語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】芽キャベツ ~高い栄養価~

2018年01月31日 | 医療・保健・福祉・介護
 芽キャベツは高さ50~60センチメートルほどに伸びた茎に小さな脇芽がびっしり付いたもの。1株で50以上の芽キャベツが取れることもあるそうだ。
 キャベツの変種として19世紀にヨーロッパで広まり、日本には明治以後に入ってきたという。
 芽キャベツは高温多湿に弱いため、秋に種をまいて収穫はちょうど今頃になる。市場に出回る国産品の生産量は334トンで、91%が静岡産となっている(「平成26年産地域特産野菜生産状況」農林水産省)。
 キャベツの生産量の144万6千トンに比べたら目立たない存在だが、栄養価はとても高い。旬の時期にはシチューやスープに入れて食べたい。
 ビタミンCはキャベツの4倍、赤ピーマンとほぼ同量で、野菜の中ではトップクラス。ベータカロテンはキャベツの7~10倍、抗酸化力の栄養成分とされるルテインも豊富に含んでいる。このほかビタミンK、ビタミンB2、カリウム、食物繊維も多い(「七訂食品成分表」女子栄養大学出版部)。

□南雲つぐみ(医学ライター)「芽キャベツ ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年1月28日)を引用
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【佐藤優】官僚を信用していない国民

2018年01月31日 | ●佐藤優
 ①ハーバーマス(山田正行、金慧・訳)『後期資本主義における正統化の問題』(岩波文庫 970円)
 ②秋山謙一郎『弁護士の格差』(朝日新書 720円)
 ③橘木俊詔『男性という孤独な存在』(PHP新書 860円)

 (1)①は、資本主義体制を維持するために国家が経済に介入するメカニズムを精緻に解明している。
 <構造の面から見て脱政治化された公共圏においては、正統化の需要は収縮し、二つの欲求が残る。まず、国民の私生活主義、すなわち出世志向、余暇志向、消費志向と結びついた政治的な権利放棄は、(金銭、労働から解放された時間、安全というかたちでの)それに見合った体制順応的な補償への期待をあおる>
 とハーバーマス氏は指摘するが、為政者に順応する仕組みが、現代社会の至る所に組み込まれている状況が本書を読むとよく分かる。

 (2)②を読むと、弁護士という職業がエリートであるとの認識が誤っていることがよく分かる。
 <弁護士が「高収入」職業の代表格だったのは、せいぜい1990年代のバブル崩壊前後までといわれている。2000年代に入ってからは、年々、その所得額は減り続け、今では、「年間所得額1,000万円超え」の弁護士の割合は、かつてと比べ、ぐっと少なくなってきた。代わりに目立ってきたのが「年間所得400万円以下」という弁護士だ。
 食べていけないとの理由で弁護士バッジを返上、他の職業へと転じる人が、ベテラン、中堅、若手と年代を問わず、増えてきたというのも頷ける。
 2000年代初頭こそ、弁護士みずからの意思でその登録を抹消する者は100人前後だった。しかし年々、その数は増え続け、2012年にはついにその数は300人を超えた>
 ということだが、能力が基準に達していない弁護士が淘汰されるのは、当然のことと思う。裁判官、検察官については、能力が低くても、それが可視化されにくい。この点にもメスを入れていく必要があると思う。

 (3)③は、男性に焦点を当てているが、浮き彫りになるのは日本社会のゆがんだ構造だ。
 <なぜ国民は、意識としては福祉国家を理想としながらも、税や社会保険料の負担アップ策を嫌うようになったのか。財界、保守政治家、一部の経済学者の主張する経済へのマイナス効果を恐れる面もあるが、もっと重要な要因は、負担を重くしても政府からのサービス提供に期待できない、とみなすようになった点である>
 と橘木氏は指摘するが、その通りと思う。政府は抽象的な存在ではなく、官僚によって担われている。日本の最大の問題は、国民が官僚を信頼していないことだ。官僚が首相官邸の意向の忖度にエネルギーのほとんどを費やすことをやめ、国益(国家益+国民益)を増進するための政策を展開することが急務だ。

