語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

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【佐藤優】ギリシャ的伝統を引き継いだドイツ ~ライプニッツと帝国主義~

2016年10月31日 | ●佐藤優
 教養、あるいは学問がどこから来ているかと言ったら、ごく荒っぽい言い方をすればヨーロッパだ。さらに遡ったらギリシャだ。ギリシャだということは、イコール、ドイツだと言っていい。なぜか。
 ヨーロッパ的な学問はごく大雑把に言って、ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統と、ギリシャの古典哲学の伝統と、ローマ教皇の伝統、その三つが合わさってできたものだ。
 それが世俗化していくプロセスで、中世期に〈大学〉が登場した。誕生の時点から神学と学問は分かちがたく結びついているから、今でもドイツでは神学部がないと総合大学とは言わない。
 ところが、啓蒙の時代になって、大学のレベルがすごく落ちてしまった。そこで大学の代わりに出てくるのがアカデミーだ。アカデミーとは、神学に代表される合理性に反する中世的な教養を捨て、自然科学のような実用的で新しい教養に重点を置いた教育機関のことだ。
 ドイツでは、18世紀の終わりから19世紀にかけて大学が刷新されて、アカデミーでやるような自然科学的なことを大学に取り入れていこうとする動きが起きた。そこで鍵を握る人物画、ライプニッツだった。ライプニッツは、微分法を始めた。微分法を発見したのはライプニッツかニュートンかという論争があったが、今使われている微分の標準的な表記の仕方「dy/dx」はライプニッツの発明だ。
 ライプニッツはドイツ人だが、ドイツ語とフランス語とラテン語を自由に操り、プロテスタントとカトリックを合同しようとし、一方で中国研究を始め、さらにコンピューターの発明なんかに繋がっていくような普遍言語というものも作ろうとした。バロックの天才と言われている人だ。
 彼の業績の中でも特に重要なのがモナドロジーという考え方だ。日本では単子論と訳されている。モナド(単子)は、神さましか作ることができず、神さましか消すことができない。一つ一つ完結している。巨大なモナドもあれば、極小のモナドもある。モナドには互いに出入りできるような窓や扉がない。だからモナドが他のモナドを見ることで自分の姿を想像する。
 〈帝国主義の時代〉という状況は、実はライプニッツが唱えたモナドロジーのモデルに近い。つまり、一つの国が大きくなっていく形の帝国主義ではなくて、大きくなったり小さくなったりする広域の帝国主義圏を築いているのが今の帝国主義なのだ。これは、ある程度文化と結びついている。だから、EUも本質的には一つの帝国主義圏だ。ロシアのユーラシア同盟もそう。
 TPPはむしろブロック経済だ。自由な領域を地球上のどこかの一部に作るということは、内側と外側を分けていくことだから、ブロック経済なのだ。
 歴史上、こういう形の関税同盟を作っていこうとした人は、ドイツの国民経済学者の代表、フリードリッヒ・リストだ。
 ライプニッツは大学者だった。だから学問の通俗化を考えることなく、哲学用語やラテン語をそのまま使っていた。しかし、その頃のドイツは知的には後進国で、ラテン語ができる人が少なかったので、そういう人たちのために、ライプニッツの弟子ヴォルフが哲学用語やラテン語をドイツ語に、ドイツで日常的に使われている言葉に訳していった。
 日本語で説明し出すと面倒くさい「悟性」「理性」「世界観」「世界像」なんて用語は全部、ドイツでは18世紀、19世紀の日常語だ。ドイツは後進国であったがゆえに、日常語で哲学的思考を展開できるようになった。その優位性というのが、19世紀の真ん中で花開いたわけだ。21世紀になると、もう完全に米国が思想的な世界でも優位に立ったけれども、ライプニッツ/ヴォルフの遺産がつい最近までドイツには残っていた。いや、今も残っている。
 書けなくても話せなくてもいいから、物事を考える根源として、特に近代を考えるツールとして、ドイツ語を学ぶのはいい。

□佐藤優『君たちが知っておくべきこと 未来のエリートとの対話』(新潮社、2016)の「真のエリートになるために 2013年4月1日」
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 【参考】
【佐藤優】民主制の起源 ~中学や高校の教科書が教えないこと~

 


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【佐藤優】民主制の起源 ~中学や高校の教科書が教えないこと~

2016年10月30日 | ●佐藤優
 
 〈民主制〉とは何か。まず最初に押さえておかないといけないのは、現代につながるような政治はどこで始まったか。古代ギリシャだ。ギリシャの都市国家はポリスと言う。ポリスは〈法〉で動く。法はギリシャ語でノモスと言う。ポリスではノモスがゲームのル-ルとして適用され、民主制になった。議論を行って、投票も行われた。
 古代ギリシャの投票は陶片追放だ。だから選挙はもともと、いい人を選ぶのではなく、嫌な人を排除するためにやることだ。それはノモスに従って行われていた。それで陶片追放主体に女性は入っていない。自由民の男が主体だった。これがポリスだ。
 一方で、生活がある領域をオイコスと読んだ。直訳すると〈家〉という意味だが、〈自分たちが居住する世界〉といったニュアンスだ。ちなみに、オイコノミアだと家政、ひいては経済を意味する。エコノミーの語源だ。
 都市国家=ポリスの主体は自由民の男だけだが、生活の場=オイコスには女も奴隷もいる。ところが、そこに法=ノモスは適用されない。で何が適用されたか。中学校や高校の教科書には載っていないが、ビア(Bia)という概念だ。これは暴力のことだ。つまり家長は、女性をぶん殴っても構わないし、奴隷をぶっ殺しても構わないとされていたわけだ。ということは、家庭の領域、経済の領域は暴力で支配される。
 それに対して国家の領域、政治の領域は法で統治する。すなわち、経済の領域と政治の領域は二分されて、適用される原理も違った。
 そうなると現代でもDV(ドメスティック・バイオレンス)が問題になっているけれども、もともと暴力が埋め込まれていると言うことができる。ヨーロッパでも埋め込まれているわけだ。
 そこからどうやって脱構築していかないといけないかということは、やっぱり人類の歴史の中で非常に重要なことだ。

□佐藤優『君たちが知っておくべきこと 未来のエリートとの対話』(新潮社、2016)の「真のエリートになるために 2013年4月1日」
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【佐藤優】『新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~』目次

2016年10月30日 | ●佐藤優
 
はじめに(池上彰)

1 リーダー不在の時代--新自由主義とポピュリズム
 新自由主義と民主主義の機能不全
 民主主義を迂回する仕組み
 「生前退位」報道で問われた新聞の倫理
 リーダー論が成り立たない時代
 エリートと国民の信頼関係の崩壊
 強そうで強くないリーダー
 エリートの責任放棄
 新自由主義の象徴としてのシールズ
 組織が人を引き上げてくれる
 理想のリーダーとは?
 組織も変容する
 タブーによって社会は成立する
 若手官僚の根拠なき全能感
 人から侮辱されることだけは避ける「伊藤くん」
 サルコジ現象
 サッチャー、レーガンとは異なる
 左右に共通するエリートのナルシシズム

2 独裁者たちのリーダー論--プーチン・エルドアン・金正恩
 プーチン大統領--「強いロシア」を演出
 リーダーに対する国民感情
 ロシアの選挙は秩序立っている?
 ロシア国家とスポーツ
 国家に不可欠な暴力装置
 政治指導者というよりKGB中堅職員のメンタリティー
 日本は無法者でロシアは法の濫用者
 世俗主義の守護者としてのトルコ軍
 クーデタ未遂事件を利用するエルドアン
 ロシアとトルコの接近
 北朝鮮のリーダー論

3 トランプを生み出したもの--米国大統領選1
 ドナルド・トランプと橋下徹
 「経営」というより「取引」
 病的潔癖症
 トランプのメディア戦略
 コマーシャル合戦
 トランプの共和党乗っ取り作戦
 共和党の崩壊
 共和党の崩壊を準備したもの
 支持者の特徴
 民衆の破壊願望に乗るリーダー
 戦死者の遺族を侮辱

