言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

還暦を通り越してや春を待つ

2024年02月28日 19時54分16秒 | 評論・評伝
 令和6年の2月が明日で終はる。今月60歳になり還暦を迎へたが、特別な感慨もなくどうしようもない停滞の中を苦々しい顔をしないで(他人様からはいつも笑つてゐますねと言はれる)過ごしてゐる。
 今の願望は早く定年を迎へたいといふことである。仕事仲間には申し訳ないことであるが、偽ることでもあるまい。その原因の一つはデジタル社会の生きづらさである。ワードを使つて文章を書くのは当り前。エクセルを使つて表計算するのは当たり前。そこら辺りはまだいい。楽々清算やら、teamsやら、その他さまざまなソフトやアプリを駆使してデジタル社会は人間(私)にその仕様に馴れるやうに求めて来る。現代の人間疎外である。デジタルデバイド(デジタルによる格差)と言はれる事態だが、このことを取り上げる若き社会学者はゐない。日頃、性的マイノリティだの、外国人差別だの、経済的弱者だの、これでもかこれでもかと論じる人は、大概デジタルネイティブである。彼らが言ふ「多様性」とはいつたい何なのだらう。そんな言葉の薄つぺらさは、この一事で分からう。技術上達者が生きやすい社会を作つてゐることには何の配慮も要らないらしい。せいぜい彼らの頭の中にあるのはデジタル技量のグラデーションを指して「多様性」と名付けてゐるのであらう。
 しかし、人間の側に必要以上の技量を求める技術は未熟である。今のデジタル技術が日進月歩であるのは、それが未熟であるからだ。しかし、その未熟さを克服するためには、更に人に技量を求める技術を生んでしまふことになる。ここにも人間の逆説がある。自由を求めて、自由とは何かといふ観念を追ひ求め逆に不自由になつてしまふといふやうに。
 
 まあ、還暦ですからね、いきり立たずに待ちますよ、私は。もちろん、私が生きてゐる間には、デジタル技術が人間に追ひつくことはないでせうが、定年さへ迎へ仕事が終はれば、もうローテクで暮らしていける。指折り数へて今年も春を待つことにしませうか。呵々

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時事評論石川 2024年2月20日(第837/38)号

2024年02月21日 12時22分27秒 | 評論・評伝
今号の紹介です。
 
 久し振りの留守晴夫先生の論稿が掲載。喜ばれる読者も多いだらう。留守先生の師匠でもある松原正の名著『戦争は無くならない』と同じタイトルで寄稿された。今号ではその前半が載せられてゐる。近著メルヴィルの『詐欺師ー仮面芝居の物語―』についてから書き起こされてゐる。人に「心」がある限り、つまりは「悪と悲惨」とを解決しようとする良心がある限り、この世から戦争が無くなることはないといふ主旨である。次号も楽しみにしたい。
 一面にある共産党のカネについての話は面白かつた。共産党の昨年の総収入は190億円といふから驚く。しかもその収入のほとんどが「赤旗」の購読料といふのだからさらに驚きである。政党助成金を受取つてゐない共産党のほとんど唯一の資金源である。それが今たいへんなことになつてゐるといふのだ。長く続く購読者の漸減と、配達の負担とである。書かれてはゐないが、購読者が減れば、党員の配達区域が広がるといふこともあるのではないか。党員は、宗教者のやうに奉仕を求められてゐる。その意味で、共産党と宗教とは似てゐる。絶対値を取れば同じである。無関心、ノンポリ国民は、その値はゼロである。だから、彼らの生き方は分からない。

 ご関心がありましたら御購讀ください。  1部200圓、年間では2000圓です。 (いちばん下に、問合はせ先があります。)
            ●   
日本共産党とカネの話  驚愕の党収入100億円
      元共産党板橋区議 松崎いたる
            ●
コラム 北潮(正直は最善の策)
            ●
日本共産党の「植民地」
 日本学術会議の法人化は「イカサマ」である
    コラムニスト 吉田好克
            ●
教育隨想  朴慶植が改竄した強制連行の「証言」(勝)
             ●
〈この世が舞台 番外〉戦争は無くならない(前)
    圭書房主宰・元早大教授 留守晴夫
            ●
コラム 眼光
   愚民に阿る愚かな政治(慶)
        
            ●
コラム
  育児は苦役なのか?(紫)
  派閥 容認・肯定論(石壁)
  慰安婦問題の今後(男性)
  男たちの嫉妬(梓弓)
           
  ● 問ひ合せ     電   話 076-264-1119    ファックス   076-231-7009
   北国銀行金沢市役所普235247
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草の芽に降りし光や微かなる

2024年02月18日 16時59分55秒 | 評論・評伝

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白石一文『快挙』を読む

2024年02月07日 21時50分01秒 | 評論・評伝
 
 
 写真家を目指すが、その能力に限界を感じ、ホテルマンなどのアルバイトで生活を送る俊彦。彼は小料理店を営む2歳年上のみすみと一緒になつた。小説を書き始めた俊彦が小説家として世に出ることを勧め、支へてくれてゐた。
 小説を書きながらも、あと一歩のところでそれが世に出ない。筆力の限界と共に、担当し俊彦の文才を買つてくれてゐた編集者の急逝といふ不遇もあつた。それでも長い忍耐の時期を過ごしながら出会つた人との繋がりでノンフィクションの本が出、10万部を越すベストセラーになる。不遇の中で腐りかけながらも、俊彦を支へてくれたみすみの存在が切ない。彼女は決して聖女ではなく、愛に迷つてもゐるが、傷ついた心を決して他人のせいにはしない女性であつた。俊彦は『快挙』といふ小説をそれぞれ別の作品として2度書いてゐるが、3度目に書いてゐる1200枚の小説もきつと『快挙』なのであらう。その名前が明かされないのは、この小説がきつとそれだからであらう。
 みすみとの出会ひこそ「快挙」なのである。

 この小説には、「じっくり」「焦らずに」「心配せずに」「待っている」といふ言葉がいろいろな人の口からリフレインのやうに語られる。生きるといふことは、快挙の連続ではなく、不遇と断念とに踏みつぶされさうになりながらも、誰かの温もりによつて耐へながら過ごしていくものなのだらう。
 私はまた白石一文の作品によつて心を潤ませることができた。
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花咲く冬もある

2024年02月04日 21時19分33秒 | 評論・評伝
 今年は暖冬だと言はれたが、寒い日はあつてそんな時はやはり寒い。特に当地は埋立地で、本来は海の上、雨の次の日は不思議に風が強い。それはここに来るまで経験したことのないほどの風の強さで、1年に何度も台風が来てゐるやうに感じる。
 もちろん建物は鉄筋コンクリート建てだから壊れることはないが、サッシは築17年も経つとどうやら隙間が開いて来るやうでガタガタと揺れる。夜中に何度か起きたことがあるが、海の上だものなと思ふと腹も立たない。それよりは快晴の日の景色の解放感の方が優つてゐる。
 
 さて、そんな今年の冬だが、不思議に薔薇が咲いた。5月に咲き、秋に咲き、冬に咲いた。これは初めてのこと。これが暖冬のせいなのかは分からないが、嬉しい出来事である。ベランダにオレンジ色の薔薇に引き寄せられ寒い外に出て行つた。
 冬に咲く花の強さや席を立つ
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