雲つぐみ(医学ライター)「尿酸値の上昇 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年4月23日)を引用
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【佐藤優】ゲリラ戦に関するハルカビの理論 ~対テロ(11)~

2018年04月27日 | ●佐藤優
 <ガノール氏は、「懸かっている国益を比較し、それがより本質的な性格を持つ方が勝つ」というハルカビの理論で、テロリズムを分析することが重要であると説く。

  〈攻撃下にある国の世論にテロ組織が及ぼす影響は「必要性のバランス」理論を使って説明できる。これはイェホシャファット・ハルカビが、ゲリラ戦に関する著作で形成した理論である。ハルカビによると、これを使って国家間の紛争を検討し、双方の「懸かっている国益」の本質を分析することで、その結果を予見することも可能だという(懸かっている国益を比較し、それがより本質的な性格を持つ方が勝つ)。ハルカビは「必要性のバランスは、戦争継続の意志、そして敗北をもたらす態度に影響する可能性がある」と主張する。
  われわれもハルカビの理論を使って、国家レベルで重大な問題に対する国民の態度にテロリズムが及ぼす影響について明らかにすることができる。テロ攻撃が発生すると、国民は自分と家族の安全に比べれば、攻撃された国益の重要性は低いという思いを抱くようになる。これがテロリスト側の狙いである。彼らが送ってきたメッセージは、自分の命を守るためにテロをやめて欲しければ、われわれの要求を聞け、われわれが目的を達成することを認めろ、ということだ。〉(本書195頁) 

 裏返して言うと、テロに屈しないためには、自分や家族に危険が迫ってでも守らなくてはならない価値があるという認識を国民が持たなくてはならないということだ。これは民主主義国において、ほぼ不可能な課題だ。日本や欧米のような先進国の生命至上主義がテロ対策にとっては障害となっている。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(11)ハルカビの理論」を引用

 【参考】
【佐藤優】壁と「鉄の屋根」というミサイル迎撃システム ~対テロ(10)~
【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【本】移民政策の得失を冷静に分析 ~キューバ移民の第一線学者~

2018年04月26日 | 批評・思想
★ジョージ・ボージャス(岩本正明・訳)『移民の政治経済学』(白水社 2,200円)

 (1)現在、外国人労働者が急増している。過去5年間で60万人増加し、労働力人口増加の4割、就業者数増加の3割弱を占める。
 製造業から小売り、宿泊、飲食、農業などあらゆる業態に広がるが、目立つのは低スキルの技能実習生や留学生の増加だ。人手不足でも賃金の上昇が遅れるのは、外国人労働者の急増が影響しているのかもしれない。

 (2)外国人労働者なしでは経営が成り立たない企業も現れている中、今後の外国人労働政策を考える上で参考にすべき一冊が翻訳された。移民労働者に頼る米国では、それは皆にとって良いことだと多くの専門家が主張する。しかし、本当に米国人に大きなメリットがあるのか。丁寧な分析手法で定評があり、米ハーバード大学で長く研究する第一人者が異論を唱える。
 まず、移民が稼ぐことで、その所得が増え、米国のGDP(国内総生産)は増加する。ただ、そのことと米国人の経済厚生が向上することとは別の話である。移民の所得増加分を除くと、GDPの増加分は実はゼロに近い。移民を活用する企業のメリットは確かに大きいが、移民と競合する国内の低スキル労働者の所得減少に相殺される。つまり、国内の低スキル労働者から企業へ所得移転が生じているのだ。本書は、移民の経済効果の本質が所得分配の問題であることを炙り出す。

 (3)GDPの押し上げや企業業績への貢献から移民は望ましいという主張が多いが、丁寧な分析を基に、どこに負担が発生するのかを明確にした。また、移民の増加で、財政負担が増える可能性も論じる。近年、低スキルで低賃金の移民が増加傾向にあるため、社会給付を受ける人が増えているのだ。

