語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

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【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)


(5)もうすぐ尖閣諸島で軍事衝突が起きる
 尖閣諸島をめぐって、やはり軍事衝突が起きるのではないか。軍事衝突とは、公務員が死ぬということだ。漁民とか侵入者をいくら捕らえて死人が出ようとも軍事衝突ではない。公務員が死んで、軍事衝突になる。国家の行為としてやったことになるからだ。
 民間人であろうとも、双方が死ぬと本当に戦争になる。片方が死ぬだけだったら、片方は文句を言い続けることができる。
 軍事衝突(military conflagration)という段階は、まだ「事変」ではない。少なくとも500人ぐらい死なないと事変とは言えない。
 事変は紛争ともいう。満州事変、志那事変、ノモンハン事変のレベル7になると戦争(Warfare)の一歩手前だ。少なくとも事変の段階でもまだ国交はあるし、人の行き来はできるし、企業が相手国で工場を操業していたりする。
 2,000人以上死ぬと、もう事変(military conflict)だ。だから、その前の段階である軍事衝突がもうすぐ尖閣諸島で起きる。
  そして、それはすぐに停戦(cease fire)する。そして再び衝突が起きて、また停戦する。
 死者2,000人が一つのハードルだ。2,000人までは紛争が起きても止まらない。2,000人が死んだところで、双方が一応やめたいという気持ちになる。
 2014年のガザ侵攻やウクライナ政変でもそうだった。
 この事変の段階をヒラリー・クリントンたちは東アジアでもやろうとしている。2017年から。
 ヒラリーは、2010年の「フォーリン・アフェアーズ」誌に Pivot to Asia という論文を発表した。「軸足(pivot)をアジアに移す」と書いた。極東で戦争をやらせる気らしい。だから安倍政権に安保法制の改正を急いでやらせている。

(6)日本と中国とぶつけさせたい米国の計略
 安保法制改正は大変だ。あれでは集団的自衛権で逃げられない。
 集団的自衛権(collective degfense right)は、国連憲章第51条に1行あるだけだ。
 集団的自衛権という言葉は、どうも戦勝国しか使ってはいけないようだ。安倍たちが勝手にガバガバ使うことに操り人間のアーミテージすら嫌がっている。
 「お前らみたいな負けた国が偉そうに collective degfense という言葉を使うな」
と米国人から不思議がられている。自衛隊ごときが、米軍と対等に「集団的」軍事行動ができるなどと思っていない。自衛隊なんか、ロジスティカル・サポート(物資補給、後方支援活動)で十分だ。
 それでもアーミテージにしてみれば、日本の自衛隊を中国軍にぶつけさせたい。だから、「わかった。それならお前らに集団的自衛権というコトバを使わせておいてやると」という感じだろう。日本側が唆されて、勝手に暴走しているのだ。
 NATOは集団的安全保障であり、集団的自衛権だ。1951年にアジア地域での太平洋集団的安全保障構想というのがあった。が、実現しなかった。吉田茂・首相が逆らったからだ、という説がある。
 それで、1951年に、オーストリラリアとニュージーランドと米国の間でだけ、太平洋安全保障条約(ANZUS)ができた。あとは韓国やシンガポールや日本が、個別にそれぞれ米国と安保条約を締結した。
 日本はやはり敗戦という事実を誤魔化している。ドイツの場合、それができない。一回、国家がなくなって、占領されているのだから。
 それと、日本の場合、 the United Nations を「国際連合」と訳していることも問題だ。あれはどこから訳しても「連合国」だ。
 しかも実態として、ポツダム宣言を要求した、我ら連合国の「連合国」が the United Nations なのだから、「国際連合」という誤訳によって、第二次世界大戦の前とは全く違う国際秩序なのだと思っているあたりが問題だ。
 1951年9月にサンフランシスコ講和条約があって、その4年後に、日本は自分から尻尾をまるめて、国際秩序(連合諸国 the United Nations )に入れてもらったという自覚を、意識的に持たないようにしている。それで、日本の安倍たちは、「誇りを取り戻せ」の一点張りで、当然のように自分たちにも集団的自衛権というものがあると思い込んでいる。
 横畠裕介・内閣法制局長官たちは、そうは思っていない。今の憲法や法律をどう読んでも、整合的に解釈できるのは個別自衛権だけだ、という立場だ。
 ただし、米国はもう一つ別の軸を持っている。とにかく日本の自衛隊を先に中国にぶつけさせろ、という政策も採っている。これがヒラリー勢力だ。二股をかけるというか、二重構造で来ている。
 だから、自衛隊が米国との同盟軍(アライド・フォース)としての動きをするといっても、認めないだろう。日本の自衛隊が自分で勝手に中国とぶつかるように誘いかけるのだ。その際に米軍の兵器をいっぱい買わせて、「お前らが前面(フォワード)に出ろ」という考え方をする。
 なんで日本ごときが米国と対等になるのか、と米国人はキョトンとしている。個別的自衛権しかないのだ。
 そもそも限定的な集団的自衛権というが不思議な概念だ。そんなものは、集団的自衛権を丸々やるか、やらないかのどちらかだ。
 集団的自衛権と個別自衛権が重なる部分があって、その個別的自衛権の部分を集団的自衛権と、今のところ呼んでいる。だから安倍政権の2014年の閣議決定は、「これまで個別的自衛権と呼ばれていた部分を集団的自衛権と呼び直すことにした」という話だ。
 それ以上のことをするときは憲法改正が必要だ。それなら、全部、個別自衛権で説明できるということになる。
 横畠長官たちは、そういう立場だ。国際法が少しでもわかっている人なら、この理屈がわかる。いくら日本でおかしな意見一致をしても、相手は世界だから。
 日本の法律作成官僚は、そこで踏みとどまって、何を言われようが、言うことを聞かない。安倍たちが何をやろうが、どんなに脅かそうが、どうせ個別自衛権しかないのだ、という立場だ。
 だから無理なのだ。
 だが、この議論がわかる人はあまりいない。横畠長官たち法律官僚は、憲法が改正されたらその条文に従う、という立場だ。
 安倍政権は、集団的自衛権に関する閣議決定をほとんど無視するだろう。あの閣議決定では何もできないから。
 実態として見るならば、今回の閣議決定で、以前より自衛隊の海外派遣は難しくなった。もし、今回の閣議決定の内容について「集団的自衛権と警察権の範囲で処理しろ」という指示を外務省と内閣法制局の頭のいい官僚に与えたならば、見事に集団的自衛権を迂回した処理ができたはずだ。
 ところが、安倍政権の強さというのは、閣議決定のような難しいことに縛られていないところだ。「俺は難しいことはわからないから、あとは気合いでやってくれ」みたいな感じだ。しかし、それを国民が許容したのだ。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「戦争に突き進んでいく安倍政権」
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 【参考】
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

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【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)


(3)尖閣諸島問題で日本は世界秩序をかく乱させている
 尖閣諸島は、日清戦争(1894年)のときに、正式に下関条約(1895年)で、日本が中国(当時・清朝政府)から割譲させたものだ。台湾と澎湖諸島の海域に属している。ゆえに正式に日本のものになった。
 戦勝国は、無理やり何でも条約にして敗戦国と取り決める。きちんと当事者双方の署名が行われて成立する。その取り決め自体は国際法に照らして有効だ。あとになってから「あの契約(条約)は無効だ」と騒いでも認められない。
 当時は帝国主義全盛だった。
 それで、清国があの領域を手放して、日本が台湾と遼東半島を取った。遼東半島は三国干渉で返還させられたが。
 その後、第二次世界大戦中に、カイロ会談(1943年11月)があった。蒋介石も参加している。ハリー・トルーマン・米副大統領、ヨセフ・スターリン・ソ連書記長、ドワイト・アイゼンハワー・連合国指揮官、ウィンストン・チャーチル・英首相がいた。
 その会議で、日本は大きな島4つだけとなり、それ以外のものは全部、連合諸国(アライド・バウアズ)が取り決めることになった。それを引き継いだヤルタ=ポツダム宣言(ヤルタ会談:1945年2月、ポツダム宣言:同7月)を敗戦国となった日本は承認した。この後、サングフランシスコ講和条約(1952年4月28日発効)で確定した。
 正式に日本のものになっていた尖閣諸島が、ヤルタ=ポツダム宣言で日本から取り上げられた。それを日本は認めた。このことが重要だ。
 それに対して、「尖閣は固有の領土だ」とか訳のわからない日本語を使って、「昔から網小屋があった」程度の根拠で自国領だと言っても通らない。
 そもそも、日本に最初から100%の自信があれば、あそこに港や灯台をとっくに建造しているはずだ。何もないということは、外交的に見れば何かいわくつきの土地だということになる。
 それにマスコミは隠しているが、尖閣諸島の一部はまだ米国の「領土」だ。久場島・大正島は米軍の射撃場となっている。実際は20年ほど使ってないが、まだ日本に返還していない。つまり米国の「領土」だ。
 尖閣諸島問題は、日本が必要もないのに国内的事情から人為的に緊張をつくり出している、というのが国際社会の見方だ。日本は世界秩序の攪乱者のように見られている。
 尖閣諸島問題は、やはり相手との合意がなければならない。
 国際社会はもっと冷酷だ。正式に領有権(主権ソブリーンティ、所有権)があったものを連合国に奪い返されたという事実を認めないと、世界で通用しない。
 「日本固有の領土だ」の「固有」は、インエイリナブル・ライト(inalienable right)と英語でいう。何人も奪うことのできない天賦の権利であり、ジョン・ロックが言った思想だ。
 つまり、百姓でも誰でも、「見渡すかぎり、この10ヘクタールぐらいは、子どもと家族を養うために耕していい自分のものだ」という思想だ。
 国王や貴族たちが持っていた権利を類推してできた。日本人が「閣議で決定したから日本のものだ」と、勝手に「固有の権利」を根拠にして主張するのはおかしい。境界紛争は隣の人が承認しなければならない。
 「合意は拘束する」の原則だ。
 「自分で決めましたので」というみっともないことをするな。
 しかも、その1895年の閣議決定は公表していない。秘密閣議決定だ。官報にも出てない。だから、中国は「いつ公知の事実になったのか」と反論できるのだ。日本がこの閣議決定を公表したのは1950年代になってからだ。
 だから、中国がハーグの国際司法裁判所に訴えたら、中国が勝つ。
 米軍が実効支配していた尖閣諸島の海域が、沖縄の本土復帰に伴って、その海域が日本に渡されただけのことだ。だからといって、尖閣諸島が日本の領土だという主張は、国際司法裁判所(JCJ)に持ちこんだら日本に勝ち目はない。
 日本にとって不利なのは、「いつ公知の事実になったのか」という点だ。ただ、1970年代まで中国は一度も領土を要求していないのも事実だ。これは中国にとってかなり不利だ。だから、両国とも不利な点はある。
 米軍が実質支配していたからということを前提にして議論している。
 でも、その前の1945年までも、一度も要求していない。国連があそこに石油が埋まっていると言い始めてからだ。1960年代の終わりごろから急に言い始めた。

