「時事評論石川」の常連執筆者であり、今月まで宮崎大学の准教授をされてゐた吉田先生の新著が出た。前著の『言問ふ葦』に載せられなかつたものや、それ以後のものをまとめられたもので、その舌鋒は相変はらず鋭い。
まづ取り上げられたのが、戦後の占領政策WGIP(戦争犯罪刷り込み政策)である。戦争の責任を一方的に日本人に着せ、その世界観を日本人に植ゑ付けるあらゆる分野の計画である。もちろん、日本国憲法制定はその端緒であるから、吉田先生もその成立過程やそこに込められた誤つた認識について徹底的に批判する。そのことについては文章に書かれただけでなく宮崎県内で30回以上講演をされたともいふ。素直な県民性だから、真実を聞けばなるほどと理解をしてくれる。まさに、教育が反日本人をつくり、教育がそれを正常化する。教育の力を見せつける逸話でもある。
ところどころに彼我の賢人の言葉が差し込まれる。フランス文学が御専門の吉田先生だけに、特にパスカルの言葉が箴言のやうに響いてきた。また、私にも馴染みのある福田恆存や松原正の言葉も何度となく引用されるが、なるほどそんなことを書いてゐたなだとか、さういふことを意味してゐたのかといふ感慨があつて、吉田先生の読みの深さに圧倒された。
また、発表時の文章にはすべて「付記」が寄せられてをり、中には「付記の付記」」さらには「付記の付記の付記」まであつて、現在の心境やらその時の背景やら、後日談やらが書かれてゐて面白い。
かういふ先生の授業が面白くないはずはなく、宮崎大学には残念に思ふ学生も多いだらう。そして何より県民はかういふオピニオンリーダーが県を代表する国立大学から去つてしまふことを残念に思ふに違ひない。地元紙「宮崎日日新聞」は、地元情報には溢れてゐるが、どう見ても左向きであり、体制批判をすることがジャーナリズムだと考へる旧態依然のジャーナリズム観で凝り固まつてゐる。そんな中で吉田先生の発言がとても貴重であつた。元県民であり、家内の家が今でもそこにあり、そして何より天孫降臨の地である宮崎にあつて吉田先生の存在は貴重であると私は思つてゐる。
これからもコラムは書かれるだらうから、時に県民の正論を支へてくれるだらうが、今後は全国的な発言から県民への刺戟をし続けてもらひたい。
お疲れさまでした。そして、ありがたうございました。