語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~

2015年04月30日 | ●佐藤優
 (1)4月16日、プーチン大統領が、北方領土交渉が停滞しているのは日本の責任である、という見解を表明した。ロシアが対日政策を転換しようとしている。
 <ロシアのプーチン大統領は16日、北方領土問題について「ロシアは日本側と対話をする用意があるが、日本側の動きで、事実上頓挫している」と述べた。ウクライナ問題を巡る日本の対ロ制裁などで、交渉を続ける環境が損なわれたとの考えとみられる。
 昨年11月にプーチン氏が安倍晋三首相との首脳会談の際に約束した2015年中の訪日も、実現が危ぶまれる状況だ。
 プーチン氏はこの日、国民の質問に答えるテレビ番組に出演後、記者団からロシアがウクライナのクリミア半島を併合したことが北方領土問題に影響するかを問われた。
 プーチン氏は北方領土について「そこに住む人々が日本への帰属に(住民投票で)賛成票を投じることはないだろう」と強調。一方で、北方領土問題が第2次大戦の結果生じた点で、クリミア半島とは「まったく状況が異なる」と説明。住民の意思にかかわらず、日本と交渉を進める用意があるとの考えを示した。
 その上で、交渉が進まないのは日本側の責任だという考えを強調した。>【注1】

 (2)(1)で注目されるのは、北方四島に居住するロシア人の民意が、日本に帰属することを望んでいない、と明言したことだ。
 プーチンは、ロシア人の権益の擁護を常に強調している。「そこに住む人々が日本への帰属に(住民投票で)賛成票を投じることはないだろう」とプーチンが述べている以上、ロシアが日本に施政権を返還することはない。
 日ソ共同宣言で、平和条約締結後ロシアは日本に歯舞群島色丹島の2島を引き渡す・・・・と約束している。今回のプーチン発言は、「2島の引き渡しについても、米軍施政権下の沖縄のように、日本の潜在主権を確認するにとどめる」というシグナルだ。

 (3)日本政府は、今回のプーチン発言に毅然と反論しなければならない。
 <岸田文雄外相は17日午前の記者会見で、ロシアのプーチン大統領が北方領土問題の交渉が停滞した理由は「日本側にある」と発言したことに反論した。「交渉を日本側が止めている事実は全くない。2月には日露次官級協議を行い、日本側から積極的に平和条約締結問題を提起し、議論もした」と述べた。
 岸田氏はまた、平成25年4月の日露首脳会談後に発表された共同声明に言及し「平和条約問題の双方に受け入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化させる点で合意をしている。ロシア側も合意に従って真剣に交渉にのぞむことを期待する」と語った。>【注2】

 (4)(3)の発言から判断するかぎり、岸田外相は事態の深刻さを認識していない。
 「平和条約問題の双方に受け入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化させる点で合意をしている。」という、日露両国の外務官僚が作成した文書の内容を繰り返しても、北方領土は日本へ近づいてこない。
 岸田外相がラブロフ外相に電話して、「プーチン発言の真意は何か」と問い合わせる必要がある。
 問い合わせないのは、外相として怠慢だ。

 【注1】記事「プーチン氏、日本の責任強調 北方領土交渉の停滞」(朝日新聞デジタル 2015年4月17日)
 【注2】記事「岸田外相「領土交渉、日本側が止めている事実ない」 プーチン大統領に反論」(産経ニュース 2015年4月17日)

□佐藤優「プーチンからの「シグナル」 外相の認識を問う ~佐藤優の人間観察 第111~」(「週刊現代」2015年5月9・16日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

コメント (3)

【詩歌】モノを見る目 ~写実に漂う幻想性~

2015年04月30日 | 詩歌
 第54回俳人協会賞は、若井新一の第4句集『雲形』(角川学芸出版)に決定した。
 俳人協会賞と同時に発表された第38回俳人協会新人賞は、井出野浩貴『騾馬つれて』(ふらんす堂)、鶴岡加苗『青鳥』(角川学芸出版)、望月周『白月』(文学の森)が受賞、いずれも第1句集だ。
 望月周は1965年生まれ。

   身じろぎもせぬ寒鯉に傷新た

 寒鯉の傷がなまなましい。モノを見る目が確かな堅実な句である。

   流灯の白蛾を連れてゆきにけり

 写実ながら、幻想性を漂わせている。

□中岡毅雄「俳句はいま」(「日本海新聞」 2015年4月28日)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

  縮景園(広島市)の鯉
   
コメント

【職】都労委、フランチャイズ加盟店主は「労働者」だ ~セブン、ファミマ連敗~

2015年04月29日 | 社会
 (1)4月16日、東京都労働委員会は、ファミリーマート(コンビニエンスストア第3位)のフランチャイズ(FC)加盟店主は、ファミマ本部の事業組織に組み込まれた労働者であり、
    「労働組合法上の労働者」
であると判断し、加盟店主との団体交渉に応じるよう命令書を出した。
 2014年3月、最大手のセブン-イレブン・ジャパンの加盟店主を労働者と判断したのに続く2例目。
 わが国を代表する二大チェーンのFC手法が糾弾され、連敗した。

