語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】官僚のリークによる御用記事 ~記者クラブの弊害~

2011年06月30日 | 社会
 日本の新聞、テレビは、監視すべき政府機関やその構成員たる官僚に寄り添い、その意向につき従おうとする習性がある。

 この事実を見事なまでに浮き彫りにしたのが、原発災害に関する報道だった。
 わけても象徴的だったのは、福島第一原発1号機の原子炉建屋が爆発した際の報道だ。3月12日、NHKをはじめ民放各局とも、爆発の瞬間については、しばらく報じなかった。建屋の上部が吹き飛び、鉄骨が露わになった建物を静止画像で流していたにすぎない。

 だが、日本のテレビが音無しの構えをとっていた間、BBCはその爆発の瞬間をとらえた映像を放送し、WEBでも即座に公開した。
 この不自然かつ不気味な情報格差は、ツイッターやメールで日本国内に瞬く間に周知のものとなった。そして、多くの国民が日本のメディアに抱いてきた不信を確信に変えた。

 日本の新聞やテレビは、公権力がゴーサインを出すまで“国民の知る権利”に応えようとしないのだ。というより、「できない」のだ。
 彼らの取材拠点「記者クラブ」の運営経費の大半は、税金で面倒を見てもらっているからだ(16年前の調査だが、当時少なくとも111億円の税金が投入されていた)。
 批判すべき相手側から、これだけ手厚い経済的便宜供与を受けていれば、「完全な自由を有する」報道など、できなくて当たり前だ。
 それどころか、邪な官僚たちの御先棒を担ぐ報道に利用されたとしても、何ひとつ文句を言えない。記事にしなければ次のネタがもらえない、などと情けないことを言う始末だ。

 5月26日、毎日新聞が1面でスクープを報じた。・・・・が、これも、厚労省年金局の“一部官僚”にうまくそそのかされ、書かされたものだ。
 くだんの記事は、民主党のマニフェストの柱ともいうべき年金記録問題への取り組みの変更を伝えるものだ。年金記録の全件照合は国家的プロジェクトだ。これによって民主党は政権交代を果たした、とさえ言ってもよい。その重要政策の変更となれば、民主党内で議論が不可欠だ。しかし、議論が活発かつ広範囲に戦わされた事実は存在しない。にもかかわらず、厚労省がリークする形で「全件照会を断念する方向で検討に入った」との記事が出現したのだ。
 細川律夫厚労大臣は、国会で記事内容を全否定している。政務三役の一人は、毎日新聞に抗議するよう事務方に命じている。
 いったい、どういうことか。
 マニフェストの変更を望む一部官僚が、自らの願望を厚労省の意思であるかのにように吹聴し、新聞に書かせた。これが真相だ。
 記事のネタ元となった年金局の官僚は、得意のべらんめえ口調で、全件照合などやるわけないだろう、と各紙の記者にうそぶいた、という。
 年金局の幹部の一人も、発信源の官僚は局のラインにいる人じゃない人だから勝手なことを触れ回られ困っている、と苦り切っている。

 この記事を書いた記者は、報道の使命とあり方を真摯に問い直すべきだ。
 報道の本来のあり方に立てば、官僚の説明を鵜呑みにするのではなく、まず内容を検証し、事実に反する以上、その邪な発言こそ問題とするべきだろう。
 一部官僚の思惑だけで世論が恣意的に誘導される事態がまかり通れば、国会軽視が常態化し、それこそ議会制民主主義の否定になる。

 以上、岩瀬達哉「官僚のリークによる御用記事をいつまで書き続ける気か ~ジャーナリストの目第75回~」(「週刊現代」2011年7月9日号)に拠る。
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【震災】二重ローン 得するのは銀行だけだ ~その対策~

2011年06月30日 | 震災・原発事故
 金融庁によれば、このたびの震災で直接の被害を受けた地域で、金融機関の貸し出しは総額2兆8千億円。大企業・中堅企業向け融資が1,800億円、中小企業向け融資が1兆4,300億円、住宅ローン9,400億円、その他自治体向けなどが2,300億円。融資件数や人数は、「調査していないのでわからない」(金融庁銀行二課)。
 住宅ローンと中小企業向け融資は、合わせて2兆4千億円程度。仮に一人あたり融資額を2,000万円とすると、約10万人が財産を失い、借金だけが残っている。救済融資を受ければ、「二重ローン」の暮らしが待っている。

 二重ローンが社会問題化したのは、阪神・淡路大震災だ。
 この時も救済策が議論されたが、債務減免の話はまとまらなかった。結果、債務者に自己破産や自殺が多発した。
 豊田和正氏、48歳、当時神戸市須磨区で靴のゴム底加工工場経営、は震災から15年以上たった今も二重ローンを抱えたままだ。
 16年前、地震で1階がつぶれた。隣の長田区から火がまわって、半年前に2千万円の融資を受けて建て替えたばかりの自宅兼工場は燃えた。廃業するしかなかった。避難所、仮設住宅、市営住宅を転々とし、緊急災害復旧資金融資500万円、生活復興資金貸付金350万円を借りて食いつないだ。自宅兼工場の返済が月263,000円。災害復旧資金融資は、10年据え置きだったが、生活復興資金の返済は翌年から月62,000円。昼は新聞のトラック配送、夜はマット工場。月325,000円を返済するため睡眠を削って働いた。15歳上の兄は、無理がたたり、99年に死去した。
 兄は、生前、元の自営業に戻ることを望んでいた。が、そこまでしても元の事業は復活できなかった。
 震災時31歳だった豊田和正氏は、婚約者との結婚を40歳まで先に延ばし、30代のすべてを借金返済に費やした。

 負債を抱えたマイナスからのスタートは、収入減や家族の病気などを引き金に被災者を自己破産へと追いこむ。

 「理不尽な負債」は、震災とは別の理由によっても生じる。
 会社員のH氏は、購入したマンションが耐震偽装物件だったばかりに、債権回収業者から約4,800万円の返済を迫られている。
 05年にヒューザーが売り出したマンション(神奈川県藤沢市)を買った。東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)提携ローンが付いていた。5,000万円、20年払いのローンを組んだ。1回目の支払いをした直後、耐震偽装が発覚。入居3週間だというのに、藤沢市から退避勧告が出た。マンションは取り壊され、区分所有の土地代金1,477万円がH氏に戻った。しかし、土地は担保に入っていたため、代金は銀行が押さえ、残る約3,500万円の負債をめぐって交渉が始まった。
 ヒューザーと提携してローンを売った銀行に責任はないのか、騙されたのは自分も銀行も同じだ・・・・とH氏は主張したが、銀行は冷たく突きはなした。「物件とローンは別。当方に責任はない」
 返済に応じなければ給与を差し押さえる、と迫ってきた。銀行子会社の債権回収業者が、H氏を東京地裁に訴えた。11年3月に出た判決は、銀行側の主張を全面的に認めるものだった。元金に年14%の延滞金利を上乗せして支払うことを命じた。消費者金融なみの延滞金利のおかげで、銀行は、争いが長引くほど回収額が膨らむ。
 H氏はいう。「何も悪いことをしていない私が耐震偽装の責めを負い、銀行は焼け太る。日本の制度は銀行に有利にできていることを思い知らされました」

 震災は被災者=債務者の責任ではないのに、借金の返済を免れるには現行法の下では自己破産しかない。債務減免のルールが早急に必要だ。【金融庁担当者】
 救済制度の整備のため、3党協議が始まった。
 が、ここでもネックは銀行だ。容易な債務減免は不良債権を増加させ、株主代表訴訟の対象にもなりかねない、と銀行は抵抗する。さらに、銀行には、債務減免した借り手には新規の融資を行わない、という原則がある。融資から締め出されたら、中小企業は生きていけない。

