語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】汚染された魚介類が慢性的に流通 ~スーパーマーケット~

2013年04月30日 | 震災・原発事故
 (1)国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、原発事故以来、スーパーマーケット大手5社の魚介類放射性物質検査を定期的に実施している。
 このたび、次のとおりセシウム137が検出された。
   (a)イトーヨーカドー湘南台店(神奈川県)で購入したマダラ(岩手県産)・・・・7.4Bq/kg
   (b)ダイエー・グルメシティ高尾店で購入したモウカサメ(宮城県産)・・・・5.5Bq/kg

 (2)13回にわたる検査で、放射能汚染が検出されなかったのは1回だけ。
 汚染された魚介類が慢性的に市場に流通している。

 (3)これまで最も多く汚染が確認されたのは、西友。イトーヨーカドーがこれに次ぐ。
 ただし、西友は2011年末にグリーンピースに対して対応強化を約束している。
 2012年初めからは、イトーヨーカドーの魚介類から最も多くの放射性物質が検出されている。魚種別にみると、この冬は岩手県産のマダラからの検出が相次いでいる。

 (4)グリーンピースは、西友およびイトーヨーカドーに対して(1)の調査結果を伝え、対応強化を求めた。
 前回の調査でも放射性物質が検出されたイトーヨーカドーの担当者のコメントは、「特に新たな対応をとることはない」であった。
 他方、ダイエーの担当者は、調査に感謝し、「今回の調査結果を受けて今後の対応を社内で検討する」と応えた。

 (5)グリーンピースは、魚介類の安全性や持続可能性に係る各社の意識や取り組みについて、2月に「お魚スーパーマーケットランキング2」を発表した。今年後半に、第三弾を作成する予定だ。

□花岡和佳男(グリーンピース・ジャパン 海洋生態系担当)「スーパーマーケットで汚染された魚介類が慢性的に流通 マダラとサメからセシウム」(「週刊金曜日」2013年4月26日号)

 【参考】
【原発】放射能と東京オリンピック招致
【原発】大手スーパーの真鱈から放射能検出 ~関東・東海地方~
【原発】東京湾の汚染
【震災】原発>東京湾に放射能汚泥が堆積中 ~海の汚染~
【震災】原発>無防備都市--東京を覆う放射能
【震災】原発>食卓の放射能汚染、2012
【震災】原発>海洋汚染の拡大・・・・表層から海底へ、海のホットスポット、陸から海へ
【震災】原発>海洋汚染 ~グリーンピースの調査・水産学者の「原子力村」~
【震災】原発>海洋汚染の隠蔽
【震災】原発>海洋汚染の隠蔽・追記
【震災】原発>汚染食品のデータをどう読むか
【震災】原発>海洋汚染の拡大・・・・表層から海底へ、海のホットスポット、陸から海へ
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【旅】ジュディ・オングの版画 ~日本家屋または京都の再発見~

2013年04月29日 | □旅
(1)会場
 倉吉博物館(鳥取県倉吉市仲ノ町3445-8)

(2)会期
 2013年4月13日(土)~5月12日(日)

(3)入場料
 当日:一般 700円

(4)「ジュディ・オング倩玉 木版画の世界展」

(5)「ジュディ・オング倩玉 木版画の世界展」の楽しみ方
 歌手・俳優のジュディ・オングは、「ジュディ・オング倩玉」の雅号をもつ版画家でもある。日本版画院展に何度か入選しているほか、日展に13回入選、特選1回の画歴がある。
 ジュディ・オング倩玉作品の2大テーマは、花と日本家屋だ。
 花は母親の影響らしい。母親が花をこよなく愛したからだ、と述懐している。幼少の頃からたくさんの花々を観てきたが、<ある時、花にも“美人”がいることに気づきました>【注1】。この発見が、後に自ら創る人になる基盤となった。
 日本家屋への関心は、建築家である兄の影響が底にあるらしい。そして、日本家屋に対する関心が目覚めたのは22歳のとき撮影のため京都へ赴いてからだ。個性をもった家々を見てまわるうちに、「べた掘れ」してしまった。<世界の何処を歩いていても山は山、川は川、空は空、人は人で皆なんとなく似ているところがあります。でもその土地とちが生んだ古来からの建物だけは違うんですね。もちろん文化の流れで似たような形の物を観ることはありますが、全く同じという事はきわめて稀です。日本家屋というのは、大和民族が日本の気候風土、食文化、生活文化のすべてに適応する、無駄を全て削ぎ落とした、美しい最高傑作だと私は信じています。魔除けの鬼瓦、夏涼しく冬暖かい茅葺屋根、格子窓、障子、襖、縁側、雨に強い甍屋根、どれも本当に美しいものです。またその合理さには目を見張るものがあります。例えば、襖障子が閉まっていれば小部屋になり、全部開け放てば大広間になる。そして、そのコンパクトな造りにも驚かされます。例えば、(中略)入口横に畳み込まれた縁側のような椅子、これも生活から生まれたのでしょう>【注2】
 花にも“美人”があることを発見した版画家の目は、現代日本人の大多数が自覚せず、あるいは忘れ去ってしまった日本家屋の美、そして合理的機能を再発見している。
 日本家屋との出会いが京都であったからか、倩玉は京都の日本家屋をたくさん描いている。これは逆にいえば、「ジュディ・オング倩玉 木版画の世界展」は、版画の日本家屋を介した京都案内としても観ることができる。

  「昼下り」(1977年)・・・・茅葺屋根と縁側
  「夏天涼風」(1978年)・・・・古い民家と庭
  「揚屋」(1985年)・・・・揚屋「角屋」
  「芳香春暖」(1996年)・・・・揚屋「角屋」の「扇の間」
  「雨過苔清」(1999年)・・・・左京区下河原町の数寄屋づくり「清流亭」の客間【写真 上】
  「小庭雅緑」(2000年)・・・・「清流亭」の玄関から入って左手にある小さな部屋
  「山門迎福」(2002年)・・・・伏見の長建寺
  「京華春翠」(2003年)・・・・茶店の表玄関と前庭
  「祗園白川」(2004年)・・・・祗園白川の散歩道【写真 中】
  「銀閣瑞雪」(2006年)・・・・雪の銀閣寺
  「秋訪」(2007年)・・・・大徳寺
  「涼庭忘夏」(2008年)・・・・南禅寺付近の湯豆腐屋「順正」の玄関口【写真 下】
  「蓮池飛石」(2009年)・・・・平安神宮の池
  「廊橋浅秋」(2010年)・・・・東本願寺の別廊、渉成園枳殻邸の「回棹廊」
  「銀閣後庭」(2012年)・・・・銀閣寺

 【注1】ジュディ・オング倩玉『倩玉的世界木版画集』(株式会社ヒーモリ、2013)
 【注2】前掲書

   

   

   

 【参考】
【旅】美の響演 関西コレクションズ
【旅】松江 ~須田国太郎を追って~
【旅】エル・グレコから宮永愛子まで
【旅】復興を絵画で表現できるか ~平町公の試み~
【旅】彫刻の街 ~鑑賞者の存在意義・考~
【旅】島根県立美術館 ~震災復興支援特別企画 ふらんす物語~
【言葉】手のなかの空/奈良原一高 1954-2004
【旅】オーストリア ~グラーツ~
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【旅】美の響演 関西コレクションズ

