語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】安倍政権は事実上の超然内閣 ~官僚の掟(12)~

2019年03月19日 | ●佐藤優
 今の安倍政権の姿がよく見えてくる話を、この章の締めくくりとしてみましょう。安倍政権は、どれだけ筋が通っていることでも、自分にとって好ましくなければ「超然」とした態度をとることができるのです。1889年、大日本帝国憲法公布の翌日、首相の黒田清隆は、集まった地方長官を前に「超然政党の外に立ち」不偏不党の立場で政治にあたれと演説をしました。これがおそらく皆さんも社会科の授業で習った「超然主義」あるいは「超然内閣」の由来となるエピソードです。
 大日本帝国憲法には、首相や閣僚は国会議員から選ぶという決まりはありませんでした。ですから政党に左右されず「超然」として政策を実行できる超然内閣が成り立ちました。いまの安倍政権は事実上の超然内閣だと思います。
 その根幹にあるのが、反知性主義だと思いますが、反知性主義だけでは、現在の議院内閣制の下で超然内閣は成り立ちません。常識的に見れば、森友・加計学園問題で明らかになった国会軽視の姿勢で、与党内から「安倍おろし」が始まり、野党から激しい攻撃を受け、政権を維持できないか、支持率の低下で求心力を失っていることでしょう。
 安倍政権が事実上の超然内閣になっているのは、いくつかの追い風が同時に吹くという幸運にも恵まれたからだと思います。繰り返すようですが、野党の弱体化がまず挙げられます。むしろ衰弱と言いたいくらいです。衆参両院の議席数を見ると、自民党は衆議院で283議席を占め、単独過半数です。連立を組む公明党の議席と合わせれば、憲法改正を発議できる3分の2を超えています。参議院は125議席。公明党と合わせれば、3分の2には達しないものの150議席。通常の国会運営には支障はありません。
 さらに安倍首相の出身母体、自民党はかつてのように、派閥が政策を競い、それぞれの派閥の長が首相の座を狙う、合従連衡は日常茶飯事という緊張感がありません。議員も小粒になりました。政策と胆力のある政治家が果たしてどれほどいるでしょうか。小選挙区制では一人しか当選できません。党から公認をもらえなければ莫大な選挙費用を捻出できず、中堅議員以下の当選はおぼつきません。必然的に自民党所属議員は安倍氏の顔色をうかがうようになります。超然内閣にならない方がおかしいのかもしれません。

□佐藤優『官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態』 (朝日新書、2018)の「第1章 こんなに統治しやすい国はない」の「超然内閣の根にある反知性主義」を引用

 【参考】
【佐藤優】安倍政権の反知性主義  ~官僚の掟(11)~
【佐藤優】内閣支持率42%の心理的根拠  ~官僚の掟(10)~
【佐藤優】世論と信頼  ~官僚の掟(9)~
【佐藤優】「劣位」の元キャリアの特徴  ~官僚の掟(8)~
【佐藤優】どの上司に評価されたか  ~官僚の掟(7)~
【佐藤優】官僚は年次がすべて  ~官僚の掟(6)~
【佐藤優】官僚に「落選」はない  ~官僚の掟(5)~
【佐藤優】ソ連官僚の鉄のモラル   ~官僚の掟(4)~
【佐藤優】競争の土俵に上がらない  ~官僚の掟(3)~
【佐藤優】自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務 ~官僚の掟(2)~
【佐藤優】『官僚の掟』の目次



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