語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】安藤次男「夕立」

2015年06月30日 | 詩歌
 八月というのは
 享けつがれた果物だ
 新鮮で
 爽やかである
 だが要するに
 誰がくれたか
 誰にやるのか
 覚えてはいない
 受取人のいない
 手紙のようだ
 配達夫が帰っていくと
 人はたれかが(たしかに多くの人が)
 不在であることを思い出す
 そのとき雨の中で
 もう一つの雨が成熟する

□安藤次男「夕立」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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 【参考】
【詩歌】安藤次男「碑銘」 ~敗戦忌~
【詩歌】安藤次男「年齢について」
【詩歌】安藤次男「鎮魂歌」
【詩歌】安藤次男「球根たち」




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【五輪】工事遅れや費用増大、責任のなすり合い ~新国立競技場~

2015年06月30日 | 社会
 (1)「新国立競技場、950億円で造れる」【5月15日付け「スポーツ報知」の一面】
 「民間会社」が提言、「政府関係者」に支持が広がる・・・・米国のスポーツコンサル会社「アンダーアーマー」が提案したらしい。日本ではビジネスとしてのスポーツが未開拓なので、新たな市場を狙ったもの、という【注】。

 (2)下村博文・文部科学相は、5月18日、舛添要一・東京都知事に都に資金協力を頼む会談の際、「東京五輪までは屋根を設置せず、座席も一部仮設」と言い出した。
 しかし、屋根(正確には防音性遮蔽膜)をあとから取り付けること自体、費用と工事難易度をつり上げる。
 舛添知事は、「都知事日記」【「現代ビジネス」】で述べた。
   「都が500億円出す約束はない。文科省もJSC(日本スポーツ振興センター)にも能力と責任意識が欠けている
   「大日本帝国陸軍を彷彿とさせる」
   「東京で都立競技場建設も検討」

 (3)ネットでは大反響。
   (a)「前の競技場を壊すべきではなかった」「都税を無駄遣いしないでほしい」
   (b)「国際コンクールの結果を尊重せよ」「(新国立競技場をデザインした)ザハに失礼」
 テレビや新聞も、今さらながら「お粗末」「誰の責任だ」といいだした。ちっとも報道せず、論議の場も作らなかった自分たちの責任を棚にあげて。

 (4)「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」は、2013年10月の結成以来、「神宮外苑と旧国立競技場を直して使おう」という提案をしてきた。広く論議を起こし、35,000人の賛同者を集めた。
 その結果、入札の不調もあって、解体は2014年7月から2015年1月まで延びた。
 安藤忠雄・新国立競技場デザインコンクール審査委員長は、新国立競技場を作るとしても木は一本も切らない、と言っていた。しかし、すでに相当数の木が伐採された。
 「技術的に無理が多い。間に合わない。維持費も含め壮大な無駄。直して使うほうが、環境の時代と、IOCのアジェンダ2020にも適合する」・・・・「手わたす会」は、そう言っていたから、「だからいったじゃないの~~」♪♪♪

 (5)槇文彦・建築家のグループは、代替案を提案。
   「巨大アーチを取りやめ、観客席だけを屋根で覆い、2万席を架設にする」
 この問題で果敢に発言してきた森山高至・建築エコノミストは、初代の競技場をもとに環境になじむ案を出している。
 これに対し、森喜郎・東京五輪組織委員会会長は、「経済大国日本にふさわしい」「3~千億円かかっても立派なものを作る」と6月になってもまだ言っている。
 200万円くらいしか年収のない若者が多い現在、この高度軽罪成長期的感性は度し難い。

 (6)そもそも2019年にラグビーのワールドカップをしたいがために、大義なきオリンピックを抱き合わせで招致し、ろくな論議もないまま、こけ威しの実現不可能なプランを当選させた。はじめから、すべて順序が逆なのだ。

 (7)キールアーチだの開閉式屋根だの、建築だけに話が集中しているが、新国立を考えるためには、
   ・景観
   ・緑化
   ・交通
   ・防災
   ・避難
   ・ヒートアイランド
   ・資源
 そして、一番大事な都民の公園と住宅をつぶすことを論議しなければならない。
 「手わたす会」は、6月16日、無理な現行案を諦めること、作るとしても「神宮外苑に負荷のかからない競技場を」とする緊急市民提言を文科省とJSCに提出した。
 オリンピックは所詮、運動会だ。緑の原っぱでやるのも環境の時代にふさわしいではないか。