4 エリートVS大衆--米国大統領選2
 米国大統領の経済学--政治とカネ
 ヒラリーのメール疑惑
 ヒラリーはもと共和党
 「平和=格差」か? 「平等=戦争」か?
 トランプ大統領で日本はどうなる?
 アメリカ第一主義はアメリカの国是
 「世界の警察官」の思想--『光の子と闇の子』
 日米安保と「核の傘」はどうなる?
 貿易面でも孤立主義
 米露関係の改善と中東情勢の激変
 トランプに従わない米軍?
 諮問会議による民主主義の迂回
 旧エリートと新エリートの闘い
 外交官も政治任用
 新大統領の運命を左右する下院・上院選挙
 教育が格差をつくりだす--学費の高騰
 サンダースが支持される理由
 日本の学費も高騰
 「教育」の逆説--格差解消ではなく格差拡大を助長
 富裕層の教育戦略

5 世界最古の民主主義国のポピュリズム--英国EU離脱
 EU離脱を主張したポピュリズム政治家
 国民投票が招いた国家統合の危機
 スコットランド独立
 英国EU離脱とスコットランド通貨問題
 EU離脱はどう実行されるか?
 アイルランドのパスポートを求める英国人

6 国家VS資本--パナマ文書と世界の富裕層
 富裕層の富の独占とパナマ文書
 パナマ文書の情報源はどこか?
 狙いはイギリス?
 国家VS資本--見えざる第三次世界大戦
 アメリカ国内にあるタックスヘイブン
 タックスインバージョン(租税地変換)
 日本の富裕層--土地に縛られる文化
 税率の高い日本から逃亡するエリート
 「良き納税者になろう」
 ロシアの富裕層--プーチンは意外に清潔?
 中国の富裕層
 国税当局同士のギブアンドテイク
 ピケティ流の課税強化の是非
 高速取引をめぐる国家と資本の闘い
 検察は簡単に捕まえる
 民族・国家・資本
 反ユダヤ主義

7 格差解消の経済学--消費増税と教育の無償化
 消費増税をめぐる建設的な国会論戦
 一%の増税で「教育無償化」は可能
 なぜ景気は回復しないのか?--日本経済停滞の真の理由
 タンス預金の非合理性
 静かなる取り付け騒ぎ
 日本の財政構造に効く超長期国債?

8 核をめぐるリーダーの言葉と決断--核拡散の恐怖
 オバマと被爆者の対面に思わず泣いてしまった
 リーダーとしての言葉--オバマの広島演説
 核をめぐるトランプとオバマ
 「核使用」を認める日本政府の答弁
 ウラン型原爆こそ核拡散の脅威
 日本は二年で核武装可能
 原発依存が非核につながる
 核を保有しても設置場所がない
 オバマ広島訪問に冷ややかだった沖縄
 無視される沖縄の声
 まともな植民地政治を

9 リーダーはいかに育つか?
 伊勢志摩サミットの内情
 牧師の子に異教の神を拝ませる
 無神経すぎた自動車試乗会
 出所不明の情報を元に国会質問をする議員
 元検事議員の高額なコーヒー&ガソリン代
 政治家の常軌逸脱
 舛添前知事の呆れた公金感覚
 都庁の裏金?
 独りよがりのエリート主義のポピュリズム批判
 角栄ブームをどう見るか?
 「カネ」と「権力は代替可能?
 日本人にとっての理想のリーダー
 成功しているリーダーと集団的価値
 リーダーの猜疑心
 リーダーシップの難しさ
 リーダーと教養教育
 リーダーは段階を経てつくられる--帰属意識と社風
 エリート教育に必要なもの 

あとがき(佐藤優)

□池上彰×佐藤優『新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~』(文春新書、2016)
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 【参考】
【佐藤優】+池上彰 教養教育、帰属意識と社風、エリート教育 ~リーダー育成~
【佐藤優】+池上彰 成功しているリーダーと集団の価値
【佐藤優】+池上彰 田中角栄は今日でもリーダーたりえるか?
【佐藤優】+池上彰 ルール破りの国会議員たち ~山尾志桜里・武藤貴也・上西小百合~
【佐藤優】+池上彰 メルケル首相を激怒させた安倍首相 ~伊勢志摩サミット~
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【佐藤優】+池上彰 教養教育、帰属意識と社風、エリート教育 ~リーダー育成~

2016年10月29日 | ●佐藤優
 (1)育成がいくら難しいとしても、人間の社会や組織に、リーダーは不可欠だ。では、どうすればいいか。
 近代国家においては、すべての土台をなすのが教育だ。だから、教育の中に、リーダー論、リーダーシップ、愛国心を埋め込む必要がある。しかし、リーダーシップや愛国心をむき出しで鼓吹しても効果はない。これまでは、そこを文化に埋め込む形で自然に身に付くようにしてきた。
 ところが、その文化が弱くなっている。小説など読んでも無駄だと思っている。日本史も役に立たない。和歌など詠んでも意味がない。しかし、そういうところからは、リーダーは育たない。
 池上彰が東京工業大学で理系の学生を対象に教養教育を始めたのは、これまで、本当のリーダーを育てることができなかった、という危機感からだ。
 どうすればリーダーが育つのかは、よくわからない。しかし、少なくとも教養、リベラルアーツを備えていなければリーダーとして育たない。教養教育を始めたのは、そこだけはっきりしているからだ。海外のリーダーを見ると、皆、リベラルアーツを習得している。

 (2)トランプが書いたのも、トランプなりの俗流哲学だが、二宮尊徳、石田梅岩、あるいは松下幸之助くらいのレベルにはなっている。ロバート・キヨサキとの共著も、人にやる気を出させる方法や人間関係の構築の仕方を論じていて、なかなか説得力がある。通俗道徳に関しては、それなりの思想家なのだ。また、トランプが重視している価値は、「勤勉」だ。そこで金融資本とぶつかるわけだ。右から左にお金を動かすだけで儲けるようなのは、勤勉という価値に悖る、と。
 では、このレベルの通俗道徳を曲がりなりにも体系的に語られる日本の政治家が、一体どの程度いるのか。
 ただ、トランプは「優れた経営者」というより、「タフな交渉人」だ。「経営」というより「取引」だ。大統領になれば、プーチンとも取引できる、習近平とも取引できる、とトランプは思っているのだろう。
 それに対し、プーチンはトランプとは違うタイプだ。ロシアのインテリの系譜を引く、なかなかの教養人だ。ビザンツ帝国の伝統でもあるが、哲学者による政治、哲人政治を理想とするところがある。
 では、日本で教養のある首相は誰か。
 宇野宗佑・首相は、教養は教養でも、書を嗜むといった趣味の方の教養人だ。演説は雄弁だが、薄っぺらだった。
 日本の経営者にも、雄弁だけれど薄っぺら、というのが多い。
 大平正芳は本当の教養人だった。実は、彼の政策は、後に実現されたものが多い。田園都市構想などのプロジェクトも、設定したのは彼で、それが10年、20年経ってから動き出した。
 「あーうー」という意味不明の話し方も、実は、あれはあれで見事なのだ。「あーうー」を抜いて筆記すると、そのまま活字の文章になる。彼は書き言葉で喋っていた。「あーうー」でリズムをとりながら、頭の中で文章を書いていたのだろう。

 (3)ただ、個人がそれぞれ教養を身に付ければ、それでよいという話ではない。リーダー論もそこを考える必要がある。いきなりトップ・リーダーは出てくるわけではないのであって、まず社会の中堅やボトムのリーダーが育たなければならない。
 自民党でも、若手が派閥で鍛えられる、とぃうことがなくなっている。
 ジャーナリズムでも、書き手を鍛える場がなくなっている。
 官僚組織も、昔は「課長補佐が力を持っている」とか「主査が動かしている」と言われたものだが、そういう秩序が崩れている。
 どの組織でも、下士官クラスのリーダーがうまく育っていない。シールズのような運動では、下士官クラスのリーダーは生まれようがない。SNSで集まれと呼びかけて集まり、集会が終わると散り散りになる。これではノウハウは伝授されない。
 日本でもう一度システムを活性化させるには、やはり企業が重要ではないか。中小企業でも大企業でも、何らかの形で終身雇用制があって、帰属意識が生きている企業。そういうリーダーシップがある企業は生き残れるし、その企業がある地域は強くなっていく。あるいは職能組合や地域活動がしっかりしているのなら、そでもいい。人間が成長するには、やはり何かに帰属することが大事だ。企業でなければ、宗教団体でもいい。
 個人でも国家でもない、中間団体が大事だ、ということだ。
 それと、企業の価値は再認識においては、会社ごとの社風が持っていた意味も軽視できない。何となく皆で覚えていく社風や社訓も、馬鹿にできるものではない。
 NHKにも、社風のようなものがあって、いわゆる出世していく人間と、そうではない人間が、互いに認め合い、記者とディレクターなら方向性が違うけれども、互いに評価し合う文化があった。そういう文化が組織を支えていた。