□佐藤優「官僚を信用していない国民 ~知を磨く読書 第233回~」(「週刊ダイヤモンド」2018年2月3日号)
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【佐藤優】アナキズムという思考実験
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【佐藤優】指導者たちの内在的論理を知る
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【佐藤優】リーダーが知るべき文明観、資本主義後の社会構想、刑務所暮らし経験者の本音
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【佐藤優】手ごわいフェイクニュース、国を動かす政治エリートの意志、欧州内部における紛争
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【佐藤優】国際人になるための教科書、ストレスが人間を強くする、日本に易姓革命はない
【佐藤優】ロシアでも愛された知識人の必読書 ~安部公房『砂の女』~
【佐藤優】トランプ当選予言の根拠、猫の絵本の哲学、人間関係で認知症を予防
【佐藤優】モンロー主義とトランプ次期大統領、官僚は二流の社会学者、プロのスパイの手口
【佐藤優】トランプを包括的に扱う好著、現代日本外交史、独自の民間外交
【佐藤優】デモや抗議活動のサブカルチャー化、グローバル化に対する反発を日露が共有、グローバル化に対する反発が国家機能を強化
【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
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【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
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【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
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【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
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【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
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【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
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【佐藤優】「暴君」のような上司のホンネとは? ~メロスのビジネス心理学~

2018年01月30日 | ●佐藤優
 ★太宰治「走れメロス」(『女の決闘』、河出書房、1940、所収/『走れメロス』、新潮文庫、2005、ほか)

 (1)小説家は誰も「小中学校の教科書に長い間載るような作品を残したい」という欲望を秘かに抱いているのではないか。
 太宰治が現在もっともよく知られた作家であるのは、教科書で「走れメロス」に触れた人が多いからではないか。
 「走れメロス」は、古代ギリシャ神話とシラー(19世紀ドイツの詩人)の詩を元にしている。翻案で評価される小説を書くことは、まったくの創作よりも難しい。もっとも、人生に対して後ろ向きの作風を売りにする太宰としては、人間の善意を表面から評価する小説は、翻案の形でしか書けなかったのかもしれない。

 (2)書き出しから、読者を作品の中に引き込んでいく技法は見事だ。
 <メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らして来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里離れた此のシラクスの市にやってきた>
 しかし、街の様子がひどく暗い。
 <路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
「王様は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居ませぬ。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世継ぎを。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキスさまを。」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮らしをしている者は、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」
 聞いて、メロスは激怒した。 
「呆れた王だ。生かして置けぬ。」

 (3)この小説は、「新潮」の1940年5月号に発表された。太平洋戦争の1年半前だ。日中戦争の泥沼から抜け出せず、暗くなっている日本と作品の中のシラクスの街が二重写しになる。

 (4)メロスは、ディオニス王の前に引き出される。王は、人間は信用できないと言う。メロスは、人を疑うのは恥ずべきことだと反論する。メロスは処刑されることになったが、シラクスで石工をしている親友のセリヌンティウスを人質として王のもとにとどめおくことを条件にして、妹の結婚式を行うために3日間の猶予を乞う。王は、メロスが死ぬために戻って来るはずはないと考えるが、セリヌンティウスを処刑して人を信じる事の馬鹿らしさを証明してやると考え、メロスの願いを受け入れた。

 (5)クライマックスは最後の箇所だ。
 <最後の死力を尽くして、メロスは走った。メロスの頭はからっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけもわからぬ大きな力にひきずられて走った。陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。(中略)「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、囓りついた。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスの縄はほどかれたのである。「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮かべて言った。「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
 セリヌンティウスは、すべてを察した要するで首肯(うなず)き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み、
「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
 メロスは腕に唸りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
 群衆の中からも、歔欷(きょき)の声が聞こえた。暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」>
 
 (6)ディオニス王が、本当に悪人だったならば、この程度の出来事で心を動かされたりしない。潜在意識において、王は人間的信頼関係を確かめたかったのだ。その実例を知りたかったのだ。
 一見、暴君のような上司が、潜在的には信頼に飢えていることがある。そういうときには、「走れメロス」型の演出が意外と効果をあげることがある。

□佐藤優「「暴君」のような上司のホンネとは? メロスのビジネス心理学 ~名著、再び ビジネスパーソンの教養講座 第26回~」(「週刊現代」2017年2月25日号)
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 【参考】
【佐藤優】物まね芸人とスパイの共通点、新版太平記の完成、対戦型AIの原理

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【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
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【南雲つぐみ】法定相続情報証明制度 ~相続手続きの簡略化~

