語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>福島県の中通りは「放射線管理区域」~住めない土地~

2011年10月31日 | 震災・原発事故
 福島県の中心部「中通り」(福島市、郡山市など)で、今、除染が盛んに行われている。【明石】
 だが、あそこは人が住むところではない。「放射線管理区域」にしなければならないところだ。普通の人は立ち入ることが許されないところだ。「中通り」は全部そうした汚染レベルだ。【小出】
 5月、ゴールデンウィークの頃、JR郡山駅の東口駅前広場で1.8μSv/時もあった。宿泊したホテル近くの居酒屋でも0.45μSv/時あり、酔えなかった。6月、JR福島駅前で0.9μSv/時もあった。【明石】
 8月4日、東北新幹線に乗ったら、郡山に近づくにつれ、放射線検知器のカウントがどんどん上がっていった。福島駅のホームでは、東京駅の10倍の放射線が検出された。あのあたり一帯が放射能で汚れていて、そこから新幹線の車内に向けて放射線が突き刺さってくる、という状況だ。公衆が行き交う駅のホームまで「放射線管理区域」にしなければならないほど汚れている。【小出】
 福島県の中通りを貫く東北自動車道も同じで、福島県内の高速サービスエリアには0.8μSv/時を超えるところももあった。【明石】
 そうしたところでは、必ず空間線量を表示する標識を立て、放射線管理区域に相当する汚染があることを警告しなければならない。【小出】

 なぜ、山下俊一・長崎大学教授、高村昇・長崎大学教授、神谷研二・広島大学教授が福島県の「放射線健康リスクアドバイザー」に任命されたのか。彼らでは福島県民を被曝から守れない。【明石】
 県の中心部であり、人口が集中する中通りを失ったら福島県は終わりだ。ここが「もう人の住めないところだ」と宣言されたら、福島県は崩壊する。だから、福島県は中通りだけは何としても生き延びさせたい、と思っているらしい。そこで、「少々の被曝はたいしたことはない」「安心だ」と言ってくれそうな人を連れてきたのだ。事実、山下教授はそう言った。【小出】
 福島県庁が建っているあたりが特に空間線量が高い。何かを象徴しているようだ。県民を「放射線管理区域」に縛りつけ、敢えて健康リスクを増大させていることへの“怨念”というか。【明石】
 福島県庁は知っているはずだ。ここがどれだけ汚染されているか、ということを。【小出】
 明日は死なないかもしれないが、3年後、5年後には福島県民の間で・・・・【明石】
 健康被害は必ず出てくる。笑っていようと、笑ってなかろうと。【小出】

 以上、語り手:小出裕章/聞き手:明石昇二郎「「冷温停止」「除染」という言葉に誤魔化されてはいけません」(「別冊宝島 原発の深い闇2」、宝島社、2011)に拠る。

    *

 10月29日、細野豪志・環境相は、福島県内の汚染土壌を収容する中間貯蔵施設を2015年1月から県内で稼働させる工程表を明らかにした。中間貯蔵の開始後30年以内に県外で最終処分すると明示した。【記事「汚染土壌、福島で中間貯蔵最長30年 政府が工程表」(2011年10月29日21時46分日 asahi.com)

 30年以内に県外で最終処分?
 「県外」の地方自治体が受け入れるかしら。沖縄の米軍基地は受け入れなかったのに。
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【心理】楽天・マー君に凄みが出た秘訣 ~変わる人は変わる~

2011年10月30日 | 心理
 たまには、爽やかな話をしよう。

 マー君こと田中将大(楽天)の今季の成績は、勝利数19、勝率.792、防御率1.27で、いずれも1位だ。
 防御率は、稲尾和久の1.06に次ぐパ・リーグ歴代2位、両リーグを通じても歴代5位だ。1970年より後、初の歴代10傑入りだ。「考えられんな」と星野仙一・楽天監督は絶句した。
 2007年の入団以来、投手タイトルとは無縁だった。それがなぜ今季、こんな好成績を残せたのか。

(1)モチヴェーション
 昨年8月29日の西武戦で、右大胸筋を部分断裂した。全治3週間。これと共に、楽天のクライマックスシリーズ進出のわざかな望みは潰えた。
 再開にあえぐチームを自宅のテレビで見守るだけの日々。俺は何をしているんだろう、というもどかしさで悔しい思いをした。ふがいない・・・・この時の思いが「1年間投げ抜く」決意、「誰よりもいい投手になる」という強いモチヴェーションにつながった。

(2)フォームの無駄を矯正
 キャンプで追求したのは、力のロスのない投球フォーム、効率的なフォームだ。ポイントは左足の踏ん張りだ。軸足にためた力を逃さないこと。そして、右肘を高く保って、球をできるだけ前で放すこと。「よい形で投げることで体への負担が減り、結果的にいい球が行くはずだ」
 207球の投げ込みなど、過去にない練習量をこなした。荒々しかったフォームは、日ごとに磨かれ、しなやかさと美しさを帯びていった。 
 それが、226回3分の1で27四球というずば抜けた制球力につながった。
 右肘の位置が定まったことで、スプリット・フィンガード・ファストボールの落ちが鋭くなった。元々の決め球だったスライダーも、統一球効果で曲がりが大きくなった。キレが増した。
 最速155kmの直球の数字に大きな変化はない。しかし、球を打者寄りで放すことで、昨季までにはなかったノビが生じた。

(3)効果
 かくて、2球で追い込み、3球目で三振を奪う「3球勝負」が可能になった。
 早いカウントからの勝負を続けるうちに、勝負勘も養われた。危険(打者の打ち気)を察知する嗅覚が鋭敏になった。「押すところは押し、引くところは引く。それができている」
 1個のアウトにかける球数が減ったことが、27試合で14完投の離れ業につながっている。
 四球の減少が見逃せない。27四球は、8.4イニングに1個のペース。昨季は4.8イニングに1個だから格段によくなった。
 そして、奪三振率の向上。奪三振は241で、ダルビッシュに次ぐ2位だ。奪三振率も、9.58で、昨季の6.90とは比較にならない。
 ピンチでは狙って三振を奪い、決定打を許さない。完投、完封が当たり前になった所以だ。
 先発ローテを1年間守る、という目標はあっさり達成された。「今季は例年のようなしんどさはなかった」

(4)チーム一丸となって
 野球は、一人でやるゲームではない。単純に相手を抑えても、味方の援護がなければ白星につながらない。
 しかも、楽天は、12球団で一、二を争う貧打だ。
 だが、田中が投げるときは、別のチームのように打った。9月以降は、平均で6点近い援護をもらい、6勝を上乗せした。
 ふだんは同僚にちょっかいを出したり、「AKB48」に夢中になる若者が、マウンドに立つと鬼の形相に変わった。
 マウンドでの、田中のあの勝利への気迫。あいつのために打ってやる、っていう気になるんだ。【山崎武司・(前)楽天選手】

(5)向上心
 「今年は球が(統一球に)変わりましたからね」
 「この成績が1年だけでは意味がない。来年も続けることが大事だと思う」

 以上、渡辺祟(朝日新聞スポーツ部)「祝・三冠 勝利数、勝率、防御率 楽天・マー君「凄さの秘密」」(「週刊朝日」2011年月日号)
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【震災】原発>福島のコメが全国の消費者の胃袋に入るまで

2011年10月29日 | 震災・原発事故
(1)朝令暮改
 3月31日付け、JRいわき市発文書「東北地方太平洋沖地震及び東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う対応について」・・・・農作業延期の要請。<耕うん作業については、放射性物質が表層にとどまっている状態と思われることから、これ以上拡散させないため、当面は耕うんを行わないで下さい。>
 4月7日付け、県いわき農林事務所&JRいわき市(連名)発文書・・・・農作業延期を解除。<原発事故を受け福島県は4月6日に農地の土壌を独自に調査した結果を発表>したので<その結果を踏まえて、いわき市内(第一原発半径30km圏内を除く)は農作業延期の要請が解除>され、<これにより、今後の農作業は通常どおり進めることができるようになりました。><土壌中の放射性物質については国の基準値がないため、最終的な判断は近日中に示される国の方針に基づき行われる予定>。  

