(承前:昭和史を武器に変える10の思考術)
(2)現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」。
官僚化した軍隊の組織原理が具体的に読み取れるのは次の文書だ。
(a)統帥要綱(1928年)・・・・統帥にあたる参謀本部第一課の陸大卒エリートしか読めない軍事機密。
(b)作戦要務令(1938年)・・・・企画立案実行するためのマニュアル。
官僚の組織原理は必然的にマニュアル化する。(b)はよくできたマニュアルだが、そこに貫かれている思想は、「難しいことは考えなくていいから、教えられた通りにやれ」ということに尽きる。それを支える精神は、必勝の信念だ。
情勢判断よりも必勝の信念
が上位に置かれたから、常に攻撃精神を持つことが優先される。
では、(b)に想定されていない事態が起きたらどうするか。
答えは、「現場が独断で行え」だ。そして、「うまくやれ」だ。
先般の東芝の粉飾決算事件【注】で、経営トップが「工夫しろ」「チャレンジだ」といった指示を出していた。あれこそ、(b)の世界だ。結果としてうまくやったら、指示をこなしたことになる。下手を打ったら、指示違反だと責められる。上司にとってマジック・ワードだ。
会社でも役所でも、組織が危なくなると曖昧な指示が増える。「うまくやれ」とか「工夫しろ」と言われたら危ない。下が責任を被せられると考えたほうがいい。
(b)の世界で決定的に欠けているのはリーダーシップという概念だ。想定外の事態に対応できるのは、組織から正当な権限と責任を与えられたリーダーなのだが、マニュアルと無原則な現場判断だけしかない日本型組織にはそれがいない。
【注】
「【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~」
「【東芝】不正経理の闇(2) ~原発メーカーの経営危機~」
「【東芝】不正経理の闇(1) ~国際原子力シンジケート~」
□佐藤優「昭和史を武器に変える10の思考術」(「文藝春秋SPECIAL」2015年秋号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~」
(2)現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」。
官僚化した軍隊の組織原理が具体的に読み取れるのは次の文書だ。
(a)統帥要綱(1928年)・・・・統帥にあたる参謀本部第一課の陸大卒エリートしか読めない軍事機密。
(b)作戦要務令(1938年)・・・・企画立案実行するためのマニュアル。
官僚の組織原理は必然的にマニュアル化する。(b)はよくできたマニュアルだが、そこに貫かれている思想は、「難しいことは考えなくていいから、教えられた通りにやれ」ということに尽きる。それを支える精神は、必勝の信念だ。
情勢判断よりも必勝の信念
が上位に置かれたから、常に攻撃精神を持つことが優先される。
では、(b)に想定されていない事態が起きたらどうするか。
答えは、「現場が独断で行え」だ。そして、「うまくやれ」だ。
先般の東芝の粉飾決算事件【注】で、経営トップが「工夫しろ」「チャレンジだ」といった指示を出していた。あれこそ、(b)の世界だ。結果としてうまくやったら、指示をこなしたことになる。下手を打ったら、指示違反だと責められる。上司にとってマジック・ワードだ。
会社でも役所でも、組織が危なくなると曖昧な指示が増える。「うまくやれ」とか「工夫しろ」と言われたら危ない。下が責任を被せられると考えたほうがいい。
(b)の世界で決定的に欠けているのはリーダーシップという概念だ。想定外の事態に対応できるのは、組織から正当な権限と責任を与えられたリーダーなのだが、マニュアルと無原則な現場判断だけしかない日本型組織にはそれがいない。
【注】
「【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~」
「【東芝】不正経理の闇(2) ~原発メーカーの経営危機~」
「【東芝】不正経理の闇(1) ~国際原子力シンジケート~」
□佐藤優「昭和史を武器に変える10の思考術」(「文藝春秋SPECIAL」2015年秋号)
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【参考】
「【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~」