語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【非正規】雇用の構図に大変化 ~企業と消費者のリスクも高まる~

2014年11月30日 | 社会
 非正規雇用の割合あh、今や働く人の4割(2,000万人)に迫ろうとしている。この10年間、非正規雇用は(「景気回復」後も)一貫して増加している。
 一方、非正規雇用問題の構図が変化している。実は、非正規雇用の変化は、児童虐待、「派遣村」、ブラック企業などの新しい社会問題を引き起こすことにも密接に関係している。

 多くの非正規雇用に共通している特徴は、期間を定めて雇用される有期雇用であり、給与も正社員とは区別されて年功賃金が適用されない時給制が多い。
 非正規雇用にはどのような種類があるか。総務省の労働力調査は次のように分類している。
   ①パートタイム労働者
   ②アルバイト
   ③労働者派遣事務所の派遣社員
   ④契約社員
   ⑤嘱託
 これらの主な担い手は、それぞれ、①は主婦、②は学生、④は定年後の再雇用者だ。
 非正規雇用の中で、従来から一貫して最大多数を占めているのは①だ。①は、かつてから女性労働問題の中心だった。
 かつての女性労働問題の構図は、こうだ。
  (1)20代までは女性もほとんどが学卒と同時に正社員として就職するが、結婚や出産を機に退職を迫られる。
  (2)子どもに手がかからなくなったころに再度就労しようとすると、非正規雇用としてしか働き口がない。
  (3)彼女らは「主婦」なるがゆえに男性の稼得を支える「家計補助」的就労だと見なされ、
    ・賃金は極端に低く押さえられ(「お小遣い水準」)、
    ・男性の雇用を安定させるための「雇用の調整弁」の役割を押しつけられた。
  (4)ただし、多くの主婦にとって家事や育児と両立しやすい短時間労働、転勤なき雇用は、むしろ望ましいものだった。正社員に比べて「仕事が楽」だった。
 低賃金が強く問題になったのは、シングルマザーにおいてだ。彼女らは「家計自立」のために就労するのだが、(3)の低賃金が適用された。このため、働く貧困(ワーキング・プア)を早くから体現することになった。
  
 以上は、1990年代までの非正規雇用問題の構図だが、2000年代に入ってから大きく変貌する。
 近年の新しい変化は、次の二段階で考えることができる。
   (甲)家計自立化
   (乙)基幹化・過酷化
 (a)問題1・・・・非正規雇用でありながら、担い手が「家計自立型」に変化した結果、貧困問題を引き起こしている。
 (b)問題2・・・・非正規雇用でありながら、過酷な仕事が要求され、生活が破壊される。

 (a)’非正規雇用(低賃金・不安定)で家計を自立しなければならない労働者が急増した。2000年代の「フリーター」の登場がその先駆だ。それまでは20代の非正規雇用率は10%程度だった。大学の卒業と同時にほとんどの若者は正社員で就職していた。ところが、2000年代以降、就職できずに②に就く若者が急増した。それまでは「家計補助」だからよいとされてきた非正規雇用が、キャリアを形成し、自立していかねばならぬ若年層にまで拡大して社会問題化した。
 より深刻なのは、③や④が登場し、かつ、増加してきたことだ。③や④はフルタイムで働く非正規雇用だ。週5日、1日8時間以上働くことが通常で、勤務日程も自由にならない。③や④は「家計自立型」の労働者なのだ。
 厚労省の調査【注】によれば、「自分自身の収入」で生活を賄っている者は、①のうち34%、③70.9%、④74.7%だ。
 しかし、雇用の「担い手」は家計補助型の学生や主婦から、家計自立型の若い労働者になったにもかかわらず、正社員と同じような年功賃金が保障されなかった。これが、「年越し派遣村」問題(2008年)の背景だ。

 (b)’第二の変化は基幹化・過酷化だ。基幹化とは、重責を担わされること。非正規雇用における「楽な仕事+低処遇」の構図が崩れつつあるのだ。
 <例1>①で卸販売会社に入り、1か月後に総務部課長の辞令が出た。ただし、手当はなく、試用期間の賃金のまま瀬責任だけ負わされた。
 <例2>①で保育園に勤務。朝9時から勤務の約束が、実際には朝7時半からになり、土曜日にはシフトを入れないはずが、土曜日にも出勤を強制された。自分の子どもが肺炎になったときも、病欠をとらせてもらえなかった。
 ①であっても、責任の重い仕事を企業が丸投げする事例が増加している。
 女性の就労率を表す「M字型カーブ」が変化し、台形に近づいている。出産の直前まで働き、出産後も出勤する。
 男性の非正規雇用化、賃金の下落に伴い、「主婦」の労働者の足元を見て加重労働を押しつける企業が増加しているのだ。
 同様に、家計自立型の④の責任も増大している。
 <例3>有料老人ホームに勤める④。毎日サービス残業が2~3時間あり、休憩もとれない。月の休みは希望休で月9日あるが、行事の準備などで休みでも出勤することがある。入居者からのクレームや上司からの圧迫もある。有給をとれず、過剰労働から腰痛を発症した。
 近年は学生の②の責任も増している。「バイトリーダー」などの役職に就き、会計、②の新規採用など、店舗のすべての業務に責任を負う学生も珍しくない。こうした学生は、授業中やゼミナールの最中にも仕事先から呼び出され、顧客のクレームや②の欠員などに対応が求められる。テスト期間中も休むことができず、留年・退学に至る場合もある。営業ノルマがあり、こなせなければ自社製品を毎月何万円も買う学生もある。
 「ブラックバイト」が広がった要因は、親の収入減少、日本の大学の授業料が高額、奨学金制度の未整備だ。
 以上のほか、「トライアル雇用」の非正規雇用の問題も深刻だ。新社員は「正社員になるため」と通常の正社員よりも過剰に働かされる。法律上の規制はなく、むしろ逆に政府は導入促進を打ち出している。
 <例4>大手化粧品会社の販売職。責任は正社員と同じだが、待遇が正社員と契約社員とでは異なる。命令を拒否すると正社員になるのに不利になるという気持ちから、正社員より働いてきたが、6年働いても一向に正社員になれない。本来責任者がとるべき責任を取らされたり、正社員が休む分を契約社員でありながら働かされたりする。

 非正規雇用の変化は、さまざまな社会問題を引き起こしている。
 第一、貧困の増加。
 第二、労働の過酷化。労働者はメンタルヘルスを病んだり、学業と両立できなくなる。労働能力そのものが破壊されてしまう。育児中の母親の虐待が発生する要因の一つに、加重すぎる労働で精神を病んだケースもある。
 第三、産業に「リスク」が生じている。保育園や介護において、無理な働かせ方がサービスの安全そのものを掘り崩す。企業にとってリスクであるとともに、消費者にとってリスクだ。事実、日本より非正規雇用化が進んでいる韓国では、短期労働者が責任ある仕事を行うため、交通などの安全が損なわれている。

 仕事の過酷化は、労働力不足の原因となっている。私生活と両立できないような長時間労働や責任を企業が求めることで、これに対応できる労働者が減少しているのだ。
 貧困や過酷労働は、さらなる少子化を進めてしまう。
 労働力確保のためにも、企業は今のやり方を見直さざるを得ない。

 【注】厚生労働省「就労形態の多様化に関する総合実態調査」(2010年)

□今野晴貴「非正規雇用の構図に大きな変化が起きている 企業と消費者のリスクも高まる」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~

2014年11月29日 | ●佐藤優
 沖縄県知事選挙(11月16日投開票)では、翁長雄志・前那覇市長が当選した。米海兵隊普天間飛行場の県外移設と、辺野古(沖縄県名護市)に新基地を造らせないという姿勢を鮮明にした翁長候補に、保守、革新を超えた「オール沖縄」の支持が集まった。
 候補者は全員で4人。各人の得票数は、
  ・翁長雄志(無所属・新) 360,820票
  ・仲井眞弘多(無所属・現) 261,076票
  ・下地幹郎(無所属・新) 69,447票
  ・喜納昌吉(無所属・新) 7,821票