 【注】下村文部科学大臣は、東京オリンピック・パラリンピックの関係団体が集まった会議で、大会のメインスタジアムになる国立競技場の改築について、2019年5月末の完成を目指すとしたうえで、改築費は当初の予定よりおよそ900億円高い2,520億円とする方針を示した。【記事「国立競技場改築費 2520億円の方針」(NHKNEWSWEB 2015年6月29日)】

□森まゆみ(作家)「新国立競技場、工事遅れや費用増大で責任の押し付け合い 「だからいったじゃないの~」」(「週刊金曜日」2015年6月26日号)

 【参考】
【五輪】が都民の生活を圧迫する ~汚染市場・アパート立ち退き~
【五輪】公共事業のためか? ~メッセージの発信、新しい試みを~
【原発】放射能の海で「おもてなし」 ~2020年東京五輪~
【原発】東京放射能汚染地帯 ~オリンピック競技候補会場~
【原発】放射能と東京オリンピック招致

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【詩歌】安藤次男「碑銘」 ~敗戦忌~

2015年06月29日 | 詩歌
 建てられたこんな塔ほど
 死者たちは偉大ではない
 ぼくは死にたくなんぞないから
 ぼくにはそれがわかる
 ところでなぜぼくは
 こんなところに汗を垂らしてうつむいて
 いるのだ一篇の詩がのこしたいためか
 似たりよったりの連中のなかで
 生れもつかぬ片輪の子を生んで俺の
 子ではないとなすりつけ
 あいたいためかぼくにはそれがわかる
 建てられたこんな塔ほど
 死者たちは偉大ではない。

□安藤次男「碑銘(八月)」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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 【参考】
【詩歌】安藤次男「年齢について」
【詩歌】安藤次男「鎮魂歌」
【詩歌】安藤次男「球根たち」




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【メディア】集票キャンペーンの検証が課題 ~橋下劇場の終幕~

2015年06月29日 | 批評・思想
 (1)大衆を扇動する力量は安倍首相を凌駕するポピュリストが、住民投票で舞台から引きずり降ろされた。
 さすが、テレビから生まれた政治家だ。カメラに向かって引退を語る橋下徹・大阪市長は、精一杯の潔さを装って、次へと命脈をつないだ。

 (2)「橋下劇場・大阪都合戦」の幕が下りると、関心事は市長退任後の去就へ移った。
 その前に、メディアにはなすべきことがある。
 集票活動の決算だ。
 大量のテレビCMや折り込みビラなどの運動資金は、誰がどこから集めたのか。

 (3)公職選挙法の規制がない住民投票は、さながら米国大統領の選挙だ。運動資金を集めて、CMをじゃんじゃん流す。強者に有利な集票運動だ。大阪の住民投票は、かんじがらめの公選法の対極にあって、「規制緩和の集票運動」だ。
 都構想賛成派の前線は、橋下人気にだけに拠るのではない。大量の資金がモノを言った。
 メディアの仕事は、収支報告をきちんと検証することだ。

 (4)橋下市長は、1月の記者会見で、住民投票は「憲法改正・国民投票の予行演習」と発言した。このことは、もっと注目されてよい。憲法改正は、住民投票の裏テーマだったのだ。
 改憲というキーワードが、大阪の運動と首相官邸をつないだ。自民党大阪府連反橋下でまとまったが、党本部は動かず、首相官邸は橋下支持を隠さなかった。

 (5)大阪での争点は、「都構想の是非」だが、中央政界では「改憲連合」が画策された。都構想で勝利した橋下と組めば、悲願の憲法改正にはずみがつく。安倍首相は期待しただろう。
 朝日、毎日、読売など全国紙は、大阪発行の紙面で「熱気帯びる都合戦」を細大漏らさず取り上げた。東京発行の紙面に大阪の熱気はほとんど載らず、維新の党を軸とする政局記事が目立った。
 政党再編は政治記者が好きな話題だが、読み足りない。安倍・橋下が水面下でどのように繋がっているかが描かれていない。
 安倍政権にとっては、官房機密費を投じてでも勝たせたい選挙に違いなかった、 
 表立っては応援できない首相や官房長官は、裏で何をしていたのか。
 現在進行形で記事にするのは難しいだろうが、これからでも遅くはない。読者がメディアに期待するのは、権力者への監視だ。

□神保太郎「メディア批評第91回」(「世界」2015年7月号)の「(2)TPPとメディア「壁」を突き崩す調査報道」
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【詩歌】安藤次男「年齢について」

