(1)この数年、抗癌剤の高騰が問題になっている。
経済状態と医療制度が類似している18ヵ国間でも、最大388%の価格差があることが判明した【2015年末に報告された共同調査(世界保健機関とオーストリア公衆衛生研究所)】。
(a)調査対象国・・・・オーストラリア、ニュージーランド、英国などEU諸国。・・・・米国(薬価が自由価格)、日本(薬価が公定価格)は含まれない。
(b)調査対象抗癌剤・・・・分子標的薬など21世紀に相次いで発売された新薬31剤。日本でもメジャーな癌治療で標準的に利用される薬ばかり。
(2)調査結果は、
(a)18ヵ国の平均価格で見ると、
・250~500ユーロ・・・・4種類
・500~1,000ユーロ・・・・2種類
・1,000ユーロ超・・・・7種類
(b)最も高価な1剤・・・・5,000ユーロ超
(c)最低価格と最高価格の差は、各価格帯の中でもバラツキがあり、
・価格差が最大・・・・肺癌や膵臓癌の治療に使われる「ゲムシタビン」の388%
・「ゲムシタビン」の最高価格・・・・ニュージーランドの209ユーロ(28,000円)
・「ゲムシタビン」の最低価格・・・・オーストラリアの43ユーロ(6,000円)
【参考】同薬の日本での薬価は、2015年12月現在、
先発薬18,789円
ジェネリック薬12,649円
(3)この数年、EU諸国では抗癌剤の高騰を背景に、支払側と企業側とで「条件付きの販売契約」を結ぶケースが増加している。
製薬企業と保険償還機関との間で結ばれる契約内容は、原則非公開。今後の調査も割引前の価格(製造者価格)であり、実態を反映しているか否か不透明だ。
(4)日本では新薬の薬価を参照している限り、払い過ぎのリスクは避けて通れない。
このほか、製薬企業が価格の根拠として提示する「製造薬価」を適正かどうか判断する基準がないことも問題だ。
抗癌剤の研究開発費を捻出する必要から薬価の高騰が避けられないのであれば、価格設定の「見える化」推進が必要だ。
□井出ゆきえ(医学ライター)「抗がん剤の価格差は最大4倍以上 世界保健機関が18ヵ国で調査 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.2~」(週刊ダイヤモンド」2016年1月6日号)
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【参考】
「【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~」
「【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~」
「【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~」
「【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~」
「【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~」
「【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~」
「【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~」
「【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・」
「【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~」
「【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~」
「【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~」
「【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~」
「【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~」
「【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?」
「【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~」
「【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~」
「【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~」
「【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~」
経済状態と医療制度が類似している18ヵ国間でも、最大388%の価格差があることが判明した【2015年末に報告された共同調査(世界保健機関とオーストリア公衆衛生研究所)】。
(a)調査対象国・・・・オーストラリア、ニュージーランド、英国などEU諸国。・・・・米国(薬価が自由価格)、日本(薬価が公定価格)は含まれない。
(b)調査対象抗癌剤・・・・分子標的薬など21世紀に相次いで発売された新薬31剤。日本でもメジャーな癌治療で標準的に利用される薬ばかり。
(2)調査結果は、
(a)18ヵ国の平均価格で見ると、
・250~500ユーロ・・・・4種類
・500~1,000ユーロ・・・・2種類
・1,000ユーロ超・・・・7種類
(b)最も高価な1剤・・・・5,000ユーロ超
(c)最低価格と最高価格の差は、各価格帯の中でもバラツキがあり、
・価格差が最大・・・・肺癌や膵臓癌の治療に使われる「ゲムシタビン」の388%
・「ゲムシタビン」の最高価格・・・・ニュージーランドの209ユーロ(28,000円)
・「ゲムシタビン」の最低価格・・・・オーストラリアの43ユーロ(6,000円)
【参考】同薬の日本での薬価は、2015年12月現在、
先発薬18,789円
ジェネリック薬12,649円
(3)この数年、EU諸国では抗癌剤の高騰を背景に、支払側と企業側とで「条件付きの販売契約」を結ぶケースが増加している。
製薬企業と保険償還機関との間で結ばれる契約内容は、原則非公開。今後の調査も割引前の価格(製造者価格)であり、実態を反映しているか否か不透明だ。
(4)日本では新薬の薬価を参照している限り、払い過ぎのリスクは避けて通れない。
このほか、製薬企業が価格の根拠として提示する「製造薬価」を適正かどうか判断する基準がないことも問題だ。
抗癌剤の研究開発費を捻出する必要から薬価の高騰が避けられないのであれば、価格設定の「見える化」推進が必要だ。
□井出ゆきえ(医学ライター)「抗がん剤の価格差は最大4倍以上 世界保健機関が18ヵ国で調査 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.2~」(週刊ダイヤモンド」2016年1月6日号)
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