 (2)FC加盟店主は「事業者」か「労働者」かという問題は、ファミリーマート加盟店ユニオン(岡山市)が2012年、都労委に不当労働行為で救済を申し立てていた。
   ・経営の自由がない。
   ・再契約時、本部の一方的判断で契約更新ができない。
など不当な扱いを受けてきたからだ。

 (3)命令書を見た瞬間、酒井孝典・執行委員長は、ガッツポーズをとり、語った。
 「全国の加盟店主の実態からみて当然だ。セブン-イレブンの岡山県労委につぐ2回目の判断に大きな意義がある」
 宮崎邦雄・弁護士は、指摘する。
 「ユニオンが法的に認知され、本部と対等な交渉ができるところに重要な意義がある」

 (4)酒井委員長は、会見後、ファミマ本社(都・池袋)を訪問し、幹部社員に会い、団体交渉申入書を手渡した。ファミマ本部は、「中央労働委員会に再審査の申し立てを行う予定」と説明した、という。

 (5)セブン、ファミマの加盟店主が相次いで訴えた背景には、フランチャイズの仕組みが経営の自由などなく、反抗すれば契約解除で使い捨てられる、という悲惨な実態がある。
 経営苦から夜逃げ、離婚、自己破産、自殺に追い込まれた店主も数え切れない。
 このたびの都労委の裁定は、労働実態を評価している。現在、中労委で審議中のセブン-イレブン事件の判断に大きな影響を与えそうだ。

□渡辺仁(ジャーナリスト)「セブン、ファミマ連敗の背景 都労委がフランチャイズ加盟店主は「労働者」と判断」(「週刊金曜日」2015年4月24日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【経済】規制法が必要な業界 ~フランチャイズ商法の光と影~
【セブン-イレブン】詐欺まがい契約の実態の実例
【セブン-イレブン】詐欺まがい契約の実態 ~鈴木帝国の落日~
【経済】ファミリーマート本部のピンハネ ~裏リベート隠蔽の証拠~

コメント

【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~

2015年04月28日 | 詩歌
 鹿は 森のはずれの
 夕日の中に じっと立っていた
 彼は知っていた
 小さい額が狙われているのを
 けれども 彼に
 どうすることが出来ただろう
 彼は すんなり立って
 村の方を見ていた
 生きる時間が黄金のように光る
 彼の棲家である
 大きい森の夜を背景にして

 *

 <この作品はわずか11行の短さなので、作者の力量が全的に打ちこまれているとはいえない。どちらかといえば見過ごされやすい小品である。
 それにもかかわらずこの作品には、村野四郎氏の詩的思考や表現の特色がはっきりとあらわれている。いま生と死が入れかわろうとする一瞬のあわいに、眼前の死の谷へ射ちおとされようとする瞬間に、夕陽をうけてきらめくあざやかな時間! なんのための時間のきらめきなのか。空しさそのものの価値のようなものだ。この一篇は私どもの生にひそむ一回的な最終の歎息を、自分の呼吸で吸いあげるかのように組立てられている。>【伊藤信吉「解説」(『村野四郎詩集』(思潮社、1987))】

□村野四郎「鹿」(『亡羊記』、1959)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込~

   
コメント

【米国】が狙い撃ちする日本の自動車部品メーカー ~カルテル摘発続出~

2015年04月28日 | 社会
 (1)自動車部品カルテルの米国での摘発状況・・・・
 累計31社、合計24億3,442万ドル(2,900億円)、46名、罰金各万ドル。
 31社は米司法当局が摘発した日本企業の数、その結果、逮捕・起訴された社員の数が46名だ。
 これらの数値は経産省が作成した一覧表に記載されているものだ。2011年9月から2014年11月までの、わずか3年間余の出来事だ。

 (2)カルテル摘発は自動車関連のみならず、日本企業にとって、その衝撃は図りしれない。
 古河電工、デンソー、パナソニック、三菱電機、ブリジストン・・・・摘発された46人の多くが禁固刑に処せられている。最短で1年と1日、長い刑で2年間の禁固が科せられる。
 日本のビジネスマンが数珠つなぎで米国の刑務所にぶち込まれているかのようだ。日本の自動車部品メーカーの狙い撃ちと言うほかはない。

 (3)カルテルとは、同業者が談合により価格などを決めてしまうことを指す。世界中、独占禁止法に基づいて禁止している半面、中には政治的な摘発も少なくない。
 わけても中国では、日本のビジネスマンが逮捕され、帰国できなくなるケースがしばしば報道されていた。
 それは中国に限った話ではなくて、米国にもある。しかし、3年で31社、46人の摘発は余りにもひどい。さすがに自民党の一部議員もそれを問題視し始めた。【経産省の関係者】

