言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

芦田宏直氏に会ふ

2016年07月05日 22時15分32秒 | 日記

 

 愛知県に引つ越してきて良かつたと思へた一日であつた。

 かねてより愛読してゐた芦田宏直氏が、私の今住んでゐる場所から車で30分ほどのところにある人間環境大学の副学長をされてゐることを最近知り、居ても立つても居られず、面会の願ひを出し、やうやく本日会ふことができた。

 最初だから顔合はせで、一時間ぐらゐと思つたが、四時間ずつと話をした。ほとんどは拝聴するといふ具合だが、哲学の個人レッスンを四時間していただいたと思ふと、まさに極楽のやうな時間であつた。話は、教育問題、学校問題、授業問題、教師問題、そしてハイデッガー論、現象学、解釈学、田中美知太郎流に言へば、「哲学談義とのその逸脱」は本当に知的刺戟に満ちてゐた。

 聞けば、10時間の講演をしたことがあると言ふ。講演者である芦田先生も観客も、食事も摂らずに10時間の講演が成立するといふ現代の奇跡を体験された人の話力は驚嘆すべきものがある。とにかく話が面白い。声も大きい。どんな質問にも当意即妙にしかもその話題からぐいと奥にまでつれていく知力は脳が喜んでゐた。かういふ時間を持てたことが本当に嬉しかつた。

差し障りのない質疑を一つ。

 問 近代哲学をやりたいといふ生徒にたいして、どこの大学を薦めますか。

 答 どこもないと思ふけれども、大学は東大に行つて、そのあと自分の好きな学者に師事したらいい。ハイデッガーなら、高千穂大学の斎藤元紀といふ気鋭の学者はいいね。阪大の高田珠樹もいいと思つたが、それ以上かもしれないとのことであつた。

 芦田氏もこれからいろいろと本を出されるらしい。考へながら書くスタイルは、量産とは相容れない。啓蒙書とは一線を画した本のスタイルを貫く芦田氏だが、できれば一年に一冊ずつは読みたいものである。

 芦田氏は、キンドルを愛好されてゐた。岩波新書もキンドルになる時代だから、キンドルは必需品。中等教育でもキンドルを買はせてリテラシーを磨かなければと言はれた。機械音痴の私には相当な負担であるが、たじろぎながら聞いた。

 「現象」とは何かといふことの応答も面白かつたが、それはまたいづれ。

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