 (4)2016年の米大統領選挙では、移民の排斥を訴えるトランプ氏が、著者の分析を何度も好意的に引用した。しかし、著者は移民否定論者ではない。幼いころにキューバから移住した異色の経歴の持ち主で、移民の受け入れは、途上国の人々に大きなチャンスを提供するため人道的に望ましいと論じる。
 ただ、不利益を被る国内の低スキル労働者に配慮し、所得分配を強化することや、米国の労働者にプラスの波及効果をもたらす高い技能を持つ移民をバランスよく受け入れるべきだという。また、急激な大量流入は、米国社会への同化を遅らせるため、社会負担が大きく、避けるべきだとも論じる。

 (5)日本では、2017年11月に技能実習生の滞在期間を3年間から5年間に延長した。このまま人手不足が続けば、さらに延長される可能性もあるが、目先の問題にばかり捉われず、長期的影響を十分に検討する必要があるだろう。

□河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査本部長)「キューバ移民の第一線学者が移民政策の得失を冷静に分析  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2018年4月14日号)
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 【参考】
【本】戦前から日本は変わらず ~1940年体制~
【本】いかに“米中戦争”を避けるか ~歴史から国際政治を類推する~
【本】つげ義春は文章も面白い ~『つげ義春とぼく』~
【本】バブルを描く古典的名著 ~『バブルの物語 暴落の前に天才がいる』~
【本】塩野七生、最後の歴史大長編 ~『ギリシア人の物語3』~
【本】日本銀行はどのようにして政治的に追い込まれたのか ~『日銀と政治 暗闘の20年史』~
【本】最悪の選択は現状維持と分析 ~黒田日銀の5年間を問う好著~
【本】麻薬撲滅のための経済学思考 ~アピールと説得の理論と方法~
【本】モンゴルのユーラシア制覇 ~『モンゴルvs.西欧vs.イスラム 13世紀の世界大戦』~
【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【南雲つぐみ】胸の痛みを感じたら ~狭心症と心筋梗塞~

2018年04月26日 | 医療・保健・福祉・介護
 狭心症と心筋梗塞の症状は、どちらも「胸が締めつけられる」「心臓をわしづかみにされるような」などと表現される。
 狭心症は、1~2分、長くても15分ほどで治まる。運動中や階段を上がっている時、緊張している時、寝ている時など、一定の状態でのみ痛みが出る場合もある。
 それがもし、これまで経験したことのないような強い胸の痛みであれば、しばらくして治まっても放置せず、早めに医師の診察や検査を受けておこう。その結果、狭心症ではなく、胃潰瘍や逆流性食道炎が見つかるケースもある。
 一方、心筋梗塞の強烈な胸の痛みは、冷や汗や吐き気を伴って30分以上も続く。放散痛といって、左肩、首、左の奥歯、左腕など、心臓から少し離れた場所で痛みを感じることもある。
 心筋梗塞は命の危険を伴うので、すぐに救急車を呼ぶ必要がある。待っている間はあおむけに寝るよりも、クッションを前抱きにしてテーブルにもたれるなど、やや前かがみの姿勢になると心臓を圧迫しない。

□南雲つぐみ(医学ライター)「胸の痛みを感じたら ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年3月29日)を引用
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【保健】心筋梗塞の自覚症状は? ~吐き気や腹痛、男女差も~

2018年04月26日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)俳優の大杉 漣さんの突然死で注目された急性心不全。
 報道によると、ドラマの収録後に共演者と食事に行き、ホテルの部屋に戻った時点で「腹痛」を訴えたという。その後、搬送先の救急病院で亡くなられた。
 直接的な原因は心不全--つまり心臓が働かなくなったことだが、なぜ急に心臓が働かなくなったのかは明らかではない。
 急性心不全の原因としては一般的に心筋梗塞が考えられる。典型的な自覚症状は「胸痛」だが、大杉さんのようにまず「腹痛」を訴える例は少なくない。あまり知られていないが心筋梗塞の自覚症状には男女差もある。