 (4)自動車分野における日米の軋轢は今に始まったことではないが、最近でいえば、タカタ製のエアバッグの事故がやり玉に挙げられた。(1)の一覧表にもタカタの社名がある。
 「タカタ 課徴金7,130万ドル(86億円)」。決定日:2013年10月9日)。
 米司法当局は、1人の米国人を含む5人のタカタ社員を検挙。2013年11月までに、うち4人に禁固刑が科せられた。短くて4か月、長くて19か月も獄につながれたのだ。
 タカタ問題の裏には、米フォード・モーターが議会で取り上げるよう、共和党員に働きかけたロビー活動もあった。
 特にタカタのエアバッグ問題で打撃を受けるのはホンダ。そこに付け入りたい米国メーカ-の思惑がちらつく。
 だが、実は、タカタの事故は日本で起きていない。米国でも限れた地域の事故だ。カルテル摘発を含め、これは実質国有化もされた米自動車メーカーと日本メーカーとの政治的な闘いでもある。

 (5)米司法当局に狙われる中でも、自動車部品メーカーが多いのは、米国がTPP交渉を有利に運ぼうとしているせいか。日米の最終交渉で、日本への輸出を増やしたい米国が、日本の安全基準を緩めるように要求し、揉めている。

□森功「カルテル摘発続出--米国で狙い撃ちされる日本の自動車部品メーカー ~ジャーナリストの目 第249回~」(「週刊現代」2015年5月2日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン


 【参考】
【TPP】の最大の抵抗勢力 ~米国の議会と社会~
【TPP】というゾンビに食い荒らされる日本
【TPP】というドラキュラの死とTPPのゾンビ化
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
コメント

【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~

2015年04月27日 | 詩歌
         ――へんな運命が私を見つめている  リルケ

 顎を むざんに引っかけられ
 逆さに吊りさげられた
 うすい膜の中の
 くったりした死
 これは いかなるもののなれの果だ

 見なれない手が寄ってきて
 切りさいなみ 削りとり
 だんだん稀薄になっていく この実在
 しまいには うすい膜も切りさられ
 惨劇は終っている

 なんにも残らない廂から
 まだ ぶら下っているのは
 大きく曲った鉄の鉤(かぎ)だけだ

 *

 <この詩には「へんな運命が私を見つめている」(リルケ)というサブタイトル風な言葉が添えてあり、それが「さんたんたる鮟鱇」という標題によくマッチして、それだけで一篇の主題をうかがわせる。無残な詩だ。鉄カギで逆さ吊りされて肉を切りとられ「だんだん稀薄になっていく この実在」。そうして最後に「ぶら下っているのは 大きく曲った鉄の鉤だけだ」ということ。この不様な魚が象徴するのは、或る場合における人間の運命である。生の姿が不様であるばかりでなく、ぶら下がった死もみじめである。そのうえ死の肉体は残酷に切り取られ、いっさいが無になったときようやく運命の惨劇が終わる。私どもの運命にもこれがある。永遠にうしなわれて形をのこさぬような、無の運命が行手に影を落としている。『抽象の城』の詩人は、このような意識を作品の恒久的主題にしたのである。>【伊藤信吉「解説」(『村野四郎詩集』(思潮社、1987))】

□村野四郎「さんたんたる鮟鱇」(『抽象の城』、1954)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込~

    睡蓮(サイアム・パープル)
   
コメント

【食】機能性表示食品の安全性 ~茶カテキン過剰摂取の危険性~

2015年04月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)4月から企業責任で機能性を表示できる機能性表示食品制度が始まった。
 新制度について、機能性の真偽の問題があるが、これとは別に、安全性の問題も懸念される。
 機能性食品で使用しやすい成分は、すでにトクホとして認められている成分だろう。しかし、より大きな効果を期待して摂取量を増やすと、危険性が増す可能性が否定できないのだ。
 茶に含まれるカテキンによる肝臓への毒性もその一つだ。
 茶は日本を含めたアジア諸国で十分な食経験がある、と考えることができる。
 しかし、「脂肪を燃焼させる」とか「悪玉コレステロールを減らす」とか、特定の機能性を表示することで、摂取量を増やしていった場合の安全性の検証がおろそかにされる恐れがある。

 (2)海外では、「ヘルシア緑茶」の摂取量(1本540mg)と同程度のサプリメントで肝障害の事例が報告されている。特に女性に影響が出やすく、空腹時に飲むと過剰摂取される、等が分かっている。
 2010年のマウスの実験では、高用量のカテキンを投与したマウスで、数日のうちに肝臓に急性毒性が出て75%が死亡した。
 これは、ジョシュア・ランバート博士(米国ペンシルバニア州立大学)たちが行った研究だ。体重1kg当たり、0mg、500mg、750mgを毎日投与した結果は次のとおりだった。
  (a)0mgのマウスのグループは死亡率0%。
  (b)750mgのマウスのグループは死亡率75%(12匹中7匹が死亡)。

 (3)(2)の論文では、マウスで影響が出た投与量(体重1kg当たり500~1,500mg)を人間での相当量に換算している。その量は、体重1kg当たり30~90mgだ。
 ちなみに、動物実験の投与量を人間への投与量へ換算する方法には、
  (a)単純に動物と人間の体重差で換算する。
  (b)体の代謝の影響などを考慮して体表面や摂取カロリーの差で換算する。
 といった方法があって、この論文では摂取カロリーの差で換算している。

