語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

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【大岡昇平】の文章の特徴 ~現代名文案内~

2016年08月31日 | ●大岡昇平
 

 (1)小説やエッセイ40作品を選び、さわりを抜き出して名文たるゆえんを解説する。併せて作者の略歴、代表作、文章の特徴も簡潔に紹介する。
 「ものの存在を問う」「人生の陰翳を映す」など6部に分かたれる。たとえば大岡昇平『野火』は、福永武彦『風花』などとならんで「心のひだを照らす」に収録される。『野火』から引用されているのは、次の箇所である。

 <月が村に照っていた。犬の声が起り、寄り合い、重なり合って、私が歩むにつれ、家々の不明の裏手から裏手を伝って、移動した。声だけ村を端れても、林の中まで、追って来た。
 靄が野を蔽い、幕のように光っていた。動くものはなかった。遠く、固い月空の下に、私の帰って行くべき丘の群が、薄化粧した女のように、白く霞んで、静まり返っていた。
 悲しみが私の心を領していた。私が殺した女の屍体の形、見開かれた眼、尖った鼻、快楽に失心したように床に投げ出された腕、などの姿態の詳細が私の頭を離れなかった。
 後悔はなかった。戦場では殺人は日常茶飯事にすぎない。私が殺人者となったのは偶然である。私が潜んでいた家へ、彼女が男と共に入って来た、という偶然のため、彼女は死んだのである。
 何故私は射ったか。女が叫んだからである。しかしこれも私に引金を引かす動機ではあっても、その原因ではなかった。弾丸が彼女の胸の致命的な部分に当ったのも、偶然であった。私は殆んどねらわなかった。これは事故であった。しかし事故なら何故私はこんなに悲しいのか>

 (2)著者が大岡の文章の特徴とするものを要約すれば次の3点となる。
 ①論理的な表現である。論理的な接続詞(「しかし」)の多用。抽象名詞を主語とする翻訳的文型(「悲しみが私の心を領していた」)。「私に引金を引かす動機ではあっても、その原因ではなかった」と動機と原因を峻別し、一方を否定して他方を肯定する分析的判断である。
 ②感覚的・情緒的表現である。犬自体ではなくて「犬の声」と表現し、「寄り合い、重なり合って」と擬人的に表現する。「靄が野を蔽い、幕のように光っていた」の比喩、「固い月空」の感覚的で的確な形容。
 ③「主観的な論理文体」である。引用文の後半は一文が7~13字の短文を連ねている。余計な修飾語が削られ、情緒が排除されている。さらに「戦場では殺人は日常茶飯事にすぎない」と一般化し、さらに「私が殺人者となったのは偶然である」と自らを論理的に納得させようとする。しかし、「『悲しい』という現実の感情の前では、そういうことばはすべてむなしく響く」。
 「主観的な論理文体」は思わぬ効果をあげる。「作者が意図的に排除したはずの叙情が流れる」のだ。

 あえて付言すれば、大岡における「論理的な文体」は感情を抑圧するためでなくて、むしろ感情をその生動するがままに純粋に抽出するための装置だと思う。だからこそ、『レイテ戦記』のような記録文学においてさえ、そこから響いてくるのは濃厚な感情、死せる兵士たちへの鎮魂の思いなのだ。

□中村明『現代名文案内 ~文章ギャラリー40作品~』(ちくま学芸文庫、2000)
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【メディア】赤字目前の危機にある朝日新聞社の陥穽 ~「PDCAを回す」で独創性喪失~

2016年08月31日 | 社会
 (1)朝日新聞社の経営が危機的状況にある。2016年度の第一・四半期決算(同年4~6月)で「朝日新聞」の売上高は、
   前年同期比36億円減の637億円。
広告収入が予想以上に落ち込んだことなどが響いた。賃金カットなど営業支出を抑えることで何とか10億円の営業利益を確保したものの、赤字転落は目前だ。

 (2)数字以上に危機的なのは、渡辺雅隆・社長に経営を立て直す明確なビジョンと哲学がほとんどなく、目先の利益確保と業績がよい企業の物真似に走っている点だ。
 新聞社の「生命線」は、何といっても記事の内容。記者一人ひとりの志や問題意識がそこに反映されるべきだが、
 <今の「朝日新聞」では社員教育で過剰な問題意識を持たないようにと指導されている。「吉田調書問題」のようなトラブルが起こったり、企業を批判してそれが広告減につながったりすると一部の上層部が考えているから>【朝日関係者】
だそうだ。
 いずれ記者職枠の採用も止めるという。
 <記者だけは別格と誤解して他の仕事を見下すようになるので、朝日社員として採用して、サラリーマンに徹する人材を旺盛するのが狙い>【同】
 こんな新聞社に優秀な人材が入るはずがない。編集能力の先細りを経営陣自らが率先して実践するようなものだ。
 経営トップが自らの頭で考えることを放棄しているようにも見える。
 <渡辺社長は、民間企業がPDCAを回す経営をしていると最近知って、真似して導入しようとしている>【ある幹部】

 (3)PDCAとは、プラン(P/計画)、ドゥー(D/実効)チェック(C/計画通り実効できたかの確認)、アクション(A/軌道修正)のことだ。この「PDCAを回す」経営を徹底している企業がトヨタ自動車だ。
 トヨタでは、社長から会社の年度方針が示されると、それを受けて各部門が決めたことを部、室、グループなど組織単位でブレークダウンしていく。
 常に好業績を出すトヨタの経営のノウハウの一つとして、カンバン方式と並んで「PDCAを回す力」が挙げられるため、多くの企業が真似をしている。
 しかし、ここで忘れてならないのは、
   P→D→C→A→S
とAの後にSが来ることだ。Sとはスタンダーダイゼーション(標準化)。結局、難しい課題解決が誰でもできるように仕事を標準化して、効率化していくことに目的がある。
 これには一定の効果があるものの、独創性が著しく低減する弊害を伴う。なぜなら、会社が指示した方針をベースに考えていくので、現場が独自に斬新な発想を生み出す力が弱くなるからだ。

 (4)実は、自動車業界でも、
 <トヨタの真似をしてPDCAを回すことをやり過ぎた結果、独創的な新車が出せなくなった>【ホンダ元幹部】
との反省の声も出ているのだ。
 新聞社の、特に編集現場のようなクリエイティブであるべき職場に似つかわしくない仕事の進め方が「PDCAを回す」ことなのだ。