 翁長・新知事は、現職の仲井眞・前知事を10万票も離した堂々たる勝利で、有効投票数の51.6%を占めた。
 知事選挙の表面上の争点は、辺野古の新基地建設を認めるか否かだった。
 しかし、より本質的な問題は、今後、沖縄は日本とどう付き合っていくか、という「日本問題」だった。
 日本の国土面積の0.6%を占めるに過ぎない沖縄県に、在日米軍基地の74%が集中しているのは尋常な事態ではない。
 鳩山政権(民主党)は、普天間飛行場の移設先として沖縄県外を追求する姿勢を示したが、外務官僚と防衛官僚に包囲され、辺野古移設に回帰した。
 問題は、そのときの理屈だ。「沖縄以外の都道府県が米海兵隊基地を受け入れないのは、地元の民意が反対しているからだ」という理屈だ。
 地元の民意が反対する政策は強要しない、というのが、現憲法下の政府の民主主義政策のはずだ。沖縄の民意も海兵隊基地の受け入れに反対している。にも拘わらず、沖縄には海兵隊基地を押しつけっぱなしだ。これは、沖縄に関しては民主主義政策が適用されない、ということだ。つまり、政治的差別以外のなにものでもない。
 差別が構造化している場合、差別する側は、自らが差別者であることを認めない(通例)。
 それに対して沖縄は、「日本の中央政府がわれわれを本当に同胞と考えるならば、差別を固定化する政策(辺野古に新基地を建設するの)は止めろ」と主張しているのだ。
 
 中央政府は、圧力と懐柔によって「日本人以上に日本人的な沖縄人」を作り出すことができると勘違いしているようだ。そんなことだから、
 「翁長が当選しても、しょせんは保守系だから、沖縄振興策でカネをつければ、いずれ仲井眞のように辺野古容認に立場を変えるだろう」
というような希望的観測を口にする政治家、政治部記者、評論家が出てくるのだ。

 沖縄における米軍基地の加重負担が構造的差別であると指摘できるほど、沖縄は強くなった。その沖縄の強さを人格的に体現しているのが翁長・新知事なのだ。

 沖縄の血を引く人たちは、日本人と沖縄人の複合アイデンティティを持っている。この人たちは、過去数年の中央政府と沖縄の軋轢を観察する中で、「沖縄系日本人」から「日本系沖縄人」へと自己意識を変化させつつある。

 沖縄県知事は、沖縄県民にとってだけでなく、沖縄県外、日本国外に在住する在外沖縄人にとっても、沖縄を人格的に代表する人物だ。
 沖縄が自己決定権を確立しないと、中央政府による構造的差別を脱構築することができない、という意識が、沖縄人の間で急速に広まっている。
 国際基準で見た場合、沖縄で生じている出来事は、民族問題だ。 

□佐藤優「沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~佐藤優の人間観察 第91回~」(「週刊現代」2014年12月6日号)
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 【参考】
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~
【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~
【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~
【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~
【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~
【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~
【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~
【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~
【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~
【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~
【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~
【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」
【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~
【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~
【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~
【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~
【佐藤優】ロシアが危惧するのは軍産技術の米流出 ~ウクライナ~
【佐藤優】新冷戦ではなく帝国主義的抗争 ~ウクライナ~~
【佐藤優】クリミアで衝突する二大「帝国主義」 ~戦争の可能性~
【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~
【佐藤優】ウクライナにおける対立の核心 ~ユリア・ティモシェンコ~
【ウクライナ】とEU間の、難航する協定締結に尽力するリトアニア
【佐藤優】ロシアとEUに引き裂かれる国 ~ウクライナ~


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【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~

2014年11月28日 | 社会
 アベノミクスが失敗し、安倍政権は追い詰められた【注】。
 7~9月期GDPマイナス・ショックがこれを決定的なものにした。

 ただでさえ、
  ・集団的自衛権容認
  ・特定秘密保護法
  ・武器輸出解禁
  ・原発再稼働
などに反対の有権者は多数を占める。
 それに加えて、看板政策であるアベノミクスが失敗となれば、安倍政権の致命傷になってもおかしくはない。

 安倍首相はしかし、今、この劣勢からの大逆転を夢見ている。野党の選挙態勢がまったく整わないうちに、奇襲解散総選挙で寝首をかこう、というわけだ。
 今のところ、その戦略は当たっている。
 自民党がダメだとしても、一体、誰に投票したらいいのか見当がつかず、やはり自民党しかないのか、と途方にくれる有権者が多いのだ。
 そこで、政党ごとに評価をし直してみる。選挙に向けて。

(1)自民党
 日本経済がここまで低迷したのは、1990年代からの自民党政治のせいだ。
 官僚主導的政治で、農協、医師会、電力会社などの既得権と癒着して、成長のために必要な改革、思い切った改革ができず、「失われた20年」を作ってしまった。
 返り咲いた安倍政権は、表面的には変わったように見えた。
 しかし、第三の矢と称する成長戦略はちっとも出てこなかった。理由は、昔の自民党と全く同じ。これから先も、変われる見込みはない。
 となれば、タカ派政策の賛否以前に、安倍自民党は選択肢から外れる。

(2)公明党
 安倍自民党を助ける公明党に、未来はない。

(3)民主党
 政権にあった3年間、何の改革もできなかった。信用できない。
 経済政策以外でも、電力総連の圧力で大飯原発を再稼働させ、原発ゼロの閣議決定もできなかった。
 連合に迎合して、公務員改革も逆行。
 安保政策でも党内はバラバラ。安倍首相と同じくらいのタカ派も多い。

(4)維新の党
 改革派が多い。
 しかし、タカ派が多数派で、安倍政権の暴走の歯止め役にはなりにくい。結いの党出身のメンバーにはハト派が多いが、圧倒的少数派だ。
 党内の旧・大阪維新の会メンバーは、大飯原発再稼働を叫んで橋下徹・大阪市長を再稼働容認に転向させた実績がある。脱原発政策も大いに不安だ。

(5)共産党
 ハト派としてはもっとも安心できそうだが、同党に日本経済を任せるとバラマキ政策で日本が破綻してしまう不安がある。

(6)その他
 みんなの党は解党する。(3)~(5)を除く野党は、存在感が全くない。

 今回は棄権したい、と思う人も多いだろう。
 しかし、棄権が増えれば、組織票中心の自民党勝利に手を貸すことになる。
 その結果、
  ・原発再稼働
  ・集団的自衛権行使
  ・特定秘密保護法施行
  ・武器輸出
  ・原発輸出
  ・残業代ゼロ
  ・派遣拡大
・・・・などの安倍政権の不人気政策全てにお墨付きを与えてしまう。
 「全部国民の承認を得た」と胸を張る安倍首相の姿を想像してみたまえ。背筋が寒くならないか。
 棄権は絶対ダメだ。

 安倍政権の暴走を止めると同時に、日本経済の成長を実現してくれる政治を夢見る有権者は、「八方ふさがり」の状況だ。では、どうすればいいか。
 政党で選ぶのは諦めたほうがいい。
 一方、野党の中に少数だが、「改革はするけれども戦争はしない」と思える政治家を探すことは可能だ。
  ・原発再稼働に無条件で反対と言えるか。
  ・ペルシャ湾での機雷掃海もダメと言えるか。
 抽象的な文言ではなく、具体的な踏み絵を踏ませよう。
 最悪、納得できなくても、今回は仕方ない。ダメな順に消去していって、最後に残った候補に目をつぶって投票する。「我慢の選挙」だ。
 そして、選挙の後に、彼らを集めて新たな形の野党再編につなげるのだ。

 【注】
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【政治】解散の裏にある動き ~妄想と暴走~
【政治】安倍晋三の最大リスクは健康不安 ~個利個略&失政・疑惑隠し選挙~
【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~

□古賀茂明「総選挙を棄権するつもりの人へ ~官々愕々第133回~」(「週刊現代」2014年12月6日号)
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 【参考】
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~
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【食】「高級インスタントラーメン」に含まれる食品添加物

2014年11月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 いわゆる「高級インスタントラーメン」には、次のようなものがある。
 (1)「マルちゃん正麺」(東洋水産)・・・・塩味、醤油味
 (2)「日清ラ王」(日清食品)・・・・塩、醤油
 (3)「サッポロ一番頂」(サンヨー食品)・・・・しお味.

