小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

マイクロソフト君、アップグレードの押しつけは犯罪行為ですよ

2016年05月24日 00時17分51秒 | 社会評論




 世界中でもうたくさんの人が経験しているでしょうが、ここのところ数か月、ずっと、マイクロソフト社のOS「ウィンドウズ」のユーザーに対して、「ウィンドウズ10へのアップグレードが無料でできます」というメッセージが画面を占領し、何度×をつけてもしつこく繰り返されてきました。それが次第にエスカレートし、今では日を指定して勝手にアップグレードしてしまうようになっています。その日付も画面上では気づきにくく、しかもPCを開いていなければ気づきようがありません。朝起きてみたらいつの間にか10に変わっていたといった声も多く聞かれます。今日(5月23日)のNHKニュースウェブでも取り上げられていましたね。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160519/k10010527561000.html

 私の場合、8.1を使っているのですが、つい先日、いきなり画面を占領され、一方的に「アップグレードします」と宣告されました。その画面が出ている間、他の画面への移行がまったくできません。しかし「拒否しますか?」というボタンがあるので、もちろんそれを押しました。するともう一度「ほんとうに拒否しますか?」と出たので、やはりそれを押しました。そうしたら起動時の画面に変わり、「数回の再起動が必要です」と出ました。そしてインターネットとの接続が断たれたのです。ちょうど数あるメールを読み込んでいる最中でした。(このあたり、あまりPCに強くないので、このとおりの経過ではなかったかもしれません。)
 これまでもアップグレードのメッセージが出るたびにけっこうイライラしていたのですが、ネットにつながらないとあってはそのイライラもいっそう募ります。いくら再起動を繰り返してもつながらないので、電話で知人に尋ねたところ、画面右下のタスクバーに、PCそのものがネットとの連結を断たれていることを示す「インターネットアクセス」というアイコンが出ているからそこをクリックしてつなぎ直す必要があると教えてくれました。で、その通りにすると、右側から「ネットワーク」の画面が出ます。接続環境を示すいくつかの記号が並んでいます。これは自分が直接使用しているものだけでなく、近所で使われているものまで拾ってしまうそうですね。私はWifiを使っているので、それに適合する記号を記憶の中から何とか呼び出し、それをクリックしました。すると今度は、「セキュリティキー」を打ち込まなくてはならなくなりました。セキュリティキー、セキュリティキー、ええっとどこに記録してあったんだっけ。Wifiをいじくりまわしてもなかなか出ません。説明書にノートしておかなかったっけ? 引っ越しの際にどこかに紛れていくら探しても出てこない(イライラ絶頂)。
 あれこれやっているうちに、ようやくWifiの中に記録されている場所を見つけました。これでようやくネットにつなげることができたのです。見つけてみると「なあんだ」という話なのですが、しかし日ごろこの種の操作をやりつけていないと、すぐにはわからないですよね。おまけに私はPCを始めたのも遅く、しかも高齢者です。私のような人も世の中にはわんさかいるはず。とにかくマイクロ君の押し売りまがい、ストーカーまがいの行為のせいで悪戦苦闘すること2時間、これだけの労働時間をマイクロ君に収奪されたわけです。
 慣れている人なら、こんな悪戦苦闘はお笑いに属するのかもしれません。しかしユーザーの誰もがそんなに慣れているわけはない。困っている人、怒っている人もたくさんいるでしょう。
 ともかく私は、このあこぎなやり方が頭にきたので、多くの被害者がいるに違いないと思い、ネットで調べ、人にも聞いてみました。そうしたら案の定、出てくるわ、出てくるわ。ネットからは一つだけ不満が満載されているサイトを紹介しておきます。
http://togetter.com/li/976577

 人から聞いた話をまとめます。

仝鼎ぅ僖愁灰鵑鮖箸辰討い燭、10に変えたらまったく操作不能になり、近所の電気屋さんで調べてもらったら、修復不能と言われ、新しいのに買い替えなくてはならなかった。
△△泙蟯誘がしつこいのでつい10に変えたら、使い勝手が違い、慣れることができず変えたことを後悔している。
7や8.1との互換性が低く、これまで使っていた周辺機器との接続ができなくなった。
て韻犬、これまで使えたソフトが使えなくなった。


 私などはまだまだ軽傷で済みました。いずれにしても、これは悪徳商法であり犯罪行為です。いくら無料といっても現に取り返しのつかない被害をこんなに広汎に及ぼしているのですから。
 コンピュータをめぐるトラブルはこれまで数限りなくありましたね。「ヘルプ」などは全然役に立たず、用語からして素人にはわからない。ITに詳しい若い知人・友人がいればいいけれど、いない人はどうすればいいのか。また仮にいたとしても、相手も忙しかったり、時間帯が遅かったりしたら、そうそう気安く人に相談するわけにもいかないでしょう。SEに頼んだら大金を取られるでしょうし、頼んでもなかなか来てくれない。締め切りのある仕事を抱えている人がごまんといるのに、いったいこの体制の不備は何なんだと。
 それでもユーザーは、涙ぐましい苦労を重ねた上で何とか乗り切ってきたのです。複数のベテラン・ユーザーから、「コンピュータは欠陥商品です」というのを聞いたことがあります。安くないお金をかけて買ったのにどう使いこなしてよいかなかなかわからず、ごく普通の消費者に大きな努力を強いたり、いたずらに神経を消耗させるような商品は、明らかに欠陥商品ですね。にもかかわらず、必要上やむを得ないということで、私たちは我慢に我慢を重ね、やっとそこそこ使いこなせるようになったのです。
 それにしても、マイクロ君のこのたびのやり口は度を越しています。こういうことをやって平然としているマイクロ君は、商いというものの基本精神がまったくわかっていません。先述のNHKニュースウェブには、当のマイクロソフト社の担当者の弁が出てきます。

今回の騒動について、日本マイクロソフトの担当者は、無償期間の終了が迫っていることから、通知画面を変更したことが理由ではないかと話しています。
通知画面は5月13日に変更されました。この変更によって画面には「Windows10はこのPCで推奨される更新プログラムです。このPCは次の予定でアップグレードされます」などと表示され、併せてアップグレードが実行される日時が示されるようになりました。
最近この画面を見た人も多いのではないでしょうか。中には、あとでアップグレードしようと思い、右上の「×」印をクリックして表示を消した人もいるかもしれません。
しかし、マイクロソフトによりますと、この操作だけでは、通知画面が消えただけで、予定をキャンセルしたことにはならないということです。そのため、利用者の思わぬ形でアップグレードされるという事態が起きているというのです。


 本当にこのとおりだとしたら、開いた口が塞がりません。これではまるで、いいものを勧めてやっているんだから、きちんと認知して理解しないお前らのほうが悪いと言っているようではありませんか。こういうことを平然と言い放つ担当者は、傲慢そのものです。商品を売る人が顧客に対してわきまえるべき反省点が何も備わっていないのです。反省点とは、
10が果たして普通のユーザーにとって本当にいい商品なのかをまったく疑っていない。
⊆分で勝手に通知画面を変更しておきながら、「理由ではないか」とは何事か。まず不手際を詫びるべきではないか。
「この操作だけでは、予定をキャンセルしたことにはならない」などと澄まして説明する前に、「宣伝に行き過ぎた点がありました」と頭を下げるべきではないか。
ぅ▲奪廛哀譟璽匹悗陵尭海鬚匹鵑匹鵐┘好レートさせて強制的なところにまでたどり着いた結果として混乱した事態が起きているのに、その点について何も触れていず、まるで他人事のように、×をつけたユーザーの理解不十分が混乱の原因だと言っているかのようである。

 車や家電製品に少しでも欠陥が見つかれば直ちにリコールになり、しかもその企業は一気に評判を落とすのに、電子情報産業には、こうした顧客第一を考える商習慣がまったく身についていないようです。誰か訴訟を起こしてもよさそうな事態なのに、受ける側も、とにかく新しい世界なので「自分がマスターできていないのが悪い」と殊勝にも考えてしまうのでしょうか。しかし我慢せずに憤りを率直に表現すべきだと思います。
 ところで、マイクロ君はなぜこんな強引な商法に打って出たのか。以下の資料によると、これまでのいくつものヴァージョンで成功と失敗を繰り返してきたマイクロ君は、7が成功したのに8で失敗したために、7の次世代版を狙って10で起死回生を試みようとしているということのようです。ところが7の人気は根強く今でも約半分のシェアを占めるのに、10はせいぜい15%、そこで期限付き(2016年7月まで)無料アップグレードを続けることで一気にシェアを拡大させようという魂胆らしい。しかし無料期間が終わったら果たして多くのユーザーが更新するかどうかは未知数だと、この資料の著者も言っています。
http://potato.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1456187443/

 何よりも、こういう調子でユーザーの意向を無視したくるくる変える強引な商法を続けていく限り、遠からぬうちに7や8の対応商品はもう打ち切りですということにするに決まっています。「技術革新」という信仰に取りつかれて、多様な顧客の気持ちに配慮することを忘れてしまったマイクロ君。君には職業倫理というものがないのか。「三方よし」の近江商人をちっとは見習うといい。
 とにかくこんなことを続けていると、そのうち愛想を尽かされて、じゃあいっそアップルに変えようという人が大量に出てくる可能性がありますよ。特に日本では私のような高齢者のユーザーがこれからますます増えるでしょうから、若い人だけをターゲットにしたこんな変化のスピードにはもうとてもついていけないと感じるようになるでしょう。悪徳商法から早く足を洗った方が身のためだと思いますけれどね。少なくとも私は、使い慣れた今のOSを変える気はまったくありません。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

日本人よ、国連信仰から脱却せよ(その2)

2016年04月29日 17時58分33秒 | 政治

      



(その2)を書く気はなかったのですが、短い間に情勢が変化したので、追加します。
 4月23日付の当ブログ「日本人よ、国連信仰から脱却せよ」の冒頭部分で、筆者は次のように書きました。
http://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo/e/eb32263d8947a1441f600f23425f0fa5

 2016年4月19日、国連人権理事会の特別報告者、デービッド・ケイなる人物が記者会見し、「>日本の報道の独立性は(政府の圧力によって)重大な脅威にさらされている」と述べました(産経新聞4月23日付)。この人物は、国会議員や報道機関関係者、NGO関係者らの話を聞いてこう判断したそうですが、いったい誰に聞いたんでしょうね。だいたい想像はつきますが、それにしても、この発言の、実態とのあまりの乖離ぶりと、その質の低さには思わずのけぞってしまいます。日本ほど言論や報道の自由が許されている国が世界のどこにありましょうか。

 しかしその後、ケイ氏が記者会見で、単に政府の圧力による報道機関の危機を訴えただけではなく、日本のマスコミの政府からの非自立的な姿勢を批判し、記者クラブの廃止や報道監視のための独立機関の設立をを提案していることを知りました。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20160426-00057026/
 このケイ氏の提案に関しては、それが報道関係者の責任をより強く自覚させる効果を持つことを保証するものであるかぎりにおいて、ほぼ支持することができます。日本のマスコミは、たしかに右から左まで、だらしない御用マスコミと化している側面(たとえば消費増税肯定、大本営発表的な景気判断の垂れ流し、TPPや規制緩和路線に対する無批判、財務省発「国の借金一千兆円」説のデマのしつこい流布)を否定できず、インターネット上においてたびたびその姿勢を批判されているからです。しかもこの部分は、大部分のマスコミが意図的に報道しなかったようですが、それは事実報道を使命とする報道機関として許されてはならないことです。
 以上の点について、上記引用部分には、産経新聞の記事を鵜呑みにして論じた筆者の軽率ぶりがうかがえます。すでに公開した記事なので削除はしませんが、この場で新たに、引用部分のように安易には決めつけられないことを表明し、読者のみなさまにお詫び申し上げます。