(4)国連は国際的強制執行活動の機関だから怖い
 副島のリバータリアンとしての信念からは、敵が領土・領海・領空に入ってきたら戦う。こちらから外国まで攻めていくことはしない。専守防衛だ。
 外国まで行ったら、言葉は通じないし、土地の事情もわからない。食糧がなくなったら略奪するしかない。戦闘の基本はバッタリ遭う遭遇戦だから、たいてい現地人を殺してしまう。それが現地人の憎しみを買う。だから、戦争をするなら、自分の領土・領海・領空でやる。夜寝泊まりするときに、日本人同士だから泊めてくれるはずだ。戦争は寝泊まりが大事だ。
 特に中東みたいな宗教が違うところで、違う宗教の人を殺してしまうと、面倒くさい話になる。すぐ、イスラム教に対する侵略だという話になってしまう。
 1人殺したら、憎しみがダーッと湧き起こる。
 軍事の問題は、変に技巧的、技術的になると、かえって騙される。兵器や銃器の使い方など知らなくていい。自分で線を引いて、そこから出ないという考え方をしている。
 国連をナメてはいけない。国連は怖い。
 国連は、正しくは連合諸国(ユナイテッド・ネイションズ)と訳し直すべきだ。連合諸国は、国際的な強制執行活動の機関なのだ。ただの親善団体ではない。言うことをきかないと、共同軍事力で抑えに来る。
 強制執行機関だから、裁判所の判決が出て、強制執行する。それがPKO(平和維持活動)だ。
 日本人は、このPKOの意味がわかってない。「犯罪者を処罰する」とか「違法状態を原状に復帰させる」という意味だ。強制力(暴力、軍事力)の行使だ。
 集団的自衛権と違って、集団安全保障だ。自衛でなくてもやれる。
 PKOで出動した各国軍隊は、強制執行(フォースメジュール)なのであって、強制力の行使はあるが、戦争をしているわけではない。国連(ザ・ユーエヌ)がどこかの国と戦うとか愚かな理屈ではない。世界の秩序を維持し、平和を維持するための活動だ。
 だから怖い。警察となると国際法が適用されない。警察活動のほうが一段上だから怖い。戦争はお互いイーブンだ。
 よほどの戦争犯罪をやっていなければ、人を殺しても責任を問われない。ところが警察活動だったら、どんな理由があっても、人を殺したら責任を問われる。
 各国のそれぞれの刑法によって犯罪者は処罰される。
 各国の法律以上の権力は、この地上に存在しない。国連は世界政府ではない。
 国家を超えた団体は、まだ地球上にない。連邦国家や国家連合程度ならある。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「戦争に突き進んでいく安倍政権」
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 【参考】
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~


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【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
Ⅱ 戦争に突き進んでいく安倍政権
(1)日本に安保法制改正をやらせる米国
 安倍政権がどんどん戦争体制に入っていく。2015年5月からの安保法制の整備で、
  (a)武器輸出緩和
  (b)ペルシャ湾で機雷除去、ホルムズ海峡にマインスゥイーパー(掃海艇)派遣準備
  (c)集団的自衛権決議でえPKO(国連平和維持活動)を拡大
 デイヴィッド・アッシャー・新アメリカ国防安全保障センター・シニアフェローがいちばん動き回っている。日本の政治家にもご進講して回っている。おそらくこのデイヴィッド・アッシャーが、リチャード・アーミテージ・元米国務副長官や、マイケル;・グリーン・戦略国際問題研究所副理事長(政治学者)の後継ぎ、次の世代の人間だ。
 あとは、マイケル・オースリン・アメリカン・エンタープライズ政策研究所日本部長だ。そろそろリチャード・アーミテージやマイケル;・グリーンは交代するだろう。
 リチャード・アーミテージもマイケル;・グリーンも下っ端だ。なぜそんな三下みたいな人たちしか出てこないのか。
 日本がワシントンの政治から相手にされていないということだ。アーミテージやグリーン程度で日本の政治家たちを十分に操れる、と見ている。彼らは非公式の存在で、正式の肩書きがない。CIAの特殊部隊(スペシャル・フォーシズ)の責任者みたいで、裏側の役職があるらしい。この程度の連中に日本国が動かされていると思うと情けない。
 昔はソ連も同じだった。イワン・コワレンコ・元ソ連共産党国際部日本課長のような、ソ連共産党の中央委員でもない人物が交渉に来ていた。コワレンコは中央委員候補ですらなかった。
 そうした一介の日本課長みたいな役職の人間に日本は操られているわけだ。何かそういう三下みたいな人間に操られやすい体質があるのか。
 日本は、米国からもまともに相手にされず、ナメられているみっともない国だ。互角の交渉になってない。米国にいいように操られている。
 金融・経済面では、フレッド・バーグステン・国際経済ピーターソン研究所長やグレン・ハバード・コロンビア大学ビジネススクール校長が、今でも竹中平蔵や伊藤隆敏・東大名誉教授(インフレターゲット理論の提唱者)を操っている。
 これからは、翁長雄志・沖縄県知事のほうがきちんとした人に会えるかもしれない。現に、又吉進・外務省参与/前沖縄県知事公室長あたりでも、米国のそこそこのレベルの高官と会えていた。きちんと「ノー」が言える人のほうが会える。
 沖縄は、舌禍事件を起こしたケヴィン・メア・元米国務省東アジア・太平洋局日本部長という悪い男を叩き出した。あれは前代未聞だった。
 ケヴィン・メアが叩き出される元になった記事(2011年3月8日付け)を書いた人は、共同通信の記者だった。ただし、基本的には琉球新報と沖縄タイムスの力だ。
 そのケヴィン・メアがまた日本に戻ってきているようだ。こそこそと目立たないように動いている。今は民間コンサルティング会社の社員の肩書きだ。しかし、大使館の情報部に出入りして日本の右翼メディアを扇動する係をやっている。
 米国大使館の中では、ケヴィン・メアの派閥と、オバマ直系のダニエル・ラッセル・米東アジア・太平洋担当国務次官補(カート・キャンベルの後任)の派閥の対立がある。
 ダニエル・ラッセルは北朝鮮を軟化させる交渉をやっている。韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権ともつながって、何とか朝鮮半島の非核化を推進している。このオバマ直系の人たちとメア系が争っているらしい。

(2)「行動する保守」の排外主義的言説を放置するな
 このケヴィン・メアが、産経右翼や読売新聞系やらを、うまい具合にけしかけて、出版業界にまで影響を与えている。
 百田尚樹『永遠の0』が2014年にベストセラーになった。あの本は2006年に出版された古い本なのに、2012年ぐらいから急にベストセラーになった。安倍政権の後押しもあって、計画的に売ったとしか思われない。
 また、韓国叩きの一連の嫌韓本が出た。中国は強いから韓国叩きに特化したようだ。あれもおかしな動きだった。しかし、だんだんと下火になった。
 在特会(在日特権を許さない市民の会)が「行動する保守」とかいって暴れるのも、一種のバンダリズム(文化破壊活動)とアナーキズムが合わさった感じだ。民主主義自体が飽き飽きだ、という感じになって、雰囲気としては非常にアナーキスティックになっている。
 彼ら日本の右翼たちは、世界基準(ワールド・ヴァリューズ)での移民排斥の極右集団と言えるかどうか。彼らは一つの勢力にまとまっているわけではない。今のところは実体のない、ふわふわした存在だ。
 在特会のような排外主義的言説を放置しておくと、国際社会において、日本は文明国の人権基準を満たしてない、という誤解を招きかねない。中国、韓国、北朝鮮、ロシアに対して付け込む隙を与えかねない。
 日本人が自国を愛し、愛国的な言説を展開することと、特定の民族や人種にゴキブリ、ゴミというようなレッテルを貼り、「死ね」「日本から出て行け」という言説を唱えることとは、本質的に異なる。
 警視庁は、2014年版「治安の回顧と展望」において、在特会を「極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右翼系市民グループ」の一つとして団体名を明記して動向を取り上げている。警察が在特会を警戒する姿勢を示したことは、外交的にも意味があった。
 ところが、警察は、在特会とカウンターデモが鉢合わせになって一触即発状態になると、在特会のほうに好意的に介入した。あれは警察官の中に植え付けられている本性、右翼的体質だ。体制保守というより、ちょっと暴力的右翼体質というのが警察官たちの中にもあるのだろう。