2015年06月28日 | 詩歌
 あたまがしげる
 足が透明になる
 土の中で目の溶けた
 いちじくの実に似た
 小鳥の屍骸が
 六月の空間を
 ひろげる、死者たちに
 まじって死んでいることの
 なんと自画像に
 似ていることか
 防衛的なカタツムリは
 さまざまな年齢をふくんでいる
 つつまれることを
 知らないこれほど
 花の多い季節もないのだ
 泡だつ雨には
 まだはやい、タチオアイの
 垂直の
 黝ずんでいく迅さよ
 人はもういまが
 雨期であることを無視しはじめる

□安藤次男「年齢について」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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 【参考】
【詩歌】安藤次男「鎮魂歌」
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【米国】「愛国者法」失効と「自由法」成立 ~9・11後の今~

2015年06月28日 | 社会
 (1)米議会上院は、6月2日、その前日(1日)に失効した「愛国者法」に代わる「米国自由法」を賛成67、反対32の賛成多数で可決した。下院では、すでに先月、賛成338、反対83で可決済み。2日夜、オバマ大統領が署名して法律は成立した。
 エドワード・スノーデン・米国家安全保障局(NSA)職員(当時)による内部告発によって、一般市民への監視活動が明らかになってから2年。ようやくその活動が制限されることになる。

 (2)同時多発テロ事件(2001年9月11日)を受け、米議会は十分な審議も経ず、愛国者法をスピード制定した。NSAのテロ監視に係る権限は大幅に拡大され、同法215条を根拠に、不特定多数の市民の電話、ネットにおける通話記録などが収集された。
 
 (3)大規模な市民へのスパイ活動について、当時情報収集していたスノーデン・NSA職員(当時)は、2013年6月、ジャーナリストに情報を流し、香港で会見。英「ガーディアン」などメディアが、NSAによる大量情報収集の実態を暴露した。
 米司法当局は、スノーデン・NSA職員(当時)に係る逮捕命令を出し、米国国内では国家機密漏洩の「反逆者」とされた。
 一方で、真実を伝えた「ヒーロー」と見る人びともいて、世論は分かれた。
 彼は、同年8月、ロシア移民局から期限付き滞在許可証の発給を受け、現在ロシアに滞在中だ。

 (4)米国自由法では、NSAは一般市民の通信記録を収集・保存できず、通信会社に通信記録保存が委ねられる。特定の個人がテロ集団にリンクしている、と証明できた場合に限り、政府はその情報を入手できる。ただし、その際は外国情報活動監視裁判所(FISC)が発行する令状が必要だ。
 新法をめぐって、国家安全保障か個人のプライバシー保護か、と激しい議論が重ねられてきた。ヒューマン・ライツなど人権監視機関は、「巨大な監視体制の潮流を変える」画期的な出来事だと、おおむね米国自由法を評価する。 
 米国自由法の立役者ともいえるスノーデン・NSA職員(当時)は、2日、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのイベントに動画中継で参加し、「歴史的にも重要な一歩だ」とコメントした。「曝露から2年で、政府の監視活動は人権侵害だという意識が市民の間で高まった」と強調した。
 だが、愛国者法の延長を主張するマコネル・共和党院内総務らは「米国の安全保障を脅かす」と危機感を表明したりしている。

 (5)新法の情報収集制限について、懐疑的な見方をする向きもある。
 ジェームズ・コール前司法副長官は、「NSAは大量情報収集を続けていくだろう」と強調し、「FISCが新法条項にどのような解釈をつけていくのかが問題だ」・・・・と、FISCの令状があれば政府は市民の情報を入手できる点に警鐘を鳴らす。

□マクレーン末子(在米ジャーナリスト)「「愛国者法」失効と「自由法」成立」(「週刊金曜日」2015年6月19日号)
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【詩歌】安藤次男「鎮魂歌」

2015年06月27日 | 詩歌
 いつ たれが
 季節のそとにあるのか
 ぼくではない
 垂れこめる
 気抜け雨のなかで
 水晶のように
 透明になるミミズたち
 刑死した花ざくろ
 存在たちの
 影と
 幼児の笑い声
 そして
 蓋のない壜の口から
 溢れおちる水たち

 それに手を触れるな!