2018年01月30日 | 医療・保健・福祉・介護
 親族が亡くなったときに対応しなければならない相続手続き。一生のうちに何度も経験することではないため、そう分かりやすいものではない。
 法律に詳しくない人にとって煩わしいのは、手続きに必要な書類の多さだ。亡くなった人の戸籍謄本や除票、相続する側の印鑑証明などを、銀行や登記所(法務局)、保険関係など必要な窓口に出すために、何度もそろえなければならない。
 この手間の多さを少しでも解消するためにできたのが「法定相続情報証明制度」で、昨年【引用者注】5月からスタートしている。
 この制度では、まず、管轄の登記所(法務局)に戸籍除籍謄本などの一式と同時に、相続関係を一覧にした「法定相続情報一覧図」を提出。すると、登記官がその一覧図に認証文を付けて写しを無料で交付する。
 あとの相続の手続きは、すべてこの一覧図を使うことで、戸・除籍謄本などを何度もそろえる必要がなくなる。詳しくは、。最寄りの登記所に問い合わせを。

 【引用者注】2017年。

□南雲つぐみ(医学ライター)「法定相続情報証明制度 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年1月27日)を引用
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【佐藤優】権力は金で買える ~『武器を磨け』~

2018年01月30日 | ●佐藤優
 <認識すべきことは、「お金=権力」であるということだ。世の中の大多数の人には、この認識が決定的に抜け落ちているのである。主流派経済学、近代経済学をやっている人にはこれがわからない。
 資本家は常に資本を蓄積し続けることによって、いつの間にか「お金」という権力を手にする。お金があれば権力が買えるわけである。
 たとえば「サウジアラビアに女性の国会議員は何人?」というのも、引っかけ質問だ。そもそも国会自体が存在しないからである。諮問評議会はあるが国王による任命制であり、法律も国王の勅令による。サウジアラビアなどは極端な例だが、一部の金持ちが権力を手にすることができるのは日本も同じだ。だからこそ、政治資金規制法などで個人が政治家に献金できる額には上限が定められ、細かな記録も義務づけさせているわけである。
 『キングダム』では強大な財力で秦国の実権を握った呂不韋が政と「天下を語る上で大切なこと」について議論を交わす場面がある。天下の起源は「金」であると呂不韋は断言する。
 お金こそが人類最大の発明であり、お金をどれぐらい持っているかで人の裕福度が計れるようになってしまった。当然、そこには他者よりも多くの「お金」を得たいという欲が生まれる。もともと物々交換で生きてきた人々に、より多くのお金を得るためその影響範囲を広げたいという新たな欲も生じる。 
 かつての世界は「天」の恩恵にあずかる世界であり、「天の下」はあくまで天に支配されるものであったが、人々がお金を手にしたことで、本来「天の下」であったはずの人々が「天下」を握りたいと考えるようになったのである。
 まさか「お金」を手にしただけで人々がここまで増長するとは「天」も驚くだろうと呂不韋は語るが、まさに「お金」がこの人間の世をつくっているということなのだ。>

□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』』 (SB新書、2018)の「第2章 組織を泳ぎ切る」の「知恵の力を過信するな」の「権力は金で買える」を引用
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 【参考】
【佐藤優】総合力=知恵×力の二乗 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~
【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~
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【俳句】恩田侑布子「(俳句時評)桃源へのほそ路」 

2018年01月29日 | 詩歌
 古典を読むのは、それが書かれた日から現在までに経過したすべての時間を読むようなものだとボルヘスはいった。
 芳賀徹は『文明としての徳川日本』で、江戸時代を封建社会という「夜明け前史観」から解放する。徳川の平和(パクス・トクガワーナ)という文化の肥沃(ひよく)時代として捉え直すのである。その文化の円熟期の民衆による民衆詩を代表するのが蕪村である。子規の説く積極的・客観的美の蕪村像より、萩原朔太郎の「郷愁の詩人」に近く、四海浪(なみ)静かな「安らぎの詩人」があらわれる。わびさびの求道者芭蕉とは違う、ゆるやかに艶なる詩を練り絹のような筆がよみとく。
 《うづみ火や我かくれ家(が)も雪の中》
 《うづみ火や終(つひ)には煮(にゆ)る鍋のもの》
 低生産、低成長、知足安分の弱火(とろび)のような平和な社会に、蕪村のけだるさや倦怠(けんたい)の消極的な美は釣り合う。かくれ家は小さく狭くほの暗いほど安らかである。
 《桃源の路次(ろし)の細さよ冬ごもり》
 桃源の路次は細いだけでなく、最後には緩やかに下って行かねばならぬものという。そういえば、川端康成の『雪国』もトンネルという「路次の細さ」の奥にあった。芭蕉の『おくのほそ道』もまた。
 では、スマホのフラットな小窓に消光する現代人の桃源の路次はどこに。この時、情報・モノ・カネが目まぐるしく狂騒するグローバルな現代が田沼時代の蕪村から逆照射される。徳川文化は十九世紀西洋にジャポニスムという豊饒(ほうじょう)な芸術の泉をもたらした。分断と非寛容の今世紀に「俳諧的平等主義」がジャポニスム第二波を巻き起こせたらいい。