 (2)2018年2月、アメリカ心臓学会の機関誌に掲載された調査でも、女性の患者は典型的な症状のほか、のどの違和感や不快感、肩甲骨の間など背中の痛み、動悸の訴えが多いという結果が報告されている。
 同調査は、2008~12年に急性心筋梗塞で米国内の病院に入院した18~55歳の男女(男性976人、女性2,009人、平均年齢は47歳)を対象に行われた。対象者は入院24時間以内に、自覚症状に関するアンケート調査に回答している。
 その結果、男女とも9割近くは胸痛や胸の圧迫感、首を絞められるような苦しさなど典型的な症状を自覚していた。
 その一方、女性はのどや首、背中(肩甲骨回り)の違和感や痛み、動悸や息切れ、消化不良に似た症状をより感じていたことが示された。ところが、入院前に「不快な症状」を訴え病院を受診した女性の半数が、「心臓とは関係ない」と診断されていたのである。自覚症状の幅広さを医者も認識していない、ということなのだろうか。
 ちなみに日本の循環器病に関する診療ガイドラインでは、心筋梗塞に関し「女性はむしろ顎やのどの痛み、腹痛、吐き気や嘔吐、食欲不振、背部痛、肩の痛み等の非典型的な症状を訴えることが多い」と明記されている。

 (3)心筋梗塞はいつ襲ってくるかわからない。高血圧、高血糖、脂質異常+ストレスフルな生活を送っている方は、男女を問わず非典型的な症状にも気を配る必要がある。

□井出ゆきえ(医学ライター)「心筋梗塞の自覚症状は?/吐き気や腹痛、男女差も ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.392~」(「週刊ダイヤモンド」2018年3月31日号)
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【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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【池大雅】浅間山から望む富士と筑波 ~旅する画家(2)~

2018年04月26日 | 批評・思想
作品番号108 浅間山真景図 池大雅筆 自賛
     紙本墨画淡彩 一幅 57.3×102.9cm 江戸時代 18世紀

★浅間山から望む富士と筑波
 宝暦十年(1760)、大雅は友人の高芙蓉、韓天寿とともに白山・立山・富士山の三霊山を踏破する旅に出た。本作は、その旅の途次、信州・浅間山に登った際のスケッチをもとに制作されたと考えられている。構想のもとになったと見られるスケッチは「三岳紀行図屏風」(作品番号111)に残されており、浅間山を描く複数の図を合成することで本作が成立していることがわかる。
 画面右前景に大きく描かれるのが浅間山で、大雅一行が登り風景を眺望した場所である。したがって、ここに描かれているのは彼らが現実に見た視覚の再現ではなく、あくまでもそれに基づき構想された絵だということになる。山裾には軽井沢などふもとの集落が描かれており、画面空間はこの辺りから左上、右上の二方向に広がりを見せる。左上には利根川が蛇行し、その先に筑波山が描かれている。一方、右上には荒々しい山肌を見せる妙義山などの山々が連なり、視線を導くその先には小さく富士山が見える。大雅は浅間山から見えた富士山の様子を何度もスケッチしており、その感動が本作の制作動機だったとも考えられる。
 細かな筆致を重ねて描き出された地形の起伏、西洋銅版画から学んだと推測されている自然な遠近表現は、大雅の真景図のなかでも傑出した出来栄えを示し、江戸時代の風景表現としても極めて重要な作品である。宝暦12年(1762)の「比叡山真景図」(作品番号109)と共通する画面構成や色感等から30歳代末頃の作と考えられており、同13年(1763)の「富岳・終南山・早發白帝城図」(作品番号118)の左端に本作と類似する川の描写が見られることからも首肯できる。
 自賛は鶴亭筆「浅間山真景図」(作品番号16)と基本的に同じ「雲簇東西南北嶺、烟披十萬八千嵒」(雲は簇(むら)がる東西南北の嶺、烟(もや)は披(し)十萬八千の嵒(いわお))で、「奉以龍門祇園先生」(龍門祇園先生に以(しめ)し奉る)とある。大雅が本作を贈ったという「龍門祇園先生」については、いまのところ祇園南海の息子尚濂を指すという見方が主流となっている。ただ、これには確たる根拠があってのことではなく、紀州藩医だった宮瀬龍門(1719~71)である可能性も否定しきれないように思われる。