 (4)市販の茶や健康食品からの摂取量と、有害影響の出る摂取量を比較すると、
  (a)マウスが急性肝毒症で死亡する量の人間相当量(平均的日本人体重60kg)・・・・1,800~5,400mg
  (b)海外で肝機能障害が起きたケースの摂取量・・・・600~1,740mg
  (c)日本の健康食品・サプリメント商品での1日摂取目安量・・・・100~600mg
   ①紅茶1杯(100g)・・・・68mg
   ②伊藤園「カテキン緑茶」1本・・・・197mg
   ③花王「ヘルシア緑茶」1本・・・・540mg

 (5)(4)-(c)の安全な量は意外と狭い。①~③にしても、安全な量の範囲内だが、意図的に大量に摂取した場合、肝機能障害が起きても不思議はない。
 日本人間ドック学会によれば、検査で見つかる生活習慣病のトップが肝機能障害だ。健康食品が肝機能異常をもたらす原因になっている場合がある。

□植田武智「機能性表示食品の登場で茶カテキン市場の過熱がこわい」(「週刊金曜日」2015年4月24日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント

【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~

2015年04月26日 | 詩歌
  僕には愛がない (*1)
  僕は権力を持たぬ (*2)
  白い襯衣(しゃつ)の中の個だ (*3)
  僕は解体し、構成する (*4)
  地平線が来て僕に交叉(まじは)る (*5)

  僕は周囲を無視する (*6)
  しかも外界は整列するのだ (*6)
  僕の咽喉は笛だ (*7)
  僕の命令は音だ (*7)

  僕は柔らかい掌をひるがへし
  深呼吸する
  このとき
  僕の形へ挿される一輪の薔薇 (*8)

 【注解】
 この詩を含む『体操詩集』は、全て暗喩で書かれている。「芳賀秀次郎『体操詩集の世界』(1983)によれば」、
 (*1)当時の詩誌「四季」などが持っていた湿潤な美学への抵抗であり、新即物主義の「事物に対する冷静な客観と没感情的な」立場の表白である。
 (*2)政治的な権力を持たぬという意味と、表現主義や浪漫主義の不当に尊大な自我、個の疑わしい権威を持たないと言う意味である。
 (*3)「僕は権力を持たぬ」「白い襯衣の中の個だ」と表現することで人間中心の古いロマン主義の尊大な自我を拒否した即物主義の精神を表現した、と村野自身が述べている。なお、解説者芳賀はこの表現はこの詩の中の「最も美しい詩句である」と評している。
 (*4)人間の身体を非日常的に動かすこと(つまり体操)が「解体」であり、その動作によって一つの美を作り出すことが「構成」である。
 (*5)運動のある一瞬で、僕の身体の線が地平線と交叉するというような自我中心の表現をとらず「地平線が来る」と言っているところが即物的な表現だ。
 (*6)僕が周囲を無視して運動を続け白いシャツの中の個になればなるほど、外界の事物や観衆は親愛を込めて整列し、僕を見守り続ける。
 (*7)自分の咽喉は、哀しみを述べたり、愛を歌ったりする湿潤のリリシズムの発声機関ではなく風のように無意味な音を出す、非人情的な笛である。そこから発せられるものは意味ではなく、声ですらなく機械的な音響である。
 (*8)作者によれば、この詩句は深呼吸と共に頬を彩る充血の花を意味し、それを外部から、この全形態に挿された一輪のバラに見立てたものである。

□村野四郎「体操」(『体操詩集』、1939)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込~

     薔薇「芳純」
   
コメント

【食】口当たりがよいタイプほど増える添加物 ~豆乳~

2015年04月26日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)豆乳は、牛乳に似た栄養価を持つため、昔から牛乳や母乳の代用品として用いられてきた。広く普及するようになったのは、豆乳の脱臭法が確立された1970年代だ。加熱やフレーバー添加によって豆乳臭が緩和されたのだ。今では栄養価の高いヘルシーな健康飲料として、年間に一人当たり2リットルが消費される。

 (2)豆乳は、大豆固形成分(製造された製品から水分を除いた残りの部分)の量によって3種類に区分される。
   (a)豆乳・・・・大豆固形成分8%以上。丸大豆から従来の方法で製造されたもの。
   (b)調製豆乳・・・・大豆固形成分6%以上。豆乳液(脱脂大豆から調整したものも含む)に植物油(大豆油etc.)や調味料(砂糖類、食塩etc.)を加え、製造されたもの。
   (c)豆乳飲料
     ①果汁入り・・・・大豆固形成分2%以上。
     ②その他・・・・豆乳液にコーヒー、ココア、果実、野菜の絞り汁、乳、乳製品etc.を加え、製造されたもの。