□恩田侑布子「(俳句時評)桃源へのほそ路」(朝日新聞 2017年1月29日)を引用
(俳句時評)桃源へのほそ路
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【南雲つぐみ】聞こえにくい音 ~傾向と対策~

2018年01月29日 | 医療・保健・福祉・介護
 20代ぐらいまでの若者にだけ聞こえる高周波音を「モスキート音」という。夜の公園などにたむろする若者を減らすために使われて、話題になったことがある。
 耳の穴から入った音は鼓膜を振動させ、その奧の内耳にある「有毛細胞」に伝わる。有毛細胞には外有毛細胞と内有毛細胞の2種類があり、位置によって分析する音の周波数が違う。
 しかし、音は周波数に関係なく、内耳の入り口から入るため、長い期間がたつにつれて外側にある有毛細胞からダメージを受けていく。この部分の有毛細胞は、高い周波数の音の分析を担当しているため、年齢とともに高い音が聞こえにくくなる。例えば電話のベルや冷蔵庫の警告音、電子体温計の音などがそうだ。また、会話中の音の微妙な周波数の差を捕らえられなくなるため、言葉全体が不明瞭に聞こえ、テレビを見ていても、若い芸人さんの早口でのやりとりなどは意味がつかめないかもしれない。
 家族は大声を出すよりも、顔を見ながら、落ち着いた声でゆっくり発音するだけでも聞こえ方が違ってくるようだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「聞こえにくい音 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年1月29日)を引用
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【南雲つぐみ】目の疲れ取り ~目の負担を和らげるとされるツボ~

2018年01月29日 | 医療・保健・福祉・介護
 疲れやストレスがたまったとき「光をまぶしく感じる」ことがある。
 強い光を感じると、黒目の中央部分にある瞳孔が収縮して、目に入る光の量を抑える。このコントロールを行っているのは自律神経だが、ストレスなどで調整がうまくいかないと、まぶしさを強く感じてしまうのだ。
 こうした目の負担を和らげるとされるツボの一つに「四白(しはく)」がある。「四方が明るくなる」という意味で、目の下にある骨、眼窩下縁(がんかかえん)の中心から1センチメートルほど下がったところにある。
 ここに指を乗せ、顔を下に向けるようにして、ぐーっと押してみよう。目や目の周りの薄い皮膚を傷付けないよう、爪は切っておくと良い。
 パソコン作業では、特にディスプレーからの白い光が目を疲れさせる。仕事の合間にこうしたツボ押しでリフレッシュしておこう。
 「四白」は、顔のむくみや目の下のクマの解消にも効果があるとされている。朝起きたときの顔のむくみ、目が腫れぼったいと感じるときなどにも良いようだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「目の疲れ取り ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年10月19日)を引用
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【保健】ついに薬もIoT ~胃液センサーで服薬管理~

2018年01月29日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)2017年秋、米国食品医薬品局(FDA)が服用センサー内蔵の経口薬を承認した。日本でも発売されている統合失調症の治療薬「アリピプラゾール(製品名:エビリファイ)」に0.5ミリ四方のセンサーを組み込んだもの。
 患者が飲んだセンサー内蔵薬が胃で溶けると、胃液にセンサーが反応してシグナルを発する。そのシグナルを患者の二の腕に貼った「パッチ」が検出し、服薬の日時を記録。同時に患者の活動量の記録をとり、専用アプリケーションに送信する仕組みだ。気分や睡眠状況などのヘルスケアデータもスマホ等で入力できる。また、センサーは消化吸収されることなく、ふん便中に排泄される。