(2)土壌検査
 土壌検査は、3月31日~4月1日の2日間に実施。4月5日に「分析結果の解析と評価」が行われ、翌日に発表された。
 例えば、中通りの本宮市長屋地区。4月6日の発表では、4,984Bqだった。その2日後、国は暫定規制値を5,000Bqと定めた。
 ちなみに福島県は、面積が全国3位で、原発事故前のコメ収穫量は全国4位、作付面積は81,300haだ。そのうち土壌検査を行ったのは、県内全域で58地点にすぎない。当初、各市町村ごとに裁定1地点含まれるよう選定し、70地点を予定していたが、12地点は落ちてしまった。  

(3)食品検査
 サンプリング検査はおおざっぱで、旧市町村ごとに2点のサンプルを検査するのみだ。
 重点調査区域(<例>二本松市)に指定されていても、約15ha(45,375坪)ごとに2点だ。約15haで採れるコメの総量72,600kgのうち2kgだけだ(0.00275%)。
 ちなみに、福島では351,900トンのコメが収穫される(予想)。
 8月、県西部の河沼郡会津坂下町で、県内で初めて早場米「瑞穂黄金」が収穫され、4サンプルのみが検査された。放射性セシウムは検出されなかった、と県は発表した。
 農民は、予想外の結果に喫驚した、という。会津坂下町から10kmもない福島地裁会津若松支部の側溝汚泥から237,000Bqの放射性セシウムが検出されていたからだ。そして、水田土壌の検査でも868Bqが検出されていたからだ。 

 浜通りの田代忠一氏は、今年田植えをやめるつもりだった。しかし、農水省農政事務所や県農林事務所から「コメはどんどん作ってくれ。玄米の段階で国、県がきっちり検査するから」とハッパをかけられ、12,000坪作付けした。9月末の予備調査でセシウムは検出されず、320俵が収穫される見こみだ。しかし、「自分が作ったコメが食えるかどうか自信がない」。東京にいる息子から罵られた。「国は補償金を出すことになったら莫大な金額になるから、発表される検査結果は必ず規制値以下になるはずだ。そんなことがわからない父ちゃんはバカだ、見損なった」

(4)偽装
 田植え後の6月半ばごろから、県内の卸業者は昨年使った「一空袋」【注】の収集に力を入れている。
 ホームセンターでは、「一空袋」が山積みされ、福島県から遠い順に売り切れる。「コシヒカリ」の袋が多いが、山口県、鳥取県の「ひとめぼれ」の袋も売り切れた。福島県の生産量の7割強は「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」だ。
 ある業者は、以前から取引のある関西の卸業者とすでに話がついている。その偽装作戦は、こうだ。
 <「関西に行くには、東京まで常磐道か東北自動車道で行って、その先は東名高速を使ったほうが早いかも。でも、俺は磐越道で新潟県に出て、富山、石川、福井、滋賀県、京都府を通って目的地へ向かう。遠回りだけど、途中で福島県の新米を某県の新米に変身させる」/一空袋のコメを某県の新袋に詰め替えるという。/「一定の手数料を払うことで地元の業者と前々から話がついている。関西の卸業者も『それなら堂々と引き受けられる』と喜んでいるし、出来レースというわけだ。たいして儲からないけど、コメを動かさないことには金が入ってこない。銘柄はコシヒカリに限られる」/調べてみると、この業者が通る1府5県は例外なくコシヒカリを生産している。>
 福島県庁幹部も、偽装が起きることを覚悟している、という。

 【注】「【震災】原発>食品>汚染米のチェック機能不全/消費者側の対策
    「【震災】原発>食品>いまだにやまぬ産地・銘柄の偽装

 以上、吾妻博勝(ジャーナリスト)「「産地偽装」に追い込まれる福島の生産者たち」(「別冊宝島 原発の深い闇2」、宝島社、2011)に拠る。
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【震災】原発>「年内に冷温停止」は虚構 ~地下ダムと石棺が必要~

2011年10月28日 | 震災・原発事故
 「冷温停止」とは、圧力容器の中の圧力が1気圧、かつ、炉心の温度が摂氏100度以下になった状態、水が蒸発しない状態だ【注1】。
 ところが、いま圧力容器の底が抜けてメルトダウンしているから、水は溜まらない【注2】。「冷温停止」もへったくれもない【注3】。
 東電はいま圧力容器に水を入れているが、底に穴が開いているから、水は格納容器へ落ちていく。格納容器の底には炉心が溶けてドロドロになった溶融体があり、2,800度を超す崩壊熱を出しているから、入れた水が蒸気になって噴き出す。蒸気は圧力抑制室の中へ流れるが、圧力抑制室は壊れているから、そこからまた外に出る。
 溶け落ちた炉心は格納容器を溶かし、原子炉建屋に落ち、建屋の地面にめりこんでいるかもしれない。その場合、地下水との接触を断たないかぎり、汚染が外へ広がる。
 一刻も早く遮水壁を作らねばならなかった。しかし、東電は株主総会の前には口をつぐんでいたし、総会が終わってもやらない。ただ、工程表には付け加わった。ただし、できるのは2年後だという。間に合わない。

(1)1号機
 5月12日、東電も国も1号機のメルトダウンを認めた。

(2)2~3号機
 いまだに原子炉建屋内に入ることすらできない。1号機と同様、水がない可能性が高い。その場合、2~3号機もメルトダウンしている。あるいは、原子炉水位計どおり炉心の半分まで水がある場合、下半分は残っていて、その上にグズグズに溶けた上半分がのっかっている。もし、その状態で水が減って炉心が水の上に出ると、炉心がいっぺんに溶けて100トンの重量のあるものが水の上に落ちて「水蒸気爆発」が起きる。圧力容器も格納容器も壊れる。放射能が外へ噴き出す。防ぎようはない。

(3)4号機
 プールが宙ぶらりんの状態になっている。膨大な量の使用済み燃料が地震などで落ちたら、もうおしまいだ。

 要するに、冷温停止とかのレベルではない。4月17日に東電が工程表を発表した時点では炉心はまだ形があると思われていたが、5月の時点では冷温停止という概念は使えなくなった。
 6ヵ月たった今も、4,000kW以上の崩壊熱が出ている。
 汚染水も溜まっている【注4】。原子炉建屋は、地震であちこち割れているはずだ。水は地下に向かってどんどん漏れている【注5】。