 そのうえで、国連の人権理事会その他機関のこの種の日本への干渉が最近とみに目立ち、その背景に中共、韓国、および日本の反日勢力の存在があるに違いないという筆者の確信に関しては、ここで改めて強調しておきたいと思います。たとえば先の記者会見記事によると、ケイ氏は同時に放送法第四条の廃止を提案していますが、この提案は、明らかに度を越した内政干渉(余計なおせっかい)であり、国家主権を脅かすものです。なぜならば、放送法第四条は誰が読んでも、この国の秩序と平和を維持するために、放送機関が持つべき当然の責任と倫理を課したものであり、憲法第12条後段の「又、国民は、これ(国民の自由及び権利――引用者注)を濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」という規定を放送機関にそのまま適用したものだからです。

放送法第四条第一項:
放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 こういう倫理規範が国家の名で謳われていることは非常に大切であるにもかかわらず、その廃止をなぜケイ氏は主張するのか。ここからは筆者の想像になりますが、国連人権理事会なる機関が、おおむね三つの力学のアマルガムをその中核の精神としているからだと思われます。
 一つは、個人や民間組織の自由・権利を至高のものとして掲げる欧米的な理念の力、二つ目は、マイノリティ尊重という建前に立った多文化主義の力、そして三つ目は、これらをひそかに利用して日本の統治を弱体化させようとする中、韓、国内反日勢力です。最後のものについては、前期記事で詳しく述べたとおりです。第一と第二の力だけを国連の理想として崇めると、そこに第三の力が強力にはたらいていることが見えなくなり、お人好しニッポンはじわじわと自分の国の主権を侵害されていくのを拱手傍観していることになるわけです。
 次のような情報に接しました。これもネット上で大きく話題にされているようです。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/04/27/united-nation-okinawa-native_n_9791804.html

これまでに国連の人種差別撤廃委員会などは、沖縄の人々を先住民族として認め、土地や天然資源に対する権利を保障するよう日本政府に法改正を求めている。2014年8月には「沖縄の人々は先住民族」として、その権利を保護するよう勧告する「最終見解」を採択した。
これについて宮崎氏(自民党議員――引用者注)は「国益に関わる大きなリスクだ。尖閣諸島を含む沖縄の土地や天然資源が、どこに帰属するのかを問題にされかねない話だ」と批判。「多くの沖縄県民は先住民族だと思っていません。誠に失礼な話だと思う。民族分断工作と言ってもいいようなことを放置しないでほしい」と政府への対応を求めた。
外務省の飯島俊郎参事官は「政府として先住民族として認識しているのは、アイヌの人々以外には存在いたしません。これら(国連の)委員会による最終見解や勧告などによって、日本の立場が変更されたということはございません」と答弁した。
また木原・外務副大臣は、沖縄県・豊見城市議会が国連勧告撤回を求める意見書を採択したことに触れ「政府の立場と異なる勧告や、実情を反映していない意見については、事実上の撤回や修正をするよう働きかけていきたい」と述べた。


 いかがですか。ここで宮崎議員が「民族分断工作」と述べているその主体がだれ(どこの国)を指しているかは言うまでもないでしょう。国連は、明らかにこの勢力に加担しているのです。その国が尖閣のみならず、次なる目標として沖縄の領有を狙っていることは、しきりに問題にされています。真偽のほどは定かではありませんが、その国の外務省から流出したとされる地図を以下に掲げておきましょう。これもネットで評判になっていますね。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-4980.html
【中国2050年の戦略地図】



 それにしても、外務省の答弁も一応優等生的に答えてはいるものの、本当にやる気があるのかどうか、この官庁のこれまでの姿勢から推して、はなはだ心もとないと言わざるを得ません。なぜ「働きかけていきたい」などと弱腰の表現で済ませて、「断固撤回するよう、強く要求していく」と言えないのでしょうか。
 以上によって、国連が「ちょろい」日本をいかに舐めてかかっているか、そうしてその姿勢を利用する反日勢力がいかに狡猾に「戦勝国包囲網」を作り上げようとしているかが明らかになったと思います。繰り返しますが、私たちは、偉そうな「上から目線」で日本にあれこれ提案したり要求したりしてくる国連の言うことを、けっしてまともに受け入れてはなりません。臨機応変につきあっておく必要はあるでしょうが、わが国の国益は国連の勧告などより常に先立つのだということをよくよく肝に銘じましょう。






コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ケント・ギルバート氏と対談しました

2016年04月25日 14時25分45秒 | お知らせ
ケント・ギルバート氏と東アジアの安全保障について対談しました。

全文を以下のURLで読むことができます。
http://shuchi.php.co.jp/voice/detail/2980

以下の本にも収録されています。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

日本人よ、国連信仰から脱却せよ

2016年04月23日 22時46分39秒 | 政治

        



 2016年4月19日、国連人権理事会の特別報告者、デービッド・ケイなる人物が記者会見し、「>日本の報道の独立性は(政府の圧力によって)重大な脅威にさらされている」と述べました(産経新聞4月23日付)。この人物は、国会議員や報道機関関係者、NGO関係者らの話を聞いてこう判断したそうですが、いったい誰に聞いたんでしょうね。だいたい想像はつきますが、それにしても、この発言の、実態とのあまりの乖離ぶりと、その質の低さには思わずのけぞってしまいます。日本ほど言論や報道の自由が許されている国が世界のどこにありましょうか。許され過ぎて、まさに反日パヨクによる偏向言論や偏向報道が思うざまのさばっているではありませんか。
 申すまでもなく、これは2016年2月に高市早苗総務相が国会で、放送法第四条と電波法第七六条に関わる発言をして物議をかもしたことに関わっています。反日左派メディアはいっせいにこの発言を歪曲して伝え、岸井成格氏、鳥越俊太郎氏、田原総一郎氏ら「有名」ジャーナリストが大慌てで記者会見を開き、高市発言は報道の自由を侵すものだと騒ぎ立てました。この人たちは、しょっちゅう偏向報道をやってきたくせに、その反省もなく、自分たちの活動に少しばかり言及されると、たちまちわがままなガキみたいに被害妄想ぶりを発揮します。まさにマスメディアの腐敗の象徴です。
 ところで、実際の高市氏の発言を議事録で読むと(http://theplatnews.com/p=1011
)、民主党(当時)議員のしつこい誘導尋問に対して、「行政が何度要請してもまったく改善しない放送局に、何の対応もしないとは約束できない。将来にわたり可能性がまったくないとは言えない」と答えているだけで、公正中立を守るべきだという電波法の当然の原則に忠実に従ったものにすぎません。これがどうして「報道の独立性は重大な脅威にさらされている」ことになるのか。
 国連人権理事会はいったい何を狙っているのでしょう。当然背後には中共の影が彷彿とします。蟹は己れの甲羅に似せて穴を掘ると言います。「重大な脅威にさらされ」つづけてきたのはもちろん中共政府に批判的なジャーナリストですから、ケイ氏はおそらく中共政府筋からの何らかの圧力のもとに、中共の実態と日本の実態とを意識的に一緒くたにしているのでしょう。そうではなくて、もし自主的にそうしたのだとしたら、日本の現実を何も知らないアホとしか言いようがありません。

 ところで、この間の国連の日本に対する言いがかりの連発には、目に余るものがありますね。列挙してみましょう。

,い錣罎襦崙邉大虐殺」資料のユネスコ記憶遺産登録。
⊇子差別撤廃委員会が、慰安婦問題に対して金銭賠償や公式謝罪を含む「完全かつ効果的な賠償」を求めたこと。
F碓儖会が2016年3月7日の最終報告において、日本の最高裁が下した「夫婦同姓は合憲」判決に対して、女性差別であるとの見解を表明したこと。
て碓儖会が同じく最終報告で、「女性は離婚後六か月間再婚できない」という民法の規定に最高裁が下した「百日を超えて再婚を禁止するのは違憲」なる緩和判断に対して、これも女性差別であるとの見解を表明したこと。
テ碓儖会の最終報告案に、皇位継承権が男系男子だけにあるのは女性差別であるとの見解が含まれていたこと
(日本側の抗議により削除)。

 これらについての詳しい説明と批判については拙著『デタラメが世界を動かしている』(PHP研究所)をお読みください。
 さて何よりも問題なのは、国連という機関が、その世界普遍性の装いを傘に着て、言いたい放題をやっていること、そうしてそれに対して日本(特に外務省)が何も有効な反撃対策を打っていないことです。こういう問題に時間と金を費やすことは、中共などの情報戦・歴史戦に対抗して国家主権を守るために非常に大切なのですが、外(害)務省は一貫して事なかれ主義を決め込んでいます。
 しかし事態をよく見れば(よく見なくても)、ここのところ、国連という組織の「人権派」が、世界に対して、「人権の尊重されていない国・日本」「歴史修正主義者・安倍に支配されている国」というイメージをことあるごとにアピールしようとしていることは歴然としています。
 それもそのはず、国際連合(United Nations)とはもともと第二次世界大戦の戦勝国である連合国を意味する言葉であり、「国際(International)」という意味合いは入っていません。そこに大戦後、中国内戦で蒋介石の中華民国を破った毛沢東の中華人民共和国がただ乗りして、自分たちも日本に対する戦勝国であると詐称しているわけです。
 また国連憲章にはいまだに第53条と第107条の「敵国条項」というのが残されています。死文化しているという人もいますが、けっしてそうではありません。情勢次第で、これは大いに利用できるのです。たとえば53条によれば、「敵国」日本が覇権主義を再現することがあると、安保理の決定を待たずして制裁戦争を起こすことができます。さらに107条は戦後の過渡的期間に行なった占領統治などの措置についての規定ですが、「過渡的期間」がいつまでを指すのかあいまいで、見方によっては永久にそう見なすこともできるのです。
 そこで、たとえば中共が、日本を覇権主義国家と決めつけて制裁戦争の名目で侵略することもできるわけですし、その過程で日本を制覇すれば、元から軍国主義国家だった日本を占領統治すると称して、その「過渡的期間」をアメリカに代わってずっと続けるという想定も成り立つわけです。覇権を後退させて中共と本気で闘う気のないアメリカが、「うん、それじゃ日本は君に任せるよ、東アジアで仲良くやってね」と言い出さないとも限りません。こういうことをやくざ国家・中共は必ず考慮に入れていると私は思います。
 ですから、外務省はまずこの「敵国条項」の削除を真っ先に国連に要求すべきなのですが、そういうはたらきかけをしている気配は一向にありません。

 外務省はまさに国際社会に対する日本人の外向きの顔を象徴しています。大方の日本人は「何となく」、国際連合というのは国家よりも上位にあって、どんな場合にも中立的な立場から国際紛争を調停する機関だと考えているようですが、それは大きな間違いです。その何よりの証拠に、これだけの大国になっている日本やドイツはいまだに常任理事国入りを許されていませんね。
 国連は、世界平和を実現するという建前を取っていながら、じつは戦勝国(詐称している中共や、戦中まで日本の一部であったはずの韓国も含む)の国益に叶うならいくらでも利用されうるし、彼らが国益に叶わないとみなすなら何の意味もない無力な機関です。韓国人である潘基文事務総長自身が、国連は別に中立的な機関ではないと言明しているのです。
 その国連に日本は膨大な金を払っています。それなのに、ユネスコ、人権理事会、その傘下にある女性差別撤廃委員会など、国連の重要機関に勝手なことをさせておいてよいのでしょうか。これらは、国家の上位にある組織でも何でもなく、ただ特定の野心をもった国々にとって利用価値のある単なる圧力団体にすぎません。今回の一連の日本非難をきっかけとして、日本人はそのことをはっきりと悟るべきなのです。
 私は、あの松岡洋右のように、そんな腐敗した敵対的な組織ならさっさと脱退してしまえなどと短気なことを勧めているのではありません。孤立はかえってよくない。お金をたくさん払っている以上、株主と同じように大きな発言権を持つのは当然です。わが国に対して不当なことをしている中共、韓国、それを許しているアメリカをはじめとした先進各国に、その不当さを大きな声で訴えていくべきだと言いたいのです。
 他の国が普通にやっているように、何であれ利用価値のある国際組織や国際機関は大いに利用すべきです。それは、仮想敵国・中共の露骨な膨張主義を抑止するために、それを警戒している同盟国アメリカや、外交のもっていきかた次第でこちらになびく可能性もあるロシアをうまく利用すべきであるのと同じです。
 日本人よ、国連が国際紛争を解決し、世界平和を希求する理想的な機関だなどという幻想から一刻も早く目覚め、その実態を正しく値踏みするようにしましょう。



コメント (4)
この記事をはてなブックマークに追加

『デタラメが世界を動かしている』もうすぐ発売!