 (2)統合失調症をはじめ精神疾患の患者は、病識の有無や体調次第できちんと薬を飲めないことが多い。服薬状況の変動は症状を悪化させるため、口を酸っぱくして「薬を飲みなさい」と繰り返す家族や介護者の負担は相当のものだ。
 米国では服薬遵守率の悪化による入院負担などで、年間1,000億ドルの医療費が余分に費やされているとの試算もあるという。

 (3)今回承認された「デジタルメディシン」は、服薬状況とその前後の状態を、いわば“見える化”する機能を備えている。本人の病識と治療に参加する意欲を促進する効果がありそうだ。また、本人の同意があれば専用アプリとインターネットを介し、医師や家族と情報を共有することも可能だ。治療効果を客観的に確認することで、薬の変更や減薬にも役立つ。
 FDAのプレスリリースには、「薬を実際に飲んだかを追跡できるのは一部の患者に有益」とのコメントが載った。患者によっては「監視されている」と感じ、治療や医師に不信感を募らせる可能性があるから「一部」なのだろう。
 精神疾患のみならず、慢性疾患の治療薬はきちんと飲まなければ意味がない。しかし、降圧剤や糖尿病治療薬の一粒一粒に服用センサーが内蔵されている未来は、少々煩わしい。
 この新しい技術を「医師・介護者の利便性」ではなく「患者本人の最善」のためにどう使うのか。慎重な議論が必要だ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「ついに薬もIoT/胃液センサーで服薬管理 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.383~」(「週刊ダイヤモンド」2017年1月27日号)
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 【参考】
【保健】犬を飼うと長生きする ~特に、一人暮らしにお勧め~
【保健】何年禁煙したら帳消しになるか ~女性は11年、男性は~
【保健】食後の血糖値スパイク ~カーボ・ラストでまったり改善~
【保健】米砂糖業界の苦々しいお話 ~不利なデータを半世紀も隠蔽?~
【保健】対人過敏は早く老ける? ~遺伝子レベルに影響~
【保健】慢性便秘に「考える人」 ~全国1,000万人のお悩みに~

【保健】ストレスでがんリスク上昇 ~ただし、男性に限る~
【保健】死亡率が最大5倍超に ~がん代替療法の選択で~
【保健】認知症と性格の関係 ~責任感は予防的に働く~
【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
【保健】ビタミンB群の過剰摂取にご注意 ~男性の肺癌発症リスクが上昇~
【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
【保健】ヒアリにどう対処する? ~アナフィラキシーに注意~
【保健】鬱に効くボルダリング ~悲観的な自動思考を解消~
【保健】主食をしっかり食べると公平な判断ができる
【保健】梅雨明け~お盆は熱中症の季節 ~危ない人、予防と対応法~
【保健】塩分過剰で空腹に ~高血圧どころかメタボに~
【保健】満腹より栄養素に目を向けて ~収入が低い世帯は主食頼み~
【保健】だるいときほど階段昇降を ~カフェインより効果的~
【保健】成人ADHDの予備診断 ~六つの質問でクリーニング~
【保健】“ベンゾ系薬剤”に注意 ~常用量でも薬物依存を形成~
【保健】ギャンブル依存症ってなに? ~最新の定義は「プロセス依存」~
【保健】グルテンフリー食の功罪 ~結局、2型糖尿病に?~
【保健】アジア系2型糖尿病でも全がん死リスクが上昇
【保健】「男の更年期」改善効果に疑問符 ~テストステロン補充療法~
【保健】狩猟・採集民族のチマネの人々に学ぶ ~現代的な生活は健康リスク~
【保健】玄米でカロリー消費! ~30分程度の運動に匹敵~
【保健】1日あたり0.5合程度が上限 ~認知症を予防する飲酒量~
【保健】電子たばこで禁煙補助? ~英米で見解の相違~
【保健】二つの睡眠時無呼吸症候群 ~閉塞性か中枢性かで違い~
【保健】不安やうつはがんの初期症状? ~結腸・直腸、膵臓などで関連~
【保健】赤身肉は魚や鶏肉に置き換えて ~大腸憩室炎の発症リスクを軽減~
【保健】学会監修の防災セットが限定発売 ~心臓を守るリストも~
【保健】前立腺癌の手術で優れているのは ~ダ・ヴィンチvs人の手~
【保健】サウナで認知症リスクが低下 ~本場フィンランドの報告~
【保健】ポケモンGOで運動量up! ~仲間でワイワイの効果~
【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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【佐藤優】『40代でシフトする働き方の極意』