 (1)は、役所広司のTVコマーシャル「うまい」「嘘だと思ったら食べてください」で大ヒットした。生麺のような味わいをアピールし、それが消費者に受け入れられた。
 このヒットに刺激され、(2)が、さらに(3)が次々に発表された。

 「高級インスタントラーメン」の最大の特徴は、麺を油で揚げていないことだ。
 従来の「チキンラーメン」や「サッポロ一番塩ラーメン」などは、油で麺を揚げているため、①油臭さが強く、②脂肪が酸化して有害な過酸化脂質が多くできる・・・・という問題があった。油を加熱すると、酸化しやすく、過酸化脂質ができやすくなるのだ。
 過酸化脂質には毒性がある。ラットに投与した実験では、成長を阻害することが確認され、多量に投与すると死ぬ。人間も、胃もたれ、腹痛、下痢などを起こすことがある。

 「高級インスタントラーメン」を毎日食べ続けた場合、体に悪影響はないか?
 従来の油で麺を揚げた製品に比べれば、過酸化脂質の量が少ないので、胃や腸への悪影響は少ない。
 ただし、(1)と(2)は、麺に植物油脂が練り込まれているため、過酸化脂質が多少できている。一方、(3)の場合、麺の原材料は「小麦粉、食塩」で植物油が使われていないため、過酸化脂質ができることはなく、本来の生麺に近いものになっている。
 問題なのは、いずれの製品も、食品添加物が多く使われていることだ(8種類から14種類程度)。

 (a)特に問題なのは、カラメル色素だ。カラメル色素は、いずれの製品でも、醤油味や味噌味に使われている。スープを褐色にするために必要なのだろう。塩味には、いずれも使われていない。
 カラメル色素は、カラメルⅠ~Ⅳの4種類がある。カラメルⅢとⅣには、発癌物質(4-メチルイミダゾール)が含まれている。原料に糖類のほか、アンモニウム化合物が使われているため、熱処理の過程で副産物として生成されてしまうのだ。・・・・しかし、「カラメル色素」としか表示されないため、4種類のうちどれが使われているか、わからない。
 一般にカラメル色素は、ⅢとⅣが多く使われる傾向にあり、コーラに使われているのはⅢかⅣだ。そのため、4-メチルイミダゾールが含まれている。
 「高級インスタントラーメン」の醤油味や味噌味にも、ⅢあるいはⅣが使われている可能性がある。そうなると、4-メチルイミダゾールを摂取することになる。

 (b)次に問題なのは、麺を黄色に着色しているクチナシ色素。クチナシの実から抽出された黄色い色素だが、ラットに体重1kgあたり0.8~5gを経口投与した実験では、下痢が見られ、さらに肝臓の出血と肝細胞の壊死が認められた。・・・・ただし、この投与量は体重が50kgの成人に単純換算すると、40~250gという大量になるため、麺に少量添加された場合に同様な毒性が現れるかは不明だ。
 なお、(2)の場合、カロチノイド色素とあるが、これはクチナシ色素と考えられる。

 (c)鹹水は、ラーメン独特の風味や色合いを出すために添加されている。炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなど16品目のうちから1品目以上が使われる。全般的に毒性は低いが、多量に摂取した場合、胸焼けを起こすことがある。

 (d)増粘多糖類は、樹木の分泌液やマメ科植物、海藻、細菌などから抽出された多糖類だ。粘性やとろみをもたせるために使われる。30品目程度あり、中には安全性の疑わしいものもあるが、「増粘多糖類」としか表示されない。

 結論。いずれの製品も問題を抱えている。
 塩味はカラメル色素を含んでいないため、リスクが低い。特に(3)の「しお味」は、添加物が8種類と少ないほうで、過酸化脂質もできにくいので、今回の5製品の中では最も体に悪影響が少ない製品だ。
 とはいえ、どの製品も添加物が胃や腸を刺激する可能性がある。毎日食べ続けるのは避けたほうがよい。

□渡辺雄二(科学ジャーナリスト)「「高級インスタントラーメン」は中身も“高級”なのだろうか ~新買ってはいけない 第203回~」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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【政治】解散の裏にある動き ~妄想と暴走~

2014年11月26日 | 社会
 11月17日、内閣府が2014年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。実質成長率は前期(4~6月期)より0.4%減、この状況が1年続いた場合の年率換算では1.6%減・・・・予想以上に悪い数字だった。
 結果的には、これが21日解散の直接の引き金になった。わけてもGDPの6割を占める個人消費の回復が弱い。その背景には、物価の伸びに賃金の上昇が追いついていないことがある。

 9月は、円安を原因とした倒産が28件と、前年同月の3倍に膨らんだ【東京商工リサーチ】。
 もっとも苦しいのは燃料費の高騰に苦しむ運輸業だろうが、製造業や卸売業にも負の影響が拡がっている。
 円安と消費増税で、天丼屋がコメをひそかに減らしたりしている。
 一方、輸出企業の代表格たるトヨタ自動車は、4~9月期の営業利益1兆3,519億円と、半期ベースでは7年ぶりの最高益を達成した。しかし、「為替による利益増は皮下脂肪のようなもの」だ。
 円安による輸入物価の上昇を主因とする倒産件数は今年4~9月期だと150件で、これも前年同期の2倍以上だ。
 
 GDP速報値が予想以上に悪かったとはいえ、この解散に大義はない。高村正彦・自民党副総裁が14日に「念のため選挙」と口を滑らしたが、この言葉がすべてを物語っている。
 消費増税を決めた民主・自民・公明の3党合意のなかには「景気弾力条項」があり、景気の如何によっては増税を止めることが制度的には可能だ。それにのっとって先送りすればすむ。「解散で国民に信を問う」理由にはならない。
 前回の総選挙には700億円のコストがかかっている。被災地の復興が遅れているなかで、「念のため」に700億円を使うことが許されるのか。

 もうひとつ。黒田東彦・日本銀行総裁が11月12日、衆院財務金融委員会で発言した。10月31日に決めた追加金融緩和について、「2015年10月に予定される消費税10%への引き上げを前提に実施した」。今回の解散は、黒田総裁の意思に反することだった、ということになる。
 誰が、どの段階で解散を決めたのか。

 「読売新聞」が11月11日付けで「来週の解散 浮上」と一面で打ち出し、四面で「『解散』 自民は歓迎」と打った。
 「読売」がリードしていることに疑問を持つ人は多い。
 「読売」と、軽減税率を導入したい公明党が主導したのでは、という指摘もある。
 変なのは、「読売」記事の見出し「自民は歓迎」。記事が出た11日、自民党内では、「まともな考えでいけば、常識的に閑散はない」「人間は間違うことがある。(首相が)間違った判断をされないと信じている」などと、野田毅・税制調査会長が解散に反対する意思を示した。
 14日には、村上誠一郎・元行革担当相が、「衆院で3分の2近い勢力を持つのに、これでは『積み木崩し解散』だ」と批判している。なぜ「読売」は「自民は歓迎」などと打てたのか。
 勝栄二郎・読売新聞社監査役(6月~)/元財務次官がリードしているのでは、という見立ても永田町では流れている。
 
 民主党と他の野党との連携がどこまで実現するかによるが、自民党は議席を落とすだろう。前回衆院選で当選した1年生議員は119人。そのうち選挙基盤の弱い50人弱が落選の危機にある。現有の295議席から議席減をどこまで食い止められるか、という話。1年生は借金もある。
 勝敗ラインは266議席と言われている。266議席取れれば、17ある常任委員会の委員長ポストを牛耳れるからだ。これを下回れば、安倍首相の責任問題が党内で出てくる。