2016年04月19日 21時17分53秒 | お知らせ
拙著『デタラメが世界を動かしている』(PHP研究所)が、23日に発売になります。
全国書店、ネット書店で予約受付中。 定価1700円(本体) 384ページ


">



【内容紹介】
ここ数年、いや、この半年だけを振り返ってみても、国内外の政治、経済、社会の動きには、どうにも解せないものが多い。それらの事象に対するメディアや知識人の「解説」にいたっては、なおさらの感がある。
2015年末に突如として発表された「日韓合意」、国連が日本に仕掛ける情報戦(歴史戦)、「グローバリズム」「国際平和」への妄信、海外要因にもかかわらず下がり続ける日経平均株価、不透明なTPP、既成事実であるかのように語られる消費増税、労働者派遣法改革、英語公用語化、発送電分離、くすぶる反原発ムード……。
かくも数多くのデタラメが現実に進行しているわけだが、それをただ愚劣だと笑って済ませるわけにはいかない。これらが愚劣どころか、日本国民にいかなる災難をもたらしかねないかを、客観的なデータを用いながら、「国民目線」でわかりやすく解説する。ケント・ギルバート氏とのガチンコ対談「日本外交というデタラメ」も収録!


【目次】
    はじめに 
    第一章 歴史認識というデタラメ
    第二章 アベノミクスというデタラメ
    第三章 グローバリズムというデタラメ
    第四章 国際平和というデタラメ
    第五章 デモクラシー(民衆支配)というデタラメ
    第六章 反原発というデタラメ
    第七章 戦後知識人というデタラメ
    第八章 日本外交というデタラメ(ケント・ギルバート氏とのガチンコ対談)
    終 章 絶望の中をそれでも生きる――あとがきに代えて


【「はじめに」より抜粋】

  いま一般の日本人の多くは、「何となく」次のように信じているのではないでしょうか。

   崙韓合意」はまあよかった。
  ◆崙邉大虐殺」はほぼ史実に近い。
  生活は苦しくなっているが、ほかに代わりがいないから安倍政権を支持するしかない。
  い海里泙泙世塙颪亮擽發かさんで日本は財政破綻するから消費増税はやむを得ない。
  テ本はこれから人口減だしモノがあり余っているから、需要はもう伸びないだろう。
  Ψ糞い稜箸賄係の変化のようなものだから、日和を待つしかない。
  Ф睛惨墨造肇泪ぅ淵攻睛政策を続けていれば、いつかデフレから脱却できる。
  ┰性も男性とまったく平等に社会で活躍すべきだ。
  TPPに代表される自由貿易の拡大はよいことだ。
  自由競争を阻害する規制は壊すべきだ。
  失業率が下がっているようだから雇用はかなり改善されつつある。
  人口減で人手不足なら労働移民拡大もやむを得ない。
  日本の農業は補助金漬けだ。農協をつぶして農業を新しくビジネスとしてとらえ直すべきだ。
  英語教育を強化しないとグローバル社会の競争に勝てない。
  電力自由化は避けられない流れだ。
  娃釘佞呂海譴らもそのまま存続するだろうし、存続させるべきだ。
  吋謄蹐論簑个傍されない。
  下由、平等、博愛という近代的価値は普遍的だ
  撹鷲戮粒丙垢六駛楴腟措匆颪任△覦幣紂∋妬がない。
  潅羚颪汎本は、対話を通して仲良くすべきだ。
  ㉑中国の市場は巨大で魅力がある。
  ㉒国会議員の定数は削減すべきだ。
  ㉓一票の格差は是正されるべきだ。
  ㉔日本の民主主義はまあ安定している。
  ㉕婚外子にも平等な相続権がある。
  ㉖原発は危険だから、再生可能エネルギーに転換していくべきだ。
  ㉗知識人は学識があるのだから、彼らの言うことはまあ信用しておこう。

  この本では、これらがすべて誤りであるか、または浅薄な考えであることを明らかにします。なお、なに
 ぶん問題が多岐に渡っていますので、すべてを読み通すのがかったるいと感じられた方は、関心のある章を
 選んで読んでいただいてもけっこうです。
コメント (6)
この記事をはてなブックマークに追加

パナマ文書問題を論じて「新々三本の矢」を提案す(その2)

2016年04月15日 14時02分31秒 | 経済

        




 前回、陰謀論合戦がこの稿の目的ではないと述べました。今回は初めに、陰謀論合戦にはあまり意味がないと私が感じているその理由について簡単に述べます。推理小説ファンやスパイ小説ファンの方には申し訳ありませんが。
 まず私には、どういう力がどのように作用してこうした結果を生んだのかということについて、たしかなことを言えるインテリジェンスの持ち合わせがありません。
 それに、そもそも陰謀論は、一つの明確な目的意識を持った有力な人物や組織や勢力がその目的を達するためにあることを目論んで、そのとおりの結果を生み出したという前提に立っていますが、この前提自体が疑わしい。
 世界の動きは、恐ろしく多元的な作用の交錯によって一つの結果を生むので、本当は、私たちの一元的な因果的思考(の組み合わせ)を超えているところがあります。陰謀を仕組んでもその実現のプロセスで思わぬ作用が入り込んできて反対の結果になってしまったとか、思わぬ方向に展開してしまったいうような例は、歴史上いくらもあるでしょう。
 ところで今回の騒ぎで危惧されるのは、アメリカ(や日本)以外の著名な政治家の名前がこれだけ出ることによって、世界の関心が、この驚くべきスキャンダルに対する関係者の直接的な対処や、分析家の謎解きや、各国の感情的一時的な反政府デモなどに集中してしまうことです。なぜなら、そういうことに関心が終始することによって、本当の問題への目がそらされてしまいかねないからです。
 本当の問題とは何か。
 言うまでもなく、世界のグローバル資本が想像も絶するほどの巨額の資金をタックスヘイヴンにプールして税金逃れをやっているというわかりやすい事実です。これは明らかに、国家の財布を貧しくして、そのツケを増税や福祉削減などのかたちで、富裕層でない一般国民に押し付けていることを意味します。グローバル資本は自国の国益のことなどまったく考えていませんから、この歯止めの利かない流れが続く限り、近代国家の防壁と秩序は崩され、貧富の格差はますます開き、大多数の国民は貧困化していくでしょう。
 今回のパナマ文書には、日本の一部上場企業時価総額上位五十社のうち、四十五社までが記載されているという情報もあります。電通、ユニクロ、ソフトバンク、楽天、バンダイ、三菱商事、三井物産、三井住友FG、みずほFG……。これ自体は、どうやらガセネタの可能性が高いようですが、ICIJは五月に日本の企業名も発表すると言っているそうなので、いずれ真偽のほどは明らかとなるでしょう。しかしいずれにしても、火のない所に煙は立たぬ、タックスヘイヴンは、何もパナマやヴァージン諸島だけではなく、世界中にいくらでもありますから、日本のグローバル企業がこれを大いに利用していないはずはありません。
 井上伸氏の次のブログに書かれていることは、かなり信頼がおけます。ここには、タックスヘイヴンとして有名なケイマン諸島における日本企業の投資総額についてのグラフ、および、これに正しく課税すれば消費税が不必要になる事実についての記述があります。ケイマン諸島への投資額については、日本銀行の「直接投資・証券投資等残高地域別統計」という公式サイトに掲載されている数字にもとづいています。
http://editor.fem.jp/blog/?p=1969(井上伸ブログ)
【グラフ】


(ポインターを当ててクリックすると拡大できます。)

【記述】
 このケイマン諸島で税金逃れした60兆9280億円に、現時点の法人税率23.9%を課すとすると、14兆5617億円の税収が生まれることになります(中略)。増税前の消費税率5%のときは、消費税の税収は10兆円程度でした。消費税率8%になって直近の2016年度予算で消費税の税収は17兆1850億円です。これに対して、大企業のケイマン諸島のみで14兆5617億円の税収が生まれるので、これに加えて、ケイマン諸島での富裕層の税逃れと、ケイマン諸島以外での大企業と富裕層のタックスヘイブンでの税逃れ(中略)を加えれば、現在の消費税率8%の税収をも上回ると考えられるのではないでしょうか?
 そうだとすると、庶民には到底活用など不可能なタックスヘイブンにおける大企業・富裕層の税逃れをなくすだけで、消費税そのものを廃止することができるのです。これが当たり前の「公正な社会」ではないでしょうか?


