語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~

2015年11月07日 | ●佐藤優
 (承前:昭和史を武器に変える10の思考術)

(9)地政学の目で中国を読む
 現在、地政学的観点から世界を見たとき、要注意なのは中国だ。中央アジアに大きな変動の兆しが見られるからだ。
 近い将来、
   ①キルギスとカザフ東部とタジキスタンとウズベクのフェルガナ盆地
   ②新疆ウイグルにまたがる地域
で「第二イスラム国」ができる可能性は低くない。
 中国はウイグルに対して弾圧一方の統治だ。地域住民とイスラム全体を敵に回しているから、第二の「イスラム国」ができれば、住民にとって中国政府より歓迎すべき存在となる危険性がある。
 これは非常に大きな恐怖だ。マレーシア、インドネシア、フィリピンまで、イスラム・ベルトに沿って「第二イスラム国」が東南アジア全体へ南下してくる可能性があるからだ。
 地政学の常識からすれば、内陸部に不安定化のおそれがある状況で、南沙や尖閣で挑発を繰り返すような余裕は中国にはないはずだ。しかし、中国は海洋進出を止めようとはしない。
 いまの中国は、昭和の大日本帝国に似ているのではないか。
 両者の共通点は、近代戦の経験から遠ざかっていることだ。戦後中国が経験した近代戦は、
   1969年 中ソ国境における珍宝島(ダマンスキー島)事件
   1979年 中越戦争
くらいで、もう四半世紀、実戦を経験していない。しかもどちらも、陸軍の戦争だった。海軍に至っては日清戦争の黄海海戦(1894年)まで遡らなければならない。120年以上のブランクがある。
 いま南沙や尖閣で盛んに挑発している面々は、本当の戦争などまったく知らない。
 戦前の日本にとって日中戦争が泥沼になったように、中国にとって中央アジアが泥沼の戦場に化すかもしれない。

□佐藤優「昭和史を武器に変える10の思考術」(「文藝春秋SPECIAL」2015年秋号)
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 【参考】
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~

  



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