 自民党議員にとっては、安倍首相の情緒不安定が気になる。
 この間の暴言・妄言はひどかった。
  ①「撃ち方やめ」発言は、「朝日」だけでなく、「読売」も「毎日」も「産経」も書いたのに、「朝日」にだけ「捏造だ」と噛みついた。
  ②枝野幸男・民主党幹事長に対しては、「革マル派が浸透する団体から献金を受け取っている」と言い放った。
  ③JR総連やJR東を「殺人団体」と国会で呼んでいる。
  ④吉田忠智・社民党党首が「相続税逃れ疑惑」を指摘したときは、「重大な名誉毀損だ。議員として恥ずかしくないのか」と激昂した。

 疑惑は、麻生太郎・副総理にもある。(株)ぎょうせいの(株)麻生の買収で、見返りに麻生副総理にみずほ銀行からヤミ献金が流れた疑惑を最近も民族派新聞が公然と指摘している。

 政策でも、アベノミクスは失速した。「自分の内閣で解決する」と豪語していた拉致問題は、まったく解決の見通しが立っていない。
 最近、横田めぐみさんは実は毒殺されていた、という話が韓国の報道などで出てきた。元は中国サイド。習近平・国家主席がその証拠を握っていて、4月頃から在北京日本大使館を通じて、「もう猿芝居はためろ」と日本サイドに伝えていた。しかし、安倍にしてみればそんな情報が出てきたら困るから、「無視」を決め込んだ。そこで、習国家主席は朴槿恵・韓国大統領と会談した際、この話をばらした。

 日本は、APEC会議で日中会談をどうにか実現させたが、その際、日中両国で合意した関係改善のための「四原則」はすごい中身だった。
 衝撃的なのは「尖閣問題」に係る記述。<尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し・・・・>と。これまで「領土問題は存在しない」としていた日本が、初めて両国の間に「異なる見解を有している」ことを認めた。戦後最大の譲歩だ。
 APECでは安倍首相の問いかけに顔をそむけた習国家主席の態度が話題になったが、衝撃的な「四原則」を中国と合意せざるをえないほど、習国家主席と安倍首相とのあいだに亀裂が入っていた。中韓日のあいだで有象無象の熾烈な駆け引きがあったのではないか。
 あの「四原則」を外務省がよくぞ承諾したものだ。

 年明けには九州電力・川内原発の再稼働問題がある。その後は通常国会で集団的自衛権に関する安保関連法が議論される。
 国論を二分するこれらのテーマが、じわじわと安倍首相を追い詰めていく。
 
 (1)アベノミクスが一部の株保有者と大企業をさらに富ませるもののマヤカシであったことが、今や明らかになりつつある。
 (2)消費増税をして格差をますます拡大させ、雇用と労働の破壊も進めている。
 (3)特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認など、「平和憲法破壊」も進める。
 (4)「河野談話」や「慰安婦」を否定しようとする歴史修正主義をはびこらせ、国際社会から批判を浴びている。
 ・・・・こんな安倍政権を今後も継続させるのか否か。有権者はそれを最大の争点にすべきだ。 

□編集記者匿名座談会「“妄想と暴走”解散の裏側」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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 【参考】
【政治】安倍晋三の最大リスクは健康不安 ~個利個略&失政・疑惑隠し選挙~
【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~


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【政治】安倍晋三の最大リスクは健康不安 ~個利個略&失政・疑惑隠し選挙~

2014年11月25日 | 社会
 解散という安倍首相の判断をどう読むか。
 安倍家の内情を誰よりも取材してきたといっていい野上忠興・元共同通信記者(安倍晋太郎の元・番記者)は、次のように語る。

 地方の議員や首長らから頻繁に電話がかかってくる。むろん、解散・総選挙への不満だ。<例>中国地方で議長も歴任した自民党県議。「自民党県議団はしらけている。県議会があるのに、候補者の遊説に同行できるだろうか・・・・本当にわけのわからない解散だ」
 衆院5選挙区全区自民党議員の保守王国、自民党岐阜県連ですら「わけのわからない選挙」として反対決議まで出した。
 アベノミクスから拉致問題まで、看板政策は思うように転がらない。政権の体力と安倍晋三自身の体力・・・・2つの問題が解散の引き金を引かせた大きな背景になっている。そんな事情でなされる選挙は「個利個略&失政・疑惑隠し選挙」だ。

 健康不安という時限爆弾を抱えている安倍にとって、凍てつく中での選挙戦はこたえる。持病の潰瘍性大腸炎にとって最大の大敵であるストレスを蓄積し、いま、体調が思わしくない。
 春頃に比べても安倍には精気が感じられてない。感情を露わに相手をやり返すような場面が目立つ。
 安倍家周辺によれば、「ゴッドマザー」と呼ばれる母(洋子)は晋三の後継者として晋三の兄(寛信・三菱商事パッケージング社長)の息子(寛人)にすることを決めている、と言われる。
 親米とか反米とか言われるが、安倍晋三にその「下敷き」になる思想、発想がない。本人も「勉強はあまりしなかった」と認めている。学生時代の友人らによれば、麻雀とコンパに精を出していた。
 政治家として安倍晋三の頭にあるのは、祖父(岸信介)の存在のみだ。同級生によれば、学校の先生や同級生の間で「A級戦犯容疑者」「昭和の妖怪」などと「おじいちゃん」をなじる言説に出会うと、安倍は感情的になって反発した。研鑽を積んだ上での国家観などなく、言ってみれば一種の「私怨」があるだけだ。

 安倍晋三は、父(晋太郎)のことをあまり口にしない。
 特攻の生き残りである晋太郎はよく言っていた。「平和がいいんだよ、平和が」と。そして、「俺は外交はタカだが、内政はハトだ」とも。
 「おじいちゃん」が成し遂げられなかった憲法改正こそ、安倍の悲願らしいが、岸が一番可愛がったのは安倍晋三の実弟で岸家に養子にいった岸信夫・参院議員だった。

 2012年の総選挙で民主党から政権を奪還したとき、安倍晋三はオフレコ懇談で「これでやっとリベンジを果たした」と口にした。「おじいちゃん」にせよ、リベンジ発言にせよ、安倍晋三をつき動かしているのは「私怨」の二文字に尽きる。

 今回の解散は、良いとこ出のわがままなお坊ちゃんがジグゾーパズルをしているうちに、どうやっても政策というピースを思うようにうまくはめ込むことができずに、「もう一回やり直しだ」と投げ出したようなものだ。
 そんなわがままな振る舞いを支えているのがマスコミだ。
 健康問題に触れるとオフレコ懇談から排除される。健康問題はタブーなのだ。記者会見でもパソコンを打ちながら臨む記者が多いのに。
 閣僚や自民党三役を経験した古参議員によれば、昔と違って今の政治記者は集団で行動し、会見はむろん、夜討ち朝駆けでも突っ込んだ質問はない。楽というより、取材を受ける楽しみがない。現場の記者どころか、大マスコミの社長までもが最高権力者の安倍晋三のご相伴にあずかって、恬として恥じない。

□記事「安倍さんの最大リスクは健康不安」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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 【参考】
【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~

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【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~

2014年11月24日 | 社会
 7年前の辞任は突然だったが、今度の解散も突然だ。
 足元の自民党岐阜県連から、非難決議をされる始末だ。<消費税を解散の大義名分にするのは後付けで、国民のことを一切考えない党利党略>であり、<景気回復に向け傾注しなければならない時であり、政治空白をつくるべきではなく、解散する大義はない>。