2013年04月28日 | □旅
(1)会場
 国立国際美術館(大阪市北区中之島4-2-55)

(2)会期
 2013年4月6日(土)~7月15日(月・祝)

(3)入場料
 当日:一般 1,200円

(4)展覧会「美の響演 関西コレクションズ」
 関西が誇る6つの国公立美術館(大阪市立近代美術館建設準備室、京都国立近代美術館、滋賀県立近代美術館、兵庫県立美術館、和歌山県立近代美術館、国立国際美術館)が所蔵する20世紀以降の欧米美術コレクションを一堂に集めた展覧会。
 別々の館が所蔵する同じ作家の作品を並べて鑑賞することもできる。詩情あふれるボックス・アートで知られるコーネルの作品は、滋賀、大阪市、国立国際の3館から5点。大きなカンバスを数色で塗り分けた作品が特徴のロスコの作品は、大阪市、滋賀、和歌山、国立国際の4館から傑作4点。
 出品作品は、主に20世紀以降の美術作品。セザンヌ、ピカソ、マティス、ブランクーシから、ロスコ、ルイス、ウォーホルらのアメリカ美術、そして現在活躍するリヒターやタイマンスらの絵画、シャーマンやシュトゥルートらの写真にいたるまで約80点。「近代絵画の父」ポール・セザンヌの「宴の準備」から始まり、多様化する現代美術に至る120年間の美術の流れが味わえるよう工夫された展示の仕方だ。
 ジュンリアン・オビー「イブニング・ドレスの女」(2005年)なぞ、液晶パネルの女性の眉、目、口元がわずかずつ変化するに伴って表情が千変万化する魅惑的な作品だ。
 こうした前衛的な現代美術の中にあって、「作品に主題を復権させた」キーファーの「星空」((5)-(d))は興味深かった。

(5)注目した作品
  (a)ヴァシリー・カンディンスキー「《絵の中の絵」 (1929年)

  

  (b)トム・ウェッセルマン「シースケープ #8」(1966年)

  

  (c)ジャン=ミシェル・バスキア「無題」(1984年)

  

  (d)アンゼルム・キーファー「星空」(1995年)

  

 【参考】
【旅】松江 ~須田国太郎を追って~
【旅】エル・グレコから宮永愛子まで
【旅】復興を絵画で表現できるか ~平町公の試み~
【旅】彫刻の街 ~鑑賞者の存在意義・考~
【旅】島根県立美術館 ~震災復興支援特別企画 ふらんす物語~
【言葉】手のなかの空/奈良原一高 1954-2004
【旅】オーストリア ~グラーツ~

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【言葉】四月は残酷極まる月だ

2013年04月28日 | 詩歌
 四月は残酷極まる月だ
 リラの花を死んだ土から生み出し
 追憶に慾情をかきまぜたり
 春の雨で鈍重な草根をふるい起こすのだ。
 冬は人を温かくかくまってくれた。
 地面を雪で忘却の中に被い
 ひからびた球根で短い生命を養い。

  April is the cruellest month, breeding
  Lilacs out of the dead land, mixing
  Memory and desire, stirring
  Dull roots with spring rain.
  Winter kept us warm, covering
  Earth in fogetful snow, feeding
  A little life with dried tubers.

□T・S・エリオット(西脇順三郎・訳)『荒地』(『世界文学全集48 世界近代詩人十人集』所収、新潮社、1963)
□Thomas Stearns Eliot “THE WASTE LAND & GERONTION” (福田陸太郎/森山泰夫・注解)(大修館書店、1967)
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【スウェーデン】病気や怪我になったら ~手厚い医療保障~

2013年04月27日 | □スウェーデン
   

 (1)病気や怪我で仕事を休む場合、休んだ2日目から2週間は、給料の80%が雇い主から支給される。15日目以降は、社会保険庁から「疾病手当」が、給料の約75%支給される。
 失業者、自営業者など雇い主がいない場合、2日目から「疾病手当」が支給される。
 なお、8日目以降は医師の診断書が必要となる。
 疾病手当は最長364日間支給される。それ以降も、職場復帰ができない場合は、医師の診断書をもとに最長550日間まで延長することができる。

 (2)スウェーデンの医療は、県(ランドスティング)が担当する。病院には3段階あって、一般的には、最初、地区の医療センター(日本の保健所に相当)に行く。最近では、ドロップ・イン(予約なしの直接訪問)は廃止され、電話で事前に予約しないと時間がとれないようになった。
 電話で、担当看護師が、「その程度だったら暖かくして寝ていなさい。少し様子をみなさい」と指示されることもある。
 医師の診療は予約制だが、看護師には順番待ち覚悟で行けばドロップ・インで直接すぐ会ってもらえる。
 医師の診断を受け、さらなる専門的医療が必要だ、と診断された場合、その医師の紹介状が県立病院か専門医クリニックに送られ、それらの医療機関から来院日時の連絡が行く。
 より複雑な症状の場合、全国に7つある大学病院に送られる。
 救急の場合、県立病院か大学病院へ直接運ばれるが、救急であっても待ち時間は数時間かかる。
 スウェーデンでは、正式の患者として受け入れるまでかなりの時間がかかり、それに耐える体力が必要だ。また、夏には医師や看護師が数週間の夏休みをとるので、緊急手術ができにくくなる。夏は、極力、病気にかかったり怪我をしないよう気を付けなければならない。

 (3)受診料は、県によって異なるが、ストックホルムの場合、地区医療センターの医師の受診料は、200クローナ(約2,400円)、専門医は350クローナ(約4,200円)、救急外来は400クローナ(約4,800円)、看護師は100クローナ(約1,200円)だ。
 入院の場合、1日当たり80クローナ(約960円)だ。
 年間の自己負担額には上限が設けられ、外来治療は900クローナ(約10,800円)、医薬品は2,000クローナ(約24,000円)を超えると、それ以上は無料になる(県が負担する)、
 18歳未満の医療費は無料だ。
 子どもの健康チェックは、子ども医療センターで行われる。多くの場合、地区医療センターの中に併設されている。子ども医療センターは自由に選べるが、登録制で、いつも同じ子ども医療センターへ行くことになる。定期健康診断などの場合、その医療センターから呼び出しがある。
 歯の治療にはもっとお金がかかる。歯科医は、民間と県に属する歯科医の2種類あるが、県によって治療費の設定が違う。民間の歯科医は自由に価格を決めてよいことになっている。ただし、患者の自己負担額が年間3,000クローナ(約36,000円)を超えた場合、超えた分の半分を社会保険庁が負担する。また、年間15,000クローナを超えた場合、超えた分の85%を社会保険庁が負担する。20歳未満の歯科治療は無料だ。
 歯科医も登録制で、皆、自分の好きな歯科医を選び、継続してそこに通うことになる(定期的に呼び出しがある)。