 土壌や下水道汚泥の放射性物質は、処理できない。どこかに集めるしかない。核の墓場を作るしかない。
 福島原発第一は、最終的に石棺になるしかない。

 【注1】「冷温停止」は、もともと原子力専門家の間でしか使わなかったテクニカルタームだ。【語り手:小出裕章/聞き手:明石昇二郎「「冷温停止」「除染」という言葉に誤魔化されてはいけません」(「別冊宝島 原発の深い闇2」、宝島社、2011)】
 【注2】そんな状態に「冷温停止」という専門用語を使うこと自体、フクシマで起きていることを理解していない証左だ。【前掲インタビュー】
 【注3】10月22日、原子力安全・保安院は福島第一原発の「冷温停止」実現後3年間の安全対策をまとめた東電の計画書について専門家に評価を聞く意見聴取会を開いた。出席者から、「冷温停止」の定義などについて疑問が呈された。<工藤和彦・九州大特任教授(原子炉工学)は「本来の『冷温停止』は、圧力容器を開けても放射性物質が放出されない状態を指すもので、第一原発に適用すべきではない」と指摘。東之弘・いわき明星大教授(熱力学)も「(冷温停止の目安の一つの)圧力容器底部の温度は、内部の溶融した燃料の位置によって異なる可能性がある。内部状況をできるだけ早く把握するとともに、温度測定方法も検討すべきだ」と注文を付けた。> 【記事「東日本大震災:福島第1原発事故 冷温停止、定義に疑問 保安院聴取会で専門家ら」(2011年10月23日 毎日jp)】
 【注4】<さんざん宣伝されている「浄化装置」にしても、汚染水が消えてなくなるわけではなく、水の中の放射能を別の場所に移しただけの話です。原子炉を冷やすために外から水を入れると、入れた分だけ汚染水が増えるので、循環させているわけです。でも、循環させても汚染水が増えなくなっただけで、減りはしない。なのに、あたかも汚染水の量がものすごく減るかのように宣伝されていますね。皆さん、東電に錯覚させられている。>【前掲インタビュー】
 【注5】<必ず「地下ダム」は造らなければいけません。ですから、東電のいわゆる「工程表」にもすでに入っている。ただ、東電の工程表だと2年後にやることになっていいて、私はそれではあまりにも遅すぎると言っているのだけれども、必ずやるしかないんです。/地下ダムと石棺以外に、たぶん為すことはないです。>【前掲インタビュー】

 以上、語り手:小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)/聞き手:渡辺妙子(編集部)「東電がやるべきことは汚染の全体像を明らかにすることだ」(「週刊金曜日」2011年10月21日号)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>年内に冷温停止しない理由
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【経済】電力会社が巨利を得る蛸壺経済体制 ~囲い込み・すみ分け~

2011年10月27日 | ●野口悠紀雄
(1)日本経済の蛸壺的構造
 「囲い込みとすみ分け」の経済体制は、「利用者・顧客を囲い込んで、市場を分割する。供給者はすみ分ける」というシステムだ。いくつかの縦割りグループが併存する「蛸壺経済」だ。蛸壺は分業せず、ある事業分野では、複数の蛸壺が同じ事業を行っている。
 日本経済で広く見られる現象だ。第2次世界大戦後の日本経済の基本的な構造だ。
 <例>発送電独占、地域独占の電力。
 <他の例>携帯電話と初期のPC。顧客の囲い込みはより緩やかだが、マスメディア(全国紙と系列テレビ局)、金融機関を中心とする系列、電鉄と不動産開発事業。強固な垂直統合企業グループを形成している自動車メーカーと系列部品メーカー。
 つまり、日本列島という「ガラパゴス諸島」は、大小の蛸壺が並んでいる場所なのだ。グループの構成員の生活の糧は、蛸壺においてしか得ることはできない。
 壺に入れてもらえない人は、よく言えば「自由人」だが、その実体は「はぐれ者」ないし「部外者」だ。「非正規労働者」と呼ばれる場合もある。

(2)「囲い込みとすみ分け」を可能とする3条件
 (a)国内市場の規模が十分に大きいこと。分割された各市場が、採算のとれる経済活動を可能にするだけの大きさを持つこと。
 (b)標準化やモジュール化を妨げる技術的要因があること。新規参入を困難にする技術的・自然的制約が存在すること。
 (c)技術が安定的であること。
 <典型例>電力。(a)各電力会社の管内は十分に大きい。(b)周波数の違いが西と東を分けているし、島国だから外国から送電線を引けない。(c)これまでは大きな技術変化はなかった(ただし、スマートグリッドは大変化をもたらす潜在力を持つ)。
 他の分野では、電力におけるほど「すみ分け」は安定的でない。だから、蛸壺間の競争は起きる。ただし、その場合の目標は利益ではなく、シェアになる。つまり、勢力圏の拡大が重要な課題だ。
 注1・・・・3条件のすべてが必要条件というわけではない。携帯電話の場合、(a)は満たされているが、(b)は満たされていない。携帯電話は、本来はPCと同じように互換性があるものだ。SIMロックは、互換性をなくすための人為的な手段だ。
 注2・・・・それぞれの蛸壺の中も、決して均一ではない。派閥、部門間対立、複数の専門家集団間の争いがある。だから、すみ分けは多層構造をなす。ただし、部外者からは「企業グループ」という一つの蛸壺に見える。
 注3・・・・さらに日本語がかかわると、「囲い込みとすみ分け」が生じやすくなる。外国との競争が起こりえないからだ。<典型例>マスメディア。

(3)「囲い込みとすみ分け」がもたらす巨利とそのシステムの崩壊
 すみ分けシステムでは、競争は悪として否定される。それを表すため、しばしば「過当競争」という言葉が使われる。
 競争否定を正当化するために用いられるのが、「安定と秩序」だ。その反面で、競争がもたらす発展可能性と効率化は無視される。
 <例>電力。「安定的な電力供給」が金科玉条とされる。「停電が一切生じない電力供給は、地域独占によってこそ実現できる」という論理だ。問題は、多大なコスト負担だ。日本の電気料金はアメリカのほぼ2倍だ。そして、地域独占下では消費者に選択の余地はない。
 かくして、すみ分けシステムは供給者に過剰な利益をもたらす。競争があれば発生しえない「レント(超過利潤)」だ。これは外部者には見えない。東京電力がどれだけ巨額のレントを享受していたかは、福島原発事故で東電が生体解剖されることによって、初めて見えるようになってきた。
 すみ分けシステムの安定した状態を破壊するのは技術だ。<例>PC。スマートフォンは日本のすみ分け体制を壊そうとしている。そして、スマートグリッドの進歩は、電力の地域独占体制を正当化する論理を破壊する可能性がある。
 1990年代以降の技術は、日本に不利に変わってきた。<例>IT。囲い込み・すみ分け文化とは親和性がない。だから、日本は対応できなかった。
 実は、そうした変化がIT以外の分野でも生じる可能性がある。

 以上、野口悠紀雄「囲い込みとすみ分けの「蛸壺経済」体制 ~野口悠紀雄の「震災復興とグローバル経済――日本の選択」第19回」(「東洋経済」11/10/24 | 12:18)に拠る。
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【震災】原発>九州電力の3つの誤算 ~「やらせメール」~

2011年10月26日 | 震災・原発事故
(1)郷原信郎・第三者委員会委員長
 7月初め、「やらせメール」問題が発覚すると、自社の内部調査では世論の批判がおさまらないと見て、第三者委員会の設置を決めた。
 とはいえ、本気で真相を解明し、企業体質を改める気なぞ、九電には露ほどもなかった。原発の早期再稼働のため、お墨付きを与えてほしかっただけだ。だから、委員の選考にあたって、電力会社の仕事をした経験があり、「原発に理解がある人」であることが基準となった。
 九電は、この基準で郷原弁護士に委員長を依頼することにしたらしい。彼の詳細を知らず、コンプライアンスに関する著作などを読んだ程度で、特に郷原弁護士が中国電力のアドバイザリーボードの委員長だったことが決め手となった。
 ところが、06年に検察官を退き、主に企業コンプライアンスに取り組んできた郷原弁護士は、「こうと思いこんだら誰が何といおうとも後には引かない性格」で、「今も真相究明したいという特捜検事気分を持ち続けている」人なのであった。検察批判の急先鋒であり、小沢一郎・元民主党代表をめぐる一連の捜査でも、一貫して東京地検特捜部を批判。昨年の大阪地検の不祥事の際には、検察改革を議論する法務大臣の諮問機関のメンバーに選ばれた(法務大臣の推薦)。改革に消極的な検察側にプレッシャーをかける人選と目される。
 九電がとんでもない思い違いをしていたことは、委員会発足前後から明らかになる。
 郷原弁護士は、九電幹部と古川康・佐賀県知事との密談を知ると、知事に面会して辞任を促した。さらに、九電が当初予定していなかった「調査班」(特捜出身の弁護士らがメンバー)が設置されることになった。
 思わぬ展開に、松尾新吾・九電会長は、「佐賀県知事を辞めさせるな」と周囲に言い渡した。
 古川と九電との癒着は、既にさまざまな報道で明るみに出ている。