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 【参考】
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
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【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

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【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)

(10)普通の民主主義とは波長が合わない安倍政権
 安倍政権の面白いところは、米国の寝首をかくような感じで、対イスラエル協力をしていることだ。今のイスラエルと米国の関係は、史上最悪に近いぐらい悪い。
 2015年3月3日、ベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相がワシントンに行った。しかし、バラク・オバマ大統領とは会談できなかった。議会で演説した。
 あの議会演説は大失敗だった、と欧米主要メディアはそろって判定した。米国とイスラエルの関係をかえって悪化させた、と。その前にオバマが首脳会談を拒否した。あれはすごいことだ。
 日本の安倍政権と今、波長が合っているのは、イスラエルと北朝鮮とロシアだ。ネタニヤフ首相、金正恩(キム・ジョンウン)総書記、ウラジミール・プーチン大統領。この3人と波長が合う。あと、サウジアラビアとも波長が合う。
 日本はいったい、どこの同盟に入っているのか。プーチンは森喜朗・元首相とのつながりだ。北朝鮮に対しては、安倍政権は2014年7月に、制裁を解除した。
 安倍政権が、北朝鮮にこれほどやさしい政権だとは、誰も思っていなかたはずだ。朝鮮総連ビルだって、「使ってください、今までどおり」と結局、使いたい放題にさせた。韓国との関係がこれだけ緊張しているのに、北朝鮮とはどんどん雪解けが進んでいる。
 安倍政権は変な政権だ。普通の西側の民主主義とは、あまり波長が合わなくて、仕方なく付き合っているように見える。
 欧米主要国の指導者たちは、安倍晋三を評価していない。アジア諸国に対しては「ただで原発をつくってあげる。新幹線(高速鉄道)も差し上げます」と言って回っている。
 安部晋三が自らセールスマンを買って出て、60ヶ国を訪問した。トルコやインドにも行った。向こうは、「タダでくれるなら、どうもありがとう」だ。それ以上は、まったく尊敬されていない。

(11)日本とイスラエルが軍事面で技術提携する
 日本・イスラエル共同声明が2014年5月に出た。サイバー攻撃に関しても、イスラエルと技術提携していくだろう。無人航空機(UAV)、いわゆるドローンでは、米国のグローバルホークやプレデターだけではなくて、イスラエルの無人航空機を入れるかもしれない。
 イスラエルとの防衛協力で、ドローンを入れる場合、どこと組むかというと富士重工だ。かつての中島飛行機と組む。三菱は米国と組んだから、できない。
 米国のドローンは高すぎる。イスラエルのドローンは、非常に性能のよいものを安く出している。それでイスラエルと組むのだ。
 そもそも、あの無人機のアイデア自体は、イスラエルから出てきた。第4次中東戦争(ヨム・キプル戦争)のときの追跡用標的がもとになっている。
 その技術を米国で発展させたのが、グローバルホークやプレデターだ。イスラエルのドローンは、米国のドローンより少し小型だ。イスラエル製のほうが、命中率が高くて、もっと殺しに特化している。それから操縦がプレイステーションみたいな感じで簡単だ。
 あの技術が発展していくと、航空母艦などはタダの標的になってしまう。無人島に小さい基地を造って、そこからプラスチック製の無人航空機を飛ばせば、レーダーにも引っかからずに、航空母艦を標的にできる。こういう時代になっていくわけだ。
 日本製のプラスチックでできた弾丸がきわめて高性能だそうだ。それをイスラエルがいち早く採用した。これをドローンに搭載するわけだ。特殊プラスチック製だから、レーダーに映らない。この無人機から防御するためには、都市ゲリラ部隊になるしかない。
 ドローン開発が進むと米空軍のパイロットたちが失業してしまう、という記事が出た。だからドローン開発をやめさせろ、という議論が出ているのだ。ものすごく深刻な問題になっている。米空軍のパイロットたちが怒っている。だから、この計画を動かしているのは空軍系ではない。
 CIAだ。だから空軍のパイロットが失業する代わりにプレイステーションばかりいじっているようなオタクや引きこもりが戦力になるかもしれない。
 ヘリコプター乗りは喜んでいるみたいだ。ヘリコプター乗りはパイロットに比べて地位が低いから。だからドローンへの乗り換えを歓迎しているみたいだ。
 ドローンは米国で操作して何万km先まで飛ばせる。今はワシントン郊外のラングレー(CIA本部)で操作している。ひと昔前は電波の関係があって、ドイツで操作していた。アフガニスタンの戦争のときがそうだ。ところが、ドイツに「そういうのはダメだ」と文句をつけられてしまった。
 もともと日本のクボタとか東芝の技術だった。農薬撒き機みたいなヘリコプターから始まった。
 戦時中の日本軍も、無人飛行機を開発していた。無人飛行機や無人戦闘機が増えてくれば、今度は潜水艦の必要性が高まる。潜水艦で、海底ケーブルからデータを盗んだりとか、そういう仕事が増える。
 それで、オースラリアのアボット政権が、日本の高性能性能ディーゼル潜水艦を買いたいと言っているのだ。だから、オーストラリアの造船所の労働者が怒って、反対運動をやっている。日本の潜水艦はものすごく音が静かだそうだ。原子力潜水艦と比べても、この点では有利だ。
 音が静かで、しかもあれだけ長距離を航行できるディーゼル潜水艦は日本にしかない。それにオーストラリアは、米国の原子力潜水艦を買えない。非核化政策をとっているからだ。
 日本の潜水艦は、神戸の三菱重工と川崎重工が、1年おきに「そうりゅう」級の潜水艦を造っている。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ」
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 【参考】
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

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【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)

(8)官僚の課長クラスの人事も握る内閣人事局の恐ろしさ
 安倍政権は今、官邸独裁で、明らかに大統領府みたいな形になっている。自民党の部会や各省の幹部たちの意見を蹴飛ばして、全部官邸がやるという態度だ。
 各省庁の官僚は、安倍政権が長く続くとは思っていない。小泉政権も5年しか続かなかった。安倍政権があと4年も続くとは誰も思っていない。だから、外務省の次官とか幹部からすれば、安倍に余計な意見をして、首を飛ばされたらかなわない。官邸は人事権を行使するからだ。だから、「お手並み拝見」みたいな態度だ。
 安倍首相は、内閣人事局を設置した(2014年5月30日)。内閣府人事局ではない。官邸にあるのだ。あれは恐ろしいところだ。稲田朋美・自民党政調会長が、この内閣人事局で、幹部公務員600人(全省の課長以上)の人事を握っている。彼らから天下り先の決定権を奪った。官僚どもにしてみれば恐ろしいことだ。これが公務員制度改革【注】の行き着いた果てだ。安倍晋三は、官僚トップたちの首根っこまでこうやって抑えつけることに成功した。だから、あの財務省でさえ屈服した。
 大臣の人事権は、建前上は各省の事務官や技官全員に及ぶ。肩書きの名称に「官」が付く者は全員、大臣が人事権を握っている。だから辞令はみな大臣名義でもらう。「何とか委員」は雇い委員だから、局とかの単位でやっている。
 実際は、事務次官から外務審議官、ナンバー2か3くらいまでの人事に、政治家は触れなかった。ところが、15年ぐらい前に、局長以上の人事は、総理、官房長官、官房副長官のところで申し合わせがないと執行できないようになった。
 霞が関との関係において、人事に対する官邸の力が強くなったのは、橋本内閣のときだった。それでもまだ官僚は安心していた。官僚で本当に実権があるのは課長だ。兵隊を持っているのは課長までなのだ。
 安倍政権は、その課長のところに入っていいって。官僚としては、人事に相当手を突っ込まれることになった。ただ、問題は、課長クラスで誰が適任なのかを政治家が知っているかだ。実際は、そこまでは、なかなか知らない。
 可愛い稲田朋美を使って、安倍晋三と菅義偉が官僚たちの首まで押さえた、といくら言っても、官房課長の適材適所まではわからないわけだ。
 ちなみに、各省での本当のエリートは、人事課長と総務課長と文書課長の3つだ。業界用語で“官房課長”という。大臣官房の課長だ。キャリアの中でも若い頃からこの3つの席に座ってない者は出世組ではない。

 【注】公務員の再就職を一元管理する「官民人材交流センター」を内閣府に設け、公務員にも能力・実績主義を導入し、設置後3年以内に各省庁による天下り斡旋を全面禁止した。