 (4)出産に要する費用は無料だ。
 超音波による胎児のチェック、血液検査などの出産前のケアも、出産費用も無料だ。

□三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』(岩波ジュニア新書、2013.2)

 【参考】
【スウェーデン】税金の使い道が透明な政治 ~高い投票率~
【スウェーデン】いじめ防止の取り組み
スウェーデン関係書誌
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【経済】円安を止められなくなるリスク

2013年04月26日 | 社会
 (1)デフレ脱却の第一のハードルは、資本主義経済に不可欠な投機マインドをいかに取り戻すか、だ。
 日本銀行が4月4日に決めた金融緩和策は、黒田東彦・日銀総裁が記者会見で述べたとおり、「異次元の金融緩和」だった。
 日銀の発表は、即座にマーケットを株高、円安に大きく動かした。当面は、盛り返した投機マインドがいつまで持続するかが焦点になる。2つのケースが想定できる。
  (a)1、2ヵ月で投機マインドがしぼみ、元の黙阿弥になる。市場が日銀に対し、“次の一手”を催促する。その時、日銀に打つ手はあるか。ないわけではない。民間金融機関が日銀に預ける当座預金の金利をマイナスにすることだ。しかし、マイナス金利を導入すると、海外から「円安誘導」と強く批判される可能性が高い。摩擦を恐れずにマイナス金利に踏み込めるか。ためらって、マネタリーベース拡大目標の上積みや達成時期の繰り上げなど、小手先の追加策でお茶を濁せば、市場に足元を見られる懸念も出て来る。・・・・そうした展開になる可能性は低いだろう。プラザ合意(1985年9月)に匹敵する政策転換だと思うからだ。
  (b)正常化した投機マインドはしばらく持続する。

 (2)4月4日以降の株高、円安は、1980年代後半のバブルの再来ではない。当時とは、今の日本経済は決定的に「違うからだ。当時は主要な産業で世界最高の輸出競争力を誇示していた。だが今や、その競争力が相当落ち込んでいて、新たな輸出産業が生まれる兆しさえない。l

 (3)(1)-(b)になれば、実験は成功したと言えるか。
 為替相場の円安が1ドル=110円で落ち着けば、そう評価できるだろうが、そうなる保証はどこにもない。プラザ合意と同様、「異次元の金融緩和」にも落とし穴があるからだ。すなわち、円安を止められなくなるリスクだ。
 プラザ合意はG5の戦略で、日米欧主要国の通貨当局が為替市場に協調介入し、ドル高を是正することで貿易不均衡を是正しようとした。市場には寝耳に水の戦略で、相場の流れは一変した。天井知らずの円高が始まった。
 マーケットの流れを変えることは至難の業なのだ。
 過度の円安が進むと、お手上げになってしまうおそれがある。
 1980年後半も円高を止められなかった。他方、内需拡大を求める米国の圧力に屈し、日銀が低金利政策を続け、バブル経済が惹起した。だから、円高にもかかわらず株式も熱狂相場を続けた。
 だが今は、円安を止められないと分かれば、輸入物価の急上昇という負の側面に反応し、株価は下落するだろう。しかも、債権市場は、世界最悪の債務残高を嫌気して金利が上昇する懸念も強まる。

 (4)外需拡大に照準を置いた成長戦略を策定せずに金融政策だけでデフレ脱却の実現が不可能なことを肝に銘じるべきだ。

□大塚将司(作家・経済評論家)「円安を止められなくなるリスク ~黒田日銀総裁「異次元の金融緩和」策の“落とし穴”」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

    *

 過激な金融緩和は、実体経済への波及が不確実な半面、さまざまな危険を抱えている。

(1)キャピタルフライト
 円安が進むと、円資産からの脱出が始まる。FXや富裕層では、そうしたことがすでに生じている可能性がある。日本政府が円安の進行を歓迎しているため、政府の介入を心配せずに円安方向への投機ができる。海外ファンドなどによる円安への投機は、すでに生じているし、今後さらに激化する可能性がある。
 今後円安がさらに進めば、輸入物価が高騰し、消費者物価指数の伸び率が高まる可能性はある。だが、そうなっても、日本人の暮らしは苦しくなる一方だ。

(2)財政界規律の喪失
 今回の国際購入は、新規国債発行額以上を日銀が買う、という意味だ。しかも、日銀引き受けに近い形だ。ために、財政規律は今以上に弛緩する。社会保障制度の見直しなど、基本的な問題はなんら対処されていない。問題が深刻化していくばかりだ。
 通常なら金利の上昇が国際増発をチェックするが、日銀の購入によってそれが現実化しないから、問題が隠蔽され、財政状況はとめどもなく悪化する。何かのキッカケで国債市場に変調が起き、金利が上昇すると、破滅的な事態になる。

(3)日本企業の体質改善が中途半端に
 日本の製造業(<典型例>電気産業)は、ビジネスモデルの抜本的組み替えを要求されている。しかるに、円安や株価上昇は、問題を覆い隠す。2004~07年頃にも同じことが起きた。
 リアルな問題は、リアルな対応によってしか解決できない。「期待」が動かすことができるのは、為替レートや株価などの資産価格だけだ。賃金や消費者物価は、「期待」によっては動かない。

□野口悠紀雄「円安・株バブルでは実態経済は改善せず ~「超」整理日記No.657~」(「週刊ダイヤモンド」2013年4月27日号)
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【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~

2013年04月25日 | 社会
 (1)千葉県香取郡多古町は、風光明媚、昔から「多古米」という良質米で名高く、さらに関東ローム層の畑で採れたサツマイモ、ニンジンなどの根菜も味のよさで知られている。
 そんな条件に恵まれた地域ですら、農業の高齢化と後継者不足で耕地放棄地の拡大が止まらない。
 農水省のデータ(2011年)によれば、ただでさえ減り続けている農業人口の実に6割が65歳以上の高齢者で占められている。

 (2)むろん、生産者が手をこまぬいているわけではない。
 「多古町旬の味産直センター」がスタートしたのは1987年2月のこと。高橋清・同センター代表理事(64歳)や地元民が試行錯誤の末、活路を見出したのは野菜を中心とした産地直送だった。いまでは農産物や加工品を卸す組合員150人、年商15億円の規模に成長している。
 かじると芳醇な香りが鼻に抜け、舌には涼やかな甘さが残るミニトマト。市場に出すと買い叩かれることがあるが、産直で生協や消費者団体と取引することで収入が安定した。

 (3)「食える農家」になることが、日本農業にとって最大の課題である後継者不足を解決するための回答となり、前提になる。
 だが、逆に年々農家が「食えなくなる」要因は増えるばかりだ。
 1990年代と比べると、農産物価格は3割近く下落。コストは上昇しているから、利益は実質的に半分になっている感じがする。コメなどは平均価格にすると同量のミネラルウォーターよりも安いぐらい。採算がとれないのに農家をつげ、というのは無理だ。【高橋代表】
 だから、徹底して品質と安全性にこだわり、市場に出回る農産物の価格が高くなろうが低くなろうが、安定した値段で勝負できるようにした。そのため、「センター」として独自の有機配合肥料を作り、各農家へ配布するなど、あらゆる工夫をしている。生き残れない農家に後継者がいるはずもないのだから。【同】

