第1講座 佐藤優の知的技術のヒント
(a)佐藤優の“脳力”
<私は朝5時に起床し、起きたその瞬間から仕事にとりかかります。(中略)睡眠は中学1年生以来3時間だったのですが、最近は健康を考えて4時間に延ばしました>
<私は毎月300冊の本を読みますが、(中略)新たな知識となる情報は2割程度。その2割を補充すればいいと考えるわけです>
(b)佐藤優の本棚
<今までに本代として使った金額は、学生時代が総額500万円ぐらい。卒業後は、月に15万円で年間180万円、それが30年ですから、ざっくり言って6,000万円というところでしょうか>
<熟読の方法は、3回読むことです。1回目は、線を引きながら読む。2回目は、特に大事なところを線で囲む。それをノートに書き写す。3回目は、結論部分を3回読んだ上での全体の通読となります。これは余程大事な本の場合です>
<思いついたことの書き込み、ページの折り曲げ、付箋なども多用すべきです>
<知識人や学者の著作を読むと、大抵の場合、そのバックボーンにある“思考の鋳型”みたいなものが分かりますね>
第2講座 情報を拾う、情報を使う
(a)僕たちの情報収拾術 【池上彰×佐藤優】
<ただ基本的に読むのは紙です。どうしてかというと、三次元の立体物だからです。本は折り目をつけたり、書き込みをしたりして、“汚く”読んだほうがいい。そうすると、どのへんに何が書いてあったかが記憶に残る>
(b)情報戦を制する世界の常識 【西本正明×佐藤優】
<(引用者注・旧ソ連が)そこまで職業訓練するのは、じつは再就職を考えてのことなんです。転職できるノウハウを持ってないやつは事故が起きた時、精神的余裕を失って組織と戦争を起こす。だから二つの職を持つようアドバイスしているという。イギリスもイスラエルもそうですよ。常にトラブルが起きることを想定して予防線を張っているんですね>
第3講座 知をビジネスに取り込む
(a)凡人が生き抜く話術7ヵ条
<相手との距離感は、イントネーションも含め、会話全体で測っていくものですが、端的に距離感を表すのが敬語です。尊敬語や謙譲語の使い分けなど、難しく考える必要はありません。近代以降、身分制がなくなり、日本の社会はフラット化しました。謙譲語や尊敬語は使い分けられなくても、かまわない。丁寧語をきちんと使えることが新たな敬語のルールです>
(b)困難な時こそ読む「聖書」の言葉
<日本では、近代化と同時期にキリスト教が本格的に導入された。そのため近代文明の根底を流れる合理主義とキリスト教は相性がよいと受け止められがちだが、これは本質的な誤解である。キリスト教の特徴は、理性や学問に究極的価値を認めない反知性主義の宗教だ>
(c)リーダーシップの要諦は『太平記』にあり
<具体的に、後醍醐天皇と楠木正成の関係を見てみよう。正成は、合理的観点から戦略と戦術を考える。味方が劣勢なときに、虚勢を張って自滅するような戦いは避けるべきであると考える。正成は、<『多くの愚者が述べたてる意見よりは、一人の賢者の意見に従うほうがよい』という言葉がありますから、道理をわきまえぬ人の非難は、必ずしもお心に掛けられるべきではありません。ひたすらに戦うべきところは、それを判断して進撃し、合戦に勝機はないと知ったときは退くことこそ、良将と申すのでありましょう。ですから、『虎を素手で殺そうとしたり、大河を徒歩で渡ろうとしたりする危険を冒して、死んでも後悔しないような者とは、事をともに行うことはできない』と、孔子も門人の子路を戒めていらっしゃいます。>(長谷川端校注・訳『太平記② 新編日本古典文学全集55』小学館、1996年、307頁)というような思考をする>
(d)世界史のリーダーたち 【山内昌之×佐藤優】
<(オーストリア・ハンガリー帝国からの独立運動を組織してチェコスロバキア共和国を建国したトマーシュ・マサリクは)また、ソ連に対しては「ロシア帝国が軍服を裏返して着ただけの赤色帝国主義者にすぎない」という冷徹で、かつユーモアのセンスを感じさせる洞察を示しています>
第4講座 知の幹を作る最低限の読書
(a)日本の古典に立ち返れ
<「日本に必要なもの」として、私は中学、高校における古文と漢文の教育を強化することをあげたい。
現下の国際政治では、各国が露骨に国益を追求する帝国主義が復活しはじめている。アメリカ、中国、ロシアという三大帝国主義国に囲まれているという地政学的状況から日本は逃れることができない。21世紀に日本国家と日本民族が生き残っていくためには、まずわれわれ日本人が、日本人としての気概と誇りを取り戻さなくてはならない。教育基本法に愛国心を書けば、愛国心がつくなどというのは、典型的な小官僚の発想だ。真の愛国心は、各人の心の中から湧いてくるものだ。
(中略)革命による王朝交代ができないという特徴をもった日本では、どんな権力者でも権威を独占することはできないことが鍵であることに気づいた。そこから寛容の精神と多元性、すなわち他者と共存共栄する英知が生まれる。『平家物語』『太平記』『神皇正統記』『大日本史』などを読み解くことで、その英知を体得し、現実の外交に生かすのだ>