 (1)金融庁案・・・・(a)銀行と債務者が減免を協議。(b)不動産鑑定士らが作る第三者機関が減免の目安を算定する。(c)銀行・債務者が合意すれば決定。<問題点>銀行の同意がなければ話は進まない。
 (2)日本弁護士連合会案・・・・(a)裁定に拘束力のある特別調停機関を設ける。(b)「債権買い取り機構」を作る。(c)買い取り価格は調停機関が定めた金額に従う。(d)借り手は減額された債務を分割して支払う。<問題点>債務減免を受けた被災者は新規融資を受けられないおそれが残る。
 (3)椎名麻沙枝弁護士案・・・・融資機能のある「機構」を設立する。機構の買い取り価格と同額で債務者は自分の債権を買い取ることができる。この時、機構から同額の融資を受ければ、借り手は債務の減免も受けられ、不良債務者のレッテルを貼られなくて済む。
 その他、いろいろなアイデアが検討されている。銀行優位にできている今の仕組みをどう変えるか。震災は、この問いを政治に投げかけている。

 以上、山田厚史(編集部)「二重ローンで破綻する人生 得するのは銀行だけだ」(「AERA」2011年7月4日号)に拠る。

 なお、菅政権は29日、震災の被災企業が震災前に受けた融資を金融機関から買い取る「機構」創設の方針を固めた。政府の「中小企業基盤整備機構」(中小機構)が50%以上出資する。ただし、住宅ローンなど個人向け債権は対象外。買い取った債権は借金返済を減免ないし免除するほか、株式に換えて返さなくてもよくする。さらに、再建や事業継続に必要な資金を直接、企業に融資できるようにする(記事「債権買い取り「機構」設立へ 被災企業の再建支援」、2011年6月30日3時5分 asahi.com)。
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【震災】“原発処理”で稼ぎまくるフランス企業の「最低最悪の評判」

2011年06月29日 | 震災・原発事故
 福島第一原発の汚染水浄化処理システムは、工程ごとに次の企業が受けもつ。25トンの汚染水処理に東電は531億円の予算を計上している。
  ・システムの基本設計・・・・東芝・日立GE
  ・最初の油分離・・・・東芝
  ・セシウム吸着装置・・・・キュリオン
  ・セシウムなどを沈殿・除去する除染装置・・・・アレバ
  ・塩分除去・淡水化・・・・日立・アレバ・東芝 

 システムにトラブルが続いている。本格稼働したところ、セシウム吸着装置の放射線量が5時間で交換基準に達した、6月18日には一時停止に追いこまれた【注】。
 キュリオン社とアレバ社は、機材の搬入・据え付け、運転指導を行う。人が常駐するから、浄化システムの運転が長引けば長引くほど、それだけ人件費がかさむ。

 フランスが原子力技術を提供したのは、今回に限らない。日本原燃が運営する六ケ所村の核燃料再処理施設の技術は、ほとんどがアレバ社のものだ。
 ところが、日本原燃が核燃料の再処理事業を国へ申請した89年当時は、完成が97年12月の予定で、建設費用は7,600億円で済むはずだった。それが、竣工予定を15回も延期している。12年10月の完成をめざしているが、現在までの建設費は2兆1,930億円だ。その間、アレバ社が付きっきりだ。そして、平然と報酬を持ち去る。
 フランスでも、日本のように総予算を入札する一括受注方式だ。工事の変更やスケジュールの狂いに伴う追加経費は、日本の企業は追加請求しない。しかし、フランスの企業はすべて請求している。

 フィンランドでは、建設中の新型炉の工事が予定より4年も遅れ、建設コストが予定金額の9割り増しになる事態が発生した。発注元の電力会社TVOとの契約では、追加請求は無い、操業開始までアレバ社がコストをもつ、というフル納入が条件のはずだった。しかし、アレバは「保安システムの構築に時間がかかった」ことを理由に追加コストの支払いを求め、係争に発展した。

 同じフランス企業だが、アレバとは別の企業「ノバルカ」は、チェルノブイリの「石棺」をさらに外側から覆う「新安全封じ込め施設(NSC)」の建設を予算10億ドルで受けもつ。
 ところが、完成は2012年とも14年とも言い、完成時期は不明だ。完成したドームを移動させるレールの建設に着手したところだが、土壌汚染による作業員の被曝の問題や資金不足で、作業ははかどっていない。【現地関係者】
 フランス企業に時間とカネばかり食われて、予定通りに建設が進まないのではないか、という懸念が広まっている。

 以上、青沼陽一郎(ジャーナリスト)「“原発処理”フランス企業の「最低最悪の評判』」(「週刊文春」2011年6月30日号)に拠る。

 【注】最近では、27日午後4時20分に「循環注水冷却」を開始したところ、注水用配管の継ぎ目に水漏れが見つかり、約1時間半後に原子炉への注水を停止した。
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【震災】原発>強弁と楽観で作りあげた「原発安価神話」のウソ

2011年06月28日 | 震災・原発事故
 原子力の発電コストは、3つの要素で成り立つ。
 (a)燃料費や人件費など電気を作る上でかかる「発電費用」。
 (b)発電に伴って出る使用済み燃料を再加工したり廃棄物を処理する費用(「バックエンド費用」)。
 (c)「立地費用」。
 驚くべきことに、国がいう原発の発電価格5円には、(a)と(b)の費用しか含めていない。しかも、不備がある。(a)から揚水発電のコストが外されている。そして、(b)が極めて過小評価されている。

(1)発電費用
 大島堅一・立命館大学国際関係学部教授は、電力各社の有価証券報告書をつぶさに検証し、本来要したはずの発電コストを試算した。
 原子力+揚水のコストは約9円(07年度)で、国の試算の約2倍だった。火力の約11円とほぼ同じだ。ちなみに、最も安いのは一般水力の約4円だ(国がいう12円は“ウソ”)。

(2)バックエンド費用
 国の試算は、(b)を極めて過小評価している。政府審議会に提出された政府資料(07年度)によると、約18.8兆円だ。これでも十分巨額だが、「東洋経済」誌が試算したところ、実にその4倍、70兆円規模に膨らむ可能性がある。政府と「東洋経済」誌の試算は、次の点で大きく異なる。
 (ア)使用済み燃料の再処理費用・・・・六ケ所村再処理工場の費用を政府は11兆円とはじいている。だが、43年までに発生すると見積もられている使用済み燃料約6.4万トンの半分しか処理する能力を持ち合わせていない。となると、コストは11兆円ではなく、その倍の22兆円(①)になるはずだ。
 しかも、リサイクル燃料(MOX燃料)を燃やして生じる使用済み燃料の処理費用が、政府試算からすっぽり抜け落ちている。ウラン燃料とMOX燃料をいっしょには再処理できない。MOX燃料の再処理には、六ケ所村再処理工場と同規模の工場を建てる必要があり、11兆円以上かかると推定される(②)。なお、再処理しないならしないで、MOX使用済み燃料の処分費用がいる。①+②=33兆円だ(③)。
 しかも、11兆円というのは、工場稼働率100%を前提としている(楽観的)。英仏の例を参考にして、多めに稼働率70%としても、③は47兆円に膨らむ(④)。

 (イ)高齢ベル放射性廃棄物・・・・政府は「固化体」1本のコストを3,530万円として、合計2兆円余りと試算している(極めて甘い)。
 大島教授が電気事業連合会の資料から検証したところ、当座の管理(中間貯蔵)の費用は1本あたり1億2,300万円程度に達する。政府試算の3.5倍だ。
 最終処分(地下300mより深い地層)においては、中間貯蔵と同じか、それ以上の費用を要するだろう。【大島教授】
 よって、全量再処理ベースで試算すると、(2.55兆円×2)×3.5≒17.8兆円となる(⑤)。政府試算の7倍だ。
 (b)は合計(④+⑤)は約74兆円だ(政府の試算は余りにも楽観的)。 

(3)立地費用
 原発を受け入れた地元自治体には多額の交付金や補助金が流れる。これも発電コストだ。
 大島教授の試算によると、1kW/時あたりの開発単価と立地単価の合計は、揚水を含む原子力が2.1円、火力と水力が各0.1円(70~07年度)だった。これを足した総コストは、揚水を含む原子力が12.23円、火力9.9円、水力3.98円となる。原発は、最も割高な発電だった。 

