語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【料理】はシンプルに ~シンプル・ライフにつながる~

2014年09月29日 | 生活
 理想的な家庭料理は、
  プロが作るような本格的な料理ではなく、
  かといって手抜き料理でもなく、
  「○○の素」みたいな旨味調味料理で作られたものではないことは無論のこと、
  シンプルな手順でシンプルな料理を作ることだ。

 凝った手順を踏めば、複雑で美味しい味になると考えがちだが、実はそうではない。
 「凝っている方が美味しい」というのは、単なる思い込みだ。

 以下、とても簡単な手順で、しかし非常に本格的な味になるレシピ。
 題して「パイナップル入りの酢豚」。

 缶詰のパイナップル。
 しかも、ケチャップ味。
 それだと、酢豚に合わない。

 用意するのは、
  生のパイナップル。
  豚肉。油で揚げるから、豚肉は赤身のほうが重くならないでよい。
  ニンニク。
  ショウガ。
  長ネギ。
 調味料は、
  黒酢。
  オイスターソース。
  紹興酒。
  砂糖。 

 豚肉は、できるだけブロックを買ってきて、斜めに薄くスライスしておく。
 パイナップルは、皮を厚めに剥いて、サイコロぐらいの大きさに刻む。
 ニンニク、ショウガ、長ネギはみじん切りに。
 フライパンに油をひいて、これらを炒め、いい香りがしてきたら、パイナップルも加えて、調味料も全部足して、しばらく煮込む。水溶きかたくり粉でとろみをつけたら、ソースは完成。 
 豚肉はかたくり粉をまぶして、180度のてんぷら油でパリッとするまで揚げる。油を切ったら、揚げ豚を平皿に広げ、肉全体にかからないように中央にこんもりとソースを乗せる。ソースがかかっていない豚の、カリッの部分が残っているほうば美味しい。

 以上の料理は、中国料理「糖醋肉」(日本式酢豚の原型)をアレンジしたもの。
 ケチャップを使わないから、甘ったるくない。生のパイナップルの酸味とオイスターソースの旨味が調和して、新鮮に感じられるはずだ。手順も材料もとてもシンプル。だが、味は本格的だ。
 これぞ家めしの醍醐味だ。

 これからの時代は、料理に限らず、住む家も身につける衣服も持ち物も、なるべく減らしてシンプルに生きていくのが好まれるようになっていく。
 そういうライフスタイルで移動の自由を確保していくことが、楽しい人生につながっていく。

□佐々木俊尚「シンプルイズベスト! ~オヤジの家めし12~」(「週刊金曜日」2014年9月26日号)
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 【参考】
【料理】家事する男 ~家事しない男の時代は終わった~
【料理】する自由 ~調理道具に凝るな~
【料理】野菜料理のコツ ~美味な「ポテトサラダ」の作り方~
【料理】バブルが産んだのは外食だけ ~家庭料理のコツ(一例)~
【料理】基礎調味料だけでエコかつ経済的に ~回鍋肉で実践~
【料理】1日2食でも十分なワケ ~肥満防止~
【料理】2つのポイント ~片付けの技術~
【料理】毎日もちっとも面倒くさくない ~手抜きの技術~


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【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~

2014年09月29日 | 社会
 四半世紀前、「ふるさと創生」を引っ提げて自民党幹事長から首相になった竹下登は、消費税導入を果たした。そして、消費税に次ぐ政権としての政策目標に「ふるさ創生」を掲げた。その具体策の第Ⅰ段が、全国のすべての市町村への「一律1億円」の交付金だった。
 人口規模に関係なく1億円を配る・・・・というアイデアを推進したのは梶山静六・自治相だった。梶山は一律10億円も考えていた。
 それまでの地方活性化政策は何から何まで「国頼り」つまり「上から下へ」という政策決定システムが貫かれた。「ふるさと創生」はその転換を促す起爆剤と位置づけられた。
 当時はバブルの絶頂期。潤沢な税収があったことも「ふるさと創生」で多額の予算を使うことを可能にした。
 竹下が自民党総裁選(1987年)に立候補する際して出版した『私の「ふるさと創生論」 素晴らしい国日本』はベストセラーになり、中身は今も決して古びていない。
 見出しの一例・・・・「個性的な地方都市をつくる」「東京の過剰負担を軽減させる」。
 いずれも安部晋三・首相がめざすものとほぼ同じだ。

 ただし、地方創生は言葉の響きとは裏腹に相当な難問だ。言葉は違っても過去の政権が何度も挑戦しながら、実績を残すことができなかった事実からして明らかだ。
 これを実現するには周到な準備、潤沢な予算、優秀な人材など多くの条件が必要だ。
 ところが石破茂・地方創生相には何も用意されていないのに等しい。内閣府に大臣室を置く石破に仕えるのは、各省からの混成部隊だ。すでに来年度予算の概算要求は終わっている。裁量の範囲はきわめて限定的だ。

 さらに複雑なのは、自民党に総裁直属の組織として地方創生実行統合本部が新たに設置されたことだ(河村建夫・本部長/元官房長官(麻生太郎政権))。前自民党選対委員長の河村は、自民党のすべての選挙を仕切って与党復帰を実現した功労者で、自民党の二階派(二階俊博・自民党総務会長)の会長代行の顔を併せ持つ。統合本部の幹部にも、二階が中心となった国土強靱化総合調査会の主要メンバーがそっくり横滑りする気配だ。
 統合本部長代行は、林幹雄・元国家公安委員長。事務局長に福井照・元建設官僚。

 石破と河村は、どう棲み分けるのか。
 政府側も地方創生本部長は安部自身が務める。副本部長の一人は石破で、もう一人が菅義偉・官房長官だ。管は第一次安部内閣で総務相を務め、在任中に発案したのが「ふるさと納税」だった。管は「ふるさと創生」を手がけた梶山静六の直弟子で、出身地の秋田への思いが融合して生まれたのが「ふるさと納税」だ。

 しかし、河村が安部から言われたのは「看板政策だからよろしく頼む」ということだけ。
 役割分担がはっきりしないまま、「看板」だけが独り歩きしかねない。
 かつて鈴木善幸内閣で、「土光臨調」が発足し、3公社の民営化が進んだ。政府側の責任者が中曽根康弘・行政管理庁長官。党側が橋本龍太郎・自民党行財政調査会長。この二人三脚で行革を前に進めた。土光敏夫のカリスマ性も加わって行革は国民運動に昇華した。
 これに対して、安部が掲げる地方創生はスローガンの域を出ていない。政府側も党側もベテラン実力者で固めているが、かえって「船頭多くして船山に上る」状況に陥りかねない。
 「岩盤より硬い」霞が関の縦割り構造の前に散った「看板政策」は数知れない。
 「石破-河村ライン」はしっかり機能するか。

□後藤謙次「看板政策「地方創生」の成否握る石破-河村ラインの役割分担 ~永田町ライブ 211~」(「週刊ダイヤモンド」2014年10月4日号)
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 【参考】
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた

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【料理】家事する男 ~家事しない男の時代は終わった~

2014年09月28日 | 生活
 「男が家事」というと、消極的に受けとめてしまう男性陣は、いまもけっこう多い。
 しかし、これは家事を「負担」と考えるからだ。

 夫婦のみの世帯における「男が家事」の一例。過去15年間。
 夫・・・・すべての料理。ゴミ出し。日用品の補充。台所や居間の片付け。
 妻・・・・洗濯。ペット(犬)の世話。
 家事サービス(週に1回)・・・・掃除。

 朝早く起きて、ゴミを出し、家の中をきれいに片付ける。「今日も頑張るぞ!」という気になる。
 夕食もそうで、おおむね18時ごろに仕事を終え、調理を始める。冷蔵庫の野菜室を覗き、「どんな野菜があったっけ? 何をつくるかな」と考えるところから始める。できあがった料理を食卓に並べるまで、だいたい1時間ぐらい。この1時間は貴重で、頭を空っぽにして包丁や鍋を使っているうちに、仕事の疲れがほぐれ、精神が健全に戻っていく感じがする。気持ちの切り替えのため家事をやっている、と言ってもよい。
 「負担」ではない。
 家事をもっと前向きに楽しむとよい。

 最近「家事ハラ」という言葉が話題になった。家事ハラスメントの略だ。
 女性を主な家事・育児の負担者とし、家事労働を軽視・蔑視する社会構造によって女性が生きづらくなる・・・・という問題を竹信三恵子・和光大学教授が指摘し、その際に使った言葉がもとの意味だ。
 ところが、ある住宅会社のネットのCM動画がきっかけで、「夫の家事に対して、妻がダメ出しをする」という意味に転用されるようになった。動画では、妻が食事の後片付けをした夫に言う。
 「お皿洗いありがとう。一応もう一度洗っとくね」

 この動画は同社が共働き夫婦世帯に対して行ったアンケート調査結果がもとになっている。調査票には、
 「あなたは(あなたの夫は)自宅で家事を手伝ったことがありますか」
などの質問もある。
 この動画と調査内容には、女性だけでなく男性も含めて多くの人たちが、
 「共働き夫婦なら二人で家事を分担するのが当たり前で、『手伝う』という言葉遣いがそもそも間違っている」
 「夫が家事をきちんとこなすのは当たり前のことでは」
と批判している。
 「家事の中心は女性で、男性は補助的な役割」
という考え方の時代は、もはや終わったのだ。

□佐々木俊尚「男性諸君! 料理以外の「家事」していますか? ~オヤジの家めし11~」(「週刊金曜日」2014年9月19日号)
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 【参考】
【料理】する自由 ~調理道具に凝るな~
【料理】野菜料理のコツ ~美味な「ポテトサラダ」の作り方~
【料理】バブルが産んだのは外食だけ ~家庭料理のコツ(一例)~
【料理】基礎調味料だけでエコかつ経済的に ~回鍋肉で実践~
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【佐藤優】「森訪露」で浮かび上がった路線対立

2014年09月27日 | 社会
 8月31日、チェリャービンスク(ロシア)で柔道世界選手権が開催された。観客席で山下泰裕・全日本柔道連盟副会長とプーチン・ロシア大統領が、試合観戦中にこんなやりとりをした。
 山下「森喜朗・元首相が来週、モスクワを訪れます」
 プーチン「ヨシが来るのか。俺は聞いていない。安倍晋三・首相はロシアに対してずいぶん厳しいことを言うが、森さんが来るなら、日本が何を考えているか、よく聞いてみたい」

 森元首相の訪露については、外交ルートでモスクワの日本大使館がロシア外務省に伝えてある。しかも、安倍首相の親書を森が携行することも伝えてある。
 それが、どこかでブロックされて、プーチンに伝わっていなかったのだ。
 この話を森や首相官邸が知って、「いったい外務省は何をやっているのだ」という話になった。

 クレムリンで、対日外交をめぐって消極派と積極派の対立があり、その関係で「森訪露」に関する情報が「宙吊り」になっていたのだ。
 プーチンは、人間関係を大切にする。九州・沖縄サミット(2007年7月)がプーチンの国際舞台への初登場だった。このときの手みやげに、訪日の道中、北朝鮮に立ち寄って金正日と会談したため、首脳会合に遅れた。そのときシラク・仏大統領が遅刻を批判したが、森首相が「プーチンはわれわれのためにあえて北朝鮮に立ち寄り重要な情報を持ってきてくれたので、いいじゃないか」と庇った。このときからプーチンは森に好感を抱くようになり、会談を重ねるうちに信頼関係が深まった。

 クレムリンの対日慎重派は、プーチンが森と会って、ウクライナ問題や北方領土問題でロシアが譲歩するようになることを恐れ、森訪露の情報を隠したらしい。
 こういうとき、モスクワの日本大使館がクレムリンに食い込んでいれば、難なくアポイントメントをとることができるが、能力、やる気の双方に問題がある原田親仁・駐露大使のもとで、まともなロビー活動は期待できない。

 森は10日深夜(日本時間11日未明)にプーチンと会談し、安部が託した新書を手渡した。
 <森氏の説明によると、会談は大統領が執務するクレムリンで約35分間行われた。プーチン氏は、安倍首相の親書をその場で読み、「安倍首相にくれぐれもよろしく伝えてほしい」と述べたという。
 会談で森氏は「安倍首相とプーチン大統領の関係はソチ五輪まで非常に良好だった。ウクライナ問題で食い違いが起きているのは残念だが、引き続き間断なく会って話を進めてほしい」と伝え、プーチン氏は「日本との対話はこれからも続けていくし、続けていかなければならない」と応じた。>【注】
 11月ごろに予定されていたプーチン訪日は延期されるが、森訪露の結果、日露の首脳レベルでの対話が継続されることになった。
 
 【注】記事「プーチン大統領、森元首相と会談 安倍首相の親書渡す」(朝日新聞デジタル 2014年9月11日)

□佐藤優「「森訪露」で浮かび上がった路線対立 ~佐藤優の人間観察 第82回~」(「週刊現代」2014年10月4日号)
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 【参考】
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~
【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~
【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~
【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~
【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~
【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~
【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~
【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~
【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~
【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~
【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~
【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」
【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~
【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~
【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~
【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~
【佐藤優】ロシアが危惧するのは軍産技術の米流出 ~ウクライナ~
【佐藤優】新冷戦ではなく帝国主義的抗争 ~ウクライナ~~
【佐藤優】クリミアで衝突する二大「帝国主義」 ~戦争の可能性~
【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~
【佐藤優】ウクライナにおける対立の核心 ~ユリア・ティモシェンコ~
【ウクライナ】とEU間の、難航する協定締結に尽力するリトアニア
【佐藤優】ロシアとEUに引き裂かれる国 ~ウクライナ~