(9)「戦後レジームからの脱却」で日本はどこに行くのか
 官邸直属の日本版NSC(国家安全保障会議、わかりやすく言えば日本国防最高会議)のトップは、谷内正太郎・元外務事務次官/元政府代表/元内閣官房参与だ。彼は2007年頃から国家戦略としての「自由と繁栄の孤」を言い出した。安倍外交は、それを採用している。「自由と繁栄の孤」で中国包囲網をやろうとしている。
 しかし、できるはずはない。逆に中国に包囲されてしまう。だいたい球体において包囲するというのは、包囲されるのと一緒だ。
 ところが、彼らは「自分たちは世界規模でのビジョンを持っている」と勝手に思い込んでいる。
 彼らは「戦後レジームからの脱却」と言っている。しかし、「戦後レジームからの脱却」をして、どこに行くのか。
 もし、ドイツで「ニュールンベルク体制からの脱却」と言ったら、大変なことになる。今のドイツ連邦共和国はナチスドイツとは別の国という前提だから、世界から信頼されている。日本も、大日本帝国とは別の国ということにしておいたほうがいい。
 「戦後レジームからの脱却」という言葉は、宮崎正弘が使い始めた。彼は「ヤルタ=ポツダム体制の打破」と言い続けている。
 大東亜共栄圏(the Great East Asia Co-Prosperity Sphere)は大きな構想だった。谷内正太郎は「自由と繁栄の孤(クレセント/三日月)」でそのマネをしている。
 大東亜共栄圏という言葉は、松岡洋右・外相(当時)がラジオ放送で使った。彼は、ヒトラーとスターリンとムッソリーニの3人から一目置かれたほどの人物だった。だから、松岡は再評価すべきだ。しかし、谷内正太郎程度では。、世界政治のプレーヤーになれない。
 「大東亜共栄圏」とか「八紘一宇」は、1940年、41年の2年間ぐらい松岡がラジオで唱えて人気があっただけだ。
 松岡が外相の首を斬られた1941年7月からは、坂道を転がるように戦争に突入していった。日本は騙されて戦争をさせられた、というべきだ。
 松岡としては、ヒトラーとスターリンがどこかで手打ちして休戦をすると思ったのに、そうはならなかった。英米のほうが騙しが一枚上だった。今の安倍や菅程度の知能では、とても世界政治の土俵には上がれない。
 松岡洋右は英語も上手だったし、米国事情にも通暁していた。帝国主義的な戦力均衡外交をやろうとしたが、日本にその基礎体力がなかった。そのため、日米戦争という最悪のシナリオに日本を追い込んでしまった。日本の国力を等身大で見ることができなかったのが、松岡の限界だ。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ」
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 【参考】
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

コメント (3)

【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~

2016年06月30日 | ●野口悠紀雄
 (承前)

(6)円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚かさ
 日本人は、ついに、自国通貨が安くなれば安くなるほど喜ぶアホな国民になり下がった。自分で自分の頬を傷つけている。円安になって、自国通貨の外国からの信用が落ちていることを嘆かない。自傷行為、自損行為だ。
 株価が上がったといっても、それをドル建てで計算してみなさい。しかも、株を持っていない人までも、自国通貨が下がって喜ぶのは異常な心理だ。
 円安がこれだけ進んでいるのは、やはり一種のダンピングだ。
 自国通貨が切り下がるのを喜ぶ心理は、1930年代の為替ダンピングのときの心理とそっくりだ。
 2014年に入って、ロシアのルーブルが急に暴落した。12月16日には、一時1ドル=80ルーブル(史上最安値)になった。これに対して日本人は、「ロシアの経済は大変だ」と言っている。
 円だって暴落している。ところが、日本人は「よかった、よかった。アベノミクスが成功している」と思い込んでいる。気が変になった、としか言いようがない。
 日本国民を洗脳する道具になってしまっているメディア、テレビ・新聞がおかしな報道をやり続けている。
 円安を喜ぶ一方で、ロシアのルーブル安には「大変だ」という。これが矛盾していることに多くの日本人は気づいていない。
 ロシアの場合、穀物もエネルギーも他国から輸入しているわけではない。輸出にしても、エネルギー以外は、そんなに多くはない。通貨安になって大変なのは、日本のほうだ。
 隣国と同じことが自国で起きているのに、隣国に対してだけ「大変だ」と書き立てるマスコミは、まったく頭を働かせていない。「反知性主義」だ。

(7)アベノミクスは反知性主義が生んだ現代の錬金術
 「反知性主義」の暫定的な定義は、「実証性、客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度」だ。要するに、「株価が上がれば経済がよくなる」みたいな態度だ。
 いまアベノミクスで株価が上がっているから経済がよくなる、というのは、諸前提を認めた上でなら合理的に認められる結論だ。
 しかし、合理的でも非科学的な話はたくさんある。<例>「インフルエンザは悪魔が呪うからかかる」。合理的な思考だが、非科学的だ。  
 このような合理的だが非科学的な話、あるいは合理的だが非実証的な話があちこちで飛び交っている。
 だから、アベノミクスは錬金術の流れで見たほうがいい。
 安倍晋三がなぜアベノミクスに踏み切れたかというと、基礎教養が極めて弱いからだ。もともと、最初から悩みが少ない人だし。やりたいことも悩みもない。だから祖父(岸信介)の無念を晴らす、という意識だけは強い。しかし、死んだ人の無念というのは、実際はわからない。死者に仮託して語るのは、そもそも禁じ手だ。
 安倍晋三は、30代の若い議員の頃に、朝日新聞とNHKに叩かれていじめられた。そのことに対する恨みがすごい。彼は執念深くて、私怨で動く人だ。個人的な恨みだ。
 だから、忠誠心とかにも、すごく敏感だ。自分に対する忠誠心だけで、同僚の議員たちを判断する。みんなで知恵を持ち寄る、ということをしない。自分に逆らってまでも政策を進言する才能ある人間を育てようとしない。人を育てない、致命的な弱点を持つ人だ。だから今は、朝日新聞やらNHKを人事面からものすごく痛めつけている。
 彼は自分がエリートではない、と思っているのだろう。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ」
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 【参考】
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~



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【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)

(5)竹中平蔵が中小企業100万社を潰す
 解散選挙の前、2014年11月1、2日、「富士山会合(The Mount Fuji Dialog)」がホテル「ザ・プリンス箱根」で開催された。ここに日本の大企業の社長たちが総結集した。
 この会合については、日本経済新聞しか報じていない。日経新聞・CSIS(米国戦略国際問題研究所)主催だから、ほかのメディアは報道しなかった。記事は次のとおり。

 <日米の政府関係者、経営者、専門家が国際関係や安全保障について対話する第1回年次大会「富士山会合」(日本経済研究センター、日本国際問題研究所共催)が1日、神奈川県箱根町のホテルで始まった。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉早期妥結によって日米が通商分野における国際標準づくりを主導すべきだとの意見が相次いだ。
 「アベノミクスとTPP」と題するパネル討論では、カート・トン米国務省経済局筆頭副次官補は「早期妥結が重要。経済的な効果に加え、地域のルールづくりにもプラスになる」と強調した。高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミストは「アジア太平洋の主要プレーヤーとして、日米が自由貿易や知財保護の高い水準を示すことができる」と述べ、TPPが2国間協力の中核と位置づけた。
 日米間では農産品などの市場開放を巡る交渉が難航している。米戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・グッドマン政治経済部長は北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に「合意の可能性は高まっている」との見通しを示した。
 アベノミクスの3本目の矢である成長戦略を巡っては、モルガン・スタンレー・ホールディングスのジョナサン・キンドレッド社長が「労働市場の改革を世界中の投資家が注目している」と言及した。
 竹中平蔵・慶応大学教授は将来にわたる日米関係の発展・維持に向けて留学などを通じた「知的交流が経済や外交のすべての基礎となる」と指摘した。会合は2日まで開かれる。>【注】

 これは新しい三極委員会(トライラテラル・コミッション)だ。
 三極委員会の創始者デイヴィッド・ロックフェラーはもう99歳で、足腰が立たない。来日できない。だから、富士山会合がこれからの新しい日米関係の、最高の意思決定の財界人会議になる。ここに200人ぐらいの主要な財界人が集まり、それぞれの部会をやっている。
 北岡伸一・安保法制懇座長代理/国際大学学長(政治学者/対中国専門家)が出ている。彼は安全保障の場面で、中国と米国の間を仲介する係だ。五百籏頭真・熊本県立大学理事長(政治・歴史学者)のあとは、北岡座長代理が全部やっているようだ。その背後には、やはり笹川財団がいる。
 北岡座長代理が、日米人脈では今のところ、日本側の最高頭脳だ。だから、安倍首相の「戦後70年談話」(8月15日)は、「日本は中国、アジア諸国を侵略しました」という内容になることを、北岡座長代理と菅義偉・官房長官が根回ししている。しかし、安倍晋三が言うことをきかない。
 竹中平蔵・元経済財政政策担当大臣/元金融担当大臣/国家戦略特別区域諮問会議メンバーも、やはり富士山会合に出ている。
 竹中は、今年から、中小企業100万社ぐらいを潰すのではないか。
 竹中は、米国の命令で、「労働市場の流動化(レイバーマーケット・リクイディション)」をやった。つまり、非正規雇用を増やした。次は、「中小企業の流動化/資産再評価(リアセスメント)」、つまり倒産促進をやるつもりらしい。
 人材の流動化の次に、企業の流動化というわけだ。竹中は、人材派遣会社パソナの取締役会長だから、労働力商品から価値が生まれるという経済学の法則をよくわかっている。労働力商品から搾り取るわけだ。
 今、400万社ぐらいある中小企業のうち、100万社ほど整理するつもりらしい。竹中は供給面重視(サプライサンダー)だから、供給面(サプライサンド)である不要設備、不良会社を消し去ろうとしている。
 太閤秀吉に対する黒田官兵衛のように、残酷な、いちばん嫌なことをやる人間が、権力者たちの内部では尊敬される。竹中も、死刑執行人をやって権力者から尊敬される。誰もやりたがらない、いちばん穢い仕事をやるのだ。
 米国に国民の大切なお金(年金、郵貯・かんぽ)がどんどん流れていくことも、竹中がやらせている。西室泰三・日本郵政株式会社社長は、竹中の子分だ。
 日本人の多くはまだ、自分たちにかけられている恐ろしい攻撃に自覚がない。