2018年01月28日 | ●佐藤優
★佐藤優『40代でシフトする働き方の極意』(青春新書インテリジェンス 840円)

 <多作の著者ですが、こうしたテーマはちょっと意外、と驚かされたのが佐藤優さんの『40代でシフトする働き方の極意』。世代にも運・不運があり、現在の40代は、バブル崩壊後の就職氷河期などで苦労した世代。その世代にスポットを当てることで働き方や発想力、リーダーシップなどについて一歩踏み出すための方策を考えていきます。著者自身は50代後半ですが、50代になるとネガティブな意味ではなく「絞り込み」が進みます。そこで偏見を持たないためにも40代は充実した教養や感性が大切だと訴えます。ハウツー本ではなく共に考えていく姿勢が刺さります。>

□昼間匠(リブロ営業推進部マネージャー)「真のリーダーシップを教える幕末の名代官の一代記  ~目利きのお気に入り~」(「週刊ダイヤモンド」2017年2月3日号)
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 【参考】
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

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【本】歴史はどう繰り返すのか ~『歴史からの発想』~

2018年01月28日 | 批評・思想
★堺屋太一『歴史からの発想 停滞と拘束からいかに脱するか』(日本経済新聞出版社、1983/日経ビジネス人文庫、2004)

 戦後の日本は、応仁の乱以降と類似点が多いという。技術も人口も違う二つの時代であるにもかかわらず、歴史が繰り返される理由は、人間の本性がそれほど変わらないからだ。旧体制が崩壊した戦国時代は、海外から伝来した技術を取り入れることで技術的にも経済的にも急成長を果たした。
 1983年の旧版ではその後の日本に停滞がやってくることを示唆していたが、2004年の新版で振り返ると、日本はその通りの歴史を繰り返している。
 今読み返すと、さらにその先の現在までの流れも当てはまっているところが興味深い。本書の中盤で展開される「人間には作物と雑草の二通りがある」という理論は、この先の日本を誰がどう変えていくかについての考察として捉えると示唆に富む。

□鈴木貴博(百年コンサルティング代表)「歴史はどう繰り返すのか ~名著未読・再読~」(「週刊ダイヤモンド」2017年2月3日号)
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 【参考】
【本】社会変革のヒントを得る ~『フィンランド 豊かさのメソッド』~
【本】時流に流されないために ~『誰か「戦前」を知らないか 夏彦迷惑問答』~
【本】戦争の矛盾がよく理解できる/存在自体が珍しい軍事技術書 ~『兵士を救え! (珍)軍事研究』~
【本】北朝鮮核危機を描く労作 ~『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』~
【本】スウェーデンの高福祉で高競争力、両立の秘密 ~『政治経済の生態学』~
【本】ネット時代のテロリズムはどこから生まれてくるのか ~『グローバル・ジハードのパラダイム: パリを
【本】1920年代の経済報道に学ぶ ~『経済失政はなぜ繰り返すのか メディアが伝えた昭和恐慌』~
【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』
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【南雲つぐみ】音楽で歩行を整える ~リハビリらしくないリハビリ~

2018年01月28日 | 医療・保健・福祉・介護
 パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質のドーパミンの減少が原因で、手足の震えやこわばり、ぎこちない動き、小刻み歩行などの症状が現れる。高齢になるにしたがって増加する傾向にあるが、50~60代で発症する人も多い。
 中でも、歩いている途中で足がすくんでしまうなどの歩行障害は、日常生活に支障を来す。その改善策として音楽療法による効果が認められているという。
 順天堂大学浦安病院(千葉)の林明人教授(リハビリテーション科)らは、1分間に120回の音リズムを持つクラシック曲や童謡のCDを作成し、パーキンソン病の患者に、1カ月間聞いてもらった。すると、特別な歩行訓練は行わなくても、1カ月後には、歩行障害の改善が見られたという。CDを聴くことで脳内の歩行リズムが正常化し、実際の歩行中にも手足がリズミカルに動くようになったということだ。
 さらに一定のリズムにより脳が刺激され、気分が明るくなることも研究によって実証されているという。