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【詩歌】狂歌 ~蜀山人・百~

2014年09月27日 | 詩歌
  世の中に人の来るこそうるさけれとはいふもののお前ではなし   蜀山人大田南畝

  世の中に人の来るこそうれしけれとはいふもののお前ではなし   百内田榮造

□淮陰生『完本 一月一話 ~読書こぼればなし~』(岩波書店、1995)

   
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【心理】たましいは幾つあるか? ~沖縄の「マブイ」~

2014年09月26日 | 心理
 筆者はいくつかの原稿を同時に書き進めることが多い。編集者や作家から、「よくそういう離れ業ができますね。内容が混乱しませんか」と言われることがあるが、そんなことはまったくない。ロシア語と日本語を交互に話していても、両方の言語が混淆することが絶対にないのと同じで、同時並行の原稿の内容が混乱することはありえない。筆者の月産原稿量は、1,000枚(400字詰原稿用紙換算)を軽く超えている。このペースで3年以上執筆しているが、特に苦しく感じたこともない。テーマを変えるごとに、魂が切り替わるような気がする。このことを同僚の作家に話すのだが、なかなか理解してもらえない。ある時期から、魂の切り替えが容易にできるのは、筆者に沖縄の血が流れているからと思うようになった。
 琉球語(沖縄方言)で魂のことを「マブイ」と呼ぶ。日本人の常識では、1人の人間に魂は1つしかない。しかし、沖縄人の感覚では、1人の人間に複数のマブイがある。ある専門家によると、どうもマブイは6つあるらしい。事故に遭遇したり、大きなショックを受けることがあると、虚脱状態になってしまうことがある。沖縄人は、複数あるマブイのいくつかが、身体(からだ)から離脱してしまったのでこの虚脱状態が生じると考える。これを琉球語で「マブイウティ(マブイ落ち)」と言う。そして、「マブイ落ち」した人に特別の儀式を行って、マブイを取り戻す「マブイグミ(マブイ込め)」とい習慣がある。これが効果をあげることがよくある。筆者はマルクス主義や日本の左翼思想に関心をもつとともに、英国の保守思想や日本の右翼思想も真剣に勉強している。筆者の中にあるマブイがそれぞれの事柄に特化しているのであろう。そして、これら複数のマブイを総括する「何か」が筆者の心の中にあるのだ。恐らく、キリスト教が強調する霊(ギリシア語のプネウマ)がこの「何か」と深い関係をもっているのだろうけれど、完全に納得できない段階でそのことを理論化してはいけないと戒めている。

□佐藤優『外務省に告ぐ』(新潮文庫、2014.4.1)の「第6章 沖縄への想い」から引用。
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【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~

2014年09月25日 | 社会
 イスラム国(IS)との戦いに、全世界が動き出した。
 国内世論の高まりもあって、オバマ・米国大統領は対イスラム国空爆の範囲をイラクからシリアまで拡大する方針を示した。
 英国やオーストラリアが積極的関与の方針を示している。
 このほか、複数の中東諸国が空爆実施を米国に申し出ているらしい。

 翻って日本政府は、米国のシリア空爆準備に支持表明は行ったが、それ以上の支援には言及していない。
 集団的自衛権の行使のための法律が未整備だし、集団安全保障も認められていない現状では、当たり前のことだ。
 これは、来春の統一地方選まではタカ派的政策は封印し、地方選後に一気に集団的自衛権の法整備などに突き進む・・・・という安部の「戦略」とも整合している。

 では、仮に集団的自衛権の行使を可能とする法整備が終わっていたら、どうなのか。
 この戦争は、どう見ても米国にとっての自衛戦争ではない。
 しかし、実際には、米国人2名の公開処刑があり、イスラム国が米国人を攻撃すると表明していることをもって、米国は「これは自衛戦争だ」と言うに違いない。
 安部は、集団的自衛権行使容認閣議決定の際、「海外派兵は一般に許されないという従来からの原則もまったく変わらない」と述べた。
 この発言からすると、今回のケースでも自衛隊の海外派兵はありえないように見える。しかし、安部の発言には「一般に」という言葉が入っている。つまり、最初から「例外」を前提としているのだ。
 <例>米国から参戦要請があれば、安部は「日本の盟友である米国からの支援要請を拒絶すれば、日米の信頼が失われ、日本の安全保障に著しい支障が生じる」から「例外的に派兵を認める」と言い出すであろう。
 実は安部は、これと同趣旨のことをすでに国会で述べている。
 これでは、米国に要請されたら必ずそれに付き合うことになる。例外が原則に変貌してしまう。

 安部は、こうやって参戦するであろう。
 その戦いは泥沼化するであろう。
 その間、米国とともに戦う国は、イスラム系過激派のテロに脅かされるであろう。むろん、日本も例外ではない。テロの対象として格好なのは、福島第一原発だ。いまの無防備な状態なら簡単に破壊できるし、破壊すれば東京は死の都市となり、東日本は壊滅する。
 さらに、これまでの経験からして、イスラム国との戦いに勝利しても、また数年経てば、さらに進化したスーパーモンスターと呼ばれる新たなテロ組織が出てくることは必至だ。
 アフリカでも、アルシャバブ(ソマリア)、ボコハラム(ナイジェリア)などが猛威をふるっている。

 8月のナイロビ(ケニア)では、都市のスラムに夢も希望もない若者(失業者)が集まっていた。その周辺にモスクが建設される。イスラム教に罪はないが、そこでは、アルシャバブ(ソマリア)が「聖戦に参加すれば生活が保障される」と言って若者をリクルートしている。
 先進国では高学歴の者もいるが、アフリカでも社会に失望した若者が勧誘されている。
 テロという現象は、世界規模で起きている社会の病理現象の最終形態にすぎない。

 つまり、軍事的対応だけではテロを解消できない。
 若者に生きがいを感じさせることこそ、解決の本筋だ。
 そのためには、各個人が貧困、病気、差別、格差などから解放され、自分の能力を遺憾なく発揮できる環境を作り上げていくことが不可欠だ。これは、平和学のいわゆる「積極的平和」だ。

 安部がいう「積極的平和主義」はマユツバだ。
 単なる「積極的『軍事』主義」でしかない。
 「日本を取り戻す」と言うなら、安部には、今までの日本の平和主義こそ取り戻してもらいたい。「テロに怯える国、日本」にならないために。

□古賀茂明「イスラム国と集団的自衛権 ~官々愕々第124回~」(「週刊現代」2014年10月4日号)
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 【参考】
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

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【消費税】増税の悪影響 ~政府説明の嘘を見抜く法~

2014年09月24日 | 社会
 GDP4-6月期の二次速報が
   前期比年率 ▲7.1%
と発表され、一次速報の
   前期比年率 ▲6.8%
より大幅に下方修正されたと話題になっている。