 (3)(2)-(a)の原料は大豆のみ。
 (2)-(b)から(2)-(c)へと、飲みやすく、口当たりがよくなるにつれ、原材料に食品名と添加物が増えてくる。
 調製豆乳((2)-(b))と豆乳飲料((2)-(c))の添加物は、
   (a)乳酸カルシウム・・・・カルシウム補給のためにと銘打つ清涼飲料水などに含まれる添加物。成人では問題ないとされるが、未熟児で中毒、急性出血性赤血球減少が報告されている。
   (b)香料・pH調整剤・乳化剤・・・・一括名表示が認められている添加物。つまり、消費者には、どんな物質が何種類使われているか分からない。
   (c)甘味料・増粘安定剤(使用目的によって区分される→増粘剤・安定剤・ゲル化剤)・酸化防止剤・・・・「用途(物質名)」で表示される添加物。豆乳飲料で増粘多糖剤が安定剤として使われる。その増粘多糖剤は、食品に粘稠性を与えるために使われる水溶性の多糖類で、種類が多く、種類によっては安全性が危惧される。
     <例1>紅藻類から抽出されるカラギナン・・・・発癌促進性や胃潰瘍を引き起こす、との指摘がある。
     <例2>コーンやジャガイモの澱粉(スターチ)・・・・遺伝子組み換え作物の可能性が高く、アルギン酸ナトリウムは動物実験で心臓や肝臓などに障害が発生した、との報告がある。
   (d)甘味料に使用されているアセスルファムK・・・・蔗糖の200倍の甘みを持つ物質。清涼感があるので炭酸飲料などに使用されているが、動物実験では発癌性が報告されている。

 (4)豆乳は、口当たりがよくなるにつれて増えていく食品添加物によって、今や大豆の栄養からはほど遠い人工飲料へ変身してしまった。

□沢木みずほ「栄養価満点の「豆乳」だって加工品は添加物から逃れられない」(「週刊金曜日」2015年4月17日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント

【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~

2015年04月25日 | 詩歌
 僕は白い雲の中から歩いてくる
 一枚の距離の端まで
 大きく僕は反る
 時間がそこへ皺よる
 蹴る 僕は蹴った
 すでに空の中だ
 空が僕を抱きとめる
 空にかかる筋肉
 だが脱落する
 追われてきてつき刺さる
 僕は透明な触覚の中で藻掻(もが)く
 頭の上の泡の外に
 女たちの笑(わらい)や腰が見える
 僕は赤い海岸傘(ビーチパラソル)の
 巨(おおき)い縞を掴もうとあせる

 *

 「大きく僕は反る/時間がそこへ皺よる」「蹴る 僕は蹴った/すでに空の中だ/空が僕を抱きとめる」・・・・<いまからみればこのような表現もさほど新奇に感じられないだろうが、当時のモダニズムの系流の詩は、これらの作品によって表現のあたらしい可能性を獲得し、詩の領域をひろげていった。いや、その当時ばかりではない。「時間がそこへ皺よる」「空が僕を抱きとめる」という時間・空間の把握とその表現はいまでも新鮮である。多くの人はこの詩集(引用者注・『体操詩集』)がスポーツのいろんな場面を題材にしていることから、まず題材の点に興味をひかれるらしい。それもまちがいではないが、それよりもこれらの作品で決定的に大事なことは、スポーツの場面におけるさまざまの姿勢、運動、速度、変転をはじめ、それを取りまく時間や、そこに生じる情緒などのいっさいが、一個の型態として構成され、スポーツそのものが「形」として把握された点である。時間や空間を切り取り、それに形をあたえたことにおいて、この詩集の新鮮さはいまもうしなわれていない。これはスポーツに題材した「形態詩集」であり、フォルムの創造において際立っている。>【伊藤信吉「解説」(『村野四郎詩集』(思潮社、1987))】

□村野四郎「飛込(二)」(『体操詩集』、1939)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

     フッドレア
   

コメント

【食】新しい「コカ・コーラ」は体にやさしいか ~買ってはいけない~

2015年04月25日 | 医療・保健・福祉・介護
  《甲》コカ・コーラ
  《乙》コカ・コーラ レモン
  《丙》コカ・コーラ ゼロ
  《丁》コカ・コーラ ライフ

 (1)《丁》が2015年3月9日から全国で発売され始めた。コカ・コーラのおいしさはそのままにカロリーオフ(19kcal/100ml)したのだそうだ。
 《甲》は1本(500ml)当たりのエネルギーが225kcalであるのに対し、《丁》はその半分以下(95kcal)だ。

 (2)《丁》は天然甘味料のステビアを添加し、カロリーを低く抑えている。ステビアは、南米原産のステビア(キク科)の葉から抽出したもので、ステビオシドとレバウジオシドという甘味料が含まれる。砂糖の200~300倍の甘味度があり、少量で飲料に甘みを持たせることができる。そのため、低カロリーの飲料を実現できる。
 しかし、ステビアには、いくつか問題がある。
 南米では、ステビアを100年以上前から甘味料として利用してきた。不妊・避妊作用がある、と言われていたが、今日では否定されつつある。しかし、EU委員会は1999年、使用を認めないと決定した。理由・・・・ステビアが体内で代謝してできるステビオールが動物のオスの精巣に悪影響があり、繁殖毒性が認められたから。
 ただし、その後安全性が再検討され、同委員会は2011年12月から、体重1kg当たり4mg以下の摂取に抑えるという条件付きでステビアの使用を認めた(危険性が完全に払拭されたわけではない)。