 (4)「リーダー」と「組織」は、相互に補完的な関係にある。
 「ローマは一日にして成らず」で、理想的なリーダーも、突如、単独で現れることはない。促成栽培できるものではない。組織内で一つずつ経験を積んで、その組織にふさわしいリーダーが徐々に育っていく。
 その根底には、リーダーと組織の間、あるいは組織内のメンバーの間に相互の信頼がある。社風や帰属意識が大事だというのも、そういう意味だ。
 帰属意識ばかりで、個人が埋没してはいけないが、新自由主義によって個人がアトム化しているなかで、人間が「群れをつくる動物」として、「組織」と「リーダー」を必要とする存在であることを改めて認識する必要がある。
 人間が独りでは生きていけない社会的存在であることを忘れ、組織やリーダーというものを忌避すれば、自己利益と自己実現だけを追求するナルシシズムに陥るしかない。「向上心」の高いエリートほど、その罠に陥る危険がある。これこそ、現代社会の深刻な病理だ。エリート教育に必要なのも、実は、個々の知識や教養以上に、人間は「群れをつくる動物」であり、「独りでは生きていけない存在である」ということを教え、学ぶことではないか。

□池上彰×佐藤優『新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~』(文春新書、2016)の「9 リーダーはいかに育つか?」
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 【参考】
【佐藤優】+池上彰 成功しているリーダーと集団の価値
【佐藤優】+池上彰 田中角栄は今日でもリーダーたりえるか?
【佐藤優】+池上彰 ルール破りの国会議員たち ~山尾志桜里・武藤貴也・上西小百合~
【佐藤優】+池上彰 メルケル首相を激怒させた安倍首相 ~伊勢志摩サミット~

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【佐藤優】+池上彰 成功しているリーダーと集団の価値

2016年10月28日 | ●佐藤優
 (1)今日、リーダーがリーダーとして機能しているのは、どういう場合か。〈例〉共産党の不破哲三氏、創価学会の池田大作氏、公明党の山口那津男氏。
 つまり、下に支部組織のネットワークがあるから、リーダーが機能する。ローマ教皇(法王)のフランシスコもそう。カトリック教会という下部組織があるからだ。
 地域のリーダーとして成り立っているのは、翁長雄志・沖縄県知事くらいだろう。沖縄では、自民党系の連中でも、日本人が翁長知事を侮辱するような発言をすれば怒るはずだ。その意味で、翁長知事は、オール沖縄を束ねることに成功している。
 トップの指示によって組織が動くということだ。また、組織には金を上納するという機能もある。
 だから、翁長知事も辺野古基金をつくったら、6億円も集まってくるわけだ。
 ただ、沖縄でそれが成り立っているのは、ナショナリズムゆえだ。虐げられているという負の連帯感情による結束だ。スコットランド国民党の党首がリーダーであり得ているのと同じ事情だ。
 <つまり、リーダーが現れているのは、宗教があるか、あるいは「敵」のイメージがあるところです。アトム化していない、耐エントロピー構造があるところだけに、リーダーが出てきている。イギリスには、リーダーはいないが、スコットランドにはいる。沖縄にもいる。何らかの差別を受けている集団、特殊なイデオロギーや特殊な宗教によってまとまっている集団の中にはリーダーがいる、ということです>
 そういう意味では、多くの現代人にとっては、アトム化している方が幸せに感じるのかもしれない。
 確かに、スイスやスウェーデンでは、大統領や首相が誰なのか知らないとしても、それで国民が不幸になる感じはない。
 若い人を見ていても、率先してリーダーシップをとるようなことはしない。ひたすら空気を読んで、浮いてしまうことを恐れている。小学校の頃から目立たないようにしないと苛められる、と思っているので、リーダーなど育ちようがない。
 灘高生のようなエリートの卵を見ていても、やはり目立たないように注意している。

 (2)その一方で、リーダーの方は猜疑心が強くなっている。部下に任せる、と言いながら、任せることができず、これをやったら絶対に組織が壊れると分かるような場合でも、あちこちにチェックシステムを入れたり、同じ課題を複数の人に与えて競わせたりするトップがいる。
 NHKの籾井会長も、猜疑心は相当なものだ。それはすごい。
 トップがが猜疑心の塊になってくれば、部下として、こんなに一所懸命にやっているのにどうして信頼してもらえないのか、と思うほかない。妙な疑心を持たれたらまずいというので、守りの姿勢になる。すると、ますます率直な発言をしなくなるから、リーダーからは二心があるように見えて、さらに猜疑心が深まる。そういう負のスパイラルに陥る。

 (3)かつては子どもが病気やケガをすれば会社が助けてくれたものだ。ところが今は、会社がそこまでやってくれるとは誰も思わない。城山三郎『毎日が日曜日』にあるようなベタベタした人間関係は考えられない。互いの家族構成がどうなっているか、どこにマンションがあって、行きつけの飲み屋がどこかなど知らない。
 〈例〉会社の経営者が、「こんなに一所懸命に働いてくれる立派な社員たちがいる。社長にとってこんな幸福なことはない」と思い、社員も、「社員のことをこんなに考えてくれる立派な社長がいる。やっぱりこの会社にいてよかった」と思えれば、幸せだ。この相互関係に少し手を加えれば、俗流哲学として、仕事やリーダーの秘訣として、いくらでも応用できる。
 金日成は、とりあえず、それに成功したわけだ。だから、あの国にいたら幸せはあるだろう。「今年の首領さまの誕生日には運動靴が一足子どもに貰えた。やっぱりこの国に生まれてよかった」というわけで、余計なことを考えなければ、絶対に幸せなはずだ。
 ただ、リーダーシップが人格化されて、そのリーダーがいるからこそ組織が成り立っている、という組織は強いが、難しいのは、余人をもって替え難いリーダーがいると、かえって、その人がいなくなったら組織も終わりになることだ。これは、ものすごいリスクだ。
 その意味では、読売新聞とJR東海が危ない。
 中内功がいなくなった後にダイエーに起きたのと同じようなことが、鈴木敏文がいなくなったセブン&アイ・ホールディングスにも起きないとも限らない。
 リーダーには、他人の気持ちになって考える共感力が不可欠だ。しかし、必要ある状況においては、非情に切り捨てなくてはならないことも出てくる。そこが難しい。
 逆に、切り捨ての方は、最近のリーダー論では、持て囃される。コストカットやリストラ屋が、理想の経営者として評価されている。 

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【佐藤優】+池上彰 田中角栄は今日でもリーダーたりえるか?

2016年10月27日 | ●佐藤優
 (1)リーダー論ということでは、おそらく過去に対するノスタルジーも伴って、田中角栄がブームになっている。
 いま角栄が持て囃されているのは、日本の一種の病理だ。
 これだけ時代状況が複雑になって、政治家にしても、物事を簡単には決められなくなった。だから、角栄が決断力のある優秀なリーダーに見えてくる。
 確かに、角栄にはそういう資質もあったのだろう。しかし、仮にいま角栄が日本にいたとしても、事はそううまくは運ばない。
 角栄のやり方が通用しないのは、日本がもはや右肩上がりの経済ではないからだ。
 本当のリーダーに必要なのは、やるべきことは何かを見極める力があることだが、その意味では、角栄の頃は、もう少し簡潔にリーダー論を語ることができた。
 日本の首相にしても、一昔前までは、一つの課題に取り組めばよかった。竹下政権にとっての消費税導入というように、「一内閣一テーマ」で良かったわけだ。
 ところが、現在は、それでは通用しない。複数の問題に同時に対応しなければならないからだ。同じくらいの比重で、貧困問題、教育問題、安全保障問題に同時に取り組まなければならない。

 (2)ただ、カネと権力との代替関係という点では、角栄は先駆者とも言えるが、新自由主義的なあり方とは異なる。
 「列島改造論」はまさに富の分配で、社会民主主義的な政策ともいえる。
 富の再配分を官僚の手を経ずに政治の力で行うとすれば、どうしても腐敗もついてくるが、腐敗を上回るメリットがあれば目をつぶってもらえた。またカネを渡すにしても、「これなら運命共同体になってもいい」という相場感を一人一人に対して持っていて、濃密な人間関係を作っていた。

