語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?

2015年10月15日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)家庭に普及しつつある白色LED照明は、従来の照明より青色光(ブルーライト)が強い。網膜の細胞に損傷を与え、黄斑変性症(失明に至る)のリスクを高める危険性が指摘されている。
 ブルーライトとは、文字どおり青色の光のことだ。太陽光など自然の光にも多く含まれている(<例>虹)。
 可視光の中で最も波長が短い(波長400~500nm【注1】)ブルーライトは、眼の網膜へ到達する光の中では最もエネルギーが強く、網膜の視細胞に酸化ストレスを起こし、有害作用をもたらすことがすでに証明されている。これは、「青色光網膜障害」と称され、太陽光や強力な発光源を直視した場合に起こる短期的影響とされている。
 しかし、照明器具などの低強度のブルーライトに長期的に曝露し続けた場合の影響は十分に解明されていない。
 従来の蛍光灯などと比べ、白色LED照明ははたして人間に対して危険といえるか?

 (2)昆虫(蚊やハエなど)に強いブルーライトをあてたところ、紫外線より強い殺虫作用があった、というショッキングな報告もある。【注2】

 (3)白内障手術で、光の透明度の高い眼内レンズに交換することで、網膜に入るブルーライトの量が増し、その後、加齢黄斑変性症のリスクが上がる、という疫学調査が複数あるが、結論には達していない。

 (4)照明光に使われる白色LEDのほとんどは、青色LEDを元に、補色である黄色の蛍光体を使って白色光を出している。そのため、光は白色でも、蛍光灯などの光に比べてブルーライトの占める割合が多いとして、安全性を懸念する声が上がっている。
 しかし、蛍光灯(昼光色)と白色LED(昼光色)を同じ明るさ(500ルクス(lx))で比べた場合、含まれるブルーライト成分の光は同程度なので、白色LEDだけが危険とは言えない、という報告がある。【注3】
 理論的にも、白色LEDだけが特別危険とは言えない。

 (5)しかし、マウスの視細胞に各種LED光をあてた実験で、緑色LED光に比べ、青色LED光、白色LED光で有意に細胞障害が多い、という結果が出た。【注4】
 また、白色LEDと蛍光灯を使い、日常的な照明の明るさでラットを飼育した実験で、網膜の視細胞の損傷や酸化ストレスの度合いが、蛍光灯に比べて白色LEDの方が多いという結果が発表されている。【注5】
  (a)光をあてずに暗い環境で飼育したラット(コントロール群)では損傷がなかった。
  (b)蛍光灯のグループにも細胞損傷が起きていた。
  (c)青色LED、白色LEDのグループでは蛍光灯グループの2倍程度多い被害が起きた。
 蛍光灯と白色LEDの微妙な波長光の分布の違いが、ラットや人の網膜へ影響をおよぼす可能性が示唆された。その原因が解明されない限り、白色LEDは安全とは言い切れない。

 【注1】ナノメートル。1nm=10億分の1m。
 【注2】東北大学の研究、2014年。
 【注3】報告書「LED照明の生体安全性について」および補足資料(日本照明工業会や照明学会など4団体、2014年10月・11月発表)
 【注4】原英彰・岐阜薬科大学教授らの研究、2014年。
 【注5】国立台湾大学の研究、2014年。

□植田武智(科学ジャーナリスト)「照明用白色LEDのブルーライトは安全か? いくつかの研究報告を精査してみた」(「週刊金曜日」2015年10月2日号)
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