 (3)《甲》《乙》《丙》《丁》にはカラメル色素が添加されている。
 カラメル色素には、カラメルⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの4種類がある。カラメルⅢとⅣの場合、原料にアンモニウム化合物が含まれているため、色素を作る際の熱処理によって、それが化学変化を起こして4-メチルイミダゾールに変化する。4-メチルイミダゾールは、米国で行われた動物実験では発癌性が確認されている。
 カルフォニア州は、環境汚染に厳しい姿勢をとっている。4-メチルイミダゾールの1日の摂取量を29マイクログラム(グラムの100万分の1)と定める。その3倍超の100マイクログラム以上がコーラ1缶(355ml)に含まれる。米コカ・コーラは、製法を変えることで含有量を減らしたコーラを新たに発売したのだ。

 (4)日本で販売されている《甲》は、従来の製法と変わりがないため、この基準を超える4-メチルイミダゾールが含まれている。
 《丁》はどうか。
 日本コカ・コーラの回答は、「原材料は安全性を確認したものを使っている。具体的な製法は教えられない」。同社は、以前から「カラメル色素は安全性に問題ない」という姿勢を貫き、《甲》も原材料や製法を変えていない。だから、《丁》も同様なカラメル色素が使われている可能性が高く、4-メチルイミダゾールが含まれているものと推定される。

 (5)《丙》には、安全性に不安のある合成甘味料(アスパルテーム、アセスルファムK、スクラトース)が使われている。
   ・アスパルテーム・・・・脳腫瘍を起こす、との指摘があり、イタリアにおける動物実験では白血病とリンパ腫を起こす、と認められた。
   ・アセスルファムK・・・・イヌを使った実験で肝臓にダメージを与えたり、免疫力を低下させることが示唆された。
   ・スクラトース(有機塩素化合物の一種)・・・・ラットによる実験で、免疫力を低下させることが示唆された。

 (6)《甲》《乙》《丙》《丁》で、香料と酸味料に何が使われているか不明だ。

□渡辺雄二「新しい「コカ・コーラ」は体にやさしいか ~新・買ってはいけない 207~」(「週刊金曜日」2015年4月17日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント   トラックバック (1)

【詩歌】擬物語詩の神秘 ~聞いて下さい~

2015年04月25日 | 詩歌
淋しい歌を一つ聞いて下さい 三十六人ででかけていって三人帰つて来た 赤い頭巾をかぶって笑っていた七人のうち六人は帰って来なかつた 野原の向こうにちょっぴり顔を出しているけやきの林 お日さまはあそこまで来ると そそくさと垂直に落ちてしまう

淋しい歌を一つ聞いて下さい 眼がさめてみると 石ころだらけの河原にころがっている せきれいの弧がわたしを縦に切りさき そこら中で黄色い花がぶすぶす燃え 燃えながら歌っている 明日がありますよ 明日のお月さま早くいらしゃい 赤い頭巾をかぶった人たちを知りませんか

淋しい歌を一つ聞いて下さい お金もうけができるというので 家財をはたいて 河に舟をうかべたのです それからは舟はあの人たちの陸地でした 溺れるのは海に出てからのことです へさきに五位さぎを何羽もとまらせて こも包みの中身はごぼうとそれから鉄砲だったといいます 

淋しい歌を一つ聞いて下さい みんな頭の皮をむかれました 血が幾筋もながれていく河のおもて 夜が三十幾度めぐり 河幅が広がったりまたちぢんだりして 黄色い花のある河原を繰り広げつづける どこへ行ったのでしょう みんなは 笑ってもいいのでしょうか 一人とりのこされても

淋しい歌を一つ聞いて下さい 三人帰って来たがその三人をだれも覚えていなかった 河下の村でお祭りがあって そのまた河下の村でもお祭りがあって そんなふうにたくさんのお祭りのあとで あの人たちの子供はあちこちにおき忘れられ 中には棒杭になった連中もあった

淋しい歌を一つ聞いて下さい 河の水の涸れる季節 舟をひく人々の唄が何里も遠くから突然聞こえて来る季節 犬たちが帰り それから男たちが町から帰って来る ひきずっていく長い影 土手の上から見ますと 何もかも冷たいかすみの中でかじかんでいるのでした

淋しい歌を一つ聞いて下さい アメデオ・クラフトスという人を知っていますか 肩にも名も知らぬ楽器を背負って どこかのお祭りにいた筈ですがそれとももう死んだか わたしは石にされて倒れていました わたしのまわりで黄色い花々が燃えながら笑っています それから歌っています
   明日がありますよ
   明日のお日さま
   早くいらっしゃい
   明日のお月さま
   早くいらっしゃい

淋しい歌を一つ聞いて下さい 春は来るのですか そのとき犬たちは吠えますか 岩むらで男たちの死体が発掘されるでしょうか 砂地でまた花が何百本もゆれるのですか あなたがたの春のことを聞かせて下さいませんか きっとどんなにか面白いことでしょう

□入澤康夫「聞いて下さい」(詩集『古い土地』、後に『入澤康夫<詩>集成』所収)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