□井上久男「赤字目前の危機にある朝日新聞社の陥穽/「PDCAを回す」では独創性が失われてゆく」(「週刊金曜日」2016年8月26日号)
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【佐高信】の佐藤優批判(2) ~創価学会と安保法制~

2016年08月30日 | 社会
 (1)2014年暮、辺見庸と佐高信の共著『絶望という抵抗』(金曜日)を差し出すと、佐藤優はパラパラとめくって、自分への批判の箇所を読み、佐高の面前で激しく辺見を罵倒し始めた。
 それを見ながら佐高は、佐藤には批判を食って太るたくましさはないんだなと思った。
 辺見は、佐藤が「創価学界の皆さん、よく頑張った。あなた方がいなければ、とんでもない集団的自衛権になっていました」と主張した、と指弾し、これはまさに1920年、30年代にナチス政権が取り込んだ情況と基本的に同じだと批判している。
 たしかに佐藤は『創価学会と平和主義』(朝日新書)で「公明党がブレーキ役として与党にいなければ、憲法に制約されない集団的自衛権の行使が閣議決定されていた」と公明党および創価学会を讃えているが、では「一人の学会員として」安保法制という名の戦争法に反対した天野達志らはどうなるのか。創価学会員ではない佐藤より、池田大作センセイの思想を理解していないから反対していると言いたいのか。
 氏家法雄・「安保法に反対する創価大学・創価女子短大関係者有志の会呼びかけ人」は、『宗教と現代がわかる本 2016』(平凡社)の座談会で、賛成者は日本会議系の憲法学者のコメントを載せた「公明新聞」の記事を受け売りするだけだったと落胆している。
 「識者も太鼓判」に安心して「考えなくなった」現在の学会の反知性主義の惨状に戦慄しているのだが、佐藤もその「識者」の一人として天野らを「ムラ八分」的状況に追いこむ側にまわっていることは否定できないだろう。批判にアレルギーを感じた佐藤が、絶対帰依の池田信仰に凝り固まった創価学会に近づくのは必然だったかもしれない。

 (2)佐藤は信じられない自己礼賛に走る。2016年6月19日付け「日刊ゲンダイ」の「週末オススメ本ミシュラン」で宮家邦彦との共著『世界史の大転換』(PHP新書)を挙げ、三ツ星をつけたのだ。ルール違反の自画自賛だろう。しかし、これは自信がある故ではない。批判恐怖症の自信のなさの結果だ。いま佐藤は、ある意味でバランスを失っている。

 (3)佐藤は土下座をしたことがある。佐藤の盟友の鈴木宗男が「月刊日本」8月号に「いまどき、あえて土下座する志」として書いている。
 先の参院選で鈴木は、自民党候補の柿木克弘のために土下座をしたというのだ。民主党から鞍替えして自民党入りした鈴木の娘の貴子は、「鈴木(新党大地)代表は娘である私の選挙でも土下座したことはありません。柿木さん、鈴木宗男の心、想いを是非ともわかって頂きたい」と挨拶したとか。これで会場の空気がガラッと変わったというが、鈴木がそこまでやっても柿木は落選した。
 そして鈴木は「私のために土下座してくださる人もいた」として、佐藤の名を挙げた。2011年9月21日、毎年恒例の「鈴木宗男を叱咤激励する会」で、鈴木は喜連川社会復帰促進センターに服役中だったが、歌手の松山千春が「本人がいないにもかかわらず、これだけ大勢の方々にお集まりいただき・・・・」と土下座し、佐藤も「皆さんの助けで鈴木さんに政治活動をさせてください」と土下座したという。自分が土下座する人間は容易に他人を土下座させる人間だ。よほど人間をバカにしていなければ土下座などできるものではない。佐藤よ、お前もか。佐高は信じられない思いで胸がいっぱいになった。

□佐高信「土下座した佐藤優の批判恐怖症 ~新・政経外科 第79回~」(「週刊金曜日」2016年8月26日号)
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 【参考】
【佐高信】の佐藤優批判(1) ~電事連・竹中平蔵・創価学会~
【佐高信】脱退のススメ ~連合東京のダラ幹~
【佐高信】激しい創価学会批判で当選した菅義偉官房長官
【佐高信】舛添を支援した自公と連合東京の責任
【佐高信】自民党と創価学会、水と油の野合
【戦争】おやじ、一緒に牧野村へ帰ろう ~戦没者の遺族の声~
【政治】岸信介の悪さの研究
【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~
【人】安倍首相とやしきたかじん“純愛妻”の共通点 ~百田尚樹~
【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~
【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~
【本】『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹の実像 ~本屋大賞~
【震災】世論を買い占める東電、恥ずかしい広告を出す政府~佐高信と寺島実朗の対談~
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【佐高信】の佐藤優批判(1) ~電事連・竹中平蔵・創価学会~

2016年08月30日 | 社会
 (1)2冊も共著を出した者として、そろそろケジメをつけなければならない。そう思ったのは、佐藤優の「お抱え」があまりに露骨になってきたからだ。三つある

 (2)その一、電気事業連合会・・・・3月2日付け「東奥日報」の電事連の「全面広告」に出て、「エネルギー安全保障の観点から原子力発電の必要性を強調」している。“原発文化人”の仲間入りをしたということらしい。言論人がPRページに出るのもどうかと思う。熊本の大地震でも川内原発を止めようとしない政府や九州電力にとっては心強い味方だろう。佐高信『原発文化人50人斬り』(光文社知恵の森文庫)が増刷されたら、ぜひ佐藤を加えたい。

 (3)その二、「新自由主義」・・・・竹中平蔵との共著『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか?』(ワニブックス)において、<竹中さんに対して「新自由主義者だ」などというレッテルを貼ったり、あるいは「権力に近い御用学者で、本当の学者じゃない」などと批判したりするのは、4分の3ぐらいが嫉妬、残りの4分の1が偏見だといえる>と書いている。
 佐高は、竹中を学者ではなく、ピンハネ業者のパソナの会長として軽蔑している。だから嫉妬のしようがない。『いじめと妬み』を出した渡部昇一と同じように、佐藤は批判者をそうした次元でしか見られないのか。むしろ佐藤の中に嫉妬や怨念が渦巻いているのだろう。何度か会って話した佐藤に、佐高は知識を感じたことはあっても、世にもてはやされるほど知性を感じたことはない。竹中サンも尊敬するけど、マルクス経済学者の鎌倉孝夫さんも尊敬する、と言って恥じないところに、佐高は佐藤の打算を感じる。そして、敵にも味方にも武器を売る武器商人的狡猾さを感じ取る。佐藤は佐高との共著『世界と闘う「読書術」』(集英社新書)で、鶴見俊輔を「何だかずるっこい感じがする」と言ったが、「ずるっこい」のは敵味方の区別なく知識という武器を売る佐藤自身ではないか。そのオタク的知識に恐れをなして、多くのメディアが佐藤に群がっているが、しょせん「百科辞典」は「百科辞典」でしかないだろう。
 竹中と佐藤は、TPPについては積極的推進派で一致しているとのことだから、「新自由主義」のお抱えになることによって、安倍晋三政権に協力するということらしい。盟友の鈴木宗男と共に、そして創価学会(公明党)と共に自公連立政権を支えていくということだろう。