 では、なぜ、安倍晋三は解散を決意したのか。
 その謎の答えは、7年前の辞任にいたる経緯を検証すると、得ることができる。
 安倍は、体調悪化を理由にしたが、それは違う。
 <今週末発売の一部週刊誌が安倍首相に関連するスキャンダルを報じる予定だったとの情報もある>【2007年9月12日付け毎日新聞】
 一部週刊誌とは「週刊現代」のことだ。
 同誌は、毎日新聞の記事も取り込みながら、<このスクープで総理は職を投げ出した!>というリードで<本誌が追い詰めた安倍晋三首相『相続税3億円脱税』疑惑>という大見出しを掲げた【「週刊現代」2007年9月29日号】。
 <本誌が9月12日中に回答するように安倍事務所に質問をつきつけた>が、この<悪質な税金逃れの手口>を説明できず、<首相は観念した>。【前掲誌】

 これを、今年11月4日、吉田忠智・社民党党首が蒸し返した。
 <2007年9月に安倍晋三相続税脱税疑惑が報道されております。故安倍晋太郎氏が生前に指定政治団体に晋太郎氏の個人名義で寄付した6億円を超える政治資金を、全国66の政治団体ごと引継ぎ、相続税3億円を脱税したという疑惑であります。
 指定政治団体制度は、94年に政治改革の一環として脱税の温床になるとしえ廃止されました。安倍事務所は、収支報告書には第三者からの寄付を故晋太郎氏名義で記載しているにすぎないと説明したそうですが、それが事実であれば、偽名による政治資金報告書への虚偽記載ではありませんか。脱税額3億円について、確かに時効になっています。是非、時効の利益を放棄していただいて、自発的に納税してはいかがかと思いますが>

 小渕優子など問題にならぬ巨大疑惑を突きつけられて、安倍は激昂した。巨大疑惑を隠蔽するには声を張り上げねばならぬとばかり居丈高になって、「まったくの捏造」と決めつけた。
 <ただいまの質問は私、見逃すことはできませんよ。重大な名誉毀損ですよ。吉田さんはその事実をどこで確かめたんですか。まさか週刊誌の記事だけですか。週刊誌の記事だけで私を誹謗中傷するというのは、議員として私は恥ずかしいと思いますよ>

 「恥ずかしい」のは、安倍だ。安倍は「週刊現代」に回答しなかったように、ここでも何ひとつ答えていない。
 「週刊現代」には、財務省主税局幹部のコメントも載っている。
 <この通りなら、これは脱税ですね>
 相続税の脱税の時効は最大で7年だから罪には問えないが、これまで1億円以上の脱税は、政治家でも逮捕されてきた重大な犯罪だ。
 それをウヤムヤにするため、安倍は解散に打って出たのだろう。選挙にかかる費用を考えれば、あまりにも自分勝手な税金の無駄遣いだ【注】。
 
 【注】700億円。【記事「衆院選の費用700億円、高い?安い? 他の用途なら…」(朝日新聞デジタル 2014年11月20日)】
衆院選の費用700億円、高い?安い? 他の用途なら…

□佐高信「疑惑隠しの自己都合解散 ~新・政経外科 第20回~」(「週刊金曜日」2014年11月21日号)
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【官僚】結局はただの看板の書き換え ~「農地バンク」~

2014年11月23日 | 社会
 農地の大規模化を促すため、政府が農地を借り受けて、これをやる気のある農家などに貸し出す・・・・そんな「農地中間管理機構」(農地バンク)構想に暗雲が垂れ込めてきた。
 農地バンクが今年8月までに集めた農地は、来年3月までに集める目標値の0.4%にしか達していない。【11月6日付け朝日紙】
 農水省は「農地の貸し借りはコメの収穫後の冬に本格化する。これから大きく増えていくと考えている」と話しているが、そう旨くはいかないだろう。

 農地バンクは、安倍政権の農業改革の目玉の一つだ。
 こうした政策を農水省が持ち出すときは、ポチのマスコミを集めて、特ダネだとリーク、懇切丁寧に説明する。
 農水省担当のマスコミも、日頃から他の経済官庁に比べていいネタが少ないから、ここぞとばかりに飛びつく。
 両者の関係は、とにかく目玉政策をうまくプレイアップすることで、協力関係になっている。マスコミに、政策を批判的に取り上げる気持ちは、まったくない。
 してみれば、過去にすでに実施されていて、手垢まみれになった政策も、新たなネーミングを付されて、素晴らしく、これまでにない画期的なものに見せかけることは、容易に可能だ。

 実は、農地バンクと同様の政策は、これまでに何度もあった。
 (1)農地保有合理化事業・・・・離農農家や規模縮小農家などから農地を買い入れ、または借り入れ、農地の売り渡しまたは貸し付けを行う事業だ。農地バンクと同様の農地保有合理化法人が47都道府県に設置されている。それらを束ねる親玉の「全国農地保有合理化協会」は、農水事務次官の天下り先だ。
 天下り機関のようなところが農地の仲介をするのは無理があったらしく、さしたる実績を上げられなかった。

 (2)農地利用集積円滑事業・・・・5年ほど前に開始。仲介するのは「農地利用集積円滑化団体」で、市町村、農業公社、農協などがこれになることができる。この仲介実績も、今回の農地バンクの目標よりはるかに少ない。

 (3)農地バンク・・・・今回の。屋上に屋、その上に屋を架したようなものだ。

 なぜ、これまでたいした実績もないのに、農地バンクのような公的な仲介機関を作ればうまくいくと思うのか、摩訶不思議だ。そんな機関は、重要な貢献をできないまま、役人の天下り先になってしまうのがオチだ。
 しかも、仲介しようとしても、肝心の情報を持っていない。国からの指令で何か組織を作れば、仲介情報が天から降ってくるわけではない。
 さらに、農地の固定資産税はほぼタダだ。これでは、所有者も農地を貸し出して何とかしようなどとは思わない。

 もっと農業法人の新規参入を自由にして、その際、農地取得や貸借も自由にしたほうが、よりよい結果になるはずだ。
 さらに、農地の固定資産税を少し高くする。その代わりに、農地の転用にかかっている制限を自由化する。

 この20年間で、耕作放棄地は40万ヘクタールと倍増した。滋賀県全体とほぼ同じ規模だ。担い手のいない農地が、全農地の5割と異常になっている。
 過去の失敗政策の看板を書き換えて、これを打開できるほど甘いものではない。
 TPP参加で、農業予算の増加が予想される。農地バンクは、その予算獲得のために画策されたのではないか。

□ドクターZ「「農地バンク」結局はただの看板の書き換え ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2014年11月29日号)
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【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~

2014年11月22日 | ●佐藤優
 11月8日、モスル(イラク北部)近郊で、米軍などの戦闘機が「イスラム国」(イスラム教スンニー派過激組織)幹部の車列を攻撃した。その際、自称「イスラム国」最高指導者のアブバクル・バグダディが重傷を負った、との報道がなされた。

 <米中央軍によると、空爆により過激派の戦闘車両10台を破壊した。車両には「イスラム国」の幹部が乗っており、数人が殺害された模様だ。衛星放送アルアラビアは、イラクの有力部族の話として、「イスラム国」を率いるバグダディ容疑者が「致命傷を負った」と報じた。これとは別に、シリアとの国境に近いアルカイムで「イスラム国」幹部が集まる民家に対しても空爆があったという。
 バグダディ容疑者は「イスラム国」を率い、イラクとシリアの広い範囲を制圧。戦闘や支配地域の統治も指揮しているとみられる。「国家樹立」を宣言後、7月にモスルの大モスクで説教する姿がインターネットに公開されて以来、所在に関する情報はほとんど確認されていない。>【注】

 しかし、米軍がバグダディに致命傷を負わせ、同人が死亡したとしても、「イスラム国」の現状に大きな変化はない。
 なぜなら、「イスラム国」は最高指導者の指令によって動く縦型の組織ではないからだ。