 (3)田中角栄のブームに乗って、多くの角栄論が出ている。石原慎太郎『天才』(幻冬舎)はベストセラーになった。
 最近刊行された角栄論の中では、石井一『冤罪』(産経新聞出版)が最も優れていて、非常に面白い。
 まず、石井自身が角栄に私淑していた。また、スタンフォード大学大学院で修士号を取得しているから英語が非常に堪能で、米国側の資料にもあたっている。つまり、身近で知る角栄と、米国の資料を付き合わせて書いている。この本の結論と言えるのは、おそらく次のような箇所だ。
 <ロッキード社は民間機だけでなく軍用機を製造し、特にP3Cの日本への売り込みが日米間の貿易インバランスをただすための最重要課題だと言われていました。また、金額的にはトライスターよりP3Cの方がはるかに大きかったのですが、P3Cを取り上げるとなると、日米間の防衛汚職として、両国の安全保障体制を極度に揺るがす大スキャンダルに発展する恐れもあり、これらについては一切触れないということになりました。
 したがって、陰のフィクサーとして働き、巨額な金員を手にした児玉誉士夫や小佐野賢治に対しても、当時噂されていた中曽根康弘ほか灰色高官とされた13名に対してもP3Cに関しては一切立件せず、焦点を合わせるのは田中とトライスターのみに絞って日米両国が立件に乗り出したのです。
 米国の大きな計画がなければ、ここまではできなかったし、日本の総理大臣が三木でなかったら、そこまでの広がりもなかったと思います。いわばキッシンジャーの陰謀と三木の怨念というものの利害が一致し、田中に対しての陰謀が実行されたと言っていいかと思います>【『冤罪』】
 ロッキード事件とは、本来、旅客機のトライスターではなく、P3Cオライオン(対潜哨戒機)をめぐる汚職だったのに、その点は伏せて「P3C(中曽根康弘)」を「トライスター(田中角栄)」に入れかえて立件した事件(=冤罪)だ、と石井一は書いているのだ。ストレートな書き方ではないが、真の当事者は田中角栄ではなく、中曽根康弘だというのだ。
 先日放映されたNHKの実録ドラマ「NHKスペシャル 未解決事件 ロッキード事件」でも、実はトライスターではなくP3Cが本命だった、という見方をしていた。
 石井のこの見方は非常に鋭い。資料を丹念に追いかけている。という以上に、金にものを言わせてかなりの材料を集めている。資料収集と調査のため、角栄側から相当資金が提供されたのかもしれない。

 (4)『冤罪』のもう一つの面白さは、自分自身が角栄からお金をいくら貰ったかを具体的に書いているところにある。
 <田中との会見はほんの4、5分でしたが、帰り際に握手を交わすと、背広の内ポケットからパッと封筒を出して私にくれました。
 実は挨拶に行く前、兄貴分だった竹下登(後に総理大臣)からこんなことを言われていました。
 「目白に行ったら、はっきりモノをしゃべれよ。あの迫力に負けたら何も言えなくなるからな」。さらに「たぶん金をくれるから、もらったらすぐ僕に報告しなさい」と。
 すぐに田中邸の前にある電話ボックスに駆け込み、封筒の中を数えると30万円が入っていました。指示通り竹下に報告すると「すごいな。君に対する期待は大きいぞ」と言ってくれました。当時の30万円は現在の価値に換算すれば10倍くらいで、私にとっては大変なお金でした>【『冤罪』】
 ずいぶんはっきり書いている。
 さらに、田中事務所の佐藤昭(昭子)秘書から毎月50万円貰ったとか、選挙のときは田中から500万円から1,000万円の金が届けられたとか、金の話が細かく書いてある。
 角栄の「金権政治」の実態が分かる貴重な証言だ。角栄の金が云々という話はこれまでにもあったが、自分がいくら貰ったという話をここまで書いた人は居るまい。

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【佐藤優】+池上彰 ルール破りの国会議員たち ~山尾志桜里・武藤貴也・上西小百合~
【佐藤優】+池上彰 メルケル首相を激怒させた安倍首相 ~伊勢志摩サミット~

 


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【佐藤優】+池上彰 ルール破りの国会議員たち ~山尾志桜里・武藤貴也・上西小百合~

2016年10月26日 | ●佐藤優
 (1)信じられないことが、いま日本の政治で、さまざまに起きている。
 〈例〉2016年2月29日の衆議院予算委員会で、山尾志桜里・衆院議員(民主党(当時))が、出所不明のネット上の情報をもとに国会質問をした。「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログを取りあげて、待機児童問題を提起した。
 民進党の前身の民主党は、過去に党代表が辞任に追い込まれた偽メール事件を起こしている。それなのに、再びネット上から情報を拾ってきて国会質問をしている。もし出所が怪しければ、党が解体するくらいのリスクがあることをなぜ理解できないのか。
 そもそも「死ね」などという言説が、国会という公共空間で飛び交ったのは初めてだろう。こんな言葉が横行するのは、政治の否定であり、民主主義の危機だ。それに対して安倍首相が「匿名である以上、実際に本当であるかどうかを、私は確かめようがない」と答弁したのは、極めて真っ当だ。
 ところが、真っ当な方が通らなくて、これをきっかけに待機児童の政策が動くことになった。
 山尾議員は「みんなが声をあげれば政治は動くという成功体験になればいい」などと言っている。
 しかも、その政策は、もともと認可外だった小規模作業所の受け入れ枠を緩和するというもの。例えて言うなら、代用教員ならぬ代用保育士のようなもので問題を解決する、という出鱈目な政策だ。

 (2)山尾議員は、政治資金報告によれば、1日に7万円分のコーヒーを飲んだそうだ。そんなに飲んだらカフェイン駐独で死んでしまう。加えて、2011年に247万2,352円、2012年に429万2,818円のガソリン代の支出記録がある。地球を何周もできるほどのガソリン代だ。
 まったく異常だ。あれで摘発しないこと自体、特捜はおかしい。告発状は絶対に出ているだろうから。しかも彼女は法曹の出身で、元検察官だ。
 かつては、細かい経費は、ガソリン代としてまとめていたなんてこともあったが、今は政治資金が厳しく見られているので、こんないい加減な管理ではすまない。
 厳しくなったのは、政治資金に政党助成金がブレンドされたからだ。政党助成金は、要するに国民の税金だ。国家公務員で240万円を横領したら、確実に実刑だ。それと同じだ。
 ただ、最近の政治家の不祥事に対する緩さからしても、山尾議員の政治資金疑惑の基準で自民党を揺さぶったら、国会議員の3分の1はいなくなってしまうかもしれない。

 (3)かつては派閥政治が問題視され、最近は自民党でも派閥が弱くなって、議員が公募で出てくるようになったが、むしろ公募の議員のスキャンダルが多い。武藤貴也・議員などは、未公開株のインサイダー取引を知人に持ちかけているわけで、議員としての資格以前に、あまりに反社会的だ。
 「政治家の犯罪」というより、「犯罪者が政治家のバッジをつけてしまった」という話だ。LINEでインサイダー取引をやれば痕跡が残る、ということぐらい、議員である以前に普通の社会人ならわかりそうなものだ。一部上場企業の社員なら完全にクビだ。おまけに議員宿舎にデリヘルの男を呼んで売春するなど、公職に就く人間のやることではない。開いた口が塞がらない。
 衆議院本会議を欠席して自分の秘書と温泉に行っていた上西小百合という議員もいる。維新の党から追い出されたが、無所属議員として居座っている。
 二人とも、おそらく議員歳費が狙いで居座っている。次の選挙で当選する可能性はないから、今のうちに歳費を貯め込もうとしているのだろう。
 しかしそんな連中でも、マスコミの叩き方がいまひとつ厳しくなく、辞めさせられないでいるのは、兵庫県議会の「号泣議員」、野々村竜太郎のスケールがあまりに大きすぎたからかもしれない。彼のことは国際的に報じられ、世界中が知るところとなった。政治家の常軌逸脱は、いまや野々村元議員が基準となり、上西や武藤程度ではニュースにならない、というほど感覚が麻痺してしまっている。