 消費増税前に、無責任なエコノミストたちは
   消費増税が日本経済へ与える影響は軽微である。・・・・①
と語り、多くのマスコミもその論調に乗った記事を掲載してきた。フタを開けてみればしかし、こんなにもGDPに悪影響が出ていたことが明らかになったのだ。
 しかし、エコノミストたちもマスコミも、この期におよんで、「想定内」と強弁している。
 役所のいいなりになる「御用」エコノミストたち。その言い分を使いまくって報道するマスコミ。

 彼らに騙されないために、「政府統計」をどう見るべきか。
 まず、世間の関心の高いGDP統計については、政府の「一次統計」を加工した「二次統計」だ・・・・ということを覚えておいたほうがよい。
 GDP統計が発表される1週間くらい前には各種の「一次統計」が出揃う。そこからGDP統計=「二次統計」を当てるのはそれほど難しくない・・・・という点にも注意が必要だ。

 前記①の主張をしていたエコノミストたちは、4~6月期のGDP統計で、大きなマイナスが出たときに、しれっと「想定内」と言い放った。
 その発言に違和感を覚えた人も多いだろうが、これもGDP統計=「二次統計」であることを理解していると、カラクリがわかる。
 実は、エコノミストたちのGDP統計予想は、昨年くらいから、GDP統計が発表される1か月前までは「大外れ」ばかりだ。ところが、彼らは1週間前に「一次統計」を見た上で予想をちゃっかり修正し、その修正後の予想から見れば「想定内」だと言っているのだ。

 そもそも政府の「一次統計」は、原データをすべて入手することができる上、そのデータは過去にさかのぼることができる。
 現在はネット時代なので、役所のサイトからデータを発表後直ちにダウンロードすることもできる。
 その「宝の山」のようなデータをマスコミがきっちり分析していれば変な報道にはならないはずだ。
 しかし、「政府統計」に係る記事を担当するのは新米記者ばかりで、しかもルーティンワーク。さらに、政府統計が発表されてから記事にするまでの時間が少ないために、記者はデータをダウンロードして自前で分析せず、役所の発表資料をそのまま「コピペ」する傾向が強い。その結果、官僚の言いたい内容がそのまま記事になってしまう。

 だから、政府資料に関する限り、マスコミ報道より、自分でデータをダウンロードして分析したほうが、はるかに現実をよく知ることができる。
 統計の素人が行うのは難しいのは確かだが、役所の統計担当にも素人は多いし、マスコミの新米記者だって素人だ。少しばかり勉強すれば、彼らを凌駕するのは、さほど難しくはない。慣れてくれば、役所、エコノミスト、マスコミの嘘も澪抜けるようになる。
 <例>7月の「消費低迷」は、政府統計では「天候不順のため」と説明されている。・・・・しかし、総務省の家計調査のデータを見れば、消費増税以降の4~7月の4か月平均の消費動向は過去30年間で最低である、と発見できる。
 4か月連続の平均が過去最低である、ということは、「天候不順」で説明できない。
 つまり、「消費増税の影響」で消費が低迷していることがわかるのである。

□「「現実」を知る 政府統計の正しい読み方 ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2014年10月4日号)
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【原発】朝日叩きに走る各紙が過去に飛ばした「大誤報」

2014年09月23日 | 震災・原発事故
 自らの過ちを棚にあげるのがマスメディアの常・・・・とはいえ、このところの朝日新聞報道は異様だ。

 木村伊量・朝日新聞社長が、9月11日、ついに謝罪、引責会見に追い込まれた。元凶は
  (1)従軍慰安婦の強制連行をでっちあげた虚偽証言 → 訂正
  (2)吉田昌郎・元東電福島第一原発所長の調書曲解 → 訂正
だが、これらに池上彰・ジャーナリストの連載拒否というオマケまで付いた。

 ここぞとばかりに「誤報だ」「謝罪がない」「社長が逃げている」とライバル紙、テレビ、週刊誌から集中砲火を浴びせかけられ、白旗をあげざるをえなかった。
 朝日の対処はまずかったが、朝日バッシングに血道をあげるマスメディアは異様だ。

 折しも、木村社長の記者会見があった翌12日、福島第一原発事故後に死亡した双葉病院の患者遺族と東電とが争っていた損害賠償請求訴訟で和解が成立した。
 原発から4.5kmという至近距離にあった双葉病院グループでは、患者や施設の入居者の多くが取り残されたあげく、50人が死亡するという惨事が発生した。原発事故による死者はいない、と東電は言い張ってきたが、50人は事故がなければ死なずはに済んだ。いわば原発事故の犠牲者だ。
 この日の和解は、訴えていた遺族二人に対し、東電が1,360万円の賠償金を支払うというものだ。
 千葉地裁は、「被害の悲惨さを考えれば、東電の責任はより重く考えるべきだ」と断罪した。

 くだんの双葉病院問題には、もう一つ、別の側面がある。
 事故当時、「病院が患者を置き去りにして逃げた」かのように福島県が発表し、それを鵜呑みにした新聞・テレビがこぞって病院関係者を「患者を見殺しにした逃亡犯」扱いをした一件だ。
 2011年3月18日(震災から1週間後)付けの新聞各紙には、次のような見出しが並んだ。
 「高齢者病院放置か 避難所で14人死亡」(産経)
 「福島・双葉病院 患者だけ残される」(読売)

 産経は、<医師や看護師らの病院関係者は一人も院内にいなかった。県保健福祉総務課では「14人は取り残されたような状態だった」としている>とまで報道した。
 また、読売は<寝たきりの患者ら98人がベッドに取り残され、職員はいなかったという>と書いた。
 テレビの全国ニュースでも大々的に報じ、双葉病院はとんでもない悪徳病院だ、というレッテルを貼られた。関係者はもがき苦しんだ。

 しかし、これこそ誤報なのであった。
 双葉病院グループでは、震災の2011年3月12日以降、入院患者と施設利用者との436人中、重症患者の129人が取り残された。そこから第一原発の水素爆発が立て続けに起こり、関係者たちはオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)から撤収してしまった。
 救援隊が来ないまま、双葉病院は完全に孤立してしまった。
 その結果、16日までに50人が命を落とすのだが、その要因は自衛隊や福島県の救出の遅れだ。さらにいえば、東電の事故による現場の混乱だ。
 最終的に双葉病院の院長たちが救出隊を迎えにいった場所を自衛隊が間違え、すれ違いが起こった。
 が、この間、院長を始めとするスタッフは、逃げ出すどころか、懸命の看護を続けたのだ。

 ところが、県の発表を鵜呑みにした新聞やテレビは、「患者置き去り事件」として大々的に報じたのだ。
 そして、今もってきちんとした訂正や謝罪を行っていない。
 ライバル紙の過ちを追求するのは間違いではない。
 半面、それは天に唾している行為でもある。

□森功「朝日叩きに走る各紙が飛ばした「大誤報」を忘れてはいけない ~ジャーナリストの目 第221回~」(「週刊現代」2014年10月4日号)
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【経済】累進資産課税が格差を解決する ~アベノミクス批判~