□南雲つぐみ(医学ライター)「音楽で歩行を整える ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年1月25日)を引用
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【佐藤優】大臣に対して平気でウソをつく外務官僚

2018年01月27日 | ●佐藤優
 (1)日本の外交政策を決定する上で、もっとも重要な役割をはたすのは、外務本省の「課長」である。
 外務省で、自分の手足となる部下をもつことができるのは、課長まで、である。入省20年目ほどの40代なかばの課長は、<首席事務官(他省庁の筆頭課長補佐に相当)以下、15~30人の部下を指揮する。また、秘密電報や秘密書類なども各課に保管されているため、これら資料は局長であっても簡単に見ることはできない>【注1】。
 <外務省の職制上、課長の上に参事官と審議官がいるが、課長の上に参事官と審議官がいるが、これら「中二階」と呼ばれる役職者には重要な仕事は回ってこない。ときどき政策の具体的事項まで踏み込んでくる局長がいると、事務官や課長補佐など実務案件を実際に担当する外務官僚から「うるさいオッサンだ」と疎んじられるようになる>【注2】

 (2)「北方領土交渉において傑出した戦略家であった」東郷和彦は、課長をとばしてロシア課員に具体的な指示をおこうなうことがよくあった。
 <それが、一部の仕事が増えるのを嫌がるサラリーマン外務官僚から東郷氏が疎まれる原因になり、2002年の鈴木宗男バッシングの過程で東郷氏を排除しようとした当時の川口順子外務大臣と竹内行夫事務次官により最大限に活用された>【注3】

 (3)1997年11月、クラスノヤルスク非公式首脳会談における秘密事項を、丹波實外務審議官(当時)が朝日新聞のインタビューで喋ってしまった。11月5日の夕刊の一面のトップに載った
 鈴木宗男北海道・沖縄開発庁長官(当時)は激怒した。
 翌日、佐藤は鈴木長官に呼ばれ、対策を話しあっていると、西村六善欧亜局長もやってきて「僕は一切知らなかったんです。これは丹波が勝手にやったことなんです」と責任回避を図ろうとした。
 1998年4月、日露非公式首脳会談を前にして、ある日、鈴木宗男長官から、11時に来てくれ、と佐藤に電話が入った。
 11時のすこし前に長官室へ赴いて話をしていると、西村局長がやってきた。
 西村局長は、「今日の午後、橋本総理に説明した内容を、鈴木大臣限りで説明したい」とB4版の書類を2枚出した。総理官邸に提出される書類は、通常A4版に印刷される。不思議なことであった。総理官邸に提出したものから、間引きされた書類であった。
 西村局長は、小淵外相(当時)をとびこえて、橋本総理(当時)に説明することになったのだが、後で小淵外相から厳しく追求されたときの保険に、鈴木長官を利用しようとしたのである。
 鈴木:この紙で、橋本総理に説明したんだな。
 西村:そうです。この紙は橋本総理と鈴木大臣しかもっていません。
 鈴木:おかしいなあ、これは世界に一枚しかない紙のような気がする。(やさしい声で)まあ、もういいから。西村さん、俺のことは一山いくらの扱いでいいから。他の(国会議員)の先生に気をつかってくれ。俺は嘘の説明は聞きたくない。
 西村:大臣、僕の目を見てください。これが嘘をつく男の目ですか。 
 鈴木:(じっと西村局長の眼を見据えて)これは嘘つきの目だ。
 <数秒間、沈黙したまま二人は睨み合った。そこで、異変が起こった。西村氏が、突然「ウ~」といううめき声をあげて、じゅうたんの上で屈み込んだあと、身体を横にして、アルマジロのように丸くなってしまったのである>【注4】

 【注1】佐藤優『国家の謀略』(小学館、2007)
 【注2】前掲書
 【注3】前掲書p.30 
 【注4】佐藤優『交渉術』(文藝春秋、2009)pp.182-189
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【南雲つぐみ】抹茶の効果 ~世界的なブーム~