(b)ビジネスマンが読むべき30冊 【斎藤美奈子×米光一成×佐藤優】
<(教養とは)『「教養」とは何か』の著者、ヨーロッパ中世史の阿部謹也さんは世の中に入っていくときに「そこで自分はどうやって生き抜くかを考えるのが教養である」と行っている。知識を増やすことではなく、世の中での自分の位置を考えていくのが教養だと。少年の成長物語をビルドゥングスロマンと呼ぶでしょ。それをなぜ教養小説と訳すのかわからなかったのですが、この本を読んでやっと意味がわかった>【斎藤美奈子】
(c)宗教を知り、自分を知る
<宗教とは言い換えるなら、理性を超えた存在や感情に対する畏敬の念。私は日本人ほど宗教的な民族はいないと思っています。お宮参りも宗教的な行為だし、厄年を気にするのもそう。大晦日にNHK紅白歌合戦を見て、その後『ゆく年くる年』で除夜の鐘を聞くのも、カオスとコスモスを一度に体験する宗教的なイベントといえる。世界的に見て、占いがこれほど氾濫している国は珍しい。血液型も自己啓発もスピリチュアルも、私から見るとすべて宗教的なものを求めている証なんです>
(d)魂を揺さぶる現代日本文学の収穫
<悪魔とは、悪を人格的に体現した存在だ。悪は抽象的存在でなく、人間と人間の関係から生まれる。従って、悪があるところには必ず悪魔がいるのだ>
□佐藤優『知の教室 ~教養は最強の武器である~』(文春文庫、2015)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~」
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~」
「【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~」
「【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~」
「【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次」
「【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次」
「『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』」
★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
(a)佐藤優の“脳力”
<私は朝5時に起床し、起きたその瞬間から仕事にとりかかります。(中略)睡眠は中学1年生以来3時間だったのですが、最近は健康を考えて4時間に延ばしました>
<私は毎月300冊の本を読みますが、(中略)新たな知識となる情報は2割程度。その2割を補充すればいいと考えるわけです>
(b)佐藤優の本棚
<今までに本代として使った金額は、学生時代が総額500万円ぐらい。卒業後は、月に15万円で年間180万円、それが30年ですから、ざっくり言って6,000万円というところでしょうか>
<熟読の方法は、3回読むことです。1回目は、線を引きながら読む。2回目は、特に大事なところを線で囲む。それをノートに書き写す。3回目は、結論部分を3回読んだ上での全体の通読となります。これは余程大事な本の場合です>
<思いついたことの書き込み、ページの折り曲げ、付箋なども多用すべきです>
<知識人や学者の著作を読むと、大抵の場合、そのバックボーンにある“思考の鋳型”みたいなものが分かりますね>
第2講座 情報を拾う、情報を使う
(a)僕たちの情報収拾術 【池上彰×佐藤優】
<ただ基本的に読むのは紙です。どうしてかというと、三次元の立体物だからです。本は折り目をつけたり、書き込みをしたりして、“汚く”読んだほうがいい。そうすると、どのへんに何が書いてあったかが記憶に残る>
(b)情報戦を制する世界の常識 【西本正明×佐藤優】
<(引用者注・旧ソ連が)そこまで職業訓練するのは、じつは再就職を考えてのことなんです。転職できるノウハウを持ってないやつは事故が起きた時、精神的余裕を失って組織と戦争を起こす。だから二つの職を持つようアドバイスしているという。イギリスもイスラエルもそうですよ。常にトラブルが起きることを想定して予防線を張っているんですね>
第3講座 知をビジネスに取り込む
(a)凡人が生き抜く話術7ヵ条
<相手との距離感は、イントネーションも含め、会話全体で測っていくものですが、端的に距離感を表すのが敬語です。尊敬語や謙譲語の使い分けなど、難しく考える必要はありません。近代以降、身分制がなくなり、日本の社会はフラット化しました。謙譲語や尊敬語は使い分けられなくても、かまわない。丁寧語をきちんと使えることが新たな敬語のルールです>
(b)困難な時こそ読む「聖書」の言葉
<日本では、近代化と同時期にキリスト教が本格的に導入された。そのため近代文明の根底を流れる合理主義とキリスト教は相性がよいと受け止められがちだが、これは本質的な誤解である。キリスト教の特徴は、理性や学問に究極的価値を認めない反知性主義の宗教だ>