 (4)その三、創価学会(公明党)・・・・『創価学会と平和主義』(朝日新書)に続いて、佐藤が山口那津男・公明党代表と出した『いま、公明党が考えていること』(潮新書)は無残な本だった。なぜ、ここまで創価学会および公明党に膝を屈してお抱えにならなければならないのか。この集団の読者を当てにしなければ、ベストセラー作家としての地位が揺らぐからか。安保法制ならぬ戦争法に公明党は歯止めをかけたのだ、と佐藤は力説しているが、それを信じるのは学会の従順な信者たちだけだろう。はじめに結論ありき、つまり公明党および学会を擁護すると決めて、あとからリクツづけするところに、佐高は佐藤の官僚的体質の残滓を見る。学会について書くと余計な敵をつくるから止めたほうがいい、と言われたそうだが、批判した場合のみ、「余計な敵」が出てくるのだ。

□佐高信「知識の“武器商人”佐藤優との訣別 ~新・政経外科 第70回~」(「週刊金曜日」2016年5月13日号)
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 【参考】
【佐高信】脱退のススメ ~連合東京のダラ幹~
【佐高信】激しい創価学会批判で当選した菅義偉官房長官
【佐高信】舛添を支援した自公と連合東京の責任
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【人】安倍首相とやしきたかじん“純愛妻”の共通点 ~百田尚樹~
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【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~
【本】『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹の実像 ~本屋大賞~
【震災】世論を買い占める東電、恥ずかしい広告を出す政府~佐高信と寺島実朗の対談~
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【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序

2016年08月30日 | ●佐藤優
   
 ①山内昌之『新版 イスラームとアメリカ』(中公文庫 1,000円)
 ②宮地ゆう『シリコンバレーで起きている本当のこと』(朝日新聞出版 1,200円)
 ③岡本隆司『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書 820円)

 (1)①において、山内氏は、指摘する。
 <トランプの対外観の基礎になっているのは「取り引き(deal)」ではないかということです。理念や原則を守り通すのではなく、取り引きによってアメリカが経済的に潤い、格差が解消できればそれでいい、と。
 しかし、アメリカがウクライナにおけるロシアの覇権を認めたり、中国が南シナ海で自由行動を取ることを許容したら、同盟国である日韓やドイツがどう出るか。国際政治は大混乱になりますが、そこまでトランプは考えているとは思えない>
 本質を突いた見方だ。トランプ氏が米大統領になると彼の「取引外交」で世界は大混乱に陥る。このような状況に日本も今から備えておく必要がある。

 (2)②は、米国のインターネット戦略を知る上で最適の書だ。宮地氏は、通信傍受を担当するNSA(国家安全保障局)がウィキペディアを監視対象とする理由について、次のように述べる。
 <インターネットのインフラやサービスが欧米、特に米国中心で作られているいま、物事の見方や仕組みはおのずと欧米の見方や、やり方に偏っていく。ウィキペディアはそれを世界中の人に開放することで、知識のあり方を変えようとしてきた。
 NSAが目をつけたのも、まさにそんなウィキペディアの「開かれた」特性だった。
 これまで明るみに出てきたNSAの監視活動では、それぞれの国でウィキペディアに書き込んでいた人たちは、誰が、どこから、どのような書き込みをしていたかまで、情報収集していた可能性が指摘されている>
 確かにこのような監視活動をすれば、対象者の思想傾向が手に取るように分かる。

 (3)③を読むと、現代中国外交の特異な原理の起源が分かる。
 <そもそも中国ほど、国境問題・領土問題を抱えた国も少ない。そしてどの相手国に対しても共通するのは、一方的な主張と大国意識、卑俗な言い方をすれば、「上から目線」の存在であって、そこにはどうやら史上の論理が作用している。
 たとえば「華」「夷」の秩序である。これは礼制にもとづく上下関係なので、中華は常に外夷より上位・優位にあると措定された。それはよい。両者の関係の客観的な実態はどうであれ、主観的な措定そのものは、まちがいない事実だからである>
 と岡本氏は指摘するが、中国流の華夷秩序は、近代国際法と正面衝突する。日本は、先進国で普遍的原理として受け入れられている近代国際法、人権、自由、民主主義などの価値観を基準に中国との国家関係を整理していかなくてはならない。

□佐藤優「「取引外交」による大混乱 ~知を磨く読書 第163回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年9月3日号)
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 【参考】
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
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【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序

2016年08月30日 | ●佐藤優
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書評:『こちらロンドン漱石記念館』 ~来月閉館~

2016年08月29日 | ノンフィクション
 
 著者は、ロンドン漱石記念館長、翻訳家。
 新聞配達をしながら大学を卒業後、渡英してホテルマンとなる。働きながら、アダルト・スクールで西・仏・独語を学んだ。
 貧しさのあまり、「ホテルの食事以外は、よくてコカコーラにビスケット、ひどいときは食パンに水をつけて流しこむ」日々だった。
 ロンドン大学で言語学を聴講するが、早口で聞きとれない。自己嫌悪におちいったときに、かつて留学生だったころの漱石が同じ立場だった、と発見した。
 漱石の下宿や彼の個人教師(クレイグ先生)の家を探索。
 これが契機になって、漱石の足跡研究に本格的にとり組んだ。

 食費をけずって集めた資料がたまっていくにつれ、読みたい、と求める人が増えてきた。
 はじめのころは、訪問客があるつど資料をとりだしていたが、後年、家を手に入れて、一部を常設の資料室とした。これを1984年に記念館として一般公開した。

 5年間のホテル勤務の経験をいかして、旅行会社を自営。この事業は成功したが、10年めに廃業した。「同じポジションに長くいると、仕事の流れも悪くなる」
 以後、渡英当時抱懐していた夢、「日英のかけ橋」に専念する。