    エルンスト・バルラハ「復讐者」
   
コメント

【食】健康食品の七つの大罪 ~2兆円規模の成長産業~

2015年04月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)「健康食品」は、国内で2万種類が流通している。しかし、何が「健康食品」なのか、まったく定義されていない。
 このうち政府が認めた制度は、次の三つ。
   (a)特定保健用食品(トクホ)・・・・国が製品ごとに健康効果(機能)や安全性を審査、許可したもの。現在1,144品種。
   (b)栄養機能食品・・・・効果が明確な栄養成分(ビタミンやミネラル)を補うためのもので、成分が基準値の範囲で含まれていれば、審査を受けることなく表示できる。
   (c)機能性表示食品・・・・2015年4月に導入された新制度。効果の科学的根拠などを国に届け出れば、目や骨といった体の部位を挙げて健康効果を表示できる。

 (2)健康効果はほとんどなく、あってもごくわずか。 ~第1の罪~
 健康食品が表示したり、暗示する効果のほとんどに「科学的根拠」はない。トクホでさえ、効果はきわめて限定的だ。
 国立健康・栄養研究所は健康食品の素材(製品ではない)に係る「安全性・有効性情報」をホームページで公開している。
 <例1>俗に「美容によい」「骨・関節疾患に伴う症状の緩和によい」などとされるコラーゲン・・・・ヒトにおける有効性に係る信頼できるデータはない。
 <例2>俗に「糖分の吸収や血糖値の上昇を抑える」といわれる「ギムネマ」・・・・ヒトにおける有効性や安全性に係る信頼できる十分なデータはない。

 (3)品質がバラバラで、未知の科学物質があることも。 ~第2の罪~
 健康食品は医薬品と異なり、きちんと製造されたものではないので、表示成分が含まれていないこともあれば、未表示成分が含まれていることも珍しくない。
 表示されていても安心できない。
 <例>内藤裕史・筑波大学名誉教授は、加齢性黄斑変性という治療法のない眼病を患っているが、勧められて(株)わかさ生活のブルーベリー製品を試したところ、2週間ほどして体のあちこちに発疹が現れた。すぐ服用を止めたが、メーカーによれば15種類の成分のうち「松の樹皮抽出物」が怪しいらしい。服用中止後も痒みとじくじくが続き、治るのに半年以上かかった。
 ほとんどの健康食品には製剤化の家庭で多種類の未知の化学物質が混入、追加されていることを忘れてはならない。【内藤名誉教授】

 (4)有毒成分を含むものがあり、健康被害が絶えない。 ~第3の罪~
 健康食品の歴史は健康被害の歴史でもある。
 <例1>2005年に起きたダイエット食品「天天素清脂?嚢」による(疑い)の健康被害では、東京都で死者が出た。分析すると、食欲抑制剤(向精神薬)のマジンドールと肥満症治療薬のシブトラミン(日本では未承認)が検出され、厚生労働省は絶対に服用しないよう呼びかけた。
 <例2>摂りすぎると危険なものの一つが「茶カテキン」だ。茶カテキンを大量に摂取すると、肝障害発生の可能性がある。スペイン・フランスでは、茶カテキン・サプリメントを飲んだ13人に肝障害が発生し、2003年に発売禁止になった。米国・カナダでも重症の肝障害が発生し、肝移植を受けた患者まで出ている。

 (5)抽出・濃縮・乾燥が問題を生むことも。 ~第4の罪~
 自然の物だからといって安全とはいえない。抽出・濃縮・乾燥などによって問題を生むこともある。
 <例>俗に「肝臓の機能を高める」と言われ、二日酔い予防に愛用することが多いウコンも、平安時代に中国から渡来したショウガ科の植物だ。ドリンク「ウコンの力」など多くの健康食品が発売されているが、その効果は「消化不良に対しては一部のヒトで有効性が示唆されているものの、その他に信頼できるデータは十分ではない」。安全性については、通常食事中に含まれる量の摂取であれば、おそらく安全だろうが、過剰または長期摂取では消化管障害を起こすことがある。

 (6)薬と併用すると薬効が低下する。 ~第5の罪~
 サプリと薬を一緒に飲むと、薬の効果が低下する場合がある。
 <例1>マグネシウム・アルミニウム・鉄などのミネラルを一部の抗菌薬とともに摂取すると、両方とも吸収されにくくなる。
 <例2>体にカリウムを溜め込む作用のある降圧剤や利尿剤を「カリウムを多く含むサプリ」(青汁・クロレラ・アガリクスなど)とともに飲むと「高カリウム血症」になって体がしびれるなどの症状が出るおそれがある。

 (7)実態からかけ離れた広告・宣伝で消費者を惑わす ~第6の罪~
 健康食品の広告・宣伝は薬事法(現・医薬品医療機器等法)や景品表示法の規制があるから、効果を直接訴えるようなことはできない。暗示し、ほのめかし、イメージで消費者の心を捉えようとする。が、いきすぎも少なくない。
 東京都では、2014年度、店舗やネットで購入した125商品のうち125商品(84%)が法違反の疑いが濃い誇大・不適正な表示・広告をしていた。
 不当な表示や広告がなくならない理由は、消費者庁が時々景品表示法違反で不当表示の再発防止を求める措置命令を出すだけで、野放しに近い状態で放置しているからだ(東京都は業者に改善命令を出すだけ)。連邦取引委員会(FTC)が強力な取り締まりをしている米国に遠く及ばない。
 そのFTCは、2014年6月、ドコサヘキサエン酸(DHA)を有効成分とするサプリの記憶力改善効果の表示広告について、科学的根拠が不十分で虚偽表示に当たると決定、事業者も虚偽であることを受けいれた、と発表した。