(c)リーダーシップの要諦は『太平記』にあり
<具体的に、後醍醐天皇と楠木正成の関係を見てみよう。正成は、合理的観点から戦略と戦術を考える。味方が劣勢なときに、虚勢を張って自滅するような戦いは避けるべきであると考える。正成は、<『多くの愚者が述べたてる意見よりは、一人の賢者の意見に従うほうがよい』という言葉がありますから、道理をわきまえぬ人の非難は、必ずしもお心に掛けられるべきではありません。ひたすらに戦うべきところは、それを判断して進撃し、合戦に勝機はないと知ったときは退くことこそ、良将と申すのでありましょう。ですから、『虎を素手で殺そうとしたり、大河を徒歩で渡ろうとしたりする危険を冒して、死んでも後悔しないような者とは、事をともに行うことはできない』と、孔子も門人の子路を戒めていらっしゃいます。>(長谷川端校注・訳『太平記② 新編日本古典文学全集55』小学館、1996年、307頁)というような思考をする>
(d)世界史のリーダーたち 【山内昌之×佐藤優】
<(オーストリア・ハンガリー帝国からの独立運動を組織してチェコスロバキア共和国を建国したトマーシュ・マサリクは)また、ソ連に対しては「ロシア帝国が軍服を裏返して着ただけの赤色帝国主義者にすぎない」という冷徹で、かつユーモアのセンスを感じさせる洞察を示しています>
第4講座 知の幹を作る最低限の読書
(a)日本の古典に立ち返れ
<「日本に必要なもの」として、私は中学、高校における古文と漢文の教育を強化することをあげたい。
現下の国際政治では、各国が露骨に国益を追求する帝国主義が復活しはじめている。アメリカ、中国、ロシアという三大帝国主義国に囲まれているという地政学的状況から日本は逃れることができない。21世紀に日本国家と日本民族が生き残っていくためには、まずわれわれ日本人が、日本人としての気概と誇りを取り戻さなくてはならない。教育基本法に愛国心を書けば、愛国心がつくなどというのは、典型的な小官僚の発想だ。真の愛国心は、各人の心の中から湧いてくるものだ。
(中略)革命による王朝交代ができないという特徴をもった日本では、どんな権力者でも権威を独占することはできないことが鍵であることに気づいた。そこから寛容の精神と多元性、すなわち他者と共存共栄する英知が生まれる。『平家物語』『太平記』『神皇正統記』『大日本史』などを読み解くことで、その英知を体得し、現実の外交に生かすのだ>
(b)ビジネスマンが読むべき30冊 【斎藤美奈子×米光一成×佐藤優】
<(教養とは)『「教養」とは何か』の著者、ヨーロッパ中世史の阿部謹也さんは世の中に入っていくときに「そこで自分はどうやって生き抜くかを考えるのが教養である」と行っている。知識を増やすことではなく、世の中での自分の位置を考えていくのが教養だと。少年の成長物語をビルドゥングスロマンと呼ぶでしょ。それをなぜ教養小説と訳すのかわからなかったのですが、この本を読んでやっと意味がわかった>【斎藤美奈子】
(c)宗教を知り、自分を知る
<宗教とは言い換えるなら、理性を超えた存在や感情に対する畏敬の念。私は日本人ほど宗教的な民族はいないと思っています。お宮参りも宗教的な行為だし、厄年を気にするのもそう。大晦日にNHK紅白歌合戦を見て、その後『ゆく年くる年』で除夜の鐘を聞くのも、カオスとコスモスを一度に体験する宗教的なイベントといえる。世界的に見て、占いがこれほど氾濫している国は珍しい。血液型も自己啓発もスピリチュアルも、私から見るとすべて宗教的なものを求めている証なんです>
(d)魂を揺さぶる現代日本文学の収穫
<悪魔とは、悪を人格的に体現した存在だ。悪は抽象的存在でなく、人間と人間の関係から生まれる。従って、悪があるところには必ず悪魔がいるのだ>
□佐藤優『知の教室 ~教養は最強の武器である~』(文春文庫、2015)
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【参考】
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~」
「【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~」
「【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~」
「【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~」
「【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次」
「【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次」
「『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』」
★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら