(承前)
(2)なぜ人間の論理は発展したのか
なぜ人間の論理は発展したのかといえば、神と言い争うためだ。そして、神と人間の争いは今のところ人間の連戦連勝。さもなければ、すでに人間は神に滅ぼされている。
神は、人間に論理と自意識を与えたがゆえに、悪そのものに見える人間を滅ぼせない。神は人間をつくった製造者責任の論理に縛られているのかもしれない。
これは、ひとりキリスト教のみならずユダヤ教やイスラム教も同じことだ。
同じ神を戴くのに、どういうわけか、資本主義に対する適性、不適性が分かれる。
イスラムにはシャリーアがある。ムスリムはシャリーアに従っている限り自分は正しい、と考える。法律ではあるが、神から与えられたものだから神の意思そのものだ、という認識だ。
キリスト教はこれをやりたかったが、できなかった。シャリーアに相当する法をつくり損ねた。だから、イエス・キリストというひとりの歴史的人物と、それが神である信仰と、そこにまつわるさまざまな言説だけを頼りにして、人間の行いを正当化するための論理をこねくりまわすしかなかった。
モーセは120歳まで生きた。ムハンマドは62歳で死んだ。しかし、イエスが磔にされたのは30代だ。二人に比べてイエスの活動期間は極めて短かった。言行録も非常に少ない。だから、便利なアナロジーを使って尾ひれをつけて行った。
アナロジーは常識的に考えれば人間が展開したのだが、キリスト教はねじれている。アナロジーを展開する主体が聖霊や神になる。
人間がやったのに神がやったことにするなんて、本来の一神教にはありえないロジックだ。キリスト教が唯一神教ではないのは確かだ。三一神論では神はひとつだが、父、神の子イエス、そして聖霊という三つの現れ方をするとしている。一神教のルールブックがあるなら、反則技だ。
ユダヤ、イスラムのような正統の一神教から、キリスト教は大きくずれてしまった。シャリーアという固定した法に従うイスラムと違い、アナロジーに頼るしかなかったキリスト教は、人間の行動がどんどん変化していく余地がある。
イスラムには法という人間の行動の善悪を定める客観的な基準があるが、キリスト教にはない。
□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
↓クリック、プリーズ。↓

【参考】
●第3章 キリスト教の限界
「【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~」
「【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~」
「【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~」
「【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~」
「【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~」
「【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~」
「【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~」
「【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~」
「【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~」
「【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~」
●第4章 一神教と資本主義
「【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~」
「【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~」
「【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~」
「【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~」
「【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~」
「【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~」
「【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~」
「【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~」
「【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~」
「【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~」

(2)なぜ人間の論理は発展したのか
なぜ人間の論理は発展したのかといえば、神と言い争うためだ。そして、神と人間の争いは今のところ人間の連戦連勝。さもなければ、すでに人間は神に滅ぼされている。
神は、人間に論理と自意識を与えたがゆえに、悪そのものに見える人間を滅ぼせない。神は人間をつくった製造者責任の論理に縛られているのかもしれない。
これは、ひとりキリスト教のみならずユダヤ教やイスラム教も同じことだ。
同じ神を戴くのに、どういうわけか、資本主義に対する適性、不適性が分かれる。
イスラムにはシャリーアがある。ムスリムはシャリーアに従っている限り自分は正しい、と考える。法律ではあるが、神から与えられたものだから神の意思そのものだ、という認識だ。
キリスト教はこれをやりたかったが、できなかった。シャリーアに相当する法をつくり損ねた。だから、イエス・キリストというひとりの歴史的人物と、それが神である信仰と、そこにまつわるさまざまな言説だけを頼りにして、人間の行いを正当化するための論理をこねくりまわすしかなかった。
モーセは120歳まで生きた。ムハンマドは62歳で死んだ。しかし、イエスが磔にされたのは30代だ。二人に比べてイエスの活動期間は極めて短かった。言行録も非常に少ない。だから、便利なアナロジーを使って尾ひれをつけて行った。
アナロジーは常識的に考えれば人間が展開したのだが、キリスト教はねじれている。アナロジーを展開する主体が聖霊や神になる。
人間がやったのに神がやったことにするなんて、本来の一神教にはありえないロジックだ。キリスト教が唯一神教ではないのは確かだ。三一神論では神はひとつだが、父、神の子イエス、そして聖霊という三つの現れ方をするとしている。一神教のルールブックがあるなら、反則技だ。
ユダヤ、イスラムのような正統の一神教から、キリスト教は大きくずれてしまった。シャリーアという固定した法に従うイスラムと違い、アナロジーに頼るしかなかったキリスト教は、人間の行動がどんどん変化していく余地がある。
イスラムには法という人間の行動の善悪を定める客観的な基準があるが、キリスト教にはない。
□佐藤優『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
↓クリック、プリーズ。↓



【参考】
●第3章 キリスト教の限界
「【佐藤優】イエス・キリストは「神の子」か ~ キリスト教の限界(1)~」
「【佐藤優】ユニテリアンとは何か ~ キリスト教の限界(2)~」
「【佐藤優】ハーバード大学にユニテリアンが多い理由 ~ キリスト教の限界(3)~」
「【佐藤優】サクラメントとは何か ~ キリスト教の限界(4)~」
「【佐藤優】何がキリスト教信仰を守るのか ~ キリスト教の限界(5)~」
「【佐藤優】第一次世界大戦という衝撃 ~ キリスト教の限界(6)~」
「【佐藤優】なぜバルトはナチズムに勝ったのか ~ キリスト教の限界(7)~」
「【佐藤優】皇国史観はバルト神学がモデル? ~ キリスト教の限界(8)~」
「【佐藤優】米国が選ぶのは実証主義か霊感説か ~ キリスト教の限界(9)~」
「【佐藤優】無関心の共存は可能か ~ キリスト教の限界(10)~」
●第4章 一神教と資本主義
「【佐藤優】資本主義は偶然生まれたのか ~一神教と資本主義(1)~」
「【佐藤優】なぜ人間の論理は発展したのか ~一神教と資本主義(2)~」
「【佐藤優】最後の審判を待つ人の心境はビジネスに近い ~一神教と資本主義(3)~」
「【佐藤優】15世紀の教会はまるで暴力団 ~一神教と資本主義(4)~」
「【佐藤優】隣人が攻撃されたら暴力は許されるのか ~一神教と資本主義(5)~」
「【佐藤優】自然は神がつくった秩序か ~一神教と資本主義(6)~」
「【佐藤優】働くことは罰なのか ~一神教と資本主義(7)~」
「【佐藤優】市場経済が成り立つ条件 ~一神教と資本主義(8)~」
「【佐藤優】神の「視えざる手」とは何か ~一神教と資本主義(9)~」
「【佐藤優】なぜイスラムは、経済がだめか ~一神教と資本主義(10)~」

その為に戦争になっているんじゃなないの?
信じる者は救われないってね(笑)
日本だって神教という、本当は天皇だけが司るべき宗教を一般人(政治家や軍人)が利用したから戦争に突入しちまったんだな(怒)
宗教なんてもんは、誰か特殊でどうでもイイ人間だけがやってりゃいいんだよ。一般人が手を出すとロクな事にはならないの!!