□池上彰×佐藤優『新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~』(文春新書、2016)の「9 リーダーはいかに育つか?」
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 【参考】
【佐藤優】+池上彰 メルケル首相を激怒させた安倍首相 ~伊勢志摩サミット~

 
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【佐藤優】+池上彰 メルケル首相を激怒させた安倍首相 ~伊勢志摩サミット~

2016年10月25日 | ●佐藤優
 (1)2016年のサミットは、日本がホスト国となり、5月に伊勢志摩で開催された。
 この場で安倍首相は、「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」「世界経済は危機に陥る大きなリスクに直面している」という表現を用いて、「世界経済がクライシスにある」ということを各国の共通認識として確認しようとしたが、キャメロン・英国首相(当時)は「そうではない」と否定し、メルケル・独国首相も「そんな言葉を使うべきではない」と反論した。
 安倍首相は、消費税再増税先送りの条件として「リーマン・ショック級の事態」を挙げていたから、各国のお墨付きを欲しがったのだが、他の首脳たちはこれに呆れていた。オランド・仏国大統領も、翌日の自国向けの発言では「危機はない」と言っていた。

 (2)そもそもサミットの会場を伊勢志摩に設定したのが異常だ。一神教の人間ならどう受け止めるか、ということがまったく想像できていない。「おもてなし」と言っても、人間の内面にまで押し入る「おもてなし」がどこまで許されるのか。
 メルケルが伊勢新宮に連れていかれて激怒するのも当然だ。メルケルの父親は牧師だ。牧師の娘を伊勢神宮の内宮まで連れていって、異教の神を拝ませるなど、いったい誰が考えたのか。英国の新聞も批判的に報じていた。
 しかし、実際に連れていってしまった。政府は「あれは参拝ではない。訪問だ」と言い訳していた。
 さらに、「読売新聞」と「日経新聞」は、サミット前日の安倍首相が「サミットの成功を祈願した」と書いた。しかし、伊勢神宮は個人的な祈願をしてはいけないところなのだ。新聞記者もまったく分かっていない。

 (3)政府が用意した行事で完全な失敗に終わったのが、日本の水素自動車と自動運転車の試乗会だ。トヨタ、ホンダ、日産の車を並べて、首脳に試乗させようというものだったが、あんなところにメルケル首相が来て、日本の車に乗って笑顔を見せた写真が本国に伝わったらどうなるのか。政治的な致命傷だ。
 同時に、三菱自動車とスズキで不正事件が起きているなか、日本の自動車産業が国際社会でどう見られているのか、という点も想像できていない。
 驚くべき鈍感さだ。
 トルドー・カナダ首相は人がいいからニコニコしていたが、それはカナダに自動車産業がないからだ。EUの首脳も来ていたが、「なんでこんなところに来なきゃならないんだ」という不快感がありありと出ていた。完全に滑った企画だった。

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 【参考】
【佐藤優】尖閣諸島から米国が手を引く可能性 ~北方領土交渉と日米安保~
【佐藤優】ウズベキスタンにIS流入の危険 ~カリモフ大統領死去~
【佐藤優】国後島で日本人通訳拘束/首脳会談への影響は ~実践ニュース塾~
【佐藤優】モサド長官から学んだインテリジェンスの技術
【佐藤優】ロシア大統領府長官にワイノ氏就任の意味 ~北方領土交渉~
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【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~
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【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速
【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀
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【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
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【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
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【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
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【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
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【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
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【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
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【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
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【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
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【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
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【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方

2016年10月24日 | ●佐藤優
 ①秋田浩之『乱流 米中日安全保障三国志』(日本経済新聞出版社 2,200円)
 ②小佐野重利・京谷啓徳・ほか『西洋美術の歴史4 ルネサンスⅠ 百花繚乱のイタリア、新たな精神と新たな表現』(中央公論新社 3,800円)
 ③池上彰『はじめてのサイエンス』(NHK出版新書 780円)

 (1)①は、日本の内政と国際情勢に通暁している優れた新聞記者の腕を感じさせる作品だ。
 <あらかじめ用意した長期戦略どおりに進もうという発想は、国土や国力に恵まれた米国や中国など、一握りの大国に許されたぜいたくといえるだろう。
 そんな現実を踏まえると、日本に求められるのは、一見すると矛盾した2つのことだ。まずは世界情勢を見定め、明確な戦略を描くこと。第2に、その戦略にしがみつくわけではなく、情勢が変わったらすぐに次善策に切りかえられる「しなやかさ」も備えることだ>
 この認識を政治家と外務官僚が共有すべきだ。

 (2)②は、歴史全体の中で美術史を記述していこうとする。
 <15世紀初め、イタリアは西欧の政治的な出来事にそれまでにもまして巻き込まれることになる。「アヴィニョン捕囚」後の教会大分裂が一旦結着し、1420年、教皇マルティヌス5世のときに教皇庁はローマに帰還する。そして50年、莫大な収益をもたらす壮麗な聖年を敢行した教皇ニコラウス5世によって、都市ローマ復興のための整備美化事業が大々的に始まる>
 本書を読むと、コンスタンツ公会議によるカトリック教会の統一回復なくしてルネサンスは起きなかったことがよく分かる。

 (3)③は、理科系の教養が現代人に不可欠であることをひしひしと感じさせる。
 <東京電力の技術部門にいる人たちは、理系の人ばかりです。東京電力にも文系出身の人はもちろんいますが、彼らの多くは総務・人事・営業部門に配属されていて、技術部門にはほとんどいません。
 (中略)加えて、政治家や記者の多くも文科系出身です。彼らは技術者たちの話を噛み砕いて、わかりやすく伝えようと努力しました。しかし、うまくいかないことも少なくなかった。その結果、多くの国民が「よくわからない」状況に陥ってしまったのです。
 (中略)解決策はもちろん、あります。理科系と文科系のパイプ役をつくって、その人たちが国民なり利用者なりに説明すればよいのです。
 それにはまず、理系の話を文系にも理解できる言葉に置き換えるコミュニケーターを、政府や各企業が養成することが必須でしょう。コミュニケーターがその役割をしっかり果たせば、国や企業の危機管理能力を高めることにもつながります>
 最新の科学技術情報を提供されても、専門的知識のない大多数の国民はその内容を理解することができない。マスメディアの重要な機能は、専門家と一般の人びとの間の媒介(メディア)にあることだ。

□佐藤優「現代人に欠かせない教養 ~知を磨く読書 第171回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年10月29日号)
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 【参考】
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~





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【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~

2016年10月23日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)早期乳癌では、術後に抗癌剤治療が行われる。
 超早期でない限り必要な治療だが、吐き気や極度の疲労感、脱毛など女性にはつらい副作用がある。できれば避けたいのが本音。

 (2)近年では遺伝子検査で「再発リスク」を調べ、結果次第で術後の抗癌剤治療を省く動きもある。
 過日、乳癌の再発リスクを反映する70遺伝子の活動状態を調べる「マンマプリント」でリスクを評価し、抗癌剤治療の要・不要を検討した「MINDACT試験」の結果が報告された。
 同試験は、EUの公的研究開発支援制度の助成を受けた大規模なもの。2007~11年にEU9ヵ国、112施設で患者登録が行われた。
 対象は、18~70歳の女性。しこりの大きさが5cm以下でリンパ節への転移がないステージⅠ~Ⅱa期、もしくは転移があっても手術ができるⅡb期だった。
 再発リスクの判定には、組織型のほか、年齢、しこりの大きさ、リンパ節転移の有無から推測される「臨床リスク」と、マンマプリントで評価する「遺伝子リスク」の双方を利用している。
 登録者6,693人中、
  (a)低臨床リスク・低遺伝子リスク群41%
  (b)低臨床リスク・高遺伝子リスク群8.8%
  (c)高臨床リスク・低遺伝子リスク群23.2%、 
  (d)高臨床リスク・高遺伝子リスク群27.0%
だった。
 このうち、(c)について、術後の①抗癌剤治療を受ける群と②受けない群に分け、5年後の再発率と生存率を比較検討した。その結果、5年後の再発率と生存率には有意差が見られなかった。
 つまり、臨床的には再発リスクが高いように見えても、遺伝子リスクが低い場合、術後の抗癌剤治療を省略できる可能性が示された。
 研究者は、臨床リスクが高いと判定された患者の4割以上は、術後の抗癌剤治療を回避できるかもしれないとしている。

 (3)マンマプリントは日本でも受け入れられるが、消費税込みで50万円以上と高額。新薬の承認もいいが、過剰診療を防ぐ手段こそ、過剰診療を防ぐ手段にこそ、保険適用を考慮してもらいたい。

□井出ゆきえ(医学ライター)「遺伝子検査で再発リスクを評価/抗がん剤治療の回避も--乳がん ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.319~」(「週刊ダイヤモンド」2016年10月8日号)
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 【参考】
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

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【保健】集中して考えごとをすると、なぜ腹が減る?