(2)知事発言メモの流出
 古川は、当初、密談の事実を伏せ、「やらせメール」を憤慨してみせたりした。
 古川にとって都合のよい「九電の勇み足」として事件の幕を下ろすためには、佐賀支店長の、知事発言が記されていた「メモ」流出を九電は阻止しなければならない。
 が、その存在が漏れた。この情報化社会に、社内約100人に送信されたメールが、絶対に外部に漏れないと想定するほうがおかしい。
 「AERA」8月15日号に全容が報告される【注1】と、九電は真部利応・九電社長直々の指示で、流出の犯人捜しに血眼になった。同時に九電は、第三者委員会が提出を求めた資料を破棄するなど、露骨な隠蔽に走った。調査班による関係者の事情聴取にも非協力的だった。

(3)経済産業大臣の批判
 第三者委員会は、最終報告で指摘した。九電と佐賀県が協力しあった「やらせ」の始まりは、プルサーマル計画受け入れ(2005年)をめぐる討論会での「仕込み質問」に遡る、と。
 他方、九電は、「第三者委員会と会社の見解は別」と突っぱね、「佐賀県の関与はない」とする報告書を10月14日に経産省に提出した。
 実は、経産省の担当課は、九電の「関与はない」とする報告書に内諾を与えていたらしい。
 が、枝野幸男・経産相は、「どういう神経なのか理解不能」と再三批判した【注2】。 
 九電が知事を庇っていることは明白。福島原発事故以後、原発に対する社会の認識が変わった。原子力村の中で話をつければ何でもできる、というのは大きな勘違いだ。【郷原弁護士】【注3】

 【注1】「【震災】原発>「やらせメール」知事指示のメモ、九電の証拠隠滅
 【注2】<枝野経産相は24日、九電について「公益企業として、どうしたら国民の信頼を得られるかを自主的に判断できる組織であることが、国民の信頼の大前提ではないか」と述べ、自発的に厳しく対応するよう改めて求めた。>九電は、25日にも経済産業省に最終報告書を再提出する見通しだが、古川康・佐賀県知事の発言が問題の発端ではないとする従来の見解を変えない模様。【記事「九電報告書、25日にも再提出 問題決着遠く」、日本経済新聞2011/10/25 2:03】
 【注3】<九電は第三者委の郷原信郎・元委員長に非公式に修正案を提示したが、郷原氏は否定的な考えを示しているという。>【記事「九電、国に不服請求も 」、2011/10/25付 西日本新聞朝刊】

 以上、本紙取材班「経産官僚がGOサイン」(「AERA」2011年10月31日号)に拠る。
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【震災】片山善博前総務相の、復興対策が遅れた真の原因 ~財務省~

2011年10月25日 | 震災・原発事故
●総務省の改革
 1年は短かったが、これだけはやりたいと思っていたことは、できた。力を入れたのは総務省の体質改善だ。組織として仕事をしようとすれば、トップである大臣と官僚がミッション(使命)を共有しなければいけない。その気になってもらうために、官僚たちと徹底的に議論した。【片山】
 補助金は各省の縦割りで使途が決められ、年度内に使い切る仕組みだ。使い勝手は悪く、無駄も生じる。こうした弊害をなくそうというのが一括交付金化で、まず都道府県のハード事業を対象におこなった。私が就任した時点で決まっていたのは28億円分だったが、菅首相の強い指示、馬淵国土交通相、鹿野農林水産相などの協力を得て、5,120億円まで積み上げた。【片山】

●東日本大震災をきっかけに、地方分権のありようが変わることはないか。 【宇野】
 被災した自治体の多くが、住民と意思疎通を図って復興計画をつくろうとしている。いいことだ。阪神大震災では、神戸市が住民の意見も聞かずに復興計画をつくった。結果として、住民の孤独死を招いたりした。このことへの反省がある。財政支援の枠組みは国が決め、自治体が主体的に計画を決めるという道筋だが、肝心の国の対応が鈍い。【片山】
 この国会の争点である第3次補正予算案は4月にでもつくるべきだった。早く決めましょう、と私は言い続けたが、財務省が震災を機に増税することにこだわり、進まなかった。復興事業は、お金のあるなしで左右される代物ではない。国債を使って一日も早く補正予算を組まないといけない。しかるに、復興のためなら国民も増税に応じるはず、と財務省は復興を人質にとったのだ。【片山】

●民主党内では、(a)地域主権こそが大事という考えと、(b)増税なくして復興なしという財務省的な考えが緊張関係にあった。野田政権では財務省側にシフトしたのか。【宇野】
 多くの与党議員が財務省にマインド・コントロールされている、としか思えなかった。メディアも同じだ。救急病院に重篤な患者が運び込まれているのに、治療費の返済計画を家族が提出するまで待たせておけ・・・・というようなものだ。異様だ。世の中がそれを異様だと言わないところが、また異様だ。【片山】

●復興のための増税のはずなのに、増税自体が自己目的化している。【宇野】
 赤字国債を年40数兆円出しているのに、財務省はその返済財源について口にしない。ところが、復興予算とB型肝炎の関連予算には、執拗に財源を求める。異様だ。閣議などで私がそう指摘すると、「財源なしに予算を組むのは無責任だ」と主張したのが、当時の野田財務相と与謝野経済財政相だった。財務官僚の論理を野田財務相が代弁し、与謝野経済財政相が補強し、菅首相までものんでしまった。【片山】
 復興の遅れを、菅首相の6月2日の辞意表明以降の政治空白のせいにする人がいるが、それは的外れだ。真の原因は、財務省のヘンテコな論理を菅首相がとがめなかったところにある。その意味では、菅首相は判断を誤った。【片山】
 野田政権になって、ほとんど自民党時代に戻ってしまった。野田首相とは、菅内閣で1年間付き合ったが、財務官僚が設定した枠を超えられなかった。【片山】

 以上、語り手:片山善博(慶応大教授)/聞き手:宇野重規(東京大学教授)「片山善博さんに聞く地域主権と官僚機構」(2011年10月25日付け朝日新聞)に拠る。
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【震災】原発>東電の手口:賠償を安上がりに済ませる法

2011年10月24日 | 震災・原発事故
 保田行雄・弁護士いわく、東電の賠償に対する態度は許せない。

(1)補償内容を加害者が決めている
 4月、文部科学省研究開発局原子力損害賠償対策室に原子力損害賠償紛争審査会が設置された。ここには、放射能の危険性を過小評価する米倉義晴・放射線医学総合研究所理事長らが名を連ねる。
 8月5日、「審査会」は賠償の中間指針報告書を出した。
 驚くべき文言が書かれていた。
 <本件事故に起因して実際に生じた被害の全てが、原子力損害として賠償の対象になるものではない。>
 <被害者の側においても、本件事故による損害を可能な限り回避し又は減少させる措置を執ることが期待されている。したがって、これが可能であったにもかかわらず、合理的な理由なく当該措置を怠った場合には、損害賠償が制限される場合があり得る点にも留意する必要がある。>

 書類の分厚さや手続きの煩雑さをマスメディアは批判しているが、枝葉末節のことだ。
 地元民をはじめとする原発事故の被害者は、自宅や農地を失い、友人・知人を失い、日々かろうじて生活を保ち、これからの生涯にわたる甚大な被害を受けた。そもそも、こうした被害者に対して、加害者(東京電力)が補償金の請求書類を送りつけ、「この書類に従って請求せよ」などと請求手順や項目を勝手に決めつけることは法律的にあり得ない。非常識だ。
 何を補償請求するかは、被害者が決めることだ。東電が決めることではない。

 「難民」となった被害者は、当面必要な生活資金を得るために、東電に対してこの書類を送りつけてもよい。
 しかし、出るのは見舞金程度の「仮払い」にすぎない。
 ところが、東電の書類には、「請求は1回限り」とか、「これ以降申し立てることはありません」といった文言が並べられている。