日本銀行【直接投資・証券投資等残高地域別統計】
https://www.boj.or.jp/statistics/br/bop/index.htm/

 おまけに、経団連など財界は、政府に、自分たちがろくに払ってもいない法人税の減税を要求しています。これは減税すれば日本で生産してやるという条件提示と、外資を呼び込みやすくする規制緩和との二つの意味がありますが、前者は当てにならない単なる脅しであり、デフレ脱却ができていない現在では、実際には浮いた部分、内部留保を増やすだけでしょう。また後者は、TPPと同じように、日本の農業、医療、保険など、国民生活にとってなくてはならない分野の安全保障を根底から脅かすことになります。
 こうしてタックスヘイヴン問題は、じつはナショナリズム(国民主義)に対するグローバリズムの経済的な侵略以外の何ものでもないのです。
 タックスヘイヴンは一応合法的ですから、個々の企業を道徳的に非難してもあまり意味はありません。要は法制度の問題です。財務省が一般国民を苦しめる消費増税に固執することをやめ、政策の矛先をタックスヘイヴンに対する厳しい規制に向けかえればよいのです。先述のように、二〇一四年七月から米政府のFATCAが実施に移されているので、日本もこれに積極的に協力して、グローバル企業からの徴税の道筋をぜひともつけるべきです。
 これによって、国民の消費性向は強まり内需が高まりますから、企業もデフレマインドから目覚めて国内向けの投資を増やすようになるでしょう。そうすればGDPの成長率は期待どおり伸び、税収も余裕で確保できます。
 もちろん、企業の国内投資を牽引するために、政府が新幹線網、高速道路網などのインフラ整備を中心とした大幅な財政出動をすべきであることは論を俟ちません。これは三橋貴明氏や藤井聡氏らが繰り返し説いているように、首都一極集中を避け、防災体制を固め、生産性を向上させ、疲弊した地方を甦らせることにも貢献します。
 アベノミクス三本の矢のうち、第一の矢である「大胆な金融政策」は、黒田バズーカとマイナス金利政策によって、もう十分すぎるくらい行われました。いま貸し出されない資金がすでにジャブジャブあり、長期国債の金利までがマイナスとなりました。政府はまさに財政出動に打って出るチャンスを手にしているのです。
 ちなみに、「新三本の矢」なるものは、安倍政権の経済政策の失敗を糊塗するためのものです。目的を掲げただけで、それを達成するための具体的な手段をなんら提示できていません。的と矢をはき違えているのですね。
 そこで、ここに真にデフレ脱却を果たすための「アベノミクス新々三本の矢」を提案します。

‐暖饒税の廃止、または5%への減税、最低でも凍結
20兆円規模の建設国債の発行によるインフラの整備
タックスヘイヴンへの投資の規制による適正な税の徴収

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

パナマ文書問題を論じて「新々三本の矢」を提案す(その1)

2016年04月12日 19時24分56秒 | 政治

      




 中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部文書が流出し、その中に世界の政府要人の関係者が含まれていたことで、大騒ぎになっていますね。キャメロン首相の亡父、プーチン大統領の友人、習近平国家主席の親族、ウクライナのポロシェンコ大統領自身、シリアのアサド大統領のいとこ、アルゼンチンのマクリ大統領自身、ブラジルの七つの政党の政治家、マレーシアのナシフ首相の息子等々、みんなみんなヴァージン諸島やパナマにペーパーカンパニーを作って「タックスヘイヴン」の利用者だったと。いやはやにぎやかなスキャンダルです。アイスランドの首相の辞任騒ぎまで起きました。
 この問題、これからも相当複雑な形で尾を引くことでしょう。
 ところですでにあちこちで言われていますが、これらの要人の中に米政府関係者や米国大企業主の名が一つも入っていない事実がまず疑問点として浮かび上がります。パナマやカリブ海諸国といえばアメリカの裏庭であり、米政府関係者やそれに近い大企業が最も数多く含まれていて当然と考えられるからです。事実、産経新聞二〇一六年四月七日付の記事によれば、「米メディアによると、問題の法律事務所は米国内(ネバダ州やワイオミング州)で千社以上の設立に関与していた。文書にはテロ資金に関わっている可能性もある会社も含まれ、司法当局は調査に着手した」とあります。
 これについては、当然、次のような推測が成り立ちます。すなわち、米政府筋はこの情報をリークした国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に初めから深く関与しており、それを利用して米国に敵対的または不服従的な国の威信を失墜させ、自国の覇権を回復する戦略的目的があったのだ、と。しかし、ロシア、中共、シリア、イスラム教国のマレーシアについてなら、そういう推測が成り立つ余地があることはわからないでもありませんが、ウクライナ(ポロシェンコ政権はアメリカが作ったようなものです)やアイスランドやブラジルやアルゼンチン、同盟国のイギリスまでが入っているとなると、首をかしげざるを得ません。もっとも、最近、イギリスは米国の言うことを聞かずに中共にばかりすり寄っているのは確かですが。
 とはいえ米国は、国内にすでにマネー・ロンダリングや租税回避のための地域をいくらも抱えており、わざわざパナマの地にペーパーカンパニーを作る必要はないのだという説もあります。
http://www.afpbb.com/articles/-/3083379?pid=0
 しかしこの説はにわかには信じ難い。たとえばタックスヘイヴンとして有名なケイマン諸島には、アメリカ企業が集中していて、世界第一位の巨額な資金をここにプールしています。アメリカ企業がパナマだけをはずす理由はありません。
 また社会分析家の高島康司氏によると、今から16か月前、パナマ文書はすでに独立系メディア「VICE」にその怪しい内情が報じられていましたが、一年前にある匿名の人物から南ドイツ新聞に21万4000社のリストが持ち込まれました。これとICIJとの協力によって、このたびのリークに至ったそうです。またICIJは、今後アメリカ企業の名も出てくるが政治家の名前は含まれていないと答えているそうです。
 氏はまた、ICIJの上部組織・アメリカの非営利の調査報道団体「センター・フォー・パブリック・インテグリティ(CPI)」による「組織犯罪と汚職の報告プロジェクト」の資金源を調べてみると、共和党や米国務省と深いつながりのある次のような提供者がはっきり記載されていると述べています。

フォード・ファウンデーション
カーネギー財団
ロックフェラー家財団
WKケロッグ・ファウンデーション
オープンソサエティー(ジョージ・ソロス設立)


 さらに、CPIは、米政府の海外援助を実施する合衆国国際開発庁(USAID)から直接資金の提供を受けているそうです。
http://www.mag2.com/p/money/9580
 アメリカは外交政策のためにさまざまなNGOを利用しており、たとえば「カラー革命」や「アラブの春」を引き起こすことに貢献したフリーダムハウスというNGOは、その活動資金を上記の団体から得ていたというのです。
 こうした事情から高島氏は、このたびのリークにも米政府の外交政策という目的が絡んでおり、その外交政策とは、ロシアと中共を牽制することによって、日米韓同盟による北朝鮮への攻撃を正当化することではないかと推定しています。
 この推定には一定の説得力があります。というのは、第一にアメリカは中東から手を引き、「リバランス」政策によってアジアの安全保障にその力をシフトさせることを建前上表明していますし、第二に、北朝鮮の相次ぐ暴発を、国連常任理事国や六か国協議によって消し止めることは、中共やロシアがいるかぎり不可能に近いからです。
 また、北朝鮮が新たなタックスヘイヴンになっているという情報もあります。
http://www.realinsight.tv/nishi/episode_3_rzcf4bq5/
 今回のリークは、二〇一四年七月から実施されているFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)によって租税回避を抑え込もうとする米政府の意志との間に整合性があるという見方も成り立ちます。外交面・経済政策面でほぼアメリカのいいなりになっている日本政府が、この騒ぎに対して口をつぐみ、文書を調査することは「考えていない」(菅官房長官)と表明していることも、高島説の妥当性を匂わせます。
 しかしここで疑問が湧いてきます。高島氏の説は、プーチン大統領が言っているのとだいたい同じ米政府陰謀論ということになりますが、それにしては、リークのされ方がナイーブすぎないでしょうか。というのは、現時点でアメリカ企業やアメリカ政治家の名前が一つも出ていないという状態に対しては、誰もが疑問を抱くに決まっているからです(現に抱かれています)。そうしてその疑問に対する答えも単純で、それは、米政府が自分の国のことは棚に上げてこの陰謀を仕組んだに違いないからだというものでしょう。
 しかしもし私が米政府の立場に立って陰謀を企むとしたら、権力中枢に致命的なダメージが及ばない限りで、アメリカの有力企業や有力政治家の名前をわざと公表させるでしょう。その方が、事実の公正な発表だという体裁が保てるからです。
 そこで、あえて別の陰謀論的仮説を出すなら、「ある匿名の人物」と南ドイツ新聞という左派系のメディア、およびICIJ(これも思想的には左派リベラルと考えていいでしょう)とが、いかにも米政府の陰謀らしく見せるような陰謀を仕組んだという見方も成り立つわけです。または、ここには、アメリカの政治的影響を排除したいドイツ(あるいはほぼ同じことですがEU)の思惑が何らかの形で絡んでいるとか。
 しかしじつは、この稿を起こした目的は、こうした陰謀論合戦をするところにあるのではありません。その本来の目的については次回に譲りましょう。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

もうすぐ新著を刊行します!

2016年03月29日 18時36分20秒 | お知らせ
『デタラメが世界を動かしている』
――「右も左も変!」と思う貴方に「知の武器」を贈ります――
     4月25日発売 PHP研究所 定価1700円(本体) 384ページ

   【目次】
    はじめに 
    第一章 歴史認識というデタラメ
    第二章 アベノミクスというデタラメ
    第三章 グローバリズムというデタラメ
    第四章 国際平和というデタラメ
    第五章 デモクラシー(民衆支配)というデタラメ
    第六章 反原発というデタラメ
    第七章 戦後知識人というデタラメ
    第八章 日本外交というデタラメ(ケント・ギルバート氏とのガチンコ対談)
    終 章 絶望の中をそれでも生きる――あとがきに代えて

 
コメント (4)
この記事をはてなブックマークに追加

やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その4)

2016年03月28日 02時04分03秒 | 政治
      





中国人は、厳しい大陸の環境で鍛えられた、強い個人主義、同族主義的な意識で自分たちを固めています。ですから、自分たちの利益になることは何でもします。役人の賄賂は当たり前で、そもそも中国語には賄賂に当たる言葉がないそうです。逆にわれに利あらずと見るや、責任などとらずに逃げ出してしまいます。党中央の周辺に群がる富裕層でも、人民元の価値が下がりそうだと踏めば、すぐにドルに換金して資本を国外に逃がしてしまいます。
また州政府も必ずしも中央政府に従順ではなく、じつは面従腹背、勝手に自分たちの地域を治めているようです。うまく一国にまとまりようがないのを、共産党政府が強権によって何とかまとめているのですが、その共産党の中でも熾烈な権力争いが絶えません。全人代には各地方の代表が集まってきますが、委員が演説をしていても、妙にひっそりしています。野次など飛ばす人はいません。それは、演説文があらかじめ配られていて、それを読めばいいので、音声を聞いても言葉が通じないからです。
さて、ここから美津島氏の問題提起の△紡海ます。もう一度書きます。

∧歇蘿匹琉貮瑤砲郎強い「中国経済崩壊待望論」は、その根に、にっくき強敵・中共が戦わずして滅んでくれないものかという脆弱な精神ならではの願望を隠し持っている証拠である。

 これはよく的を射ていますね。嫌中本はひところではないにしても相変わらずよく売れているようです。しかしここではまず、一般の中国人と権力を握っている中共政府とを分けて考える必要があるでしょう。「保守派の一部」にとっての「にっくき強敵・中共」とは、中国人一般ではなく、軍備拡張をどんどん行って膨張主義政策をとっている権力集団の中共政府です。これが戦わずして滅んでくれないかという願望を日本の保守派の一部が抱くのは、気持ちとしてはわかりますが、しかし、実際に中国経済が崩壊すると、国際社会全体に大きな悪影響をもたらすわけですから、一番困るのは周辺諸国です。つまり韓国であり北朝鮮であり日本です。
 中国のような巨大地域の経済および政治体制の崩壊(の危機)は、国内的には暴動や革命などによる政変のかたちをとるでしょう。あるいは戦国時代のように、いくつかの国に分裂するかもしれません。
こうなった時、周辺諸国、ことに我が国にはどういう形で火の粉が降りかかってくるでしょうか。第一に大量の流民、難民が押し寄せてくることです。第二には、切羽詰まった現政権が国内矛盾を糊塗するために、反日をさらに煽り、場合によっては人民の不満のエネルギーを戦争に向けて発散させる形をとることです。あるいは、人民軍が党の統制に従わなくなり、勝手に暴走するかもしれません。また、国内分裂の場合には、各地方に核施設があるので、核兵器使用の管理統制が効かなくなります
いずれにしても、私たちは中国経済の崩壊を「ざまあみろ」と喜ぶわけにはいかないのです。それどころか、いずれのシナリオを考えるにしても、いまの日本にはこの火の粉をきちんと振り払う力と心構えができていないという事実に戦慄すべきなのです。美津島氏が、保守派の一部の隠し持っている「脆弱な精神ならではの願望」を深刻な事態として憂慮するのは、こういうことを考えているからだと思われます。