(4)その他
 使用済み燃料を再処理して得られるMOX燃料は9,000億円分に相当する。そのために、再処理に11兆円、MOX燃料加工に1.9兆円。カネをドブに捨てているようなものだ。
 事故処理、賠償、廃炉に関する費用は、ここでは取りあげていない。これらを追加すれば、原発の経済合理性を斟酌する余地は、もはや何処にもない。
 ちなみに、東京電力は70年から37年間に原子力事業から得た利益約4兆円を3・11に一瞬に失った。東電にとっても原発はペイしない事業となった。

 以上、記事「強弁と楽観で作りあげた『原発安価神話』のウソ」(「東洋経済」11年6月11日号)に拠る。
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【震災】消費税臨時増税は不公平で経済を攪乱 ~復興経費と社会保障経費の財源~

2011年06月27日 | ●野口悠紀雄
(1)復興経費と社会保障経費の違い
 (a)復興経費と(b)社会保障経費は、次の2点で対照的な性格をもつ。
 第一、(a)は1回限りの(一定期間に限定された)経費だ。他方、(b)は、永続的な性格をもつ。
 第二、(a)は他の経費と切り離し独立して考えることができる。他方、(b)は他の経費と密接に関係し、財政全体の中でとらえる必要がある。
 このような性格の違いに応じて、適切な財源を選択する必要がある。
 (a)を賄う財源は、臨時的・一時的なものが望ましい。区分経理が可能なため、目的税的性格を付与しやすい。
 (b)を賄う経費は、恒常的なものでなければならない。区分経理が不可能なため、目的税になじまない。

 (甲)「復興構想会議」の第一次提言の骨子案、(乙)「税と社会保障の一体改革の集中検討会議」の改革原案、(丙)その他のさまざまな議論・・・・の多くは、対象経費の経済的・会計的な性格を十分に考慮していない。その結果、不適切な財源を提案している。
 ここでは、消費税などの基幹税の一時的増税によって(a)を賄おうとすると、大きな問題が発生することを指摘する。

(2)消費税
 消費税を一時的に増税すると、増税期間中に不当に重い負担が発生する場合がある。これは、経済活動に大きな歪みと混乱をもたらす。
 この問題は、特に住宅について顕著に発生する。自動車、高額の家具や家電製品などの耐久消費財についても発生する。エコカー購入支援とエコポイントによって自動車と家電の購入が急増したが、それとまったく逆の現象が起こる。
 この問題に対処するには、増税期間終了後に消費税の一部を還付する必要があるが、その手続きは煩瑣なものになるだろう。
 (1)-(甲)の、(1)-(a)の財源として消費税を一時的に増税する案は、消費税のこうした側面をまったく無視した「暴論」だ。なお、消費税は課税地点を限定化することも技術的に困難なので、被災地にも一律に課税しなければならない、という問題もある。
 この点、(1)-(乙)の改革原案も同じ誤りを犯している。消費税率を段階的に5%→10%→15%に引き上げるというが、臨時増税の場合と類似の問題が発生する。そもそも、社会保障のための財源手当が必要であるのに、なぜ一挙に引き上げないのか。段階的引き上げには、経済的に合理的な理由がない。

(3)所得税・法人税
 (2)と類似の問題がある。
 <例1>譲渡益課税・・・・資産保有期間中に蓄積されてきた資産価値の増加を売却時にまとめて課税するものだ。だから、たまたま臨時増税時に売却益が実現すつと、不当に高い負担が生じる。これを避けるため、人々は増税期間中は資産売却を控えるだろう。
 <例2>退職金課税・・・・たまたま臨時増税期間中に所得が実現すると、不当に重く課税される。
 <例1>も<例2>も、課税の標準化措置がとられるため通常の所得より軽課されるが、所得が実現した年に課税される点に変わりはない。
 所得税・法人税の一時増税は、回避することは不可能ではない。特に法人利益については、発生時点をさまざまな方法でずらすことができる。こうした対策は一部の納税者しか利用できない、という点で不公平なものだ。
 時限減税は、通常の減税より大きな経済的効果をもつ。<例3>投資促進のための税額控除・・・・時限的な政策の場合のほうが効果が大きい。時限増税は、これとちょうど反対のことをもたらす。
 もともと所得税・法人税・消費税などの基幹税は、時間的に大きく変動しない安定的な課税が予定されている。平均課税などの課税平準化が取られているのも、そのためだ。臨時的な負担増を求めるのは、基幹税のこうした基本的性格に反する。

(4)復興税の財源として選択すべきもの
 (2)や(3)の問題を惹起しないものを選択すべきだ。
 <例>電気料金に対する課税・・・・電気は蓄積できないので、住宅や耐久消費財の場合のような消費と課税時点の食い違いは生じない。また、電力消費を抑制する効果もある。さらに、使途を再生可能エネルギー開発への補助や原発事故関連支出などに限定することで社会的な賛同を得やすいだろう。こうした区分経理は技術的に可能だ。
 (1)-(a)の財源として、いま一つ重要なものは、資産の取り崩し、とりわけ対外資産の取り崩しだ。

【参考】野口悠紀雄「消費税の臨時増税は不公平で経済を攪乱 ~「超」整理日記No.567~」(「週刊ダイヤモンド」2011年7月2日号)
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【震災】原発>内部被曝の隠蔽 ~国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線管理基準~

2011年06月27日 | 震災・原発事故
 内部被曝は、外部被曝に比べて人体に大きな影響を与える。<例>1千万分の1グラムの放射性ヨウ素131が体内に8日間とどまった場合、1シーベルトほどの被曝線量となる。
 
 米国は、占領下日本で原爆情報を徹底的に秘匿した。原爆傷害調査委員会(ABCC、後の放射線影響研究所)が治療を一切しない非人道的な調査を進め、放射性降下物を無視した偽りの報告を行った。未熟な技術で破局を防げない商業原子炉を「平和利用」の名目で押しつけるため、内部被曝を見えないものにする必要があったのだ。原爆は破壊力がすごいが、放射線で人を後々まで苦しめることはない、という核兵器の虚像を仕立て上げる意図もあった。

 原爆による内部被曝隠しは、日本政府も協力した。「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」が57年に施行され、被爆者認定基準ができた。基準では、被曝を初期放射線だけに限定し、被曝範囲を爆心地から2km以内とし、放射性降下物による内部被曝が一切無視された。米国の核戦略を日本の法律に具現化したのだ。

 放射線影響研究所などが86年に定めた放射線量評価体系「DS86」も、この枠組みを擁護する。ヒロシマでは原爆投下の42日後、枕崎台風によって地表の放射性物質はほぼ洗い流された。そこにわずかに残った放射性降下物を測定し、「もともと、これしかなかった」という作り話のうえに評価基準を決めたのがDS86だ。

 内部被曝隠しは、米国主導で進められた国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線管理基準にも反映された。ICRPの基準から内部被曝が除外されたことは、米国の核戦略の世界支配が科学の分野も包みこんだことを示す。

 内部被曝では、体内に入った放射性の誇りの周囲で集中的に分子が切断される。ICRPでは、被曝の具体性を捨てて単純化し、臓器全体に分子切断を平均化するモデルに置き換える。これで内部被曝が見えなくさせられる。
 ICRPの基準に疑問を持たない科学者たちは、内部被曝の科学的な研究ができない。ICRPが世界中に振りまいている最大の害悪だ。

 欧州放射線リスク委員会(ECRR)は、ICRPの評価基準を見直し、別の基準を打ち出した。ECRRは、第二次世界大戦後、世界で6,500万人超の人が放射線被曝によって命を奪われた、と試算する。ICRPの基準による試算では117万人だ。両者の数値の違いは、内部被曝を考慮するか否かの違いだ。
 ICRP信奉者は、ECRRのデータを無視する。科学的な議論ができず、政治に何時でも応じてしまう。

 以上、語り手:矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授/聞き手:堀井正明(本誌)「ヒロシマ・ナガサキ 隠された『内部被曝』」(「週刊朝日」2011年7月1日号)に拠る。
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【震災】原発>電気料金は値下げできる ~高コストの原発~