 【注】【記事「日米、TPP妥結で貿易の国際標準を 富士山会合 」(日本経済新聞電子版 2014/11/1 2)】

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ」
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 【参考】
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

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【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)

(3)米国は安倍政権をヘンな右翼集団と見抜いている
 米国は、安倍政権をどう見ているか。ちょっと頭が悪い政権だから、米国も相手をしにくいのではないか。
 オバマ政権は、あきらかに安倍を嫌っている。ヘンな右翼集団だとハッキリ見抜いている。そして、大きくは米国が日本を引きずり回している。米国の指導のもとに、安倍たちに国家経営をやらせている。
 大きいところでいえば、「もっとカネを貢げ、米国債を買え、米国の主要な株式も買え」ということだ。あとは米国の兵器をもっと買わせる。ミサイル防衛網THAAD(Terminal High Altitude Area Defense missile)をもっと買わせたい。
 日本は米国債を大量に(おそらく800兆円ぐらい)買っている。形の上では、いちおう資金の貸借関係だが、本当は日本が米国にタダでカネを貢いでいるのだ。米国債は売れないからだ。売らせてくれない。
 日本の大銀行の資金運用担当者は、みなこの事実を知っている。「米国債は売らない」という誓約書を入れている。
 毎年30兆円ぐらいずつ、日本は米国さまに貢いでいる。このカネはまず、米国の公務員たちへの給料の支払いに充てられている。軍人たちへの給料にも。
 いわばクレジットカードのリボ払いで、米国がどんどん使ったカネの支払請求書が、日本のわれわれのところに回ってくるわけだ。いったん他人のカネで暮らすことを覚えると、元に戻れなくなる。
 米国という帝国は、すでにそういう国になっている。
 2015年は敗戦後70年だ。戦争に負けると、「負けた」で終わらない。敗戦国はそのあとずっと戦勝国にカネを払い続けなければならない。

(4)2014年“突然選挙”の黒幕は米財務長官
 2014年の“突然選挙”は、ジェイコブ・ルー米財務長官がやらせたのではないか、という説が出ている。ジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長よりルーのほうがずっと力がある。
 イエレンは見せかけだけのFRB議長で、本当はルー財務長官のほうがもっと悪いヤツだ【副島彦『金融市場を操られる絶望国家・日本、徳間書店、2014』】。
 ルーの親分がロバート・ルービン元財務長官だ。彼はゴールドマン・サックスの共同会長をしていた。デイヴィッド・ロックフェラーの直臣だ。
 ルーが、G7で消費税の見送りをやれ、と9月21日から言い出している。それで、10月中に命令、指令を日本に出したようだ。
 安倍首相は、「7-9(しち・く)」という言葉を国会の答弁で何度も使っていた。彼は滑舌(かつぜつ)が悪いから「シチ」が聞き取れない。「チチク」に聞こえる。
 「7-9」とは、「7-9月のGDP成長率の速報」のことだ。これが遅れに遅れ、何と11月17日に発表された。この数字が悪かった(実質GDP、年率マイナス1.6%、1次速報)ことを理由に、増税を延期した。その責任をとって、安倍はこのとき退陣すべきだった。
 ところが、その前にルーが、「日本はこんなに経済が縮小している。ここで増税したら、もっと悪い影響が世界に及ぶ」と、はっきり言い出した。米国やクリスティ-ヌ・ラガルドIMF専務理事が、消費税を「上げろ、上げろ」と言った挙げ句に。
 つまり、彼らはもう9月の段階で日本の「7-9」の数字を握っていた。これ以上増税をやったら、打撃が米国にまで来る。だから止めさせた、ということだ。それが11月17日の増税延期発表だった。こんなゴチャマゼの、メチャクチャな取り扱いを日本は受けている。
 そして、この翌日(11月18日)から急に、選挙になる、と言われ始めた。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ」
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 【参考】
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

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【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 (承前)

Ⅰ 官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ
(1)小沢一郎勢力はボロボロに崩されて日本は翼賛体制へ
 佐藤優は、右でもあり左でもある。今の日本の真ん中にいる。改革派の保守主義、自由主義的な保守主義だ。
 副島孝彦は、鳩山政権の次には小沢政権もあり得るかと考えていたが、米国が仕掛けた「反小沢クーデタ」が致命傷になった。民主党の代表選に負けてから、小沢一郎の勢力はボロボロに崩れた。その後、菅直人や野田佳彦みたいな変なのが出てきて、米国の言いなりになって、消費税の増税まで決めてしまった。
 現在は、安倍晋三による「官邸主導」という名の独裁政治だ。自民党の翼賛体制が続いている。
 2014年12月の衆議院選挙は、獲得議席からすれば、自民党が勝ったというのは間違いだ。前回の選挙から議席を2つ減らしているからだ。投票率は52.6%。とんでもなく低い数字で、組織選挙が有利になる。創価学会、連合、共産党の3団体(組織票がある)が競争して、その中で創価学会がいちばん強かった、というだけの話だ。
 流れが違ったのは、沖縄県と北海道だけだ。沖縄県では自民党系が全滅した。それは地場の保守が生まれているからだ。
 自民は比例で全員復活しているが、母体が違う。比例区(の九州7県+沖縄県)の代表と、小選挙区(の沖縄県だけ)の代表とでは、意味合いが違う。比例復活した人たちは、沖縄県の代表とは言えない。
 なお、北海道や東京都の比例代表は、北海道、東京都という単位から出ている。だから、それぞれの代表と見做すことができる。

(2)自民党の選挙コピーは全体主義国のスローガン
 安倍晋三はイカれている。安倍は、前回の選挙でもイカれぶりを見せた。選挙が終わったあと、開票速報のテレビ番組で池上彰・ジャーナリストとこんなやりとりがあった。
 池上、「集団的自衛権の話をしていないのではないですか?」
 安倍、カーッとなって、「それは何度も言っている」「憲法改正についても公約に書いてある」
 公約に書いてある、と言っても、選挙公約に細かい字でいろいろ書いてあるだけだ。そんなものでは国民が議論したことにはならない。
 また、自民党の選挙ポスターのコピーは、「景気回復、この道しかない」というもの。
 「この道しかない」・・・・は、1988年のゴルバチョフ政権(ソ連)のスローガンと同じだ。
 ソ連時代、ペレストロイカがうまくいかなくなったとき、「この道しかない」という言葉をゴルバチョフ政権が考えて、マスコミにわめきたてた。1年ぐらい「この道しかない」キャンペーンを張ったが、全然効果はなく、その3年後にソ連は崩壊した。
 そもそも「この道しかない」などというスローガンは、民主主義国にはあるまじきものだ。「ダメなものはダメ」なら、まだあり得る。いくつかの選択肢のうちで、やはり、やってはいけないことはある、ということだから。
 しかし、「この道しかない」は、それ以外の選択肢はない、ということだ。これはまるで全体主義国だ。
 これからの日本は、金融政策(異次元の量的緩和=ジャブジャブマネー)を中心に、統制経済をもっとやって、全体主義(トータリテリアニズム)の道を歩むだろう。

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」の「官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ」
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 【参考】
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

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【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~

2016年06月30日 | ●佐藤優
 対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」は次のような構成をとる。

Ⅰ 官邸主導で暴走する安倍政権の危うさ
 (1)小沢一郎勢力はボロボロに崩されて日本は翼賛体制へ
 (2)自民党の選挙コピーは全体主義国のスローガン
 (3)米国は安倍政権をヘンな右翼集団と見抜いている
 (4)2014年“突然選挙”の黒幕は米財務長官
 (5)竹中平蔵が中小企業100万社を潰す
 (6)円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚かさ
 (7)アベノミクスは反知性主義が生んだ現代の錬金術
 (8)官僚の課長クラスの人事も握る内閣人事局の恐ろしさ
 (9)「戦後レジームからの脱却」で日本はどこに行くのか
 (10)普通の民主主義とは波長が合わない安倍政権
 (11)日本とイスラエルが軍事面で技術提携する

Ⅱ 戦争に突き進んでいく安倍政権
 (1)日本に安保法制の改正をやらせる米国
 (2)「行動する保守」の排外主義的言説を放置するな
 (3)尖閣諸島問題で日本は世界秩序をかく乱させている
 (4)国連は国際的強制執行活動の機関だから怖い
 (5)もうすぐ尖閣諸島で軍事衝突が起きる
 (6)日本と中国とぶつけさせたい米国の計略