対中共戦略についてまとめましょう。
私たちは最大のやくざ国家・中共の隣人として、絶妙なスタンスをとることを強いられているようです。

‘逎轡奮い悗凌略に対しては、アメリカの対抗措置をもっと実効性のあるものにするように促す。合わせて日本として可能な限りこれに呼応できる戦術を講じる。
一方で、アメリカの「リバランス」の限界をよくわきまえ、日本がアジアの平和を守る盟主として友好国に主体的に連帯を呼びかけ、集団安全保障体制を確立する。
また、中共の日本孤立化戦略に対抗するため、米露の媒介役として新しい日露外交を展開する。
ぃ咤庁卞りなど、国際金融市場の常識に反するアンフェアな経済戦略に対しては、そのルール違反の事実をことあるごとに国際社会に向けて発信していく。同時にAIIBによって集められた資金が軍備拡張に使われることの危険を訴えていく。
ッ羚餬从僂諒壊とその結果としての政変によって起こりうる事態に備えて、流民・難民対策の真剣な追求、国防予算の一層の拡充、そして場合によっては、アメリカとの緊密な協調の下に、核武装の可能性も模索する。


 だいぶ話がきな臭くなってきたと感じられた読者もいると思います。しかし国内統治や経済の内実がぼろぼろなくせに国外には見栄ばかり張って覇権国家たろうとしている中共に、中長期的な視野で対抗するためには、これらのことを本気で課題に上らせる必要があると思います。(この項おわり)
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その3)

2016年03月22日 19時44分31秒 | 経済

      





 この一、二年の中国経済の激しい減速については、すでにいろいろな数字や現象によって明らかになっています。それは田村秀男氏の指摘するとおり、不動産や設備への過剰投資による供給過多、金融バブルの崩壊、二千兆円を超える企業債務、輸入額の極端な落ち込みなどに現れています。ちなみに二〇一五年のGDP成長率の公式発表が6.9%とされていますが、これはデタラメで、実際にはマイナス成長だろうというのは、中国経済に関心のある人ならだれでも気づいていることです。
 中国のGDP成長率公式発表がデタラメだというと、近年の中国が急速に発展しその経済規模が日本を抜いて世界第二位にまで達したと聞かされている読者はいぶかしく思われるかもしれません。まずは中国の経済統計はまったくあてにならないという話を少しだけしましょう。
 これは、当の首相である李克強氏がそう発言していて、当てになるのは、鉄道貨物輸送量と電力使用量だと暴露しているのです。これらは生産と流通の実態を示しますから、ごまかしが効きません。もう一つごまかしが効かないのは、外国が相手である貿易額です。
 さて評論家の石平氏がある会合で語ったところによれば、二〇一三年にはGDP成長率が7.5%、電力の成長率が7.7%と、それなりに釣り合っていたのですが、わずか二年後の二〇一五年には、鉄道0.5%、電力▲11.9%、貿易▲8%、輸入額はなんと▲14.2%だそうです。これでGDP成長率6.9%が達成できるわけがありません。
 中国経済がこれほどひどくなったのには、その構造的要因が関係しています。GDPを構成するのは主として投資と消費ですが、中国の場合、投資の割合が七割と、他国に比べて異常に高く、その分消費の割合が低いのです(日本は消費約六割、アメリカは約八割)。これは、民間需要がついてこれないのに、国営企業がやたら設備や不動産や生産財や耐久消費財を作りまくって、結局は一般庶民がそれを消化しきれずに、過剰な在庫を抱えてしまうことを意味しています。
 それでも何しろ巨大な人口を抱えていますから、成長期には需要はいくらでもあると考えられ、人件費が安いので商品価格も低く抑えられていました。需要が供給を上回っている(インフレギャップ)間は、それ作れやれ作れで実際に生産活動も盛んでしたが、ここに政府の市場経済に対する未熟な認識が災いしたのか、生産と消費のバランスについての大きな見込み違いが生じました。やたらと人民元を刷りまくり、際限なく財政出動をした結果、インフレが深刻化します。人件費は急速に上がり始め、商品価格も上昇、逆に貨幣価値が下がったので、資本は海外に逃避します。日本など外国資本がうまみを感じられなくなったため生産拠点を東南アジアなど外国に移し始めます。石平氏の語るところによれば、人件費は十年間で三倍に跳ね上がったそうです。
 また中国はもともと都市と農村の貧富の差が激しい国で、農村から都市への移動の自由も許されていません。上位一割が所得の九割を握っており、沿岸部に八割の資本が集中しているとも言われています。こういうアンバランスな社会構造の国を、単に広大な国土と巨大な人口を抱えているからという理由で「魅力的な市場だ」と考えるのは間違いです。ミクロレベルでは、大成功を収める人や企業も当然出てくるでしょうが。
 要するにこの数年間の中国は、高度成長、急激なインフレ、急激なデフレという景気の波を驚くほど短期間に経験したことになります。いま中国大陸のあちこちには「鬼城」と呼ばれる巨大なゴーストタウンがいくつも存在します。価格は下がっていますが、買い手がほとんどつきません。膨大な在庫は、ダンピングによって国内及び周辺の発展途上国向けに捌かれるほかはないでしょう。するとますます価格低下が起き、デフレの進行に歯止めがかからなくなります。原油価格がこれだけ下がるのも、中国の輸入の落ち込みが大きく影響していると言われています。

二〇一六年三月三日のNHK「クローズアップ現代」で、中国経済の減速を扱っていました。中共政府は、今年の全国人民代表大会(全人代)で、ゾンビ化した国営企業をつぶす、二百万人規模の中都市を百三十個作って企業を誘致し、農民を都市に移動させる、消費拡大のために農村にネット通販を導入する、資金力のある人に起業を勧めるなどの計画を発表したそうですが、どれも効果の見込めない切羽詰まった空想的な政策です。
ゾンビ企業の多くは石炭や鉄鋼、造船、建設資材など中国の基幹産業部門であり、これらをつぶすと大量の人々が路頭に迷います。その雇用問題をどう解決するのか。資源国オーストラリアとの貿易関係も悪化の一途をたどるでしょう。
 また、賄賂の効く企業だけが生き残ることになり、独裁体制がますます強まるとともに、人民の不満と怨恨がいっそう高まるでしょう。一説に、年間暴動数十八万件と伝えられていますが、もっと増えるに違いありません。
 二百万人都市百三十個の人口は二億六千万人、日本の人口の二倍です。財源はどうやって捻出するのか。独裁国家で資本規制が効くから、またまた大判振る舞いの財政出動で乗り切るつもりか。その後のインフレ→デフレのサイクルの繰り返しの解決策は?
 農民が不足したら食料問題をどうやって解決するのか。教育水準や生活水準の低い農民にインターネットを使いこなして商品を購入するだけの力があるのか。不景気の時の起業の試みは韓国でも日本でも、大多数が失敗に終わっています。これらのことが何も考えられていません。
 結局、こういうほら吹き的な政策をぶち上げて何とかなると考えるのは、大陸風の粗雑な国民性に由来するとしか思えません。
 一般に中国の民衆は、自分と自分の親族しか信頼していず、愛国心などは持っていません。そんなものを持つにはあまりに文化風土が複雑すぎるのです。中国は昔から時の政権がハッタリをかましては失敗し、王朝交代(革命)を繰り返してきました。しかもその王朝は異民族の征服や異民族同士の混淆によって成り立っています。そう、中国とは、日本人が考えるようなまとまりのある「国家」ではなく、もともと一つの(恐ろしい)グローバル世界なのです。
 万里の長城はいまでこそ、「偉大な」古代遺産として扱われていますが、北方民族の侵入を防ぐために築かれたというこの長大な遺跡は、何度も作りかえられています。実際にはいくらでも乗りこえが可能で、作られている脇からどんどん異族が侵入していたし、壁のこちら側と向う側での交易がおこなわれたこともあり、軍事的にはほとんど役に立たなかったという話を聞いたことがあります。それでも権力の誇示のために築城をやめない。そういう夜郎自大な大陸型国民性を今の中共もそのまま引き継いでいるのでしょう。中華「人民」共和国の支配者は、人民のことなど考えていないのです。
 欧州諸国が中国市場に幻想を抱いてAIIB(アジアインフラ投資銀行)に我先にと参入したり、イギリスが習近平氏と原発建設計画の契約を交わしたりするのも、この国(地域)が時の権力によってかろうじてまとまりの体裁を保ってはいるが、じつはバラバラであるという実態の恐ろしさをよく知らないからです。大英帝国時代のイギリスは植民地経営上、多少はよく知っていたでしょうが。いまではそれを忘れてしまったのでしょう。
 二〇一六年三月一日、米格付け会社の大手ムーディーズは、中国の信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げました(産経新聞二〇一六年三月三日付)。同記事によると、一四年末時点での地方債務残高は約四二〇兆円であり、一六年一月末の外貨準備高はピーク時に比べて約20%減ったとのこと。資本流出の流れは止まっていません。中共当局は資本移動の規制や人民元安の抑制策でこれに対処しようとしていますが、これは、景気回復のための金融緩和や財政出動策と矛盾しています。アクセルとブレーキを同時に踏んでいるわけですね。また先述の国有企業つぶしでは、少なくとも六百万人の退職者が出ると見られているそうです。欧州諸国も、こういう記事を見せつけられれば、少しは幻想から覚めるのではないでしょうか。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

「万引き記録で自殺した中学生」事件と「保育園落ちた日本死ね」事件について――曽野綾子女史に物申す

2016年03月14日 15時43分05秒 | 経済

      






 報道によれば、広島県の中学三年生が、やってもいない万引きの記録のために志望高校への推薦を拒否され、それが理由で自殺したとのこと。世間は、学校側の責任を問う声ばかりでずいぶん沸き立っているようですが、肝心のことが問われないままになっている、とずっと思っていました。
 肝心のこととは、なぜこの生徒は、自殺を考える前に、「無実の罪」を晴らそうとしなかったのかという点です。成績もよく、屈託のない明るい生徒だったと言われていますから、そんな不当な処置に対して一片の抗議もできないというのは、どう考えてもおかしい。教師とは廊下での立ち話だったとはいえ、数回に及んだと報じられています。その数回の中で一度も「自分はやっていない」と言わなかったというのでしょうか。
ことは進路に関わる重大事です。もし教師の前で萎縮したのだったら、両親に訴えて家族ぐるみで立ち向かうことはいくらでもできたはずです。
 と、こう思っていたところ、産経新聞の、曽野綾子氏の連載コラム「小さな親切、大きなお世話」(二〇一六年三月十四日付)で、同じことが取り上げられていました。さすがは曽野氏、いつものように言いにくいことをずばりと突く、と感心しながら読んでいたのですが、途中から「こりゃいかん、こりゃダメだ」と頭を抱えました。この際きちんと批判しておきます。
まず、曽野氏はこう書いています。

 今回学校からその件に関する質問をされたとき、生徒は「そんなことはありません」と正面から否定しなかったようだ。万引が事実であったかのように思われたのは、「万引のことは家の人に言わないで。家の雰囲気が悪くなる」などと答えたものだから、教師も事実だと思ってしまったのだろう。