2011年06月26日 | 震災・原発事故
(1)高コストの原発
 「総括原価方式」のため、巨額の建設費と出費を要する原発をつくればつくるほど電力業界は高い電気料金を徴収できる。一般企業はコスト削減に必死なのに、電力業界はむしろ無駄な出費を増加させることで莫大な利益をあげている(諸悪の根源)。
 政府試算(04年公表)によれば、1kW/時あたりの発電価格は次のとおり。
  ・液化天然ガス・・・・6.2円
  ・石炭火力・・・・5.7円
  ・石油火力・・・・10.7円
  ・一般水力・・・・11.9円
  ・原発・・・・5.3円
 しかし、上記の数値には、巨額の研究開発費や立地対策費が含まれていない。特に、夜間の原発余剰電力を利用するために建設されてきた巨大な揚水発電ダムの莫大な費用を算入すると、原発が最も高くなる。ちなみに、上記の数値は原発と火力では稼働率を80%と仮定しているが、原発の稼働率はせいぜい60%(火力は30%)だ。
 政府の一般会計のエネルギー対策費と特別会計(電源開発促進対策特別会計=電源三法交付金)の財政支出を加えた全体の発電コスト(70~07年度平均)は、次のとおり。
  ・一般水力・・・・3.98円
  ・火力・・・・9.9円
  ・原子力・・・・10.68円(原子力+揚水発電・・・・12.23円)
 今の高い電気料金には、これらのコストが反映しているのだ。

(2)放射性廃棄物の処理
 (1)に加えて、放射性廃棄物の処理に巨大なコストがかかる。六ケ所村再処理工場を40年間動かすと、建設・操業・廃止を含めた再処理費用に11兆円、放射性廃棄物の処理・貯蔵・処分、MOX燃料の加工など関連する他の費用を合わせて18兆8,800億円に達する。【04年の政府総合資源エネルギー調査会の報告】
 実際には、その4倍の74兆円に膨らむ可能性がある。
 原発に使ってきた無駄で巨大な出費をなくせば、電気料金は下がる。事実、自家発電の特定規模電気事業者(PPS)の電気料金は、電力会社のそれよりも2割前後安い。

(3)自家発電
 原発はほぼ5,000万kWだが、今夏のピーク時には福島第一廃炉が決まり、福島第二、女川、東海第二が全滅し、浜岡が停止、柏崎刈羽が3基再起不能で停止、さらに全土で定期検査中の原発が運転再開不能のため、事実上1,300万kWしか稼働しない。
 原発より産業界の保有する自家発電6,037万kW弱(10年9月末現在)のほうが、はるかにバックアップとしての発電能力を持っている。
 自家発電をフルに活用すれば、現在のライフスタイルを変えず、節電せず、工場ラインを止めなくても電気を賄える。
 「週刊朝日」誌の取材に対し、全国の電力会社は他社受電の発電能力を秘匿した。なぜ電力会社は隠そうとするのか。それは、電力を民間企業から安く買って高く売り、暴利をむさぼっているからだ。この暴利の構造を知られると、産業界からも一般消費者からも、送電線を自家発電の民間企業に開放せよ、という世論が生まれる。誰もが送電線を自由に使えるようになると、地域を独占してきた電力会社の収益源の牙城が崩れる。9つの電力会社にとって、東電が福島原発事故を起こした今となっては、原発の確保より送電線の確保のほうが独占企業としての存立を脅かすもっと重大な生命線だ。そのため、自家発電を買い取らずに、15%の節電という行動に出たのだ。

 以上、広瀬隆「原発は低コストのウソ」(「週刊朝日」2011年7月1日号)に拠る。

 古賀茂明・経済産業省大臣官房付の議論は、東電リストラ策の徹底だ(「【震災】東電の電気料金は半額にできる ~左団扇の東電~」)。
 他方、広瀬の議論は、原発を廃止すれば電気料金は値下げできる、という議論だ。ただし、その議論(殊に(1)と(2))は、専ら「東洋経済」11年6月11日号の記事「強弁と楽観で作りあげた『原発安価神話』のウソ」の焼直しだ【注】。ただし、この記事を元にしていることは明記しているし、データは調べ直している。

 【注】例えば「東洋経済」誌のくだんの記事はいう。・・・・原子力の発電コストは、3つの要素で成り立つ。(a)燃料費や人件費など電気を作る上でかかる「発電費用」。(b)発電に伴って出る使用済み燃料を再加工したり廃棄物を処理する費用(「バックエンド費用」)。(c)「立地費用」。・・・・驚くべきことに、原発の発電価格5円には、(a)と(b)の費用しか含めていない。しかも、不備がある。(a)から揚水発電のコストが外されている。そして、(b)が極めて過小評価されている。18.8兆円でも十分巨額だが、実際にはその4倍、70兆円規模に膨らむ可能性がある、云々。
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【震災】東電解体案(古賀ペーパー)の古賀茂明氏にクビの宣告

2011年06月26日 | 震災・原発事故
 公務員制度改革を不十分だと批判し、大臣官房付という閑職に置かれたキャリア官僚・古賀茂明氏(55歳)【注1】に対し、松永和夫・経済産業省事務次官【注2】が6月24日ごろ古賀氏を呼び、正式に退職を求めた。退職を求める理由や再就職先は示されなかった。
 同省は10年7月、非公式に退職を求めたが、これを問題視した野党が国会で批判。うやむやになっていた。

 【注1】公務員制度改革批判は、『日本中枢の崩壊』(講談社、2011)で詳細に展開されている。なお、東電救済スキーム批判については、「【震災】東電の電気料金は半額にできる ~左団扇の東電~」、「【震災】原発>握りつぶされた「東電解体案」 ~東電の政治力~」参照。
 【注2】3月下旬、東電のメーンバンク三井住友の頭取にして全国銀行協会会長(当時)の奥正之頭取と秘かに話し合い、三井住友以下9行が東京電力に緊急融資した約2兆円の保証を与えた、あの松永次官だ(「【震災】原発>経済産業省の「電力閥」」)。

 以上、記事「政権批判のキャリア官僚に退職求める 経産事務次官」(2011年6月26日7時27分 asahi.com)による。
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【震災】震災復興と原発事故賠償の費用 ~60兆円以上~

2011年06月25日 | 震災・原発事故
 次の(1)~(5)まで合計すると60兆円を超える。(6)の費用も加算すると、60兆円よりもっとかかる。

(1)復興費用 35兆円
 東日本大震災の被害総額は、16~25兆円(政府試算)。復興費用は、北海道南西沖地震における奥尻島の場合、被害総額の1.4倍弱だった。25兆円に奥尻方式を適用すると35兆円になる。

(2)弔慰金と障害見舞金 1,000億円
 死者・行方不明者は合計23,000人。「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づく死者、行方不明者(3ヵ月以上)に対する弔慰金は、生計維持者は500万円、それ以外の家族は250万円だ。仮に4分の1が生計維持者とし、残りをそれ以外の家族とすれば720億円になる。震災で障害を負った人にも災害障害見舞金が弔慰金の半額を支給されるから、併せて1,000億円だ。

(3)生活再建のための支援金 4,800億円
 「被災者生活再建支援法」に基づき、損害の程度や再建方法に応じて最大300万円が支給される。警視庁まとめの全壊・半壊の数値【注1】をこれにあてはめると、4,800億円となる。

(4)原発から20km圏内の土地買い上げと住民への補償 20.3兆円
 5月31日に開催された原子力委員会では、岩田一政・日本経済研究センター理事長が、原発から半径20km圏内を政府が買い上げる、という案を提示した。この案が採用された場合、南相馬市、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町の土地を日本経済研究センターの試算同様に4.3兆円で買い上げ、さらに6市町内の総生産8,000億円を20年間にわたって補償すると、20.3兆円となる【注2】。

(5)廃炉費用 5兆円
 「日本経済研究センター」の試算では、最低で7,400億~15兆円と試算している。東電は2年で1兆円と見込んでいる、とされる。廃炉に10年かかるならば、5兆円だ。

