語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~

2014年07月06日 | 社会
 (1)2月の政変以降、暫定政権はこれに反対する東部への制圧作戦を開始。
 3月、ネット上で、東部の都市ドネックに外国人傭兵と目される戦闘員が完全武装で路上を走り回っている映像が流された。
 この戦闘員は、米国民間軍事会社「アカデミア」(←「ブラックウォーター」)の傭兵だとする指摘がある。【3月8日付け英紙「デイリー・メール(電子版)」】

 (2)旧「ブラックウォーター」は、SEALsなど米国特殊部隊出身者を中心に構成される。2007年にはバグダッド(イラクの首都)で無防備の市民に発砲し、17人を殺害。イラク内外で悪評を招いた。遺族は、米国で同社を相手どり、損害賠償を求める訴訟を起こした。
 かかる悪評を意図的に隠すためか、「ブラックウォーター」は2009年に「Xe」と改名し、2011年から「アカデミア」という名称を使っている。
 ウクライナ政府は、「アカデミア」傘下の警備会社「グレイストーン」の戦闘員300人を東部に投入している。【3月25日付け露紙「タス通信」】

 (3)4月8日、セルゲイ・ラブロフ・ロシア外務大臣は、「『グレイストーン』社の米国人傭兵150人が、ウクライナ警察特殊部隊の制服を着用して東部住民の制圧作戦に参加しているのを憂慮する」との声明を発表した。
 ウクライナ内務省筋の情報によれば、同省の部隊に、ネオナチの民兵とともに「グレイストーン」の要員が加わっている。【4月10日付け露紙「ノーボスチ・ロシア通信」】
 4月29日、ドイツ諜報機関の連邦情報庁(BND)はメルケル首相に対し、ウクライナ政府の東部鎮圧作戦に外国の傭兵が参加しているとの情報を伝えた。その情報によれば、傭兵は「アカデミア」に所属する400人で、これに加え、首都キエフではウクライナ政府の「治安局」に、米国のCIAとFBIの要員十数名が「制圧作戦のアドバイザー」として配置されている。【5月4日付け独紙「ビルト」】
 6月6日、セルゲイ・リャブコフ・ロシア外務省次官は、米国に対し、ウクライナ政府の同国東部に対する攻撃に「外国からの傭兵が参加している」として、こうした戦闘員の介入を阻止する「効果的な措置」を取るよう強く要望した。
 
 (4)一連の報道、露政府の発表では、投入されているという傭兵の所属、人数、活動に係る内容がまちまちで、さらに現在まで実際に傭兵に資金を出している側についても不明だ。
 これについて、米国ホワイトハウスや、「アカデミア」「グレイストーン」両者は、いずれも「根拠のない噂」としてウクライナへの関与を否定している。
 だが、2013年4月、エリック・プリンス・「ブラックウォーター」創設者/元SEALsは、「ブラックウォーター」は改名した現在も「実質的にCIAの延長」で、CIAの指揮系統にある事実を、米国インターネット新聞「デイリー・ビースト」のインタビューに応じて告白した。さらに、「CIAができず、する意思もない危険な工作も依頼されている」と。
 
 (5)一方、ジョン・ブレナン・CIA長官は、4月12日、異例にも名前を隠してウクライナ政府「治安局」を極秘訪問しているが、「東部の軍事制圧を命じたのは米国だ」(ヤヌコビッチ前大統領)との批判に対して、これまで訪問目的を明らかにしていない。
 このため、伝えられる傭兵の存在が、ウクライナ政府による東部鎮圧作戦への米国諜報機関の関与と無縁ではない、との憶測が依然として消えていない。
 事実、(3)のリャブコフ次官の声明では、「過去10日間だけでも650人の諜報要員が殺傷されるか捕虜になった」とされ、「うち70人は外国人で、これには13人のCIAとFBIの要員が含まれている」とされている。

 (6)4月にジュネーブで開催された米露とウクライナ、EUの四者競技で、「当事者はいかなる暴力も避ける」という点が合意された。
 だが、米国が東部の軍事制圧を優先し、介入しているのは確かだ。

□成澤宗男(編集部)「ウクライナ内戦に米国の傭兵が関与か CIAの指揮系統との指摘も」(「週刊金曜日」2014年6月27日号)
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 【参考】
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【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~
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