Ⅲ 安倍独裁政権に歯止めをかけられるか
 (1)創価学会・公明党という中道勢力の重要性
 (2)安倍政権はまるで「ウンコ座りの暴走族」
 (3)民主勢力も米国に操られて小沢一郎を潰した
 (4)安倍晋三の頭の悪さに官僚もやる気をなくしている

□対談:副島隆彦×佐藤優『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(株式会社キャップす、2015)の「第1章 安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本」
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【池上彰】+原寿雄 へたれメディアよ、安倍政権という主人持ちのジャーナリストになるな

2016年06月30日 | 批評・思想
 (1)2016年に「国境なき記者団」が発表した報道の自由度ランキングで、日本は180ヵ国と地域のうち、前年の61位から72位に下がった。2010年は11位だった。急速に落ちている。【池上】
 実際よりいいんじゃないか(現実はもっと悪い)。【原】
 「報道の自由度」というが、①国が報道の自由を制限しているのか、②報道機関の側が勝手に自主規制したり忖度したりして、自ら自由を狭めているのか。日本では②が多い。高市総務相が放送局に電波停止を命じる可能性に言及した際、ジャーナリストらが抗議会見を開いたが、NHKは取材にも行かなかった。【池上】
 その点は、特に強調して問題提起されるべきだ。ジャーナリストと取材相手は対等であるべきなのに、日本人記者の根性には「お上の話を承る」という姿勢が昔からある。それが克服できていない。【原】
 その傾向は年々強まっている。最近まで権力を持つ側は「メディアに圧力をかけてはいけない」というのが共通認識だった。政治家も、メディアから批判されたからといって、いちいち文句をたれることはなかった。「権力は抑制的であるべきだ」と考えられていたからだ。だから、たまに権力欲のある政治家がメディアに介入する発言をすると、大騒ぎになった。ところが、安倍政権になってからは、自民党は主なニュース番組をすべて録画して、細かい部分まで毎日のように抗議し、訂正を求め、注文をつけてくる。すると、テレビ局は「面倒くさい」となる。対応が大変で、次第に「文句を言われない表現にしようか」となってしまうのでだ。【池上】
 トラブルが面倒になったらジャーナリズムは後退する。「この権力やろう!」というぐらいの気持で仕事をし、その結晶で報道が生まれるようでないとダメだ。【原】

 (2)第一次安倍政権(2006~07年)の時に、メディアへの抗議が増えた。ところが安倍さんが辞めた後にパタリとなくなった。福田政権、麻生政権、民主党政権の時は抗議が大量にくるようなことはなかった。それが第二次安倍政権(2012年~)になって復活した。【池上】
 問題はメディア側にある。弱者に強く、強者に弱くなった。自分たちは読者・視聴者のために仕事をしていると思っていれば、政治家や役人、企業などからくる圧力とは断固として戦い、押し返せるものだ。【原】
 もう一つ大きいのは、読者や視聴者の抗議が「見える化」されたことだ。昔は抗議の電話がかかっても、的外れな意見は「イヤなら番組を見るな」と言い、ガチャンと切っていた。それが今では、クレーム内容がテレビ局内のイントラネットで共有されている。プロデューサーも返事を書かないといけない。これが大変だ。局内で共有されると「こんな抗議がくるんだ」と感じ、萎縮する雰囲気になってしまう。今は、安倍政権を批判すると一般の視聴者からメールがたくさんくる。【池上】
 大変な変わり方だ。【原】
 さらに深刻なのは「電凸」だ。「電話で突撃する」という意味のインターネット用語だが、一般の読者や視聴者が、気にくわない報道があると、スポンサー企業に一斉に抗議電話を架ける。「不買運動をする」なんて言われるとビックリする。2015年に自民党の議員が、マスコミを懲らしめるためにスポンサーに圧力をかけることを提案して、問題になった。それも実際にはすでに行われている。【池上】
 メディアは批判の大衆運動が広がるのが一番、怖い。【原】
 あるいは、インターネットでスポンサー企業の電話番号の一覧を書く。ただ、「一斉に抗議電話をかけよう」と呼びかけると、威力業務妨害罪に問われる可能性がある。なので、インターネットに書き込まれるのは電話番号だけ。それを見た人びとが抗議電話をかける。これも大変な圧力だ。【池上】
 大衆の批判が組織化されると、メディアもスポンサー企業も辛い。理性的な批判は歓迎すべきだが、情緒的な大衆運動化は問題だ。【原】
 最近は「反日」という言い方。戦前の「非国民」と同じ。【池上】
 大衆運動は、時に見識を失って、勢いに流されてしまう。動物や家畜などの集団が、何かをきっかけに一つの方向に激しく動き始めるのを「スタンピード」というが、大衆運動がそうなると議論できなってしまう。【原】

 (3)現代的に言うと「反知性主義」に言い換えることができるのではないか。冷静に議論するのではなく、「マスゴミ」「反日」と罵倒して、数の力で封殺する。その状況でも冷静に立ち止まって議論することが、メディアの役割だ。【池上】
 メディア自身も権力化していることが問題だ。それでも国民によるメディアへの監視の目が厳しくなり、対抗できるようになってきた。それで初めてメディアと国民が対等になれるのだ。【原】
 ネット右翼の圧力にくじけてはダメだと。そこから始めないといけないと。【池上】
 勝ち続けてはダメ。メディアと大衆が戦って、たまにはメディアが負けてもいいのだ。【原】
 最近はよく負けている。【池上】
 むろん、排他的な熱狂に圧倒されてメディアが負けてしまうのはよくない。ただ、民主主義では、批判されたら反論できる。その場をメディアが設定できる。総括することが大切だ。それが民主主義なのだ。【原】
 今のマスコミやメディアの状況はどうか。【池上】
 最も気になるのは、日本の報道が「発表ジャーナリズム」になっていることだ。役所や警察など、公的機関が発表した情景をそのまま記事にするのはジャーナリズムではない。【原】
 学生時代は新聞記者を志望していた。その時、原さんの『デスク日記』を読んで、ジャーナリズムの勉強になった。【池上】
 『デスク日記』は、自らの仕事を日々反省し、今日の仕事はこれでよかったのか、何か悪いところはなかったか、なぜ取材相手や圧力に圧倒されてしまったのか。それを反省の糧とするために書いてきた。その日に記事を出したから終わるのではなく、さらに取材を積み上げていく。【原】
 今回『デスク日記』を再読したが、総理大臣と新聞記者がしょっちょう食事をしている。最近、安倍首相とメディア関係者が食事をしていることに批判の声が高まっているが、50年前も同じだった。【池上】
 そのこと自体は悪いことではない。新聞社やテレビ局の幹部になっても、末端の兵隊である記者だけに取材を任せず、ジャーナリストとして時の首相に問い質すのであれば。【原】
 取材過程としての食事であれば問題ないと。【池上】
 報道機関の幹部が、会社組織の上に立つ立場の人間として、大局的な問題提起をして、相手の対応を取材すればいい。ところが、実際はただの懇親会。そんなバカな話はない。【原】
 そのほかにも、新聞記者の目の付け所やデスクの判断によって、記事の内容が変わってしまうことも学んだ。【池上】
 ジャーナリストは、アジェンダ・セッティング(議題設定)が大事だ。権力側の意向とは関係なく、自ら何を調べるかを決め、取材し、記事にする。それが今では、議題設定をニュースソース側に握られている。それが最大の問題だ。【原】

 (4)2010年の総選挙での安倍さんのキャッチフレーズは「日本を、取り戻す。」だった。この「日本」とは、一体何なのか。【池上】
 憲法9条のなかった日本を、大日本帝国憲法時代の日本を取り戻そうとしているのか。【原】
 そうかも。「戦後レジームからの脱却」という言葉も使っているから。【池上】
 そこに危機を感じる。【原】
 曖昧だ。取り戻したい「日本」とは何なのか。いま、米国では「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン(米国を再び偉大な国に)」というトランプ氏が大統領候補になりそうだが、安倍さんは「メイク・ジャパン・グレイト・アゲイン」と言っているようなもの。中身はいろんな意味で受け取れる。【池上】
 自民党の人びとにとってみれば、戦後の個人主義は許せないわけだ。個人主義は利己主義だと思っている。だから、個人より家族や国を上に置く「家族主義」「国家主義」が再び強まっている。尊敬される個人に、自分がなったことがないからだろう。利己主義の個人主義しか知らない。民主主義は互いを尊重し合う社会なのだから。【原】
 今の自民党には家族主義の風潮が出ている。【池上】
 昔はそうだったから。私も、20歳まで(敗戦のときまで)は自分より家族の名誉を優先していた。【原】
 「家名を汚すな」とか。【池上】
 だから、この風潮に対抗するには、安倍政権と反対のことを言うしかない。相手が個人を認めないなら、ジャーナリストが個人を尊重する社会を実現するために、いろんな角度から取材し、その必要性を伝える報道をしなければならない。【原】
 原点に戻ることが大切だ。私の持論では、ジャーナリストは日々の営みを記録するのが仕事。それと同時に、ジャーナリストの記録は、やがて歴史になる。そして歴史になった時に、後世の人びとから後ろ指を差wされない取材の仕方や報道が求められている。【池上】
 1945年まで、日本のジャーナリズムは権力のお先棒を担いだ広報機関だった。広報とは、主人持ちということ。ジャーナリストは主人を持たない。自分が主人で、自分で判断する。主人持ちのジャーナリストになってはいけない。【原】
 「発表ジャーナリズムになるな」ということかと。記者クラブで発表したが、役所から「報道は待ってほしい」と言われることも、昔から多かった。記者クラブ制度はメディアと権力の談合の象徴として批判されることが多いが、その点はどうか。【池上】
 記者クラブが団結すれば、ニュースソースの側が出したがらない情報を引き出せる可能性があるし、実際にそういった経験も少数ながらある。その気になればできる。【原】
 抵抗の拠点にもなりうると。【池上】
 だから、僕は「記者クラブの囚人になるな」と言っている。記者クラブに囚われると、ニュースソースの手のひらの上で操られてしまう。記者クラブを拠点にするのはいいが、その枠を飛び越えて、自らテーマを設定して独自に取材しなければいけない。そうでないと、記者クラブはニュースソースがメディアをコントロールする道具になってしまう。それが最大の問題だ。【原】
 私も若いころは「リポーターがポーター(運搬人)になってはいけない」と言われた。発表されたものを右から左に運ぶことはするなと。それが今は、首相や官房長官の会見でも、記者はひたすらパソコンに向かって発言の一字一句を間違えないようタイピングしているだけ。ポーターそのものだ。【池上】
 記者会見の内容をまとめる記事は、本来の仕事ではない。当局の広報の役割だ。【原】
 記者会見でも、どんな表情で言っているのかが大切だ。記者クラブで発表した人から聞いた話では、会見が終わって「質問はありませんか」と聞いても、質問が出てこないという。【池上】
 自分の頭でテーマを決めて、自分の足で取材をすることができていないのだろう。それができるようになるには相当な努力が必要だ。今の若い記者は、役所からの発表漬けになれてしまっている。それを克服できるか。その覚悟がないならジャーナリストになるなと言いたい。【原】