(6)その他
 (a)雇用・生活支援
 震災の影響による倒産は、6月7日現在、154社。被災地企業にはさまざまな特例措置があるので、実態としてすでに経営破綻している企業を加えれば、もっと多い。また、被災地以外の地域でも倒産する企業が増えている。通常は倒産は再生を前提としたものが多いが、震災の影響で倒産した企業の9割以上は清算型の倒産であり、雇用への影響は大きい。
 失職しなくとも、節電による輪番休業や営業時間の短縮は、3人に1人とされる非正規雇用者の収入減に直結する。 失職しなくとも、節電による輪番休業や営業時間の短縮は、3人に1人とされる非正規雇用者の収入減に直結する。これらの者(直接の被災者ではない)のうち、国の援助を求めざるを得なくなる人も増加する【注3】。

 (b)アレバ社
 放射能汚染水の処理に当たっているアレバ社へ支払う費用は、衆議院決算委員会で、汚染水1トンに付き2億円、合計20万トンで40兆円という数値が取りあげられた。ただし、アレバや東電は、この数値を否定している。

 (c)健康診断
 今後30年という長いスパンで見なくてはならない【注4】。JCO臨界事故の際のように無料で健康診断を行う場合、福島県民205万人が通常5,775円かかる健康診断を毎年受診すれば年間118億円要する。若年層には、被曝との因果関係が明らかな甲状腺ガンのエコー診断(3,000~5,700円)も必要だ。

 【注1】この記事は具体的な数字を示していないが、少なくとも全壊102,923棟、半壊58,817棟、一部破損304,326棟はある(防災科学技術研究所)。
 【注2】この記事によれば、民間シンクタンク「日本経済研究センター」は、今後10年間で半径20km圏内の土地買い上げに4.3兆円、避難を余儀なくされる住民の所得補償に6,300億円、廃炉費用を含めると原発処理と賠償金だけで最大20兆円かかる、と試算している。
 【注3】全国の生活保護受給者は今年3月時点で202万人余となった。200万人を超えたのは、終戦直後の1952年度(月平均約204万人)以来約半世紀ぶりだ。大震災の前から保護率が上昇しつつあったが、大震災によって拍車がかかった。
 【注4】しかも、健康診断を必要とする人は、福島県民に限らないことが明らかになってきた。

 以上、記事「震災復興と原発賠償で60兆円 この国にカネはあるのか」(「週刊現代」2011年7月2日号)に拠る。
 いささか怪しげな試算で、殊に(4)は、「日本経済研究センター」が住民の所得補償に6,300億円と試算しているところを、敢えて6市町内の総生産8,000億円を20年間にわたって補償する、と仮定した理由が分からない。しかし、国の負担、つまり国民が負担することになる全貌の把握は必要で、この記事は(週刊誌の中では)その嚆矢となる栄誉を担っている。
 なお、東電は、精神的損害に対する賠償を880億円と試算している(2011年6月23日4時13分 NHKオンライン)。
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【震災】原発>高濃度放射性廃棄物は最終的にどこで保存するのか? ~汚染スパイラル~

2011年06月24日 | 震災・原発事故
(1)福島第一原発の高レベル放射能汚染水
 福島第一原発で始まった高レベル放射能汚染水の処理開始と前後して、新たな課題が浮上している。
 高濃度放射性廃棄物を最終的にどこに保存するのか?
 新設の浄化処理施設で触媒として使われる塩化鉄やゼオライト(多孔質鉱物)は、放射能汚染水を純度の高い水へ浄化する代わりに、それ自体が「死の泥」になってしまう。

 タービン建屋などにたまった汚染水には、3月の原発事故で大気中に放出された全体量に匹敵する量の放射性物質が溶けこんでいる、と目される。この汚染水から油分を分離した後、セシウム吸着装置、除染装置を使って二重に放射性物質を除去し、最後に除塩する。その結果生じる汚泥は、年末までに2,000立方メートルに及ぶ。
 汚泥は、1立方センチあたり1億ベクレルの高レベル放射性物質だ。セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどを含む、と見られる。
 汚泥は、六ケ所村の再処理工場で出てくる廃液をガラス固化したものに相当する高レベルの放射性廃棄物になる。そのレベルになると、公式には300mより深い地層に廃棄することになっている。【榎田洋一・名古屋大学大学院教授】
 掘削場所を提供する自治体を見つけるのは大ごとだ。だから、東電も政府も、汚泥の最終的な落ち着き場所を明らかにしていない。
 汚染水を処理しても放射性物質はなくならない。アンタチャブルな物質が増えるだけだ。汚染のスパイラルが始まっている。

(2)汚泥処理施設の焼却灰
 下水に集まった放射性物質が、汚泥処理の工程で再び大気中に放出され、二次汚染を起こしている可能性がある。【山内知也・神戸大学教授】
 この警鐘は、東京都の汚泥処理施設「東部スラッジプラント」周辺で高い放射線量が検出されたことなどによって傍証される。
 4年前に始まった汚泥の海洋投棄全面禁止が、問題を複雑する。汚泥は、プラントに運ばれて全量が焼却されるようになり、焼却灰はセメント原料や肥料としてリサイクルする仕組みができあがっていた。ところが、二次被曝をおそれて引き取りを拒否された焼却灰が行き場をなくし、処理場の保管庫を埋め尽くす事態を引き起こした。
 下水道法も水質汚濁防止法も、放射能汚染を想定していない。縦割り行政(下水道は国交省、埋め立ては環境省、処理場労働者の安全は厚労省)の弊害もあいまって、効果的な施策は打ち出されていない。
 6月16日、ようやく汚泥処理法に係る新基準が示された。しかし、焼却の際に再び大気に放出されている可能性、すでにセメント原料などとして出荷されてしまったものがある可能性、が問題として残る。

 80年代、台湾は台北市で、放射性物質コバルト60に汚染された鉄筋を使用した建築物が約180棟完成し、15,000人以上が影響を受けた、とされる。10年以上経過後、検査を受けた住民73人の2割に白血球の染色体異常が見られた。

(3)除染
 被曝で恐ろしいのは、地面からの放射線だ。
 子どものためにも、一日も早く校庭の表面を削ったほうがよい。セシウムは、雨が降るたびに深く浸透する。今なら低コストで可能な地表の土の削剥も、半年後、1年後になると莫大な費用がかかる。農耕地の除染はかなり難しい。菜の花、ひまわり、エリンギの有効性は、多少はある、という程度だ【榎田教授】

 放射性物質をどう取り除くか。
 ゼオライトは、珪素とアルミニウムが酸素で結合した多孔質構造の鉱物だ。山肌から採れる天然モノと人工モノがある。
 人工ゼオライトは、石炭灰や製紙汚泥などを主原料に、アルカリで処理することで合成する。磁石のように周りのものを引き寄せるから、汚染水処理にはうってつけだ。汚染水処理のみならず、放射能に汚染された瓦礫の撤去、塩害の土壌改良にも役立てられる。【逸見彰男・愛媛大学教授(人工ゼオライトの開発者)】
 人工ゼオライトをつくる最大のプラントは、石炭火力としては世界最大級の中部電力碧南火力発電所だ。同社は、原発事故後、東電に10トンの人工ゼオライトを提供した。火力発電所は、脱硫、脱硝の技術はほぼ完成し、二酸化炭素の処理技術も完成間近とされる。
 しかし、こうした環境技術の力強い支援があっても、最終処理場の問題は依然として残る。

 以上、藤生明(編集部)「汚染スパイラルは止まらない」(「AERA」2011年6月27日号)に拠る。
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【震災】原発>「菅降ろし」と東電マネー