 本書は、三部で構成される。
 第一部は、全体の半分強を占め、滞英24年間の半自伝である。漱石記念館の活動、画家牧野義雄研究など日英文化交流史をスケッチする。
 第二部には、英国文化についての短いエッセイを集めた。話題は、パブの楽しみ、紳士クラブの機能と魅力、市民にしたしい美術館・博物館・公園、ふだん着のオークション、英国人のやさしさ、などなど。たとえば、古きよき街なみを語って自動販売機が稀れな点にふれ、日本における自販機の普及は会話の不足、コミュニケーション能力の低下につながる、という文明批評におよぶ。
 第三部は、留学を志すひとのための、痒いところへ手がとどくような心得である。
 語り口は軽妙。それでいて長い英国生活の体験を背後に感じさせる文章である。
 本書をつうじて、10代、20代の者は、型どおりではない生き方があることを知ることができる。
 不惑をすぎて惑う者は、自分がほんとうにやりたいことは何なのか、問いなおす機会をもつことができる。

  *

 本書文庫版の刊行当時、さる書評サイトをつうじて、著者と交信する機会をえた。著者のサイトを紹介していただいた【注】。このたび、久々にアクセスしたが、更新をかさねているのは何より。
 著者から書評を依頼されたり、著者のサイン入り本をいただいたり、アマチュアとはいえ書評家には書評家の愉しみがある。

 【注】ホームページ「倫敦<ロンドン>漱石記念館にようこそ!! 」はその後フェイスブックに変わった。
ロンドン漱石記念館/草枕交流館(熊本県玉名市天水町)
倫敦漱石記念館
英の漱石記念館 17年秋に閉館へ 来館者減少で
記事「ロンドンの漱石記念館 来月閉館へ」(日本海新聞 2016年8月29日)
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□恒松郁生『こちらロンドン漱石記念館』(廣済堂、1994年/後に中公文庫、1998)
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【櫻井よしこ】隙あらば侵略の機会うかがう中国/冷静かつ力に基づく戦略を取る日本

2016年08月29日 | 社会
 (1)悪貨は良貨を駆逐する、といわれる。
 だが、中国が席巻するアジアにしてはならない。いま、私たちはその岐路に立っている。

 (2)8月24日、日中韓外相会談に続いて、岸田文雄・外相は東京で中国の王毅・外相と会談した。岸田氏が「中国公船」が尖閣諸島周辺で相次いで領海侵入をしていると抗議すると、王外相は尖閣諸島は中国領だと、従来どおりの主張で反論、記者団に「事態は基本的に正常な状態に戻った」と述べた。

 (3)いかにも中国らしい主張ではないか。王氏は、駐日大使だった時、東京・有楽町の外国特派員協会などを舞台に尖閣諸島や東シナ海問題について偽情報を流し続けた。国際社会に中国の主張を浸透させるためのデマゴーグとはいえ、驚くべき虚言外交だった。
 そこで、王外相いわゆる「正常に戻った」発言の実態を明確に認識する必要がある。確かに、リオデジャネイロ・オリンピックの開会式に合わせて押し寄せた公船15隻と漁船300隻は、これまでどおりの規模、公船3隻と漁船数十隻に戻っている。だが、彼らは25日現在22日連続で尖閣の海を航行中だ。
 <王外相のいう「平常」は中国海警局の公船と海上保安庁の巡視船がにらみ合いを続けている状態なのでしょう>【砥板芳行・沖縄県石垣市議会議員/防衛協会幹部】
 中国が侵略的行動を繰り返し、海上保安庁が警戒し続ける状態を、王氏は「平常」と呼ぶわけだ。
 <本土の人たちが考える以上に、沖縄の海は中国に侵食されつつあります。中国の調査船はわが物顔で日本の海の調査をします。一群の軍艦が沖縄本島と宮古島の間を航行して存在感を見せつけます。こうしたことを通して、彼らは自らのプレゼンスを沖縄の海で常態化しているのです>【砥板氏】

 (4)こうしたなか、8月24日にも尖閣の海に人民解放軍の軍艦が入ったという。しかも、それは久米島周辺の接続水域だという。
 久米島は尖閣諸島の魚釣島から東に410km、沖縄本島に近い。事実なら海上警備行動発令になろう。
 海上保安庁も防衛省もこの情報は全否定したが、6月9日、尖閣諸島周辺海域に中国の軍艦が初めて侵入したのは記憶に新しい。それまで海警局の公船だったのを、中国は一気に軍艦を送り込んできた。このことを各全国紙は一面で伝え、尖閣情勢が新たな緊張の段階に入ったと解説した。

 (5)中国の動きは止まらない。8月15日には、鹿児島県口永良部島周辺の領海に、16日には尖閣諸島の東大東島の接続水域に、中国の軍艦が侵入した。
 ここまでは大きく報道されたが、その後、中国軍艦侵入の情報は伝わってこない。

 (6)自衛隊と海保は、いかにして日本の海を守っているのか。中国が30万人規模の海上民兵隊をつくり、隙あらばと侵略の機会をうかがっているなかで、中国の野望を阻止するために、日本が実施しているのは意外にも力に基づく戦略だ。ただ、日本の対応は極めて冷静かつ沈着だ。
 <中国が10隻の船を出せば、わが方は12隻出す。中国が戦闘機2機を出せば4機出すという具合です。力を見せつければ日本は引っ込む、という誤解を中国に与えないためです>
 この関係者の言葉は、各局面で日本は、国防に関して絶対に妥協しないという決意を示し続けることで、中国に誤解させない、ということを示している。この姿勢はしかし、自衛隊と海保の予算を増やさないと続けられない。

□櫻井よしこ「隙あらば侵略の機会うかがう中国 冷静かつ力に基づく戦略を取る日本 ~オピニオン縦横無尽No.1147~」(「週刊ダイヤモンド」2016年9月3日号)
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 【参考】
【櫻井よしこ】容易に匿名報道に走るメディアの問題 ~相模原の障害者施設殺害事件~
*【櫻井よしこ】南シナ海問題で国際法無視の中国 ~
【櫻井よしこ】中国、裁定直後フィリピンを恫喝 ~強める軍事的色彩~
【櫻井よしこ】南シナ海問題で完敗でも拒否する中国 常軌を逸した習近平体制の暴走
【櫻井よしこ】米でも絶賛の中国の要人が豹変 ~永遠なのは国益~
【櫻井よしこ】西側は自国第一主義を深め、中国は民主主義の限界に自信を深める ~英国のEU離脱~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(2) ~商売上手な中国、政治主導の経済~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(1) ~踏んだり蹴ったり~
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【小川国夫】『生のさ中に』 ~醇乎たる言語空間~