 2001年9月11日に米国同時多発テロを起こしたアルカイダに対して、米国は世界的規模で「対テロ戦争」を行った。2011年5月には、ウサマ・ビン・ラディン・アルカイダ指導者をパキスタンで殺害した。
 アルカイダ系の活動家は、米国の「対テロ戦争」に対応する過程で、非集権的、ネットワーク的な組織への転換を遂げた。
 アブ・ムサブ・ザルカイは「イラクのアルカイダ」を創設した。この特徴は、本家のアルカイダと異なり、シーア派を異端と見てジハード(聖戦)の対象とする宗教的態度だ。ザルカイは、米軍によって2006年に殺害された。しかし、「イラクのアルカイダ」は勢力を拡大していき、「イスラム国」の直接の起源となった。2013年、シリアの反政府組織を基盤に台頭した「ヌスラ戦線」と合同し、「イラクとシャーム(シリア)のイスラム国」の設立を宣言した。
 しかし、これには「ヌスラ戦線」と本家アルカイダの双方から異論が出た。その結果、この組織は「イスラム国」と改称し、アルカイダから分離すると共に、「ヌスラ戦線」とも激しく対立するようになった。

 「イスラム国」は、組織化を避け、分散して潜伏し、小規模なテロを繰り返すことによりグローバル・ジハードを展開する、という運動論を採用している。この手法は今のところ成功している。
 「ジハードにより、世界的規模で単一のカリフ帝国を確立する」・・・・というだけの、緩やかなつながりのテロリスト・ネットワークが形成されているので、カリフを自称するバグダディが殺されても、「あいつは本物のカリフではなかった。だから神に見放された」と受けとめられるだけだ。それによって、「イスラム国」のネットワークが解体されることはない。
 テロリスト・ネットワークは、日本にも張り巡らされつつある。
 遮断が焦眉の急だ。

 【注】記事「「イスラム国」車列を空爆 最高指導者「致命傷」の情報」(朝日新聞デジタル 2014年11月9日)

□佐藤優「「イスラム国」その組織の本質とは ~佐藤優の人間観察 第90回~」(「週刊現代」2014年11月29日号)
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 【参考】
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~
【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~
【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~
【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~
【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~
【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~
【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~
【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~
【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~
【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~
【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~
【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」
【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~
【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~
【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~
【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~
【佐藤優】ロシアが危惧するのは軍産技術の米流出 ~ウクライナ~
【佐藤優】新冷戦ではなく帝国主義的抗争 ~ウクライナ~~
【佐藤優】クリミアで衝突する二大「帝国主義」 ~戦争の可能性~
【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~
【佐藤優】ウクライナにおける対立の核心 ~ユリア・ティモシェンコ~
【ウクライナ】とEU間の、難航する協定締結に尽力するリトアニア
【佐藤優】ロシアとEUに引き裂かれる国 ~ウクライナ~

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【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走

2014年11月21日 | 社会
 衆議院で自民党が今より議席を増やすのは難しい。
 このたびの解散の裏には、安倍政権が描く身勝手な戦略がある。むろん、政権のつごうで解散するとは言えないから、表向きは安部総理が消費税増税を先送りにするに当たり、その是非を含めてアベノミクスへの信を問う必要があるという。なぜなら、増税延期が2012年6月の、増税に関する自公民の「三党合意」に反するというのだ。

 これは全くおかしい。
 三党合意にも、それに基づいて成立した消費税増税法の附則にも「景気条項」が入っている。要するに「経済状況をよく見て、悪ければ増税を延期する」と、書いてある。現在安倍政権が、各方面から有識者を集めて景気の状況について意見を求めているのは、まさにこの条項でいう「経済状況を見る」ためのものだ。

 その結果、増税をできる状況ではない、と安倍政権が判断して増税を先送りするのは法律に沿ったものだし、三党合意違反でもない。
 さらに、国会で野党が増税しろと強く主張して、それが対立点になっているのであればまだ分かるが、増税延期派がほとんどだ。
 要するに、解散の大義はない。

 三党合意を持ち出すなら、定数削減などの実施に係る三党合意はどうなっているのか。
 当時の野田総理と安倍自民党総裁が大見得を切って約束したのに、それを実施しないまま、なし崩し的に増税を実施したことのほうが重大な約束違反だ。
 もし解散するなら、こちらの約束の変更について信を問う選挙にすべきだ。

 解散は、安倍政権が自民党内の消費税増税推進派や野党を脅すため、という面もあるが、実はアベノミクスが完全に行き詰まって、追い詰められている、という面が強い。
 どういうことか。
 仮に財務省の言いなりになって消費税増税をすれば、デフレ脱却と景気回復の両方が腰折れになる可能性が高い。一方増税先送りしても、明るい展望はない。八方ふさがりなのだ。

 アベノミクス第一の矢(大胆な金融緩和)は、先日の黒田バズーカ第二弾でまたもや大幅な円安と株高を演出した。
 しかし、2014年の円安株高で物価ばかりが上がって、実質賃金は消費税増税前からずっとマイナス。庶民の生活は、かえって苦しくなった。増えると安倍が思った輸出も増えない。
 第二の矢(公共事業のバラマキ)も、需要が増えすぎて単価ばかりが異常に上がり、民間の投資を抑えてしまった。日本建設業連合会の統計では、今年度上半期の建設受注が、官需5割増に対し、民需は14%減という悲惨な状況だ。公共事業が民間による成長の芽を摘んでいるのだ。

 結局、日本の矢だけではどうにもならないのだが、本命の第三の矢(成長戦略)も、安倍政権には、既得権と闘って新たな産業や企業を生みだそうという気力も能力もなく、成果は期待できない。

 つまり、単に消費増税延期をしても、ジリ貧の道をたどるしかない。
 増税強行なら、景気が悪化する。
 どう転んでも先の見通しは真っ暗だ。
 それなら野党の準備が整わない今のうちに解散すれば、議席が減るとしてもダメージは小さい。そういう計算なのだ。

 しかし、選挙になれば、増税に反対する政党はない。争点は消費税やアベノミクスではなく、12月10日施行の特定秘密保護法や集団的自衛権、さらには原発再稼働、派遣法改正などになる可能性がある。
 争点を決めるのは安部総理ではない。
 「国家の暴走」を止めるには、国民が自ら争点を決めて自民党の議席を減らすしかない。

□古賀茂明「解散風と国家の暴走 ~官々愕々第132回~」(「週刊現代」2014年11月29日号)
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 【参考】
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【食】「フレンチトーストのもと」に含まれる大量の添加物

2014年11月20日 | 生活
 英名フレンチトースト(仏名パン・ペルデュ)は、牛乳・卵・砂糖などを混ぜた液に浸したパンをフライパンで焼いた料理だ。一日の始め、特に朝食におススメだ。なぜなら、
 ①生命維持に欠かせない3大栄養素を含む。
   ・牛乳・卵の良質なタンパク質
   ・砂糖・パンの炭水化物
   ・バターの油脂
 ② (b)卵黄に含まれるレシチンが脳細胞を活性化させる。

 しかし、食品メーカーや生協などで一定のニーズがある「フレンチトーストのもと」には警戒を要する。
 「フレンチトーストのもと(メープル&バニラ風味」(製造者:キューピー)や「フレンチトースト カスタード風味」(販売者:日本生活協同組合連合会)が市販されている。
 これらの「もと」の原材料には十数種類の原料が記載されているが、その背後に添加物がわさわさと影を潜めている。

 (1)原材料に使われる砂糖や植物油脂などの食品。「食品=安全」と信じては危険だ。
 砂糖の主原料はサトウキビやビート(甜菜)だが、白く精白する精製過程さまざまな薬剤が使用される。搾り取ったカスを薬剤の力でさらに搾り取って製造される植物油も同様。
 問題は使用される薬剤なのだが、これが「原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造過程において使用されないものであって、当該食品中には当該物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの」とされ、表示が免除される(キャリーオーバー)。
 「精製=純度が高い」とは、植物が持っている本来の栄養成分を削ぎ落とし、もやは食品とはいえないものに姿を変えることだ。この点をしかと認識しなくてはならない。

