きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「白鳥の湖(1966)」フォンテーン&ヌレエフ/ウィーン国立歌劇場バレエ団(魅惑のバレエ映画祭)

2012年12月09日 | バレエ・ダンス
恵比寿の「東京都写真美術館」で開催中の
「魅惑のバレエ映画祭」に行ってきました。

今回見たのはマーゴ&ヌレエフの「白鳥の湖」。
制作は1966年で、
ウィーン国立歌劇場バレエ団に2人が客演したのかな。
横幅はあまりなく、奥行きがすごくあるかんじの舞台。
舞台メイクは「ひたすらベッタリ塗る」系で
色合いも全然繊細じゃない。
この50年でメイクの技術だけでなく
メイクの素材(化粧品そのもの)も進歩したんだな。

この映像はどこかで細切れに見たように思うけど
ちゃんと通しで見るのは初めてでした。

ヌレエフ版なので最後は悲劇。
王子は死に、オデットの呪いはとけない。
悲しいけど、2人の演技力もあり
納得はできます。
ロジックがしっかりしてる、というのかな。
「バレエ映画」なので一部の踊りは省略なのかな。
各国の踊りの数が、
出演ダンサーの色分けに合致してないように思いました。

若き日のヌレエフの王子は、
とても繊細な感情を持つ、情熱的な若者。
愛に生き、愛に殉ずる、短くも濃い人生を
見事に演じていました。

貴族的な佇まいは、
立っているだけでも絵になります。

それなのに、踊り出したら、
技術が進歩した50年後の今日でも
そうそうお目にかかれない超絶技巧。
ゆるぎない軸で正確に回る、
そのとき床に対して平行に上げた脚は
ピンと美しく伸びている。
それを「気合い入れてます」的にではなく、
音楽と演技の中に溶け込んでいるのが素晴らしい。
映像で見ても驚嘆なんだから
ナマで見たらさぞかし度肝を抜かれただろうな。

この上に、振付の才能、
話の構築力等の才能があるんだもんなあ。
なんという人なんだ!

しかし、ソ連以外のバレエ界を変えた偉大なる天才なのに、
彼が抜けても屋台骨が全く揺らがなかったキーロフもまたすごいな。
ヌレエフが留まっていても、
スターダンサーが一人増えただけだったんだろうな。

マーゴも素晴らしかった!
気品溢れる踊りだった。
溜め息。
白鳥にしては、私の好みからすると
腕はそれほど長くないし
映像で見ると逞しい肩幅や筋肉が目にはいるけど
そんな些細なことは軽く凌駕しちゃうくらい
白鳥の化身だった。
オディールは、妖艶より、
忍び寄る悪意系かな。
32回転は無かったけど
それは必須ではないし。

音楽、振付に、
ちょいちょいブルメイステル版が入っていた。
黒鳥のパ・ド・ドゥも
王子のバリエーション以外は
ブルメイステル版だったような。


なんというか。
ミーシャが神から才能を与えられた存在で、
ニジンスキーが神の申し子なら、
ヌレエフは神そのもの、だね。
ヌレエフが苦手な私でも、そう思った。


ウィーン国立歌劇場バレエ団は
この時の方がレベルが高いかもなあ。
今年の来日公演より良かったと思いました。



振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
指揮:ジョン・ランチベリー
演奏:ウィーン交響楽団
出演:マーゴ・フォンテーン、ルドルフ・ヌレエフ
バレエ出演:ウィーン国立歌劇場バレエ団
1966/ドイツ/カラー/スタンダード/ステレオ/107分/提供:ユニテル
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