2016年10月22日 | 医療・保健・福祉・介護
 「灰色の脳細胞は使うためにあるんですよ」(エルキュール・ポアロ by アガサ・クリスティ)
 人間の脳の重さは1.3~1.5kg。体重が60kgの人で2%程度のものだ。神経細胞の数で見ると、140億個。膨大な印象を受けるが、全身の細胞は、なんと60兆個にも及ぶ。ほかの動物と比べれば、圧倒的に大きく重い人間の脳も、人体の中ではちっぽけといっていい存在だ。
 ところが、このちっぽけなものが、多くのエネルギーを消費する。その量は、
 ・消費エネルギーでみると、体全体の18%
 ・酸素の消費量でみると、40%
にもなる。勉強したり、ちょっと考えごとをすると妙にお腹がすくが、これは脳がエネルギーをたっぷり使っているからだ。

□竹内均『時間を忘れるほど面白い 雑学の本』(知的生き方文庫、2011/23刷:2013)の「集中して考えごとをすると、なぜ腹が減る?」
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【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~

2016年10月22日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)人の腸内で共生している100兆~1,000兆個の腸内細菌。宿主(人間)の免疫系や代謝調整に一役買っている。
 近年は腸内細菌の研究が進み、特定の疾患や肥満、2型糖尿病患者に特有の腸内細菌叢があることが解ってきた。これを利用し、腸の感染症や炎症性の腸疾患、自己免疫疾患患者に健康な人の腸内細菌を移植する治療法「FMT」も試みられている。

 (2)腸内細菌叢の人体への影響は、想像を超える。ある標準体形の女性は、腸の感染症の治療のためFMTを受けた後、ドナー(最近提供者)そっくりのメタボ体形になってしまった。
 研究者は、「腸内細菌を移植する際は、ドナーの健康状態に加えて肥満や過体重がないか確認すべき」としている【米感染症学会誌】。

 (3)また、先ごろ、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と腸内細菌叢との関連を示唆する研究が報告された。
 ME/CFSは、以前、慢性疲労症候群と単独で呼ばれていた難病。神経・免疫系の調節障害で、心血管障害の異常、慢性の痛み、胃腸障害などの全身状態を引き起こす。
 明確な診断法がなく、「なまけ病」「気のせい」と心ない言葉で揶揄され、辛い思いをした方も少なくない。
 しかし、近年、病気の存在を証明するバイオマーカーが明らかになっている。
 
 (4)米コーネル大学の研究者らは、腸内細菌叢を調べる便検査と血液検査を併用し、8割以上の精度でME/CFSを診断。
 その結果、ME/CFS患者の腸内細菌叢は、健康な人に比べて多様性に乏しく、炎症を抑える働きを持つ善玉菌が少ないほか、腸内細菌に由来する炎症物質が血液中に有意に増加していることが判明した。

 (5)研究者は、「腸内細菌叢の変化がME/CFSの原因か結果かは特定できないが、治療の一端として、善玉菌とその栄養源となる食物繊維やオリゴ糖などの摂取を心がけるとよい」としている。
 ME/CFSでもFMTが試みられているが、長期的な成果は不明だ。食事で腸内細菌をケアしつつ、有効な治療法の登場を待つことになる。

□井出ゆきえ(医学ライター)「21世紀は腸内細菌叢に注目/慢性疲労症候群にも関連か ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.3~」(「週刊ダイヤモンド」2016年8月27日号)
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 【参考】
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【神保太郎】「見たいもの」だけ報じるメディア ~パラリンピック、首相とともに海をわたる「記者クラブ」~

2016年10月21日 | 社会
(1)全体像を見せないNHK
 「今日もメダルラッシュです」。NHKはリオのパラリンピックをこう伝えていた。
 東京開催が決まったことで、パラリンピックへの注目度は飛躍的に高まった。NHKによるリオ大会の総放送時間は120時間以上、ロンドン大会の3倍近くになったという【9月20日付け読売新聞】。
 連日の奮闘を暖かく見守ったメディアの論調は、大会が終わると一変した。日本の障害者スポーツは世界の趨勢から取り残されていると論評した。
 手厳しい評価と並んで、各国のメダル数が報じられた。
   1位:中国・・・・金107個など239個
   2位:英国・・・・147個
   3位:ウクライナ・・・・117個
   4位:米国・・・・115個
   5位:オーストラリア・・・・81個
   64位:日本・・・・24個(金0個)
 9月20日付け朝日新聞は、中国の大躍進について、「かつてリハビリの一環だった障害者スポーツは、近年、競技化が進んでいる。それに伴って、国によるメダル争いも白熱化してきた」とし、「中国の障害者の数は、AP通信によると、8,500万人とも言われ、その中から選りすぐった才能を国家的に育成している」と指摘。「就労が厳しい障害者が、スポーツで生活を切り開く道を用意している」結果が金107個のメダル数となったという。
 紛争で揺れるウクライナが117個のメダルを獲得したことは、経済力だけでは説明がつかない。パラリンピックは、「障害者を取り巻く社会システムの勝負」でもある。
 NHKの独占中継で「日本選手のメダルラッシュ」ばかり見せられていると、障害者競技の世界で日本はどのあたりにいるのか、全体像が分からなくなる。

(2)海をわたる「記者クラブ」
 国連総会を舞台に、連日首脳会談を重ねる安倍首相の姿がメディアに登場した。メディアは判を押したように、「北朝鮮への対応が話し合われた」と書いた。安倍首相の総会演説についても北朝鮮問題におよそ半分の時間を割いたことを各社横並びで報じた。
 首相の外遊には同行記者団が付いていく。国連総会では足場のいい高級ホテルに宿をとり、宴会場がプレスルームになった。外務省の随員が張り付き、首相の動静や会談内容を聞かされる。記者クラブがそっくりニューヨークに移ったようなもので、日本語で取材できる。レクや資料配付が頻繁になされて、記者はホテルに釘付けにされる。レクは官房副長官が行う。首相が誰と会い、どんなことを話し合ったのか、都合のいい情報をちりばめた解説がなされる。
 同行記者が送る記事やニュースが外務省のホームページとさして変わらない中身になるのは、そんな事情からだ。「北朝鮮」に熱心な首相の姿勢は伝わっても、国連での日本外交はどれほどのものなのか分かりにくい。
 「今日もメダルラッシュです」のパラリンピック報道と似てはいないか。

(3)国連総会のアジェンダセッティング
 総会のメインテーマは難民問題だった。
 同行記者は、先を争って日本の貢献ぶりを書いた。「首相 難民支援で世銀に100億円規模の協力へ」(9月21日付けNHK)、「難民支援、3年で2,800億円 首相が表明」(同日付け毎日新聞)。・・・・難民問題は「どれだけの額で貢献するか」であるかのような報道ぶり。受け入れをめぐり国を二分するような論争が各国で起きている中で、日本は「冷淡な国」と見られている。代償が資金拠出なのか。そんな日本の姿を国連を舞台に考える記事はほぼ見当たらなかった。
 日本が訴えた「北朝鮮の脅威」は、これと正反対の構図となった。「北朝鮮問題」は、多くの国にとって差し迫った課題になっていない。国際社会は、ミサイル発射や核実験を「容認できない」点で一致はしている。しかし、弾頭を向けられるのは米国・韓国・日本。3ヵ国にとっては「深刻な事態」だが、自国が巻き込まれると思っている国は他にどこがあるだろうか。
 欧州は、北朝鮮の暴走は、朝鮮戦争が休戦のままになっている「未解決な戦後処理」に根源がある、と冷ややかに見ている。欧州からすれば、宗教対立や旧植民地などの歴史的怨念が絡み合うアラブ・中東問題のような根の深い紛争とは思えない。近隣のASEAN諸国の関心も薄い。
 小泉政権は日朝平壌宣言にこぎ着け、平和条約が視野に入ったが、米国の横槍で挫折した。
 米国にとって日本・韓国という「手下」を操るには明確な敵が存在するほうが都合がいい。軍産複合体にとってミサイル防衛システムの市場は大きいほどいい。日本は2兆円を投じてシステムを買った。韓国には北朝鮮の脅威を口実に米軍が配備する、中国を睨むレーダーシステムがある。
 核攻撃の不安に怯え、巨額の防衛予算を米国の軍事産業に吸い取られる現状は、日本にとって望ましいものではない。北朝鮮を国際社会に引き込むこと、その糸口は米朝対話しかないというのが現実だ。
 安倍政権は反対方向にひた走ってきた。制裁を強めても事態は深刻化するばかりだ。