 (5)ジャーナリストは、良き質問者でなければならない。その前提として、何事も自分で考え、疑ってかからないといけない。私は一生かけてベスト・クエスチョナーになることを目指した。果たせなかったが。【原】
 よき問いをたてるということかと。ジャーナリストは空気を読む人間であってはならない。【池上】
 組織ではなく、独立した一人の人間として「読者、あるいは国民の代理人であれ!」と。主体的な姿勢が大切なのだ。【原】

□池上彰(ジャーナリスト)×原寿雄(元共同通信社社長)「重鎮対談 へたれメディアを叱る 安倍政権という主人持ちのジャーナリストになるな!!」(「緊急復刊 朝日ジャーナル」2016年7月7日臨時増刊号)
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【EU離脱】嘘の「公約」で多数派を勝ち取った政治家たち

2016年06月29日 | 社会
●「公約」の誤りを告白するファラージ英独立党党首

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□「EU離脱派、投票後悔 造語流行、公約に誤りも」(日本海新聞 2016年6月29日)

 *

●「公約」を反故にする離脱派政治家 ~英国独立党党首、元保守党首~

 国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国で、離脱派が語っていた「バラ色の未来」が急速に色あせている。旗振り役の主な政治家が、投票に向けた運動で語ったことの誤りを認めたからだ。「公約」を反故(ほご)にするような動きに、残留派からは不満が噴出している。

 離脱派は運動中、EUを離脱した場合、英国がEUに拠出している負担金が浮くため、財政難にあえぐ国営の国民保健サービス(NHS)に「週当たり3億5千万ポンド(約480億円)を出資できる」としていた。離脱運動の公式団体の宣伝バスに大きく印刷され、スローガンとなった。
 指導者の一人、英国独立党(UKIP)のファラージ党首は24日に英メディアで、負担金の予算が浮くと主張したが、その使途は確約できないと語った。このスローガンは「離脱派の過ちだった」とも発言した。
 保守党のダンカンスミス元党首も26日、出演した英BBCの番組で「自分は言ったことはない」と発言。NHSのほか、教育予算や研究助成金に上乗せできるとした主張は「あくまでも可能性の話」と述べた。
 こうした動きに、親EUで若者の支持率が高い自民党のティム・ファロン党首は、「離脱派キャンペーンはうそによって人々の怒りをあおった」と批判した。
 残留派のハモンド外相は26日に英メディアで、「英国民に矛盾した約束をした」と離脱派を批判。離脱派がEUからの移民の抑制と単一市場への完全アクセスを同時に求めている点について、「一方を追求すれば、他方を犠牲にせざるを得ない関係にある」と指摘した。
(中略)
 離脱派の公式団体「ボート・リーブ(離脱に投票を)」の公式サイトは27日現在、「ありがとう」というメッセージだけが表示され、EU離脱でかなえられるとした事柄を羅列したキャンペーン資料へのリンクがなくなっている。
 国民投票の再実施を求める英議会の請願サイトには、27日午前10時(日本時間27日午後6時)現在で、360万以上の署名が集まった。英メディアによると、請願の発起人とされる男性は離脱派で、投票日前に国民投票で残留派が勝つと予想して始めたものだった。

□「EU離脱、バラ色のはずが…旗振り役が「公約」を反故」(朝日新聞デジタル 2016年6月28日)


 *

●本気でEUから離脱させる気はなかったジョンソン次期首相候補

 欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の国民投票は、多くの移民が暮らす英国社会や、「連合王国」を形づくる4地域の間に深い亀裂を生んだ。英国の与党・保守党内の政争の具とされた国民投票は、民意を刺激し、国内に癒やしがたい傷を残した。

 「望んだ結果ではなかった」。国民投票で残留を訴え、敗北したデービッド・キャメロン首相(49)。27日、英下院での緊急演説で唇をかんだ。
 議場に、次期首相の最有力候補と目される保守党下院議員、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長(52)の姿はなかった。
 2人とも、名門私立イートン校からオックスフォード大学に進んだエリート。ジョンソン氏が先輩だ。
 ジョンソン氏は、離脱派の旗振り役として「主権を取り戻せ」と訴えた。
 かつて英紙のブリュッセル特派員として、欧州統合の機関の官僚主義を酷評してきたジョンソン氏。「非民主的で、無駄が多く腐っている」など、これまでもEU批判の発言はあった。
 だが今年2月下旬、人気政治家のジョンソン氏が、EU改革にとどまらず、さらに過激な離脱の主張を始めたのは人々を驚かせた。
 背景には、自らの存在感を高め、政敵を出し抜こうという思惑があったとみられている。
 ジョンソン氏本人は、国民投票で離脱派が敗れると予想していただろう――。保守党閣僚は、英紙にそう語った。敗れてもEU懐疑派が多い党支持層の間で株が上がれば、次の首相への可能性が増す。そんなシナリオを描いていたようだ。
 一方のキャメロン氏がEU離脱を問う国民投票の実施を打ち出した上で、残留を訴えたことにも政治的な思惑があった。
 2013年、国民投票の実施を表明。15年の総選挙の公約にも掲げた。
 13年当時、保守党内ではEUに権限が集中する状況に「EU懐疑派」の不満が募り、キャメロン氏の求心力を脅かしていた。また移民規制を掲げる英国独立党(UKIP)が保守党の支持層に食い込んでいた。
 「国民投票」を掲げることでUKIPを抑えられ、EUからも有利な条件を引き出せると踏んだ。EUから得た条件を手に国民投票で残留を勝ち取れば、EU懐疑派を抑え込めるとの計算もあったとされる。
 15年の総選挙は勝った。だが国民投票は敗れた。
 政治家たちの「賭け」と「誤算」は国論を二分し、国民の暮らしと世界経済を危機にさらした。
(後略)

□「「政争の具」で王国に深い傷 英保守党、国民投票の誤算」(朝日新聞デジタル 2016年6月29日)
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【雇用】定年後の再雇用、給料引き下げは違法 ~東京地裁判決~

2016年06月29日 | 社会
 (1)再雇用時の給料引き下げは違法である。・・・・2016年5月13日、東京地裁で再雇用の労働条件に関する興味深い判決が下った。
 訴えたのは、定年後、1年契約の嘱託社員として再雇用されたトラック運転手3人。仕事は定年前と同じ。ただし、給料は変わった。嘱託社員に係る就業規則に基づき、定年前の正社員時代比べて3割減の年収となった。
 これに対し、「特段の事情がなければ、同じ業務内容で正社員と再雇用後の嘱託社員の間に賃金格差があってはならない」と、東京地裁は、会社側に、定年前の正社員時代の給料との差額分(400万円)を支払うよう命じた。

 (2)何が興味深いかというと、定年後の再雇用の給料引き下げで「労働契約法」20条違反が認められた初めての判決だったからだ。
 「労働契約法」20条は、2012年改正で追加された条文で、有期契約労働者と期間の定めのない労働者(いわゆる正社員)の間の「不合理な労働条件の違い」を禁止している。
 不合理かどうかの判断のポイントは、
   ①業務の内容と責任の重さ
   ②配置転換や転勤の有無
の二つ。さらに、
   違いを設けるだけの特別の事情
を加え、総合的に判断する。

 (3)かつては、60歳の定年でリタイアするのが当たり前だったが、今は定年後も働き続ける人がたくさんいる。「高年齢者雇用安定法」が改正され、65歳まで雇用する制度の導入が義務づけられたからだ。
 65歳まで雇用する制度は、
   ①定年の廃止
   ②定年年齢の引き上げ
   ③再雇用(継続雇用)
の三つの方法があり、多くの会社が③を選択した。
 なぜか。
 ③は、定年で退職した会社、あるいはグループ会社に再就職する制度だ。つまり、正社員時代の労働契約は定年でいったん終了するというのがミソ。再雇用時には新たな労働契約を結び直すことができるため、再雇用制度を選んだ会社が多かったのだ。そして、多くの会社が「1年契約」などの有期契約で、定年前よりも低い給料水準で再雇用後の労働契約を結び直している。