2011年06月23日 | 震災・原発事故
 東電は、自民党の政治家に対する面倒見が実にいい。かつてのゼネコンのような特定の政治家にピンポイントで派手に献金、というのはないが、幅広い付き合いをしている。故・市川房枝が参議院議員に当選した直後、74年、経団連に対して自民党への政治献金の斡旋をやめるよう求めた。それを受けて、東電は同年以来、政治資金の提供をやめている。だから、自民党の政治資金団体である国民政治協会には、法人としての東電からの献金はない。しかし、勝俣恒久会長の30万円を筆頭に、幹部の個人献金として資金提供が行われている。役職ごとに献金額が決まっていて、約60人が652万円を献金している。
 他方、民主党には、東電の労働組合がつくる政治団体が65万人余から平均400円ずつ集めた会費収入を原資に、上部団体の電力総連政治活動委員会に資金を拠出している。同委員会には、東電労組出身の小林正夫参議院議員に3,000万円を寄付するなど、民主党の政治家に資金を提供している。電力総連は、民主党の最大の市議基盤である連合の有力産別組織だ。
 東電は、表向き企業献金はしていないことになっているものの、パーティー券購入の形で資金提供している。政治資金集めのパーティー券の購入に20万円超を払ったものは、その名前などを開示しなければならない(政治資金規正法第12条)。そこで、20万円以下の何社かに分けて、しかし実際は東電がまとめて支払う。
 そんな東電にカネの無心に来ない政治家が2人いた。
 一人は、小泉純一郎元首相だ【注】。
 もう一人は、菅直人首相だ。

 【注】ただし、次のような事実がある。小泉退任後の07年、国際公共政策研究センターというシンクタンクができた。小泉が顧問に就いた。このシンクタンクは多くの大企業からの寄付金で設立され、東電はトップランクの1億円を寄付するとともにスタッフを派遣した(「【震災】東電の電気料金は半額にできる ~左団扇の東電~」)。

 以上、大鹿靖明(編集部)「菅降ろしと東電マネー」(「AERA」2011年6月20日号)に拠る。

   *

(1)菅首相の「居座り」で政策論争が起こった
 岡田克也幹事長ら民主党幹部に対して、菅首相は、(a)今年度第2次補正予算と(b)特例公債法の成立に加えて、(c)自然エネルギーの普及を図る全量固定価格買い取り制度の関連法案の成立を退任の条件とした。与野党の電力業界に近い議員の反対が強いこの法案成立まで続投することに菅首相がこだわれば、退任時期が大幅に遅れる可能性がある。
 国政が停滞する懸念が強まっているが、菅首相が次々と政策課題を打ち出すことは悪いことばかりではない。政治の焦点が「ポスト菅」「大連立」という政局から、どの法案成立を菅首相の花道とするか、という政策論争に移ってきたからだ。
 政治はこれまで政局に集中し、復興後の国家像をしっかり議論していなかった。

(2)与野党ともに「菅降ろし」後の構想なし
 特に野党側は問題だ。谷垣禎一・自民党総裁は、菅首相の退陣表明後、不信任決議案提出直前の発言をコロッと翻した。「政策の合意が難しい」と。政策合意の困難さは、最初から明らかだった。谷垣は、「菅降ろし」後のことを何も考えていなかった。
 谷垣ら自民党のベテランは、政治生命が残り少なくなったことで焦り、一日も早く政権に復帰したいから、民主党政権に難癖をつけてきただけだ。自民党は、首相の座を奪い返すまで、民主党政権に協力する気など全くないのだ。
 しかし、民主党側は自民党ベテランの本音に鈍感だ。若手・中堅は世代交代を進めようとしているが、「ポスト菅」候補は皆、軽量な政治家ばかりだ。軽量首相では自民党に舐められるだろう。延々と難癖を付けられるだろう。
 「大連立」を巡る政局は、本来民主党にとって、強硬な姿勢を崩さない公明党を取りこむ絶好の機会のはずだ。自民党との大連立を交渉しながら、公明党にも妥協を迫り、最終的に自民党を振って公明党と連立を組み、衆参の安定多数を確保するのはさほど難しくないはずだ。
 それなのに、本来難しい立場のはずの自民党、公明党を悠々と構えさせてしまった。民主党も、「菅降ろし」後の戦略を持っていないから、政局への対応が後手に回るのだ。

(3)「怒り狂う側」のほうが、実は都合が悪いことがあるものだ
  「菅降ろし」の過程では、鳩山前首相の菅首相に対する人格攻撃、誹謗中傷の類が目立った。「菅降ろし」は、戦略の欠如のみならず感情論に凝り固まったものだ。
 政治の世界では、「怒り狂っている」側が、なにか都合の悪いことがあるものだ。例えば、昨年の「尖閣問題」では、一方的に怒り狂った中国は、実は国内の反日運動に苦しんでいたことが後に明らかになった。
 菅首相は、冷静に政権延命の手を打ってきた。一方、野党や反菅勢力の異常な怒りは、菅政権が存続すると何か都合の悪いことがあるのでは、と思わせる。
 (a)「親・財務省、増税路線」に対する反発。反発するのは、小沢グループや与野党の「旧政策新人類」議員だ。
 (b)「脱原発路線」に対する反発。反発するのは、長期政権時代に原子力政策を推進し、東電と深い関係を築いた自民党議員だけでなく、電力総連を支持基盤の一つとし、東電と深いつながりがある民主党議員だ。実際、菅首相が浜岡原発の運転停止を要請し、これまでのエネルギー計画の白紙を表明した頃から「菅降ろし」は激しさを増した。
 (c)「親米路線」に対する反発。反発するのは、「菅降ろし」に動いた小沢、鳩山、谷垣ら「親中・親露」の政治家だ。

 以上、上久保誠人「菅首相「居座り」の意外な効果!? 与野党は今こそ“政局より政策”へ ~上久保誠人のクリティカル・アナリティクス 【第12回】 2011年6月22日」(DIAMOND online)に拠る。
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【震災】原発>事故後に浪江町で生まれた奇形のウサギ

2011年06月22日 | 震災・原発事故
 「オートキャンプ場ゆうの里&ファーム風の丘」は、福島第一原発から30.5kmに位置する。
 経営者は、杉本祐子氏、56歳。
 杉本氏は、20年ほど前、東京から浪江町に移り住んだ。離婚した前夫が買い求めた東京ドームほどの広さの原野を、コツコツと手作業で美しい農園に変えた。ウサギ20数匹のほか、ガチョウ、イヌ、ニワトリ、カモが暮らす。
 人気グループTOKIOが農村生活を体験するテレビ番組の舞台となった「DASH村」も近い。メンバーの長瀬智也が訊ねてきたこともある。

 この農園の美しい自然や動物たちには、アルコール依存症患者をサポートするNPO法人が着目。4月から、リハビリテーション施設としても利用されることが決まっていた。自然とのふれあいがアルコール依存症者の治療に有効であることは、海外では通念となっている。
 が、3月11日がすべてを変えた。

 4月に計画的避難区域に指定されてからは、付近に空き家が増えた。
 しかし、動物たちを置いては逃げられない。「人体実験になっても構わない」と覚悟を決めた。
 ただ、客足は途絶え、現金収入がゼロになった。「事実上、廃業です」

 山下努(「AERA」編集部)は、5月末、農園を訪れた。
 この季節、原発付近から農園に向かって風が吹き寄せる。毎時1μSvを超えたら警報音が鳴るように設定した線量計がひっきりなしに鳴り続けた。設定を毎時1.5μSvに緩めても、繰り返し音を立てた。

 地震後、ウサギは3度出産した。母ウサギは、出産した穴から子どもを引きずり出してきちんと育てることができなかった。原発事故後に妊娠したと目される母ウサギから最後に生まれた4匹だけが、6月に入っても生き続けている。そして、4匹のうち、1匹に耳がなかった。
 5月、YouTubeに2分余の短い動画が投稿された。再生回数は瞬く間に増えていき、6月に入って、200万回を超えている。
 
 ウサギは奇形が出やすい。放射能の影響で奇形が起きることは否定できない。耳がないウサギが生まれたこと、そこが放射能に汚染された土地であること。この2つは、いずれも事実だ。【太田光明・麻布大学教授】