□安藤次男「鎮魂歌(五月)」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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【詩歌】安藤次男「球根たち」


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【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道(2)

2015年06月27日 | 批評・思想
 (承前)

 <日本政府が7月から参加する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で、米国が難色を示していた遺伝子組み換え食品の表示義務を受け入れる方針であることが15日、分かった。>
で始まるこの記事は、
 <日本にとっては、一部で指摘されていたTPP参加による「食の安全」への懸念が払拭されることにつながる。政府は7月の交渉参加を見据えて情報収集を強化するため、「TPP政府対策本部」の本格稼働を前倒しさせる検討にも入った。
 TPPにおける遺伝子組み換え食品の表示義務化については、豪州やニュージーランドが賛成の立場を表明。米国は遺伝子組み換え食品の輸出大国として義務化には反対だったが、TPP交渉全体の進展を重視し妥協を受け入れた格好だ。
 米国にとっては厳しい表示義務が導入されれば、消費者の抵抗感が残る遺伝子組み換え食品の売り上げ減につながる恐れがある。また、大豆やトウモロコシなど生産・流通段階から遺伝子組み換えとそうではない作物を細かく管理する必要があり、コスト増のデメリットも抱えることになる。
 一方、日本にとっては、TPP参加によって「食の安全安心への懸念がある」(自民党の決議案)との指摘もあっただけに、遺伝子組み換え表示の義務化が担保されれば、 TPP交渉の課題が1つ解決される。>
と結ばれている。

 (9)記事の背景には、遺伝子組み換えで収穫量の多い種子を創り、世界の穀物市場を制覇したいモンサントなど米国の穀物会社の思惑が絡んでいる。
 害虫を寄せつけない特殊な植物が人体に安全か。・・・・消費者の疑念はぬぐえない。
 巨大穀物会社は、多くの国で実施されている「遺伝子組み換え食品の表示義務」を世界戦略の妨げと見ている。米国政府を後押ししてTPP交渉で表示義務を止めさせようとしてる。だが、オーストラリアやニュージーランドなどの農業国が遺伝子組み換え種子を入れまいと抵抗している。

 (10)産経は、「米国は交渉全体をまとめるために表示義務を容認した」と書いた。
 米国が諦めたのなら食の安全は確保される。TPP参加を妨げる条件が一つ外れた。・・・・というのが、(8)の記事のメッセージだ。
 産経は、どうやって秘密交渉の中身を知ったのか。

 (11)消費者団体が農水省に、記事の真偽を問い合わせたが、「わからない」「確認できない」という返事だった、という。メディアの取材も有権者の問い合わせも、「分かりません」と機械のように答えて済ます。
 すべて政府が抱え込み、政権につごうのよいことだけリークして書かせる。
 全体像が知れると困る協定でも、小出しする情報の操作で肯定的なイメージをつくることができる。
 内部告発でもない限り、政府に不利な情報は出てこない。メディアは飢餓の状態に置かれ、配給されると飛びついて記事にする。
 発表を超えた厚みのある事実を集めようとすると、担当者と個人的な信頼関係が必要だ。
 出し手側の事情を斟酌することになり、批判的な取り上げ方はしにくい。

 (12)TPPの報道で目につくのは、交渉の成り行きと経過報告ばかりだ。
    「TPP、迫る時間切れ 日米首脳、妥結へ協力一致」【4月30日付け朝日新聞】
    「TPP、26~28日閣僚会合--日米前進で妥結目指す」【5月1日付け共同通信】
    「TPP閣僚会合 グアムで開催へ」【5月1日付け読売新聞】
    「TPP参加国閣僚、フィリピンで非公式会合」【5月25日付け日経新聞】
 どこで集まる。交渉は難航する。大筋合意を目指す。・・・・といった無内容なイベント記事が多い。交渉の中身が書けないので、行事の紹介で動きを伝える。マンネリ記事は記者クラブ制度の反映でもある。情報の配給を待つ受け身の姿勢だ。

 (13)問題点を掘り起こそうとすれば、米国がTPPに先だって締結した米韓自由貿易協定(米韓FTA)を調べればいい。何が決まり、どんな後遺症をもたらしたか。
 「安い輸入豚肉席巻 欧米と自由貿易協定先行」【2013年5月22日付け朝日新聞】
という韓国のルポは問題提起必至の記事だ。輸出立国を目刺し、米国とFTAを結んだ韓国における畜産農家の苦渋が描かれている。

 (14)米国の市民や労働者を「反TPP」に走らせた北米自由貿易協定(NAFTA)にも教訓が多い。
 米国の穀物企業がメキシコの農業を圧倒したが、1,000万人超の破産した農民が米国に流入し、失業の増大と低賃金を米国経済にもたらした。
 ごく一部のグローバル企業は大儲けしても、多くの人は職を失い、格差は拡大する。こうした惨状が市民や労働者の反TPP運動に繋がっている。