 (4)「労働契約法」20条は、(3)の改正「高年齢者雇用安定法」の後にできた。
 「再雇用後の有期契約は、高年齢者雇用安定法の65歳までの雇用を確保するための特別な有期契約だから、労働契約法20条で不合理な労働条件の違いが禁止されている有期契約とは別のもの」
 こう考えて、給料だけ下げて定年前の正社員時代と同じポスト・業務内容のままで再雇用する会社がたくさんあった。
 (1)の東京地裁の判決は、
 「再雇用後の有期契約は特別な有期契約だ」という会社の言い分は通用しないことをハッキリと突き付けたわけだ。

 (5)労働者にとっては心強い判決ではなるが、再雇用後の給料が定年前と同じになるのが一般的になるか、と言うと、それは怪しい。
 あえて定年前とは違う業務で再雇用することで、「労働契約法」20条違反を回避する動きが出てきている。
 今までは、
 「仕事は同じなのに、給料が下がった」
という不満をこぼす人が多かった。しかし、今後は、
 「慣れない仕事に変わった上に給料も下がった」
という切実な不満を抱く労働者が増えそうで、(1)の東京地裁判決は複雑な反響を招く。

□稲毛由佳(社会保険労務士、ジャーナリスト)「定年後の再雇用、給料引き下げは違法と東京地裁で初の判決下る」(「週刊金曜日」2016年6月24日号)
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【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 

2016年06月28日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)ジャガイモは、昨今悪役にされがちな「糖質」豊富な食べ物。生活習慣病を予防する効果が認められた「カリウム」の含有量が高く、健康的か否かの結着がつかずにいた。
 しかし、米国立衛生研究所の助成による研究で、
   「普通のジャガイモ料理でも、高血圧発症リスクが上昇する」
との結果が報告され、注目を集めている。

 (2)研究者らは、米国で1970年代から続く中年の看護師や医療関係者を対象とした大規模調査のデータを使い、
   ジャガイモ摂取量と高血圧との関係
を解析。それぞれ登録時に標準的な血圧だった男性36,803人、女性150,650人のデータを対象とした。
 また、ジャガイモは、ノンオイルのヘルシーな調理法の①と、高温の油脂で調理する②、③の3調理法に分類。20年の追跡期間中、1ヶ月に食べたジャガイモ量と調理法、高血圧発症との関連を調べた。
   ①ノンオイルのヘルシーな調理法・・・・ベイク(焼き)/ボイル(ゆで)/マッシュ(つぶし)
   ②フライドポテト
   ③ポテトチップス
 その結果、ジャガイモの摂取量が、毎月1サービング(50~110g)未満の人に比べ、1週間に4サービング(200~400g)以上食べる人の高血圧発症リスクはマッシュポテトなどのヘルシーな調理法でも1.11倍に上昇。一方、②の発症リスクも、1.17倍に上昇したが、意外にも③は0.97倍と発症リスクが低かった。
 
 (3)追加研究として、ヘルシーなジャガイモ料理1日1サービング分を緑黄色野菜など非でんぷん質の野菜に置き換えたところ、高血圧の発症リスクが有意に低下した。

 (4)米国では、2010年から子どもたちに無料の「健康的」なランチプログラムが提供されている。しかし、当初設けられていた「ジャガイモなどのでんぷん質野菜」摂取量の制限は、2年後になぜか撤廃された。
 今回の調査報告は、これに警鐘を鳴らすものだ。

 (5)日本では、ジャガイモを「野菜」として食べる人はいないだろうが、イモ類の糖質は案外吸収が速く、高血圧のほか、食後高血糖要因にもなりやすい。
   食事はバラエティ豊かに
 やはり、これが大原則だ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.306~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月2日号)
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 【参考】
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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【食】「水素水」ブーム便乗商品に気をつけろ ~効果は疑問~

2016年06月27日 | 医療・保健・福祉・介護
  《甲》伊藤園「水素水H2」・・・・1本(410ml)が199円(内税)。ミネラルウォーターに比べて割高。
  《乙》オムコ東日本「Nano Bubble H」・・・・1本(500ml)が203円(内税)。以下、同上。
  《丙》ロハス・メディカル「高濃度 水素水 H2 長期保持タイプ」・・・・1パック(300ml)が270円(内税)。以下、同上。

 (1)《甲》~《丙》の3製品は、いずれも水に水素ガスを溶かし込んだものだ。水(H2O)は、水素原子(H)と酸素原子(O)でできている。その意味では、水素自然界や人間の体内に存在するありふれた原子だ。水素水に含まれているのは、水素原子が2個結合した水素分子(H2)で、これは水素ガスとも呼ばれる。
 以前は、水素ガスは生理的活性のない(つまり体にとっては役に立たない)ものと考えられていた。
 ところが、今世紀に入って、老化や動脈硬化などの一因とされる活性酵素と結びついて、それを除去する作用があるということで、注目されるようになった。
 水素ガスは、無味・無臭の気体で、人間にとっては無害だ。だから、水に水素ガスが溶けている水素水も、安全性については問題がないと考えられる。ただし、人によってはお腹がゆるくなることがある、という指摘があるので、その点は注意したほうがよい。
 ちなみに、水素は、天然添加物(既存添加物)としての使用が厚生労働省によって認められている。

 (2)水素水は、実際に健康維持に効果があるのか?
 水素水が除去するといわれている活性酸素は、体内で酸素が変化してできるもので、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素などがある。一般にはいずれも「悪者」とされている。
 しかし、実は重要な働きも持ってる。体内に侵入した細菌に対して、免疫細胞とともに作用して除去するなどの役割があるのだ。
 ところが、体内で活性酸素が過剰に発生すると、それが細胞や遺伝子に損傷をもたらし、動脈硬化や癌、老化などの一因になるといわれている。
 水素水に含まれる水素ガスは、活性酸素と結合して、それを水に変化させるといわれている。とくに活性酸素の中でも、生体損傷をひき起こす作用の強いヒドロキシラジカルを選択的に消し去るといわれている。そのため、「動脈硬化や癌を防ぐ」「アンチエイジングに効果がある」などと、ネットを中心に話題になっているのだ。

 (3)だが、人間が水素水を飲んだ場合、どの程度活性酸素を除去できるのか、わかっていないようだ。
 国民生活センターは、2016年3月、「活性酸素の一種を抑制する水をつくるとうたった装置 -飲用による効果を表したものではありません-」と題した文書を発表した。そして、水素発生装置で作られた水素水について、「広告に記載されているヒドロキシラジカル抑制率は、飲用による効果を表したものではありません。人体への効果と関連付けて考えないようにしましょう」と、消費者に向けて注意を喚起した。

 (4)国民生活センターや全国の消費生活センターなどには、水素発生装置に関する相談が、2010年度から5年間で220件寄せられ、とくに2014年度は前年までの2倍近く増えた。相談内容は、
   「『癌が治る』などと勧められて購入したが、本当に効果があるのか」
   「期待した効果がないので、解約したい」
などというもの。そこで、国民生活センターでは、2社の製品についてテストを行った。
 その結果、水素発生装置で生成した水素水には、ヒドロキシラジカル消去能が見られたが、発生させるヒドロキシラジカル量を多くした方法では、消去率は低下した。
 また、2社のホームページやパンフレットには、それらの水素水について、水の中のヒドロキシラジカルを抑制することが示されている一方で、抑制率のデータは人体に対する効果・効能を表すものではない旨の記載が見られた。つまり、メーカーでも体内の効果は確認していない、ということだ。

 (5)《甲》~《丙》の3製品も、水に水素が溶けているという点では、水素発生装置で作られた水素水と変わりがない。そして、注目すべき点は、
   《甲》と《丙》には、効能・効果を示唆するような表示はない。
   《乙》には、「水と一緒に吸収された水素は、活性酸素の除去に役立ちます」の表示はあるが、健康維持に役立つという意味の表現は見当たらない。
 どうやら、水素水が活性酸素を除去するという試験管内の実験データが、ネットなどで誇大に宣伝され、人体にも同様な効果があるという話にすり替えられ、水素水人気が高まったようだ。
 しかし、試験管内の実験結果と人体に対する効果とは別物なのだ。

□渡辺雄二「効果があるかどうかは“?” 「水素水」ブーム便乗商品に気をつけろ」(「週刊金曜日」2016年6月17日号)
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 【参考】
【食】炭酸水の飲み方には気をつけたい ~糖類や食品添加物~
【保健】「新世代エコ洗剤」は本当にエコか ~AESの悪影響~
【食】明太子やたらこも癌リスクを高める ~亜硝酸Na、タール系色素~
【食】「加工肉」の危険性に改めて目を向ける ~発癌性~
【食】一部の「有機ワイン」に入っている添加物 ~亜硫酸塩~
【食】「トクホのノンアルコールビール」 ~その危険性~
【食】新しい「コカ・コーラ」は体にやさしいか ~買ってはいけない~
【食】買ってもいいインスタント食品
【食】「高級インスタントラーメン」に含まれる食品添加物
【食】お手軽「流水麺」の落とし穴

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