2016年08月28日 | 小説・戯曲

 古い倉庫を始末し、新しく設置した際、古い倉庫から出てきた本の一。以下、刊行当時の所見。

 (1)『アポロンの島』に続く第2作品集。
 所収の23の短編は全編自伝的作品と呼んでよいが、大きく分けると、静岡を舞台にした少年時代と海外を舞台にした紀行の二つ。量的には後者が多い。海外は具体的にはイタリア、ギリシア、北アフリカである。

 (2)後記にいわく、
 <私は日本語の椅子と西洋の椅子が似て非なるものだということを知っている。日本語の会話の味わいとフランス語の会話の味わいが全く違うということも、若干知っている。しかし私は、これらの截然とした相違を作品の中で説明することを、自分に許そうとはしなかった。許さないことによって、私は自分の作品の形をうち樹てようとした。森有正氏のいう、犬とchienとは別物だという認識は、私に目を開かせるものがあった。そして私は、これほど異質な人間と言葉と風物と交流したことを、直接な表現として、日本語の伝統の中に探ろうとしていることを意識した>

 (3)すなわち、本書に収録された紀行は、「果て知れない間口と奥行を持った」ヨーロッパを日本語で描く試みである。採用した「日本語の伝統」は、特に志賀直哉である。
 たとえば「スパルタ」における次の段落。
 <曇ったり晴れたりした一日だったが、太陽のありかはいつも判った。そして、太陽は大方行く手にあったのだから、トリポリを過ぎて南へ走っていた時に、起こったことだったろう。バスが停留所で止まると、運転手がまっ先に下りて行ってしまった。すると、口髭を立てた、太った車掌が乗客になにか告げた。命令する口調だった。その直後の乗客たちの反応を見て、浩は、しばらく休憩、の意味だろうと察した。休憩は十分くらいだろう、と彼は、解らないのに、一人決めした>
 このように簡潔にして剛毅、簡勁な文体で、小川国夫は醇乎たる言語空間を織りあげた。

□小川国夫『生のさ中に』(審美社、1967/のちに講談社文庫、1978)
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【松田道雄】革命と市民的自由 ~支配される側の個人の尊厳~

2016年08月28日 | 批評・思想
 
 (1)『革命と市民的自由』は、一個の市民として筋をとおした町医者、松田道雄の代表作の一。
 雑誌「展望」1968年10月号から1969年12月号までの連載に、雑誌「人間として」1号(1970年3月刊)掲載の一編を加えて一巻とした。『ロシアの革命』(河出書房、1970/「世界の歴史」第22巻)を書く過程で生まれた副産物だ。
 スターリン批判という点からすると、本書が主著となり、『ロシアの革命』は参考書となると松田はいう。

 (2)本書の総題ともなった論考「革命と市民的自由」は、A・D・サハーロフの冊子『進歩、平和的共存および知的自由に関する思案』(松田仮訳)について論じる。
 サハーロフは、当時47歳、水爆を開発したソ連最高の物理学者、社会主義労働英雄勲章・国家功労賞・レーニン賞の三つの賞をうけているアカデミー会員。『思案』は本文50ページばかりのうすっぺらな冊子で、1968年6月に最初ソ連の「サムイズダート」から出版されたという。自己出版所である。公然のものではないということだ。
 核戦争の最高の専門家として、サハーロフは主張する。
  (a)パワーポリティクスによる国際政治の原則を改めよ。それには情報の自由な交換を妨げている人類の絶縁状況を克服せよ。
  (b)人類社会には知的自由がなくてはならぬ。つまり、情報をうける自由、情報を広くあたえる自由、先入観のない、顧慮のない判断の自由、抑圧と偏見からの自由だ。この知的自由はいま地球上で三つ脅威をうけている。①計算された大衆文化の阿片、②憶病で利己的な町人的イデオロギー、③官僚寡頭支配の化骨したドグマティズムとその愛好する武器、イデオロギー検閲。
 サハーロフは、人類の拠るべき支えとして「世界人権宣言」をあげる。

 (3)サハーロフの文章のなかに市民的自由ということばがでてくるが、ソ連では市民的自由がどうなっていたか。
 市民的自由のなかで、もっとも大事なのは、言論、出版、集会、結社、示威の自由だと思われるが、ソ連憲法にも、その自由は保障されると書いてある。ただし、この憲法第125条は、市民的自由のまえに前提がある。「社会主義制度を堅固にする目的」に適う場合だ。サハーロフが「ガスイスダート」(国立出版所)から出版できなかったのは、「社会主義制度を堅固にする目的」にそわないと検閲官によってみとめられる可能性が大きかったからだろう。
 市民的自由というのが、時にはパン以上に生活必需品であることは、支配される側にいないとわからない。
 はっきり、支配者の立場から市民的自由についてカウッキーに返事しているのはトロッキーだ。彼は『テロリズムと共産主義』のなかでいっている。階級と階級が決戦状態にあるときは、市民的自由などというものはありえないと。
 だが、おなじトロッキーが支配者から支配される者に転落すると、もう少し違ったことをいう。『テロリズムと共産主義』から16年後にかかれた『裏切られた革命』のなかでは、こういう箇所がある。
 <新憲法は市民に、言論、出版、集会および街頭示威の「自由」を「保証」している。だが、これらの保証のどれもが固い口籠か、または鎖か手錠の外観をまとっている。出版の自由は容赦のない事前検閲の存続を意味する。そこの連中は、誰にもわからない中央委員会の書記局とつながっている。ビザンチン式の親方への連?を印刷する自由は、完全に「保証」されているのは、もちろんである>
 市民的自由の必要は支配する側に立っていては絶対わからないものだ。支配の理論が支配的になってしまうと、支配される者まで市民的自由の貴さを忘れてしまうことがあるから厄介だ。
 