 (4)千葉県には「産直銀座」と呼ばれるほど、同じ試みは多い。
 「センター」独自の強みは、消費者との徹底した交流だ。生産者にとって顧客の反応がわかる「顔の見える関係」にするための努力が続けられている。
 <例1>市民農園「私の田んぼ」・・・・都会の消費者が水田の利用料を払い、年に数回多古町を訪れて田植え、稲刈り、秋の収穫祭に参加する。その間、生産者が水田を管理する。利用者は田仕事の経験を通じて、コメ作りのプロセスや水田の生態系、農業の大切さを学ぶ。収穫されたコメは、「センター」の精米施設からつきたての状態で送られる。利用者は数千人ほど。特に子どもと一緒に水田や農村を体験したい、という母親が増えている。
 <例2>生協等の会合に出向き、農産物の試食会、国産大豆を使った味噌作りの指導、トウモロコシ狩りを始めとするさまざまなメニューが盛り込まれた「農村体験」募集。
 ・・・・美味しく安全な食べ物をこうやって生産している、という情報を生産者から消費者に伝えないかぎり、産直でも、消費者が商品を選ぶ基準は年だけになってしまう。交流して実際に農村を訪れて、ちゃんとした農産物なら適正価格がある、ということを理解してもらえれば、価格競争に巻きこまれない農業ができる。農家の経営も安定する。【竹盛智敬・「センター」総合直産課長】

 (5)産直が農産物の流通に占める割合は数%程度。すべての農民が同じやり方をできるわけではない。農産物は「安ければいい」という消費者も圧倒的に多い。
 要は、それぞれの条件に合ったやり方で各自がアイデアを出すしかない。【高橋代表】

□本誌取材班「価格競争に捲き込まれない農業へ ~千葉県多古町の農業法人の試み~」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

 【参考】
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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【スウェーデン】税金の使い道が透明な政治 ~高い投票率~

2013年04月24日 | □スウェーデン
   

 (1)スウェーデンの成人年齢は18歳だ。つまり、高校を卒業する頃に選挙権を持つ。
 スウェーデンの選挙は、原則として4年に1回、一斉選挙(国会・県議会・市議会)が行われる。よって、めぐり合わせが悪いと、22歳にならないと選挙権を行使できない。とはいえ、若者は選挙に行って自分の意見を反映してくれる候補者、政党を選ぶのが当然と考えている。

 (2)スウェーデンの選挙では、一部個人を選ぶことができるが、基本的に政党に投票する比例代表制だ。各政党が選挙に際して候補者名簿をつくり、その政党への投票数によって、名簿の上から順番に当選する。
 候補者名簿では下になっているが、どうしてもこの候補者を選びたい、という場合にはその人の前についている欄にチェックを入れる。多数がチェックを入れた場合、名簿の順番を飛び越して当選することもある。
 選挙では、選挙人が投票用紙に自分で候補者の名前を書くわけではない。すでに候補者の名前が印刷してある政党の投票用紙を投票用の封筒に入れるだけだ。投票所では、皆わりとオープンに、自分の好きな政党の用紙を拾い上げていく。誰がどの政党に投票したか、知ろうと思えば分かる。むろん、誰にも悟られないよう全部の政党の用紙を拾い上げて、封筒に入れるとき要らない政党の用紙を捨てる、という方法をとることができるし、そうする人も多い。

 (3)スウェーデン人の選挙への関心は非常に高く、2010年の国政選挙の投票率は85.8%だった。前回の2006年は83.0%、前々回の2002年は80.9%。
 18~24歳の若者は、他の年齢層より少し投票率が低いが、それでも2010年は79.9%、2006年は75.0%、2002年は70.7%だった。
 最も投票率が高かったのは、65~69歳の年齢層で、91.3%だった(2010年)。
 どの年齢層でも、女性のほうが男性より2~3%の高い数字を示している。
 市会議員の選挙でも投票率は高く、全体で81.6%、18~24歳の年齢層は74.1%だった(2010年)。
 ちなみに、日本の衆議院議員総選挙の場合、普通選挙が始まってからの最高投票率は76.99%(1958年)、最低投票率は59.65%(1996年)だった。スウェーデンに比べると、ずいぶん低い。市議会議員などの選挙の投票率も高いとは言えない。

 (4)スウェーデンではなぜ選挙への関心が高いか。
 スウェーデンでは、政治と市民生活の関わり合いがハッキリ目に見えるからだ。
 社会の仕組みを動かす財源は税金だ。皆から税金としてお金を集め、それをいろいろなことに有効に使おう、そのためには何を優先し、何を後回しにするか、何にどれくらいのお金を使うかを議論して決めるのが政治だ。
 スウェーデン国民の所得税は、スウェーデンの福祉を実際に運営している市(コミューン)と県に直接行き、市民は自分の納めた税金が具体的にどのように使われているかを市のレベルでチェックできる。
 <例>自分が住まう市で、経費削減のために市立図書館の開館時間が短くなった、学校給食の質が落ちた、などについて苦情を申し立てたければ、次のような方法がある。
  (a)図書館や学校にクレームをつける。
  (b)市議会の中の文化・教育委員会に直接連絡をとる。
  (c)市のホームページの「意見箱」欄に書き込んで意見を送る。
  (d)市の政党支部に言う。その政党が市議会の野党の場合などは、議会与党を攻撃するタネになるので、よく話を聞いてくれる。
  (e)地域のミニコミ紙に連絡を取って記事にしてもらう。かなり有効。

□三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』(岩波ジュニア新書、2013.2)

 【参考】
【スウェーデン】いじめ防止の取り組み
スウェーデン関係書誌
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【原発】動燃の隠蔽工作 ~「もんじゅ」事故~

2013年04月23日 | 震災・原発事故
 (1)1995年12月8日、「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故が発生した。
 事故以上に動燃の社会的信用を揺るがしたのは、その後の「ビデオ隠し問題」だった。当初、動燃は事故翌日の16児に現場撮影したビデオ(「16時ビデオ」)を公表した。これが編集されたもの、と発覚。さらに、それ以前の2時に撮影したビデオ(「2時ビデオ」)の存在まで明らかになった。
 次々に明らかになる「隠蔽工作」、事故を「事象」と言い換えて誤魔化そうとする体質・・・・西村茂生・動燃総務部次長(当時)は、不本意ながら余儀なく、ビデオ隠し問題の内部調査チーム員となった。
 12月25日、新たに「2時ビデオ」が撮影直後に動燃本社に運び込まれていたことが発覚した。
 理事長の責任が問われる事態だったが、動燃は翌年1月12日までこれを公表しなかった。この日の会見で、西村次長は、本社がビデオの存在を掴んだのは「1月10日」と、実際より2週間以上遅い期日を述べた。その理由は今に至るまでナゾのままだ。
 西村次長は、翌日の出張のため都内のホテルに宿泊。13日早朝、非常階段の下で遺体が発見された。

 (2)「ビデオ隠し」の責任者は、「もんじゅ」の責任者だったO所長(当時)とS副所長(当時)。最初に公表された「16時ビデオ」の編集と、生々しい現場をとらえた「2時ビデオ」の隠蔽を部下に命じたのだ。
 2人は更迭され、その後、停職1ヵ月の処分を受けている。
 12月30日に都内で行われた聴取において、O所長は、ビデオはほとんど見てない、事故当時の動きの5~6割はVIP対応に取られていたし、ある意味では被害者だ、などと弁明した。もっとも、聴取が進むにつれ、ポロポロと真相を漏らし出す。換気ダクトの穴は出さなくてよいと言った、「2時ビデオ」は技術的に価値がないから割り切ろうと決断した、云々。
 ウソをウソで固めるため、自分で「隠蔽」を判断し、指示していたのだ。別の聴取記録には、もっと危ない言葉が出てくる。
 <市の○○氏に対して、「16時もの生ビデオは、県(の撮影した)ビデオの2番宣旨(煎じ)になるので、これ以上追及すると撮った本人が自殺するかもしれず、追及を少しやめてほしい」といっった>
 こうした追及逃れのみならず、動燃はその「15分間の原本」を隠しとおすために、もう1本、原本に見せかけた4分間の編集ビデオを作らせていた。

 (3)O所長とともに「ビデオ隠し」を指示したS副所長の説明は、いっそう奇怪だ。
 <隠すつもりはなく、次第に明らかになるというのが公開の考え方であった。最初から公開についてはフルオープンと言っていたが、オープンの仕方はソフトにやっていくつもりであった>
 つまり、小出しにして「ソフト」に全公開していくつもりだった、というのがS副所長の言い訳だ。
 kろえは、動燃の常識でもあったらしい。
 <現場、来客対応、プレス対応等、明確に分担をわけて欲しい。現場の人がプレスに責められるとポロッと出る>
 真相はプレスに隠しておく、と言っているに等しい。だから、「ポロッと出る」とまずいのだ。事実、ビデオ隠し問題は、地元自治体や科学技術庁(当時)による立入調査の際に、現場の職員がビデオの存在を「ポロッと出」してしまったことから発覚した。
 要するに、S所長の「反省」はビデオ隠しという悪事に係る反省ではなく、「隠蔽」に失敗したことへの「反省」なのであった。 

 (4)隠蔽はビデオだけではない。
 事故翌日の12月9日2時、職員が現場に立ち入った際、ポラロイド写真も撮影していた。写真はちゃんと写っていたが、S副所長は件の調査の前にシュレッダーにかけさせていたのだ。
 内部調査で発覚したが、1997年にようやくまとめられた動燃の調査方向書では一言も触れられていない。
 また、動燃が最初に事故現場に入る前S副所長は、何とか動燃だけ入って消防には入らせない、と決めた。ナトリウムが燃焼する火災が起きていたというのに、消防にまで「隠蔽」したのだ。

□今西憲之+本誌取材班「もんじゅ事故「隠蔽」の極秘記録」(「週刊朝日」2013年4月12日号)

 【参考】
【原発】動燃による反対派つぶし「工作」の記録 ~「西村ファイル」~
【原発】動燃の裏工作部隊 ~「洗脳」と「カネ」~
【原発】動燃の組織ぐるみの選挙~「西村ファイル」~
【原発】NHKに対する「やらせ抗議」 ~科学技術庁~
【原発】プルトニウム輸送船の「日米密約」 ~原子力ムラの極秘工作~
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【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~

2013年04月22日 | 社会
 (1)TPPの影響に関する政府統一試算(3月15日公表)によれば、農業生産額は現状8兆円程度から3兆円マイナス、カロリー自給率は40%から27%に下がる。
 少し前の農水省の試算によれば、4.5兆円減、自給率は13%に下がる。こちらのほうがリアリティがある。
 政府は「強い農業」つまり輸出を強調するが、自給率13~27%の国が輸出を云々して何になる。

 (2)関税を引き下げる代わりに内外価格差相当分を直接支払いや不足払いでカバーして国(域)内農業を守るのが先進国農政の鉄則となっている。その覚悟が日本政府にあるのか。
 農業生産額に対する農業予算の割合は、米・独・韓が601%前後であるのに対し、日本はその半分だ。関税率も、平均すればEU並みに低い。

 (3)TPPがなくとも、日本農業は危機に瀬している。
 農業をふだんの仕事とする基幹的農業従事者の30%が60代、46%が70代以上なのだ。10年以内に70代以上がリタイアしたら、半減してしまう。「限界集落」(人口の5割以上が高齢者)に倣っていえば「限界農業」だ。 
 ほんとうに問われているのは、日本農業の持続的可能性だ。

 (4)世間で考えるよりはるかに規模拡大がスピードアップしている。大規模経営が増えている。ただし、日本的な意味での大規模経営であって、桁が違う米豪農業に素手で立ち向かえるわけではない。
 そもそも、日本農業は集落を基盤に成立している。1集落平均は30ha程度だ。それを超える規模拡大は集落をのみ込んでしまう。
 集落に農家が定住し、農地を耕作することで、国土・環境・景観といった多面的機能が維持されてきた。この「緑の防人」がいなくなったら、日本の国土は滅びる。安部首相のいわゆる「涙が出るほど美しい棚田の風景」を守るのは、高齢農家や兼業農家なのだ。
 広い面積を使う土地利用型農業(米・麦・大豆等)は「規模の経済」が働くから、規模拡大が必要だ。
 国民負担を減らすには低コスト化が必須だが、問題はその方法だ。個別の規模拡大が進むこと自体は望ましい。しかし、その結果、地域の農家がみんな農地を預けてサヨナラしたら、農業集落が維持できなくなる。日本農業は、水利など地域ぐるみのメンテナンスが不可欠で、少数の担い手農業者だけでは担いきれない。挙げ句の果て、農業の多面的機能も失われてしまう。
 個別規模拡大路線は、そういうディレンマを抱えている。

 (5)1990年代頃から自然発生的に取り組まれ出した農家の知恵が集落営農だ。その法人化も進んでいる。
 集落の皆が、年齢や持ち味に応じて、相対的若手が機械オペレーターを、相対的高齢者が水・畦畔管理を担当し、専門の農家や女性・高齢者が集落営農の農地の一角で園芸作に取り組む。
 こうすれば規模拡大は果たせるし、個別の規模拡大に伴う耕地分散も回避できるし、地域資源管理も可能になり、国土保全も果たせる。
 ただし、規模拡大が有効なのは平場の土地利用型農業が主で、有機農業、園芸作、中山間地域農業の処方箋にはならない。
 園芸作については、より新鮮・安全で、美味しくて栄養価があり、健康な家畜や旬の農産物を作る必要がある。中山間地の多品種少量生産物を売りさばくには、都市マーケッティングが必要だ。