(2)被曝による被害の項目がない
 東電が作成した補償金の請求書類には、福島第一原発事故の最大の問題である「放射能によって被曝した被害」の項目がない。
 しかし、福島第一の事故における最大の加害行為は、金額に換算できないほど深刻な身体的被曝にある。
 その項目が入っていない請求書には、一片の意味もない。

 以上、広瀬隆「東電の傲慢さを集団訴訟で裁く時 ~原発破局を阻止せよ30~」(「週刊朝日」2011年10月28日号)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>東電は、被爆者がガンに罹っても補償しない ~100人の証言~
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【震災】原発>ICRP:100mSv以下の被曝でも癌が過剰発生

2011年10月23日 | 震災・原発事故
 国際放射線防護委員会(ICRP)のパブリケーション99は、低線量被ばくの健康への影響をまとめたもので、2004年10月に同委員会によって承認された。理論面(細胞学的アプローチ)及び動物実験からは、100mSv以下でも健康被害が出ることを裏付けた。統計面(疫学的アプローチ)からも、それを裏付けるデータがある。
 現在の科学的知見では、100mSv以下の健康被害は「不明」ではない。

(1)細胞学的アプローチ
 「現在のところの線量と、時間ー線量の関係についてのメカニズムと定量データの理解は、低線量においては直線的な線量反応関係を支持する」。
 つまり、100mSv以下でも比例的に健康被害が生じる。

(2)動物実験に基づくアプローチ
 「早期のイニシエーション事象は、細胞遺伝学的損傷の誘発に相当するように思われる。この考えでいくと、低線量域ではメカニズムの議論から直線的な反応が支持される」。
 つまり、100mSv以下でも比例的に健康被害が生じる。

(3)疫学的なアプローチ
 さまざまな要因によって数値が影響するために結論を出しにくいが、危険を避けるという観点からは、10mSv単位でも健康被害が出ているというデータを無視できない。
 (a)X線骨盤計測によって体内被ばくした胎児に関するデータ・・・・「15歳までに白血病及び固形がんで死亡する相対リスクは約1.4となることが知られている」。「事実を総合的に考えると、胎児被ばくは小児がんリスクを増加させ、リスク増加は10mGy(mGyは、mSvと読み替えら得る)オーダーの線量で起こり、このような状況下での過剰リスクは1Gyあたり約6%である」。
 (b)胸部X線撮影を繰り返し受けた女性に関するデータ・・・・「若い女性で1回平均10mGyオーダーの胸部X線撮影を繰り返して受けた結果、高い累積線量になったたために生じた乳がんリスク増加の例がある」。

 以上、日隅一雄「ICRPも、科学的に100mSv以下の被ばくでも癌が過剰発生すると認めている」(2011年10月23日 THE NEWS)に拠る。
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【震災】原発>首都圏に降り注いだストロンチウム

2011年10月22日 | 震災・原発事故
 毒性はセシウムの10倍とも100倍ともいわれるストロンチウム。
 これが、横浜市の3ヵ所で検出された。市によれば、ストロンチウム89(半減期50日)とストロンチウム90(半減期30年)の合計値は、
 (a)港北区のマンション屋上と近くの堆積物・・・・管理組合の了解が得られないため非公開
 (b)同区大倉山の道路側溝・・・・129Bq/kg
 (c)JR新横浜駅近くの噴水底部・・・・59Bq/kg
 なお、セシウム137も、(b)(c)の2地点から21,385Bq/kgと17,008Bq/kgが検出された。

 ストロンチウムの分析には、専門的知識に加えて測定に時間を要する。このため、国や東電の測定は不十分だ。自治体なども検査機器がないため、測定を後回しにしてきた。マンションの屋上や側溝には放射性物質が集まって濃縮されるので、高い数値が出やすい。これまで測定していないだけで、福島により近い場所で採取すれば、もっと高い数値が出る可能性がある。首都圏では、どこで検出されてもおかしくない。【小出裕章・京都大学原子炉実験所助教】

 4月21日、福島沖で採取したマダラから0.03Bq/kgのストロンチウムが検出された。
 食品のストロンチウム検査はほとんど行われていない。
 食品については文科省と調整していないので、何とも言えない。【横浜市健康福祉局担当者】
 ストロンチウムは、セシウムより植物に移行しやすい。セシウムは粘土質の土に吸着され、地表5cmほどに溜まるが、ストロンチウムはそれほど吸着されずに地底にも浸透する。つまり、土壌の深浅を問わず、いずれからも植物に吸収されやすい。野菜などに注意が必要だ。【白石久二郎・元放射線医学総合研究所内部被ばく評価室長】

 ストロンチウムとセシウムの比率は、福島とほとんど変わらない。原発から離れても、ほぼ同じ割合だ。関東全域の土壌、特に田畑の汚染状況と併せて住民の被曝実態も調べる必要がある。食品にも、セシウムの数百分の1の割合でストロンチウムが含まれていると想定したほうがいい。【野口邦和・日本大学仙人講師】
 セシウムが体内に入っているとすれば、ストロンチウムも一定の割合で入っている可能性がある。しかし、ストロンチウムのβ線による被曝は、γ線しか測れない現在の測定器では調べようがない。ただし、子どもの抜け落ちた乳歯を調べる方法はある。乳歯には、骨同様、ストロンチウムが溜まりやすい。今回の検出場所の子どもの乳歯を調べたら、汚染実態がある程度わかるかもしれない。【崎山比早子・元放射線医学総合研究所主任研究官】

 以上、記事「首都圏に降り注いだストロンチウム」(「サンデー毎日」2011年10月30日号)に拠る。

 【参考】「【震災】原発>プルトニウムとストロンチウムの飛散範囲 ~100km圏超~
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【震災】原発>東電のものは東電に返せ ~関東の汚染灰~

2011年10月21日 | 震災・原発事故
 10月6日、根津小学校(文京区)の校内で落ち葉を集めて作った堆肥から、1,488Bq(国の暫定基準の3倍超)の放射性セシウムが検出された。今、堆肥の入った袋は、ブルーシートで覆われて学校の裏門近くに置かれている。
 文京区内の敷地内で堆肥を作っていた区立小学校16校、中学校4校、幼稚園5園も、同様の措置をとった。

 堆肥をごみ処理場で焼却処理することは可能だ。焼却灰は、8,000Bq/kg以下なら通常の埋め立て処分が可能、というわけだ。【環境省廃棄物対策課】
 ところが、一般廃棄物焼却施設は、廃棄物処理法により、放射能に汚染されたものは扱えない。【東京23区清掃一部事務組合】
 堆肥の処理は、法の谷狭間に落ち込んだ問題なのだ。
 環境省は、放射性物質汚染対策特別措置法の省令(12年1月施行)に一般廃棄物焼却施設が扱う放射性廃棄物の基準を定めるべく作業を急いでいる。ただ、当分は、放射能に汚染された堆肥が学校に置かれた状態が続く。

 今夏、関東各地のごみ焼却場の焼却灰から高濃度の放射性セシウムが検出された。その原因が、落ち葉や枯れ草の放射能汚染だったかもしれない。
 実際、千葉県松戸市や流山市が、落ち葉や草などを「燃やせるごみ」から「資源ごみ」に変えて焼却をやめると、焼却灰の放射能濃度は低くなった。柏市でも、草や剪定した枝を分別して焼かずに保管するようにしたところ、焼却灰の放射能濃度が低下した。
 一般廃棄物の焼却灰から国の基準(8,000Bq/kg)超の放射性セシウムを検出した焼却場は、東北・関東7都県に42ヵ所ある。最多は福島県で、16ヵ所。ついで茨城県の10ヵ所、千葉県の8ヵ所、栃木県の3ヵ所だ。そして、基準値を超えた焼却場は、「ホットスポット」に点在している。

 「南部クリーンセンター(柏市第二清掃工場)」では、行き場を失った焼却灰がドラム缶に詰められて保管されている。10月3日、これ以上のごみ処理は難しい、と休止を決定した。
 栃木県北部の大田原市および那須町は、10月20日から、燃えるごみの収集日を週2日から1日に減らした。両市町のごみを処分する「広域クリーンセンター大田原」から出た焼却灰は、最終処分場の「黒羽グリーンオアシス」に埋め立てているが、7月に13,580Bq/kgの放射性セシウムを検出のだ。処分場周辺の自治会が搬入に反対し、8月19日から処理が止まっているのだ。
 9月下旬、環境省は、高濃度の放射性物質を含んだ焼却灰を管理する埋め立て最終処分の前段階、「中間貯蔵施設」を福島など8都県に整備する方針を示した。
 中間貯蔵施設は絵に描いた餅。周辺住民の反対で、そんなものができるわけがない。国が最初にしっかりした指針を示さなかったため、住民が疑心暗鬼になったのが原因だ。【ある焼却場の関係者】

 以上、山根祐作/野村昌二/岩田智博(編集部)「汚染灰に埋まってしまう」(「AERA」2011年10月24日号)に拠る。

    *

 処理施設の建設費用は、当然、東電がもつべきだ。東電は、倒産するまで、全資産を事故処理に使わなければならない。
 放射能に汚染されたがれきや土壌などは、福島第一原発の敷地内に置くしかない。放射性物質は、そもそも福島第一の炉心の中にあるべきものだった。その所有者は東電だ。
 東電のものは東電に返せ。
 東電の社長室に置け。
 福島第一原発の敷地内で足りなければ、福島第二原発の敷地内に処理施設を建設するのだ。
 敷地内で間に合わないのであれば、警戒区域のなかでも特に高濃度の汚染地域で、今後人が住めないような場所に作るしかない。
 全国に処理施設を分散させ、放射能をばらまくより、きちんと遮蔽され、それなりにしっかりと放射能の「お守り」ができる管理施設を1ヵ所に造る方がいい。 
 処理施設は、「中間貯蔵施設」ではなく、恒久的な「核の墓場」だ。最終的に受け入れる場所がないものを「貯蔵」できない。

 福島第一原発の封じ込めには、コンクリートで覆う「石棺」を造るしかない。溶けた炉心が地下にめり込んでいる可能性があるから、チェルノブイリより状況が悪く、地下にも堅牢なコンクリート製の構造物を建設しなければならない。膨大な量のコンクリートが必要だが、その原材料に汚染焼却灰や汚泥を使うのがいい。
 汚染がれきが何処にどれだけあるか、の徹底的な調査が必要だ。 
 放射性物質の管理に「安全」はない。「どこまで我慢できるか」だけが決め手だ。風評被害を防ぐには、しっかりとした調査を行い、結果を国民に公開するしかない。

 以上、語り手:小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)/聞き手:甲斐さやか(編集部)「東電のものは東電に返せ セメント化して石棺の材料に」(「AERA」2011年10月24日号)に拠る。
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【震災】原発報道>東電を批判するフランス ~海外の場合~

2011年10月20日 | 震災・原発事故
 朝日の新聞週間特集には「『我が国でも起きうるのか』 海外も見つめた」と題する記事もあり、6ヶ国の報道ぶりを伝える。以下、抄。
 なお、国名の右横の引用は、記事の見出しだ。

●米国 <米政府ルートで特報 米メディア>
 <「東京電力は、問題ないと言っています」。大震災発生からまもない米紙ロサンゼルス・タイムズ本社。外報エディターのブルース・ウォラス氏は、原子炉や放射能漏れの状況についてスタッフから報告を受け、逆に懐疑的になった。
 2008年まで東京支局長を務めた経験から、「東電は必要な情報開示を控えてきた歴史がある」と痛感していたからだ。
 (中略)
 米ニューヨーク・タイムズ紙はマーティン・ファクラー東京支局長が発生後間もなく現地入りし、世界に発信を続けた。さらに、東電や当局の見通しの甘さや後手に回る対応に鋭く斬り込む記事を繰り出した。
 米政府に取材した方が情報が出てくる皮肉な状況もあり、同紙の米国発の記事もしばしば日本で話題に。4月5日の電子版では、海水注水による危険性を早くから指摘した米原子力規制委員会(NRC)の報告書を特報した。>

●仏国 <東電に批判集中>
 <電力の8割近くを原子力に頼る原発大国フランス。メディアは地震の被害よりも、原発事故とその後始末に注目した。発生直後は東京電力に批判が集中し、左派系紙リベラシオン(3月15日付)は過去のトラブルにも触れて「怠慢と不透明の10年」とした。
 日本メディアの報道ぶりについては、放射能汚染の不安をあおる情報を抑制しているとする見方がある一方で、大広告主の東電に遠慮して責任追及が甘いとの指摘もあった。>

●独国 <恐怖感を前面に>
 <ドイツのメディアは原発事故に過敏に反応し、「死の恐怖にある東京」「東京で放射性の雲にパニック」などセンセーショナルな見出しが躍った。世論は一気に反原発に傾斜し、政府は2022年までの原発全廃を決めた。
 背景には1970年代以来の反原発運動の積み重ねがある。チェルノブイリ事故の記憶も生々しい。日本人の花粉症マスクを放射能対策であるかのようにとりあげた写真など「恐怖」に焦点を当てた報道は、在日ドイツ人の大量帰国など過剰とも映る反応を招いた。
 半面、パニック回避のために慎重な表現を続ける日本の報道は危機感に欠けると映ったようだ。「日本のメディアはわずかしか権力者をチェックしていない」と報じた新聞もある。>

●露国 <教訓生きず失望>
 <(チェルノブイリの)「教訓」に関しては「ロシアの専門家は原発事故対応に呼ばれていない」(3月17日、ロシアの声)などと、日本の対応に懐疑的な声が目立った。ノーボスチ通信も同19日、「日本側が事態の大きさを隠さず広く援助を求めていたら、このような形の破局は避けられた」との専門家の見方を伝えた。
 「官僚たちが原子炉の沈静化を邪魔している」。同21日付のイズベスチヤ紙はこんな見出しで、チェルノブイリ事故の処理に携わったロシアの専門家のインタビューを載せた。「日本の複雑で硬直的な官僚的運営モデルが、事故対応を遅らせた」との批判だ。>

●中国 <放射能の行方に関心 収束見えず不満>
 <1週間ほどで記事は放射能汚染など原発事故の状況に傾斜し、4月に入ると「日本の原発危機に終点が見えない」(国際先駆導報)と日本へのいら立ちがあらわに。4月4日、日本が低濃度の汚染水を海に放出すると、事前の連絡が不十分だと猛反発し、「日本は独断専行すべきでない」(人民日報)などの批判が相次いだ。>

●韓国 <原発支持変えず>
 <福島第一原発の事故では「消える原発ルネサンス」(朝鮮日報)など、韓国の原発の安全性や原子力政策を検証する記事も掲載されたが、次第に大気中や海洋に放出された放射性物質の影響や、日本製品の輸入規制などに比重が移った。
 総発電量の3割超を21基の原発に頼り、輸出にも意欲的な韓国政府は事故後も原発推進を変えていない。主要メディアも安全性強化を掲げつつ、政府の方針を基本的に支持している。>

 以上、記事「『我が国でも起きうるのか』 海外も見つめた ~前例なき災害伝える 震災と原発事故 その時朝日新聞は~」(2011年10月15日付け朝日新聞)に拠る。
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【震災】原発報道>「大本営発表」を超えるには ~朝日新聞の場合~

2011年10月19日 | 震災・原発事故
 10月15日、朝日新聞は、「前例なき災害伝える ~震災と原発事故 その時朝日新聞は~」と題する新聞週間特集を組んだ。8ページにわたるが、広告が入っているから正味5ページ程度だ。「震災と原発事故」とあるが、3分の2は原発事故に関するもの、という印象だ。
 特集は、7つのテーマに細分される。(a)炉心溶融どう認定、(b)「作戦報道」を考える、(c)健康への影響は、(d)放射能と食品、(e)被災者の声を、(f)海外の視点、(g)被災地3総局長語る・・・・だ。

 いわゆる「大本営発表」については、(b)で率直に反省する。この反省は、(a)にも(c)にも(d)にも通底していると思う。
 しかし、上杉隆ら「記者クラブ」批判者は、反省は弁解と紙一重だ、と追い打ちをかけるかもしれない。
 ここでは、朝日紙の「大本営発表」の一例を引くにとどめておく。なお、引用は「< >」で示す。 

●「大本営発表」 【(b)「『作戦報道』に追われてしまったのでは」】
 <爆発や火災で建屋の骨組みを無残にさらし、白煙を上げている原発という「暴れ馬」に、手綱をつけられるのか――。原発をいかに冷やすかが、最大の課題だった。しかし、放水作業など動きのある「作戦」の報道に追われてしまい、検証や独自の視点に基づく取材が不十分だったのではないか。
 「日々の出来事を追うのに精いっぱいで、記者会見を離れ、独自の視点で切り込む余裕がない」。科学医療部の取材班キャップの佐々木英輔は感じていた。「本質を伝え切れていないのではないか、と思った」
 次々に発生する深刻な事態、それに対応した作戦を、期待交じりに針小棒大に伝えた面がなかったか。戦時中に敗退を隠した「大本営発表」の報道のように。>

 事実そのものを確認できない場合、推測するしかない。推測は記事にできない。だから、提示された事実だけに拠るしかない。ために、東電や政府の発表を垂れ流す結果になった。
 しかし、それでも記事の書きようはあったのだ。

(1)科学的蓋然性の高さで 【(a)「炉心溶融 不十分な情報で、どこまで書けるのか」】
 <科学医療部デスクの服部尚は、10年以上の原子力取材経験から「臆測は必ず覆った経験を思い出した。少しでも、何かのデータが必要だと考えた」と振り返る。核燃料の性質や事故のシナリオについての知識をもとに、溶融が起こっていると推測できても断定はできない。
 現場からの断片的な情報をまとめて原稿にするアンカー役の記者の行方史郎も「推測や、論理に飛躍のあるストーリーは採用しない」と自分に言い聞かせた。
 一方、記事の扱いと見出しを決める編集センター長代理の梶谷卓司は、原稿に正直、まどろっこしさを感じていた。「自信がないときに『可能性』と弱めて書くのは分かるが、科学的に蓋然性が高いのはこうだ、と書いてほしい。原子炉を開けるまで、確定的なことが言えないのは当たり前だ」>

(2)逆転の発想 【同上】
 <国は事故を過小評価しようとしていた。18日に発表した国際尺度の暫定評価は「レベル5」。放射能の放出が限定的だった米スリーマイル島原発事故と同じ規模、との見立てだった。しかし、13日朝刊の解説で「スリーマイル以上」と指摘後、事故の規模は拡大していた。
 国の評価に疑問はあっても、覆すデータは東電と保安院が独占している。25日の朝刊1面の「レベル6相当」の記事は、逆転の発想から生まれた。
 23日に原子力安全委員会が初めて公表した被曝予測。各地でモニタリングした放射線量データから、予測システムSPEEDIで計算するために、原発からの1時間あたりの放射能放出率を推定した、としていた。そこで用いられた値は、その時点で最も確からしい数字。複数示された放出率のうち最低値を使って、事故直後からの放出量を計算すれば、「少なくとも、この程度以上の事故だ」と独自に報道できる。その結果の「レベル6相当」の報道だった。国は4月12日に最悪のレベル7と発表した。>

(3)独自の試算 【同上】
 <一方、西部報道センター(福岡市)から東京に応援に来ていた安田朋起は、スリーマイル島事故との比較を踏まえ、複数の専門家の見立てを総合して、3月29日に「燃料溶融、地震翌日から?」という記事を書いた。5月に東電が発表する事故解析を先取りする内容だった。
 汚染水漏出が続く4月9日、なお9割以上の放射能が炉内に残っている、との独自の試算を記事にした。米原子力規制委員会の標準的な計算方法を使ったもので、後日、東電が発表した結果と大枠で一致していた。「発表はなくても、調査報道をもっと充実させるべきだった」>

(4)積算線量を集計 【(c)「『ただちに健康に影響ない』」どう判断」】
 <こうした記事【注】に、「短期の健康影響と長期慢性的な健康影響の区別をしないまま『心配ない』と書いている。問題意識に欠けている」と指摘する声も社内から上がった。毎時330マイクロシーベルトなら、その場に数時間いるだけで、一般市民の年間線量限度とされる1ミリシーベルトを超えてしまう。
 (中略)
 連日、放射線量の数値を見ていた科学医療部の岡崎明子が「きちんとしたことを言うには、積算線量を集計するしかない」と声をかけた。デスクの桑山朗人も「『数字が公表されないから書けない』では、福島の人たちに事実を伝えられない」と考えていた。放射線量取材を担当した杉本崇が、18日から発表値を表計算ソフトに入力していた作業が役立った。
 24日朝刊で、浪江町の屋内退避地域に入っていない場所でも「8日間の積算値は約19ミリシーベルトに上る。国の防災指針では『屋内退避』レベル(10~50ミリシーベルト)で、あと2週間で『避難』のレベルに達してしまう値」と報じ、長期移住を視野に入れた対策が必要なことを指摘した。
 文部科学省が積算線量を公表し始めたのは、25日からだった。
 26日朝刊で、医療を担当する編集委員の浅井文和が解説記事で住民の長期的ながんのリスクを指摘、「どの程度の健康上の影響が懸念されるから避難が必要か、政府はデータを示して住民に説明すべきだ」と書いた。
 4月8日朝刊では、30キロ圏外の飯舘村の土壌汚染はチェルノブイリ原発事故の強制移住レベルで、1年後の積算放射線量は70~220ミリシーベルトに上る可能性があると試算した京都大原子炉実験所などの研究を独自に報じた。汚染はまだら模様に広がっていた。
 政府は4月11日、計画的避難区域を設けて、避難地域を20キロ圏外へも拡大した。>

 【注】3月16日夕刊「放射線、周辺で高数値」「福島市など 健康影響ないレベル」との見出しの記事など。

 以上、記事「前例なき災害伝える 震災と原発事故 その時朝日新聞は~」(2011年10月15日付け朝日新聞)に拠る。
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【震災】原発報道>メディアの反省 ~マスコミ倫理懇談会~

2011年10月18日 | 震災・原発事故
(1)概要
 (a)マスコミ倫理懇談会第55回全国大会・・・・2011年9月29~30日、於名古屋市。
 (b)メーンテーマ・・・・震災・原発 検証メディアの責務。
 (c)分科会・・・・「福島原発事故 取材の壁・報道の揺れ」など7つ。現場の記者らが体験と課題を報告。

(2)「取材の壁・報道の揺れ」分科会
 発生直後の報道機関の対応に疑問が突きつけられた。
 メーカーの技術者やOBに意見を求めず、過酷事故の分析や予測が得意といえない推進派の学者を起用した。専門知識の欠如やパニックを恐れた踏み込み不足の報道が目についた。【田中三彦・サイエンスライター】
 東電が事故原因者でありデータ保有者であり発表者だったことから、初期には一次情報の取得が質量ともに難しく、結果的に不正確、不十分な報道があった。矛盾を含んだ膨大な情報から、これが真実だろうと伝えてきた。【柴田文隆・読売新聞科学部長】
 戦後の科学界では「核エネルギーの善用」という主張が支配的で、メディアも推進側に立った。60年代の公害問題を機に、技術リスクとして放射能を警戒する声も出てきたが、世の中の流れをつかまえられず、原子力への批判が出てきたのは80年代以降だった。【尾関章・朝日新聞編集委員】

(3)「原発災害をいかに伝えるか」分科会
 情報が不足し、その位置づけも難しいなかで住民の不安にどう応えたか、が話し合われた。
 生涯で100ミリシーベルト以下の被曝をした場合について、大丈夫という専門家の見解と、不安視する住民の心情に溝ができた点が指摘された。
 「安全」とも「危険」とも決めなかった。【藤間寿朗・テレビユー福島報道部長】
 政府発表はどんな根拠に基づくのか、という言及が必要だ。【会場】
 今回の事故では、福島第一原発から約5kmにある災害時の指揮所で、取材拠点にもなるオフサイトセンターが停電で機能せず、自治体向け避難情報が混乱した。メディアも情報把握に手間取り、住民には「情報隠し」の疑念も広がった。
 同様の事態が起こりうる。【原発立地地域の地元紙】
 政府や電力会社が把握したデータを速やかに提供し共有できるように、自治体とメディアが国に働きかけていくという認識で一致した。

(4)新聞10紙の報道分析
 藤森研・専修大教授は、新聞10紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京、河北新報、岩手日報、福島民報、福島民友)の震災から3カ月間の報道について、時間的な変化や各社の傾向を分析した。うち、原発報道については・・・・
 (a)報道内容について、「地元紙は津波被災を手厚く報じ、全国紙は原発と放射能ばかりだった」という批判がある。しかし各紙とも地震・津波と原発事故をほぼ同程度に扱い、バランスのとれた報道になっていた。
 (b)原発事故の報道では、国民にパニックを起こさせないようにという配慮が、読者の意識とのずれを生んだ可能性はある。また政府の指示に従い、主体的に原発事故の現場に入域する判断を怠った点は批判されても仕方がない。福島原発の事故原因と初期対応の全容を明らかにすることは日本のメディアの責任だ。また今後の議論の前提として、1950年代からの原子力報道の自己検証も行うべきだ。

 以上、五十嵐大介/川本裕司(編集委員)/澄川卓也/羽賀和紀「未曽有の大災害、どう報道 マスコミ倫理懇談会「震災・原発 検証メディアの責務」」(2011年10月14日付け朝日新聞)に拠る。
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【震災】原発>ヨウ素剤配布をサボったのは誰か? ~国と福島県のヘンな対応~

2011年10月17日 | 震災・原発事故
 3月13日10時46分、原子力安全委員会事務局は原子力対策本部事務局へ1枚のファクスを送信した。
 放射性ヨウ素の被曝による甲状腺癌を防ぐため、一定線量の被曝の可能性のある者に非放射性の安定ヨウ素剤【注1】を服用させたほうがよい。「なお、ヨウ素剤の服用について小児に対しては防災マニュアルを参見の上、ヨードシロップを服用させること。また、40歳以上のヒトについては本人が希望する場合に限って安定ヨウ素剤を服用させること」【注2】【注3】

 だが、対策本部は何もしなかった。
 福島第一原発周辺などの住民のごく一部はヨウ素剤を服用したが、それは自治体、住民の自主的行動だった。
 仮に、対策本部が即応して福島県に指示し、かつ、住民が服用していれば、1号機の爆発(3月12日15時36分)には間に合わずとも、3号機の爆発(14日11時1分)、4号機の爆発(15日6時頃)、2号機の何らかの破損(15日6時10分頃)による大量の放射性物質の飛散には間に合ったはずだ【注4】。

 都筑秀明・安全委事務局管理環境課長は、送信した証拠としてファクスを提示する。
 他方、松岡建志・経産省原子力安全・保安院原子力防災課長/原子力対策本部事務局は、いくら調べても受け取ったと確認できない、という。
 そして、現在に至るまで2課長の対立は解消していない。
 8月26日、今後の原子力防災対策を再検討する安全委のワーキング・グループ第3回で、被爆者医療専門家がこの問題を追求したが、対策本部の出席者は何も答えられなかった。真相は闇の中だ。

 実は、対策本部も3月16日10時35分に、福島県知事に「避難地域(半径20km圏内)からの残留者の避難時には安定ヨウ素剤を投与」と指示している。服用者を狭く絞っているが。
 しかし、馬場義文・福島県地域医療課長によれば、この指示を国の原子力災害現地対策(県庁内に設置)から県が受けたのは18日だった。その時はすでに20km圏内からの避難は終わっていた。結局、安定ヨウ素剤は使われなかった。
 この説明をする馬場課長は、言葉が詰まったり、「それは言えない」と口を濁し、不透明さが拭えない。
 それでも県は、事故原発から半径50km圏内の26市町村に限るものの、ヨウ素剤の配布だけはした。そのうち自治体の自主的判断で実際に住民がヨウ素剤を飲んだのは、三春町と、原発事故以前に配布済みだった原発周辺自治体からの避難者の一部にすぎない。

 三春町で、自分の測定器で大気中の放射線量を測定していた元高校教諭によれば、3月15日は8μSv/時だった。高濃度の放射性雲が東風によって町の上空を通り、相当量の放射性物質が雨とともに降下した、と推定される。
 三春町当局は、住民の健康を守るべく、機敏に対処したのだ。
 ところが、3月15日、工藤浩之・三春町保健福祉課長と福島県職員X(特に職氏名を伏す)との間で次のような電話のやりとりがあった。
 Xは、三春町が安定ヨウ素剤を住民に配布していることを工藤課長の口から確認し、詰問した。
 「何をやっているんだ。安定ヨウ素剤というのは医師が立ち会って使う薬なんだぞ。そして、(国の現地対策)本部からの指示があって初めて飲ませられる。誰の指示で(住民に)配っているのか」「回収してくれ」
 マニュアルには医療関係者が立ち会えばよい、と書いてある。工藤課長は答えた。保健師・看護師が立ち会っているし、もう飲ませているので回収できない・・・・。

 【注1】安定ヨウ素剤については、防災基本計画(災害対策基本法に基づき内閣府中央防災会議が作成する)の原子力災害対策編に定めがある。国、日本赤十字社、地方公共団体、原子力事業者が整備に努めるべきものの一つ。原子力災害対策本部長は、緊急事態の状況に応じて「必要な指示等を地方公共団体に対して行う」。地方公共団体は、一定の指標を超える放射性ヨウ素の放出やその恐れがあれば、「直ちに」その服用を指示しなければならない。
 【注2】2002年、原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会は、「原子力災害時における安定剤ヨウ素剤予防服用の考え方について」をまとめた。最終決定に当たり、一般からも意見を募った。崎山比早子・医師/元放射線医学総合研究所主任研究官は、チェルノブイリ級の事故は日本で起きないとする「原子力村」の想定を「何の根拠もない」と一蹴し、ヨウ素剤服用を意図的に過小評価し、使用を抑制しようとしている、と厳しく批判している。<例>甲状腺癌発生リスクとヨウ素剤副作用リスクを同列に並べている。ヨウ素剤投入の目安となる被曝予測線量を大人と小児を同じにしている。放射性ヨウ素を取りこむと同時か事前に服用すべきところを、家庭・幼稚園・学校・避難所などに前もってヨウ素剤を常備することを止めている(諸国では逆)。
 【注3】ヨウ素剤服用に消極的な原子力安全委員会(【注2】参照)ですら、ヨウ素剤服用を助言したのだ。
 【注4】安全委の試算によれば、3月23日現在、福島県内の少なくとも約10市町村では、24時間屋外にいた場合、甲状腺被曝量は100mSvを超えた。

 以上、長谷川煕(ライター)「消えた1枚のファクス」(「AERA」2011年10月17日号)に拠る。
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