 (4)個人の尊厳について、ロシアのインテリゲンチアほど深く考えたものはなかった。ロシア・マルクス主義はナロードニキから、その組織論だけを相続して、思想を捨ててしまったのだ。
 ロシアの最初の社会主義者とされるゲルツェンは、レーニンが追想をかいたおかげで、革命の聖者の列に加えられているが、彼の理論をロシア・マルクス主義に接木しようという試みは、どれもうまくいっていない。
 ゲルツェンの思想をたんなるナショナリズムとするのは、彼の思想を過小にみることになろう。ゲルツェンはマルクス主義を理解できなかったと考えるのもおなじあやまりをおかすものだ。ゲルツェンは、もうすこし視野の大きい思想家だった。彼はマルクス、ヘーゲルを含めて19世紀の合理主義のフランス革命弁護論に批判的だった。フランス革命は18世紀の楽天的な進歩の理論の夢の実現だった。その結果をゲルツェンは失敗とみたのだ。それが1948年にもう一度試みられて、もう一度失敗したのを彼は目撃しえたと信じた。
 彼は1948年イタリーとフランスにいて革命を傍観した。そこで彼は革命の被害者としての市民をみた。ゲルツェンは1948年から50年にかけて血ぬられた7月の体験を『向こう岸から』のなかにかきつけた。そこでのゲルツェンの立場は、「迫害されているが、征服されないもの」のそれだった。
 ゲルツェンにとって人間の尊厳こそが最高の価値であり、そこからヨーロッパの革命は評価されるべきであった。その立場からすると、彼にはヨーロッパはすでに老い、その没落はさけられないように見えた。
 ひとりひとりの人間の尊厳を、未来にでてくるであろう大きな全体的なものの犠牲にしないという思想は、ロシアのインテリゲンチアがヨーロッパの進歩の思想にたいして抱いた反発だった。進歩には賭けないで、しかもロシア人民の人間的尊厳をきずつけているツァーリ専制をどうして倒すかが、ゲルツェン以後のロシアのインテリゲンチアの課題だった。

 (5)ゲルツェンよりすこしおくれて登場して、28歳で溺死したピーサレフは、プラトンの「共和国」の思想を拒絶した。「共和国」の原理はその後のヨーロッパに大きいかかわりをもつと信じたからだ。
 <プラトンの共和国は官吏、戦士、商人、奴隷、女性からなりたっているが、どこにも人間がいない・・・・プラトンの意見によると、支配者は彼らの支配するものにたいして何らの義務を負っていない、だから欺瞞も暴力も恣意も政府の手段とみとめられている。個人を束縛する道徳律は政治家にはあてはまらない>
 「ピーサレフのプラトンの理想論」をつらぬくものは、支配されるものの論理だ。
 1870年代のナロードニキの「思考の支配者」といわれたラブロフの『歴史書簡』は、革命の福音書だった。そこでは、ラブロフにとって進歩とは、道徳的理想の実現だった。その道徳の中心になるのは「私」だった。
 1890年代のナロードニキの中心的理論家だったミハイロフスキーの評論集は『個性のための闘争』という名でだされた。
 ドストイェフスキーがその全作品で問うたのは、個人の尊厳の問題だった。
 このすべての知的遺産はボリシェヴィキによって放棄された。ゲルツェンの全集こそでたが、ラブロフもミハイロフスキーも完全消毒の選集しかでていない。

 (6)自由は基本的人権の重大な要素だが、ソ連では自由は階級に密着して人間からはなれてしまった。それは自由ということばの二義性がうまくかくれみのにされた。バスチーユの壁をこいわしにいく群衆の口々にさけぶ自由とは、古い圧制者たちを全体として否定する合言葉だ。虐げられているのは、われわれすべてだ。われわれすべてに共通した自発的な意志が自由だ。それは支配者になろうとする人民の自由だ。しかし、人民は被支配者にもなる。そのときの自由とは何か。その自由とは基本的人権の壁によって守られた内側の自由だ。この自由をもっとも早く気づいたのはルソーであろう。
 <わたしは、人間の自由というものはその欲するところを行うことにあるなどと考えたことは決してない。それは欲しないことは決して行わないことにあると考えていたし、それこそわたしがもとめてやまなかった自由、しばしばまもりとおした自由なのであり、またなによりもそのために同時代人を憤慨させることになったのだ>【「第六の散歩」】

□松田道雄『革命と市民的自由』(筑摩書房、1970)
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 【参考】
【医療】人間の威厳について ~安楽死~
【松田道雄】京ことば、その表層と深層
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【濱嘉之】中国の最優先課題/環境問題 ~『聖域侵犯』~

2016年08月27日 | 小説・戯曲
<「(前略)ところで青山、一つ教えてくれ。中国にとって今一番大事なことはなんだ?」
 藤中が神妙な顔つきになって訊ねた。大和田も青山の顔を覗き込むように見ていた。
「必死になっているのは環境問題だ。そして公害・環境問題の解決のためには空気、水、土の浄化が最優先だな」
「空気、水、土というとどうしても農業を思い起こしてしまうが・・・・中国の富裕層は自国産の食料を口にしないと言われて久しいからな」
 大和田が言うと藤中も続いた。
「香港では自国が作った野菜を毒菜と言っているらしいぜ」
「そんなことを言っても日本のファミレスのほとんどが中国産の野菜を使っている。ファミレスを使わない者はいいが、子供を抱えた家族にとってファミレスは大事な食事の場となっている場合が多いからな」
 青山が他人事のように言ったので藤中が質問した。
「それでもファミレスは潰れるどころか増えているんじゃないのか?」
「それは仕方ないことだ。ファミレスで食事をすることが悪いとは言っていない。ただリスクを負う覚悟が必要だと言うだけだ。それほど中国の多くの土壌は汚染されている」
「空気はどうなんだ?」
「ニュースを見ればわかるだろう。昨年末にパリで開かれたCOP21がいい例だ」
 COP21の正式名称は「国連気候変動枠組み条約第21回締結会議」である。
 これに参加した中国政府代表団副団長が2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組みに関し、中国自身が途上国グループに所属する立場から「歴史的責任に基づき、(各国が取り組む対策に)差をつけることが必要だ」と強調し「過去に温室効果ガスを大量に排出してきた先進国が、より重い責任を負うべきだ」と改めて主張した。
 中国の代表団幹部が自ら自国を発展途上国と認めたのだ。
 さらに中国政府の気候変動事務特別代表もまた「先進国が開発途上国に十分な資金・技術支援を行うかどうかが成功のカギだ」としながら、中国を「発展途上国代表」と自負した。そして年1千億ドル(約12兆円)の拠出が決まっている発展途上国向けの環境対策資金についても「中国は自発的に支援を続けているが、先進国の資金援助は義務だ」と強調している。
 藤中が口を歪めて言った。
 「発展途上国ねえ。発展途上国仲間のアフリカでは国家の幹部を金で釣りながら、イミテーションの武器をばら撒いて紛争を煽っている国だからな」
「よく知っているじゃないか。それでいて都合が悪いと発展途上国に先祖返りだ。第一次産業従事者の人口比率を見れば確かに発展途上国には間違いないんだけどな」
 青山が冷静に答えると大和田が言った。
「近隣国家にとって大気汚染だけでもいい迷惑なんだが・・・・北京ではPM2・5を含む汚染指数が600を超えた日が何度かあったらしいんだ。中国でも最悪レベルの『危険』が301から500だから、600超えの異常さがよくわかる」
 青山が頷きながら後を続けた。
「中国代表団に同行した中国関係者は『国民の関心は温暖化より目の前のスモッグに集まっている』と言っていたそうだ。国民の間で地球温暖化に対する関心などほとんどない一方、健康に直結する大気汚染には極めて敏感になりつつあることを政府も認めているそうだ」
「環境は他人任せか・・・・」
「いや自分たちでできることはやったというところを見せてやらなければ、アフリカをはじめとした本当の発展途上国は付いて来ない。金の分捕り方を教えて、その使い方をメイドインチャイナで売り込むのが奴らのこれまでの手口だ」
 青山は冷静ながら中国に対しては実に厳しい言い方をした。藤中が自分の考えを確認するように訊ねた。
「そのメイドインチャイナがパクりというか、技術を盗むことにつながるんだ?」>

□濱嘉之『聖域侵犯 警視庁公安部・青山望』(文春文庫、2016)
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【詩歌】会津八一『自註鹿鳴集』 ~奈良~

2016年08月27日 | 詩歌
 みみ しふ と ぬかづく ひと も みわやま の この あきかぜ を きか ざらめ や も
 (耳しふと額づく人も三輪山のこの秋風を聞かざらめやも)

【語意】
 三輪の金屋・・・・奈良・桜井市金屋、三輪山の南麓。
 石仏・・・・八一は「薬師の一面が移されて2面になりしものか。」と書いている。現在では右が釈迦如来、左が弥勒菩薩と言われている。重要文化財。
 村媼・・・・村の老女、いなかの老女。
 みみしふ・・・・耳の聞こえない。“しふ”とは感覚器官が働きを失うこと。
 ぬかづく・・・・額突く。ひたいを地につけて拝むこと。
 みわやま・・・・奈良県桜井市の南東部にそびえる、なだらかな円錐形の美しい姿をした標高467mの山で、古代から神の鎮座する山、神名備(かむなび)とされて信仰の対象となっている。
 きかざらめやも・・・・聞かないことなどない。「やも」は反語の意を表す。

【歌意】
 耳を病んで苦しんでいる里の老女が、頭を地につけてこのみ仏に祈っている。三輪山から吹き降ろす秋風の音をこの老女は聞かないのだろうか、いやきっと聞いているに違いない。

【解説】
 八一が訪れた時、石仏は路傍の木立にただ立てかけられていただけ、吹き降ろす秋風のもと、耳を病む老女の祈る姿という素朴で寂しい情景だけがあった。だが、「聞かざらめやも」に込められた反語の中に、強い希望と「三輪山=神の力」を感じ取ることが出来るような気がする。
 現在の石仏は写真のような頑丈なコンクリートの堂の中にあって、この歌の当時の趣を味わうことは出来ない。周辺は山の辺の道(遊歩道)として整備され、訪れる人も多い。

【補注】三輪の金屋( 『自註鹿鳴集』による)
 三輪山の南なる弥勒谷(みろくだに)といふところに、高さ六七尺、幅三尺ばかりの板状の石に仏像を刻したるもの二枚あり。(中略)路傍の木立に立てかけ、その前に燭台、花瓶、供物、および耳を疾(や)める里人の納めものと見ゆる形ばかりなる錐など置きてありき。(後略)

□「会津八一の歌」(「会津八一の歌と解説」)

 *

・猿沢池にて
 わぎもこ が きぬかけやなぎ み まく ほり いけ を めぐりぬ かさ さし ながら

・中宮寺
 みほとけ の あご と ひぢ とに あまでら の あさ の ひかり の ともしきろ かも

・唐招提寺にて
 おほてら の まろき はしら の つきかげ を つち に ふみ つつ もの を こそ おもへ

・春日野にて
 かすがの に おしてる つき の ほがらか に あき の ゆふべ と なり に ける かも

 そらみつ やまと の かた に かりね して ひたすら こふ は とほき よ の ひと

・その他
 ふるてら の はしら に のこる たびびと の な を よみ ゆけど しる ひと も なし

 うちふして もの もふ くさ の まくらべ を あした の しか の むれ わたり つつ

 そらみつ やまと の かた に かりね して ひたすら こふ は とほき よ の ひと

 ふるてら の はしら に のこる たびびと の な を よみ ゆけど しる ひと も なし

□会津八一『自註鹿鳴集』(新潮文庫、1969/岩波文庫、1998)

 *

 会津八一(あいづ やいち)
 1881.8.1~1956.11.21、新潟市生まれ。歌人、書家、美術史家。 
 東京専門学校高等予科(早稲田大学の前身)で学び、坪内逍遥、ラフカディオ・ハーンの講義を受ける。卒業後郷里に帰って教鞭をとっていたが、坪内逍遥の招きで、早稲田中学の英語教師となり、後に早稲田大学文学部講師、教授となる。
 明治41年はじめて奈良旅行したことで仏教美術に関心を持ち、その後も研究のためしばしば奈良を訪れた。はじめ俳句を作っていたが、奈良旅行をしたあたりから歌を多く詠み、大正13年第一歌集『南京新唱』を出版する。なお書は独特の風格を持ち一家をなしている。
 掲載作は昭和28年、新潮社より刊行された最後の著作『自註鹿鳴集』に収載されたもの(『會津八一全集 第5巻』(中央公論社、昭和57年)。
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 【参考】
【詩歌】比叡山(抄) ~自註鹿鳴集~
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【ウィリアム・F・ノーラン】『ダシール・ハメット伝』

2016年08月27日 | ノンフィクション
 
 ハメットに傾倒した著者の、傾倒ぶりがうかがわれる伝記。作家論(ミステリーを書くことに興味を失った事情)としても部分的には作品論(たとえば『影なき男』の特徴)としても読める。
 単なる思い入れで書かれているわけではない。著者は本書に先立つこと十数年前にダシール・ハメット書誌を刊行している。
 職歴はもとより若き日の読書傾向といった細部の事実も掘り起こし、さらにはハメット作品の映画化に関する裏話を通じて当時の米国映画産業の一側面をも描きつくす。
 米国を一時席巻したマッカーシー旋風の残酷さを新ためて感じる。正義感と才能を併せもつ作家が、国家からいわれなき迫害を受け、社会に絶望し、自堕落な生活に流れ、アル中に陥った。
 とはいえ、全体を通じて感じられるのは、自分なりの倫理を最後まで守りとおした気骨のある一作家の生涯である。