 (6)いずれにせよ、高齢化は進行する。日本農業の持続可能性の最大の課題は「ひと」の確保だ。定年世代の「帰農」体制作り、若い新規就農者支援など。
 いずれにしても、一戸一戸の農家が後継者を確保できる時代ではない。例えば、集落営農の集落が、集落で一人、地域で一人の後継者を確保する時代だ。
 こうした手を打てば限界農業化は防げる。そのためにもTPPは避けなければならない。
 20世紀は農産物過剰の時代だった。しかし、21世紀に入り、世界の穀物在庫は食糧農業機関(FAO)基準の下限17~18%すれすれになっている。不足の世紀への転換だ。その今、日本に農業がなくてもよいのか。

□田代洋一(大妻女子大学社会情報学部教授)「問われているのは農業の持続可能性 ~限界農業化の危機~」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

 【参考】
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~

2013年04月21日 | 社会
 (1)TPPに参加して輸出主導の「強い農業」「攻めの農業」をつくることで現実の課題が克服できる・・・・というのは、欺瞞だ。
 そもそも、食料自給率40%未満の日本で、農産物の輸出を軸にした農業政策は成り立つか。

 (2)今進行している「農業の海外展開」とは、日本の大手商社や流通企業による「開発輸入」だ。

 (3)自国民が食べるものは自国で生産するのが基本だが、自給率100%は現実的でない。農産物の輸出入は否定しないが、大切なのは、自国で生産可能なものは拡大して自給率を向上させる政策、他国と互恵共存する貿易政策ではないか。

 (4)途上国の農民は農地を収奪され、奴隷のように働かされている。<典型例>米国の多国籍企業「Dole」。
 アフリカなどでは 日本の商社などによる農地の買い漁りも行われている。多国籍企業にとって、食料は大きなビジネスチャンスになっている。TPPもこの流れの中にある。
 日本の米、野菜といった農産物を中国の富裕層が高価格で買っている。そこに市場がある、と言われる。
 問題は、これが日本の農民の利益になっているか、だ。儲かっているのは、やはり大手商社などであって、輸出して農民の収入が増えたわけではない。

 (5)TPPの議論のなかで農協(JA)バッシングが吹き荒れている。
 農協などの共同組合は、一定の法的保護を受けている。農協の金融部門(共済、貯金)は、農民が貯金したり農機具のローンを組むなど、農民の暮らしや営農に役立てることを本来の目的としている。
 日米の金融機関や保険会社は、この金融部門に参入したいのだろう。協同の理念を否定して、大手金融資本の儲けのために変質させることが狙いだ。

 (6)TPPは「聖域なき関税の撤廃」を前提にしているが、それは米国の農産物を日本に売り込むためだ。
 「遺伝子組み換え食品」の表示を廃止することを米国は要求しているが、こうした安全性が疑われる食品を売り込もうとしているのだ。

 (7)(6)は、完全に関税主権の侵害だ。
 農民運動全国連合会は対抗するに、「食料主権」という考え方を打ち出している。
 農業は持続可能なものでなければならない。目先の利益を考えて、利潤が出なければ撤退するような株式会社の発想とは根本的に異なるものだ。農業に市場原理を杓子定規にあてはめることはできない。
 目先の利益を追い求めて農地に化学肥料を大量に投入するような農法は、生態系を破壊し、持続可能性を否定する。家族経営でこそ農業の持続性が保障される。

 (8)日本の農業は深刻な状況に陥っている。わけても担い手不足。日本の主業農家の平均年齢は65歳を超えている。
 価格・所得確保対策、輸入農産物のコントロール、フランスで成功したような後継者の確保が急務だ。こうした方向こそ、国際的に深刻な食料不足を解決するために必要な施策だ。 
 こんな時にTPPに参入するのは、日本農業の再生の芽を摘む。

□笹渡義夫(農民運動全国連合会事務局長)/聞き手:編集部「100年先を考える農業は株式会社になじまない」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

 【参考】
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
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【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
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【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
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【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
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【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~

2013年04月20日 | 社会
 (1)水利省などの調査によれば、中国の19の省の中心都市の4割で地下水がひどく汚染されている。【中国誌「南風窓」、2013年3月】
 2011年には、中国誌「新世紀」が、中国のコメの1割がカドミウムに汚染されている、という南京農業大学の調査結果を伝え、衝撃を与えた。別の試算によれば、毎年1,200万トンの穀物が重金属汚染にさらされている、という。
 汚染で退化した耕地は、絶え間なく増えている。経済が発展した南部の地域では、4割の田畑で重金属が含まれる濃度が基準値を超えている。【環境保護省が北京市内のビルの一室に設けた展示、一般公開はしていない】

 (2)中国政府も、中国の空気、水、土の汚染を認めざるを得なくなっている。
 中国内の川、湖、海、野生動物、人体から多種の化学物質が検出されている。内分泌を攪乱する物質が高い濃度で存在しているケースもある。化学物質がもたらした深刻な公害病が発生している(これまで見ないふりをしてきた)「癌村」の存在も認めた。【環境保護省が2月に発表した化学物質リスク管理計画】

 (3)水、空気、土が汚れている場所では安全な食べ物は育たない。エビアン水でも輸入して野菜、米を水栽培するしかない。【北京の環境NGOの幹部】
 しかし、そのエビアン水も偽物が横行している。
 乳幼児が被害を受けたりメラニン入りの粉ミルク、廃棄物から作った有毒油(地溝油)が流通している。高級スーパーで売られている通常の2~数10倍の価格の有機野菜でさえ懸念しつつ買うのが実情だ。
 共産党の幹部が子息を外国に送るのは、懐のカネを安全な場所に移す拠点を作りたい思惑もあろうが、我が子を安全な環境で育てたい思いもあろう。【北京の環境NGOの幹部】

 (4)中国産「危険食品」小史
 2002 中国産冷凍ホウレンソウから基準を上回る農薬クロルピリホスが検出され、回収。
 同年  中国製やせ薬を服用し、肝機能障害、甲状腺障害などで死者が出た。
 2005 中国産ウナギから発癌性物質マラカイトグリーンが検出された。
 2006 パナマで、中国産原料使用の風邪薬服用による死者が出た。
 2007 モンゴルや中国で、中国産インスタントラーメンを食べたことによる死者が出た。
 同年  北米で、中国産原料を使ったペットフードを食べた犬や猫が大量に死亡。
 同年  中国で製造されたおもちゃ「機関車トーマス」の塗料から鉛が検出された。
 2008 中国製冷凍ギョーザを食べた10人が食中毒に。ギョーザから農薬成分メタミドホスが検出された。
 同年  中国などで化学物質メラミンが混入した粉ミルクが出荷されていたことが明らかになった。 
 同年  中国産冷凍インゲンから農薬ジクロルボスが検出された。
 同年  米国で、中国産材料を使った薬剤ヘパリンを注射された人の死亡が相次いだ。
 2010 下水道の汚水を精製するなどして作られる食用油が出回っていることを初めて中国政府が認めた。
 2012 ドイツで、中国産冷凍イチゴを食べた1万人の子どもがノロウィルスに感染し、下痢、嘔吐。
 2013 上海で1万頭を超す豚の死体が発見された。