2014年09月22日 | 社会
 『21世紀の資本論』の主張のうち注目すべき第三点は、累進課税の提言だ。
 格差問題解決のための大胆な提言だ。

 ピケティは、格差是正のために最も重要な政策手段は課税だ、とする。そして、①資産と②所得の両方について累進的な税を課することを提唱している。特に重要なのは①の累進資産課税だ。
 累進資産課税の提言に対しては、
  「投資家のインセンティブを弱め、経済成長を阻害する」
という新自由主義者にお決まりの批判が想定される。しかし、ピケティの歴史分析が鮮やかに示したように、第一次世界大戦後から1970年代前半までは、累進課税や資本市場に対する強い規制にもかかわらず、経済成長率は記録的に高かったのだ。
 逆に、第一次世界大戦まで(ベル・エポック期)、また1970年代末以降の新自由主義の時代は、より自由な資本市場と格差社会の下で資本収益率は高かったが、経済成長率は低かった。
  「資本収益率を高め、投資家がより儲かるようにすれば、より高い経済成長が見込まれる」
という新自由主義者の経済理論は、すでに反証されている。そんな理屈は、一部の富裕層による富の独占を正当化するためのレトリックに過ぎない。

 グローバルな累進課税というピケティの提案について、これを実現不可能だ、と批判することは容易だ。
 しかし、そんな批判は的を射ていない。なぜなら、ピケティ自身が、グローバルな累進課税がユートピア的だ、と十分招致しているからだ。
 彼は問題を明らかにし、議論を喚起するための便宜的な手段として、かかる提案をしているのだ。
 もし、グローバルな累進資産課税が最善であっても実現困難だ・・・・というのであれば、次善の策の実現可能性について検討すればよい。
 大事なことは、資本主義には格差を拡大する原理が内在しているのであって、その格差の是正はグローバル化によっていっそう困難になっている、という問題意識を持つことなのだ。

 30年以上に及ぶ新自由主義の支配が、ついに終わりを迎えつつある。
 『21世紀の資本論』が我が国でも邦訳されたら、かなりのインパクトを与えるだろう。昨今の経済政策をめぐる議論に関連させて整理すれば・・・・
 (1)ピケティが最も重視する政策は、資産や所得に対する累進課税である。よって、次のような税制改革は、格差の拡大を増幅されるものだと却下される。
  (a)逆進的な消費税の引き上げ。
  (b)累進的な法人税の引き下げ。

 (2)資本収益率が経済成長率を常に上回るという法則が成り立つならば、自己資本利益率の向上を目標とした経済成長戦略は、格差拡大を助長する結果となる。次のような政策は望ましくない。こうした成長戦略がもたらす株主資本主義は、経済成長をかえって困難にする。
  (a)規制緩和による資本市場の活性化。
  (b)株主の発言力を強めるような制度改革。

 (3)(1)-(b)によって海外資本を自国に呼び込むなどという発想に至っては、二重の意味で間違っている。むしろピケティは、グローバルな法人税引き下げとは正反対に、グローバルな累進課税や租税回避防止策の強化を提言している。

 (4)金融政策を中心としたマクロ経済運営というパラダイムも最高を強いられる。金融緩和には、資産価値の上昇によって軽罪成長を促す効果が期待されている。
 しかし、「税引き後の資本収益率(r)」は「経済成長率(g)」を常に上回り続ける(r>g)という法則に従うならば、資産価値は国民所得を上回るペースで上昇してしまうから、金融資産を多く持つ富裕層への富の集中を助長する結果となろう。
 ピケティは、『21世紀の資本論』の中で、世界金融危機(2008年)以降、各国中央銀行が行った金融緩和に言及しつつ、中央銀行には金融危機を防止し、金融システムを安定化させる機能はあるが、企業の投資や家計の消費を強制して経済成長を実現することはできないと論じている。

 要するに、『21世紀の資本論』は、現在の日本における主流の経済政策論を根本的にくつがえす本だ。
 それが米国では飛ぶように売れているのだ。

□中野剛志「「21世紀の資本論」 新自由主義への警告」(「文藝春秋」2014年10月号)
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 【参考】
【経済】格差が広がると経済が成長しない ~株主資本主義の危険~
【経済】なぜ格差は拡大するか ~富の分配の歴史~

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【経済】格差が広がると経済が成長しない ~株主資本主義の危険~

2014年09月21日 | 社会
 『21世紀の資本論』の主張のうち注目すべき第二点は、
   「税引き後の資本収益率(r)」は「経済成長率(g)」を常に上回り続ける。
という大胆な仮説の提唱だ。この「r>g」仮説は、過去200年間の統計データを踏まえている。

 19世紀から20世紀初めまでは、先進国における資本収益率は平均して5%程度であるのに対し、経済成長率は1~2%程度だった。そのため、資本を多く有する富裕層は、再投資によって富を増殖させたが、労働者の賃金収入はそれほど増えず、格差が広がった。
 1914年から1973年までの「約60年間」は、例外的に経済成長率が資本収益率を上回ったため、格差が縮小し得た。
 ところが、1970年代の終わりから21世紀初頭までは、再び経済成長率が低位で推移したため、資本収入は、労働者収入を上回るペースで増大し、格差が拡大した。

 この「r>g」の不等式こそ、『21世紀の資本論』の中で最も論争を呼ぶ点だろう。
 もし、この不等式が成立するならば、資本主義は格差を拡大させ続けるだけだということになる。過度な不平等は、民主主義の存立基盤を破壊する。ゆえに、「r>g」が成立するならば、自由な資本市場というものが本質的に民主主義とは両立し得ないことになる。
 これは、自由市場の原理を信奉する主流派経済学者にとっては、あってはならないことだった。
 だから、ピケティに対する批判は、「r>g」の不等式が理論的に成立し得るのか、という点に集中している。もし、富裕層に富が集中して資本が過剰になったら、資本の限界収益は逓減するがゆえに資本収益率(r)はいずれ低下するはずだ。主流派経済学のモデルでは、「r>g」の不等式が常に成立するとは言えないし、格差が累積的に拡大するという結論も導けない。それでも「資本収益率は経済成長率を常に上回り続ける」と言い張るなら、過去の統計データだけではなく、相応の理論的な説明を提示せよ。

 ピケティ自身は、『21世紀の資本論』の中では、この不等式が成立する理由について、より裕福な人の方がより高い収益率を確保できる優秀な財務管理者を雇うことができるので、より多くの収益を得ることができるのだ、という仮説を提示してはいる。