 ここまでは氏の文章に問題はありません。ただ、私は今回、中学生が「万引きのことは家の人に言わないで。」と答えていたことを初めて知りました。もしこれが本当とすれば、さらに言いにくいことですが、本当はこの中学生は、実際に万引きをした少年と何らかの形でかかわっていたのではないか、あるいは、別の場所、別の日に万引きをやったことがあったのではないかという疑いがきざしてきます。この疑いは今のところ封印しておきますが、それにしても、次の曽野氏の文章を読んで、びっくりしました。

 私は昔から万引をするような人間は、大学どころか、高校にもいかなくていい、と思ってきた。万引は「失敗」ではない。「確信犯」である。計画して盗みをするような人間には、高等教育などを受ける資格はない。
家庭にもそういう正義を重んじる空気があれば、子どもは万引などしないし、潔白なのに疑われた時には、顔色を変えて大騒ぎをするだろう。


 中学生や高校生の時期、万引程度の軽犯罪を犯す子はごまんといます。一流大学に合格するような秀才でもやっています。私も少々癖になってつかまったことがあります。保守派の領袖の一人、西部邁氏もご自身の著作の中で万引経験を告白されています。いまさら弁解のために言うのではありませんが、あの年ごろはアイデンティティ不安の塊なので、社会規範に反抗して小悪に手を染めるという、いくらか勇気を要する行為が結果的に自己の存在を確認させる心理的効果を持つのです。元服や徒弟奉公のような通過儀礼をなくした現代の間延びした思春期の少年たちにとって、それは一種の逆説的な通過儀礼の意味を持つといっても過言ではありません。だからやってよいと言っているわけではありませんが。
 曽野氏はカトリック教徒としての厳格さをここで表現しているのかもしれませんが、人間通で知られ、世界のたくさんの人々の生き様を目で見、肌で感じられてきたはずなのに、この偏狭ぶり、人間に対する無理解ぶりはどうでしょう。はっきり言ってあきれました。氏は、文学者でもあるのですから、『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンが後に民衆の信頼を勝ち得て市長になったことをどう解釈するか、ご高説を賜りたいものです。
 昔だと、経済的貧困を理由に免罪されるという定番がありましたが、それは今では通用しません。ジャン・バルジャンの時代でさえ、最初のパンの盗みは貧しさからでしょうが、長年の囚人暮らしの後、教会で犯した燭台の盗みは、必ずしもその原因を貧困に帰せられるものではありません。
 貧困といえば、曽野氏は次に、例の「保育園落ちた日本死ね」のブログがあまねく拡散し、物議をかもした現象に言及しています。これについても氏は見当外れのことを言っています。

 このブログの薄汚さ、客観性のなさを見ていると、私は日本人の日本語力の衰えを感じる。言葉で表現することの不可能な世代を生んでしまったのは、教育の失敗だ。(中略)
 子どもたちに毎週作文を書かすと読むのがたいへんだからと、作文教育を怠ってきた面はないか。
 SNSに頼り、自分の思いの丈を長い文章で表す力をついに身につけなかった成人は、人間とは言えない。


 SNSでの表現の多くが、その即応性という安直さのためにまともな日本語になりえていないことは認めますが、氏はSNSの中にも立派な表現が数多くあることをご存じないらしい。それはまあ、ご高齢でもあるし、いいとしましょう。
 また、現在の国語教育が作文教育をおろそかにしていることも事実です。しかし超多忙に追われる(その多忙さの中には強制された無駄も多い)今の教師に、それを要求することは無理です。私もこの問題について一文を物したことがありますので、ご関心のある方は参照してください。http://asread.info/archives/1539
 それにしても、曽野氏は、「保育園落ちた日本死ね」というブログの背景にある経済問題、政治問題にまったく目をつむっています。先の万引問題と合わせて、ことをすべて家庭教育や学校教育や言語表現能力の問題にすり替えています。これが精神論者の最大の弱点です。
 家庭に正義を重んじる空気があれば子供は万引などしない? そんなバカなことはない。失礼ながらええとこ育ちのお嬢さんの甘さ丸出しです。ある年齢以上の子どもは家庭からの自立衝動に旺盛に突き動かされます。堅苦しい正義を重んじる空気の圧政が子どもを非行に走らせる例など数え切れないでしょう。また、この中学生と直接の関係はありませんが、経済的にゆとりのない家庭ほど、子どもの幼児期から公式的な倫理道徳をヒステリックに強要しようとする傾向が強く、それがかえって非行への引き金になることもあります。
 いま日本は不況のさなかにあるだけではなく、中間層が脱落し、貧富の格差が激しく広がりつつあります。しかもそれは、政府がとっている消費税増税政策や規制緩和政策、また必要な景気回復策を取らない不作為などに根本的な原因があります。これらの誤った政策は、低所得者層を直撃しています。このブログを書いた女性がどれくらいの年収を稼いでいるのかわかりませんが、その激しい憤りの様子から見て、子どもを保育園に預けて低賃金のきつい仕事に耐えなければ、生活の維持もままならない状態に置かれていることは確かだと想定されます。そうしてこのブログは、どこに怒りを向けるべきか、その矛先を正確に見抜いています。
 なおこのブログは共産党のやらせだったという説が一部に流れていますが、だからといって事の本質は変わりません。共産党ならいかにもそんなことをやりそうですが、ブログの表現内容そのものが間違っているわけではないのですから。
 曽野氏が表現の口汚さ、稚拙さに嫌悪を感じるのはまったくご自由ですが(私も好感は持ちませんが)、ある程度の経済的な豊かさがなければ満足な家庭教育もままならないこと、憤りの感情そのものは、取り巻く社会環境の悪化によって、学校の作文教育などと関係なく立ち昇りうることなど、当たり前の事実を氏はまったく見ようとしません。普通の庶民なら、この女性の声の意味するところをすぐに理解して共感を示すでしょう。氏は、二つの事件の背後にある具体的な事情を何ら想像してみようともせずに、すべてを道徳論で片づけようとしています。こうした精神主義が百害あって一利なしなのは、現実を見る目を曇らせる作用しか及ぼさないからです。
 最後に氏にお尋ねしてみたいのですが、「人間とは言えない」とまで決めつけられたこの女性を「人間」にするには、学校の作文教育以外に何が必要でしょうか。十分な作文教育さえあれば「人間」になれるのですか。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その2)

2016年03月11日 02時12分03秒 | 政治

      




 したたかな中共が日米分断のために仕掛けてきている歴史戦(情報戦)、軍事戦、経済戦に対して勝つために、日本はどういう構えで臨むべきか。この問題について私は、名ブロガー・美津島明氏との間でやりとりを交わしました。以下、彼の戦略的思考が最もよくわかる部分を中心に、その要約を記すことにします。
http://blog.goo.ne.jp/mdsdc568/e/8296dbef736bc6f829557a9b953b5108
http://blog.goo.ne.jp/mdsdc568/e/4f3de8609978e49caac110f7026b0aa1
 私はまず、日本が「南京事件」と「慰安婦問題」という二つの歴史認識問題(情報戦)で惨敗を喫したこと、しかもこの敗北が単に中韓に対するものではないことを指摘しました。これは二〇一五年十二月二八日になされた「日韓合意」を欧米メディアがどう受け止めたかを見ればすぐにわかります。
http://jcnsydney.blogspot.jp/2016/01/ajcn_8.html
 ここには、かつての戦勝国である米英豪と国際連合、さらには、自分たちは反省したが日本は反省していないなどと嘘八百を言い続けているドイツまで含めて、じつによってたかって日本に敵対的な包囲網が形成されています。これを仮に「戦勝国包囲網」と呼んでおきましょう。
 ちなみに、ことわるまでもありませんが、中共は第二次大戦終結時、まだ成立していませんし、韓国は日本の統治下にあったのですから、いずれも戦勝国ではありません。要するにどちらも反日を正当化するために「戦勝国」であるかのごとくに成りすましているだけです。
 さてこれまで私は、日本の対米従属からの脱却と真の自主独立の重要性を説いてきました。これに対して美津島氏は、自分も心から「自虐史観」からの脱却を望むものであると断った上で、次のように述べます。

 野放図で無自覚で感情的な「脱自虐史観」ほど、中共の歴史戦にとっての好餌はほかにない。なぜなら、第一に、中共の歴史戦の狙いが、日米を分断させておいて、孤立した日本を叩くところにあるからであり、第二に、敗戦国・日本が不可避的に選ばざるを得なかった「自虐史観」から脱却しようとすると、必然的に情理両面からのアプローチによって反米が導き出されるからである。これは「心ある日本人の脱自虐史観」がもつ危険性である。

 つまり無自覚な「脱自虐史観」は、ただの感情的な反米意識につながることになり、それは、日本の孤立を狙う中共の思うつぼだというのですね。これは一見意表を突いているようですが、よく考えられた冷徹な指摘です。かつての対米戦争における惨めな敗北の大きな原因の一つが、アメリカのABCD包囲網による日本の孤立化政策にあったことは明らかだからです。
 しかしただアメリカの言うなりになることと、対米外交を通して対等で巧妙な駆け引きを行なって国益を引き出すこととはまったく異なります。この区別を明瞭につけない限り、日本はかえって永久に対米従属を通して中国の狙う戦勝国包囲網に取り巻かれてしまうでしょう。私のこの応答に対して、美津島氏は次のように説きます。

 中共が挑んでくる歴史戦の論点は、‘邉事件問題 △い錣罎觸招外岼舵慳簑蝓´首相の靖国神社参拝問題 づ豕裁判史観問題 シ法改正問題の五つである。日本がこの戦いに勝つことは、敗戦国である日本にとって準世界大戦クラスの大きな意義を持つ。日本が中共に勝つためには、「戦勝国連合VS孤立した日本」という構図にハマることだけは避けなくてはならない。中共は、脱自虐史観がはらむ潜在的な日米対立を、はっきりと嗅ぎ当てていて、それを利用しようとする。この事実に対して、脱自虐史観論者は、自覚的であらねばならない。さもなければ、図らずも日米分断に加担し、日本の安全保障体制を危機にさらす愚を犯しかねない。
 Gゼロ状況下では、主権国家を健全なナショナリズムが支えることが必須となる。そこで、脱自虐史観は、大きな役割を果たすことになる。だから、それを捨ててしまうには及ばない。しかし一方で脱自虐史観は、反米の契機を有するがゆえに、日米分断を図る中共に徹底利用されるという弱点を持つ。私たちはこの両面性に目を曇らせてはならず、徹底的にリアリストでなくてはならない。アメリカとの関係に移して論じるなら、アメリカへの精神的な依存を断ち切った自立的精神で同国に臨む一方で、同国の属国という国際的に認知された客観的ポジションをフル活用する、ということになる。つまり、衰退するアメリカの覇権を側面からサポートするという位置からもろもろの提言をすることで、国益をちゃっかり追求するというしたたかな姿勢を堅持する必要がある。