□ウィリアム・F・ノーラン(小鷹信光・訳)『ダシール・ハメット伝』(晶文社、1988)
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 【参考】
【言論】マッカーシズムの教訓 ~政治権力と言論~
【本】ドルトン・トランボの闘い ~赤狩り時代のオスカー~
書評:『ジョニーは戦争へ行った』
書評:『眠れない時代』
【本】中野利子『外交官E・H・ノーマン その栄光と屈辱の日々1909-1957』
【映画談義】『真昼の決闘』 ~大衆操作~
【読書余滴】「High Noon」 ~『真昼の決闘』~
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【佐藤優】イスラエルとユダヤ人に関するノート ~目次~

2016年08月27日 | ●佐藤優
 
 まえがき

Ⅰ 私とイスラエルについての省察ノート
 1話 なぜ私はイスラエルが好きか
 2話 旧約聖書の再発見とヨムキプール戦争の教訓
 3話 獄中の私を支えてくれたイスラエルの友人たち

Ⅱ ロシアとイスラエルの考察ノート
 4話 モスクワのオランダ大使館領事部
 5話 ナティーブの対ソ秘密工作
 6話 ロシア・グルジア戦争を分析するイスラエル専門家の視点の重要性
 7話 プーチン露大統領のイスラエル訪問の意義
 8話 イスラエル外交に働く目に見えない力
 9話 シャロン元首相とロシア

Ⅲ 日本とイスラエルの考察ノート
 10話 『スギハラ・ダラー』から杉原千畝を読み解く
 11話 東日本大震災をどう考えるか
 12話 福島第一原発事故に関するあるイスラエル人との会話
 13話 F35問題をめぐる武器輸出三原則の解釈がイスラエルに与える影響
 14話 国家安全保障会議(日本版NSC)とイスラエル・ハイテク産業
 15話 画期的な日本・イスラエル共同声明

Ⅳ イラン、シリア、北朝鮮の考察ノート
 16話 中立国と情報工作
 17話 イラン危機と日本
 18話 イスラエルとイランの関係をどう見るか
 19話 イランと「国交断絶」したカナダに学べ 
 20話 孫崎亨・元外務省国際情報局長のイラン観について
 21話 北朝鮮によるシリアの核開発支援にイスラエルはどう対処
 22話 シリア情勢を巡る日本の独自外交

Ⅴキリスト教神学生への手紙
 23話 ある神学生への手紙--『トーラーの名において』の評価 
 24話 あるキリスト教神学生からのメール--ユダヤ民族の否定について 
 25話 反ユダヤ主義の歴史について1
 26話 反ユダヤ主義の歴史について2
 27話 キリスト教とイスラエル--『キリストの火に』を読む
 28話 ホロコースト生き残りの証言

 あとがき

□佐藤優『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(ミルトス、2015)
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 【参考】
【佐藤優】ロシア大統領府長官にワイノ氏就任の意味 ~北方領土交渉~
【佐藤優】西郷と大久保はなぜ決裂したのか ~征韓論争~
【佐藤優】開発独裁とは違う明治維新 ~目的は複数、リーダーも複数~
【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~
【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~
【佐藤優】 改憲を語るリスクと語らないリスク ~改憲問題~
【佐藤優】+池上彰 エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速
【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀
【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~
【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~
【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~
【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~
【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~
【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
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【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
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【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
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【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
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【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ

2016年08月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)茶カテキンの健康食品は、「体脂肪を減らす」「悪玉コレステロールを減らす」などの効能で販売されている。
 一方、海外では、茶カテキンによる肝臓障害の副作用が問題になっている。

 (2)2016年3月、ノルウェー国立公衆衛生研究所が、世界でも初めてサプリメントとしての茶カテキンの基準値を発表した。その値は、体重60kgの大人の場合1日24mgに相当する量だ。普通のお茶に含まれる量は、1杯当たり約68mgだ。この基準値によれば、お茶1杯さえ飲めない。
 どう考えればよいか。
 日本のようにお茶を日常的に飲む習慣のないノルウェーでは、茶カテキンをサプリメントとして摂取した場合の安全性だけを評価している。具体的には、動物実験で毒性が出なかった最大量から、100分の1の安全係数をかけて導きだされたものだ。農薬や食品添加物の安全摂取量を評価する場合に使われるやり方だ。
 しかし、食品に含まれる成分に適用すると、普通に食品に含まれる量でも安全とは言い切れないということになる場合がある。その結果、その基準ではお茶1杯さえ飲めないということになったようだ。ノルウェーの評価書の中でも「サプリメントとして1日当たり一度に摂取した場合の有害影響を起こす可能性がある量」と記載されている。規制の対象は、あくまでもサプリメントとして上乗せされる量ということのようだ。

 (3)実は日本でも、食品成分の健康食品への利用について、上限値がつけられたケースがある。大豆に含まれるイソラボンがそれで、食品安全委員会が2006年5月に発表している。
 日本人が慣れ親しんでいるお茶についても、従来の飲料としてお茶として飲む分の範囲であれば安全性は担保されると考えてよかろうが、その安全な摂取量の範囲は意外と狭い可能性がある。体脂肪を減らすなど特別な効果を期待させてサプリメントや健康食品に使用される場合、上限値の設定などの評価は必要だ。

 (4)動物実験では、空腹時に一度大量に飲むことで、食事と一緒に少しずつ飲む場合と比べて毒性が10倍以上も強くなることが報告されている。血中濃度が急激に上がることで肝臓に負担を与えると考えられる。
 日本では1日10杯以上のお茶を毎日飲む人たちがいるが、空腹時に一度に10杯立て続けに飲むケースはまれだろう。通常、食事時や、何か食べながら飲む場合が圧倒的に多いだろう。

 (5)日本の茶カテキン商品には、「食事と一緒でなくても構いません」「いつ飲んでも大丈夫」と強調しているが、せめて「空腹時には避けたほうがよい」という注意喚起は必要だ。
 ノルウェーの摂取基準に照らし合わせると、市販の茶カテキンサプリメントは、軒並み10倍以上超過している。花王「ヘルシア」などの飲料は、お茶の代わりに飲むことになるのでまだマシだが、サプリメントの場合、日常のお茶に加えて摂取量が上乗せされることになるので、より注意が必要だ。 

□植田武智(科学ジャーナリスト)「茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ」(「週刊金曜日」2016年7月22日号)
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