 この説明だけでは、確かに十分とは言えない。
 しかし、資本収益率は資本の過剰によって低下したとしてもなお、ピケティが言うように経済成長率を上回ることはあり得る。それは、資本家階級が労働者階級から富を収奪することによって可能となるのだ。その仕組みについては、マルクス主義を持ち出さなくても、現実の経済に起きている現象を観察すれば、容易に理解できる。
 それは、いわゆる「株式資本主義」と呼ばれる現象だ。
 つまり、「会社は株主のものであり、株式時価総額を最大化するために存在する」という信念に基づいてさまざまな経済制度が設計された経済システムだ。企業組織、会計基準、金融証券制度、税制など。
 株式資本主義の下では企業は、株主資本に対する純利益の比率(自己資本利益率、ROE)を高めることを目標にして経営されるようになる。ROEの向上を経営目標とする企業は、必然的に、中長期の研究開発に必要な費用を削減したり、非正規労働者を活用して人件費や人材育成費を抑制するなど、徹底した合理化を進めるようになる。企業の長期的発展のために向けるべき資金を削り、賃金を抑制し、株主への配当を増やそうとするのだ。
 この場合、企業の利益自体は増えていなくても、将来への投資や労働者への配分を減らすことで、株主への配当を増やすことができる。
 しかし、研究開発や設備投資が削減され、賃金が抑制されるようになっては、一国の経済成長は期待できなくなる。各企業がROEを上げるように行動することで、国全体の経済成長率が伸びなくなるのだ。

 以上のように、経済が株主資本主義化すれば、資本収益率が経済成長率を上回り続けることは可能になる。
 それどころか、資本収益率の高さこそが、経済成長率の低下を招くのだ。 

□中野剛志「「21世紀の資本論」 新自由主義への警告」(「文藝春秋」2014年10月号)
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【経済】なぜ格差は拡大するか ~富の分配の歴史~
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【経済】なぜ格差は拡大するか ~富の分配の歴史~

2014年09月20日 | 社会
 新自由主義は1970年代末頃から、もっぱら米国や英国を中心として台頭した。
 日本でも1990年代以降、著しく影響力を強めた。現在もなお、経済政策担当者、経済学者、経済界の間では主流の地位を占めている。<例>いま経済財政諮問会議や産業競争力会議などにおいて行われている議論の多くは、この新自由主義によって彩られている。
 新自由主義によれば、自由な資本市場は資源の最適配分を実現する均衡点へと向かう原理を持つ。その結果生じた格差は、資源の最適配分の結果なのであって、何ら問題視するようなことではない。むしろ、その格差を是正しようとすることは、経済活動の自由を制限し、市場原理を歪め、資源の効率的配分を妨げることになるので望ましくない。

 エマニュエル・トッド(仏、家族人類学者)は、自由貿易やグローバリゼーションに対する批判・・・・とりわけ「新自由主義」のイデオロギー(その発信源である米国)に対する厳しい態度で知られる。
 そのトッドが昨年末、米国で世代交代が起きつつあり、それに伴って新自由主義が退潮している予感がすると語った。米国では、新自由主義はもやは老人たちのイデオロギーにすぎず、若い世代は新自由主義に懐疑的になって、影響力を失いつつある兆候が見られる、と。
 その兆候の一つは、米国でトマ・ピケティ(パリ大学経済学教授)『21世紀の資本論』が一大センセーションを巻き起こしていることだ。米国で新自由主義が深く信じられていたら、本書が受け入れられることはなかったはずだ。ところが、今年3月に英訳されて以来、米国で異例のベストセラーになっている。
 米国は変わりつつある。新自由主義は時代遅れの古臭いイデオロギーとなりつつある。
 本書は、難解な用語を一切使わない読みやすい文体であるものの、非常に真面目に書かれた大部の学術書だ。その内容たるや、新自由主義こそが世界の潮流であって日本が進むべき理念だと信じているエリートたち、or主流派経済学の抽象論理に酔いしれる経済学者たちをはなはだ不愉快にさせる。
 逆に、新自由主義に対して懐疑的・批判的な直感を抱いている者が読むならば、その直感に歴史的・統計的な裏付けを与えてくれるし、現在の資本主義が抱える問題の本質を鋭く突くものであることが分かる。

 『21世紀の資本論』の主張のうち注目すべき第一点は、富の分配の歴史だ。ピケティは、仏国、英国、米国、日本など先進諸国の富の分配の変遷を、過去200年にさかのぼって明らかにした。
 そもそも、ピケティの経済学における最大の貢献は、英米の学者と協力して税務統計をもとにして富の分配に関する長期的なデータを整備したことだ。
 これまで、格差の歴史的な変遷について、このように確度の高いデータは存在しなかったのだ。ために、以前は経済学会や経済言論において格差が論じられることはあっても、一部の超富裕層による富の独占については、あまり議論されなかった。それどころか、主流派経済学者の中には、格差に係る議論を封じようとする者すらいたのだ。

 しかし、今日では「米国の富裕層の上位1%が国富の4分の1を独占している」という事実が一般に知られるようになった。
 米国の格差問題を糾弾する「ウォールストリートを占拠せよ」という運動においても、「1%99%」というスローガンが掲げられていた。
 このように、超富裕層による極端な富の独占という実態が一般に認知されるようになった背景には、ピケティたちの貢献があったのだ。

 ピケティたちが明らかにした富の分配の歴史的変遷は、次のとおり。
 (1)19世紀から第一次世界大戦まで、富は資本家に有利に、労働者には不利に拡大し続けた。
 19世紀から20世紀初頭までは「ベル・エポック」であった。欧米諸国が繁栄を謳歌した華やかな時代・・・・とされるが、実際には、当時の経済成長率は年間1~1.5%程度にすぎなかった。しかも、極端な格差社会だった。

 (2)第一次世界大戦の頃から1970年代初頭までの約60年間は、先進国において格差が劇的に縮小した。
 なぜか。それは、資本主義に内在する原理によらず、政治的要因による。
  (a)二つの世界大戦によって、富裕層が保有する資産が物理的に破壊された。
  (b)戦費を調達するために、相続税や累進的な所得税が導入された。
  (c)インフレの昂進により、債券の価値が棄損され、債務者の負担が軽減された。
  (d)英仏においては、主要産業が国営化された。
  (e)世界恐慌期には、米国では労使協調的なニューディール政策が実行された。
  (f)第二次世界大戦後になると、労働組合の力が強まり、より労働者の保護に傾く政治環境となった。そして、資本家に不利、労働者に有利な経済政策や社会政策が採られるようになった。
 これら(a)~(f)のいずれの要因も資本蓄積の障害となるものであった。そのおかげで、資本家階級と労働者階級の所得格差は縮小した。しかも、この時期の欧米や日本は、記録的に高い経済成長率をも達成していた。資本主義の「黄金時代」であった。

 (3)1970年代後半ごろから、所得格差は再び拡大し始めた。同時に、経済成長率も低調になった。
 なぜか。主な要因は、1970年代末から21世紀初頭までに、富裕層や大企業に対する減税など、資本家により有利な政策が採用されたからであった。これは、新自由主義の影響による。
 とりわけ、新自由主義の本場=英米においては、21世紀における富の偏在は、100年前に近い水準となった。これに対して大陸ヨーロッパ諸国や日本においては、格差の拡大の傾向はあるものの、英米ほど顕著ではなかった。
 しかし、日本でも、新自由主義に傾斜した1990年代以降、格差が拡大し始めている。