(4)キューバ発の政府広報
 国連総会後、安倍首相はキューバを訪れた。ここでも同行記事が載った。「キューバへの影響力期待」だの、「北朝鮮への揺さぶり」だの。政権の淡い願望を拡声器のように伝えるのが新聞の仕事だろうか。書くべきは、苛烈な経済制裁が半世紀余り続いても国が倒れないキューバの現実ではないか。安倍首相がキューバから何を学んだか、日ごろ親しい番記者だから書ける記事があってもいい。
 日朝平壌宣言は自民党政権が外務省のアジア派の手を借りてこぎ着けた成果だった。安倍首相がこの路線を断ち切って敵視政策と兵糧攻めを始めた。北朝鮮が生き残る道として選んできたのが「核保有国」だ。
 軍事費に血税を吸われる愚は、北朝鮮も日本も同じだ。脅威を取り除くことは、民生の充実と表裏の関係にある。
 米国はオバマ政権でキューバと国交を回復した。ニクソン政権は、日本の頭越しに中国との国交回復を成功させた。北朝鮮の核開発は局面を変えた。米国の外交はよく豹変する。核実験からまもない9月10日、早くもニューヨーク・タイムズには北朝鮮の制裁を徐々に強めてきたオバマ政権の方針が失敗に終わったことを指摘する分析記事が載った。
 日朝平壌宣言に立ち返れ、と主張するメディアがなぜ出てこないのか。米国が動くまで日本は「お預け!」なのか。
 世界を見渡せば「北の脅威」は、北東アジアの局地的問題であり、日韓を引き連れた米国の対中戦略の一環だ。「北の処理」は米国の決断にかかっているが、政府は「ポチ」であっても、ジャーナリズムまで「ポチ」である必要はない。

□神保太郎「メディア批評 第10回」(「世界」2016年11月号)の「(2)「見たいもの」だけ報じるメディア」
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 【参考】
【メディア】批評by神保太郎 ~参院選後--メディアは国民をどこに誘うのか~
【メディア】日本国憲法の国際性 ~人権無法国家ニッポンの落日(2)~
【メディア】人権無法国家ニッポンの落日
【メディア】現場主義が薄情な安倍政治をストップ ~「日本死ね!!!」(2)~
【メディア】「日本死ね!!!」という立憲・民主主義 ~ネットの力~
【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~
【メディア】官邸癒着メディアと「機敏な反撃」(2) ~新聞と原子力ムラ~
【メディア】官邸癒着メディアと「機敏な反撃」(1) ~新聞と官邸~
【メディア】“愚者の砦”と化したNHK(2) ~かすかな希望~
【メディア】“愚者の砦”と化したNHK(1) ~強行採決を中継しない不作為~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(4) ~読売・NHKは?~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(3) ~新聞はどう報じたか~

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(2) ~違憲が争点に~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~
【メディア】集票キャンペーンの検証が課題 ~橋下劇場の終幕~
【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道(2)
【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道
【政治】「国連憲章」再読 ~安倍事態(アベノリスク)(2)~
【政治】どんどん言葉が死んでいく ~安倍事態(アベノリスク)~
【沖縄】をメディアはどう報道しているか(2) ~翁長知事の訪米~
【沖縄】をメディアはどう報道しているか(1) ~翁長知事冒頭発言~
【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~
【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~
【新聞】活字文化没落の序曲 ~朝日叩き~
【新聞】再生の出発点は現場 ~経営判断を誤ったジャーナリズム~
【新聞】記者の質問能力の低下 ~朝日新聞社長の記者会見~
【新聞】頑張る地方紙 ~「与党メディア」への対抗~
【新聞】分断される中央紙 ~「与党メディア」の勃興~
【NHK】「クローズアップ現代」事件 ~メディア・スキャンダル~
【NHK】が権力に隷従 ~「ニュースウォッチ9」~
【NHK】が危ない! ~組織に漂う負の雰囲気~
【政治】「第三の矢」の実態 ~アベノミクスの末路~
【集団的自衛権】とイラク情勢
【NHK】波乱の「籾井新体制」スタート ~「世界」のメディア批評~
【NHK】誤報の隠蔽 ~タガのはずれた安部政権~
【NHK】呆れた新会長会見、幼稚で傲慢な偏向報道
【新聞】経営者の関心は秘密保護法より軽減税率
【政治】安倍“異次元”政権の思想と行動 ~「馬脚をあらわす」兆候~
【政治】選挙目当ての「所得倍増計画」 ~検証が必要~
【政治】見えてきた安部政権自壊のシナリオ ~生放送の威力~
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【保健】世紀のデタラメ健康法 ~「糖質制限」ダイエット~

2016年10月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)トンデモ本の最たるものは、「糖質制限食」をテーマとする本だ。類似本が多く、主張は必ずしも同じではない。
 共通するのは、肥満、糖尿病、生活習慣病の予防のためには「糖質」を多く含む食べ物をやめて、「脂質」や「タンパク質」を多く含む食べ物を中心とする食生活をすべき、というものだ。
 〈例〉穀類、いも類、果物、砂糖などを止めて、肉や魚介類を中心とした食生活を勧める。極端なものになると、肉類を主食にするべきだという主張さえある。

 (2)これだけ類似本が出るということには、それなりの理由がある。
 ご飯、パン、蕎麦、いも類、果物など糖質を多く含む食品や砂糖の入った食品を止めて、肉類や魚介類ばかりを食べると体重が落ちる可能性がある。体重が落ちるのだから、糖尿病の人などは血糖値が下がることもある。
 しかし、それは栄養失調で痩せたのだ。栄養失調は、飢餓や断食による「量的」な栄養失調だけでなく、「質的」な意味での栄養失調もある。
 〈例〉「糖質制限食」とは正反対の「玄米菜食」がブームになったことがある。極端な実践者のなかには、玄米と野菜だけで、肉、牛乳や乳製品、卵はおろか魚介類さえ食べない人もいた。蕎麦屋で出汁にかつお節や煮干しが使われていると聞き、食べずに店を出る人さえいた。
 そんな食事をすると、たいがい体重が落ちる。それを喜んでいた女性も結構いた。ところが、真面目に継続して実践した人は、痩せるというよりガリガリになり、女性の場合は無生理、貧血などで苦しんだ人がたくさんいた。明らかにタンパク質、脂質不足による栄養失調だった。
 「糖質制限食」の場合、糖質不足になる。
 これだけ偏った食生活をすると、筋肉、体脂肪、あるいは血液などがきちんと作られなくなる。

 (3)「糖質制限食」を謳うトンデモ本で、「20kg痩せた」「30kg痩せた」といった事例を載せているものがあるが、元の体重が明記されていない。元の体重が百数十kgあるような高度肥満の男性医師が「20kg痩せた」「30kg痩せた」となっても問題にならないかもしれない。
 ただ、栄養失調による減量なのだから、一定期間なら意味がある。しかし、ほとんどのトンデモ本には、「正しい食事によって痩せた」と書いてある。つまり、いつまでも継続してもいい食事ということになってしまう。
 そのため、肥満でもない人や、若いスリムな女性が実践するトンデモない話になってきている。子どもにも実践させる親さえ登場している。 

□幕内秀夫(フーズ&ヘルス研究所代表/学校給食と子どもの健康を考える会代表)「「糖質制限」という世紀のデタラメ健康法 ~口は災いのもと 2」(「週刊金曜日」2016年10月14日号)
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【片山善博】【豊洲】市場問題 ~都議会のなすべきこと~