 (2)香料、増粘剤、甘味料、乳化剤は一括表示が認められている添加物だ。
  (a)増粘剤のアルギン酸ナトリウム(Na)・・・・添加すると滑らかさと粘性を出すことができる。ただし、動物実験で心臓や脳などの臓器に障害が出た、という報告がある。  
  (b)甘味料のステビア・・・・キク科ステビアの葉を粉砕あるいは水で抽出したもので、砂糖の250~350倍の甘さを持つ。ただし、純度の低いものには変異原性の不安があり、特に妊娠中の女性は注意が必要であると警告されている。
  (c)CO・OP商品に使用されているコーンシロップ・・・・トウモロコシのでん粉を酵素や酸で分解してシロップにしたものだ。ぶどう糖含有が高く、原料のトウモロコシ(ほとんどが遺伝子組み換え)が安価なため多くの食品に利用されているが、小腸を経由しないで直接血液に入り込み、血糖値上昇などの健康被害を引き起こすことが常に指摘されている。
  (d)乳化剤のソルビタン脂肪酸エステル・・・・ラットで肝臓や腎臓の肥大が報告されている。

 (3)聞き慣れない「乳等を主要原料とする食品」とは何か。
 これは、乳等省令で定められている食品の名称で、バターやチーズ等の乳製品と同様に分類されているものだ。生協では、「デキストリン、植物油脂、乳糖、脱脂粉乳」と説明している。一般企業よりも生協PB商品に、かくも沢山の添加物が使用されているのだ。

□沢木みずほ「これでもまだ、「フレンチトーストのもと」を使います?」(「週刊金曜日」2014年11月14日号)
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【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~

2014年11月19日 | ●佐藤優
 11月2日、親露派武装勢力(ウクライナ東部のドネツク州、ルガンスク州を実効支配)が首長選挙を行った。
 <それぞれの現役の指導者を名乗るザハルチェンコ氏とプロトニツキー氏が当選したと発表。プロトニツキー氏の得票率は63・04%。ザハルチェンコ氏の正確な得票率は発表されなかったが68%前後とみられる。
 ロシア外務省は3日、選挙について「我々は住民の意思表示を尊重する」とする声明を発表し、結果を承認する考えを示した。欧米はウクライナ政府との停戦合意違反として独自選挙を一斉に批判。メルケル独首相の報道官は、ロシアが選挙結果を認めたことを「理解しがたい」とした。(ウクライナ東部マリウポリ=喜田尚)>【注1】

 ウクライナ内戦について、9月5日、ミンスク(ベラルーシの首都)で、中央政府と親露派の間で停戦協定が結ばれた。
 これを受けて、同月16日、ウクライナ最高会議がドネツク、ルガンスク両州の親露派支配地域に「特別な地位」を与える法案を採択した。
 この法律では、12月7日に親露派支配地域で首長と議会の選挙が行われることが定められていた。
 親露派が前倒しで首長選挙を実施したのは、彼らが自称する「ドネツク民共共和国」「ルガンスク人民共和国」はすでに独立しているので、ウクライナの法律に従わなくていい、という姿勢を誇示するためだ。当然、ウクライナは怒り心頭に発している。
 <ウクライナのポロシェンコ大統領は3日、親ロシア派が停戦合意に反して独自選挙を行ったことに反発し、同派が支配する地域の「特別な地位」を定めた法律を廃止する考えを表明した。停戦合意の空洞化が進んでいる。
 ポロシェンコ氏は3日夜のテレビ演説で、親ロシア派が2日に実施した独自選挙を「戦車と自動小銃の銃口を向けて、行われた笑劇だ」と批判した。
 (中略)親ロシア派支配地域では勝手にモスクワ時間が導入され、事実上の「ウクライナからの分離」が着々と進む。親ロ派は繰り返し「独立」を口にし、停戦を利用する形で当初の目的を遂げつつある。
 親ロシア派の後ろ盾になっているロシアは、2日の独自選挙について、「全体として組織的に行われ、投票率も高かった」(ロシア外務省)と評価。当選した2人の指導者を住民の代表として認めるようウクライナ政府や欧州連合(EU)に求める考えだ。事実上の独立状態を獲得しつつあるドネツク、ルガンスク両州の現状を固定化する狙いがある。>【注2】

 今回の選挙で鍵を握る人物は、「ドネツク人民共和国」のザハルチェンコ「首相」(自称)だ。炭鉱労働者(技師)を務めたということ以外、ザハルチェンコの詳しい経歴は分からない。彼は、ロシア軍参謀本部諜報総局(GRU)と緊密な協力関係を維持しているものと推定される。
 9月5日の停戦協定は、プーチン大統領がポロシェンコに強い圧力をかけて実現したものだ。この停止協定をザハルチェンコに遵守させることができないという事実が可視化されたことは、プーチンにとっても大打撃だ。

 【注1】記事「親ロ派独自選挙「2氏当選」 ロシア承認の意向 ウクライナ東部」(朝日デジタル 2014年11月4日)
 【注2】記事「東部、「特別な地位」廃止へ ウクライナ大統領、独自選挙に反発」(朝日デジタル 2014年11月5日)

□佐藤優「ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~佐藤優の人間観察 第89回~」(「週刊現代」2014年11月22日号)
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 【参考】
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【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
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【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
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【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~
【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~
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【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~
【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~
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【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~
【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~
【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」
【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~
【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~
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【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~
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【ウクライナ】とEU間の、難航する協定締結に尽力するリトアニア
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【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~

2014年11月18日 | 社会
 11月11日、永田町に衆院解散の突風が吹いた。安倍晋三・首相がアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合に日本を出発する前に仕込んだ「時限爆弾」が炸裂した。
 導火線に火をつけたのは、二階俊博・総務会長だ。11日、自民党役員会で、二階は谷垣禎一・幹事長に質問した。マスコミで取り沙汰されている衆院解散の現状を説明してもらいたい、云々。
 谷垣は、解散の可能性を否定せず、「解散の大義名分」と解散をめぐるスケジュール管理の必要性だけを説明した。
 むろん、この時点で二階も谷垣も安倍の意向のほとんどを知っていた。谷垣と二階は、記者会見でさらにアクセルを踏んだ。
 谷垣:「総理は熟慮されて判断されると思う」・・・・政界の常識では「熟慮」に続く言葉は「断行」でしかない。
 二階:「常在戦場の意気込みで、時が来れば果敢に戦い、党が圧勝できるような態勢を整えたい」・・・・谷垣より明確に語った。

 さらに解散風を煽ったのは、山口那津男・公明党代表だ。
 「報道では年内選挙のシナリオがある。それに対応できる構えを取りたい」
 山口は、外国訪問に出発する直前に安倍と1時間会談し、解散の方針を伝えられた。

 安倍は「解散の大義名分」も早くから決めていた。来年10月の消費増税先送りだ。
 (1)消費増税・・・・2012年8月、野田佳彦・首相(当時)と谷垣禎一・自民党総裁(当時)と山口代表の三者で結ばれた3党合意に基づく。2012年12月の衆議院選挙でこの合意は国民の信を得ており、修正するとなればもう一度国民の意見を聞かねばならない。それが安倍の「解散の大義名分」だ。
 (2)国際公約でもある財政再建・・・・増税を1年半先送りして「2017年4月1日からの実施」を法律に明記することによって財政再建路線の堅持を担保する。菅義偉・官房長官が「安倍内閣はデフレ脱却と財政再建の二兎を追う内閣だ」と繰り返す真意はここにある。
 (3)公明党の強い要請でもある軽減税率の導入・・・・従来の自公合意は「税率10%時」として具体的な実施時期については曖昧にしてきたが、それを2017年4月1日の「引き上げ時」と明確にすることになった。
 (4)公明党としては、年内解散総選挙は、来年4月1日の地方選挙に影響が少ないことと、最も回避したい2016年夏の衆参同日選挙が事実上消えることを意味する。
 (5)政敵・・・・民主党の選挙準備が全く整っていない。この時期の選挙は、安倍が機をうかがっていたタイミングでもあった。民主党は海江田万里・代表が求心力を欠き、彼が代表に就いて以来「海江田降ろし」がくすぶり続けていた。しかし、海江田に代表を辞める意思がなく、苦肉の策として海江田に距離を置く枝野幸男・幹事長、福山哲朗・政調会長らによって執行部を固めた。こんな組み合わせでまともな選挙態勢が組めるだろうか。安倍は、そこを見逃さなかった。民主党は、つい1週間前まで来年4月の統一地方選の準備を進めていた。不意をつかれ、なすすべもない。