 要するに、過去200年間を鳥瞰すれば、資本主義は、基本的に、富の格差を拡大させ続ける傾向にあった。
 第一次世界大戦から1970年代初頭の約60年間は格差が縮小したが、それは戦争などの政治的要因によるものであって、例外的な現象と見なすべきものだ。

□中野剛志「「21世紀の資本論」 新自由主義への警告」(「文藝春秋」2014年10月号)
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【料理】する自由 ~調理道具に凝るな~

2014年09月19日 | 生活
 男性が台所で料理する、という文化は、1970年代から80年代にかけて、男性作家の料理本が登場してきたあたりに始まった(推定)。
  ①檀一雄『檀流クッキング』
  ②丸元淑生『丸元淑生のシステム料理学 男と女のクッキング8章』
 もう少し遡れば、1950年代の名著もある。
  ③邸永漢『食は広州にあり』

 ①も②も凝っていて豪快な、典型的な「男の料理」。
 ②の最初の章は、「丸腰で立ち向かうな」と記されている。丸底鍋(プロ用の厨房器具店で買う)、巨大冷凍冷蔵庫(デンマークのエレクトロラックス社)、鰹節削り器(電動)など特殊な調理器具が勧められている。
 バブルのころまでの男の料理は、こういう「道具愛」に溢れていた。高級な和包丁、銅の鍋、ずっしり重い鋳鉄のフライパンを使うことで、気持ちだけでもプロの料理人もどきになってみたいといった志向が、確かにあった。

 これはしかし、家めしを趣味の延長におさめてしまっている。
 たまの週末の料理ならば、鋳鉄のフライパンは使いごたえがある。しかし、日常的に使うなら、テフロンのフライパンのほうが扱いも後片付けも簡単だ。
 鋼の和包丁は、きちんと研げば見事な切れ味になるが、片刃なのでちゃんと砥石で研ぐ必要がある。
 そこまで凝った道具を、日常的な家めしで使いこなす必要があるのか?
 
 和包丁を週に一度、時間をかけて研ぐのと比べれば、毎日の料理の直前にステンレスの包丁をシャープナーでさっと研ぐほうが楽だ。そのほうが、常に切れ味のよい状態を保てる。
 プロでない以上、その程度で十分。
 テフロンのフライパンを振り、ステンレスの安い三徳包丁を、1,500円くらいで売っているシャープナーで毎日研ぐ。これでちっとも不自由しない。

 道具に凝るのをやめると、料理も自由になる。
 友人の家、キッチン付きの宿泊施設、アウトドア。
 どんな場所でも、どんなチープな調理道具でも料理できるほうが、料理の楽しみを味わえる。
 友人から料理を依頼されたら、小型シャープナーだけ持参し、その家の台所にある調理器具、その冷蔵庫にある食材だけを使って、いろいろなものを作る。
 こういう自由な料理スタイルで十分に楽しめる。

□佐々木俊尚「家めしに必要なのは「道具愛」より「料理愛」 ~オヤジの家めし10~」(「週刊金曜日」2014年9月12日号)
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 【参考】
【料理】野菜料理のコツ ~美味な「ポテトサラダ」の作り方~
【料理】バブルが産んだのは外食だけ ~家庭料理のコツ(一例)~
【料理】基礎調味料だけでエコかつ経済的に ~回鍋肉で実践~
【料理】1日2食でも十分なワケ ~肥満防止~
【料理】2つのポイント ~片付けの技術~
【料理】毎日もちっとも面倒くさくない ~手抜きの技術~


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【佐藤優】名護市議選で辺野古反対が勝利 ~対決姿勢強める沖縄~

2014年09月18日 | ●佐藤優
 9月7日、沖縄県名護市議会選挙(定数27)の投開票が行われた。
  与党(稲嶺進・市長を支持)・・・・14議席
  公明党(与党に加わっていないが、与党と同じく辺野古移設に反対)・・・・2議席
  野党(辺野古移設を容認)・・・・11議席
 改選前に比べて、与党は1名減、野党は1名増だが、中央政府、自民党、沖縄県幹部が野党に対して徹底的なてこ入れをしたにもかかわらず、与野党逆転ができなかった。このことは、安倍晋三・政権にとって大きな痛手だ。

 <同市辺野古沿岸で移設に向けた海底ボーリング調査が8月に始まった直後の選挙だが、市民の意見が割れていることから移設問題への言及を避ける候補が多く、移設をめぐる論戦は低調だった。>【注1】
 この見方は、ピントがずれている。名護市民の間で、移設(辺野古を埋め立てて新基地を建設する)問題は、依然、最も関心の高い事項だ。
 中央政府による資金提供、分断工作によって、名護市民は痛めつけられてきた。新基地建設問題を争点とすれば、この問題に関心を持つ本土のさまざまな政治勢力が名護に入ってきて、自らの利害関心に基づく政治ゲームを展開する。その結果、名護と沖縄の分断が一層強まる。
 日本人の利害関心によって沖縄人が分断されることを望まない故に、<移設問題への言及を避ける候補が多く、移設をめぐる論戦は低調だった。>にすぎない。
 このあたりの沖縄人の心理がわからないのは、沖縄に対する構造化された差別の枠組みでしか見てないからだ。

 安倍政権は、名護市議選で与野党が逆転していたら、「直近の民意は辺野古移設容認だ」というプロパガンダを展開したであろう。現在の埋め立て工事を加速したに違いない。
 今回の結果を見て、首相官邸も自民党本部も、沖縄の民意を尊重していたら、新基地建設はできないから、力で押し切ろうとするであろう。そういう認識を、菅義偉・官房長官はすでに表明している。

 安倍政権のボーリング調査強行に対する沖縄県民の反発はきわめて強い。
 安倍政権の姿勢に対する支持率はわずか18.6%、不支持は81.5%だ。辺野古移設に賛成する声はわずか10.0%だった。【8月23・24日の琉球新報と沖縄テレビ放送(OTV)合同による世論調査の結果、26日付け「琉球新報」】
 沖縄世論の構造的転換が起きている。しかし、目が曇った日本人政治エリート(国会議員、官僚)には、この明々白々な事実が見えないらしい。

 <菅義偉官房長官は26日の会見で、琉球新報・沖縄テレビ合同世論調査で、米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古での移設作業を「中止すべきだ」とする回答が80・2%、工事を強行した安倍政権への不支持が81・5%に達したことに、「政府の方針として(工事を)粛々と進める」と述べ、県民の反対が強い中でも「(影響は)全くない」と答えた。
 県民の強い反対が11月の県知事選に与える影響については「政府は法治国家であり、仲井真(弘多)知事の承認をいただいた。沖縄のみなさんの、普天間の危険除去への強い訴えや抑止力などの中で18年前に決着した」と述べ、着工は決定事項であり、知事選への影響はないとした。>【注2】
 菅長官の認識は、「安全保障と外交は中央政府の専管事項だ。中央政府が決めたことについて、沖縄はつべこべ言わず、従え」という認識に基づいている。
 日本の陸地面積の0.6%を占めるにすぎない沖縄県に在日米軍基地の74%が所在する。この状況も「これでいいのだ」と中央政府が決めた以上、沖縄人と沖縄県は「つべこべ言わず、従え」と言うことだ。