2016年10月19日 | ●片山善博
 (1)豊洲問題【注】に関し、このところ都議会議員たちの活動がしばしばマスコミに取りあげられる。
 〈例1〉青果棟床下で都議が採取した水から、砒素が1リットル当たり0.004mg検出された。ただ、環境基準の0.01mgには達していない。
 〈例2〉青果棟と水産卸売場棟を視察した別の都議たちからは、「青果棟の水は透明、水産卸売場棟は青果棟より濁っていたが、どちらも臭いはしなかった」との所見が伝えられた。
 〈例3〉地下水からシアン化合物が検出されたとする都議たち、鉛が検出されたとする都議もいた。
 〈例4〉加工パッケージ棟と管理施設棟の2棟について都庁の職員から視察を断られたと不満を訴えている議員がいた。
 〈例5〉テレビ局の女性記者が地下空間からレポートしているものと思って見ていたら、実は現役の都議会議員だったということもあった。

 (2)マスコミは連日(1)のような話題を提供し、それを見た人の中には「都議会議員はよくやっている」と評価する人も少なくなかろう。
 たしかに一定の評価を与えてよいが、強い違和感を覚えさせるのも事実だ。
 違和感の理由1番目・・・・今頃になって熱心に豊洲市場問題に取り組み、大勢の都議が現場に足を運ぶぐらいなら、どうしてこんな大事に至る前に(まだ計画中の段階で)、もう少し本腰を入れなかったのか、という不満と不信だ。
  (a)豊洲の市場建設予定地(当時)では土壌汚染が取り沙汰され、その不安を解消するための安心材料として盛り土をすることにした。それを前提に、都議会は築地から豊洲への移転方針を了承し、関連予算も通してきたはずだ。ならば、その前提がその後の土木工事や建築工事において実際に守られているかどうかを確認しなければならないし、そうした活動こそ都民の代表(都議会)の責務だったのではないか。
  (b)都議会の、中央卸売市場問題を所管する委員会では、建物の建設予算案などを審議する過程で、施設の設計図と盛り土抗争とが平仄が合っているかどうかの点検ぐらいはしておくべきだった。議員たちはこの種のことには素人だというなら、建築の専門家などを委員会に呼んで意見を聴いたらいい。
  (c)建物の建築工事が始まる前に、決められたとおりに土壌汚染対策が実施されているかどうか、議員たちが現場に出向いて確かめてみるぐらいの熱意と執着心があっていい。ちゃんと盛り土がなされているかどうかぐらいのことは、いくら素人でも現場に行ってみればわかっただろうに。

 (3)小池百合子・知事の判断で、豊洲市場について「一度立ち止まって考える」ことにしたら、いつの間にか地下空間の存在が漏れ聞こえてきた。これをマスコミが大々的に報じ、日々都民の関心と不安が増してきた機を見計らうように、都議会議員たちは押っ取り刀で現場に押しかけてきた。
 このありさまを見ると、都議たちの最近の行動を前向きに評価するよりも、むしろこれまでの怠慢を批判せざるをえない。
 「巨額の投資をして、後戻りができなくなる前に、どうしてちゃんとチェックしなかったのか。あなた方がぼんやりしていた結果がこのざまではないか」
 ただ、今さらであっても、現に積極的に活動している議員たちは、まだましだ。議員の中には、無反応で発言も行動もしない人がたくさんいるからだ。都庁の役人に騙されていたのであれば、仮に移転推進派であったとしても、怒りを隠せないだろう。実はこっそり地下空間の存在を知らされていたのであれば、言うべき言葉が見当たらないかもしれない。
 無反応の議員たちの心境を尋ねてみる価値はある。

 (4)違和感の理由2番目・・・・この期に及んでも、議員は群れでしか行動しない(できない)ことだ。(1)の議員たちの行為は、いずれも彼らが属する群れ(会派)単位で行われている。
 本来であれば、所管の委員会に属する議員が党派を超えてまとまり、委員会活動として調査なり点検なりに乗り出すのが筋だ。それをしないで、それぞれの会派ごとにバラバラで活動しているのが現状だ。
 何故か。おそらく、少数会派の議員に尋ねれば、委員会単位で行動しようにも多数会派が決して同意しないので回は単位にならざるを得ない、と言うだろう。現実にはそうした事情や背景が都議会にあるのは事実だ。
 だが、このたびのような状況のもとで、もし少数会派が委員会としての調査を提案したとして、それを多数会派がにべもなく撥ねつけるとは思われない。そんなことをしたら、多数会派の議員たちも、都庁のそれこそ無責任なお役人たちと同じ穴の狢だとみなされ、来年の都議会議員選挙において大きなダメージを被ることが容易に想像できるからだ。

 (5)会派で活動している議員を見ると、彼らが一番気にしているのは会派として目立つこと、功名争いをしているのではないか。わが党ないしわが会派は都民本位の姿勢でいち早く対応している。マスコミに、それが目立つよう報じてもらいたい。・・・・そんな下心が、来年の都会議員選挙を控えた彼らの行動から透けて見える。
 より目立つように報じてもらうには絵にならなければならないから、報道陣を伴って地下空間に赴く。できればそこはおぞましい様相を呈していて、そこで採取した水に汚染物質が含まれていてほしい。マスコミの関心を引きつけるには、それが好都合だ。・・・・いささか不謹慎な想像だが、必ずしも荒唐無稽とはいえない。何故なら、例えば砒素の検出が環境基準を下回っていたとの分析結果を公表した会派の議員たちからは、いかにも無念そうな表情が窺われたからだ。マスコミはもっとセンセーショナルに報じてくれたのに。そんな複雑な思いが伝わってきた。
 別の会派の議員たちは、現地調査の際、全員お揃いの服を着ていた。防災服らしい。防災服を着用することで、危険な場所に入り込む気構えを示したかったのか。ここでも、真相解明の意思よりも、自分たちの姿を都民に見てもらいたいとのあざとあの方が印象的だった。

 (6)議員たちは、こうした会派ごとの調査結果をこれからどうするのか。今のところ、誰がどういう手法で分析したかが、必ずしも詳らかにされていない。バラバラの、それだけでは信用度の薄い結果を出したままでは無責任ではないか。それとも、あれは見せ場を作るパフォーマンスなのだから、それで用済みというわけか。

 (7)お役所の縦割りが批判されて久しいが、都庁もその悪弊に染まっていることは、豊洲問題からもわかってきた。その縦割りを正すのが議会の役割だが、都議会は都議会で縦割りならぬ「群れ割り」の弊に陥っている。
 災いを転じて福となす。この際、都議会は群れ(会派)でしか行動できない体質を改めてはどうか。二元代表制のもとで、会派の功名心など脇に置いて、議会としての正姿勢で知事や都庁職員に向き合うのだ。
 縦割りの都庁に群れ割りの都議会。こんな機能不全の都政を大きく変えるよう、都議会議員には奮起してほしい。木に縁って魚を求むるようなものだとは知りつつも、敢えて声を大にして言っておきたい。

 【注】
【豊洲】都庁は伏魔殿 ~小池百合子・都知事の力量~
【豊洲】新市場、解析データで浮かび上がった謎 ~盛り土による地盤沈下にズレ~
【豊洲】は「空洞問題」で終わった ~当事者との合意形成が欠如~
【豊洲】市場では「安全宣言」を出せない ~土壌汚染対策法~
【豊洲】市場移転:宇都宮健児が小池百合子・都知事の決断を分析
【後藤謙次】築地市場の移転延期の決断が小池都知事の手足を縛るリスク
【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~
【食】移転先の土壌、ヒ素汚染残して開場 ~築地市場~
【選挙】石原都政で何が失われたか ~福祉・医療・教育・新銀行破綻・汚染市場~

□片山善博(慶應義塾大学教授)「豊洲市場問題--都議会のなすべきこと ~日本を診る第84回~」(「世界」2016年11月号)
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 【参考】
【片山善博】今も変わらぬ社会の病理 ~福翁自伝~
【片山善博】都議会改革は都庁改革 ~都の政策に責任を持つのは誰か~
【片山善博】情報公開が首長を守る ~舛添都知事辞任の教訓~
【片山善博】大切なことに時間を使う ~セネカ『人生の短さについて』~
【片山善博】二度も続いた東京都知事の失脚-その教訓を都政の改革に生かす
【片山善博】参議院選、鳥取島根ほかの「今回の合区は憲法違反」
【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~
【片山善博】らの鼎談 違法性がなくても知事の適性がない ~舛添は日本の恥(2)~
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【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
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