2018年01月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 お茶にはカテキンやテニアンなど、健康や美容に良いとされるポリフェノール類が多く含まれているが、抹茶はさらにそれらの成分の含有量が多い。これは、抹茶が茶葉を丸ごと粉砕しているためで、飲料メーカーのネスレ日本(本社・神戸)の調べでは、飲用時の比較で、ポリフェノールは緑茶の2倍。さらにビタミンA、D、E、K、クロロフィルなども多く含む。
 抹茶が入ったチョコレートやケーキ、飲料は、今や日本だけでなく世界的なブームになっている。有名女優など海外セレブの中には、美容と健康のため、コーヒーより抹茶を好む人も多いとか。
 ネスレ日本では、職場や家庭にマシンを貸し出し、本格的なカフェメニューを楽しめるシステム「ウェルネスアンバサダー」に、抹茶飲料を導入したところ好調という。
 さらに同社は健康食品メーカーのファンケル(本社・横浜)との共同で、健康チェックプログラムを開発。1日の食事記録などを入力すると栄養バランスを算出して、おすすめの飲料を提案してくれるという。

□南雲つぐみ(医学ライター)「抹茶の効果 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2018年1月19日)を引用
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【佐藤優】総合力=知恵×力の二乗 ~『武器を磨け』~

2018年01月27日 | ●佐藤優
 <世間では、組織で生き残る力を養うべく、勉強会や資格取得が盛んに行われている。だが、そこで考えないといけないのは力をつけ、権力を持って戦略を実行できるようになることが本当に可能なのか、ということだ。
 そもそも「力」とは資本力である。知恵だけが力の源泉なのではない。知恵と力の関係は次のような関数で表される。「総合力=知恵×力の二乗」というものだ。
 力が倍の相手と戦うには倍の知恵ではなく、4倍の知恵がいる。大きな資本力を持っている相手には生半可な知恵の力では到底かなわない。トランプ大統領が優れた知恵の持ち主のようにはに見えないかもしれないが、それでも地球温暖化対策の推進を目指した枠組みであるパリ協定から離脱し、それを他国が止められずに、大きな非難もできないのは、それだけの力=資本力をアメリカがまだ持っているからである。
 ビジネスの場面でも相手の「力」に知恵だけでは太刀打ちできないことがある。たとえば、海外の有名ブランドとライセンス契約を交わした日本企業が、必死の営業努力と販売網の構築でようやくそのブランドを日本国内で認知度を高め、収益の柱に育てることができたとする。
 さあ、ここからこれまでの投資を回収しようというときに海外ブランドからライセンス契約を打ち切られるというケースだ。海外ブランド側としては、これまで何もせずともライセンス収入が入り、しかもブランド認知とブランド価値まであげてもらい、そのうえでこんどは自分たちの都合のいいようにブランド運営ができる。
 ひさしを貸して母屋を取られるということわざがあるが、まさに相手のいいとこ取り。そうした不合理が可能になってしまうのも相手に「力」という資本があるからだ。
 多くの人は知恵の力を過大評価している。資本力、経済力、腕力が強い相手に知恵や知力で勝つには、相手の持つ力の二乗で考えなければならない。
 そこを勘違いするとひどい目に遭う。ホリエモンこと堀江貴文氏が一時期、メディアを買収し自らのロジックで圧倒的な資本力に勝とうとしたが、結果的に彼は私と同じように国策捜査の網にかけられ収監された。
 ホリエモンの知恵と、彼が持っていた程度の資本力では経団連クラスの資本力とは戦えなかったのである。有り体にいえば、巨大な力にケンカを売って相手を本気で怒らせたということだ。

 どのような世界にも、今あるものを変えたくないという「慣性の法則」が働いている。組織でも抵抗勢力となるのは、これまで成功を積み重ねてきた人たちだ。自分のやり方に自信を持っている。それは否定できるものではない。なぜなら、本質的な失敗をしていたとしたら、そこには存在していないからだ。
 そこに存在しているということは、その人たちには何らかの存在価値があるということ。それを全否定して向かっいくと、資本力の差があれば叩き潰されるということをわかっておく必要がある。

□佐藤優/原泰久・原作『武器を磨け 弱者の戦略教科書『キングダム』 』(SB新書、2018)の「第2章 組織を泳ぎ切る」の「知恵の力を過信するな」の「総合力=知恵×力の二乗」を引用
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 【参考】
【佐藤優】「終わりの絵」を描く ~『武器を磨け』~
【佐藤優】生き抜くための目的思考 ~『武器を磨け』~
【佐藤優】中期展望を描いた者が生き残る ~『武器を磨け』~
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