 こういう日本人の常識に付き合っているかぎり、沖縄は構造的に差別された状況から永遠に抜け出すことができない。
 日本人政治家の良識に期待しても無駄だ。その「良識」は身内の日本人内部にしか適用されず、沖縄人(外部)には適用されないからだ。
 「沖縄の人」「沖縄県民」 対 「本土の人」
ではない。
 「沖縄人」 対 「本土の人」
という関係だ。

 辺野古の警備にあたるガードマン、漁船員、沖縄県警の警察官、沖縄防衛局の地元採用職員・・・・これらのほとんどは沖縄人だ。日本人は奥に引っ込んでいて、新基地に反対する沖縄人と対峙する場に姿を見せない。沖縄人によって沖縄人を鎮圧する・・・・この手法は植民地主義者の典型的な分断統治だ。
 沖縄戦で、沖縄人は、日本軍の強制により、あるいは日本に過剰同化したために「同胞殺し」に手を染めてしまった。
 このような悲劇を沖縄人は二度と繰り返さないと心に誓い、それを実践している。

 沖縄人が、諦念から辺野古の新基地建設を容認することなどあり得ない。沖縄には沖縄流の闘いがある。
 それをわからずに、辺野古移設を強行しようとする日本人も、日本流の闘争を沖縄に押しつける日本人活動家も、沖縄の味方ではない。
 沖縄人は、こういう日本人が味方ではないことを十分認識しつつも、生活を維持するため、また、政治闘争を沖縄側に有利に展開するため、戦術的対応をとっているにすぎない。 

 【注1】記事「辺野古移設反対の市長派が過半数維持 名護市議選」(朝日新聞デジタル 2014年9月8日)
 【注2】記事「辺野古中止80%「影響ない」 菅官房長官会見 本紙世論調査」(琉球新報 2014年8月26日)

□佐藤優「名護市議選で辺野古反対が勝利、対決姿勢強める沖縄 ~佐藤優の飛耳長目99~」(「週刊金曜日」2014年9月12日号)
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 【参考】
【佐藤優】沖縄に対する侮辱 ~マグルビー在沖米総領事発言~
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
【竹富町教科書問題】法改定で単独採択可能に ~予断を許さず~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 ~竹富町教科書問題~
【佐藤優】「民族問題」と化した辺野古移設強行 ~構造的沖縄差別~
【佐藤優】沖縄をネズミと見なす中央政府への激しい異議 ~自民党の強権発動~
【政治】自民党パワー・エリートが中、韓、沖縄と問題を起こす ~麻生ナチス発言~
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【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~

2014年09月17日 | 社会
 経団連が5年ぶりに政党への政治献金の再開を決めた。榊原定征・経団連会長/東レ会長は、記者会見(9月8日)で「社会貢献の一環」と説明したが、求心力を求める安倍晋三・首相へのすり寄りでしかない。

 米倉弘昌・前経団連会長/住友化学会長と安部との関係は最悪だった。
 2年前、安部が野党自民党総裁に就任して「大胆な金融緩和」を訴え衆院選に突入した際、米倉は安部に注文を付けた。「金融緩和だけで需要を喚起できるはずがない」
 さらに米倉は、安部の日本銀行への働きかけを強める考えに「無鉄砲」「無謀に過ぎる」と発言をエスカレートさせた。
 安部も黙っていなかった。「(米倉は)勉強していない。間違った認識は、正しておく必要がある」
 最終的に衆院選の選挙情勢が自民圧勝の流れになると、米倉が膝を屈した。が、安部の怒りは収まらなかった。政府の経済政策の司令塔でもある経済財政諮問会議の民間議員から米倉は外され、経団連は「指定席」を失った。
 のみならず、自民党が政権に復帰して初めて開いた党大会(2013年3月)には、米倉ではなく、渡文明・審議員会長(当時)が経団連を代表して出席した。米倉が会長に座る間は、もはや経団連と安部政権との関係修復は絶望的だった。
 米倉が2期4年の任期を終え(今年6月)、榊原が会長に就くと、関係改善が一気に進んだ。9月5日、榊原を経済財政諮問会議の民間議員とする、と政府は発表した。
 その直後の献金再開だ。あまりにもタイミングが良すぎる。

 財界と自民党との政治献金をめぐる因縁は、長い歴史がある。
 (1)「造船疑獄」(1954年)をきっかけに政治献金を一本化するため、「経済再建懇談会」が設立された(1955年)。これが経団連による自民党への献金あっせんにつながっていった。この資金の流れと自民党政権が密接に絡み合い、55年体制の落とし子=「政官業の鉄の三角形」が形成された。
 (2)自民党の野党転落(1993年)で、(1)の資金の流れがストップした。自民党を離脱した小沢一郎によって非自民の細川護煕・連立内閣が発足すると、平岩外四・経団連会長/東京電力が献金のあっせん中止を発表した。平岩と小沢との関係がそれを可能にした。自民党にとって、献金ストップは野党転落以上にショックだった。
 (3)非自民政権は1年も持たずに崩壊した。自民党は、村山富市・社会党委員長を担いで自社さ政権を樹立、政権復帰を果たした。経団連はシンクタンクとして政治との関わりを模索したが、影響は限定的だった(資金的なつながりがないから)。
 (4)旧経団連から現経団連に移行して最初の会長に就いた奥田碩(トヨタ出身)は、2004年から政策評価をした上で自発的な献金を促す方式で企業献金を復活させた。
 (5)民主党が政権交代を果たし、自民党が野党に転落すると、またまた献金を止めた。

 以上要するに、経団連はご都合主義でしかなかった。
 今回の献金再開も、あまりに露骨だ。
 1994年に成立した政治改革関連法により、国民1当たり250円の政党交付金が税金から支払われる。自民党は昨年1年間で145億円の交付金を受け取った。献金は、政治資金の「二重取り」だ。
 安部はアベノミクスの一環として法人税減税を打ち出している。経団連からの呼びかけであるとはいえ、あまりに行儀が悪すぎる。

 経団連はかつて「財界総本山」と呼ばれた。経団連会長は、「財界総理」だった。歴代会長の石坂泰三(東芝)、土光敏夫(同)、稲山嘉寛(新日本製鐵)らは文字どおり現職総理と比肩するほどの見識と実力を兼ね備えていた。
 政界も財界も余りに小粒になった。
 「カネの切れ目が縁の切れ目」の愚をまたしても繰り返すのか。

□後藤謙次「露骨な安倍政権へのすり寄り 経団連が5年ぶりに献金再開 ~永田町ライブ 209~」(「週刊ダイヤモンド」2014年9月20日号)
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