□京都国立博物館、読売新聞社『池大雅 天衣無縫の旅の画家』(読売新聞社、2018)の「第5章 旅する画家--日本の風景を描く」の「作品番号108 浅間山真景図」を引用

 【参考】
【池大雅】旅する画家--日本の風景を描く

 池大雅「浅間山真景図」 
 
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【佐藤優】壁と「鉄の屋根」というミサイル迎撃システム ~対テロ(10)~

2018年04月26日 | ●佐藤優
 <それは、イスラエルがパレスチナ自治区との境界線に沿って建設した「壁」についても言えることだ。

  〈・・・・地理的かつ人口構成的な制限があるイスラエルは近年、西岸地区とイスラエル領の間に分離壁を大変な労力を費やして建設している。イスラエルの警備の専門家たちは、この分離壁はイスラエルの難しい国境問題を解決し、テロを防止することになるだろうと述べている。もしイスラエルが自国領内に信じられないほど容易に自爆テロ要員やテロリストが侵入してくる状況を変えたければ、確かにこの分離壁は現実的な解決法である。世界にはイスラエルを非難する声もあるが、これは正当な自衛手段である。
  とはいえ、イスラエルは分離壁が完成しても、それでテロが終わると考えてはいけない。イスラエル領内への侵入はなくならないだろうし、壁ではパレスチナ自治区から発射されるカチューシャ・ロケット弾を食い止めることはできないからだ。〉(本書191頁) 

 ちなみにイスラエルは、パレスチナ側から打ち込まれるカチューシャ・ロケット弾を「鉄の屋根」システムで防御している。このシステムについては、2014年7月22日の「朝日新聞」朝刊はこう報じた。

  〈「鉄のドーム」高い防御力 ガザからのロケット弾9割撃墜 イスラエルの迎撃システム
  パレスチナ自治区ガザからイスラエルに撃ち込まれたロケット弾は、「鉄のドーム」と呼ばれる防御システムで無力化される。成功率は9割。米国の資金援助に支えられ、圧倒的な攻撃力に加えて高い防御力も確立した。しかし、イスラエルは「自衛のため」としてガザへの攻撃の手を緩めていない。
 エルサレム北西部。10日夕、ガザからのロケット弾飛来を知らせるサイレンが鳴った。「必死で防空シェルターに避難したから迎撃の瞬間は見なかったけど、すごい音がした」
 近くで食道を経営するコビ・エルカヤムさんん(25)は、向かいの丘に今月配備された「鉄のドーム」が迎撃に成功したと後で訊いた。
 「これなしの生活は考えられない」
 迎撃弾を発した砲台は高さ3メートル、1メートル角ほど。記者が訪れると、ガザ方向の空をにらんでいた。「鉄のドーム」はレーダーの情報を基にロケット弾の軌道を予測、迎撃するシステムの総称だ。荒野に着弾しそうなものには反応しない。有人地域に飛んできそうだと判断すると、発射された迎撃弾が回り込むようにしてロケット弾を破壊する。
 米国の資金援助で開発され、2011年に初めて砲台4基が配備された。イスラエル国防省によると、12年にガザのイスラム組織ハマスと交戦した際は421発を迎撃。成功率は84%だった。9基に増やした今回は、8日からの11日間にガザから撃ち込まれたロケット弾は1,637発。大半は荒野に向かったため迎撃弾は発射されなかった。
 しかし、有人地域に飛来したためシステムが稼働し、撃墜したロケット弾は340発。成功率は86%だという。
 今回のイスラエル軍による空爆や地上侵攻で、パレスチナ側の死者は500人を超えた。一方、イスラエル側の死者は兵士18人と市民2人。「鉄のドーム」の有無の差は歴然としている。
 それでもイスラエル政府は「自衛」のための空爆や地上侵攻を緩める気配はない。ネタニヤフ首相は20日、米CNNテレビのインタビューで「鉄のドーム」に触れ、「(迎撃を)かいくぐっているロケット弾もある。ハマスは地下トンネルでの侵入も試みている。これを止めねばならない」と述べ、ガザへの空爆や地上侵攻が欠かせないとの立場を強調した。(エルサレム=渡辺淳基)〉