 (15)秘密協定の中身も部分的にはわかっている。ウィキリークスで流出した案文の翻訳作業が、ボランティアの協力で少しずつ進んでいる。
 米韓FTAやNAFTAで起きたことを重ね合わせれば、TPPがもたらす事態が見えてくるはずだ。
 役所相手の記者クラブ取材は真実にたどり着けない。福島の原発事故をきっかけに朝日新聞で連載されている「プロメテウスの罠」のような調査報道がTPPにも必要だろう。
 踏み切るかどうかは編集幹部の意欲私大だが、その姿勢は朝日にも見えない。

 (16)記事「政府『食の安全、悪影響ない』TPP交渉状況、一般向け説明会」【5月16日付け朝日新聞】によれば、この説明会に400人が集まったという。遺伝子組み換えや残留農薬の基準が米国並みに緩和されること、企業が政府を訴えるISDS条項などへの質問が出た。
 記事によれば、<渋谷和久内閣審議官は「今の制度を変えることにはならない」。ISDS条項では「日本が訴えられる心配はない」と述べた>とある。
 どこか、安倍首相の国会答弁と重なる。
 「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にない」
 首相も審議官も、なにを根拠に、自信たっぷりに言えるのか。

 (17)TPP交渉でなにがどう話し合われ、どんな合意が行われたのか、知らされないまま「心配ない」と言われても安心できない。
 朝日の記事は、「大本営発表」を垂れ流しただけではないか。
 それとも役人から言質を取ったつもりなのか。
 しかし、心配が現実になったとき、太鼓判を押した役人はもう退職しているかもしれない。

□神保太郎「メディア批評第91回」(「世界」2015年7月号)の「(2)TPPとメディア「壁」を突き崩す調査報道」
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 【参考】
【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道

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【詩歌】安藤次男「球根たち」

2015年06月26日 | 詩歌
 みみず けら なめくじ

 目のないものたちが
 したしげに話しかけ
 る死んだものたちの
 眼をさがしていると

 一年じゅう
 の息のにお
 いが犇めき
 寄つてくる

 小鳥たちの屍骸
 がわすれられた
 球根のようにこ
 ろがつている月

 葬られなかつた
 空をあるく寝つき
 のわるい子供たち

 あすは、
 すいみつ。せみ。にゅうどうぐも。

□安藤次男「球根たち(六月)」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道

2015年06月26日 | 批評・思想
 (1)TPPの動きが慌ただしい。米国議会でTPP法案(大統領に貿易交渉の権限を委譲する法案)の成立が微妙になり、協定そのものが危うくなっている。
 TPPの旗を振るのはオバマ大統領だ。しかし、米国でTPP反対派は与党の民主党に多い。推進派は共和党だ。「反TPP」の火の手は政権の足元から上がっている。
 1%の強者が99%の富を握る社会と闘う市民運動、失業を恐れる労働組合。与党民主党を支える米国のリベラル勢力が、交渉に反対している。

 (2)TPPの守秘義務も議会で問題になった。
 民意に押され、米国では1月から条約案が連邦議会の議員に開示されるようになった。
 「米国では議員に閲覧させている協定案が、なぜ日本で開示されないのか」
 国会で問題になると、甘利明・TPP担当相があいまいな答弁で窮地に立った。
 秘密交渉といいながら、交渉相手国の議会には公開されている。大臣が答弁に窮するのも当然だ。
 こうした動きはなぜか記事にならない。野党が委員会で追及しても、国会担当の記者は専門外と放置したのか、それとも「秘密交渉」への感度が鈍いのか。
 「日米議会の情報格差」をメディアは黙認した。

 (3)それが、突如浮上した。
 ワシントンで、西村康稔・内閣府副大臣が、できるだけ早く閲覧できるようにする、と発言したからだ。米国で連邦議員から話を聞き、厳重な守秘義務を条件に案文を閲覧している事実を確認した。記者会見でいわく、
 「日本では国会議員に守秘義務の罰則がないが、どういう範囲で閲覧を認めるか検討する」

 (4)外国での会見は、あらかじめ当てる記者を決め、事前に質問を聞き、想定問答を用意して臨むのが日本のやり方だ。甘利TPP担当相と打ち合わせした上での発言だろう。
 ところが、ニュースが東京に伝わると、菅官房長官が激怒した、という。「どんな権限で言っているんだ」
 西村副大臣は、二日後、あえなく発言を撤回。帰国して国会で詫びた。