 (8)悪徳商法の材料となり、経済被害が急増。 ~第7の罪~
 健康商品で健康は買えない。これさえ飲めば食事は気まま、というようなものはない。「機能性表示食品」は体の部位を挙げて効果的な文言を表示できるようになるというが、どんな効果があるか、事業者にしつこく問い合わせることを繰り返すべきだ。栄養機能食品に指定されているビタミンやミネラルにはそれなりの保健効果ががるが、これらも適切な食事で必要量を摂取できる。「適度に動く・寝る・食べる」が健康管理の基本だ。

□岡田幹治「七つの大罪 ~健康食品で本当に健康になれますか? アホノミクスで2兆円規模の成長産業~」(「週刊金曜日」2015年4月17日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン
コメント

【詩歌】呪い ~鴉~

2015年04月24日 | 詩歌
 広場にとんでいって
 日がな尖塔の上に蹲っておれば
 そこぬけに青い空の下で
 市(まち)がさびれていくのが たのしいのだ
 街がくずれていくのが うれしいのだ
 やがては 異端の血が流れついて
 再びまちが立てられようとも
 日がな尖塔の上に蹲っておれば
 (ああ そのような 幾百万年)
 押さえ切れないほど うれしいのだ

□入澤康夫「鴉」(詩集『倖せ それとも不倖せ』)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

    白木蓮
   


コメント

【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~

2015年04月23日 | 震災・原発事故
 (1)福井地裁は、4月14日、関西電力高浜原発3号機および4号機の運転を差し止める仮処分を決定した。これによって、仮に関電が同地裁に異議申し立てを行っても差し止めの効力が維持されるから、当分の間、高浜原発の再稼働ができなくなった。
 結論が出るまでにかなりの時間を要する、と目されている。関電が計画する11月再稼働は難しくなった。
 昨年の大飯原発の再稼働差し止め訴訟では、住民側が勝訴したものの仮処分ではなかったので、関電の控訴によって判決の効力がなくなった(再稼働は可能)。これに比べると、4月14日の仮処分決定ははるかに大きな意義を持つ。

 (2)(1)仮処分決定の内容をひと言で言えば、
    原子力規制委員会が定めた新たな規制基準が「緩やか」すぎて、
    この基準に「適合しても」「原発の安全性は確保され」ず、
    「新規制基準は合理性を欠く」ので
    その基準に「適合するか否かについて判断するまでもなく」差し止めを認めるべきだ。
 というものだ。この考え方に立てば、
    現行の規制基準で審査している限り、それに適合しても何の意味もない。
    よって、この夏の再稼働を目指している九州電力の川内原発はもちろん、すべての原発は再稼働できない。

 (3)必要なのは、まず、規制基準を根本から作り直すことだ。むろん、今よりもはるかに厳しい基準にしなければならない。
 そうなれば、それに適合するためには大きな補強工事などが必要になり、かなりの時間と多額の資金が必要になる。その結果、再稼働できない原発が続出するだろう。

 (4)(1)の決定に対して、関電は直ちに「承服できない」というコメントを出した。テレ朝「報ステ」で、古賀茂明の発言に異を唱えた古館伊知郎・キャスターが思わず口にした言葉と同じ言葉だ。
 不都合な真実を突きつけられると、使いたくなる言葉であるらしい。
 規制基準が不十分なものであることは、専門家の間では常識となっていた。
 マスコミがそれを報じないので、一時は
    「世界最高の安全基準」
という言葉が一人歩きしたが、その後、政府自身も
    「世界最高『水準』の」
と言い換えた。さらに、規制委も再稼働が近づくにつれ、
    「『安全』基準ではなく『規制』基準に過ぎない」
ということを強調し始めた。つまり、
    日本では原発の安全について誰も責任を負わない体制
なのだ。

 (5)驚くべし、菅義偉・官房長官はこの期に及んでも、なお、こう言う。福井地裁が「合理性を欠く」とした新基準につい て、
    「世界で『最も厳しい』と言われる新基準」
であると。そして、再稼働を「粛々と進めていきたい」と。「粛々と」という言葉は、沖縄の辺野古基地建設の際に使って、
    「上からの目線」
と翁長雄志・知事に批判されて封印した「話題の」言葉だ。この言葉をあえて使ったのは、
    どんな反対があっても完全無視で、原発再稼働を強行に推進していく。
 という宣言だ。
 統一選前半戦の勝利で、さらなる暴走を始める安倍政権。司法さえ踏みつぶして猪突しつつある。

□古賀茂明「原発再稼働も「粛々と」? ~官々愕々第152回~」(「週刊現代」2015年5月2日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

コメント (1)