 テロ対策はここまで徹底しなくてはならないのである。それでもテロを根絶することはできない。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(10)壁と「鉄の屋根」」を引用

 【参考】
【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
【佐藤優】インテリジェンスの重要性 ~対テロ(7)~
【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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【佐藤優】中立化(暗殺)工作 ~対テロ(9)~

2018年04月25日 | ●佐藤優
 <テロ対策では、平和な環境に慣れた日本人には、考えつかないような選択肢もある。ガノール氏は、端的にターゲット・キリング(暗殺)という言葉を用いるが、インテリジェンスの世界では、「中立化(nutralisation)」と表現されることが多い。暗殺の必要性についてガノール氏はこう説明する。

  〈ターゲット・キリング(暗殺)は、対テロ政策の最先端に位置する攻撃行動である。ターゲット・キリングとは、テロリズムと戦っている国家が、組織内でテロ攻撃の立案、指揮、準備、要員のリクルート、訓練、支援などを行っている者たちを殺害するか、少なくともテロ活動に参加できなくなるようにする目的で攻撃することである。
  個人に対する攻撃行動には、相互に関係し合ったふたつの問題がある。基準となるモラルの問題とこうした行為の有効性の問題だ。言い換えれば、個人に対して実施する攻撃行動の正当性である。「ターゲット・キリング」の有効性は、先に分析した攻撃行動の問題と密接に結びついている。そのため基準となるモラルについてまず考えてみる。
  モラルの問題は文化によって異なり、その価値観には絶対性がないため、誰もが同意できるモラルを見つけるのは難しい。それは文化や時代によって変化する価値観であり、同じ社会の中でもグループ間や個人で変わってくる。〉(本書157頁) 

 モラルは文化によって拘束される。したがって、イスラエルの文化的文脈で書かれている本書の内容をそのまま日本に輸入することは不可能であるし、そのようなアプローチを取ってはならない。しかし、ガノール氏が本書で示した暗殺、行政拘束、マスメディアの自主規制について、感情的に反発するのではなく、なぜそのような方策を取る必要に民主主義国家であるイスラエルが迫られたのかについて論理的に考えることが重要だ。>

□ボアズ・ガノール(佐藤優・監訳、河合洋一郎・訳)『カウンター・テロリズム・パズル 政策決定者への提
言』(並木書房 2018)の冒頭、佐藤優「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の「(9)中立化(暗殺)工作」を引用

 【参考】
【佐藤優】レッドラインを設けない ~対テロ(8)~
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【佐藤優】テロ対策と国民感情 ~対テロ(6)~
【佐藤優】戦争犯罪とテロリズムの区別 ~対テロ(5)~
【佐藤優】テロリズムの定義 ~対テロ(4)~
【佐藤優】政治(国家)指導者の能力 ~対テロ(3)~
【佐藤優】アート(芸術)としてのインテリジェンス ~対テロ(2)~
【佐藤優】ボアズ・ガノール氏との出会い
【佐藤優】「監訳者のことば--テロリズムに関する実用書兼実務書」の目次

 
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