 (5)一連のドタバタ劇は、
   「政府苦慮 日米議会で差」【読売】
   「野党反発 経緯検証を求める」【毎日】
   「西村副大臣が謝罪」【朝日】
など西村副大臣がの軽率な発言が巻き起こした事件のように扱われた。
 軽い副大臣と、逆ギレする官房長官。
 対照は妙だが、政治の小咄で終わらせるような出来事か。

 (6)TPP条約文の非公開は、米国の意向で決まった、と言われる。確認はできない。交渉の経過が公開されていないからだ。
 米国は、各国に守秘義務をかませながら、一昨年の米中首脳会談でオバマ大統領は習近平・国家主席にTPP交渉の進展に合わせた情報提供を約束した。
 交渉は対等であるべきなのに、米国はルールを自分の都合で如何様にもできる。第三国に情報を渡し、自国の議員は特別扱いだ。

 (7)不合理に慣らされると、不合理を不合理と感じなくなる。
 (5)に見られる記者の危うさは、そんなところにありはしないか。
 そもそも秘密交渉であることが不合理なのだ。
 交渉は21分野ある。・・・・①物品市場アクセス、②原産地規則、③貿易円滑化、④SPS(衛生植物検疫)、⑤TBT(貿易の技術的障害)、⑥貿易救済(セーフガード等)、⑦政府調達、⑧知的財産、⑨競争政策、⑩越境サービス貿易、⑪商用関係者の移動、⑫金融サービス、⑬電気通信サービス、⑭電子商取引、⑮投資、⑯環境、⑰労働、⑱制度的事項、⑲紛争解決、⑳協力、?分野横断的事項。
 素人にはうかがいしれない項目が並んでいる。
   ・コメの自由化・・・・①物品市場アクセス
   ・東京メトロと東京都との関係・・・・⑨競争政策
   ・ディズニー映画の著作権延長・・・・⑧知的財産
   ・企業が国家から賠償金を取るISDS条項・・・・⑲紛争解決
 無機質な項目に企業と消費者、資本と労働、強者と弱者の利害損得が絡み、切れば血が出る葛藤が渦巻いている。
 秘密交渉だから、何がどう議論されているのか、外からはわからない。

□神保太郎「メディア批評第91回」(「世界」2015年7月号)の「(2)TPPとメディア「壁」を突き崩す調査報道」
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【詩歌】エミリー・ディキンソン「わたしの生涯はその終わりのまえに二度終わった」

2015年06月25日 | 詩歌
 わたしの生涯はその終わりのまえに二度終わった
 だがまだ永遠が
 第三の出来事を明かすのを
 みることが残っている

 まえに訪れた二つと同じように
 あまりに大きく測りがたいものを
 別離はわたしたちが天国について知るすべて
 また地獄に必要なすべて 

 My life closed twice before its close;
 It yet remains to see
 If Immortality unveil
 A third event to me,

 So huge, so hopeless to conceive,
 As these that twice befall.
 Parting is all we know of heaven,
 And all we need of hell.

□エミリー・ディキンソン「わたしの生涯はその終わりのまえに二度終わった」(『ディキンソン・フロスト・サンドバーグ詩集 ~世界詩人全集12~』、新潮社、1968)
□亀井俊介編『対訳 ディキンソン詩集 ~アメリカ詩人選(3)』(岩波文庫、1998)
□MABEL LOOMS TODD & T.W.HIGGINSON “Collected Poem of EMILY DICKINSON”,Crown Publishers,Inc.1982
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 【参考】
【詩歌】エミリー・ディキンソン「眼が見えなくなるまえに」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「わたしは苦悩の表情が好き」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「傷ついた鹿は一番高く躍り上がると」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「声高く戦うのは勇ましい」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「もし駒鳥たちがやってくるころ」
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【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~

2015年06月25日 | ●佐藤優
 (1)中谷元・防衛相が、6月12日、衆議院平和安全法制特別委員会で、米国以外との集団的自衛権の行使について重要な発言をした【注1】。中谷防衛相は、
 <オーストラリアへの武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされる事態になれば、集団的自衛権を行使できるとの見解を示した。新たな安全保障法制で集団的自衛権に基づく他国軍の防衛が可能になると指摘。「法律の要件を満たす場合であれば日豪、日米豪の運用協力を進めることが可能となる」と語った。
 (中略)防衛相は「法律上、対象として豪州軍が明記されているわけではない」としつつ、これまでの日豪間の安保協力の進展を根拠に豪州軍が「密接な関係国」に含まれるとの認識を示した。日本への直接の攻撃はないが、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼしかねない「重要影響事態」では、自衛隊が豪州軍に給油などの後方支援をできるとも主張した。>【注2】