 杉本氏は、農園を土壌から放射性セシウムを除去する土壌改良剤の実験場として提供することに決めた。
 実験は、7月にも始まる予定だ。

 以上、山下努(編集部)「世界中が見た2分の動画 『200万回再生』の現場」(「AERA」2011年6月27日号)に拠る。
 ウサギは、小屋の中にある巣穴で出産するため、耳なしウサギがいつ出生したかは正確にはわからないが、4月末ごろに出生した、と杉本氏は推定している。氏は、原発問題を世に問う意図はなかった、という。しかし、反響は大きく、閲覧者のコメントの中には、誹謗中傷のみならず脅迫めいた書き込みもあった。氏はいう。「だれかがあの手、この手で映像を削除させようとしていた。体調が悪くなり、なかなか眠れない日もあった」(2011年5月29日 12:00 msn産経ニュース)。
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【震災】東北沿岸の化学汚染 ~カドミウム・ヒ素・シアン化合物・六値クロム・ダイオキシン~

2011年06月21日 | 震災・原発事故
 宮城県石巻市釜地区では、汚泥の中で1円玉と10円玉が一塊になって固まっている。1円玉も10円玉も、表面に白い物質が付着し、ボロボロになってお互いにくっついている。
 石巻市の沿岸部には、製紙会社や化学、製鉄、水産加工の工場が集まっていた。内陸には町工場もあった。工場の薬品倉庫は、津波で屋根と柱だけになって、中にあったはずの薬品は影も形もない。
 これら工場には、発ガン性物質のカドミウムやヒ素など、有害化学物質が製造に使われていた。致死量0.3グラムのシアン化合物は、小さな町のめっき工場でも使われている。いずれも法律で厳しい保管義務が課せられているが、津波被害で名自我どれだけ流出したか、住民に広報できている企業はまだ少ない。
 被災地の道路端のあちこちに、何らかの化学物質が入っていると目される袋や「危険物」の表示が貼ってあるドラム缶が転がっている。農薬系と推定される硫化水素臭のするヘドロも数多くある。
 被災地の自治体は、十分に対応できていない。被災による人手不足に加えて、専門家も分析装置も足りないからだ。
 サンプルをとる人手はない。津波の汚泥を調査したことはない。どこが怪しいのか、見分けることも調査の方法も分からない。【気仙沼市の担当者】
 多くの薬品は、目立つ色や形状はない。分析装置を使わなければ分からない。分析措置は、物質の種類や分析方法によって違う。微量でも危険なものが多く、測る場所を誤ると見つけ損なう。
 宮城県内の大半の検査機関は震災で分析装置が壊れ、分析は県外の機関に委ねるしかない。【宮城県の担当者】
 比較的対応が進んでいる仙台市では、まだ基準以上の有害物質は見つかっていない。
 それは、昔から沿岸部に工場が少なかったからだ。【早坂昇・環境対策課長】
 肝心の国の調査は、環境省がやっと6月末までに有害物質による環境汚染の実態調査を終える予定だ。

 廃棄物資源循環学会は、震災から7日後にはタスクチームを組んで現地調査を始めた。しかし、結果はまだまとまっていない。
 有機塩素系の値が高いところがみつかっている。これは規制される前に使われていた有害な農薬が海に流れこんで海底に蓄積していたものが、津波で運びこまれたものらしい。今回の被災地のがれきは、阪神・淡路のがれきとはまったく違う。がれきに付着した汚泥を調べてからでないと、適切な処理はできない。【吉岡敏明・東北大学大学院教授】
 情報が不足するなかで、NPO法人「Tウオッチ(有害化学物質削減ネットワーク)」は、被災地にあった工場がそれぞれどんな有害化学物質を扱っていたか、一覧表をホームページで公開している。
 各工場が保管していた量までは分からないが、津波の被害で、工場から有害物質が広く拡散した可能性がある。二次災害を防ぐためにも、環境汚染の危険性を認識してほしい。【寺田良一・明治大学教授/Tウオッチ理事】
 同ホームページによれば、岩手、宮城、福島の各県の被災地には、カドミウムや六値クロムを扱い、ダイオキシンを排出した工場や廃液処理場などがそれぞれ33~43ヵ所ある。
 顔料や電池の製造に使われるカドミウムには、腎臓障害を引き起こしたり、発ガン性がある。
 クロムめっきに使われる六値クロムには、急性皮膚炎を引き起こしたり、発ガン性がある。
 さまざまな薬品の製造過程で発生するダイオキシンは、奇形や生殖異常を引き起したり、発ガン性がある。
 企業は、工場から流れ出した有害物質を公表すべきだ。住宅地などに流出したPCBやダイオキシンによる土壌汚染は、万全の対策が必要だ。津波が引くとき、有害物質が海に引きこまれた可能性があり、懸念される。【中地重晴・熊本学園大学教授/Tウオッチ代表】
 化学物質が流出したのは、工場だけではない。汚水を沈殿濾過する下水工場からも流れ出した。下水工場には、ふだんから雑菌を含む汚泥が堆積している。そんな汚泥が市街地に流出すれば、破傷風などの感染症が広がる恐れがある。

 気仙沼市など、三陸沿岸では、津波で打ち上げられた船舶が新たな脅威となりうる。最近の大型船には、船体にカーボン素材を使っているものがある。これが壊れたり、撤去のため解体するときに特殊な炭素繊維が飛散して、アスベストのように肺に入りこんで突き刺さり、肺ガンなどを誘発する危険性もありうる。
 避難所の高齢者などに流行している呼吸器疾患に、汚泥が乾いて空中に浮遊した有害物質が関与しているのではないか、という疑いも出ている。浮遊する微粒子による呼吸器疾患や微粒子に細菌が付着して肺炎を起こす可能性もある。
 気仙沼市で起きた住宅街の大規模火災で、住宅や工場、倉庫群にあった物質が燃えて、ダイオキシンが大量発生した可能性がある。
 大火災の残渣にどんな物質が含まれるか、調査が必要だ。【瀧上英上・独立行政法人国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センター室長】
 農薬の中には、毒性の強いものがある。これが住宅街に流出する危険性もある。
 毒性の強い農薬やシロアリ駆除剤などが心配だ。その上、被災地に散布する消毒剤、殺虫剤があり、特にクレゾールは発ガン性や急性中毒症を起こすおそれがある。【辻万千子・反農薬東京グループ代表】

 以上、井上雅義「これが化学汚染の実態だ ボロボロの硬貨 微量でも危険 飲むと激しい嘔吐 追いつかない検査体制」(「週刊朝日」2011年6月24日号)に拠る。
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【震災】原発>無防備都市--東京を覆う放射能

2011年06月20日 | 震災・原発事故
 共産党東京都議団は、5月6~25日、都内全域を1辺10kmの正方形に区切って、地上1mで計測した。高めの数値が多かった東部地域や豊州周辺地域は、さらに細かい5km四方に区切り、地表面や地上0.5mでも計測した。
 もっとも高かったのは、葛飾区にある水元公園入り口の草地表面で、0.618μSv/時。同公園では、他の地点でも高い数値が出ている。
 高線量域は、東部に集中している。足立区綾瀬6丁目の野球場センターそばの草地が0.257、江戸川区上篠崎4丁目の篠崎公園B地区入り口付近が0.254など。
 江東区と練馬区を結ぶ線から東側では、年間1mSvを超える可能性が高い。築地市場の移転が計画されている豊州でも0.181あった。
 ホットスポットには、放射性物質の雲「プルーム」が風に乗って移動し、まだらにたまる広範囲な「ビッグホットスポット」だけではなく、地表に落ちた放射性物質が雨や風、靴などに付着して二次的に集まる「ミニホットスポット」がある。江東区住吉2丁目の猿江公園が砂地では0.134であるのに対し、草地表面では0.233に上昇するのは、木の下や草むらはミニホットスポットになりやすいからだ。【武田邦夫・中部大学教授】
 放射性物質は、チリやほこりにも付着して移動する。ほこりや水がたまりやすい雨樋、側溝、玄関先に加え、エアコンのファンやフィルターも要注意だ。
 空中に舞い上がらないよう水拭きするとよい。栄養を十分にとって、ストレスを感じなければ、DNAの修復量も高まる。【武田教授】