 安倍は、解散に執念を燃やし、周到に準備した。それは、外交面に端的に表れている。
 解散戦略の一環に日中首脳会談の実現があった。安倍は「何が何でも会談を設定するように」と外務省に厳命している。
 それまでの安倍は、首脳会談の設定には「前提条件を付けない」ことが基本だった。その基本を変え、谷内正太郎・国家安全保障局長を北京に派遣し、「玉虫色の4項目合意」をまとめさせている。
 2年前の総選挙で、安倍は民主党政権を「外交敗北」と攻撃していた。その安倍が日中首脳会談すらできないようでは同じ言葉で反撃される可能性があったからだ。そのためのつじつま合わせが、逆に「外交成果」となった。
 極めつきは外務省への指示だ。「12月には外交日程を入れないでほしい」
 月に一度は外国訪問をしている安倍が、早くから「12月選挙」のシナリオを描いていたことの証しだ。
 
□後藤謙次「安倍が描いた解散戦略の全内幕 消費増税は1年半先送りで実施 ~永田町ライブ 218~」(「週刊ダイヤモンド」2014年11月22日号)
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 【参考】
【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた
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【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案

2014年11月17日 | 社会
 「文書通信交通滞在費(文通費)」という言葉が頻繁にテレビに登場するようになった。
 公の活動に必要な印刷代、郵便代、交通費、出張の際の宿泊費などの経費を、毎月100万円議員に支払う・・・・「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(歳費法)」第9条第1項に、そう書かれている。それだけでは、何も問題はなさそうだ。

 民間企業でも仕事上の経費は会社が払う。ただ、税務上の必要もあり、報告書と領収書は必要だ。 
 ところが、100%税金で支払われる文通費は、領収書が不要で、使途も全く問われない。誰もが「おかしい」と思うだろう。月額100万円、年額1,200万円を何に使ってもよいということであれば、それは給料と同じだ。
 国会議員には、年間2,000万円超の給料(「歳費」と「期末手当」)が支払われている。何に使おうと自由だし、領収書はいらない。
 文通費は、法律上使途は限定されているが、領収書は要らないから、生活費や住宅ローンの返済にあててもわからない。国会法第38条では、これを「手当」、つまり給料だと認めている。給料であれば税金がかかるが、この文通費には何故か税金がかからない(歳費法第9条2項)。理由は、それが経費だからだ、というのだ。
  ①給料だから何に使っても勝手で領収書は要らない。
  ②経費だから非課税である。
 ①と②が同時に成り立つというのだ。とんでもない話だ。

 地方議会では、議員に毎月一定の額が政務活動費として支払われるが、国会とは違い、経費扱いで、地方自治法により使途の報告義務がある。
 ただし、細かいことは各地方議会任せなので、後ろ向きなところもあれば、領収書を全てネット公開しているところもある。

 国会議員には使途報告義務がないから、野々村竜太郎・元兵庫県議会議員のような虚偽報告の問題は生じない。使途不明だと、それが多すぎるという議論もできない。
 国民がこの問題を認識すれば、根本的な見直しが必要だ、と考えるのは当然だ。
 むろん与野党ともそんなことはしたくない。
 しかし、政治資金規正法違反案件で大臣辞任が続いた自民党は、嫌嫌ながら、議論の必要性を認めた。
 野党各党も、議論を否定するところはない。しかし、本当に前向きなのは維新の党くらいだ。
 同党は、10月22日、文通費の使途の報告と公表の義務を課すため、歳費法改正案を国会に提出した。しかし、何故かマスコミの反応は鈍い。政治部の記者たちが政治家に頻繁に接待を受けているからか。
 ただし、維新の法案にも欠陥がある。何故なら、使途報告は義務づけるが、公表の仕方は、両議員の議長が決めるという内容だからだ。両院議長は、元々自民党守旧派の人たち。領収書は非公表とかコピー禁止などとされかねない。

 「報告書と領収書を一円単位までネットで公開する」という趣旨を法律に書くのは容易だ。
 重要なのは、使途を国民が簡単にチェックできる、ということだ。
 それがやりにくい法律では、形だけ公開となっても、事実上誰もチェックしないということにもなりかねない。

 この法律の今国会の成立は困難だ。
 だから、維新の党は来年の通常国会で、最先端の地方議会を超えるような内容の法案を提出するべきだ。

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【佐藤優】宗教弾圧と民族移住 ~民衆宗教を恐れる中国~

2014年11月16日 | ●佐藤優
 チベット自治区におけるチベット仏教弾圧、新疆ウイグル自治区におけるイスラム教弾圧、非公認で活動するキリスト教会に対する取り締まりなど、中国政府が宗教を弾圧する理由は何か。

 中国政府は、キリスト教徒土着宗教が結び付いて民族宗教となることを非常に恐れている。元帝国末期の紅巾の乱(14世紀)、太平天国の乱(1950~60年代)など、民衆宗教と結び付いた民衆蜂起の歴史があったことを記憶しているからだ。
 基本的に、中国共産党は無神論だ。だから中国のエリートの中に宗教を信じる人は少ない。儒教が例や秩序のベースになっている。

 一方、圧倒的大多数を占める一般の民衆は、道教を信仰している。これは漢民族の土着的・伝統的宗教だ。まじないや八卦を中心とする民族宗教だ。
 道教そのものは土地への信仰、穀物の神を敬う、といった農耕と結び付いた宗教だ。よって、民衆が革命に向かうような脅威はない。
 しかし、そこにキリスト教の宗教指導者が入り込み、まじないの世界とイエス・キリストの平等主義が結び付き、政治的な思想を持つと、すごい民衆パワーとなって大変な騒動になる。日本でも、天草四郎が起こした島原の乱がある。 

 中国共産党は、1949年に中華人民共和国を建設して以来、キリスト教、特にカトリック教に対して非常に厳しく接しててきた。共産党は、ローマ教皇を頂点に全世界へ広がるローマ・カトリック教会を弾圧。文化大革命(1966~77)では、中国内の教会はほぼ閉鎖された。

 中国政府は、憲法では信教の自由を保障しているが、基本的に宗教団体は政府当局の管理下に置き、監視している。
 外国人宗教者は排除し、中国人だけで教会を運営し、伝道することが前提で、プロテスタント系の「中国基督教教会」と、司祭の任命権をローマ教皇庁ではなく政府が握るカトリック系の「中国天主教愛国会」のみが政府に公認されている。
 しかし、政府の干渉を嫌って、公認されていない「地下教会」も多い。中国のキリスト教徒6,000万人のうち3分の2は地下教会の信者と言われる。
 地下教会に対して、政府は、教会でただ礼拝しているだけなので弾圧までは今はしていない。しかし、民主化運動など何らかの社会的な活動や思想を疑われれば、当然弾圧される。

 チベット族は、チベット仏教が民族としてのアイデンティティになっている。それを中国当局は認めない。
 新疆ウイグル自治区(イスラム教)に関しては、ウィグル族が民族自治の拡大を求めるのに対し、中国は認めない。
 これらは、どちらかというと、宗教問題というよりは民族問題だ。

□記事「佐藤優が指南 宗教から読み解く国際ニュース」(「週刊ダイヤモンド」2014年11月15日号)
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 【参考】
【佐藤優】世界イスラム帝国へ、ネット時代の世界革命 ~イスラム国の行方~
【佐藤優】来世より現世を生きる教えが強い絆を生む ~欧州南北問題~
【佐藤優】米国人とユダヤ人が共有する選民思想 ~米国とイスラエル~

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