きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」

2021年11月03日 | 映画




TIFFで先行上映。
思っていたのと少し違った。
みなそれぞれ、恵まれているようで、
思っていなかった道を歩き、
理解されない孤独で、
無意識のうちに傷つけ合う。

時代は1925年。
日本だと昭和元年。
アメリカの西部にも自動車は走り
都会はフラッパー達の世代。

西部の裕福な牧場経営者の兄弟。
兄はイェール大学卒業、ラテン語も堪能。
弟も大学に通っていたが落第したため兄に拾われ牧場へ。

兄は友人の影響で、古い西部の男として生き、
弟は都会暮らしが忘れられない。

弟は食堂の未亡人と再婚する。
彼女も都会の映画館で働いてきた。
息子の学費に頭を悩ませる。

未亡人の息子は、母の再婚により
都会の大学で医学を学ぶ。
細い身体は西部ではからかわれるだけ。

お互いが細かく傷つけ合う。
ヒリヒリする空気がたまらん。

と思っていたら、
話は意外な方向へ。

「マディソン郡の橋」、だけど、
現れたのは魔性のゲイ、みたいな。

兄が親友だと崇拝する西部の男。
その男も兄もゲイで。
肉体関係があったかはわからないけど
少なくとも兄はその男を愛していた。

それがわかった未亡人の息子は
兄に心酔したふりをして近づく。

兄は心を開いていく。

しかし、それにはわけがあった。
未亡人の息子は、アル中の父が自殺したときに誓った。
母を守ると。
母を侮辱した兄を、実は許していなかった彼は
兄を炭疽病に罹患させ、殺す。

そこに落ちるか、で、
とってもびっくり。

冒頭の言葉は息子の誓いだったのね。
作中に何度も「炭疽病の牛の死骸に触るな」と出るのも伏線で。
医学部の息子が手袋を持っていたのも
もしかしたら兎の解剖も
その仕掛けだったのかなあ。

まさかの展開、大逆転に唸りました。
カンピオン、こう来たかー。

1925年、というのがミソかなあ。
写真は、ああいう雑紙があったんだろうなあ。

親友は、と、西部の男達に説教するのは
ある意味、惚気で。
それしかできない兄も、孤独だったんだろうなあ。
その孤独を若い息子は見抜いて利用して。
う~ん、たまらん。


ベネさんの芝居はさすが。
最近、普通のサラリーマンを見たのに、
今日は違和感なくカウボーイだった。
キルスティンも体型から中年女性だった。

カンピオンらしく、繊細で湿っぽい、暗めの映像です。
西部の砂埃、乾いた空気がちゃんと感じられるのに、
やっぱり全体的には湿っぽい。
ピリピリするような、
ささくれをめくっちゃった痛さのような、
微妙な緊張感が漂っています。
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