 (2)安倍政権は、オーストラリアを準同盟国と位置づけている。それは、中国の急速な伸張をオーストラリアが脅威と認識して、防衛力を増強しているからだ。特に、中国が航空母艦を建造し、機動部隊を編成しようとしていることに対して、オーストラリアは警戒心を強めている。
 航空母艦の天敵は潜水艦だ。
 ところが、オーストラリアは米国製潜水艦を購入できない。いまは米国は原子力潜水艦しか製造していないが、オーストラリアは非核政策を国是にしているからだ。
 オーストリアは自国で大型ディーゼル潜水艦を製造していないので、外国から購入しなくてはならない。国際的に潜水艦の輸出国はドイツ、オランダ、スウェーデンだが、いずれも中型ないし小型だ。オーストラリアの国防に資する大型潜水艦を製造する能力のある国は、ロシアと日本だ。潜在的に緊張関係をはらむロシアから潜水艦をオーストラリアが購入することはできない。

 (3)<昨春の武器輸出三原則の撤廃を受け、政府は、オーストラリアとの潜水艦の共同開発に向け、同国の選定手続きに名乗りを上げた。日豪が進める安全保障面での連携を反映したもので、豪州側も日本の協力に期待を寄せている。
 (中略)日本側が潜水艦の情報開示に応じた背景には、中国が南シナ海や東シナ海で海洋進出を加速させていることがある。豪州とは、同国軍と自衛隊が共同で訓練するなど「準同盟国」的な連携を強化してきた。
 豪州は、2030年代に現在保有する潜水艦の世代交代を計画しているが、「独自に開発・建造するのは技術的に難しい」(海自幹部)事情がある。
 (中略)潜水艦は行動が察知されない「隠密性」が求められるが、そうりゅう型はレーダーに発見されにくいなどの利点があり、豪州側も日本の技術に注目している。>【注3】
 そうりゅう型潜水艦の輸出は、アベノミクスの成長戦略にも合致している。今後、日本経済の軍事化が加速する。

 【注1】「古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
 【注2】記事「集団的自衛権行使、豪への攻撃でも可能 防衛相見解 」(日本経済新聞 2015年6月12日)
 【注3】記事「中国念頭「準同盟」強化 豪に潜水艦技術供与へ」(朝日新聞デジタル 2015年5月19日)

□佐藤優「手段的自衛権 オーストラリアが出てくる「理由」 ~佐藤優の人間観察 第118回~」(「週刊現代」2015年7月4日号)
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【詩歌】エミリー・ディキンソン「眼が見えなくなるまえに」

2015年06月24日 | 詩歌
 眼が見えなくなるまえに
 私は十分見ておきたい--
 眼をもっている他のひとたちと
 すこしも変わらないように

 だがもし今日
 空が私のものだと告げられたら
 自分の姿に
 胸が張り裂けてしまうだろう

 牧場も 私のもの
 山々も 私のもの
 すべての森 果てしない星も
 私の限られた眼でとらえられる
 真昼のすべても

 水に浸かる小鳥の動作や
 朝のこはく色の道も
 眺めたいときにいつでも眺められるとしたら
 話だけで即死してしまうだろう

 むしろ窓ガラスに
 魂だけ置く方が危なくない--
 他のひとたちは
 太陽にかまわず眼を寄せても

 Before I got my eye put out,
 I liked as well to see
 As other creatures that have eyes,
 And know no other way.

 But were it told to me, to-day,
 That I might have the sky
 For mine, I tell you that my heart
 Would split, for size of me.

 The meadows mine, the mountains mine, --
 All forests, stintless stars,
 As much of noon as I could take
 Between my finite eyes.