 
 この反米でもなければ対米追随でもないマキャベリズム的なスタンスを維持することは、アメリカに対するたいへんな外交手腕が必要とされますね。そこで私は次のように応じました。それは具体的には、たとえば、冷戦時代からの仲の悪さを残しているアメリカとロシアの媒介者の役割を演じ、そのことによってロシアと中共との分断を図るというようなことであろう、と。
 この対米外交戦略は当然、同時に対露外交戦略でもあります。安倍政権は、対露外交のテーマを北方領土返還交渉に限っているようですが、この交渉は、プーチン政権にまったくその気がないのですから、いくら交渉を重ねても無意味です。ものほしさを見透かされて天然ガスを法外な値段で売りつけられるかもしれません。
 それよりは、欧米の経済制裁と原油価格の下落とルーブル安との三重苦を抱えているロシアの弱点をよく見抜いて、それに対する支援を提供する形で、ロシアが中共に泣きつくのを阻止する方向に外交の舵を切る方がはるかに有益です。そのことによって、アメリカにとって脅威である中露接近という事態を防ぐことができ、アメリカに対しても点数を稼ぐことができるわけです。
もちろん、日本がなぜロシアに接近するのかについては、アメリカに十分理解してもらう必要があるでしょう。大事なことは、外交には対一国相手ということはあり得ず、関係諸国の思惑を常に複合的に考慮しなくてはならないということです。
 美津島氏はまた、次の二つの指摘をしました。ここから話は、中共が抱える経済危機の問題に移って行きます。

‘鵝三賚伺一月に行なわれたダボス会議において、黒田日銀総裁が、中共は資本規制を強化すべきだと発言したことは、中共を「大敵」としてはっきりと認識できずに、愚かにも敵に塩を贈ってしまう日本政府の脆弱な精神構造を象徴しており、こうした精神構造こそが「危機」のなかの最大のものである。
∧歇蘿匹琉貮瑤砲郎強い「中国経済崩壊待望論」は、その根に、にっくき強敵・中共が戦わずして滅んでくれないものかという脆弱な精神ならではの願望を隠し持っている証拠である。


 この二点については、私も同じようなことを考えていて、大賛成です。
 ,砲弔い討蓮⊂し解説が必要でしょう。幸いここに、産経新聞特別記者・田村秀男氏の的確な論説がありますので、それを導きの糸とすることにしましょう。
http://blogos.com/article/156836/

 黒田総裁は先の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、中国の資本逃避が止まらないことを憂慮し、北京当局による資本規制強化を提起した。この発言は国際金融界をリードし、国際通貨基金(IMF)も容認に傾いている。英フィナンシャルタイムズ(FT)紙は1月26日付の社説で、黒田提案を引用しながら、「中国には資本規制が唯一の選択肢」だと論じた。
 IMFもFTも、中国金融市場の自由化を条件に、人民元のIMF特別引き出し権(SDR)構成通貨への組み込みを支持した。資本規制強化はそれに逆行する。北京のほうからはそうしたくても、大っぴらにはできないし、IMFもFTも率先して言い出すのも具合が悪かった。そこで渡りに船とばかり、思いがけず飛び出した黒田節に飛びついたようだ。
 考えても見よ。資本規制強化で中国の市場危機が収まるとでも言うのだろうか。危機は中国の過剰投資、過剰設備と日本のバブル期をはるかに上回る企業債務とその膨張から来ている。資本逃避は人民元資産に見切りを付けた中国国内の企業や投資家、預金者が海外に持ち出すことから起きている。資本規制の強化はこの流れを当局の強権によって封じ込めるわけだが、同時に人民元を少ない変動幅でドルにペッグさせる管理変動相場制の堅持を意味する。


 田村氏は、この論説を皮肉たっぷりに結んでいます。

 日銀が通貨スワップで中国の統制強化の手助けをするのは、金融や経済を超えた政治の領域である。日銀は日本の経済再生、脱デフレのための金融政策に撤すればよい。

 田村氏の言いたいことはおそらくこういうことです。中共は金融資本市場の常識である変動相場制に移行していず、ドルを基軸とした管理変動相場制を採りつづけていながら、EUやIMFに働きかけて人民元の国際通貨入りの約束を取り付けるというアンフェアな振る舞いをしている。それを黒田総裁がわざわざ後押しするような発言をするとは、反日国家を助ける利敵行為ではないか、と。まさに美津島氏の先の指摘と一致するわけですね。
 要するに中共は為替変動を市場に任せず、これからも独裁国家として為替操作を狡猾に行い続けるのでしょうが、それをIMFやEUは知っていながら、中国市場の大きさという幻想に目が眩んで、人民元のSDR入りを認めてしまったということです。IMFのラガルド専務理事はれっきとした親中派で、中共の執拗なはたらきかけに屈し、「自由な為替市場の実現に向けて努力する」という、まったくあてにならない曖昧な「約束」を信用したフリをしてSDR入りを認可してしまいました。田村氏は、元財務官僚の黒田総裁だけではなく、財務省国際局の元官僚の多くが親中派であることを具体的な事例を挙げて証明しています(月刊誌『正論』二〇一六年四月号)。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

やくざ国家・中共に日本はどう対峙すべきか(その1)

2016年03月05日 18時48分22秒 | 政治

      


 ★一ヶ月以上もお留守にして申し訳ありませんでした。じつはいま、4月に刊行予定の『デタラメが世界を動かしている』(PHP研究所)という本の執筆でてんてこ舞いしております。しかし、あまりブランクを置くのもどうかと思い、以下、4回シリーズで対中共戦略について書くことにいたしました。今後ともよろしくお願いいたします。また、近刊にご期待ください。





 アメリカの覇権後退とともに、国際社会はいま多極化し、互いが互いを牽制し、あるいはにらみ合うやくざの跋扈のような状態を呈しています。
 さて、やくざ状態といえば、中共こそは最大のやくざ国家であり、しかもわが国はそのすぐ隣にいるという恐ろしい関係に置かれています。中共の現状とたくらみに触れないわけにはいきますまい。まず東アジアの国際政治情勢から話しはじめましょう。
 中共政府は、周知のとおり、尖閣諸島の領有権の主張を始めとして、フィリピンから実効支配を奪った南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)での人工島における滑走路建設と旅客機着陸、西沙諸島(パラセル諸島)への戦闘機配備など、国際秩序を無視して矢継ぎ早にその露骨な膨張主義を実現しつつあります。
 さらに最近では、二〇一六年二月から中国船を南沙諸島のジャクソン環礁周辺海域に五隻常駐させ、フィリピン漁船を追い払っています(産経新聞二〇一六年三月三日付)。
 これに対するアメリカの対応は、次の通りです。
 まず尖閣問題に関しては、二〇一六年一月二七日、米太平洋軍のハリス司令官が、「尖閣諸島が中国から攻撃されれば、米軍は同諸島を防衛する」と発言しました。安全保障を現実に米軍に依存している日本としては、この発言が出てきたことは、一見心強いように思えます。また、このメッセージをもし中共側がまともに受け止めるなら、アメリカの軍事力を恐れている中共としては、「尖閣には下手に手を出さないほうがいい」と考えるかもしれません。そういう宣伝効果は確かにいくらかはあるでしょう。
 しかし、それほど期待しないほうがよいと思います。
第一にこの発言は、二〇一〇年九月の漁船衝突事件の時のオバマ大統領発言「尖閣諸島は安保条約の適用対象である」を、より具体的にブレイクダウンしたものにすぎないからです。オバマ大統領は、あの時、日米安保条約は自分が生まれる前から決まっていたもので、自分はそれを受け継ぐだけだとも言っています。ところでこの発言中の「安保条約」とは第五条を指します。第五条の該当部分は以下の通り。

 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 当時も議論になりましたが、この条文では、「武力攻撃」と明示されており、中共の部隊が漁民を装って尖閣に上陸し実効支配してしまうような「グレーゾーン」については触れられていません。また「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」と書かれており、もし米議会が尖閣有事に際して軍事行動をとることを否決してしまえば、この条文は生きないのです。もっとも歴代大統領がしばしば行使する「大統領令」を発動すれば、これは合衆国憲法第2条1項の「大統領の行政権」の範囲内にあると考えられますから、軍の最高司令官としてその種の指令を活かすことは不可能ではありません。しかし大統領が尖閣問題をよほどの国際的緊張として認識するのでない限り、当分の間、その可能性はないでしょう。在日米軍は沖縄基地を減らしてグァムへに撤退させる計画をすでに何年も前から既定路線としています。
 さて今回のハリス司令官の発言も「尖閣諸島が中国から攻撃されれば」となっており、グレーゾーンは想定されていません。ですからこの発言はオバマ発言をただ繰り返しているだけです。
 第二に、このハリス発言によって、平和ボケの多くの日本人がさらに安心してしまい、「やっぱりアメリカさんが何とかしてくれるさ」と、相変わらず惰眠をむさぼりつづけようとする逆効果もあるということです。
 何度も言われていることですが、他国のいざこざのために自国民の血を流すほど、いまのアメリカはお人好しでもなく、その余裕もありません。外交・軍事を中東からアジアへシフトする「リバランス」というのも、「世界の警察官」をやめたことの言い訳として使われている気配があります。次期大統領の共和党指名候補として最有力視されているトランプ氏に至っては、安保条約の不公平を言い立てる始末です。彼のこの発言は、アメリカの内情を考えるかぎり、リアリティがあります。
 日本はいよいよ自主防衛を真剣に考えなくてはならない段階にきているのです。とはいえ、これはアメリカとの同盟関係、協力関係を断つというような意味ではまったくありません。