□吉岡桂子(朝日新聞編集委員)「「黒心食品」発生の現場 ~習近平新体制が背負う重い課題」(「AERA」2013年4月22日号)

 【参考】
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
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【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知

2013年04月19日 | 社会
 2013年3月15日。安倍晋三・首相がTPP交渉への参加表明したこの日は、後に歴史を振り返ったら、日本にとって「主権喪失の日」として記憶されるだろう。
 安部首相は、戦後初の日米共同作業である日本国憲法は米国の「押しつけ」だ、という。そして、改憲を目論む。
 他方で、TPPへの参加は米国との共同作業だ、という。米国の「押しつけ」であることが明らかなTPPに、なぜ反対しないのか。
 論理破綻もはなはだしい。

 TPP交渉参加に当たって5品目等の除外規定を守る、と安部首相はいう。
 農林水産品については、現在発効済みの自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)で、約9,300品目の90%が自由化されている。残り10%の830~840品目だけがずっと例外だった。
 TPPは、この除外をゼロにするか、多くとも1%以下にする条約だ。安部首相は例外を「勝ち取る」と言っているが、そんなことが可能なのか。

 カナダ、メキシコですら、交渉参加までに11ヵ月もかかった。
 今年10月に開催されるAPEc首脳会議で交渉が「完了」する可能性もある。日本は間に合うのか。

 アベノミクスをア「ベロ」ミクスと呼びたい。安部首相は、口先だけで中身が伴っていない。

□篠原孝(衆議院議員/元農林水産副大臣)/まとめ:弓削田理絵(編集部)「党議拘束を外せばTPPは批准されないだろう」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

   *

 (1)JA山口中央会は、2月、江島潔・候補(自民党公認)の推薦を決定した。3月15日、TPP交渉へ安倍晋三・首相が参加表明したが、方針は変わらなかった。3月12日、JA4,000人集会で、石破茂・自民党幹事長が「TPP6項目」を守る、と断言したからだ。

 (2)参院山口補選(4月28日開票)は、今夏の参院選の前哨戦だ。TPPも争点の一つだ。
 平岡秀夫・候補/元法務大臣(民主党推薦)は、TPPに慎重な姿勢だ。
 これに対し、自民党は二枚舌的な対応をしている。同じ集会で、違う対応をしているのだ。
  (a)4月2日に江島候補の集会で支援あいさつをした岸信夫・衆議院議員(安部首相の弟)は、TPPに一言も触れなかった。「農業が守れなかったら交渉を離脱するのか」という問いに、「そんな簡単な話ではない。『日本が乗れないようなルールを作る交渉にしてはいけない』」と答えている。日本側の思い通りに交渉が進むのか、という疑問には応えていない。
  (b)江島候補からは違う答えをしている。「自民党側は重要5品目が守れないと交渉離脱、とはっきり言っている。安部首相も林芳正・農水大臣も山口県から出ているので、県民には両国会議員を信じてもらいたい」

 (3)安部首相は、2月28日の施政方針演説で、「攻めの農業政策」「未来に希望が持てる『強い農業』」を訴えた。
 こうした農業成長論は、農業の現場を知らない絵空事。農産物の輸出を増やす、と政府がいくら声をかけても、山形のさくらんぼのような輸出競争力を持つ農産物は全体のごく一部。しかも、強い農業を作るのに欠かせない会社更生法の整備すら農業分野では手がつけられていない。【JA鹿児島の元幹部】
 農業成長論のごとき机上の空論の台頭に、農業関係者の不満や怒りが徐々に鬱積しつつある。

 (4)甘利明・経済再生担当大臣は、3月15日の記者会見で、サトウキビについて不勉強な発言が飛び出した。
 TPP参加でサトウキビの関税が撤廃されると、尖閣防衛の最前線の石垣島などの離島の主力産業が打撃を受け、人工が減って離島防衛力が落ち、防衛費が余計にかかる。TPP参加で南西諸島の住民が激減した場合、陸上自衛隊と海上自衛隊と海上保安庁の1万人規模の人員増が必要になる。その費用は、人件費だけで毎年845億円。それ以外の装備費で9,000億円にも及ぶ。【山田吉彦・東海大学教授】
 この「離島防衛のマイナス効果」について問われた甘利大臣は、「仮定の質問についての答えは控える」と逃げた。
 台風常襲地帯の沖縄で、台風に強いサトウキビ以外にどんな作物を作ればいいのか。サトウキビ農家だけでなく、精糖工場、関連産業も打撃を受ける。石垣島のパイナップル工場は自由貿易になってからなくなった。それと同じことがサトウキビでも起きるのは確実。甘利大臣は、TPPが利用に与える悪影響、弊害を分かっているのか。【前津究・石垣市議】

□横田一(ジャーナリスト)「綻びをみせはじめた自民とJAの蜜月」(「週刊金曜日」2013年4月12日号)

 【参考】
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
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【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
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【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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【スウェーデン】いじめ防止の取り組み

2013年04月18日 | □スウェーデン
   

 (1)さまざまな取り組みの一例。
  (a)各学校ごとのプロジェクト。
    ①上級生や教師が「いじめr撲滅グループ}をつくり、休み時間に学校内を巡回する。
    ②上級生が数人の下級生の「おにいさん・おねえさん」になって、自分の「弟・妹」の様子を定期的にチェックする。
    ③「ファシュタ・モデル」
  (b)学校庁による指針。
  (c)民間のいじめ防止団体。
    ・民間団体が各学校に行き、いじめに関する授業やセミナーを行う。
  (d)児童保護のための公的団体(<例>児童オンブズマン)。

 (2)(1)-(a))に属する「ファシュタ・モデル」は、最近導入された。成果をあげ、注目されている。ストックホルム南部のファシュタ地区の教師が1990年代に始めた試みを原点とする。
 次のようなプロセスで行われる。ちなみに、学校庁の調査(2010年)によれば、4~9年生の7~8%がいじめに遭っていた(1.5%は1年以上の長期的ないじめに遭っていた)。
  (a)いじめ対策グループ(教師)が、生徒Aがいじめられている、という情報を得る。グループ内で、それがいじめであるか否か、どのような対策が講じられるか、を議論する。より詳しい情報を得るために、秘かに、教師やいじめられている生徒の親とコンタクトをとる。
  (b)生徒Aと個別に話す。何か起きたか、頻度、期間、誰がいじめているか・・・・。
  (c)いじめている(疑い)生徒B(B1+B2+B3・・・・Bn)が学校にいるとき、彼らを一人ずつ呼んで対話する。対話は大人2人が行い、一人が生徒と話し、一人が記録する。呼ばれる生徒Bは、事前に知らされることはない。学校がそのいじめに注目していることも知らされない。生徒 Bには、学校がいじめについて知っていること、その状況を深刻だと考えていること、いじめは直ちにやめなければならないことが知らされる。生徒 Bは、具体的に何をしたかを話す。なぜいじめたか、いじめは道徳的に許されない、といった議論は行わない。対話の雰囲気は、罰を与える、というのでもなく、許しを与える、というのでもない。話をする大人は、実際に起こったことが確かなことについてのみ話す(不確かなところがあってはならない)。生徒 B自身が、いじめをやめるために何をするかについて話す。
  (c-2)この対話が全体で最も重要な部分だ。 生徒 Bには、近いうちにまた対話に呼ばれることを知らされる。生徒 Bは、帰宅してからいじめについて親に話さねばならないこと、親が学校にコンタクトをとらねばならないことを知らされる。フォローアップの対話に至る間、大人たちが生徒 Bがいじめをちゃんと自分で止められるかどうかを確かめる。
  (c-3)生徒Aのフォローアップは長期にわたり継続的に行われる。生徒Bと大人との対話の後、状況がどうなったかについて、確認される。生徒Aが支援を受けることが重要だ。
  (d)フォローアップの対話においては、生徒A、生徒Bが現状をどう思っているかを語る。生徒Bは問題が明るみに出て自分自身の行動を正すためにヘルプを受けられたことを感謝する。
  (d-2)いじめた理由を追及するのではなく、いじめを止めるために具体的に何をするかに注目しているのが重要なポイントだ。