□エミリー・ディキンソン「眼が見えなくなるまえに」(『ディキンソン・フロスト・サンドバーグ詩集 ~世界詩人全集12~』、新潮社、1968)
□亀井俊介編『対訳 ディキンソン詩集 ~アメリカ詩人選(3)』(岩波文庫、1998)
□MABEL LOOMS TODD & T.W.HIGGINSON “Collected Poem of EMILY DICKINSON”,Crown Publishers,Inc.1982

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 【参考】
【詩歌】エミリー・ディキンソン「わたしは苦悩の表情が好き」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「傷ついた鹿は一番高く躍り上がると」
【詩歌】エミリー・ディキンソン「声高く戦うのは勇ましい」
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【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~

2015年06月24日 | 社会
 (1)安保法案は違憲であることが明白になった。安倍政権にたてつくことに及び腰なマスコミも、今ごろになって政権監視の役割を果たしているフリを始めた。
 しかし、マスコミと安倍政権との「癒着」は切れていない。そのことを証明する大ニュースが先般、流れた。

 (2)ことの発端は、高齢者などの消費者被害で問題化している訪問販売の規制強化に係る議論が、政府の消費者委員会特定商取引法専門調査会で始まったことにある。
 いま政府は、「特定商取引法」で、消費者被害が出やすい訪問販売について規制している。
 その中の重要な柱が、「再勧誘禁止」(同法3条の2)だ。一度断られたら、再度勧誘してはいけない、ということだ。違反には行政処分もある。
 消費者から見れば当然のことだが、実際には玄関口で断ってもなかなか帰らずにしつこく勧誘したり、一度帰っても再度勧誘に訪れたりすることが横行している。その結果、気の弱いお年寄りが狙われて高額な契約をしてしまう、というような被害が出る。
 仮に悪質なものでなくても、見ず知らずの人に静かなプライバシー空間での生活を邪魔されたくない、という人も多い。
 消費者庁の調査でも、実に
    96.2%
の人が今後訪問勧誘を受けたくない、と答え、
    過半数
が自ら要請していない訪問販売は禁止してほしい、と答えている。

 (3)(2)の消費者の声を受けて、消費者庁は、新制度の導入を検討中だ。訪問販売お断りを示すステッカー表示のある家への訪問を禁止するというものだ。

 (4)むろん、関連業界団体は(3)に猛反発し、族議員と所管官庁を使って裏で猛烈な反対運動を始めた。
 そんな業界の一つが、新聞業界だ。新聞は、販売部数が年々落ち込み、訪問販売で何とか下支えしている。これができなくなると死活問題だから、自民党などに強力な圧力をかけている。
 表向きは「活字文化の維持」・・・・だが、そのためには迷惑な訪問販売も認めろ、というのだから、あまり分のある話ではない。

 (5)(4)のような焦りがあったせいか、新聞業界のドン、読売新聞が大ポカを演じた。舞台は、6月10日の消費者委員会特定商取引法専門調査会。
 山口寿一・読売新聞東京本社社長が、業界の利益を守ろうとして失言した。
 「断られたけれども(新聞を)とっていただくということも多々あるんですね」
 つまり、「再勧誘禁止」違反だ、ととられかねない発言だ。
 これに気づいた委員たちの間に失笑が漏れると、山口社長は「笑わないで下さい」と制止し、その後長々と言い訳をした。その全てがビデオで公開された。

 (6)驚くべし、山口社長は、山口俊一・消費者担当大臣や川上正二・消費者委員会委員長などに謝罪を求める抗議文を送ったのだ。その抗議文の写しを菅義偉・官房長官にも送ったという。
 違法行為ともとられる失言を笑われて逆ギレし、さらにマスコミの支配者、菅官房長官に言いつけた。「オレには菅がついているぞ」という恫喝だ。
 前代未聞の大失態。
 しかし、公開の調査会に来ていた大手新聞は、もちろん報道していない。自分たちの利権のために、だんまりを決め込んだのだ。
 安倍政権と癒着した日本の大新聞。どこまで腐っているのか。

□古賀茂明「読売新聞の大チョンボ ~官々愕々第160回~」(「週刊現代」2015年7月4日号)
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【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
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【詩歌】エミリー・ディキンソン「わたしは苦悩の表情が好き」

2015年06月23日 | 詩歌
 わたしは苦悩の表情が好き
 それが真実なことを知っているから
 ひとびとはひきつけを装ったり
 苦しさを見せかけはしない

 その日は一度かぎりかすむ それが死
 じみな苦しみでつながった
 額の上の玉を
 いつわることはできない

 I like a look of agony,
 Because I know it's true;
 Men do not sham convulsion,
 Nor simulte a throe.

 The eyes glaze once, and that is death.
 Impossible to feign
 The beads upon the forehead
 By homely anguish strung.

□エミリー・ディキンソン「わたしは苦悩の表情が好き」(『ディキンソン・フロスト・サンドバーグ詩集 ~世界詩人全集12~』、新潮社、1968)
□亀井俊介編『対訳 ディキンソン詩集 ~アメリカ詩人選(3)』(岩波文庫、1998)
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