 次に南沙諸島人工島の滑走路と西沙諸島の戦闘機配備の問題ですが、米軍はこれに対抗して「航行の自由」作戦をこれまで二回行いました。一度目は二〇一五年一〇月に駆逐艦を、二度目は二〇一六年一月にイージス艦を、いずれも中共が「領海」と称する一二カイリ内を航行させたのです。今後もこの作戦を続けると宣言しています。
 また、ハリス長官は、二〇一六年二月二四日には、西太平洋に空母二隻を常時配備することは難しいと述べる一方で、最新鋭のズムワルト級ステルス駆逐艦や、攻撃型原子力潜水艦の前方展開を検討していることを明らかにしました。(産経新聞二〇一六年二月二六日付)
 さらにジャクソン環礁における中国船の常駐に対しては、カーター国防長官が、中国の「好戦的な行動」に懸念を表明、中国が軍事拠点化を追及すれば「それに見合う結果を伴う」として対抗措置を取ると警告しました(産経新聞二〇一六年三月三日付)
 さてこれらの対抗策ですが、これについても私は、アメリカの本気度を疑っています。というのは、中共のこの海域における振る舞いは、国際秩序を破壊する明白な軍事的侵略行為にほかなりません。それこそフィリピンやベトナムに対する「力による現状変更」です。にもかかわらず、アメリカは、威嚇効果、抑止効果を狙って軍用艦を通過させることと駆逐艦や原潜の前方展開を「検討している」と述べること、口だけの警告を発することにとどまっています。手ぬるいというほかありません。
 これまでのアメリカだったら、ただちに空母を海域に派遣し、即時戦闘態勢のプレゼンスを示すでしょう。また、同盟国オーストラリアや日本に対して具体的な協力を呼び掛けてくるはずです。このような緊張状態を作り出すことがいいことか悪いことかは別として、そういうことを迷わず敢行するのがアメリカという国についての私たちのこれまでの理解です。
 しかしこの対応を見ていると、いまのアメリカは、明らかに中共との間に西太平洋での緊張を高めることを回避しているとしか考えられません。軍事費も削減しなくてはならないし、「大国」中国との衝突となれば、ただでさえ厭戦気分の漂う国民の支持を得るのは並大抵ではない、ベトナム戦争以来膨大な戦費と犠牲者を出してきた結果、アメリカにとっていいことは何もなかった、はるばる西太平洋くんだりで戦端を開くより、さしあたって、山積した内政問題に集中した方が得策ではないか……とまあ、ホワイトハウスやペンタゴンが本当にそう考えているかどうかわかりませんが、いずれにしても、この問題に関してアメリカに過度の期待を寄せることができないのは確かです。
 一方、こうしたアメリカの行動に対する日本の対応ですが、支持表明はしているものの、具体的な協力行動は自分からは何もしていないに等しいと言ってよいでしょう。例によって拱手傍観の構えです。次期総理候補の一人と目されるある国会議員は、「南沙諸島の問題は日本には関係ない」と発言したそうです。
 私はこの事態を非常に憂慮するとともに、この国会議員の無知とノーテンキぶりにあきれます。尖閣問題というと、直接目に見える領土問題なのでわかりやすいため、日本人はすわ大変だと大騒ぎします。しかしどちらかといえば、むしろ南沙諸島、西沙諸島における中共の傍若無人ぶりのほうが、日本の国益、総合的な安全保障を脅かす大問題なのです。というのは、原発をいまほとんど停止している日本は電力の九割を火力に頼っていますが、その資源である石油の八割強を中東に依存しています。もちろん電力ばかりでなく、その他のエネルギー、民生品なども多くは石油を原料としています。それがみなマラッカ海峡経由で南シナ海を通って運ばれてくるのです。
 この日本にとって死活問題であるシーレーンをもし何らかの形で中共に押さえられたら、石油供給の道が閉ざされ、日本は一発でアウトです。いまの中共の対日戦略を見ていると、政治的には日米分断をはかる一方で、経済的には日本のシーレーンを断とうとしているか、そうではないとしても自国の「領海」を広げてそれをネタに何らかの干渉を仕掛け、こちらが拒否すれば無理な条件闘争に持ち込もうとしているとしか思えません。「日本には関係ない」などとバカなことを言っている場合ではないのです。
 先ほど、南シナ海におけるアメリカの対中行動が手ぬるいと言いましたが、アメリカの国益からすれば、それも無理からぬところがあります。対米従属と対米依存に長く慣らされてきた戦後日本人の多くは、「いざというときにはアメリカが何とかしてくれる」とどこかで思っているようですが、もうそういう時代ではありません。
 自国の安全保障は、軍事ばかりでなく、エネルギー、食料、医療、防災その他、すべて自国で守る力を持たなくてはなりません。目下の問題に関してアメリカにアジア諸国の軍事的安全保障に本気で取り組む気が逓減しているなら、日本こそが同盟国アメリカに対して外交手腕を発揮して、主体的に協力を呼び掛けていくべきなのです。
 たとえばこれは単なる一例ですが、アメリカが「航行の自由」作戦を決行したなら、ただちに日本もそれに呼応して、同じ十二カイリの海域にタンカーを通過させ、それを海上自衛隊に護衛させるといった具体的なアイデアが考えられます。これは憲法違反には当たらないはずです。
 中共は、日本列島、沖縄、台湾、フィリピンと連なる列島群を第一列島線と位置づけ、まずはこの内側の海域を支配することを考えています(すでに実行しつつあります)。もちろんこれは阻止しなくてはなりません。しかしこの時、アメリカがこれに積極的に対抗せず、断固たる措置を講じないなら、中共の実効支配が既成事実化していきます。すると次に、小笠原諸島から、グァム、サイパンなどマリアナ諸島へと続く第二列島線との間に大きな空白地帯が生まれます。中共は当然味をしめてこの空白地帯への進出を目論むでしょう。このようなじわじわと海洋進出を進める中共に対して、いったいどの国がこれに対抗しうるのか。
 答えは簡単です。名実ともに大国である日本こそが、アジアの平和を守る盟主として、台湾、フィリピン、ベトナム、インドネシア、オーストラリア、インドなど、利害の共通する友好的な国々をまとめ上げ、集団安全保障体制を構築する役割を担うべきなのです。もっとも、答えは簡単でも、日本の政府や国内世論や野党勢力の体たらくを見るかぎり、こういう構想がすぐに実現するとはとても思えませんが。

コメント (1)
この記事をはてなブックマークに追加

奨学金も借りられない若者いじめの日本(SSKシリーズ23)

2016年01月29日 22時57分35秒 | 経済

      



*以下の記事は、このブログの「テロとグローバリズムと金融資本(その3)」と一部内容が重複します。

 ラジオで奨学金制度が暗礁に乗り上げていることを知りました。

 ふつう高3の5月に予約申請をするのですが、その時点ではそもそも大学に入学できるか決まっていず、大学卒業後、正規社員として採用されるかどうかもわかりません。非正規の場合は、職種も雇用期間も収入もきわめて不安定ですね。この時点で将来像を描けと言っても無理なわけです。先生は多忙で、とても生徒一人一人に適切なシミュレーションの指導などする余裕がありません。

 ちなみに経済的な事情から進学をあきらめた場合には、高卒の正規採用というのはほとんどゼロで、非正規を含めても2割就職できればいい方だそうです。

 調べてみたところ、日本学生支援機構の奨学金制度は、無利子だが選抜が厳しい1種と、有利子だがほとんどだれでも受けられる2種とに分かれていて、2種は1種の最高2倍まで給付されるので、こちらに人気が集まっています。

 しかしたとえば貸与月額10万円で四年在学すると総額480万円となり、これを償還期間20年、固定金利0.82%で返還すると、月々22000円支払わなくてはなりません。月収手取り16万円として、家賃その他の経費を差し引き、そこからさらに2万円以上を返していくというのは、相当辛いですね。頼りの親も次々と下流高齢者の仲間入りをしていく昨今です。将来展望が開けるわけがありません。

 非正規社員の割合がどんどん増えている(現在4割)この不況期に、労働者派遣法「改正」などを簡単に国会通過させてしまった政府、国会議員に大きな憤りを感じます。この「改正」なるもの、雇われる労働者の生活のことなど全く考慮されていません。派遣労働者を永久に低賃金で不安定な雇用形態に留めておこうとする悪法です。

 細かい点は抜きにして、ポイントは三つ。
‘韻枯働者が派遣先の同一組織で3年以上働くことはできない。
■廓を超えて雇用されることを派遣元が依頼することができる。
専門26業務とその他の業務の区別を取り払う。


 ,蕨働者を入れ替えて使い捨てにすることが容易になる規則ですね。厚労省はこれをキャリアアップのためなどと言い訳していますが、逆だろう!と突っ込みたくなります。

 △蓮岼様蠅垢襪海箸できる」となっているだけなので、派遣先が断ればそれで終わり

 は一見平等を期しているようですが、内実は正規雇用への可能性の道をいっそう閉ざすものです。これまでの派遣法では、専門26業務の派遣労働者が同じ派遣先で仕事をしている場合、その派遣先が新しく直接雇用をする際には当の労働者に雇用契約の申込み義務があるという制度が存在し、これにより当の労働者に直接雇用の見込みが不十分ながらあったのに、今回の改正ではこの制度が削除されたのです。

 この改悪の主役は誰か。規制改革を進める派遣会社会長・竹中平蔵氏らの一派、およびこの路線をよいことと信じている安倍政権です。日本の労働行政はアメリカの悪いところを見習って、ますます亡国への道を歩んでいます。これではいくら奨学金制度があっても、若者の将来設計を困難にしてしまうのは当然と言うべきでしょう。

参考:http://toyokeizai.net/articles/-/73553

コメント (3)
この記事をはてなブックマークに追加

「産経抄」に物申す

2016年01月22日 18時09分31秒 | 経済

      



 ちょっと野暮なことを書きます。お許しください。
 私は産経新聞の購読者ですが、これは、それ以外の大手メディアがあまりにひどいので、一種の消去法でとっている方策です。けっしてこの新聞を全面的に支持しているわけではありません。いろいろと不満もあります。とはいえ、記者陣営に優秀な書き手が多いことはたしかで、比較相対的にマシな新聞と言えるでしょう。
 一面に「産経抄」という有名なコラムがあります。いつも必ず読んでいます。ニュースの取り上げ方の的確さ、限られた字数での文章のさばき方のうまさ、背後に見え隠れする教養の高さなど、なかなか優れたコラムです。ふぬけた「天声人語」など及びもつきません。
 そうではあるのですが、何人かの執筆者が入れ替わりで担当しているせいか、やはりすごく決まっていると感じる時、そうでもないと感じる時、こういう切り口はちょっと違うんじゃないかと違和感を感じる時など、いろいろあります。
 今回は、これらの最後の場合について述べます。2016年1月22日付のもので、例の軽井沢町バス転落事故について書かれています。冒頭で日本航空第2代社長・松尾静磨の「臆病者と言われる勇気をもて」という名言を取り上げ、次に、昭和41年3月の羽田におけるカナダ旅客機炎上の際、日航機の機長が悪天候に不安を感じて着陸をあきらめた経緯について記しています。

 日航機はそのまま福岡に飛んだ。機長は翌日、自らの疲労を考慮して、他の機長に操縦を代わってもらい、客席に座って乗客とともに東京に帰ってきた。松尾が機長の対応を喜んだのは、言うまでもない。

 ここまでは大賛成です。問題はそのあと、軽井沢事故と東京都内での観光バスの中央分離帯衝突事故とに言及し、バス業界一般に上記の教訓の大切さをかみしめてもらいたいと敷衍している部分です。最後の部分を引用しましょう。

 松尾は毎年元日には、交通安全の川崎大師に参拝に行き、その足で羽田の整備工場の現場に向かっていた。評論家の大宅壮一はそんな松尾を、「祈りの気持ちをもつ人」と呼んだ。安さと便利さばかりが追求される昨今、「祈り」が忘れられている。

 最近のバス事故の頻発は、運転手が「祈り」の気持ちを忘れているからではありません。これは要するに、二つの要因に起因しています。一つは、外国人(主として中国人)観光客の激増によるバス不足と運転手不足によって、長時間を要する観光バスの運転に不慣れな運転手が駆り出されていることです。
 もう一つは、こちらの方が重要ですが、アベノミクス第三の矢の規制緩和政策によって、低賃金競争が激化して格安料金のバスツアーが続出し、無理な労働を運転手に強いる結果を招いていることです。軽井沢事故でも、おそらく大して高くもない高速料金の節約のためでしょう、正規のルートである信越自動車道から外れて、わざわざ暗く走りにくい碓井バイパスを通っていました。時間調整のためという理由も挙げられていましたが、それならサービスエリアで休憩すれば済む話です。
 ここには、バス業界のブラック企業化の実態が浮き彫りになっています。つまり、不況脱却と真逆の政策を採っている政府に最終的な責任があるのです。人によっては、こういう見方を「風が吹けば桶屋が儲かる」式と評するかもしれませんが、ことは、今回の事故にだけ限定されません。政府の進める規制緩和が、事件や事故に直接にはつながらないまでも、中小企業にさまざまな無理を強いていることは明らかなのです。
 ところで、こうした現実的・経済的な理由があることはすぐわかるはずなのに、「産経抄」氏は、そのことを見ずに「祈り」の欠落といった精神論、道義論に原因を帰着させています。これは、批判すべき論点を見えなくさせるという意味で、あまり感心できる話ではありません。
 産経新聞には、保守系メディアの一特徴として、とかく問題を精神論や道義論で解釈する傾向があるのですが、今回の記事は、その典型的な例と言えましょう。「産経抄」の愛読者の一人として、あえて苦言を呈してみました。




コメント (5)
この記事をはてなブックマークに追加