 (3)スウェーデン独自のいじめ防止民間団体は5~6あり、うち歴史が長くてよく知られているのは「フレンズ」だ。1997年、サラ・ダンベル(当時20歳)によって設立された。「フレンズ」は、学校、保育所、スポーツクラブで活動し、全国数ヵ所に事務所を持ち、約40人がフルタイムで働いている。活動費は、個人や企業からの寄付、いじめ撲滅のための公的資金からの援助などで賄われる。
 「フレンズ」は、ホームページで若者に向けて「どうやったら私はいじめを阻止できるのだろう?」というテーマで、次のようなメッセージを送っている。
  (a)「気にかける」
  (b)「人間がダメなのではなく、行動が間違っているんだ、と示す」
  (c)「よい雰囲気をつくる」
  (d)「やめなよ、と言う」
 ・・・・「フレンズ」のやり方は日本でも適用できるのではないか。いじめっ子に対して「やめなよ」と言うと、こんどは自分がいじめられるのではないか、と、ちょっと怖くなってしまうかもしれない。しかし、いじめられている子と、「やめなよ」と口にできる勇気を持ったあなたと力を合わせれば、もはや一人ではない。たった一人で悩まないで済む。そこから突破口が開けるのではないか。
 (a)以下、タイトルしか惹かなかったが、それぞれ詳しく語りかけている。(d)では次のように。
 「止めなさい、と言ういろいろな方法があります。いじめている子どもたちが誰かに意地悪をしているとき、いじめている子たちと一緒にならない、ということを示すだけでも、それは友だちの良い模範になります。止めなさい、ということを示す一つの良い方法は大人に話すことです。言いつけるのではありません。だって、いじめは法律違反なのですから。そうすることで、あなたはいじめられている子、いじめている子のために役立つのです。もう一つの良い方法は、友だちに手伝ってもらうことです。一緒になれば、あなたたちはより強くなれます。あななたちは、いじめに参加しない、ということで、他の子どもたちにプレッシャーをかけ、だんだんと仲間を増やしていけばよいのです」

□三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』(岩波ジュニア新書、2013.2)
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【沖縄】 「普天間基地返還の時期明示」の欺瞞

2013年04月17日 | 社会
 (1)「沖縄における在日米軍施設・区域に関する総合計画」が、4月5日に発表された。
 安部首相いわく、「沖縄の負担が軽減できる」、「時期を明記した」。
 ほんとか?

 (2)計画の内容は、安部首相の宣伝とはかなり異なる。当然、沖縄では疑念、抗議の声が上がった。
 一方的に日本側だけが得をする合意なぞあり得ない(外交交渉の常識)。
 実情は、「霞ヶ関文学」を駆使して、「安部首相が時期明示を勝ち取った」という演出をしたにすぎない。
 こういう時は、書かれた文言をよく分析しなくてはならない。
  (a)「総合計画」の表題に「基地返還」の文字はない。この計画は基地返還を目的としたものではなく、返還と負担軽減はその付随的結果にすぎないのだ。合意文には「負担」という言葉すら無い。「地元への米軍の影響」という中立的な言葉が使われている。米国への配慮だ。
  (b)「沖縄住民の強い希望」という言葉はあるが、「希望」に応えるとは書いてない。単に「認識」するとしか書いてない。しかも、誰が認識するのか、主語がない。わざと曖昧にしてある。これも米側への配慮だ。
  (c)冒頭の文章の中に、次の文言がある。③の主語は日本国政府だ。この合意で、移設の責任を全面的に日本が負うかのような表現になっている。これに対し、①と②の主語は両国政府ないし米国政府だ。「再」確認とか、「引き続き」とかいう言葉を入れて、米側が新たな義務を負ったわけではないことを明確にした。
    ①「日米両政府は、(中略)コミットメントを『再』確認する」
    ②「米国政府は、(中略)『引き続き』コミットしている」
    ③「日本国政府は、(中略)必要とする全ての機能及び能力を(中略)移設する責任に留意した」

 (3)オスプレイ配備の際に発表された日米合意を想起されたい。
 日本国政府は、人口密集地域を避け、転換モードでの飛行は基地内に限る、といった説明を行った。
 しかし、普天間での現状は全く逆だ。
 合意文書によれば、「できるかぎり」「可能な限り」という言葉が並んでいる。
 米側の解釈は、最初から「自分たちができないと判断すれば、制限は自由にはずしてよい」というものなのだ。

 (4)霞ヶ関や永田町の住民には、国民の気持ちに寄り添う、という発想はない。マスコミを誘導すれば国民を騙せる、と思っている。
 その最たるものが、今回の普天間返還「時期の明示」だ。
 「2022年度またはその後に返還可能」・・・・これを霞ヶ関流に読めば、「いつか返還するが、2022年度までは返還しない」という意味でしかない。
 ズバリ言えば「2022年度以降返還」ということだ。しかし、これだと時期明示とは言いにくい。だから、分かりにくく訳したのだ。あまつさえ、返還時期は3年ごとに更新される、とまで書かれている。

 (5)しかも、返還は条件つきだ。
 驚くべし、普天間基地返還の条件の中に、辺野古の埋め立てを1年以内に沖縄県が許可することが入っているのだ。
 先日の申請そのものに憤りの声があがっている。こんな状況の中で、こうした条件を入れる厚顔には驚くしかない。
 が、このまま押せば、カネ欲しさで賛成に回る層が増える。分断作戦が成功すれば、あとはカネと力でどうにでもなる。・・・・というのが、官僚と自民党の読みだ。
 安部首相が、日本を自分の好きな「主権国家」に本当にさせたいなら、「憲法改正」より、占領政策の延長である日米地位協定改定こそ、取り組むべきだ。

□古賀茂明「沖縄基地返還のまやかし ~官々愕々第60回~」(「週刊現代」2013年4月27日号)

 【参考】
【沖縄】差別の構造化 ~琉球新報・沖縄タイムス~
【沖縄】に対する構造的差別 ~オスプレイ問題~
【沖縄】の青い空は誰のものか ~オスプレイ問題~
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