 以上、記事「あなたの街の放射能汚染」(「週刊朝日」2011年6月24日号)に拠る。

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 日本共産党東京都議団が5月25日に公表した調査結果によれば、都の公表値以下の数値にとどまったのは、杉並区や大田区の一部、町田市などの僅かな地域のみ。都東部では、江戸川区で0.181μSv/時、江東区で0.186、足立区で0.257、葛飾区で0.391と軒並みに高い線量が検出された。
 年換算で3.5mSv/時は、自然界に含まれている線量を加算しても高すぎる数値だ。
 東京都東部に隣接する千葉県松戸市や柏市で行われた別の調査では、共産党都議団の調査に近い数値が出た、と聞く。葛飾区や足立区などのJR常磐線沿線がホットスポットになっているのかもしれない。【伴英幸・NPO法人「原子力資料情報室」共同代表】
 千葉県では、5月31日と6月1日、県内6市で独自に調査した。野田市などでは、地上1mで0.09~0.23(地上50cmで0.10~0.25)だったのに対し、柏市では地上1mで0.33~0.49(地上50cmで0.35~0.54)という結果が出ている。柏市や葛飾区を含む一帯がホットスポット化している疑いが強まる。
 .共産党都議団がデータをホームページで公開した翌日、すぐに10万件のアクセスがあった。
 都環境保健課でも遅まきながら対策を講じ始めている。6月15日から1週間程度調査を行う、と発表しているほか、同20日以降は都内の希望があった区市町村に対し、都が確保した70台の線量計を1~2台ずつ貸し出す、とも発表している。
 しかし、都の調査は透明性が担保されていない。6月10日、都の市区町村の担当者104人を都庁に集め、都環境保健課による説明会が開かれた。説明会における配付資料には、測定場所の「望ましい条件」として、「土が露出している(アスファルト、コンクリートなどの人工物で覆われていない裸地)」「草などが生い茂っていない」という2つの条件が付記されていた。アスファルトと草地は、共産党都議団の調査でも相対的に高い数値が検出される傾向のあった場所だ。そして、子どもたちの遊び場所になりやすい場所だ。これらを避けて測るのは、何のための調査なのか、わからない。
 「もし都が今後も継続的に測っていくなら、条件をそろえるために『土の上』に限定するのも理解できる。しかし今回のような場合、公園の芝生など住民が日常的に立ち入る場所のデータも必要ですし、計測自体はさほど時間がかかるものでもないのですからこちらも実施すべきです」【坂巻幸雄・日本環境学会幹事/元工業技術院地質調査所主任研究官】
 都は、現時点でこれ以外の調査を行う予定はない、という。

 以上、古川琢也「東京都でも年間1ミリシーベルト超か」(「週刊金曜日」2011年6月17日号)に拠る。

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 共産党都議団の調査精度を確認するために、「AERA」誌編集部は10地点で独自に測定した。結果は、ほぼ合致した。
 例えば、渋谷駅前では0.12μSv/時だった。以前、水道水から乳児の摂取基準値を超える湯訴を検出した葛飾区の金町浄水場の前は、4倍強の0.51を観測した。

 東京都内に関して、もう一つ興味深いデータがある。下水汚泥から検出された放射性物質だ。
 都内では23区に5ヵ所、多摩地区で7ヵ所、都が管理する下水の最終処理場がある。都は震災後、それぞれの施設で処理した脱水汚泥とその焼却灰に含まれるセシウムなどの濃度を測定している。汚泥から放射能が出るのは、下水が雨水も取り込んでいるからだ。
 各施設は、それぞれ下水の受け持ち地域が決まっている。よって、汚泥の放射線量の濃度は、処理場の受け持ち区域の放射線量の濃淡をある程度反映していることになる。
 「AERA」誌編集部は、下水処理施設/地域ごとに脱水汚泥からの放射線量濃度を整理した(「汚泥マップ」)。検出されている放射性物質3種類のうち、セシウム137で比べたところ、最も高い「葛西水再生センター」(江戸川区)は、やはり足立区や葛飾区、江戸川区から出る下水を受けもっている。次いで高い「みやぎ水再生センター」(足立区宮城)は足立区の一部から出る下水を、3番目に高い「東部スラッジプラント」(江東区新砂)は江戸川区や墨田区、台東区など、やはり東京都東部から東京湾にかけて出る下水汚泥を処理している。

 江東区の汚泥処理施設「東部スラッジプラント」は、東京湾に面する。汚泥の焼却灰から12,000Bqのセシウム137が検出されている。
 5月下旬、この施設周辺の空間放射線量は、施設北側の公園や住宅地などでは0.09~0.28μSv/時あった。周辺土壌からは2,300Bq/時の放射性セシウムが検出された。これに対し、施設の南側、つまり海側の空間線量は低かった。大気中に放出された汚泥の焼却灰が海からの風に乗って、施設の北側にホットスポットを作った可能性がある。【山内知也・神戸大学教授】

 茨城、千葉、東京の1都2県にまたがるホットスポットが生じた理由は、3月21日の雨だ。ちょうどその頃、周辺の上空に福島第一原発から飛散してきた放射性物質を雨が地表に降下させたのだ。【早川由紀夫・群馬大学教授】
 当時、東大柏キャンパスでは放射線量を測定していた。3月20日14時では0.12μSvだったが、21日は0.74に跳ね上がった。

 以上、野村昌二・岩田智博(編集部)「一目でわかる東京プラス関東6県 詳細データ付き 放射能ホットスポット」(「AERA」2011年6月20日号)に拠る。
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【震災】原発>政治的混乱のどさくさに暗躍する官僚たち

2011年06月19日 | 震災・原発事故
 内閣不信任案はきわどいところで否決されたが、政治家の関心はレイムダック内閣から次の首相選びへと、100%移っている。
 そんなとき、ウラで元気よく動き回るのが霞が関の官僚たちだ。政治の混乱に乗じて、実に生き生きと活動している。政権交代のときに民主党が掲げた「脱官僚」は、とっくに雲散霧消している。

 原発事故で槍玉に挙げられている経産省だが、政権末期の混乱を横目に、自らの省益確保にやりたい放題だ。
 その“証拠”が、民主党が政争で混乱している最中、6月5日付け朝刊で各紙が一斉に報じた「革新的エネルギー・環境戦略」だ。「素案が4日、明らかになった・・・・」
 原発事故を受けてまとめたもので、重要戦略の一つとして原子力を掲げる。「世界最高水準の原子力安全を目指す」と強調し、原子力推進路線を堅持する姿勢を鮮明にしている。国家戦略相のもとで来年中の決定を目指す、という。
 素案を書いたのは、国家戦略室に出向している経産官僚だ。役人が原子力政策の見直し方向など打ち出せるはずはないのに。「それにしてもこの時期に原発推進とは厚顔無恥だ」

 政権をウラから操る官僚の3大手法は、リーク、悪口、サボタージュだ。
 このうちリークは、マスコミとの共同作業だ。あらかじめ設定されている会議の前に、地ならしをして世論を誘導するべく昵懇のマスコミに会議資料や報告書原案を渡して記事を書かせるのだ。
 マスコミは、紙の資料にからっきし弱い。「ブツ」があると聞けば、しっぽを振ってすり寄ってくる。
 「お宅だけ」とでも言って渡そうものなら、靴を舐めかねないほど感謝される。
 「○日、××の素案が明らかになった」という書き出しの記事が紙面に載るときは、まずリークと見てよい。6月5日付けの「革新的エネルギー・環境戦略」もこれだ。
 その前日の4日は土曜日で、ネタが乏しく、記者が苦労する日だ。各紙とも、嬉々として「ブツ」に飛びついたことだろう。

 これで世論の流れを作ることができれば、次の総理もおいそれとは変更できなくなる。
 議論のスタート段階で方向性を固め、自分たちに有利な展開に持っていこうとする官僚の思惑が透けて見える。

 以上、ドクターZ「混乱期に暗躍する官僚たち ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2011年6月25日号)に拠る。
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